説明

凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布およびその製造方法

【課題】 セルロース繊維を素材とするスパンレース不織布であって、様々は模様を容易に付与することが可能な不織布を提供することにある。
【解決手段】 表面層は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブからなり、中間層は、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブからなり、表面層の構成繊維と中間層の構成繊維とは互いに交絡しており、中間層においては、熱エンボス加工により部分的に熱圧着された熱圧着部を有し、熱圧着部では、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化することにより繊維同士を熱接着しており、表面層においては、少なくとも一方の面が熱エンボス加工による凹凸模様が付与されているスパンレース不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を構成繊維とし、模様が付与されてなるスパンレース不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパンレース不織布は、構成繊維同士が交絡によって形態保持しているため、柔軟性に優れるという特徴がある。このため、直接、肌に触れる用途、すなわち、対人向けのウェットワイパーやパンティーライナー等の用途として用いられている。また、直接肌に触れる用途に用いることから、木綿やレーヨン等のセルロース繊維からなる素材が好ましく用いられる。
【0003】
このようなスパンレース不織布に美観性をもたすために表面に模様が付与することが行われている。模様を付与する方法としては、プリントによる方法が挙げられるが、スパンレース不織布の風合いの一部を損ねることになる。
【0004】
スパンレース不織布の風合いを維持し、かつ模様が付与されてなるものとしては、高圧水流による処理の際に、凹凸もしくは開孔を有する支持体に載置して高圧水流を作用させることにより、水流のエネルギーにより繊維を移動させて、支持体の凹凸に対応した開孔模様が付与されたスパンレース不織布は知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第2817057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した開孔による模様では、繊維の存在量を変化させることによるものであり、不織布の厚み等によって、また、繊維の存在量に斑がある場合は、模様が明瞭とならない場合がある。そこで、本発明は、開孔を付与する以外の方法により、模様が付与されてなるセルロース繊維からなるスパンレース不織布を提供することを本発明の課題とした。
【0006】
本発明者等は、上記課題を達成する方法を検討したところ、熱エンボス加工を付与することにより、エンボスに凹凸模様を付与できないかとを考えた。しかし、スパンレース不織布を構成するセルロース繊維は、熱可塑性でないため、付与した凹凸の模様は明瞭でなく、また、時間の経過や摩擦等により薄れていくものであった。そこで、セルロース繊維を用いながら、また、スパンレースの風合いを維持した状態で凹凸模様を付与できないかを検討した結果、スパンレース不織布の一部の層に熱接着性繊維を用いることにより、不織布の表面に明瞭な凹凸模様が付与できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、表面層は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブからなり、中間層は、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブからなり、表面層の構成繊維と中間層の構成繊維とは互いに交絡しており、中間層においては、熱エンボス加工により部分的に熱圧着された熱圧着部を有し、熱圧着部では、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化することにより繊維同士を熱接着しており、表面層においては、少なくとも一方の面が熱エンボス加工による凹凸模様が付与されていることを特徴とする凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布を要旨とするものである。
【0008】
また、本発明は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを、セルロース繊維を構成繊維とするウェブ/構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブ/セルロース繊維を構成繊維とするウェブの順に積層し、該積層物に高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化し、次いで、熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着することを特徴とする上記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0009】
また、本発明は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを積層し、該積層物に高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化した交絡積層体を得、次いで、得られた交絡積層体2枚を、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブが対向するように積層し、該積層物を熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着することを特徴とする上記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のスパンレース不織布は、表面層と中間層との3層構造(表/中間/表)からなる。そして、表面層は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブからなる。一方、中間層は、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブからなる。
【0012】
表面層の構成繊維としてセルロース繊維を選択すると理由としては、吸水性、親水性に優れ、肌触りが良好であるためである。また、熱可塑性でないため、熱エンボス加工により部分的に熱硬化することがないため、柔軟な風合いや良好な肌触りを保つことができるためである。
【0013】
セルロース繊維としては、公知の木綿繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、また、溶剤紡糸セルロース繊維が挙げられる。溶剤紡糸セルロース繊維とは、セルロース原料を化学的に変化させずに、特殊な有機溶媒に溶解させた原液或いはこの原液を乾燥させたチップを紡糸して得られるものである。これは、溶剤抽出法によるセルロース繊維とも呼ばれ、高結晶性で高配向性であり、湿潤時における初期ヤング率、強度の高いものである。例えば、レンチング社(Lenzing AG;オーストリア)から「レンチング・リヨセル(Lenzing・Lyocell)」なる商標で販売されている。表面層においては、上記した1種のセルロース繊維を用いたり、複数種のセルロース繊維を混綿して用いてもよい。本発明においては、木綿繊維あるいは溶剤紡糸セルロース繊維の少なくともいずれかを好ましく用いることができる。
【0014】
中間層のウェブに熱接着性繊維を含有させる理由としては、スパンレース不織布において、耐久性に優れた凹凸模様を付与することができるためである。また、後述する第2の製造方法においては、交絡積層体同士を部分的に熱接着して、積層一体化することができる。中間層のウェブは、熱接着性繊維のみからなるウェブであってもよいが、上記目的が達成する範囲内で、他の繊維を混綿してもよく、他の繊維の混綿量は70質量%以下であることが好ましい。他の繊維を混綿することにより、熱圧着による硬さを和らげることができる。
【0015】
中間層に混綿する他の繊維としては、例えば、セルロース繊維を混合することにより、表面より吸液した液体を中間層へ移行させるという導水効果が期待でき、また、中間層においても吸水性や保水性、保液性の良好な不織布を得ることができる。この場合、熱接着性繊維とセルロース繊維との混綿比率(熱接着性繊維/セルロース繊維)は、30/70〜70/30(質量%)であることが好ましい。熱接着性繊維の比率が30質量%未満となると、本発明の効果を十分に奏しにくくなり、一方、70質量%を超えると、セルロース繊維を混綿することの効果が奏されにくい。また、他の繊維として、太繊度の繊維やスパイラル捲縮を有する繊維を混綿することにより、柔軟で嵩高の不織布を得ることができる。
【0016】
熱接着性繊維としては、熱接着成分単独からなる単相形態の繊維であっても、熱接着成分が少なくとも繊維表面の一部を構成する芯鞘型複合形態や、サイドバイサイド型複合形態等の繊維であってよい。熱エンボス加工を施した際の、形態保持性や柔軟性、機械的強度等を考慮すると、芯鞘型複合形態の繊維が好ましい。熱接着成分は、ポリオレフィン系重合体からなることが好ましい。柔軟性が良好であるためである。ポリオレフィン系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、またはこれらのブレンド体等が挙げられる。また、芯鞘型複合形態の組合せとしては、芯/鞘の組合せとしては、ポリエステル系重合体/ポリオレフィン系重合体、ポリアミド系重合体/ポリオレフィン系重合体、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレンとプロピレンとの共重合体が挙げられる。
【0017】
本発明のスパンレース不織布は、表面層の構成繊維と中間層の構成繊維とが互いに交絡している。そして、中間層においては、熱エンボス加工により部分的に熱圧着された熱圧着部を有し、熱圧着部では、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化することにより繊維同士が熱接着している。熱圧着部の形態は、後述する表面層にも凹凸模様として付与されるため、美観や意匠性、不織布の用途等を考慮して、適宜選択すればよい。例えば、個々の熱圧着部の形状が、円形、楕円形、四角形、十字形、花形、星形等であって、これが千鳥状や幾何学模様状に散点して付与されるものが挙げられる。また、直線状の熱圧着部であって、ストライプ状や格子状、チェック柄等が付与されていてもよい。なお、熱圧着部の不織布全体に占める比率(圧着面積率)は、柔軟性や接着性を考慮して5〜50%程度が好ましい。
【0018】
本発明のスパンレース不織布は、表面層においては、少なく一方の面が熱エンボス加工による凹凸模様が付与されている。これは、熱エンボス加工による熱と圧力が付与された際、エンボス部(ロールの凸部)において中間層の熱接着性繊維は溶融または軟化し、構成繊維同士を接着するとともに圧着され、この圧着形態が表面層にも賦型される。表面層は、熱可塑性の繊維ではないため、熱の影響を受けず、熱エンボス加工による形態付与は、単に圧力の付与によるものであるが、中間層に熱により溶融または軟化する熱接着性繊維が存在していることにより、中間層の熱圧着部の形態を良好に表面層へ賦型することが可能となる。
【0019】
本発明のスパンレース不織布の目付は、一般的に30〜300g/m2程度とすればよく、用途に応じて適宜選択すればよい。また、表面層および中間層のそれぞれの目付については特に限定されないが、模様の付与性を考慮すると、中間層の目付量を1とした場合、模様が付与される側の表面層の目付量は4以下であることが好ましい。中間層に占める熱接着性繊維の比率にもよるが、模様が付与される側の表面層の目付量は4以下とすることで明瞭な模様を付与することができる。さらに、不織布の柔軟性を考慮すると、表面層(両面の合計)の目付量を1とした場合、中間層の目付量は4以下であることが好ましい。中間層に占める熱接着性繊維の比率にもよるが、中間層の目付量が4を超えると、得られるスパンレース不織布が硬くなる傾向となる。
【0020】
本発明のスパンレース不織布は、以下の方法によって得ることができる。
【0021】
まず、セルロース繊維を構成繊維とするウェブ(セルロース繊維ウェブ)と、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを準備し、セルロース繊維ウェブ/熱接着性繊維を含むウェブ/セルロース繊維ウェブの順に積層し、この積層物をメッシュ状支持体に担持する。また、メッシュ状支持体としては、不織布の用途に応じて任意のものを採用しうるが、例えば、不織布に開孔を付与する場合は、所定の目開きを持った粗目織物(15〜25メッシュ)からなるメッシュ状支持体を用いることもできる。なお、ここでメッシュとは、1インチ当たりの線の和を指し、例えば、25メッシュの粗目織物は、1インチ当たり25本の線が存在するものを指す。
【0022】
次いで、積層物側から高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化させる。この高圧水流は、孔径0.05〜2.0mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.05〜10mmで一列又は複数列配置されている噴射装置を用い、水を噴射孔から1.5〜40MPaの圧力で噴射して得られるものである。そうすると、高圧水流はウェブに衝突して、構成繊維に運動エネルギーを与える。この運動エネルギーにより、構成繊維は、相互に交絡する。
【0023】
次いで、交絡により一体化した積層体を、熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着する。熱エンボス装置により部分的に熱圧着することにより、エンボス部(ロールの凸部)に相当する部位の中間層の熱接着性繊維は溶融または軟化し、構成繊維同士を接着するとともに圧着され、この圧着形態が表面層にも賦型され、この熱エンボス加工による圧着部が凹凸模様として表面層に付与されることとなる。熱エンボス装置としては、一対のエンボスロールからなるものであっても、また、エンボスロールと平滑ロールとからなるものであってもよい。一対のエンボスロールからなるものを用いた際には、不織布の表面層のいずれの表面にも凹凸模様が付与されることとなり、また、エンボスロールと平滑ロールとからなるものを用いた際には、一方の表面層に凹凸模様が付与されることになる。
【0024】
熱エンボス装置のロール表面温度は、熱接着成分が溶融または軟化する温度に設定すればよいが、線圧や処理速度に応じて、また、表面層のセルロース繊維の目付に応じて適宜設定すればよい。例えば、熱接着成分の融点(明確な融点がないものについては軟化点を融点とみなす。)をTmとした場合、(Tm−15)℃〜(Tm+10)℃の範囲とするとよい。
【0025】
また、本発明のスパンレース不織布は、以下の方法(第2の方法)によっても得ることができる。
すなわち、まず、セルロース繊維を構成繊維とするウェブ(セルロース繊維ウェブ)と、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを準備し、両者を積層する。積層した積層物(セルロース繊維ウェブ/熱接着性繊維を含むウェブ)をメッシュ状支持体に担持する。担持する際、メッシュ状支持体に接する側のウェブは特定するものではなく、いずれのウェブをメッシュ状支持体側としてもよい。また、用いるメッシュ状支持体としては、上記したとおりである。
【0026】
次いで、積層物側から高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化した交絡積層体を得る。高圧水流の詳細については、上記のとおりである。
【0027】
次いで、得られた交絡積層体2枚を、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブが対向するように積層し、該積層物を熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着する。熱エンボス装置により部分的に熱圧着することにより、エンボス部(ロールの凸部)に相当する部位の中間層の熱接着性繊維は溶融または軟化し、構成繊維同士を接着するとともに圧着され、この圧着形態が表面層にも賦型され、この熱エンボス加工による圧着部が凹凸模様として表面層に付与されることとなる。熱エンボス装置について、熱接着条件(ロール表面温度等)については、上記のとおりである。
【発明の効果】
【0028】
本発明のスパンレース不織布は、表面層はセルロース繊維を構成繊維とするウェブからなり、中間層は構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブからなる。そして、熱エンボス加工により、中間層においては、部分的に熱圧着された熱圧着部を有し、表面そうにおいては、熱エンボス加工による凹凸模様が付与されている。
【0029】
すなわち、表面層は、セルロース繊維によって構成されているため、吸水性や親水性を十分に保持し、熱可塑性でないため熱エンボス加工により硬化することなく、肌触りが良好である。一方、中間層は、熱接着性繊維を含むため、熱エンボス加工により熱変形しやすく良好に熱圧着部を形成することが可能となり、そして、この熱圧着の形態を表面層にも賦型することができ、表面層に明瞭な凹凸模様を付与することができる。
【0030】
また、中間層に熱圧着部が形成されているため、形態保持性にも優れたスパンレース不織布を得ることができる。
実施例
【0031】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
(1)目付(g/m2):縦10cm×横10cmの試料片を10点作成し、標準状態の各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m2)とした。
(2)嵩密度(g/cc):JIS L 1906により厚さを測定し、目付を厚さで除した値を嵩密度(g/cc)とした。
(3)引張強力(N/5cm幅):JIS L 1906に準じて測定した。試料長が20cm、試料幅が5cmの試料片を不織布のタテ方向およびヨコ方向について各10点を作成し、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で伸張し、最大荷重時の強さを測定し、その平均値を引張強力(N/5cm幅)とした。
(4)吸水高さ(mm/10分):JIS−L−1907 バイレック法に準じて測定した。なお、試料としては、試料長25cm、試料幅2.5cmのものを用いた。
【0032】
実施例1
熱接着性繊維として、鞘部にポリエチレン(融点130℃)、芯部にポリエチレンテレフタレート(融点260℃)を配した芯鞘型複合短繊維(ユニチカファイバー社製 品番<6080> 繊度2.2デシテックス、繊維長51mm)を準備した。また、セルロース繊維として、平均繊維長25mmの木綿繊維を準備した。
【0033】
熱接着性繊維と木綿繊維とを、質量比で(熱接着性繊維/木綿繊維)=50/50の比率で均一に混綿し、カード機に供給して、目付40g/m2の熱接着性繊維を含むウェブとした。
【0034】
一方、目付20g/m2の木綿繊維からなるウェブを作成した。
【0035】
木綿繊維からなるウェブ/熱接着性繊維を含むウェブ/木綿繊維からなるウェブの順に積層し、この積層物を移動する25メッシュのプラスチック製織物からなる支持体に担持し、積層物側より高圧水流を施した。高圧水流は、支持体の上方50mmに位置した孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで一列配置され、かつその列を三列備えた高圧水流噴射装置を用い、各々9.8MPa圧力で水を噴射したものである。次いで、一体化させた交絡積層体より、余剰の水分をマングルロールにて除去し、温度120℃の乾燥機で乾燥した。
【0036】
次いで、得られた交絡積層体をエンボスロールと平滑ロールからなる熱エンボス装置に通し、部分的に熱圧着した。エンボスロールは、斜め格子状の模様が付与されるものであり、圧着面積率は38%であった。また、熱エンボス加工の際の条件は、ロール表面温度を125℃、線圧323N/cmに設定した。
【0037】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が明瞭に付与されたものであり、中間層まで交絡および熱圧着により一体化した、層間剥離が生じないものであった。また、得られたスパンレース不織布の評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2
実施例1で用いた熱接着性繊維を含むウェブと木綿繊維からなるウェブとを積層し、この積層物を移動する25メッシュのプラスチック製織物からなる支持体に担持し、積層物側より高圧水流を施した。高圧水流は、支持体の上方50mmに位置した孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで一列配置され、かつその列を三列備えた高圧水流噴射装置を用い、各々3.92MPa圧力で水を噴射したものである。次いで、一体化させた交絡積層体より、余剰の水分をマングルロールにて除去し、温度120℃の乾燥機で乾燥した。
【0040】
次いで、得られた交絡積層体を2枚用意し、熱接着性繊維を含むウェブが対向するように積層し、該積層物をエンボスロールと平滑ロールからなる熱エンボス装置に通し、部分的に熱圧着した。熱エンボス加工の条件は、実施例1と同様にして行った。
【0041】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が明瞭に付与されたものであり、中間層まで交絡および熱圧着により一体化した、層間剥離が生じないものであった。また、得られたスパンレース不織布の評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
実施例2において、熱接着性繊維を含むウェブにおける混綿比率を(熱接着性繊維/木綿繊維)=70/30としたこと以外は、実施例2と同様にして本発明のスパンレース不織布を得た。
【0043】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が明瞭に付与されたものであり、中間層まで交絡および熱圧着により一体化した、層間剥離が生じないものであった。また、得られたスパンレース不織布の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
実施例2において、セルロース繊維として、木綿繊維に替えて溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製 商品名<リヨセル>単糸繊度1.7デシテックス、繊維長38mm)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてスパンレース不織布を得た。
【0045】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が明瞭に付与されたものであり、中間層まで交絡および熱圧着により一体化した、層間剥離が生じないものであった。また、得られたスパンレース不織布の評価結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
木綿繊維からなる目付80g/m2のウェブを用意し、このウェブを移動する25メッシュのプラスチック製織物からなる支持体に担持し、積層物側より高圧水流を施した。高圧水流は、支持体の上方50mmに位置した孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで一列配置され、かつその列を三列備えた高圧水流噴射装置を用い、各々3.92MPa圧力で水を噴射したものである。次いで、一体化させた交絡体より、余剰の水分をマングルロールにて除去し、温度120℃の乾燥機で乾燥した。
【0047】
次いで、得られた交絡体をエンボスロールと平滑ロールからなる熱エンボス装置に通し、部分的に熱圧着した。エンボスロールは、斜め格子状の模様が付与されるものであり、圧着面積率は3.8%であった。また、熱エンボス加工の際の条件は、ロール表面温度を125℃、線圧323N/cmに設定した。
【0048】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が押圧した跡がかろうじて残っているが、模様といえる程明瞭なものではなかった。
【0049】
比較例2
実施例1において、熱接着性繊維を含むウェブとして、セルロース繊維を混綿せずに実施例1で用いた熱接着性繊維のみを用いたウェブ(目付20g/m2)を用いたこと、木綿繊維からなるウェブとして目付30g/m2のものを用いたこと、高圧水流処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。
【0050】
得られた不織布は、片側表面に格子状の凹凸模様が明瞭に付与されたものであったが、セルロース繊維ウェブ(表面層)と中間層とが、十分に圧着されていない部分があり、一部に層間剥離の現象が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層は、セルロース繊維を構成繊維とするウェブからなり、中間層は、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブからなり、表面層の構成繊維と中間層の構成繊維とは互いに交絡しており、中間層においては、熱エンボス加工により部分的に熱圧着された熱圧着部を有し、熱圧着部では、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化することにより繊維同士を熱接着しており、表面層においては、少なくとも一方の面が熱エンボス加工による凹凸模様が付与されていることを特徴とする凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布。
【請求項2】
セルロース繊維が、木綿繊維あるいは溶剤紡糸セルロース繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布。
【請求項3】
熱接着性繊維の熱接着成分が、ポリオレフィン系重合体により構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布。
【請求項4】
中間層の構成繊維が、熱接着性繊維とセルロース繊維からなり、熱接着性繊維とセルロース繊維の混綿比率(熱接着性繊維/セルロース繊維)が質量比で30/70〜70/30であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布。
【請求項5】
セルロース繊維を構成繊維とするウェブと、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを、セルロース繊維を構成繊維とするウェブ/構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブ/セルロース繊維を構成繊維とするウェブの順に積層し、該積層物に高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化し、次いで、熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着することを特徴とする請求項1記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布の製造方法。
【請求項6】
セルロース繊維を構成繊維とするウェブと、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブとを積層し、該積層物に高圧水流を施し、ウェブ内の構成繊維同士を三次元的に交絡させるとともに、セルロース繊維を構成繊維とするウェブと熱接着性繊維を含むウェブとの構成繊維とを互いに交絡させて積層一体化した交絡積層体を得、次いで、得られた交絡積層体2枚を、構成繊維に熱接着性繊維を含むウェブが対向するように積層し、該積層物を熱エンボス装置に通して、熱接着性繊維の熱接着成分が溶融または軟化する温度で部分的に熱圧着することを特徴とする請求項1記載の凹凸模様が付与されてなるスパンレース不織布の製造方法。

【公開番号】特開2006−104629(P2006−104629A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295803(P2004−295803)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】