説明

凹凸著しい面にも吸着する真空吸着パッドと真空開閉弁

【課題】凹凸著しい面で汎用的に簡単に利用できる真空吸着パッドを提供すること。
【解決手段】開閉弁筒体の内側に密着され略中央に真空連通孔を穿設した薄膜構造の弁膜と、前記筒体の開口部に断面凹状の弾性体の筒体が密着され、該弾性体筒体内側底面には前記薄膜の真空連通孔に当接する弾性体台状平滑突部の弁座を設け、また前記弾性筒体の伸張により底部を移動させるための可動板と、前記弾性体筒体内側と真空生成装置とを連通する継ぎ手とが弾性筒体の底面部に設けられ形成された伸縮真空制御室と、前記可動板を弾性体筒体長手方向に、前記弁膜とは逆方向に動かすために可動板に接し設けられた接面検知作動杆とからなり、真空吸着パッドが対象物を吸着する場合の3つの状態遷移に対応した真空開閉弁付き真空吸着パッドとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深溝タイル等の凹凸著しい面にも吸着する真空吸着パッドと真空開閉弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から真空による吸着装置は種々物品の固定や運搬に用いられている。この吸着部にはカップ形状の接面吸着部の吸盤が汎用品として広く普及し、またフラット形状・楕円形状・ベローズ形状の吸着パッドは生産設備でも広く用いられている。
吸盤は押し付ける力を利用しカップ内の大気を排除し減圧を行い、その負圧により吸着力を得るものであるが、吸着パッドは接面シール内での負圧を維持し安定した吸着力を得るため、吸着パッドでは真空生成装置と連通配管を有するのが通常である。
【0003】
真空吸着における吸着力は接面面積とその真空到達圧により決まるが、平滑面でない限り接面においては吸盤や吸着パット先端の接触部で真空リークが生じるのが一般であり、真空リークにおいても真空圧が一定程度保てる様に真空リーク量を考慮した真空生成装置と排気流量を考慮した大きさの連通配管が必要である。
従って、平滑面では数十L/分程度の小量真空生成装置・小径配管で可能であったものが、凹凸面では数百L/分もの大量真空生成装置・大径配管を必要とし、装置は大型化、多エネルギー消費でコスト高な設備となっている。
【0004】
このため、吸盤・吸着パッドにおいて接面真空リークを最小化するための種々発明が行われてきた。
特開2007−205562号広報・特開2009−216111号広報においては粗面吸着を可能とし安定するための接面シール素材と構造が開示された。
実開平07−001327号広報・特開2006−105344号広報においては接面シール形状の多重構造が開示された。
実開平04−029585号広報・特開平08−034587号広報においては吸着パッドを真空箱の接面側に多数配列し真空リークの閉塞弁を設けることが開示した。
実開平05−030338号広報・特開2004−082255号広報では閉塞弁の制御に関し開示された。
【0005】
前記開示された発明は、吸盤では或る程度の凹凸粗面への吸着を目的としたもので、また真空吸着パッドでのタイル吸着は工場環境でのものである。大型、多エネルギー消費、高コスト、低運用性の理由から工場外の特定用途に限られ、汎用的に利用できるものは少ない。
尚、5mm程度のタイル深目地等の凹凸著しい面では粗面や一般凹凸面に比べ更に技術的に難しく、被吸着面の目地や形状に合わせた専用真空吸着パッドや真空リーク量を大幅に上回る数百L/分以上の大量真空発生装置等で更にコストも嵩むため、現実的には人手対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−205562号広報
【0007】
【特許文献2】特開2009−216111号広報
【0008】
【特許文献3】実開平07−001327号広報
【0009】
【特許文献4】特開2006−105344号広報
【0010】
【特許文献5】実開平04−029585号広報
【0011】
【特許文献6】特開平08−034587号広報
【0012】
【特許文献7】実開平05−030338号広報
【0013】
【特許文献8】特開2004−082255号広報
【0014】
【特許文献9】特開平11−042583号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
物の固定や運搬において吸盤や真空吸着パッドは広く普及している。平滑面と同様に凹凸面にも吸着したいとの要望は大きいが、真空リークの技術的課題をカバーするためには装置や運用のコストが大きい理由から普及していないとの課題がある。
コスト高には多数の吸着パッド、各吸着パッドの真空リークを防ぐための弁、大容量真空生成装置、多くの配管があり、ランニングコストも大きい。
また、弁の作用は、パッドシール面に被吸着物がない場合には気圧差を利用し真空リークを閉塞し、パッドシール面に被吸着物がある場合には真空連通するもので、簡易的には逆止弁を利用するのが一般である。
即ち、弁膜側を大気とし弁座側を真空とする弁構造で、真空リーク時には大気流により弁膜を弁座に付勢し真空リークを閉塞し、非リーク時には弁膜は弁座を離れて真空連通している。このためには弁膜側と弁座側の差圧を見ることが必要で、逆止弁では常に微少真空を連通させ弁膜側と弁座側が同圧近くになった場合に機械力で弁膜と弁座が離面し真空連通が行われることになる。
従って、微少真空リークは必須であり、また同気圧になるには時間を要する課題があった。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、凹凸面にも吸着する汎用的で安価な吸着パッドとその開閉弁構造を開発した。
本発明の吸着パッドと開閉弁では、市販の高価な切り替え弁やその他部品を多用することなく、吸着パッドの非吸着時・着面時・吸着真空リーク時の3つの異なる状況に対応したシナリオを簡易な機械的仕組みで実現し真空リークも最小化している。
深目地タイル壁面等の著しい凹凸面でも数L/分程度の小流量真空生成装置で安定的に吸着し、小型化とコスト削減により運用性が高く省エネルぎ型の凹凸面対応の汎用吸着パッドの要望に対応できた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開閉弁筒体の内側に密着され略中央に真空連通孔を穿設した薄膜構造の弁膜と、
前記筒体の開口部に断面凹状の弾性体の筒体が密着され、該弾性体筒体内側底面には前記薄膜の真空連通孔に当接する弾性体台状平滑突部の弁座を設け、また前記弾性筒体の伸張により底部を移動させるための可動板と、前記弾性体筒体内側と真空生成装置とを連通する継ぎ手とが弾性筒体の底面部に設けられ形成された伸縮真空制御室と、
前記可動板を弾性体筒体長手方向に、前記弁膜とは逆方向に動かすために可動板に接し設けられた接面検知作動杆とを備え、
前記作動杆が前記可動板を前記弁膜と逆方向に付勢しない場合には、密着する前記開閉弁筒体内及び前記伸縮真空制御室内と大気との気圧差により前記弁膜は当接する前記台状平滑突部の弁座に付勢密着し前記真空連通孔は閉塞され、また前記作動杆が前記可動板を前記弁膜と逆方向に付勢した場合には前記伸縮真空制御室底面の伸張により前記弁座と前記弁膜との接面は解除され前記真空連通孔経由での真空連通が可能となり、またこの状況において前記開閉弁筒体の前記弁膜に大気圧が掛った場合には前記弁膜は流入する大気流に付勢され前記台状平滑突部の弁座に密着し真空リークを閉塞することを特徴とする。
【0018】
また、前記真空連通孔の周りの弁膜に等高の環状突部を周設し、前記真空連通孔と前記弁座との真空リーク閉塞性を高めたことを特徴とする。
【0019】
また、前記弁膜を、前記開閉弁筒体の先端からスプリング等の弾性体で弁座方向に釣支された錐体または球体の弁とし、前記弁座を、錐体または球体の弁が当接した場合に真空閉塞し易いメス型形状とし、メス型形状の底面から前記前記伸縮真空制御室の底面に連通する真空連通孔を設け、前記の機能を実現したことを特徴とする。
【0020】
また、前記可動板が付勢された場合の前記弁体と前記弁座間の乖離距離を調可能とし、異なる凹凸面での真空リーク閉塞性を調整するために前記接面検知作動杆を長さ調整可能とし、または該調整機能に加えて前記接面検知作動杆の一部をスプリング等の弾性体で形成し、調整容易にしたことを特徴とする。
【0021】
また、複数の小真空吸着室の集合体からなる真空吸着室を接面吸着シールとする真空吸着パッドにおいて前記の真空開閉弁の機能を小真空吸着室毎に実現し、
各小真空吸着室の弾性体底面薄膜の略中央には真空連通孔を穿設し弁膜を設けた前記接面真空吸着室と、
前記接面真空吸着室の外側底面外周部に開口部が密着され弾性体凹状容器で、凹状容器内側底面には前記薄膜の各真空連通孔に当接する位置に所定数の台状平滑突部からなる弁座を設け、凹状容器の外側底面には可動板を接着し、また可動板に容器内部に連通する真空継ぎ手を設けた伸縮真空制御室と、
前記接面真空吸着室が接面した場合にのみ前記弁座が前記弁膜と離面する方向に前記可動板を付勢する請求項4に記載の接面検知作動杆とから構成し、著しい凹凸壁面に吸着することを特徴とする。
【0022】
また、前記伸縮真空調整室の可動板1−1に設けられた真空継ぎ手と共に逆止弁を設ければ、真空吸着パッドの接面付勢時にパッドの小真空吸着室内及び前記伸縮真空調整室内の空気が排出され、負圧が高まるため、接面当初の吸着において強い吸着力を発揮することができる。
【0023】
また、前記接面真空吸着室の接面側シールの外周部に所定の高さ・幅の弾性体の外壁を周着し、真空吸着パッドの吸着沈み込み時の吸着シール高の一定均一化と、吸着姿勢の安定化と、接面摩擦力向上による前記接面真空吸着室の横滑りを防止と、吸着シール材の保護を図ったことを特徴とする。
【0024】
また、前記伸縮真空制御室の側周面は弾性体薄膜で形成されているが、蛇腹構造で前記可動板がスプリング等の弾性体で前記真空連通孔方向に常に付勢される構造で有っても良い。
【0025】
また、前記縮真空制御室の可動板に複数の真空連通継ぎ手を設け、複数の真空生成装置に配管し吸着でのリダンダンシーと吸着力を更に著しく高めても良い。
【0026】
また、前記接面真空吸着室内に弾性体で形成される複数の小真空吸着室は、接面形状が円形状、多角形状の何れであっても良い。
【0027】
また、前記真空開閉弁を市販の吸着パッドに装着することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の真空開閉弁の機能を用いた真空吸着パッドは、接面真空吸着室を複数の小真空吸着室に分割し、各小真空吸着室が非接面時、着面吸着時、吸着真空リーク時の各状態に応じて作動シナリオを簡易な真空開閉弁機構と伸縮真空制御室の作動で実現した。また、凹凸面状況に応じ接面検知作動杆を通じて真空開閉弁を調整可能とし、着面初期の吸着力を向上の改善も行った。
この接面状況に応じ状態遷移を行う真空吸着パッドは複数真空吸着室に分割した吸着パッドのみならず、単体真空吸着室の吸着パッドにおいても作動する。
本発明により、著しい凹凸面にも吸着する小型、省エネルギー、低コストで運用性に優れる汎用利用の吸着パッドが実現できた。
本真空開閉弁の構造は汎用的であり、従来の工場設備等でも利用できる。
【0029】
従来、多数の吸盤が真空箱に設けられ、各吸盤毎に真空リークを閉塞する弁体を有するものは多く開示されている(特許文献6、9)。また、吸着パッドへの真空吸引開始を手動で行うもの(特許文献5、8)、吸着パッドの接面を自動感知し真空吸引を行うもの(特許文献7)は各々開示されているが、凹凸面吸着においてはこれ等の機能が吸着の状態に応じて総合的に働かなければならない。例えば、真空リークを閉塞する弁体だけでは、その構造から当初の真空流量が絞られるため初期吸着に時間がかかる、真空リークの流量が多い場合には真空流量の絞りが継続するので吸着力が得られない場合がある等の課題に、本発明は対応している。
【0030】
また、真空リークの多い凹凸面では、数L/分程度の小流量真空生成装置では、吸着初期の真空圧が高まらず同時に吸着シール材の反力が出るため吸着が困難であり、真空生成装置は大型化していた。接面真空吸着室の小真空吸着室への小区分けによるシーリングの改善は真空吸着室毎の吸着性を高め、適用真空生成装置の小型化に役立った。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】請求項5または6を説明するための図である。
【図1−2】図1−1の底面図である。
【図1−3】図1−1の側面図である。
【図1−4】図1−1の平面図である。
【図1−5】図1−4のA−A断面である。
【図2−1】接面真空吸着室形状を枡形状とした場合の斜視図である。
【図3−1】請求項1の真空開閉弁機能を単真空吸着室に実装した図である。
【図3−2】図3−1の側面図である。
【図3−3】図3−1の平面図である。
【図3−4】図3−3のB−B断面である。
【図4−1】請求項3を説明するための図である。
【図4−2】図4−1の側面図である。
【図4−3】図4−1の平面図である。
【図4−4】図4−3のC−C断面である。
【図5−1】市販吸着パッドに請求項3の真空開閉弁を装着した図である。
【図5−2】図5−1の側面図である。
【図5−3】図5−1の平面図である。
【図5−4】図5−3のD−D断面である。
【図6−1】請求項1または2を説明するための図である。
【図6−2】図6−1の側面図である。
【図6−3】図6−1の平面図である。
【図6−4】図6−3のE−E断面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
真空吸着パッドの構造とその機能中心の真空開閉弁に関し実施例により説明する。
【実施例1】
【0033】
図6−1から図6−4は請求項1または2に関する実施例1を説明するものである。
図6−1は斜視図、図6−2は側面図、図6−3は平面図であり、図6−4は図6−3のE−E断面図である。図6−4に基づき説明を行う。
【0034】
真空開閉弁機構筒6−1−1内側には略中心に孔を周回して環状突部6−1−4を備える真空連通孔6−1−3が穿設され、弾性体薄膜から形成された弁膜6−1−2が張着され、前記真空開閉弁機構筒の開口部には側周面が弾性体から形成された凹容器状の伸縮真空制御室6−2−1が凹部上端面を前記開口部に密着し固設される。
前記伸縮真空制御室6−2−1の凹部底面内側には前記真空連通孔6−1−3の前記環状突部6−1−4を蔽い当接して台状突部(弁座)6−2−2が形成されている。前記伸縮真空制御室6−2−1の凹部底面外側には可動板6−4が密着し設けられる。
また、前記可動板6−4には中心からずれ前記台状突部(弁座)6−2−2に重ならない位置に真空生成装置へ真空連通する継ぎ手が螺合され、前記伸縮真空制御室6−2−1内部へ真空連通しており、また前記可動板6−4の周端に螺合する接面検知作動杆6−6が設けられ、真空開閉弁機構筒6−1−1と逆方向に付勢された場合には前記伸縮真空制御室6−2−1の側周面の弾性体薄膜を伸張し前記真空連通孔の周囲の弁膜6−1−2と前記台状突部(弁座)6−2−2を乖離させ前記真空開閉弁機構筒6−1−1の前記伸縮真空制御室と逆方向の開口部へ真空連通する。
また前記可動板6−4への付勢がなくなった場合には前記伸縮真空制御室6−2−1の側周面の弾性体薄膜は縮退し前記真空連通孔の周囲の弁膜6−1−2と前記台状突部(弁座)6−2−2とを密着させ前記開口部へ真空連通を閉塞する作用をなしている。
【0035】
尚、本図では、前記真空連通孔6−1−3の周囲の薄膜と真空連通孔を周回する環状突部6−1−4で弁膜を構成したが、前記真空連通孔6−1−3の周囲の薄膜だけで弁膜を構成し、前記台状突部(弁座)6−2−2に当接させ真空閉塞を行っても良い。
【実施例2】
【0036】
図4−1から図4−4は請求項3または4を説明するためのものである。
【0037】
図4−2において、真空開閉弁機構筒4−1、伸縮真空制御室4−2、可動板4−4、接面検知作動杆4−6、固定押さえ部4−1−1から形成されている。固定押さえ部4−1−1は真空開閉弁機構筒4−1の上部分と密着した縮真空制御室の下部分を支持する固定部であり、可動板4−4は伸縮真空制御室4−2の上端面に密着され、可動板4−4には接面方向に接面検知作動杆4−6が固定押さえ部4−1−1を遊貫し設けられている。
【0038】
図4−3のC−C断面の図4−4により機能構造を説明する。
真空開閉弁機構筒4−1には、実施例1の薄膜の弁に代えて弾性体球体からなる真空閉塞弁4−3−1を用いている。真空閉塞弁4−3−1に一端が固着されたスプリング等の引張り弾性体4−3−1であり、他端は真空開閉弁機構筒4−1の先端に懸装され真空開閉弁機構筒内に遊挿される。真空開閉弁機構筒4−1の接面逆方向には弾性体からなる伸縮真空制御室4−2が密着し設けられる。前記伸縮真空制御室4−2の側周面は弾性体薄膜で形成しても良いし、蛇腹状の真空開閉弁機構筒方向へ付勢力を持つ弾性体で形成しても良い。前記伸縮真空制御室4−2には前記のオス型の真空閉塞弁4−3−1が真空で引かれ密接した場合に真空リークが生じない様に同形メス型形状に形成された真空制御弁座4−2−1を設け、また弁座底部から接面逆方向に連通する真空連通孔4−2−2を弾性体で形成し、前記真空連通孔4−2−2の先端面には可動板4−4を密着させて真空生成装置に連通する真空継ぎ手を設ける。
【0039】
実施例2は、前記真空開閉弁機構筒4−1に形成された真空閉塞弁4−3−1が実施例1での真空連通孔の周囲の弁膜の代わりとして、また前記伸縮真空制御室4−2に形成された真空制御弁座4−2−1は伸縮真空制御室に設けられた台状突部の弁座の代わりとして作用し、可動板4−4の付勢動作に伴い同じ機能を実現している。
【0040】
また、前記接面検知作動杆4−6と前記可動板4−4との間を接面検知作動杆調整ネジ4−4−1で高さ調整可能としても良いし、前記接面検知作動杆の一部に接面検知作動杆調整スプリング4−7などの様に弾性体を設け、その弾性により調整する仕組みにしても良い。
【実施例3】
【0041】
図5−1から図5−4は実施例2の請求項3の真空開閉弁を市販吸着パッドへ適用した場合を図示したものであり、装着形態を示している。
図に示すベローズ型吸着パッドのみならず、フラット型、楕円形等のあらゆるパッドに適用できる。
【実施例4】
【0042】
図1−1から図1−5は請求項5または6を説明するためのものである。
図1−1は斜視図、図1−2は底面図である。接面吸着する接面真空吸着室1−10−3は小真空吸着室の集合体であり、図1−1では接面形状はハニカム状の隣り合った小真空吸着室群として弾性体で形成されている。各小真空吸着室略中央の底面の薄膜には真空連通孔1−10−4が穿設されている。図1−3の側面図、図1−5のA−A断面図に示すように、前記真空連通孔1−10−4の接面と逆方向に、断面凹形状の器状に弾性体で形成された伸縮真空調整室1−10−1が、凹形状の上部周端面を前記接面真空吸着室の裏面の外周端面と密着し設けられている。
【0043】
前記伸縮真空調整室1−10−1には、前記真空連通孔1−10−4と当接することにより真空連通を閉塞するための台形突部1−10−2が、凹状容器の底面部内側には前記真空連通孔と当接する位置に弾性体で形成され、また凹状容器の底面部の外側には、図示しない真空生成装置に連通する継ぎ手1−11を穿設した可動板1−1が密着され、また前記伸縮真空調整室1−10−1の凹状容器の側周面は伸縮自在な薄膜で形成されているため、前記可動板1−1を前記真空連通孔1−10−4とは逆方向に付勢した場合には前記台形突部1−10−2の弁座と前記真空連通孔1−10−4の周囲の弁膜は離面し真空連通するが、付勢力がなくなった場合には前記伸縮真空調整室1−10−1の側周面の弾性戻り力により前記可動板1−1は前記真空連通孔1−10−4と当接し前記真空連通孔1−10−4の真空連通を閉塞することにより、真空開閉弁機構を構成している。
【0044】
前記接面真空吸着室の真空連通孔1−10−4とその周囲の弁膜、前記伸縮真空調整室の台形突部1−10−2と伸縮真空調整室の伸縮作用は、前記真空開閉弁機構の重要な要素であり、真空吸着パッドの3つの遷移状態に応じた作用を提供している。
【0045】
即ち、吸着における3つの状態遷移とは、
第1の状態では、前記伸縮真空調整室は継ぎ手経由で真空連通し真空吸着パッドは接面していない場合には、前記真空連通孔1−10−4が前記台形突部1−10−2に当接し、薄膜からなる前記弁膜は大気圧で付勢され前記台形突部の弁座に密着することで真空リークを閉塞している状態であり、
第2の状態として、外部物理力により真空吸着パッドが着面付勢された場合には、図1−5のA−A断面図に示す様に接面検知作動杆1−5が前記伸縮真空調整室の可動板1−1を接面とは逆方向に付勢し、可動板1−1の移動に伴い前記伸縮真空調整室の台形突部1−10−2の弁座は真空連通孔1−10−4周囲の弁膜と離面することになり真空閉塞を解放し真空連通孔を通じて前記接面真空吸着室へ真空連通し吸着することができるが、前記伸縮真空調整室が真空貯蓄槽の役割を果たすため、着面初期に瞬時に強力に吸着が可能となる。小真空吸着室が真空シーリング出来ず真空リークが有る場合には、前記真空連通孔1−10−4周囲の弁膜は流入大気の付勢力で前記台形突部1−10−2の弁座に押し付けられ真空閉塞された状況となるため、真空吸着パッドの吸着剥がれとなる前記伸縮真空調整室の全面的な真空リークは避けられる。
第3の状態として、真空吸着パッドが吸着中には、吸着力により前記接面検知作動杆1−5と前記可動板1−1の接面逆方向への付勢は継続し、前記台形突部1−10−2の弁座と真空連通孔1−10−4とは離面した状況を継続するが、前記伸縮真空調整室の周側面弾性体の伸張戻り力、可動板1−1に掛る気圧差から生じる接面方向の押し付け力、接面シール材の反力等による力のバランスにより、可動板1−1の位置は、前記台形突部1−10−2と真空連通孔1−10−4との乖離距離が若干縮小する。
この吸着中の状況において、或る小真空吸着室で真空リークした場合にも流入する大気の付勢力により該当小真空吸着室の真空連通孔1−10−4周囲の弁膜は前記台形突部1−10−2の弁座に密接され前記伸縮真空調整室1−10−1の真空リークを閉塞する。外部付勢力がなく吸着パッドの吸着力と各種真空シーリング材の接面反力のバランスにより可動板1−1が若干接面側に移動し、台形突部1−10−2の弁座と真空連通孔1−10−4周囲の弁膜との乖離距離が縮小していることが閉塞を一層容易にしているが、真空リークが生じた場合には乖離距離は更に縮小する方向に働くことが真空リークの早期閉塞に優位に働いている。
本発明では前記3つの異なる状態に応じて真空リークを極小化する開閉弁機構と吸着パッドを簡易な機械構造で実現したことを特徴する。
【0046】
また、前記伸縮真空調整室の可動板1−1に設けられた真空継ぎ手と共に逆止弁を設ければ、真空吸着パッドの接面付勢時にパッドの小真空吸着室内及び前記伸縮真空調整室内の空気が排出され、負圧が高まるため、接面当初の吸着において強い吸着力を発揮することができる。
【0047】
図1−5断面図に図示される横滑りを防止部1−6は、接面吸着している場合に真空吸着パッドに掛る横滑り力を防止する機構である。
図ではハニカム形状の小真空吸着室からなる接面真空吸着室は二重のシーリング外壁により構成されている。内側の外壁と外側の外壁の間には周回する凹状の溝が設けられ、この溝に固定押さえ板2、1−10−5が挿設され、接面真空吸着室材1−10−3と接面真空吸着室材1−10−1とを固定押さえ板1−2と固定押さえ板2とで挟持し螺合している。横滑り防止部1−6を固定押さえ板2、1−10−5の接面側に、吸着パッドが接面した場合のシール材の過圧縮防止と接面との横滑り防止を図るために、ゴム・エラストマー等で摩擦係数の高い弾性体で形成され接着されている。
【実施例5】
【0048】
図2−1は実施例5を説明するためのものである。
実施例4と構造的に大きな変更はなく、図示する様に前記接面真空吸着室2−1−1の接面形状は枡目状とし、底面薄膜に真空連通孔2−1−2が穿設されたものであり、接面形状が異なっても構成可能なことを例示したものである。また小真空吸着室の接面形状は円形や多角形であっても構わない。
【実施例6】
【0049】
図3−1から図3−4は実施例6を説明するためのものである。
実施例6は単真空室からなる真空吸着パッドにおける真空開閉弁機構を簡易に実現したものを図示したものである。
【0050】
図3−4のB−B断面図において、接面真空吸着室3−1が単真空吸着室から形成され、従って伸縮真空制御室3−3の真空連通孔3−1−1方向に設けられる台状突部3−3−1も1つから構成されることを除いては、実施例1と同じである。
尚、接面シール外壁が二重の例、横滑り防止部を設けた例の図示は省略した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
磁気などが利用できない物品への吸着運搬・固定に真空吸着パッドは広く使われているが、粗面や凹凸面では真空リークが大きく吸着が不安定となる等の課題があった。
また、真空リークに対応するには大流量真空発生装置を必要とし、装置の大型化・コスト高・運用性の低下などの課題があった。
特に著しい凹凸面への吸着は困難であった。このため運搬は人手により行われ、特許文献7に見られる様な利用においては大容量真空発生装置を搭載利用するため、足場が狭くなり作業性が良くない、エネルギー効率に悪く高コストであった。
著しい凹凸面であっても面毎の真空吸着の状態に合わせた吸着を吸着パッドが自体が制御し真空リークを最小化することにより可能であり、真空発生源の小型化、運用性の向上とランニングコストを含むコストの削減が図れる。これにより吸着パッドの活用拡がり作業性も向上するものと考えられる。
本発明の真空吸着パッドは、著しい凹凸面への吸着可能性の追求を通じて従来の単機能吸着パッドを多機能化し、安定性と利用性を高め、使用エネルギーの削減と低コスト化を図ったものである。
【符号の説明】
【0052】
1―1 可動板
1−2 固定押さえ板
1−5 接面検知作動杆
1−6 横滑りを防止部
1−7 真空生成装置連通の真空継ぎ手
1−10−1 伸縮真空制御室
1−10−2 台状突部
1−10−3 ハニカム形状の小真空吸着室からなる接面真空吸着室
1−10−4 接面真空吸着室の真空連通孔
1−10−5 固定押さえ板2
1−11 排気用逆止弁
2−1−1 枡目形状の小真空吸着室なる接面真空吸着室
2−1−2 接面真空吸着室の真空連通孔
2−7 横滑りを防止部
3−1 単真空室なる接面真空吸着室
3−1−1 接面真空吸着室の真空連通孔
3−2 固定押さえ板
3−3 伸縮真空制御室
3−3−1 台状突部(弁座)
3−4 可動板
3−5 真空生成装置連通の真空継ぎ手
3−6 接面検知作動杆
4−1 真空開閉弁機構筒
4−1−1 固定押さえ部
4−2 伸縮真空制御室
4−2−1 真空制御弁座
4−2−2 真空連通孔
4−3−1 引張り弾性体
4−3−2 真空閉塞弁
4−4 可動板
4−4−1 接面検知作動杆調整ネジ
4−5 真空生成装置連通の真空継ぎ手
4−6 接面検知作動杆
4−7 接面検知作動杆調整スプリング
5−1−1 真空生成装置連通の真空継ぎ手
5−1−2 可動板
5−1−3 固定押さえ板
5−1−4 伸縮真空制御室
5−1−5 接面検知作動杆
5−1−6 真空制御弁座
5−1−7 真空引き口
5−1−8 引張りスプリング
5−1−9 真空閉塞ベアリング
5−2 市販吸着パッド
6−1−1 真空開閉弁機構筒
6−1−2 弁膜
6−1−3 真空連通孔
6−1−4 環状突部
6−2−1 伸縮真空制御室
6−2−1 伸縮真空制御室
6−2−2 台状突部(弁座)
6−4 可動板
6−5 継ぎ手
6−6 接面検知作動杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉弁筒体の内側に密着され略中央に真空連通孔を穿設した薄膜構造の弁膜と、
前記筒体の開口部に断面凹状の弾性体の筒体が密着され、該弾性体筒体内側底面には前記薄膜の真空連通孔に当接する弾性体台状平滑突部の弁座を設け、また前記弾性筒体の伸張により底部を移動させるための可動板と、前記弾性体筒体内側と真空生成装置とを連通する継ぎ手とが弾性筒体の底面部に設けられ形成された伸縮真空制御室と、
前記可動板を弾性体筒体長手方向に、前記弁膜とは逆方向に動かすために可動板に接し設けられた接面検知作動杆とからなり、
前記作動杆が前記可動板を前記弁膜と逆方向に付勢しない場合には、密着する前記開閉弁筒体内及び前記伸縮真空制御室内と大気との気圧差により前記弁膜は当接する前記台状平滑突部の弁座に付勢密着し前記真空連通孔は閉塞され、また前記作動杆が前記可動板を前記弁膜と逆方向に付勢した場合には前記伸縮真空制御室底面の伸張により前記弁座と前記弁膜との接面は解除され前記真空連通孔経由での真空連通が可能となり、またこの状況において前記開閉弁筒体の前記弁膜に大気圧が掛った場合には前記弁膜は流入する大気流に付勢され前記台状平滑突部の弁座に密着し真空リークを閉塞することを特徴とする真空開閉弁。
【請求項2】
前記真空開閉弁において、前記真空連通孔の周りの弁膜に等高の環状突部を周設し、前記真空連通孔と前記弁座との真空リーク閉塞性を高めたことを特徴とする請求項1に記載の真空開閉弁。
【請求項3】
前記弁膜を前記開閉弁筒体の先端からスプリング等の弾性体で弁座方向に釣支された錐体または球体の弁とし、前記弁座は錐体または球体の弁が当接した場合に真空閉塞し易いメス型形状とし、メス型形状の底面から前記前記伸縮真空制御室の底面に連通する真空連通孔を設け、前記の機能を実現したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空開閉弁。
【請求項4】
前記可動板が付勢された場合の前記弁体と前記弁座間の乖離距離を調可能とし、異なる凹凸面での真空リーク閉塞性を調整するために前記接面検知作動杆を長さ調整可能とし、または該調整機能に加えて前記接面検知作動杆の一部をスプリング等の弾性体で形成し、調整容易にしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の真空開閉弁。
【請求項5】
複数の小真空吸着室の集合体からなる真空吸着室を接面吸着シールとする真空吸着パッドにおいて請求項1に記載の真空開閉弁の機能を小真空吸着室毎に実現し、
各小真空吸着室の弾性体底面薄膜の略中央には真空連通孔を穿設し弁膜を設けた前記接面真空吸着室と、
前記接面真空吸着室の外側底面外周部に開口部が密着され弾性体凹状容器で、凹状容器内側底面には前記薄膜の各真空連通孔に当接する位置に所定数の台状平滑突部からなる弁座を設け、凹状容器の外側底面には可動板を接着し、また可動板に容器内部に連通する真空継ぎ手を設けた伸縮真空制御室と、
前記接面真空吸着室が接面した場合にのみ前記弁座が前記弁膜と離面する方向に前記可動板を付勢する請求項4に記載の接面検知作動杆とから構成し、著しい凹凸壁面に吸着することを特徴とする真空吸着パッド。
【請求項6】
前記接面真空吸着室の接面側シールの外周部に所定の高さ・幅の弾性体の外壁を周着し、真空吸着パッドの吸着沈み込み時の吸着シール高の一定均一化と、吸着姿勢の安定化と、接面摩擦力向上による前記接面真空吸着室の横滑りを防止と、吸着シール材の保護を図ったことを特徴とする請求項5に記載の真空吸着パッド。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2−1】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【公開番号】特開2011−110674(P2011−110674A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270889(P2009−270889)
【出願日】平成21年11月29日(2009.11.29)
【出願人】(503051224)
【Fターム(参考)】