説明

出荷時照合システムおよび方法

【課題】現品照合作業を自動的に行い、製品の誤出荷を確実になくすことができる出荷時照合システムおよび方法を提供することを目的とする。
【解決手段】製品ラベルに印字した、ラベル表示項目を反映した2次元バーコードを読むバーコードリーダと、物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部と、データ処理が行われた現品データを記憶するための出荷現品データベースと、前記バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される物流管理システムとを備え、出荷時に前記バーコードリーダで読み取ったラベル表示項目と、前記出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製品の出荷作業における現品識別管理及び現品情報の活用に関するものであり、特に、現品に貼付する製品ラベルの現品情報を出荷指示データと照合することで製品の誤出荷を防止する出荷時照合システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製品出荷作業における現品識別チェックは、紙に打ち出した出荷指示書と現品に貼付されている製品ラベル記載項目(例えば、現品番号、需要家、規格、サイズ、および重量の5項目)とを照合することで、出荷対象材の現品表示とデータベース内の現品情報を識別し、出荷する現品が正しいものであるか否かを判断していた。
【0003】
また、1次元バーコードに、現品番号の情報のみを入力し、出荷照合時、現品番号のみについて、バーコードをバーコードリーダで読み取り、事前に、出荷管理をしているホストコンピュータから受信した出荷指示書に書かれているのと同様の現品番号とを比較照合して管理していた。なお、その他の項目については、バーコードに入力できなかったために、人により照合していた。
【0004】
さらに、例えば、特許文献1または特許文献2には、バーコードや塗装、刻印などに代えて、金属材料や金属製品等の管理を、ICタグを用いて、効率的にかつ容易に管理する情報処理技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−296679号公報
【特許文献2】特開2005−135302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、注文後に製造されて出荷までにおける工程では、注文後に予定した通りに製造できず、製品情報が変更されることになる。このような場合に、現品番号は変更無いが、他の項目である、需要家、規格、サイズ、重量などが変更になっている場合がある。
【0006】
たとえば、1次元バーコードを用いた従来の技術では、現品番号のみをバーコード表示しているために、バーコードは変更されないが、人が照合している他の項目(需要家、規格、サイズ、重量など)が変更になることとなる。このような場合に、バーコードを用いて自動照合する現品番号は一致しているが、人が照合する項目が異なっていることになるので、希に、照合の見落としが発生してしまい、間違って出荷してしまうといった問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術では、情報の記憶容量の大きいICタグを使用しているが、貼り付け対象の鉄鋼製品の形状に依存しないタグを提案しているものであって、現品表示項目と出荷管理をしているホストコンピュータにあるデータベースの現品情報とを照合する技術ではない。
【0008】
さらに、特許文献2に開示された技術でも、ICタグを使用しているが、所内物流へのICタグの適用を目指すものであり、出荷時の照合管理に適用するものではない。
【0009】
上述した従来技術の問題点をまとめると、以下のようになる。
・ 出荷指示製品の管理用コンピュータのデータベース内の情報は、出荷指示書と呼ばれる紙で出力されるので、現品貼付(現品表示)の項目との照合は人手に頼らざるを得ず、その結果、照合ミスや照合漏れなどのヒューマンエラーの発生を全くなくすことができない。
・ 現品表示項目とデータベース内現品情報との照合項目は、現品番号、需要家、規格、製品寸法、製品重量といった5項目におよび、人による照合作業の負荷が大きい。
【0010】
このように照合が正確にできず、誤って出荷する誤出荷は、「異材混入」と称され、会社内の管理体制や需要家との信頼関係に問題を及ぼすこととなる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、現品照合作業を自動的に行い、製品の誤出荷を確実になくすことができる出荷時照合システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合システムであって、製品ラベルに印字した、ラベル表示項目を反映した2次元バーコードを読むバーコードリーダと、物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部と、データ処理が行われた現品データを記憶するための出荷現品データベースと、前記バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される物流管理システムとを備え、出荷時に前記バーコードリーダで読み取ったラベル表示項目と、前記出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合システムである。
【0013】
また本発明の請求項2に係る発明は、鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合システムであって、製品に付設したICタグに記憶した、ラベル表示項目を読むICタグリーダと、物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部と、データ処理が行われたデータを記憶するための出荷現品データベースと、前記バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される物流管理システムとを備え、出荷時に前記ICタグリーダで読み取ったラベル表示項目と、前記出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合システムである。
【0014】
また本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の出荷時照合システムにおいて、前記ラベル表示項目は、現品番号、需要家、規格、製品寸法、および製品重量のいずれかまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする出荷時照合システムである。
【0015】
また本発明の請求項4に係る発明は、鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合方法であって、製品ラベルにラベル表示項目を反映した2次元バーコードを印字し、出荷時に印字した2次元バーコードからラベル表示項目を読み取り、読み取ったラベル表示項目と、出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合方法である。
【0016】
また本発明の請求項5に係る発明は、鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合方法であって、製品表面にラベル表示項目を反映したICタグを付設し、出荷時に付設したICタグからラベル表示項目を読み取り、読み取ったラベル表示項目と、出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合方法である。
【0017】
さらに本発明の請求項6に係る発明は、請求項3または請求項4に記載の出荷時照合方法において、前記ラベル表示項目は、現品番号、需要家、規格、製品寸法、および製品重量のいずれかまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする出荷時照合方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、情報記憶容量の大きい2次元バーコードやICタグに、現品表示項目を入力し、その2次元バーコードをバーコードリーダで、あるいはICタグをタグリーダで読込み、その情報と、出荷管理用のホストコンピュータから読み込んだ出荷指示情報とを比較して、照合するようにしたので、人によらない自動的な照合作業が出来るようになった。その結果、異材混入が無くすことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては、上記課題を解決し、出荷時の現品識別管理を行うために、2次元バーコードに、製品項目の5項目の情報を反映させることとした。そして、これらの5項目全てについて、出荷指示明細書の内容と現品に貼付されたラベルの2次元コードとを比較して、識別するようにした。また、出荷指示明細書は、出荷管理をしているホストコンピュータから電子データとして、バーコードリーダに入力して、2次元バーコードやICタグの情報と比較することで、識別の判断に人が関与することが無いようにした。
【0020】
以下に、図を用いて、本発明を実施するための最良の形態を説明する。先ず、図3は、本発明に係る出荷時照合システムにおいて使用するラベルの一例を示す図である。図中の左列、および中列は、「現品番号」、「規格」、「重量」、および「需要家向先」「サイズ」についてテキストでそれぞれ表示されている。
【0021】
そして、右列にバーコードを印字している。上下に4行印字されているが、最下行に位置するのが、本発明で使用する2次元バーコードの例である。なお、上の3行は、従来の1次元バーコードであり、従来は2番目のバーコードに現品番号を表示した例である。
【0022】
図1は、本発明のシステム構成例を示す図であり、図2は、本発明のシステムの動作フロー例を示す図である。図1中、10は出荷時照合システム、20は物流管理システム、21は演算処理部、22は出荷現品データベース、23は通信処理部、30はバーコードリーダ、31は演算部、32は記憶部、40は注文管理システム、および50は製造管理システムをそれぞれ表す。
【0023】
本発明に係る出荷時照合システム10の主たる構成は、図1に示すように物流管理システム20とバーコードを読むバーコードリーダ(ハンディターミナル)30とからなる。
【0024】
物流管理システム20は、物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部21と、データ処理が行われたデータを記憶するための出荷現品データベース22と、バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される。通信処理部23を介して、物流管理システム20とバーコードリーダ30は、例えば、携帯電話やLAN(Local Area Network)などを利用した無線通信や、あるいは電話回線、ネットワーク回線などの有線通信などの通信回線で接続されて、現品に関する情報データの入出力を相互に通信可能な状態となっている。
【0025】
また、物流管理システム(ホストコンピュータ)20は、注文管理システム40や製造管理システム50とも、電話回線やネットワークなどの通信回線で接続されて、注文データや製造製品データなどの出荷管理に係わるデータについて入出力可能なようになっている。物流管理システム20は、製品の納期や出荷先などの情報や、搬送トラックなどの情報に基づいて、出荷する製品ロットがまとまった段階で、それらのデータを抽出し、そのデータに基づいて、出荷担当者に出荷処理を行うように指示をする。
【0026】
出荷指示が届いた後の、処理フローについて、図2を用いて説明する。図2は、バーコードリーダであるハンディターミナルでの演算部31の演算処理フローを示したものである。
【0027】
出荷担当者は、出荷指示明細書が届くなど、識別の作業指示指令を受けると、バーコードリーダを起動させる(Step101)。なお、人により起動させなくとも、バーコードリーダが、作業指示指令を受信可能な状態として、通信を用いて物流管理システムから作業指示指令を出力し、その指令を受け付けることによって、識別作業を行うようにしてもよい。
【0028】
そして、識別作業を行う対象となる現品データを、物流管理システム(ホストコンピュータ)から入力する(Step102)。入力するデータは、現品データのそれぞれについて、「現品番号」「需要家向け先」「規格」「サイズ」「重量」の5項目であり、これらのデータは記憶部32に記憶される。例えば、表1に示すような項目データである。
【0029】
その後、現品それぞれについて、貼付されているラベルに印刷されている2次元バーコードをハンディターミナルであるバーコードリーダで、5項目の情報について読みこむ(Step103)。
【0030】
その読み込んだ現品の現品番号が、Step102で入力したリストの中に、存在するか否か、検索する。リストのなかに、現品番号が存在する場合は、リストから、現品番号に対応する残り4項目(「需要家向け先」「規格」「サイズ」「重量」)を読み込んで、各項目が一致しているか否か初号処理を行う(Step104)。
【0031】
照合した結果、バーコードリーダで読み込んだデータと、ホストコンピュータから入力したデータと一致していれば(Step105)、全ての現品についてまだ完了していなければ(Step106)、Step103に戻って、次の現品のラベルのデータを読み込む処理を、対象現品が完了するまで繰り返し、結果を物流管理システム(ホストコンピュータ)20に出力する(Step108)。図4は、項目データのラベル表示と現品データベースとの内容比較例を示す図である。この例は、コイルの場合での比較例であり、需要家と規格の内容が異なっている例を示している。
【0032】
照合結果が一致していなければ(Step105)、エラーメッセージを表示させ(Step107)、結果を物流管理システム(ホストコンピュータ)20に出力する(Step108)。
【0033】
物流管理システム(ホストコンピュータ)20は、識別対象となっている現品全てについて、正常な識別状況であれば、出荷可能であるので、運送状を印刷して、出荷することになる。一方、不一致となった場合には、その原因を調査し、一致させる作業をとることになる。
【0034】
なお、本実施形態は、1次元バーコードを用いたシステムからの移行が容易な2次元バーコードを用いて説明したが、ICタグおよびICタグリーダを用いても、同じように適用可能である。同様の作用効果が得ら、ICタグおよびICタグリーダを用いてもよいことは言うまでもない。また、2次元バーコードのラベル形態についても、図3に限定されるものでなく作業形態に合わせて適宜変更されるべきものである。
【0035】
以上説明したような本発明を用いることにより、人によらない自動的な照合作業が出来るようになり、異材混入という出荷でのトラブルを無くすことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のシステム構成例を示す図である。
【図2】本発明のシステムの動作フロー例を示す図である。
【図3】本発明に係る出荷時照合システムにおいて使用するラベルの一例を示す図である。
【図4】項目データのラベル表示と現品データベースとの内容比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 出荷時照合システム
20 物流管理システム
21 演算処理部
22 出荷現品データベース
23 通信処理部
30 バーコードリーダ
31 演算部
32 記憶部
40 注文管理システム
50 製造管理システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合システムであって、
製品ラベルに印字した、ラベル表示項目を反映した2次元バーコードを読むバーコードリーダと、
物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部と、データ処理が行われた現品データを記憶するための出荷現品データベースと、前記バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される物流管理システムとを備え、
出荷時に前記バーコードリーダで読み取ったラベル表示項目と、前記出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合システム。
【請求項2】
鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合システムであって、
製品に付設したICタグに記憶した、ラベル表示項目を読むICタグリーダと、
物流管理のためのデータ処理を行うための演算処理部と、データ処理が行われたデータを記憶するための出荷現品データベースと、前記バーコードリーダとの通信を行うための通信処理部23とで構成される物流管理システムとを備え、
出荷時に前記ICタグリーダで読み取ったラベル表示項目と、前記出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の出荷時照合システムにおいて、
前記ラベル表示項目は、現品番号、需要家、規格、製品寸法、および製品重量のいずれかまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする出荷時照合システム。
【請求項4】
鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合方法であって、
製品ラベルにラベル表示項目を反映した2次元バーコードを印字し、
出荷時に印字した2次元バーコードからラベル表示項目を読み取り、
読み取ったラベル表示項目と、出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合方法。
【請求項5】
鉄鋼製品の出荷時の照合作業を行なう出荷時照合方法であって、
製品表面にラベル表示項目を反映したICタグを付設し、
出荷時に付設したICタグからラベル表示項目を読み取り、
読み取ったラベル表示項目と、出荷現品データベース内に記憶した現品データとを照合することを特徴とする出荷時照合方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の出荷時照合方法において、
前記ラベル表示項目は、現品番号、需要家、規格、製品寸法、および製品重量のいずれかまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする出荷時照合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−247574(P2008−247574A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92725(P2007−92725)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】