説明

出荷管理システム

【課題】同一品種の複数の受注間で製品の融通を可能とし、必要に応じて出荷前に受注数量と一致させるための分割処理を施すことにより、受注数量を超える余分な出荷を防止することを可能とする出荷管理システムを提供する。
【解決手段】長尺フィルムを巻き取ったロールを収納する製品倉庫を管理するストッカ管理システムと連動して、長尺フィルムを出荷する出荷管理システムであって、
フィルムの受注情報を示す受注情報データベースと、工程情報を示す工程パターンデータと、生産実績データベースと、良品率データベースと、出荷情報データベースと、受注数量に対して生産された製品数量が足りない場合に、複数の受注間でしかも同一品種のロール間で製品数量を融通して受注数量を満たすプログラムを有する演算手段と、ロールを分割する場合に用いる分割装置と、を備えたことを特徴とする出荷管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールに巻かれた状態の長尺フィルムを効率よく出荷するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば上記長尺フィルムを反射防止フィルムを例として説明する。従来より、プラスチックフィルム、紙、金属箔等の柔軟性を有する長尺の基材をロール状に巻き付けた状態から巻き出し、巻取りを行う間に、印刷や塗工、フォトリソプロセス等の各種表面処理を行う技術が一般的に多用されてきた。そこで取り扱う柔軟で長尺の媒体をウェブと称し、ウェブを巻き出し搬送し、前記処理工程を経て最終的に巻き取る技術がウェブハンドリング技術として知られている。
【0003】
近年は、特に、光学機能性フィルム等の光学フィルムの製造において、前記ウェブハンドリング技術を駆使して、大量で安価な生産を可能としている。また、量産に際しては、光学フィルムの原反材料そのものに付着している異物欠陥や、製造工程中に生じる傷や異物付着といった欠陥が有り、それらの欠陥を検出する検査方法が各種提案されており、欠陥を有する箇所は除去されて品質が管理されている。
【0004】
図1は上記光学機能性フィルムの一例である液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面に貼られる反射防止フィルムの断面を示す図である。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。反射防止フィルムは、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される。
【0005】
図2に示すように反射防止フィルムの製造工程では、長さ数千メートル、幅1〜2メートルほどのロール状の長尺帯状のフィルム基材に対し、塗工、乾燥といった層形成処理が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−341104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射防止フィルムを製造する場合には、従来よりフィルム基材1のロールの長さは決まっているため、受注数量(例えばメートル:m)に応じて投入するロールの数も決定される。しかし、図3に示すように不良が発生した場合には不良部分のフィルムを断裁し、不良部分の除去を行う。この場合は1ロールの長さが短くなってしまうため、受注数量に対して生産数量が足りないといった事態が発生する。
【0008】
通常は上記事態を鑑みて、「投入数量=受注数量/想定される良品率」の形で余剰を持たせて投入がされるが、それでも生産数量が足りない場合は、追加ロールの投入や複数の受注で生産を行っていた同一品種のロールを使用するといった処置が行われる。
【0009】
また、1ロールの最低メートル数(以下、出荷可能ロール長)が決まっている受注もあり、不良部の除去等により1ロールの長さが短くなり出荷不可となった際には、該当ロールを他の受注に使用する場合もある。
【0010】
受注数量に対してわずかに数量が不足した際に、追加ロールの投入を行った場合には、受注数量を大きく超えてしまい、余分な数量を出荷してしまうことにもなる。これを回避するために、同一品種間で図4に示すように受注Aとして生産されたロール2とロール3を受注Bのロール5とロール6が出荷できない代わりに受注Aとして生産されたロール2とロール3を出荷Bとして出荷し、一方、出荷Aには上記ロール6を融通し、更にロール7を追加して出荷する場合といった方法を取る場合がある。この場合、ロールの入れ替えは人手での判断であり、どのロールの組み合わせが最適かの判断(最も受注数量に近く無駄が無いかの判断)は担当者の判断によるもので、無駄の多いことがある。
【0011】
そこで本発明は、反射防止フィルムの生産のように、1つの受注に対して1つの生産を行うという生産形態をとっている場合において、不良発生等の理由で当初の受注数量に対して、製品数量が足りないケースであっても、同一品種の複数の受注間で製品の融通を可能とし、また追加で必要な生産数量を把握することが可能で、更に、必要に応じて出荷前に受注数量と一致させるための分割処理を施すことにより、受注数量を超える余分な出荷を防止することを可能とする出荷管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明の請求項1に係る発明は、長尺フィルムを巻き取ったロールを収納する製品倉庫を管理するストッカ管理システムと連動して、長尺フィルムを出荷する出荷管理システムであって、
フィルムの受注情報を示す受注情報データベースと、
前記受注情報データベースに含まれる、受注されたフィルムが生産される工程情報を示す工程パターンデータと、
フィルムの生産進捗状況を工程パターンに示される工程情報によって管理する生産実績データベースと、
生産実績に応じてフィルムの品種単位で良品率を更新した良品率情報を管理する良品率データベースと、
生産実績情報データベースと良品率データベースから得られる出荷情報データベースと
前記受注情報データベースと出荷情報データベースに基づいて、受注数量に対して生産された製品数量が足りない場合に、前記受注情報データベースと出荷情報データベースに基づいて、複数の受注間でしかも同一品種のロール間で製品数量を融通して受注数量を満たすプログラムを有する演算手段と、
受注数量を満たすためにロールを分割する場合に用いる分割装置と、を備えたことを特徴とする出荷管理システムである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記演算手段は、前記受注情報データベースに基づいて出荷したい受注順に受注情報を並び替え、更に出荷情報データベースに基づいて出荷可能ロールを検索した後、出荷したいロール順に出荷可能ロールを並び替え、前記並び替えた受注に対して前記並び替えた出荷可能ロールを順番に割当てることを特徴とする請求項1に記載の出荷管理システムである。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、前記演算手段は、割当てられたロールの総数量長が受注数量長を超えた場合には、割当てられた最後のロールを分割して受注数量を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の出荷管理システムである。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、前記演算手段は、割当てられた最後のロールを分割した場合に、分割された残りのロールの数量が他の受注の最低出荷可能ロール長より短い場合は、分割しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出荷管理システムである。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、前記演算手段は、受注数量に対して出荷可能ロールを順番に割当てた合計数量が受注数量を満たせない場合は、出荷不足情報データベースに不足数量を書き込むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の出荷管理システムである。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、前記演算手段によって割当てられたロールの出庫指示をストッカ管理システムに行い、分割が必要な場合は分割装置に分割指示を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の出荷管理システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明による出荷管理システムによれば、当初の受注数量に対して、製品数量が足りない場合であっても、複数の受注間でしかも複数の同一の品種間の場合に、最も受注数量に近い最適な出荷ロールの組み合わせが自動で割り振られるため、製品の融通を可能とし、その結果、従来行われていた追加生産による生産の無駄を防ぐことが出来る。また、出荷直前において、最適な出荷ロールの組み合わせを自動で行い、受注数量に合わせたロールの分割処理が行われるため、受注数量を超えた無駄な出荷を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】反射防止フィルムの一例を断面で示す図。
【図2】反射防止フィルムの製造工程を示す図。
【図3】製造工程で不良が発生した場合の不良部分の断裁、除去を示す図。
【図4】受注間でロールを融通することを示す図。
【図5】本発明に係る出荷管理システムがストッカ及びストッカ管理システムと連動する様子を説明するための図。
【図6】本発明に係る出荷管理システムの全体データフローを示す図。
【図7】本発明に係る出荷情報更新処理のフローを説明するための図。
【図8】本発明に係る出荷ロール確定処理のフローを示す図。
【図9】本発明に係る出荷可能ロール割当処理のフローを示す図。
【図10】本発明に係る出庫指示、分割指示のフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る出荷管理システムを実施するための形態を説明する。
【0021】
図5は本発明に係る出荷管理システムがストッカ及びストッカ管理システムと連動する様子を説明するための図である。出荷管理システム、ストッカ管理システム、ストッカ(製品倉庫)は、ネットワークで接続され情報の授受が可能である。ここでいうストッカとは、製品を置くための複数の棚と、製品を棚から棚へ又は棚から製品受取・受渡口へ搬送するクレーンと、から成り立っている。上記出荷管理システム、ストッカ、ストッカ管理システムとの間で授受される情報を説明する。
(1)出荷管理システムから出荷指示をストッカ管理システムに出庫指示を通知する。
出庫指示は、出庫対象ロール番号及び出庫位置の情報を含んでいる。
(2)ストッカ管理システムはストッカ設備(クレーン)へ出庫指示を通知する。
ストッカ管理システムは製品の保管位置を管理している。
(3)ストッカ管理システムから指示を受けたストッカ設備(クレーン)は、指示された位置へ製品を搬送する。
(4)製品の出庫が完了したら、ストッカ設備はストッカ管理システムへその旨通知する(5)ストッカ管理システムは出庫完了実績を出荷管理システムへ通知する。
(6)分割装置への出庫が完了したら、出荷管理システムは指定長でのロール分割指示を
分割装置に通知する。
分割装置はロールに対する処理として以下の機能を持つ。
(イ)指定長でロールを断裁し分割する
(ロ)ストッカとのロールの受取/受渡しを行う
(ハ)分割したロールを製品受取口へ排出する
(7)指定長での分割完了後、出荷対象のロールは製品受取口に排出される。
また、分割完了の報告が出荷管理システムへ通知され、出荷対象外ロールを、ストッカへ再度入庫する指示が出荷管理システムから、分割装置へ出される。
【0022】
図6は、本発明に係る出荷管理システムの全体データフローを示す図である。図6における各データベース(以下、DB)は前提条件として、少なくとも以下のデータを管理しているものとする。
【0023】
受注情報DBは、受注番号単位のデータを管理するもので、受注番号、得意先、品種、受注日時、出荷予定日、出荷可能最低ロール長、工程パターン番号、出荷優先度、出荷残数量のデータを含むものである。尚、上記工程パターン番号とは、後述の工程パターンDB上の工程パターン番号である。出荷優先度とは、初期設定は1とし、優先的に出荷対象としたい場合は、2,3・・・と設定を変更し、優先度を上げていくものである。出荷残数量とは、受注数量と出荷済み数量の差(受注数量―出荷済み数量)であってマイナスは0とする。
【0024】
工程パターンDBは、工程パターン番号、工程順番、工程名称のデータを含むものである。
【0025】
生産実績DBは、ロール単位のデータを管理するもので、ロール番号、品種、処理工程、処理日時、投入数量、回収数量、不良区分のデータを含むものである。尚、上記ロール番号とは、各ロールに対して付けられたユニークな番号であり、不良区分とは、良品または不良品を区分するものである。
【0026】
良品率DBは、品種単位のデータを管理するもので、品種、処理工程、良品率のデータを含むもので、上記良品率とは製品投入数に対する良品回収数の割合、即ち、(良品回収数/製品投入数)を示すものである。
【0027】
出荷情報DBは、ロール単位のデータを管理するもので、ロール番号、品種、最終処理工程、工程順番、最終処理日時、不良区分、仕上予定数量、出荷割当受注番号、出荷済フラグのデータを含むものである。尚、出荷済フラグとは該当ロールが出荷済みの場合は1、未出荷で0とするものである。
【0028】
出荷不足情報DBは、受注番号単位のデータを管理するもので、受注番号、品種、不足数量を含むものである。
【0029】
図6における全体データフローを説明する。(a)受注が決定したら受注情報が入力され、受注情報DBにデータが書き込まれる。(b)受注情報に適切な工程パターンを登録する。すでに適切な工程パターンが工程パターンDB上に存在していれば、その工程パターン番号を使用し、存在していない場合は新規に作成する。
【0030】
工程パターンDBの一例を表1に示す。表1に示す工程パターンDBの場合はA0001の工程パターンは工程順番が1〜4まであり、各工程順番が処理A1、A2、A3及び検査工程となっている。同様にB0001の工程パターンは工程順番が1〜3まであり、各工程順番が処理B1、B2及び検査工程となっている。
【表1】

【0031】
(c)生産に応じて、生産実績DBにデータが登録される。オペレータによる手動入力でも、実績収集装置による自動入力でも構わない。実績収集装置とは、製品製造装置と必要な通信を行い、生産実績DBに必要なデータを自動収集するものである。
【0032】
(d)生産実績に応じて、良品率DBを更新する。各ロールの良品率は、良品率=回収数量/投入数量で算出され、DBに登録する良品率は、品種毎の特定期間の平均値、中央値等、統計値とする。
【0033】
(e)生産実績DBと良品率DBの情報から、出荷情報を管理する出荷情報DBを更新する。
【0034】
(f)受注情報DBから出荷予定ロールを確定すべき受注物件の優先順位を決定し、出荷情報DBから出荷ロールを選定する。また、受注数量に対して選定したロールの合計長が足りない場合は、出荷不足情報DBに登録する。
【0035】
(g)例えば処理用パソコン101によって出荷情報DBを参照することにより、受注毎に出荷用に割当られたロールを把握し、出荷作業を行う。また、出荷不足情報DBを参照することで、品種毎に追加必要な投入数を把握し、追加生産などを行う。
【0036】
(h)、(i)、(j)製品出荷時に「受注番号」を指示し、出荷ロール確定処理を行い、対象のロールに対して、後で述べる出庫指示及び分割指示を行う。
【0037】
図7は上記(e)出荷情報の更新処理(出荷情報更新処理)のフローを説明するための図である。「生産実績DB」102に登録されたロール番号と一致するロール番号が「出荷情報DB」に存在するかを検索する(S1)。存在する場合は(S2のYES)、該当ロールの最終処理工程と仕上予定数量を更新する(S3)。この更新処理はロールの処理が刻々進行しているために、「出荷情報DB」を最新のDBとする為である。ここで仕上予定数量=回収数量×該当品種の最終良品率を示す。一方、存在しない場合は(S2のNO)、生産実績のロール番号、品種、最終処理工程、仕上予定数量=回収数量×該当品種の最終良品率の情報を「出荷情報DBに追加する。
【0038】
図8に上記(f)出荷ロール確定処理のフローを示す。
【0039】
出荷ロール確定期間指定(ステップ(T2))
開始後(T1)、各々の受注に対して、出荷ロールを確定させる期間を指定する(T2)。例えば、出荷予定日が2011年1月1日〜1月7日までの受注物件に対して、出荷ロールを確定させる場合は、期間は2011年1月1日〜1月7日と指定する。この指定はオペレータにより行なわれても良いし、又は本日〜1週間後までといった設定が事前にされ、一定周期でこの「出荷ロール確定処理」が自動で実行されても良い。
【0040】
出荷対象受注情報検索(ステップ(T3))
ステップ(T2)で指定した期間内に出荷予定日が含まれている受注情報を受注情報DBから検索する(T3)。尚この際出荷ロールが確定している受注情報(出荷残数量=0)は対象から外す。この場合の検索結果例を表2に示す。表2に示される検索結果は、例えば上記のように出荷予定日が2011年1月1日〜1月7日までの受注物件に対して、検索結果を示すもので、該当する受注番号がA0001〜A0006の6個の受注情報が該当するものである。
【0041】
【表2】

【0042】
出荷割当受注番号クリア(ステップ(T4))
出荷対象受注情報検索(ステップ(T3))で検索した受注情報中に含まれる品種と一致するデータで且つ、出荷済みフラグが0(未出荷)となるロールが、「出荷情報DB」にあった場合、そのロール番号に対する出荷割当受注番号をクリアする(この場合、未出荷のロールは再度出荷対象の受注番号を割当る)(T4)。
【0043】
受注情報ソート(ステップ(T5))
ステップ(T3)で検索した受注情報を以下の優先順位に従ってソートする(T5)。
(1)出荷優先度が高いものを優先する。
(2)同一優先度のものでは、出荷予定日が早いものを優先する。
この場合のソート結果例―その1を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
次に、ロールのソート順Kを1とし(T6)、Kとロールの総ソート数Nを比較しK<Nの場合は((T7)のYES)、出荷ロール割当処理を開始し(T8)、次の出荷可能ロール検索を行う(T9)。
【0046】
出荷可能ロール検索(ステップ(T9))
ステップ(T5)でソートした受注情報(表3)の順番に従い、対象受注物件と同一品種のロール(出荷可能ロール)の在庫を出荷情報DBから検索する(T9)。尚、この際以下の条件に合致するものは対象から外す。
(1)すでに他の受注物件に割当済み(出荷割当受注番号にデータ有り)
(2)すでに出荷済み(出荷済みフラグ=1)
(3)該当受注物件の出荷可能ロール長より短い(出荷可能ロール長とは取り決められたロールの最小ロール長を指す)。
(4)不良区分が不良品
検索した出荷可能ロール例を表4に示す。表4に示される検索結果例は、表3に示される受注情報をソートした例での1番目にソートされた受注番号A0003の品種Cと同一品種である品種Cについて出荷可能ロールを検索した結果を示すものである。
【0047】
【表4】

【0048】
更に出荷可能ロールを検索した結果を示す上記表4から未だ製品として完成していないロール(即ち、工程順番の最後まで到達していないロール)ABC0007〜0009を出荷可能ロールから外し、最終的な出荷可能ロールを検索した結果例を表5に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
出荷可能ロールソート(ステップ(T10))
ステップ(T9)で検索した表5に示す出荷可能ロールを以下の優先順位に従ってソートする(T10)。
(1)仕上がり予定数量が少ないロールを優先
(2)同一数量の場合は、最終処理日が古い方を優先する(これは、長期保管品の品質面を考慮して、最終処理日が古い方を優先して出荷したいためである)。出荷可能ロールソート例−その1を表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
出荷可能ロール割当処理(ステップ(T11))
ステップ(T10)でソートしたロールの順番に従い、出荷可能ロール割当処理を行う(T11)。
【0053】
後で述べる出荷不足情報があった場合は、出荷不足情報DBに不足数量を記録し(T12)、出荷ロール割当処理を終了する(T13)。次にソート番号Kに1を加えステップ(T7)に移行する。
【0054】
ステップ(T7)で最後のソート番号Nまで処理した後(T7のNO)、直ちに終了する(T15)。
【0055】
ステップ(T11)の出荷可能ロール割当処理のフローを図9に示す。出荷可能ロール割当処理は以下に示す受注情報データベースと出荷情報データベースに基づいて、受注数量に対して生産された製品数量が足りない場合に、受注情報データベースと、出荷情報データベースから検索された出荷可能ロール情報に基づいて、複数の受注間でしかも同一品種のロール間で製品数量を融通して受注数量を満たすプログラムを有する演算手段によって行われる。
【0056】
説明の都合上、表3に示される受注情報ソート例―その1での受注番号A0003の受注数量5000m(出荷可能ロール長は1000m)に割当るロールを、出荷可能ロールソート例―その1の基づいて処理する場合を説明する。
【0057】
先ず、図9の割当処理開始(この場合、ロールのソート順は1〜Nとする(表6ではNは6))(D1)。先ずロールのソート順Lを1、割当済み数量Cを0とする(D2)。
【0058】
当初はロールのソート順LがNに達していなので(D3のYES)、次のステップ(D4)に移行する。
【0059】
上記図8に示される出荷予定ロール確定処理のフローのステップ(T10)でソートした出荷可能ロール(表6)の順番に従い、順次出荷可能ロールを受注番号に割当て行く(受注番号に対する出荷割当済み数量Cを積算していく)(D4)。先ず表6のロール番号ABC0006の仕上がり予定数量2000mが割当られ、この時点で出荷割当済み数量Cは2000mとなる。
【0060】
次に出荷割当済み数量Cが出荷残数量より少ない場合は(D5のNO)(現時点で受注数量、即ち出荷残数量は5000mであり、また割当済み数量が上記2000mであるので、ソート順に1を加えて2(D6)とし、再びステップ(D3)に移行し、(この場合は未だソート順LがNに達していないので)ソート順2のロール番号ABC0003の仕上げ予定数量2000mを割当済み数量に加える。その結果、この時点で割当済み数量は2000m+2000m=4000mとなるが、出荷残数量の5000mに達していないので、ソート順に1を加えて3(D6)とし、更にステップ(D3)に移行し、次のソート順3のロール番号ABC0005の仕上げ予定数量2500を割当済み数量に加える。この時点では、出荷割当済み数量Cが上記4000m+2500m=6500mであり、出荷残数量5000mを超えるため(D5のYES)、次のステップ(D7)に移行する。
【0061】
ステップ(D7)では出荷残数量と出荷割当済み数量Cを比較し、出荷割当済み数量Cと出荷算数量が同じ場合(D7のYES)には、直ちに終了する(D14)。例えば上記ソート順3のロール番号ABC0005の仕上げ予定数量が1000mの場合は出荷割当
済み数量Cと出荷算数量が同じになる。
【0062】
一方、上記のように出荷割当済み数量Cが6500mで、出荷残数量5000mを超えた場合には(D7のNO)、ステップ(D8)以降の分割処理に移行する。ステップ(D8)はロールを分割する処理である。即ち、対象受注番号(この場合はA0003)の出荷残数(5000m)を出荷割当済み数量Cが超えた場合は、ロールの分割を行い、余分な出荷が無いようにするため、ステップ(D8)に移行する。
【0063】
ステップ(D8)では、出荷対象となる分割数量V=出荷残数量−(C−1)が計算される。即ち表6のロール番号ABC0005の場合は出荷対象となる分割数量V(分割数量とは、分割して出荷ロールに割当られる数量を指す)は、5000m−4000m=1000mと計算される。従って分割された残りの数量R(出荷しないで分割して残しておく数量を指す)は、R=ロールの仕上り予定数量−V であり、この場合のRは 2500m−1000m=1500m となる。このようにして表7に示すように受注番号(この場合はA0003)の出荷残数の5000mには、ロール番号ABC0006の2000mと、ABC0003の2000mと、ABC0005を分割した一方のABC0005−1の1000mが割り当てられる。
【0064】
【表7】

【0065】
更に次のステップ(D9)では、出荷可能ロール長と分割数量Vを比較する(D9)。上記の場合は、ステップ(D8)で分割された数量Vが1000mで、対象受注番号の出荷可能ロール長1000mと等しい(D9のNO)ので、ステップ(D11)に移行する。
【0066】
ステップ(D11)では、同一品種の最低出荷可能ロール長Mを探索する。この場合(表3)の同一品種の最低出荷可能ロール長MはA0001の1000mである。
【0067】
次のステップ(D12)では、分割した残りの数量R(この場合は1500m)と同一品種の最低出荷可能ロール長M(この場合は1000m)を比較し、分割した残りの数量Rが最低出荷可能ロール長Mより大きく(D12のYES)、言い換えれば分割した残りの数量1000mは他の受注番号に割り当てることが出来るため、次のステップ(D13)に進む。即ち、ABC0005の2500mのロールを分割数量Vを1000m、分割した残りの数量Rを1500mに分割し(D13)、終了する(D14)。表7のように分割されたロールの番号は、この場合、例えばABC0005−1及びABC0005−2のように枝番が付与される。
【0068】
一方、ステップ(D9)で分割された数量Vが対象受注番号の出荷可能ロール長より短い場合(D9のYES)は、分割されたロールを出荷できないため、次のステップ(D10)に進む。ステップ(D10)では、分割数量Vの補正を行う。このような場合は、例えば、受注情報ソート例−その2の表8のような場合に、ソート順位1位の受注番号A0003の受注数量5000mで出荷可能ロール長が600mに対してロールの割当てを行う場合に、出荷可能ロールソート例―その2の表9のような場合には、先ずソート順1のロール番号ABC0006の2000mと、次にソート順2のロール番号ABC0003の2500mが割当られる。更に受注数量5000mに対して不足している500mを割当るためにソート順位3のロール番号ABC0005の800mを500mと300mに分割して、500mを割当れば、受注数量5000mを満足させることが出来る。しかしこの場合には出荷可能ロール長が600mであるので500mに分割したロールを出荷することが出来ないため、次のステップ(D10)に進む。
【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
ステップ(D10)では、分割数量Vの補正を行う。即ち、分割数量Vを出荷可能ロール長(この場合は600m)とし、また分割残数量R=仕上がり予定数量−V (この場合の分割残数量Rは800m−600m=200m)とした後(D10)、同一品種の最低出荷可能ロール長Mを探索する(D11)。この場合は表3の受注番号A001の500mが最低出荷可能ロール長に該当する。
【0072】
次のステップ(D12)では、分割された残りの数量R(この場合、R=200m)と、同一品種の最低出荷可能ロール長M(この場合、M=500m)を比較し、分割された残りの数量Rが同一品種の最低出荷可能ロール長Mより短く(D12のNO)、この場合は分割された残りの数量R=200mは他の受注に対しても出荷できないので、分割せずに800mのままで割当てた後、終了する(D14)。
【0073】
このようにロールを分割する場合には、分割したロール数量Vが出荷可能ロール長より長く(または等しい)、しかも、分割した残りの数量Rが最低出荷可能ロール長Mより大きい場合は分割し、短い場合は分割せずに受注数量より長いm数を割り当てる。このようにすることによって、不良発生等の理由で当初の受注数量に対して、製品数量が足りないケースであっても、複数の受注間(同一品種間のみ)で製品を融通することが出来る。
【0074】
上記図9の出荷可能ロール割当処理のフロー中、ステップ(D3)でNOの場合はロールが出荷算数量を満足出来ないケースで、数量の割当が出来ないまま終了する(D14)。この場合には出荷不足情報が記録される。即ち、割当てた数量の合計が、受注数量より少ない場合は、
(1)不足数量(受注数量−割当済数量)を「出荷不足情報DB」に書き込む。
(2)不足数量(受注数量−割当済数量)が、該当受注物件の出荷可能ロール長より短ければ、出荷可能ロール長を不足予定数量にする。書き込み例を表10に示す。
【0075】
【表10】

【0076】
図10に出庫指示、分割指示のフローを示す。上記図9に示す出荷可能ロール割当処理が終了した後(U1)に、「受注情報DB」の“出荷残数量”を変更し、更に「出荷情報DB」の出荷対象ロールの“出荷済みフラグ”を1と変更する(U2)。出荷ロール割当処理を終了する(U3)。次にロール分割の有無を判断し、ロール分割が有る場合は(U4のYES)、出荷確定したロールに対して出荷対象ロール出庫指示とロール分割指示を合わせて行い(U5)、直ちに終了する(U7)。ロール分割が無い場合は(U4のNO)、出荷確定したロールに対して出荷対象ロール出庫指示を行い(U6)、終了する(7)。
【0077】
上記では、長尺フィルムとして光学機能性フィルムを例示したが、本発明の出荷管理システムは、これに限定されず、他の長尺フィルムにも広く適用することが出来る。
【0078】
以上のように本発明の出荷管理システムによれば、不良発生等で当初の受注数量に対して、製品数量が足りなくなった場合であっても、同一品種であれば複数の受注間で製品の融通を可能とし、また、追加で必要な生産数量を把握することが可能となる。その結果、無駄な出荷を削減することが出来る。
【符号の説明】
【0079】
1・・・フィルム(基材)
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
101・・・処理用パソコン
102・・・生産実績DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺フィルムを巻き取ったロールを収納する製品倉庫を管理するストッカ管理システムと連動して、長尺フィルムを出荷する出荷管理システムであって、
フィルムの受注情報を示す受注情報データベースと、
前記受注情報データベースに含まれる、受注されたフィルムが生産される工程情報を示す工程パターンデータベースと、
フィルムの生産進捗状況を工程パターンに示される工程情報によって管理する生産実績データベースと、
生産実績に応じてフィルムの品種単位で良品率を更新した良品率情報を管理する良品率データベースと、
生産実績情報データベースと良品率データベースから得られる出荷情報データベースと
前記受注情報データベースと出荷情報データベースに基づいて、受注数量に対して生産された製品数量が足りない場合に、前記受注情報データベースと出荷情報データベースに基づいて、複数の受注間でしかも同一品種のロール間で製品数量を融通して受注数量を満たすプログラムを有する演算手段と、
受注数量を満たすためにロールを分割する場合に用いる分割装置と、を備えたことを特徴とする出荷管理システム。
【請求項2】
前記演算手段は、前記受注情報データベースに基づいて出荷したい受注順に受注情報を並び替え、更に出荷情報データベースに基づいて出荷可能ロールを検索した後、出荷したいロール順に出荷可能ロールを並び替え、前記並び替えた受注に対して前記並び替えた出荷可能ロールを順番に割当てることを特徴とする請求項1に記載の出荷管理システム。
【請求項3】
前記演算手段は、割当てられたロールの総数量長が受注数量長を超えた場合には、割当てられた最後のロールを分割して受注数量を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の出荷管理システム。
【請求項4】
前記演算手段は、割当てられた最後のロールを分割した場合に、分割された残りのロールの数量が他の受注の最低出荷可能ロール長より短い場合は、分割しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出荷管理システム。
【請求項5】
前記演算手段は、受注数量に対して出荷可能ロールを順番に割当てた合計数量が受注数量を満たせない場合は、出荷不足情報データベースに不足数量を書き込むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の出荷管理システム。
【請求項6】
前記演算手段によって割当てられたロールの出庫指示をストッカ管理システムに行い、分割が必要な場合は分割装置に分割指示を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の出荷管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50870(P2013−50870A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188890(P2011−188890)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】