説明

分光光度計を較正するための装置及び方法

分光光度計の光学的較正のための装置及び関連方法が説明される。本装置は、関心のある溶液で満たされた1つ又は複数のキュベットを含む較正プレートである。本キュベットは、蒸発を防ぐように密封されている。また、本キュベットには、溶液の膨張を可能にするための圧縮可能部材、及び圧縮可能部材がビーム経路と交わらないことを保証するための泡制御装置がある。経時的な溶液の光学的変化を追跡するために、場合によっては、1枚のニュートラル・デンシティー・ガラスが本装置に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2001年12月12日に出願された「PHOTOMETRIC CALIBRATION OF LIQUID VOLUMES(液体体積体の光度測定の較正)」という名称の米国特許出願第10/021112号に関するものである。該出願は、現在では2004年5月25日に発行された米国特許第6741365号であり、共通の譲受人によって所有されている。関連出願の内容は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、分光光度計を較正するためのデバイス及び方法に関するものである。より詳細には、本発明は、選択可能な吸収度特性を有する1つ又は複数の基準を有する較正プレート(calibration plate)に係るものである。
【背景技術】
【0003】
生物学、化学、生物工学、製薬並びに他の産業及び研究所で使用される多くの分析方法では、小量の液体を正確に測定及び/又は較正することが要求される。この少量とは、ナノリットルからマイクロリットルの範囲であろう。小量の液体は、ピペットなどの液体分配装置から、キュベットなどの1つ又は複数の容器に、連続して又は同時に供給される。
【0004】
多数の液体サンプルを所望の時間内に評価するために、複数の容器への液体サンプルの複数充填を行い、そして、同時に又は連続して分析を行うことができる。複数の容器は、試験中は、1つ又は複数の微量定量プレートの中に収められていることが好ましい。微量定量プレートは、多数の個々の液溜めと、光度測定のための透明基板とを有している。微量定量(マイクロタイタ)プレートによって、比較的短い時間規模で、より多くの調査を行うことができる。その結果として、微量定量プレートは、標準の分析プラットフォームになっている。微量定量プレートが一般的に使用されることにより、結果として、プレート内の個々の液溜めを測定することのできる分光光度計などの様々な型の分析装置を含む、全ての階級の支援装置の創作をもたらした。
【0005】
光度分析方法の下では、被試験液体サンプルはサンプル容器に含まれ、分光光度計の光ビームに曝される。容器及びサンプルを通過して分光光度計の反対側の検出器に進む入射光ビームの光量は、液体サンプルの特性及びビーム経路長さに依存している。液体サンプル評価の精度を保証するために、分光光度計が正確な読み取り値を与えることが重要である。
【0006】
ベール−ランベルトの法則は、サンプルの重要な特性を決定する1つの有用な式を規定している。具体的には、試験される液体サンプルによる光の吸収度は、液体サンプル中の発色団のモル吸光率と液体サンプル中の発色団の濃度とを光ビームの通過した経路長さに掛けたものに等しいことを、ベール−ランベルトは示している。発色団のモル吸光率及び光の経路長さが分かると、分光光度計によって与えられた吸収度測定によって、液体サンプル中の発色団の特定の濃度を計算することが可能になる。経路長さが知られていないか、又は十分な精度で知られていない場合、計算された濃度は近似であり、許容誤差範囲を超えている可能性がある。そのうえ、分光光度計が仕様の範囲外にあると、測定で得られた吸収度値は間違っており、また計算された濃度も間違っているだろう。したがって、分光光度計の正確な較正を維持することが重要である。
【0007】
サンプルの光吸収度を測定するために使用される分光光度計には、いくつかの型がある。従来の分光光度計は、サンプル容器を水平方向に横切って光ビームを透過させる。ある型の特殊な分光光度計は、サンプル容器を鉛直方向に通して光ビームを透過させる。水平ビーム分光光度計では、透過経路長さは容器中のサンプルの体積ではなくてサンプル容器の一定の断面の関数であるため、一般に、特定の経路長さ、すなわち一定の経路長さを確定することができる。しかし、充填された微量定量プレートを水平ビーム経路に適切に挿入することができないので、水平ビーム分光光度計に関する光透過検出方法は、微量定量プレート配置で使用するのに適していない。
【0008】
鉛直ビーム分光光度計は、一般に、微量定量プレートの液溜めの中の溶液サンプルを測定する。ある形態によれば、鉛直ビーム分光光度計は、サンプルの上から下にサンプルを通してか、又は下から上にサンプルを通してかのどちらかにより、サンプルを通してサンプルの反対側の検出器に透過させる。任意の所定の微量定量プレートにおいて、サンプルの経路長さは、もしかすると(おそらく)サンプルごとに変化しやすい。なぜなら、経路長さは、液溜め内のサンプル溶液の容積に直接依存しているからである。経路長さのばらつきの一因となる他の要素は、サンプル溶液のイオン強度及びプレート材料の表面特性であり、これらにより、共に、溶液メニスカスの曲率特性が規定される。これらの要素の全てが、経路長さの不確定さ、したがって鉛直ビーム測定の不正確さをもたらしている。それにもかかわらず、鉛直ビーム測定は、水平ビーム分光光度計の使用よりも、素早く多数のサンプルを測定できるため、望ましいものである。
【0009】
水平ビーム分光光度計の場合、所定の機器の所定の溶液に対する光応答を決定するために使用される一般的な較正方式は、関心のある溶液の一連の希釈液を作るか、又は異なる既知の経路長さで溶液を測定するかのどちらかである。この方式では、既知の経路長さを使用できるため、溶液の光応答を高精度に決定すること、及び分光光度計ごとの結果又は溶液ごとの結果を直接比較することが可能になる。
【0010】
水平及び鉛直ビーム分光光度計を較正するために現在使用されている1つの方法には、ニュートラル・デンシティー(ND)フィルタと呼ばれる、周知の安定したガラス・フィルタによる光吸収測定がある。これらのフィルタは、広い波長範囲にわたってほぼ平坦な吸収度特性を有する灰色板ガラスである。NDフィルタは、一般に、認定測定のために基準研究所に送られ、その測定は、国家標準に基づくことのできる結果を与える。いったん標準化されると、NDフィルタは、水平又は鉛直ビーム分光光度計により測定され、そして、その吸収度の結果は、その機械の精度の標準規格としての基準研究所の結果と比較される。
【0011】
これは一般的な較正方法であるが、NDフィルタだけに依拠する方法は、1)帯域外透過(光源から波長選択デバイス及びサンプルを通過して検出器に進むが、所望波長範囲外の光)、2)波長選択精度、3)波長選択デバイスの帯域通過、又は、4)帯域通過選択デバイスの透過曲線の形などの様々な光学的効果についての情報をほとんど、又は全く与えない。したがって、NDフィルタを使用する機器較正にだけもっぱら依拠することは、特に異なる機器間で比較が行われる場合に、不正確な吸収度の結果につながることがある。
【0012】
鉛直ビーム分光光度計を較正する1つの代替方法として、基準濃度のサンプルを試験するものがある。異なる濃度の特定の染料又は発色団を含む溶液が、微量定量プレートの異なる液溜めに一定量供給される。それから、溶液充填液溜めについて光応答の測定が行われる。この方法には、当該方法の有用性を制限するいくつかの誤差原因がある。第1に、溶液は、必ずしもベール−ランベルトの法則に従わず、染料の濃度と、結果として得られた溶液吸収度との間の直線関係から僅かにずれることがある。第2に、定量的な結果を与えるために、各液溜めに供給される液体の量について高精度の制御が必要とされる。第3に、微量定量プレートの液溜めの正確な寸法が知られていなければならない。第4に、溶液の表面に存在するメニスカスは、溶液を通過する光の経路長さに直接影響するので、全体的な誤差を増すことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、必要とされているものは、鉛直ビーム分光光度計を較正するための装置及び関連した方法である。この装置は、鉛直ビーム分光光度計の配置に適合できるように構成され、かつ配置されなければならない。この装置及び方法は、分光光度計の作業者が、帯域外透過、波長選択精度、特定の分光光度計の帯域通過選択特性、及び帯域通過選択の透過曲線の形を説明できるようにしなければならない。さらに、この装置及び方法は、試験サンプル中の任意の基準染料の濃度と、結果として得られたサンプルの吸収度との間の直線関係のずれを解消し、分光光度計を較正するために使用されるサンプル量に無関係であり、経路長さの正確な制御を可能にし、さらに、光ビーム経路のメニスカス誤差を無くさなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、分光光度計を較正するための装置及び関連した方法である。本装置は、鉛直ビーム分光光度計の配置に適合できるように構成され、かつ配置されているが、水平ビーム分光光度計と共に使用することもできる。本装置及び方法は、分光光度計の作業者が、帯域外透過、波長選択精度、特定の分光光度計の帯域通過選択特性、及び帯域通過選択の透過曲線の形を説明できるようにする。さらに、本装置及び方法は、被試験サンプル中の任意の基準染料の濃度と、結果として得られたサンプルの吸収度との間の直線関係のずれを解消する。本装置及び関連した方法は、分光光度計を較正するために使用されるサンプル量に無関係な経路長さの正確な制御を提供する。最後に、本発明は、鉛直ビーム測定に関連したメニスカス誤差を無くす。本発明の説明は、鉛直ビーム分光光度計での有利な使用に向けられるが、水平ビーム分光光度計も較正するように使用することができる。
【0015】
これら及び他の特徴は、本発明において、各キュベットが選択可能な1つ又は複数の基準濃度の発色団を有する溶液を含む、1つ又は複数の密封較正キュベットを有する較正プレートの配置によって実現される。本発明は、作業者が、NDガラスの広いスペクトル応答を使用するのではなく、試験される溶液に正確に一致する波長で鉛直ビーム分光光度計を較正できるようにする。例えば、分析において特定の染料が吸収度指示薬として使用される場合、特定の染料の濃度が増加していく溶液の組を作り、較正プレートのキュベットに挿入することができる。そして、較正プレートは、特定の染料の予想吸収度範囲にわたって鉛直ビーム分光光度計の光応答を較正するように使用される。複数の染料が吸収度応答において著しく重なり合っていない限りは、2以上の染料を各キュベットに組み入れることが可能である。
【0016】
本発明は、標準としての安定性において、さらに有利な点を提供する。具体的には、標準体を較正プレートに保持されたキュベット中に密封することによって、本発明は、空気に長くさらされることによって生じる標準体の変化を最小限にする。どのような温度サイクル中にもその中の溶液の熱膨張及び収縮を可能にするように、膨張領域がキュベット内に維持される。この膨張領域は、本明細書で説明される手段を含む様々な方法で設けることができる。好ましくは、膨張領域分離装置が、分光光度計のビームに露出されるキュベットの部分から膨張領域を分離するように、キュベット中に含まれる。分離装置の形態の選択肢は、本明細書で説明する。
【0017】
キュベットは、鉛直方向に整列された光ビームが、溶液を貫通する一定の経路長さを有するように、較正プレート中に方向付けされる。さらに、そのキュベットの向きは、ビーム経路からメニスカスを離すようにされる。実際に、本発明は、鉛直ビーム型であろうと水平ビーム型であろうと、キュベットの断面により規定された一定の経路長さを分光光度計に与える。
【0018】
較正プレートは、1つ又は複数のキュベットを保持するための手段を含む。保持された各キュベットは、プレートの試験部分を規定し、較正用の固有の発色団溶液を含むことができる。しかし、単一の試験キュベットを較正プレートに配置することができ、また複数のキュベットが同じ発色団溶液を含むことができることを理解すべきである。さらに、光ビームが、保持されたキュベット内の溶液中を進みかつ通過するための1つ又は複数の透明なビーム入口によって、プレートの各試験部分が規定される。各入口により、キュベットの断面に基づいた一定の経路長さセルが確定される。較正プレートは、場合によっては、標準体と選択可能に比較するためのNDガラス・フィルタを含む試験部分を含む。
【0019】
本発明の較正プレートは、関連する溶液の挿入を可能にする1つ又は複数のキュベットを含む。溶液は、使用者によって決定され使用者の関心に特有のものであってもよく、又は市販の標準化された溶液であってもよい。後者の場合、充填されたキュベットは、関連した特許に記載されているやり方で、製造業者の施設で、分光光度計の基準とされ得る。溶液充填キュベットは、分光光度計の応答を較正するための光学的標準体として機能し、又は、溶液の所定の濃度と、示された吸収度との関係を決めるために使用できる。その中に保持された溶液、キュベットの密封構成、及び較正プレート内のキュベットの配置は、既存の鉛直ビーム分光光度計較正技術の欠陥を回避しながら、分光光度計較正のための有効な手段を与える。
【0020】
本発明の装置及び方法のこれら及び他の効果及び観点は、以下の詳細な説明、添付の図面、及び添付の特許請求の範囲をみれば、明らかになるであろう。
【実施例】
【0021】
本発明の較正プレート10を図1に示す。較正プレート10は、複数の光ビーム入口11を含み、この入口11を通って、光ビームは、上部較正プレート側12から1つ又は複数のキュベット13を通過して較正プレート10の裏側(図示しない)に進むことができる(較正されるべき特定の分光光度計の動作によっては、光ビームは、代わりに、裏側から上部較正プレート側12に進むことができる)。較正プレート10の構造を規定する較正プレート10のフレームは、金属材料、堅いプラスチック材料、又はこれらの組合せを含む堅い不透明材料で作られることが好ましいが、これらに限定されない。較正プレート10のフレームは、好ましくは、互いに分離可能に接続できる2以上の部分で作られている。キュベット13及び任意選択のNDガラス・フィルタ板14は、取り外し可能に較正プレート10にはめられている。具体的には、キュベット13及びNDガラス・フィルタ板14は、較正プレートの前端部15から較正プレートに挿入するか、又は較正プレートから取り出すことができ、又は、下部較正プレート17に/から上部較正プレート16を接続/分離することによって、較正プレートに挿入するか、又は較正プレートから取り出すことができる。
【0022】
続けて図1を参照すると、各キュベット13は、ガラスなどの透明材料により作られている。キュベット13は、一定の断面寸法の本体18、膨張許容領域19、首部20、及びキュベット13の内容をその中に密封する密封キャップ21の付いた頭部を含む。較正プレート10が鉛直ビーム分光光度計に位置付けされる際に、光ビーム入口が本体18の上にのみ位置付けされ、膨張許容領域19の上には位置付けされないように、膨張許容領域19は本体18に対して位置付けされる。好ましくは、各キュベット13は、1つ又は複数の基準濃度の1つ又は複数の発色団を有する液体溶液により実質的に満たされる。較正プレート10に複数のキュベット13を備えることにより、ある範囲の吸収度値を、鉛直ビーム分光光度計の光応答を較正するために使用できる。
【0023】
キュベット13は、実質的に長方形の形に形成され、かつ圧着密封を可能にするためのフランジ付きキュベット頭部を有して形成されている。ニューヨーク州プレーンヴュのHellma Internationalは、そのようなキュベット装置を供給できる。キュベット13は、長期間、較正溶液をキュベット13内に密封できるように、較正プレート10が使用される際に、較正プレート10内でキュベットの長手方向が平らになるように配置される。従来の較正用キュベットとは異なり、本発明のキュベット13は、キュベット内の溶液と外部雰囲気との間の気体又は流体の交換を最小限にするように、又は実質的に無くすように、密封キャップ21により密封されている。密封キャップ21は、容器上部に材料を圧着する技術分野の当業者によく知られているやり方で、圧着工具を用いて付けられる圧着上蓋密封材である。圧着上蓋をキュベット13に取り付ける前に、無孔膜がキュベット頭部に付けられる。この膜は、好ましくは、ウィスコンシン州メナシャのPechiney Plastic Packagingにより製造されているプラスチック包装材料のParafilmTM(登録商標)などの重合体膜である。圧着上蓋自体は、内側の非金属材料と外側の金属材料の組合せにより作られた層状に裏打ちされたものである。例えば、ニュージャージ州ミルヴィルのWheaton Corp.は、圧着上蓋材料として適しているアルニウム/テフロン(登録商標)/グレイ・ブチル(Grey Butyl)の組合せを含む市販材料を提供している。密封されたキュベット13の内には、膨張許容領域19に、空気などの気体の泡であってもよい圧縮可能部材を含む。圧縮可能部材は、溶液が温度変動のために膨張/収縮できるようにするために、キュベット13内に設けられる。
【0024】
圧縮可能部材は、入口11により規定される光路範囲の外に維持されなければならい。さもないと、圧縮可能部材は、測定吸収度値に悪影響を及ぼすだろう。したがって、キュベット13の上蓋近くのビーム経路範囲外の膨張許容領域19の所定位置に圧縮可能部材を維持するために、泡制御装置23が使用される。輸送中に、圧縮可能部材はキュベット13の本体18に移動することがあるが、液体分析の分野で一般に使用される任意のやり方で較正プレート10を振揺させ、及び較正プレート10を鉛直向きに位置付けることにより、圧縮可能部材は膨張許容領域19に移動し、そこで、較正プレート10がいったん水平向きに戻されると、泡制御装置23によって圧縮可能部材は所定の位置に保持される。
【0025】
指摘したように、NDガラス・フィルタ14は、較正プレート10の任意選択可能な部品である。NDガラス・フィルタ14は、溶液充填キュベット13の長期安定性を検査するために使用できる。NDガラス・フィルタ14は、好ましくは、灰色板ガラスであり、この灰色板ガラスは、可視スペクトルの広い部分にわたって変化しない比較的平坦な吸収度を与える。較正デバイスとしてそれ自体で単独でのNDガラス・フィルタの使用と違って、本発明の任意選択のNDガラス・フィルタは、キュベット13内の溶液に発生するかもしれない劣化を試験するために主に使用される。具体的には、分光光度計を較正するためにNDガラス・フィルタ14自体を使用するのではなく、較正中の分光光度計の作業者は、NDガラス・フィルタ14に対する溶液充填キュベット13の試験応答を調べることができる。これは、所定の波長でのNDガラス・フィルタ14の光応答と、同じ波長での溶液充填キュベット13の応答との間の関係を決めることによって達成される。この関係は、製造業者が決め、使用者に渡すことができ、又は、使用者が直接決めることができる。この関係は、所定の波長で測定された吸収度の比又は単なる差であってもよい。較正プレート10が現場で使用される場合に、製造日に測定された、NDガラス・フィルタ14/溶液充填キュベット13の関係と、当日測定された関係との比較を行なうことができる。製造業者又は使用者は、公差限界を設定できる。この公差限界は、特定の較正プレート10の1つ又は複数の特定のキュベット13が仕様の範囲外にあるかどうか、及び再認定を必要とするかどうかを決定する。したがって、NDガラス・フィルタ14は、好ましくは、溶液充填キュベット13を検査するための標準基準点として任意選択で使用される。
【0026】
図2A及び図2Bに示すように、第1の泡制御装置30は、上部壁31に近接して位置付けされ、裏側の壁32から間隔を開けて配置され、かつキュベット13の側壁33と34との間に設置された棚である。好ましくはTefron(商標)で作られた棚30は、物理的な障壁を実現し、主に表面張力によって圧縮可能部材(泡19)を所定の位置に維持する。代替として、棚30は、ガラスにより作られ、そして、キュベットの製造中に、側壁33と34との間のキュベット13の内側などのキュベット内に融合される。本発明の説明の目的のために、上部壁とは、キュベット13が図1に示すような較正プレート10内の所定位置にあるときに、光ビーム入口11に近接した上部較正プレート16内にあるキュベット13の部分をいい、下部壁とは、キュベット13が較正プレート中に位置付けされたときに、較正プレートの下側に近接した下部較正プレート17内のキュベット13の部分をいう。キュベット13の上部壁又は下部壁についての本明細書での言及の全ては、この方針に基づいている。図3A及び図3Bに図示するとおり、第2の泡制御装置40は一片の管材料であり、好ましくはシリコーンにより作られ、上部壁41に近接して間隔を開けて配置され、下部壁42から離れ、かつ側壁43と44との間の所定の位置に押し込まれている。これもまた、圧縮可能部材(再び、この場合も泡19)を取り込むための物理的な障壁として作用する。図4A及び図4Bに図示するとおり、第3の泡制御装置50は、溶液膨張を可能にするように適切な量の気体で満たされた袋50である。図4A及び図4Bのデバイスでは、圧縮可能部材は袋50の中に収容され、この袋50は、キュベット13の中で実質的に上部壁51から下部壁52の方に向けて、ほぼ側壁53から側壁54まで広がり、さらに部分的に首部20の中に広がっている。袋50は、キュベット本体18に入ることがないような大きさに作られている。これらの制御機構の各々は、分光光度計較正中に圧縮可能材料が光路の範囲外にあることを保証している。
【0027】
第4の泡制御装置60を図5A〜図5B及び図6A〜図6Bに示す。装置60は、発泡性樹脂製品などの多孔質の圧縮可能材料又は圧潰可能材料である。この材料60は、キュベットの上部壁61と下部壁62との間に押し込まれる。また、これは、側壁63と64との間に間隔を開けて配置され、又は、それらの壁から間隔を開けて配置される。泡制御装置60は、好ましくは、首部20の一部の中に延びている。泡制御装置60は、必要な気体の大部分をその内部に保持する。圧力がかかると、泡制御装置60は、より小さな全体体積に縮み、そして、圧縮可能であればその圧力の解放時に再び膨張する。あるいは、材料60が圧潰可能なだけであれば、その小さな体積に圧潰され、そのままである。圧潰可能材料は、キュベット13内の溶液膨張を素早く目視で測定する目的のために好ましいことがある。具体的には、図5A及び図5Bに示すように、標準温度の下で、キュベット13内の溶液は、材料60の体積とともに、キュベット13を本質的に満たす特定の体積を有している。温度の変化によってキュベット13中の溶液が膨張すると、材料60は圧縮され、それによって、図6A及び図6Bに示すように、材料60の体積が減少する。常に、キュベット13の断面を貫通する経路長さは同じである。理解すべきことであるが、キュベット13のいずれも、本明細書で説明した泡制御装置の任意の2以上の組合せを含むことができる。例えば、棚30は、袋50又は圧縮可能材料60を所定の位置に保持するように使用できる。代替として、同じ目的のために棚30の代わりに、管材料40を使用することができる。
【0028】
較正プレート10を使用して鉛直ビーム分光光度計を較正する方法は、溶液充填キュベット13を較正プレート10に挿入する段階、圧縮可能部材が膨張許容領域18に保持されるように較正プレート10を配置する段階、及び較正プレート10を分光光度計に挿入する段階を含む。キュベット13は、基準吸収度特性及び濃度を有する1つ又は複数の発色団を有する1つ又は複数の溶液により満たされる。その後、スペクトル分析が行われ、キュベット13中の溶液の吸収度値が得られる。その後、その値は、基準値と比較される。その場合、測定吸収度値と基準吸収度値との一致を確立するために必要に応じて、分光光度計の動作を調整できる。この結果を確認するために、分光光度計の調整後に、測定が再び行われることが好ましい。NDガラス・フィルタ14を使用して、上記で述べたようにキュベット13の溶液の吸収度値をある期間にわたって確認することができる。
【0029】
本発明は、鉛直ビーム分光光度計の光応答を較正する装置である。本発明は、関心のある発色団に固有の吸収度標準の使用を可能にする。実際上、分析評価で一般に分析される発色団を使用して、特定の吸収度特性を作ることができ、この発色団に対する応答は、鉛直ビーム分光光度計を使用して得ることができる。本発明は、較正プレート10の特定の実施例及びキュベット13の設計を特に参照して説明したが、本発明は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の合理的な同等物の全てを含むことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】複数のキュベット及び点線で示すNDガラス・フィルタを有する本発明の較正プレートを示す簡略透視図。
【図2A】圧着上蓋及び第1の膨張分離手段を示す、本発明のキュベットの上面図。
【図2B】図2Aのキュベットの側面図。
【図3A】圧着上蓋及び第2の膨張分離手段を示す、本発明のキュベットの上面図。
【図3B】図3Aのキュベットの側面図。
【図4A】圧着上蓋及び第3の膨張分離手段を示す、本発明のキュベットの上面図。
【図4B】図4Aのキュベットの側面図。
【図5A】圧着上蓋及び随意の膨張手段を示す、本発明のキュベットの上面図。
【図5B】図5Aのキュベットの側面図。
【図6A】圧縮された形の随意の膨張手段を示す、図5のキュベットの上面図。
【図6B】図6Aのキュベットの側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光光度計を較正するための装置において、該装置が較正プレートを有し、該較正プレートが、
第1の面と、
第2の面と、
1つ又は複数のキュベットを取り外し可能に保持するための手段と、
前記第1の面から前記第2の面まで、又は前記第2の面から前記第1の面まで通じる1つ又は複数の光ビーム入口とを有する、分光光度計を較正するための装置。
【請求項2】
前記1つ又は複数のキュベットを取り外し可能に保持するための手段に保持された1つ又は複数のキュベットをさらに有する請求項1に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項3】
前記1つ又は複数のキュベットのうちの少なくとも1つが、溶液により満たされている請求項2に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項4】
前記1つ又は複数のキュベットのうちの少なくとも1つが、1つ又は複数の発色団を含む溶液により満たされている請求項3に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項5】
ニュートラル・デンシティー(ND)ガラス・フィルタを保持するための手段をさらに有する請求項1に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項6】
NDガラス・フィルタを保持するための手段に保持されたNDガラス・フィルタをさらに有する請求項6に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項7】
溶液により満たされた前記1つ又は複数のキュベットの各々が上蓋を含み、前記装置が前記上蓋を密封するための手段をさらに有する請求項3に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項8】
前記上蓋を密封するための手段が、圧着上蓋密封材を含む請求項7に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項9】
前記上蓋を密封するための手段が、前記上蓋と前記圧着上蓋密封材との間に配置された膜を含む請求項8に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数のキュベットの各々は、前記1つ又は複数のビーム入口の各々を通る一定のビーム経路が前記鉛直ビーム分光光度計に作られるように、前記手段内で方向付けされている請求項2に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項11】
前記溶液充填キュベットの各々が、密封された上蓋、膨張許容領域、及び前記溶液充填キュベット内の圧縮可能部材を有する請求項3に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項12】
前記圧縮可能材料が気体である請求項11に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項13】
前記気体が空気である請求項12に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項14】
前記溶液充填キュベットの各々は、前記装置が前記鉛直ビーム分光光度計の較正に使用される際は、前記気体を前記膨張許容領域に保持するように構成かつ配置された泡制御装置を有する請求項12に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項15】
前記泡制御装置が棚である請求項14に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項16】
前記棚が堅い材料により作られている請求項15に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項17】
前記堅い材料がガラスである請求項16に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項18】
前記泡制御装置が非金属の管である請求項14に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項19】
前記泡制御装置が、前記気体を収容する袋である請求項14に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項20】
前記泡制御装置が、前記気体を含む多孔質材料である請求項14に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項21】
前記泡制御装置が、堅い棚、非金属管、袋、及び多孔質材料のうちの2つ以上のものの組合せから成る請求項14に記載された分光光度計を較正するための装置。
【請求項22】
分光光度計を較正する方法において、
a.1つ又は複数の溶液充填キュベットを含む較正プレートを前記分光光度計に配置する段階であって、前記較正プレートが、前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの各々に関連する1つ又は複数のビーム入口を含み、前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの各々が、1つ又は複数の基準光吸収度の発色団を含み、前記溶液充填キュベットの各々が、前記分光光度計に一定のビーム経路を作るように構成かつ配置されている、較正プレートを前記分光光度計に配置する段階と、
b.前記溶液充填キュベットの各々の光吸収度を測定する段階と、
c.前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの基準光吸収度値を基準分光光度計により得る段階と、
d.前記測定された光吸収度値を前記基準光吸収度値と比較する段階とを含む、分光光度計を較正する方法。
【請求項23】
前記較正プレートがニュートラル・デンシティー(ND)ガラス・フィルタをさらに含み、前記方法が、ある期間にわたって、前記NDガラス・フィルタの光吸収度に対する前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの各々の光吸収度を評価する段階をさらに含む請求項22に記載された分光光度計を較正する方法。
【請求項24】
前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの各々の光吸収度をある期間にわたって評価する段階が、
a.一度目に、前記NDガラス・フィルタの光吸収度と、前記1つ又は複数の溶液充填キュベットのうちの1つ又は複数の光吸収度とを測定する段階と、
b.前記NDガラス・フィルタ及び前記1つ又は複数の溶液充填キュベットの前記一度目の光吸収度値を記録する段階と、
c.二度目に、前記NDガラス・フィルタの光吸収度と、前記1つ又は複数の溶液充填キュベットのうちの1つ又は複数の光吸収度とを測定する段階と、
d.前記一度目の前記測定と前記二度目の前記測定の光吸収度値を比較する段階とを含む請求項23に記載された分光光度計を較正する方法。
【請求項25】
圧着密封材を有する上蓋と、膨張許容領域と、前記キュベット内の圧縮可能部材品とを有する、分光光度計を較正するためのキュベット。
【請求項26】
前記圧縮可能部材が気体である請求項25に記載された分光光度計を較正するためのキュベット。
【請求項27】
前記上蓋と前記圧着密封材との間に配置された非金属膜をさらに有する請求項25に記載された分光光度計を較正するためのキュベット。
【請求項28】
1つ又は複数の基準吸収度を有する1つ又は複数の発色団を有する溶液をさらに含む請求項25に記載された分光光度計を較正するためのキュベット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2007−522446(P2007−522446A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551253(P2006−551253)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001769
【国際公開番号】WO2005/074492
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506259575)アルテル、インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】