説明

分光測定方法、分光測定装置および筒状部材

【課題】溶液試料を分析する分光測定方法において、溶液試料からの光を増強して測定感度を改善できる方法を提供することにある。
【解決手段】筒状部材4を用いて、一方の開口端42を溶液試料Wに浸して該筒状部材4の筒部43に溶液試料Wを取り込み、前記筒部43の他方の開口端41に向けて前記照射光を照射して、照射光が前記取り込まれた溶液試料中を進むことによって生じる溶液試料Wからの光を、該溶液試料W中にて前記筒部43の内周面により多重反射させることによって、前記他方の開口端41から出射する光を増強させ、前記他方の開口端41から出射する前記溶液試料Wからの光を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液試料を対象にしたラマン散乱分光測定および蛍光分光測定などの各種の分光測定方法および分光測定装置に関し、特にラマン散乱光や蛍光など、溶液試料からの光を増強して測定感度を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液試料に光を照射して、溶液試料からのラマン散乱光や発光などを測定することにより溶液を分析する各種の分光測定法が知られている。試料によっては、採取する光の強度が非常に弱いものがある。特にラマン散乱光は極めて弱い光である。ラマン散乱光の強度は使用するレーザー光の強度に比例するので、一般的に大きいパワーのレーザー光を用いて測定する。しかし、試料によってはレーザー光を吸収し温度上昇を起こして変質するという問題があり、レーザー光の強度にも限度がある。また、発光(蛍光や燐光をまとめて発光と呼ぶ。)についても一般的に微弱な光である。
【0003】
従来の分光測定装置の一例としてラマン散乱分光測定装置について説明する。試料にレーザー部からのレーザー光を励起光として照射すると、試料からラマン散乱光が生じる。ラマン散乱光は対物レンズで集光され、結像レンズによりアパーチャ位置にて結像する。アパーチャで絞られたラマン散乱光はラマン光導入光学系部に導光された後、CCD検出部により検出されるようになっている(特許文献1)。
特許文献1の測定装置では、レーザー光は対物レンズで集光されて試料に照射される。つまり試料上にレーザースポットが形成されるため、レーザー光を平行光のまま照射するよりも強いレーザー光を照射できる。そして、レーザースポットを試料から生じるラマン散乱光の光源とみなすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−72848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のラマン散乱分光測定装置において、レーザースポットに集光されたレーザー光は、試料によって散乱光となるが、大半の散乱光はレーザー光と波長が等しいレイリー散乱光であり、散乱光の極一部がラマン散乱光となる。また、多くのレーザー光は、レーザースポットでは散乱せずに更に進んでいく。従って、試料からのラマン光は、レーザースポットでの散乱によるものだけではなく、レーザースポットからのレイリー散乱光によって生じるものもあり、またレーザースポットにて散乱せず更に進んだレーザー光によって生じるものもある。
【0006】
しかしながら、レーザースポットからのラマン散乱光については、対物レンズおよび結像レンズによってアパーチャ位置に像を形成するが、レーザースポット以外のところで生じるラマン散乱光については、対物レンズおよび結像レンズによってアパーチャ位置に像を形成することができない。このように、レーザースポット以外のところで生じたラマン散乱光を採取して測定対象にすることができなかった。
このように従来の測定装置では、微弱なラマン散乱光しか採取できず、ラマン散乱光を増強させることが困難であった。このような問題は、ラマン散乱光の測定に限らず、試料に励起光を照射して生じる蛍光や燐光などの発光を測定する際にも同様に生じる問題であった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、溶液試料に照射光を照射することによって生じる溶液試料からの光を検出し、該光のスペクトルに基づいて溶液試料を分析する分光測定方法および分光測定装置において、溶液試料からの光を増強させることにより測定感度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
分光測定方法
上記目的を達成するため、本発明にかかる分光測定方法は、筒状部材を用いて、一方の開口端を溶液試料に浸して該筒状部材の筒部に溶液試料を取り込み、
前記筒部の他方の開口端に向けて前記照射光を照射して、該照射光が前記取り込まれた溶液試料中を進むことによって生じる溶液試料からの光を、該溶液試料中にて前記筒部の内周面により多重反射させることによって、前記他方の開口端から出射する光を増強させ、
前記他方の開口端からの光を検出して分析に用いることを特徴とする。
上記の分光測定方法において、前記一方の開口端から溶液試料を毛細管現象によって前記筒部内に取り込むことが好適である。
【0009】
分光測定装置
本発明にかかる分光測定装置は、溶液試料に照射光を照射する照射手段と、前記照射光によって生じる溶液試料からの光を集光する対物光学手段と、を備え、前記対物光学手段によって集光した光を検出して、該光のスペクトルに基づいて溶液試料を分析する分光測定装置であって、前記対物光学手段と溶液試料との間に設けられ、一方の開口端が溶液試料に浸された状態で配置された筒状部材を備えることを特徴とする。
ここで、前記照射手段は、前記筒状部材の他方の開口端に向けて照射光を照射する。また、前記筒状部材は、前記一方の開口端から該筒状部材の筒部に溶液試料を取り込んで、前記他方の開口端からの照射光が前記取り込まれた溶液試料中を進むことによって生じる溶液試料からの光を、該溶液試料中にて前記筒部の内周面により多重反射させることによって、前記他方の開口端から出射する光を増強する。そして、前記対物光学手段は、前記他方の開口端からの光を集光する。
【0010】
上記の分光測定装置において、前記筒状部材は中空ファイバーであることが好適である。あるいは、上記の分光測定装置において、前記筒部の内周面には金属で覆われた反射面が形成されていることが好適である。または、上記の分光測定装置において、前記筒状部材は、金属管であることが好適である。
また、本発明にかかる筒状部材は、前記分光測定装置に用いられるものであり、該分光測定装置の対物光学手段と溶液試料との間に設けられ、一方の開口端が溶液試料に浸された状態で配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分光測定方法、分光測定装置および筒状部材を使用すれば、まず、筒状部材の他方の開口端からの照射光によって、筒部に取り込まれた溶液試料が照射される。照射光が溶液試料の内部を進行するに従って、該照射光が溶液試料によって散乱してその一部がラマン散乱光となる。または、照射光が溶液試料を励起して、蛍光や燐光などの発光が溶液試料から生じる。このようなラマン散乱光または発光は、溶液試料からの光であり、筒部の内周面を1回以上の反射しながら他方の開口端へと向う。筒部の内周面を反射して他方の開口端から出射する光の分だけ、開口端からの光が増強されるのである。従って、各種の分光測定において、散乱光、発光などの溶液試料からの光のうち採取可能な光を増強することができ、結果として測定感度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる分光測定装置の概略構成図である。
【図2】従来の分光測定方法を説明するための図である。
【図3】(A)、(B)は、本発明の実施形態にかかる中空ファイバーの他方の開口端に照射光を照射して、この開口端からの光を測定する方法を示す図である。
【図4】従来の分光測定方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる中空ファイバーの他方の開口端に照射光を照射して、この開口端からの光を測定する方法を示す図である。
【図6】前記実施形態にかかる中空ファイバーの変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施例にかかるラマン散乱分光測定装置の構成図である。
【図8】前記実施例の測定結果であるラマンスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる分光測定装置の概略構成図である。図1の分光測定装置10は、光源1と反射鏡2とを有する照射手段、対物レンズ(対物光学手段)3と、中空ファイバー(筒状部材)4と、分光手段5と、光検出手段6と、を備える。
光源1からの照射光は、対物レンズ3と分光手段5との間に配置された反射鏡2を反射して対物レンズ3を照射する。
対物レンズは3、照射光を中空ファイバー4に向けて集光し、該中空ファイバー4の開口端41に照射エリアAを形成するとともに、この照射エリアAから出射する光を集光して分光手段5に導光する。照射エリアAは、開口の少なくとも一部の微小な面積を有する領域であればよく、好ましくは、照射光が開口の全体を照射した方がよい。
【0014】
中空ファイバー4は貫通する筒部43を有し、対物レンズ3と溶液試料Wとの間に配置される。筒部43の両端のうちの対物レンズ3側の開口端41(これを他方の開口端と呼ぶ。)は、その中心軸が照射光の光軸と一致するように位置決めされ、かつ、照射エリアAの面積以上の開口面積を有する。また、図中で溶液試料W側の開口端42(これを一方の開口端と呼ぶ。)は、溶液試料Wに浸されている。中空ファイバー4は図示しないホルダーなどで保持されている。また、中空ファイバー4と対物レンズ3との距離を調整できる調整機構を設けてもよい。溶液試料Wの容器7が中空ファイバー4を保持する構成でもよい。
分光手段5は対物レンズ3によって集光された光を分光し、光検出手段6はその光強度を検出する。このように分光測定装置10は検出した光のスペクトルに基づいて溶液試料Wを分析することができる。
【0015】
以下に本発明に特徴的な中空ファイバー4について、この中空ファイバー4を使用しない場合と比較しつつ、図2から図5に基づいて詳しく説明する。
図2は、溶液試料Wに照射光の焦点を直接合わせた従来の測定方法を示す。ここで、説明を簡単にするため、対物レンズ3で集光される照射光が、溶液試料W中に照射スポットS1を形成するものとする。従来の測定方法では、照射スポットS1からの光だけが溶液試料Wからの光として検出されていた。しかし、実際には、照射スポットS1に集光された照射光の一部は、散乱せずに照射スポットS1を透過して、点S2などに進む。また、照射光の他の一部は、照射スポットS1において散乱して、点S3などに進む。しかし、対物レンズ3または後段に設けられる光学系によって結像されるのは、照射スポットS1からの光だけであり、照射スポット以外の点S2や点S3などからの光は、照射スポットS1の結像点とずれてしまうため、検出対象にすることができない。
【0016】
図3(A)、(B)は、中空ファイバー4を用いて、その他方の開口端41に照射光を照射して、この開口端41から出射する光を測定する方法を示す。
中空ファイバー4の一方の開口端42は溶液試料Wに浸されているので、その開口端42から溶液試料Wを毛細管現象によって取り込んだ状態となっている。つまり、中空ファイバー4の一方の開口端42を溶液試料Wに浸した時、他方の開口端41は自由開放となっているので、筒部43内の液面が容器7内の液面よりも上昇する。従って、筒部43の全体または少なくとも内部の一部に、溶液試料Wが取り込まれている。ここでは、筒部43内の全体が溶液試料Wで満たされている場合を説明する。
【0017】
図3(A)は、照射された照射光の一部が、照射スポットS1にて散乱しないで透過することによって、照射光の光軸上にある点S2を照射する様子を模式的に示した図である。点S2は、照射スポットS1を透過した光が通る点の一例であり、点S3は、照射スポットS1や点S2を散乱した光が通る点の一例である。なお、照射光は、中空ファイバー4の内周面を多重反射するため、図2の測定方法よりも強い光となって点S2や点S3などにある溶液試料Wを照射できる。この結果、点S2や点S3において、図2よりも強い光が生じる。
図3(B)は、点S2、点S3からの光が、照射スポットS1を通過して他の開口端41が出射する様子を模式的に示した図である。点S2、点S3からの光は、照射光と同様に中空ファイバー4の内周面を多重反射するため、照射スポットS1を通過する光が増加する。これにより、対物レンズ3によって集光可能な照射スポットS1からの光が増強されるのである。
【0018】
以上の説明は、中空ファイバー4の筒部43の一部にのみ溶液試料Wが取り込まれた状態であっても、同様に説明できる。つまり、照射スポットS1まで溶液試料Wが取り込まれていなくても、照射光は中空ファイバー4内を多重反射によって溶液試料Wまで進行し、ほとんど減衰することなく筒内の溶液試料Wを照射できる。そして、溶液試料Wからの光も中空ファイバー4内を多重反射し、その一部が照射スポットS1を通過する。この照射スポットS1を通過する溶液試料Wからの光を対物レンズ3で集光すればよい。
【0019】
また、図1のように照射スポットが1点ではなく有限の面積(照射エリアA)である場合にも、同様に説明することができる。
図4は、溶液試料Wに照射光の照射エリアAを直接的に合わせた従来の測定方法を示す。照射エリアAは図2で説明した照射スポットS1が多数あると考えればよい。この場合も、点S2や点S3からの光は、対物レンズ3または後段に設けられる光学系によって像を結んだとしても、照射エリアAからの結像点とずれてしまうため、点S2、点S3からの光を検出対象とすることができない。
【0020】
図5は、中空ファイバー4の他方の開口端41に照射エリアAを合わせて、その開口端41から出射される光を測定する方法を示す。図5では、照射エリアAに照射された照射光の一部が、さらに筒内の点S2を照射する様子を模式的に示した図である。照射光は中空ファイバー4の内周面を多重反射するため、図4の測定方法よりも強い光となって、点S2を照射することができる。これにより点S2からの光が増強される。図5中の点S2は、点S2は、照射エリアAを透過した光や照射エリアAで散乱した光などが通る点の一例である。
【0021】
また、図5には、点S2からの光が多重反射により照射エリアAに戻る様子を模式的に示している。点S2からの光は、照射光と同様に中空ファイバー4の内周面を多重反射するため、その大半が照射エリアAに戻る。図4の測定方法と比べて、照射エリアAを通過する光は、多重反射により増強される。これにより、対物レンズ3によって集光可能な照射エリアAからの光が増強されるのである。照射エリアAを溶液試料Wからの光の光源の集合とみなせば、中空ファイバー4によってその光源の強度を増強できたと考えることができる。
【0022】
このように、本実施形態の分光測定装置10によれば、溶液試料Wからの光を増強できるため、高感度の分光測定が可能となる。特に、筒状部材としての中空ファイバー4が溶液試料Wの毛細管現象を誘起すれば、極微小量の溶液試料Wであっても、中空ファイバー4の筒部43に溶液試料Wを容易に取り込むことができ、高感度の分光測定が可能となる。また、試料濃度Wを薄くしても従来に優る感度での分光測定ができる。
【0023】
なお、中空ファイバー4に換えて、内周が金属で覆われた中空筒状の光学部材を用いてもよい。また、中空ファイバー4は、図6に示すように、彎曲した状態でもよく、または延長させることもできる。図6は、図1に示す中空ファイバー4を彎曲、延長した状態の例を示す。V1は溶液試料のない空間を示し、V2は中空ファイバー4に取り込まれた溶液試料を示す。
本発明の筒状部材としては、中空ファイバー4や、内周に金属層を有する筒状の光学部材に限らず、金属パイプであってもよい。特に、極微小量の溶液試料に対して毛細管現象を誘起しやすいように、0.05mm〜2.5mm程度の微小内径の筒部を有する金属製の微細管がよい。分光測定装置に用いる金属パイプとしては、SUS線にニッケルメッキを施した後、SUS線を取り除くことによって、上記微小内径の筒部が形成されたニッケル製の微細管が好適である。
【0024】
以上の実施形態で説明した分光測定装置10および分光測定方法は、ラマン散乱光および、蛍光や燐光などの発光を対象とする分光測定およびこれらの分光測定装置に適用できる。
【実施例1】
【0025】
以下、実施例に基づき本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例では、全長20mmの中空ファイバー104を使って溶液試料Wであるアセトンのラマン散乱光を測定した。
図7はラマン散乱分光測定装置110の光学系構造を示す図である。
ラマン散乱分光測定装置110は、レーザー光源101と、反射鏡102と、対物レンズ103と、中空ファイバー104と、結像レンズ108と、アパーチャ109と、ラマン光導入光学系部111と、分光器部105と、CCD検出部106と、を備える。結像レンズ108は、対物レンズ103とアパーチャ109の間の光路上に設置される。レーザー光源101からのレーザー光は、反射鏡102を反射して対物レンズ103に照射され、中空ファイバー104の開口端にレーザー照射エリアA1を形成する。溶液試料Wからのラマン散乱光は対物レンズ103によって集光され、結像レンズ108へと送られる。結像レンズ108はラマン散乱光をアパーチャ109面に結像させる。アパーチャ109では、測定したい特定部位のラマン散乱光のみを通過し、その他の部分からの光を遮断する。このようにしてアパーチャ109で絞られたラマン散乱光はラマン光導入光学系部111に導光された後、分光器部105を通ってCCD検出部106により検出されるようになっている。
【0026】
アセトン分子は複数の分子結合により構成されているため、アセトンのラマンスペクトルには分子結合などに応じたアセトン固有の複数のピークが含まれる。
図8は、ラマンシフトの波数を横軸にとり、ラマン散乱光の強度を縦軸にとって、アセトンのラマンスペクトルを示したものである。溶液に焦点を直接合わせた従来の測定方法による結果と、本発明の中空ファイバー104を用いた測定方法による結果を合わせて示した。図8に示すように、本発明の測定方法によれば、ラマン散乱強度が従来の測定方法よりも5倍以上増強できることを確認した。これは、中空ファイバー104内で毛細管現象によって試料の液面が上昇し、中空ファイバー104内での多重反射によって採取可能なラマン散乱光が増強した結果と考えられる。
【0027】
なお、上記の実施例1では、ラマン散乱光を採取する光軸と同じ光軸上より、レーザー光を試料に対して照射させている。このようなラマン散乱光を後方散乱光と呼ぶ。ラマン散乱光の測定方法としては、後方散乱光の測定に限らず、励起光であるレーザー光を試料に対して斜め方向に照射して、ラマン散乱光を採取する光軸とレーザー光の光軸を一致させない疑似後方散乱光の測定でも構わない。また、平行光束のレーザー光を、対物レンズ103を通さずに直接、中空ファイバー104の開口端に照射させてもよい。
【符号の説明】
【0028】
3 対物レンズ(対物光学手段)
4 中空ファイバー(筒状部材)
10 分光測定装置
41 他方の開口端
42 一方の開口端
43 筒部
W 溶液試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液試料に照射光を照射することによって生じる溶液試料からの光を検出し、該光のスペクトルに基づいて溶液試料を分析する分光測定方法であって、
筒状部材を用いて、一方の開口端を溶液試料に浸して該筒状部材の筒部に溶液試料を取り込み、
前記筒部の他方の開口端に向けて前記照射光を照射して、該照射光が前記取り込まれた溶液試料中を進むことによって生じる溶液試料からの光を、該溶液試料中にて前記筒部の内周面により多重反射させることによって、前記他方の開口端から出射する光を増強させ、
前記他方の開口端からの光を検出して分析に用いることを特徴とする分光測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の分光測定方法において、前記一方の開口端から溶液試料を毛細管現象によって前記筒部内に取り込むことを特徴とする分光測定方法。
【請求項3】
溶液試料に照射光を照射する照射手段と、前記照射光によって生じる溶液試料からの光を集光する対物光学手段と、を備え、前記対物光学手段によって集光した光を検出して、該光のスペクトルに基づいて溶液試料を分析する分光測定装置であって、
前記対物光学手段と溶液試料との間に設けられ、一方の開口端が溶液試料に浸された状態で配置された筒状部材を備え、
前記照射手段は、前記筒状部材の他方の開口端に向けて照射光を照射し、
前記筒状部材は、前記一方の開口端から該筒状部材の筒部に溶液試料を取り込んで、前記他方の開口端からの照射光が前記取り込まれた溶液試料中を進むことによって生じる溶液試料からの光を、該溶液試料中にて前記筒部の内周面により多重反射させることによって、前記他方の開口端から出射する光を増強し、
前記対物光学手段は、前記他方の開口端からの光を集光することを特徴とする分光測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の分光測定装置において、前記筒状部材は中空ファイバーであることを特徴とする分光測定装置。
【請求項5】
請求項3記載の分光測定装置において、前記筒部の内周面には金属で覆われた反射面が形成されていることを特徴とする分光測定装置。
【請求項6】
請求項3記載の分光測定装置において、前記筒状部材は、金属管であることを特徴とする分光測定装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載の分光測定装置に用いられる筒状部材であって、前記対物光学手段と溶液試料との間に設けられ、一方の開口端が溶液試料に浸された状態で配置されることを特徴とする筒状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−232107(P2011−232107A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101406(P2010−101406)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】