説明

分光測色方法

【課題】色相、明度、彩度が変化する被測定物について、短時間で分光測定を可能とする分光測色装置を提供する。
【解決手段】分光測色装置は、被測定物の表面に対向する面に配置される開口10aを有する筐体10と、可視光波長領域内の複数の波長の光に感度を有する多色撮像素子19と、前記撮像素子の測定可能領域を含む波長の光であって異なる分光特性の白色光を発光可能な複数のLEDからなる光源11〜14とを前記筐体内部に有し、光源11〜14から開口10aを通して被測定物に照射された光の反射光を多色撮像素子19により受光して前記被測定物の色測定を行うものである。光源11〜14は、照射される光の照射角度を異ならせることができるように複数箇所に設けられており、照射角度ごとにLEDを順次異なる分光特性で発光するように発光タイミングを制御する制御手段21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被測定物の分光的な反射特性を特定することにより被測定物の色を測定する分光測色計に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷や染色や織物などの各種の色彩関連分野における製品の色彩管理手段として、各種の色彩測定装置が実用化されている。ところで、物体の色を分光的に測定するためには被測定物の反射率の分光特性を何らかの方法で特定する必要があり、大きく分けて「前分光方式」と「後分光方式」の2つの方法がある。図10は、物体の色を分光的に測定する測色方式の概略構成を示す図であり、(a)は前分光方式のものであり、(b)は後分光方式のものである。
【0003】
前分光方式を用いた装置は、例えば、特許文献1に開示されており、図10(a)に示すように、狭い波長範囲の光を発光する光源71a〜71fから光91を被測定物2に照射し、その反射光93を分光応答度の比較的均一な検出器78(例えば、モノクロの撮像素子)で検出するものであり、入射光91の波長範囲を発光させる光源71a〜71fを順次切り換えることにより分光測定を行う方法である。一方、後方分光方式を用いた装置は、例えば、特許文献2に開示されており、可視光全体の波長をほぼ均等に含む白色光を発光する光源81から光91を被測定物2に照射し、その反射光の光路の途中に設けられた複数のバンドパスフィルタ85a〜85fを備えるフィルタを順次切り換えて、分光応答度の比較的均一な検出器78(例えば、モノクロの撮像素子)を用いて反射光93の分光的な強度分布を測定する方法である。
【0004】
このように、前分光方式及び後分光方式とも測定色(バンド)数の増加にともない、分光性能を向上させることができるが、撮像時間が長くなるという問題がある。
【0005】
これに対し、非特許文献1には、一般的な3バンドのカラーデジタルカメラと複数光源を組み合わせたマルチバンド撮影法が開示されている。この方法は、いわば、前分光方式と後分光方式とを組み合わせたような方法であり、安価なデジタルカメラをそのまま用いることができると共に、撮影時間を短くすることができる点で好適である。
【0006】
しかし、具体的な照射受光方式やその他タイミングなどが開示されておらず、また、面の色相、明度、彩度が変化するメタリックカラー塗装やパールマイカカラー塗装の塗装面を評価することができない。
【0007】
一方、面の色相、明度、彩度が変化するメタリックカラー塗装やパールマイカカラー塗装の塗装面の評価に関しては、例えば、特開平11-211673号公報などに開示されている。この装置は、所定の位置関係に保持された2次元アレイセンサと照明とを被測定物の塗装面に対して所定の距離で正対させた状態で保持する構成を有する。そして、2次元アレイセンサと照明とを被測定物に対して相対的に移動させながら広範囲にわたって撮影を繰り返すことで、被測定物の同一点から反射された光線の出射角度がそれぞれ異なった状態での複数の画像を得、この複数の画像から被測定物の同一点の輝度値などをそれぞれ抽出することにより、変角輝度の分布を求め、これに基づいて被測定物の光学的反射性状を定量的に評価するものである。
【0008】
したがって、上述したいずれかの被測定物の反射率の分光特性の測定方法と、この装置を組み合わせることによって、メタリックカラー塗装やパールマイカカラー塗装の塗装面について分光測定ができそうである。
【0009】
しかし、上述のように、2次元アレイセンサと照明とを被測定物に対して相対的に移動させながら広範囲にわたって撮影を繰り返す装置において、複数バンドの測定を行う必要があり、測定に長時間を有する。すなわち、最も撮影時間が短い非特許文献1に開示の分光測定方法を用いたとしても、まず、第1の光源を照射させて、被測定物を移動させることによって広範囲にわたって撮影したのち、被測定物と光源の位置関係を元の状態に戻してから、第2の光源を照射させて、同様に被測定物を移動させることが必要となる。すなわち、光源の数だけ被測定物の相対移動を繰り返す必要があり、測定に要する時間は多大なものとなる。
【0010】
【特許文献1】特開2000−292259号公報
【特許文献2】特開平7−120324号公報
【特許文献3】特開平11-211673号公報
【非特許文献1】カラーフォーラムJAPAN2002 予稿集91−94頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、色相、明度、彩度が変化する被測定物について、短時間で分光測定を可能とする分光測色装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の分光測色装置を提供する。
【0013】
分光測色装置は、被測定物の表面に対向する面に配置される開口を有する筐体と、可視光波長領域内の複数の波長の光に感度を有する多色撮像素子と、前記撮像素子の測定可能領域を含む波長の光であって異なる分光特性の白色光を発光可能な複数のLEDからなる光源とを前記筐体内部に有し、前記光源から前記開口を通して被測定物に照射された光の反射光を前記多色撮像素子により受光して前記被測定物の色測定を行うものである。そして、前記光源は、照射される光の照射角度を異ならせることができるように複数箇所に設けられており、照射角度ごとにLEDを順次異なる分光特性で発光するように発光タイミングを制御する制御手段とを有する。
【0014】
上記構成において、装置は、筐体の内部に光源と多色撮像素子とを備える。光源としては、LEDが用いられ、被測定物に対向して配置される筐体の面に設けられた開口に向けて所定の照射角度で発光する。開口を通って被測定物の表面で反射した反射光は、多色撮像素子に入射して、被測定物の表面輝度を測定する。
【0015】
発光装置には、分光特性の異なる白色光を発光する。具体的には、例えば、異なる色の光を発光することができる複数の単色LEDと、各単色LEDから発光した光束を1箇所に集める集光手段とを備えることによって、これを実現することができる。また、各単色LEDを少なくとも3つ以上備え、各単色LEDをそれぞれ独立して点灯、消灯や照度を切り替える点灯切り替え手段をさらに備えることにより、分光特性が異なる白色光を発光することができる。一方、他の方法としては、異なる分光特性の白色光を発光する白色LEDを複数備えてもよい。
【0016】
光源は、LEDから照射される光の照射角度が異なるように複数箇所に設けられている。
【0017】
分光測色装置は、制御手段によってLEDの発光のタイミングを制御する。具体的には、照射角度ごとにLEDを異なる分光特性を備えて発光させる。すなわち、最初の照射角度において異なる分光特性を有する光を複数発光させ、その後照射角度を変えて同様に異なる分光特性を有する光を発光させる。このように発光するLEDを順次切りかえる場合でも、応答が速いLEDを用いているため、測色に要する時間が長くなることを防止することができる。
【0018】
上記構成によれば、照射角度及び分光特性が異なる白色光源を順次切り替えて発光させて、その反射光を多色撮像素子を用いて測定することにより、被測定物の分光測定及び色相、明度、彩度が変化する面を有する被測定物の表面性状を評価することができる。また、測定においては、光源の切り替え制御ですみ、当該測定において、被測定物を測色装置に対して相対的に移動させる必要がないことから、短時間で測定を行うことができる。
【0019】
本発明の分光測色装置は、具体的には以下のように種々の態様で構成することができる。
【0020】
前記光源は、LEDを線状に配列したLED列を備えていることが好ましい。また、この場合において、LED列は、前記分光特性の異なるLEDを混在して同一線上に配列させていてもよい。
【0021】
また、好ましくは、前記LEDは環状に配列されており、前記撮像素子は、前記反射光を前記環状に配列されたLED列の内側から鉛直方向に受光するように配置してもよい。このような構成を取ることにより、被測定物の表面で鉛直方向に反射した反射光が多色撮像素子に入射することとなるため、被測定物の撮影領域を正方領域とすることができ、測定領域を大きくすることができる。
【0022】
また、好ましくは、前記多色撮像素子とは異なる複数の波長の光に感度を有する第2多色撮像素子と、前記多色撮像素子に入射される反射光の光路途中に配置され前記反射光を第2多色撮像素子のほうに反射するビームスプリッタとを備える。このような構成を取ることにより、多色撮像素子及び第2多色撮像素子の2つにより測定可能なバンド数を増やすことができ、撮影時間を増加させることなく、より詳細な分光特性を測色することができる。
【0023】
上記各構成において、さらに、光束を拡散する拡散部材を前記LEDから発光した光束の光路に挿入してもよい。このように拡散部材を用いることにより、発光装置から発光される光束を均一に広げることができ、被測定物状における場所による照度のばらつきを少なくすることができる。よって、測色の精度を向上させることができる。
【0024】
好ましくは、前記多色撮像素子は、一次元撮像素子であり、分光測色装置に対する前記被測定物の位置を相対的に直線的に移動させる移動手段をさらに備える。このように構成することにより、被測定物を連続的に移動させて、広範囲にわたって測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る分光測色装置について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる分光測色装置の構成を示すブロック図である。本分光測色装置1は、被測定物2に対向する面に開口10aを有する筐体10の内部に以下の各ブロックを備えている。開口10aは、長方形の開口である。
【0027】
筐体10の内部には、開口の長手方向に平行に延在する線状に配置された第1LED11、第2LED12、第3LED13、第4LED14が設けられている。第1LED11と第2LED12及び、第3LED13と第4LED14は一組として機能し、それぞれの組のLEDは、近接して配置されているため、ほぼ同じ照射角で白色光を発光する。一方、異なる組のLED間では、照射角が異なるように配置されている。照射角は特に限定されるものではなく、例えば、25゜、60゜、90゜など、被測定物の性状や装置の設計において、適宜自由に設定することができる。
【0028】
2つの組に属するLEDは、それぞれ異なる分光特性を有する白色光を発光する。具体的には、第1LED11と第3LED13から発光される白色光は同じ分光特性を有し、第2LED12と第4LED14から発光される白色光の分光特性とは異なっている。
【0029】
各LEDからは、矢印91、92に示すように筐体10の開口10aに向かって白色光が照射される。この光路の途中には、集光レンズ15,17と拡散部材16,18が設けられており、各LED11〜14からの光を1箇所に集めると共に、照射場所により照度のムラができないように、光束を拡散する。
【0030】
また、筐体10の内部には、各LED11〜14から照射された光が被測定物2表面で反射した反射光を受光するCCD19を備える。すなわち、CCD19は、筐体10の開口10aの方向に受光面を向けて配置されている。CCD19は、白黒のCCDの表面にRGBのバンドパスフィルタを付したものであり、一般的に3バンドのカラーCCDとして広く用いられているものが使用可能であり、低コストで構成することができる。開口10aとCCD19の光路の途中には、レンズ20が設けられており、反射光をCCDの撮像面上で結像させる。
【0031】
また、筐体10内には、制御回路21が設けられており、後述するように各LED11〜14の発光タイミング及びCCD19の光電変換処理のタイミングを調整する。操作22、表示部23は、本実施形態にかかる分光測色装置の操作及びモードや状態表示などに使用される。
【0032】
図2は、図1の分光測色装置の光学系の構成を示す概略斜視図である。上述のように、各LED11〜14は、複数個が一列に配列されてLED列11x〜14xを構成する。各LED11〜14から照射された光は、レンズ15,17を通過することにより、厳密には異なる位置にある第1、第2LED及び、第3、第4LEDからの照射光91、92の被測定物2への入射角度をより近似させることができる。また、レンズ15、17の下方には、拡散部材16,18が設けられている。拡散部材は、直線状に延在するLED列11x〜14xから均一な照度の光を発光させるために照射光を拡散し、被測定物2上における場所による照度のムラを少なくするように機能する。
【0033】
被測定物2の表面に到達した光束は、被測定物2の表面で反射し、レンズ20によってCCDの撮像面上で結像するように集光されたのち、CCD19に入射する。CCDは、被測定物2の表面の測定領域3から反射した光を受けて、輝度値情報を制御回路21に出力する。
【0034】
このときのCCD19のRGBの各輝度値は、LEDから照射された白色光の分光特性により異なる。図3は、分光特性が異なる白色光を受光したCCDの出力例を示す図である。白色光は、CCDの測定可能領域Vを含む波長の光を発光することができるものであることが必要である。
【0035】
図3(a)に示すように、白色光が長波長の光が強い場合、すなわち、赤っぽい白色光の場合は、CCDの各RGBのピクセルの感度4R,4G,4Bに対して、長波長側にシフトした出力値5R,5G,5Bのピークを得ることができる。一方、図3(b)に示すような短波長の光が強い場合、すなわち、青っぽい白色光が照射された場合は、出力値6R,6B,6Gのピークは、短波長側にシフトする。すなわち、同一のCCD19について、2つの白色光の分光特性を異ならせることにより、それぞれRGBの各ピクセルから2バンドの測定を行うことができる。
【0036】
LED11〜14はそれぞれ、制御回路21を介して、コンピュータで制御されており、照射角度及び分光特性を変えて配置されたLEDを高速に点滅切り換え制御して測定することにより、変角情報を取得する。これらの情報はすべてコンピュータに伝送され、取得した変角情報を用いて、被測定物2の色、光沢感、フロップ感、メタリック感などの評価値が演算される。
【0037】
図4は、図1にかかる分光測色装置の制御回路の各LED及びCCDの制御タイミングチャートである。制御回路21は、点灯させるLEDを順次切り替えると共に、CCDの露光開始及び露光終了のタイミングを制御する。具体的には、まず、t1において、第1LED11が点灯し、同時にCCD19が露光を開始する。所定時間が経過した後、t10のタイミングで第1LED11を消灯させ、CCDの露光を終了させる。その後、t2までCCDの情報の出力を行い、t2のタイミングで、第2LED12を点灯させ、同時にCCD19の露光を開始する。同様にt20のタイミングでLEDを消灯してCCDの露光を終了する。この段階で、第1組の6バンドの測定が終了する。次に、第3LED及び第4LED14についても同様に順次点灯させ、点灯中にCCDの露光を行うように制御する。
【0038】
このように、照射角度及び分光特性が異なる白色光源を順次切り替えて発光させて、その反射光を多色撮像素子を用いて測定することにより、被測定物の分光測定及び色相、明度、彩度が変化する面を有する被測定物の表面性状を評価することができる。また、測定においては、光源の切り替え制御ですみ、当該測定において、被測定物を測色装置に対して相対的に移動させる必要がないことから、短時間で測定を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態にかかる分光測色装置の変形例としては、光源として用いられる白色LEDのかわりに、異なる色の光を発光することができる複数の単色LED(例えば、赤、青、緑のLED)を用い、各単色LEDから発光した光束を1箇所に集めるレンズにより白色光を発光するようにしてもよい。また、この場合に、中心波長の異なる単色LEDを少なくとも3つ以上備え、各単色LEDをそれぞれ独立して点灯、消灯、照度などを切り替えることにより、分光特性の異なる白色光を発光させることもできる。このように複数の単色LEDを用いて白色光を発光させることにより、色の異なる白色LEDを用いた場合より分光精度を高くすることができる。
【0040】
次に本発明にかかる第2実施形態について説明する。第2実施形態にかかる分光測色装置1bは、大部分が第1実施形態にかかる分光測色装置と共通するため、異なる点についてのみ説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【0041】
本実施形態にかかる分光測色装置1bは、各LED11〜14と前記被測定物との間に設けられたレンズ15、17及び拡散部材16、18が設けられていない点において、第1実施形態にかかる分光測色装置と異なる。すなわち、当該分光測色装置の光源として用いられるLEDは、非常に小さいものであるため、同一組のLEDにおいて、これを隣接して配置した場合における、照射角度の差はほとんど無視することができることから、これらの部材を省略したものである。
【0042】
次に、本発明にかかる第3実施形態について説明する。第3実施形態にかかる分光測色装置1cについても、第1実施形態にかかる分光測色装置と共通する部分については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図6は、本発明の第3実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【0043】
本実施形態にかかる分光測色装置1cは、組を構成する2種類のLEDが交互に一列に配列されている点において、第1実施形態にかかる分光測色装置と異なる。具体的には、1つの組を構成する第1LED11と第2LED12は、交互に直線状に配置されて1つのLED列40を構成する。一方、もう1つの組を構成する第3LED13と第4LED14についても交互に直線状に配置されて1つのLED列41を構成する。
【0044】
このようにLEDを配置することにより、同じ組に属するLEDについて照射角度の差を極めて小さくすることができ、分光測色の精度を高くすることができる。
【0045】
次に、本発明にかかる第4実施形態について説明する。第4実施形態にかかる分光測色装置1dについても、第1実施形態にかかる分光測色装置と共通する部分については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図7は、本発明の第4実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【0046】
本実施形態にかかる分光測色装置1dは、CCD19aとは異なる複数の波長の光に感度を有する第2のCCD19bと、前記CCD19aに入射される反射光の光路途中に配置され、一部の反射光を第2CCD19bのほうに反射するビームスプリッタ29とを備えた点に特徴を有する。
【0047】
CCD19a及び第2CCD19bは、感度を有する波長が異なっている。すなわち、CCD19aはRGBの原色フィルタが用いられているのに対し、第2CCD19bは、MYCの補色フィルタが用いられている。このように感度を有する波長が異なる2つのCCDを用いることにより、1つの光源が点灯している間に測定することができるバンド数を増やすことができる。
【0048】
また、本実施形態にかかる分光測色装置の変形例として、感度を有する波長が異なるCCDを用いる変わりに、フィルタ機能を有するビームスプリッタ29を使用してもよい。フィルタ機能を有するビームスプリッタを用いることにより、同じCCDを用いながら、本実施形態と同様にバンド数を増やすことができる。
【0049】
次に、本発明にかかる第5実施形態について説明する。第5実施形態にかかる分光測色装置1dについても、第1実施形態にかかる分光測色装置と共通する部分については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図8は、本発明の第5実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【0050】
本実施形態にかかる分光測色装置1eは、CCD19としてラインセンサを用いている点に特徴を有する。また、ラインセンサを用いて平面画像とするために、矢印98に示すように、分光測色装置に対して被測定物を相対的に移動させるための手段を備えている。
【0051】
このようにCCDとして、ラインセンサを用いることにより、画像の取り込みを極めて短時間に行うことができ、処理の高速化を図ることができる。また、CCDの画角のすべての位置から被測定物表面までの距離の差が少なくなり、反射光の方向性を精度よく測定することができる。
【0052】
なお、本実施形態にかかる分光測色装置は、平面画像を得るために、次のように処理すること望ましい。まず、(1)第1LED11を点灯して、CCD19で1ライン分計測する。被測定物表面からの反射光の1次元情報を第1データとして取得する。第1データ取得後、第1LEDを消灯する。次いで(2)第2LED12を点灯して、CCD19で次の1ラインを計測する。被測定物表面からの反射光の1次元情報を第2データとして取得する。データ取得後、第2LEDを消灯する。(3)同様に第3LED13により第3データ、第4LED14により第4データを取得し、第1ラインにおけるデータを取得を終了する。(4)移動手段によって被測定物を矢印98に示すように移動しつつ、これらの処理を任意に設定した取り込みライン数になるまで繰り返し行ない、各ラインにおけるデータを取得する。(5)所定ラインまで取り込みが終了すると、それぞれのラインの第1〜第4データを4枚の画像に並べ替え、それぞれ取り込みライン順に表示することにより、それぞれの平面画像を取得する。すなわち、第1ラインの第1データを第1平面画像の第1ラインに移動し、第1ラインの第2データを第2平面画像の第1ラインに移動する。以下同様に第3平面画像、第4平面画像を作成する。このようにして得られた第1〜第4の平面画像に基づいて、被測定物の表面を測色する。
【0053】
次に、本発明にかかる第6実施形態について説明する。第6実施形態にかかる分光測色装置1fについても、第1実施形態にかかる分光測色装置と共通する部分については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図9は、本発明の第6実施形態にかかる分光測色装置の概略構成を示す図である。
【0054】
本実施形態にかかる分光測色装置1fは、同じ組のLEDが交互に環状に配置された1つのLED列25、26を構成しており、CCD19は、反射光を環状に配列されたLED列25、26の内側から鉛直方向に受光するように配置されている。
【0055】
各LED列25,26に属するLEDは、中心方向を向くように傾斜して設けられており、当該傾斜が各LEDからの照射角を構成する。また、CCDは、鉛直方向すなわち、被測定物の法線方向の反射光を受光するように配置されている。このようにCCDを配置することにより、撮影領域を正方領域とすることができ、1回の測定でより広範囲の測色を行うことができる。
【0056】
以上説明したように、上記各実施形態にかかる分光測色装置によれば、照射角度及び分光特性が異なる白色光源を順次切り替えて発光させて、その反射光を多色撮像素子を用いて測定することにより、被測定物の分光測定及び色相、明度、彩度が変化する面を有する被測定物の表面性状を評価することができる。また、測定においては、光源の切り替え制御ですみ、当該測定において、被測定物を測色装置に対して相対的に移動させる必要がないことから、短時間で測定を行うことができる。
【0057】
また、同じ組の異なるLEDを線上に交互に配列させることにより、それぞれのLEDからの照射角度を同じにすることができ、測定精度を高くすることができる。
【0058】
また、CCDとは異なる複数の波長の光に感度を有する第2CCDと、前記CCDに入射される反射光の光路途中に配置され、反射光の一部を第2CCDのほうに反射するビームスプリッタとを備えることにより、1つの光源が点灯している間に測定することができるバンド数を増やすことができる。
【0059】
さらに、CCD19としてラインセンサを用いることにより、きわめて短時間で画像の取り込みを行うことができ、処理の高速化を図ることができる。また、LEDを環状に配列し、CCDを反射光が環状に配列されたLED列の内側から鉛直方向に入射するように配置することにより、撮影領域を正方領域とすることができ、1回の測定でより広範囲の測色を行うことができる。
【0060】
なお、本発明は上記の各実施形態及びそれらの変形例に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0061】
例えば、本実施形態では、LEDは2箇所に設けられ、変角情報としては、2つとしたが、特にこれに限定されるものではなく、3個所以上とすることができる。また、各組を構成する分光特性が異なるLEDを2種類としたが、これも3種以上の分光特性を有するLEDを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる分光測色装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の分光測色装置の光学系の構成を示す概略斜視図である。
【図3】分光特性が異なる白色光を受光したCCDの出力例を示す図である。
【図4】図1にかかる分光測色装置の制御回路の各LED及びCCDの制御タイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかる分光測色装置の光学系の概略構成を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第6実施形態にかかる分光測色装置の概略構成を示す図である。
【図10】物体の色を分光的に測定する測色方式の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1,1a〜1f 分光測色装置
2 被測定物
3 撮影画角
10 筐体
10a 開口
11 第1LED
12 第2LED
13 第3LED
14 第4LED
15,17 集光レンズ
16,18 拡散部材
19,19a CCD
19b 第2CCD
20 レンズ
21 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面に対向する面に配置される開口を有する筐体と、可視光波長領域内の複数の波長の光に感度を有する多色撮像素子と、前記撮像素子の測定可能領域を含む波長の光であって異なる分光特性の白色光を発光可能な複数のLEDからなる光源とを前記筐体内部に有し、前記光源から前記開口を通して被測定物に照射された光の反射光を前記多色撮像素子により受光して前記被測定物の色測定を行う分光測色装置であって、
前記光源は照射される光の照射角度を異ならせることができるように複数箇所に設けられており、照射角度ごとにLEDを順次異なる分光特性で発光するように発光タイミングを制御する制御手段とを有することを特徴とする分光測色装置。
【請求項2】
前記光源は、異なる色の光を発光することができる複数の単色LEDを備え、各単色LEDから発光した光束を1箇所に集める集光手段とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の分光測色装置。
【請求項3】
前記各単色LEDを少なくとも3つ以上備え、各単色LEDをそれぞれ独立して点灯、消灯を切り替える点灯切り替え手段をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の分光測色装置。
【請求項4】
前記光源は、異なる分光特性の白色光を発光する白色LEDをそれぞれ複数備えることを特徴とする、請求項1に記載の分光測色装置。
【請求項5】
前記光源は、LEDを線状に配列したLED列を備えていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の分光測色装置。
【請求項6】
前記LED列は、前記分光特性の異なるLEDを混在して同一線上に配列していることを特徴とする、請求項5に記載の分光測色装置。
【請求項7】
前記LEDは環状に配列されており、前記撮像素子は、前記反射光を前記環状に配列されたLED列の内側から鉛直方向に受光するように配置されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の分光測色装置。
【請求項8】
さらに、前記多色撮像素子とは異なる複数の波長の光に感度を有する第2多色撮像素子と、前記多色撮像素子に入射される反射光の光路途中に配置され前記反射光の一部を第2多色撮像素子のほうに反射するビームスプリッタとを備えたことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の分光測色装置。
【請求項9】
さらに、光束を拡散する拡散部材を前記LEDから発光した光束の光路に挿入したことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の分光測色装置。
【請求項10】
前記多色撮像素子は、一次元撮像素子であり、分光測色装置に対する前記被測定物の位置を相対的に直線的に移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の分光測色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−180742(P2008−180742A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113751(P2008−113751)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【分割の表示】特願2003−14980(P2003−14980)の分割
【原出願日】平成15年1月23日(2003.1.23)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】