分光装置
【課題】小型化が可能であって安価且つ組み立て調整が容易な分光装置を提供する。
【解決手段】分光装置10は、回折格子13と反射光学系15とを備えており、入射スリット11からの被測定光を回折格子13に入射させて得られた光を反射光学系15で反射させ、この反射光を再度回折格子13に入射させて被測定光を分光する。反射光学系15は、凸面鏡と凹面鏡とを含み、被測定光を回折格子13に入射させて得られた光を凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射させる。凸面鏡と凹面鏡との間の反射回数が奇数回である場合には、反射光学系15は入射した光の分散方向を逆向きにして射出する。
【解決手段】分光装置10は、回折格子13と反射光学系15とを備えており、入射スリット11からの被測定光を回折格子13に入射させて得られた光を反射光学系15で反射させ、この反射光を再度回折格子13に入射させて被測定光を分光する。反射光学系15は、凸面鏡と凹面鏡とを含み、被測定光を回折格子13に入射させて得られた光を凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射させる。凸面鏡と凹面鏡との間の反射回数が奇数回である場合には、反射光学系15は入射した光の分散方向を逆向きにして射出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子等の波長分散素子を用いて被測定光を分光する分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長分散素子に対して被測定光を往復させることにより、分解能を向上させるとともにダイナミックレンジを拡大させたダブルパス型の分光装置が開発されている。図10は、従来のダブルパス型の分光装置の構成を示す斜視図である。尚、図10に示す分光装置は、ツェルニー・ターナー型の光学系を有するダブルパス型の分光装置である。図10に示す通り、分光装置100は、入射スリット101、凹面鏡102、回折格子103、凹面鏡104、反射光学系105、及び射出スリット106を含んで構成される。
【0003】
分光装置100内に入射した被測定光は分光装置100内を往復して外部に射出される。つまり、往路では、入射スリット101から入射した被測定光が、凹面鏡102、回折格子103、及び凹面鏡104を順に介して反射光学系105に入射し、復路では反射光学系105から射出された被測定光が、凹面鏡104、回折格子103、及び凹面鏡102を順に介して射出スリット106から射出される。
【0004】
入射スリット101は、分光装置100に入射する被測定光の強度を制限する。凹面鏡102は、入射スリット101から入射された往路を進む被測定光を平行光にして回折格子103に入射させるとともに、回折格子103で回折された復路を進む被測定光を射出スリット106に集光する。回折格子103は、多数の溝が形成された回折面103aを有しており、凹面鏡102からの往路を進む平行光及び凹面鏡104からの復路を進む平行光を波長毎に異なる角度で回折させる。
【0005】
尚、回折格子103は、回折面103aに含まれる回転軸RXの周りで回動可能に構成されている。これにより、回折格子103によって回折されて凹面鏡104に入射される往路を進む被測定光、及び、回折格子103によって回折されて凹面鏡102に入射される復路を進む被測定光の波長を可変することができる。
【0006】
凹面鏡104は、回折格子103によって回折された往路を進む被測定光のうち、凹面鏡104に入射した被測定光のみを反射光学系105に集光させるとともに、反射光学系105から射出される復路を進む被測定光を平行光にして回折格子103に入射させる。反射光学系105は、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにして(反転して)再度凹面鏡104に入射させる。射出スリット106は、凹面鏡102によって集光される復路を進む被測定光の波長帯域を制限する。
【0007】
次に、反射光学系105について説明する。図11は反射光学系105を拡大した斜視図であり、図12は反射光学系105の平面図である。図11,図12に示す通り、反射光学系105は、第1平面ミラー110、第2平面ミラー111、第3平面ミラー112、中間スリット113、リフレクタ114、及び第4平面ミラー115を含んで構成され、反射光学系105に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系105から射出される。
【0008】
図12に示す通り、反射光学系105を平面的に見た場合には、反射光学系105はほぼ対称に構成されている。つまり、反射光学系105を平面的に見ると、第1平面ミラー110(第4平面ミラー115)で反射される被測定光の光軸OXの延長線上に中間スリット113が配置されているとともに、この光軸OXに関して第2平面ミラー111と第4平面ミラー115とが対称に配置されており、光軸OXに関して第3平面ミラー112とリフレクタ114とが対称に配置されている。尚、反射光学系105は、図10に示す凹面鏡104の焦点位置が中間スリット113の位置になるよう各光学部材が配置されている。また、リフレクタ114は、中間スリット113を透過した被測定光の光路を上方向にずらすため(シフトさせるため)に設けられている。
【0009】
以上の構成の反射光学系105は、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにする。ここで、図11,図12に示す通り、凹面鏡104から反射光学系105に入射する被測定光の分散方向を符号D11を付した矢印で示す。尚、符号D11を付した矢印の先側が波長が短く、矢印の根本側が波長が長いとする。この被測定光が反射光学系105に入射すると、第1平面ミラー110、第2平面ミラー111、及び第3平面ミラー112で順に反射された後に中間スリット113に入射する。ここで、被測定光は中間スリット113のスリット幅に応じた波長選択がなされる。
【0010】
中間スリット113を透過した被測定光は、リフレクタ114で上方向に反射された後に第4平面ミラー115及び第1平面ミラー110で反射されて反射光学系105から射出される。ここで、反射光学系105から射出される被測定光の分散方向は、符号D12を付した矢印で示す通り、反射光学系105に入射する被測定光の分散方向とは逆向きになる。反射光学系105によって、復路を進む被測定光の分散方向を往路を進む被測定光の分散方向とは逆向きにすることにより、復路を進む被測定光は回折格子103によって更に回折されるため、波長の分解能を向上させることができる。
【0011】
次に、従来の分光装置の他の例について説明する。図13は、従来のダブルパス型の分光装置の他の構成を示す斜視図である。尚、図13においては、図10に示した構成に相当する構成には同一の符号を付しており、これらについては説明を省略する。図13に示す分光装置120は、図10に示す分光装置100が備える反射光学系105に代えて反射光学系125を備えている。この反射光学系125は、反射光学系105と同様に、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにする。
【0012】
図14は、反射光学系125を拡大した斜視図である。図14に示す通り、反射光学系125は、スリット131、レンズ群132、及び平面ミラー133を含んで構成される。スリット131及び平面ミラー133は、その中心がレンズ群132の光軸上に位置するよう配置されている。スリット131は、凹面鏡104の焦点位置に配置されている。尚、スリット131は、凹面鏡104からの被測定光がスリット開口の下部に集光されるよう配置されている。レンズ群132は、スリット131を介した被測定光を平行光にするとともに、平面ミラー133で反射された平行光をスリット131に集光させる。平面ミラー133は、レンズ群132からの平行光を反射してレンズ群132に入射させる。
【0013】
上記構成において、スリット131のスリット開口の下部に集光された被測定光のうち、スリット131を透過した被測定光は、レンズ群132の光軸よりも下側の部分を通過してレンズ群132から平行光として射出される。ここで、レンズ群132から射出される平行光は上方に向けてある角度で射出される。レンズ群132から射出された平行光は、平面鏡133で上方に反射されてレンズ群132の上部に入射し、レンズ群132の光軸よりも上側の部分を通過してレンズ群132から射出されてスリット131のスリット開口の上部に集光される。図14に示す反射光学系125では、平面ミラー133で被測定光が反射される前後で被測定光の分散方向が逆向きになる。このため、分光装置120においても波長の分解能を向上させることができる。
【0014】
尚、以上説明した従来技術の詳細については、以下の特許文献1〜3を参照されたい。
【特許文献1】特開2000−88647号公報
【特許文献2】特開平6−221922号公報
【特許文献3】特開2003−139610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、図10〜図12を用いて説明した分光装置100においては、反射光学系105が4枚の平面ミラーと1つのリフレクタとから構成されており、反射光学系105を構成する光学部材が多いため小型化に向かず、組み立て調整が困難になるという問題がある。また、図13,図14を用いて説明した分光装置120では、反射光学系125にレンズ群132を用いているため波長分散が生じ、分光装置120の十分な性能を得ることができる波長範囲が限られてしまうという問題がある。ここで、波長分散が少ないレンズ(色消しレンズ)を用いることも考えられるが、このようなレンズは高価であるため分光装置120のコスト上昇を招いてしまうという問題がある。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化が可能であって安価且つ組み立て調整が容易な分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の分光装置は、波長分散素子(13)と、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を反射する反射光学系(15、35)とを備え、前記反射光学系で反射した光を再度前記波長分散素子に入射させて前記被測定光を分光する分光装置(10)において、前記反射光学系は、凸面鏡(23、26、27、4322、42)と凹面鏡とを含み、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることを特徴としている。
この発明によると、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光は、反射光学系が備える凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射されて反射光学系から射出された後に、再度波長分散素子に入射する。
また、本発明の分光装置は、前記凸面鏡及び前記凹面鏡が同心に配置されていることを特徴としている。
更に、本発明の分光装置は、前記凸面鏡と前記凹面鏡との曲率半径の比が、n対n+1(nは正の整数)であることを特徴としている。
ここで、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で奇数回反射させることが好ましい。
具体的には、前記凸面鏡での反射回数はn回であり、前記凹面鏡での反射回数はn+1回であることを特徴としている。
また、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることにより分散方向を反転することが望ましい。
或いは、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射された光を反射して、再度前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させる反射部材を備えていることを特徴としている。
ここで、前記凸面鏡での合計の反射回数は2n回であり、前記凹面鏡での合計の反射回数は2(n+1)回であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、反射光学系が備える凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射させることにより反射しているため、分光装置を小型化することができるとともに安価にすることができ、更に組み立て調整を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による分光装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による分光装置の構成を示す斜視図である。尚、図1に示す分光装置は、ツェルニー・ターナー型の光学系を有するダブルパス型の分光装置である。図1に示す通り、本実施形態の分光装置10は、入射スリット11、凹面鏡12、波長分散素子としての回折格子13、凹面鏡14、反射光学系15、及び射出スリット16を含んで構成される。
【0020】
分光装置10内に入射した被測定光は分光装置10内を往復して外部に射出される。つまり、往路では、入射スリット11から入射した被測定光が、凹面鏡12、回折格子13、及び凹面鏡14を順に介して反射光学系15に入射し、復路では反射光学系15から射出された被測定光が、凹面鏡14、回折格子13、及び凹面鏡12を順に介して射出スリット16から射出される。
【0021】
入射スリット11は、分光装置10に入射する被測定光の強度を制限する。凹面鏡12は、入射スリット11から入射された往路を進む被測定光を平行光にして回折格子13に入射させるとともに、回折格子13で回折された復路を進む被測定光を射出スリット16に集光する。回折格子13は、多数の溝が形成された回折面13aを有しており、凹面鏡12からの往路を進む平行光及び凹面鏡14からの復路を進む平行光を波長毎に異なる角度で回折させる。
【0022】
尚、回折格子13は、回折面13aに含まれる回転軸RXの周りで回動可能に構成されている。これにより、回折格子13によって回折されて凹面鏡14に入射される往路を進む被測定光、及び、回折格子13によって回折されて凹面鏡12に入射される復路を進む被測定光の波長を可変することができる。
【0023】
凹面鏡14は、回折格子13によって回折された往路を進む被測定光のうち、凹面鏡14に入射した被測定光のみを反射光学系15に集光させるとともに、反射光学系15から射出される復路を進む被測定光を平行光にして回折格子13に入射させる。反射光学系15は、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにして(反転して)再度凹面鏡14に入射させる。射出スリット16は、凹面鏡12によって集光される復路を進む被測定光の波長帯域を制限する。
【0024】
次に、反射光学系15について説明する。図2は反射光学系15を拡大した斜視図であり、図3は反射光学系15の平面図であり、図4は反射光学系15の側面図である。尚、図2では、凹面鏡14からの往路を進む被測定光が反射光学系15に入射する側から見た状態を図示している。図2〜図4に示す通り、反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0025】
スリット21は、凹面鏡14の焦点位置に配置されている。従って、凹面鏡14によって集光された往路を進む被測定光は、スリット21のスリット開口の位置に集光される。また、図3に示す通り、反射光学系15を平面的に見た場合には、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23は同一直線上に配置されている。一方、図4に示す通り、反射光学系15を側面から見た場合には、反射光学系15内の光路が上下対称となるようにスリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23が配置されている。即ち、反射光学系15をなす各光学部材は、反射光学系15に対する被測定光の入射位置P1(スリット21のスリット開口の位置)と反射光学系15からの被測定光の射出位置P2とは、凹面鏡22及び凸面鏡23の中心を通る中心線に関して対称になるよう配置されている。
【0026】
凹面鏡22と凸面鏡23とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。即ち、凹面鏡22及び凸面鏡23の曲率中心は、凹面鏡22及び凸面鏡23の中心を通る中心線と、被測定光の入射位置P1及び被測定光の射出位置P2を通る直線との交点に設定されている。図3及び図4に示す例では、凹面鏡22と凸面鏡23との曲率半径の比は2:1に設定されている。
【0027】
上記構成において、凹面鏡14によってスリット21上に集光した被測定光は、スリット21に入射する。ここで、被測定光はスリット21のスリット幅に応じた波長選択がなされる。スリット21のスリット開口を透過した被測定光は、まず凹面鏡22に入射する。この被測定光は凹面鏡22によって反射された後で凸面鏡23に入射する。凸面鏡23に入射した被測定光は凸面鏡23によって反射された後で再度凹面鏡22に入射する。但し、先に入射した位置とは異なる位置に入射する。再度凹面鏡22に入射した被測定光は凹面鏡22によって反射された後で射出位置P2に集光され、反射光学系15から射出される。
【0028】
以上の通り、図3及び図4に示す構成では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で2回反射させるとともに凸面鏡23で1回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡23との間で合計3回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡23での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡23との曲率半径の比と同じ2:1である。
【0029】
反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡23との間で被測定光を奇数回反射させることにより、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにする。ここで、図2に示す通り、凹面鏡14から反射光学系15に入射する被測定光の分散方向を符号D1を付した矢印で示す。尚、符号D1を付した矢印の先側が波長が短く、矢印の根本側が波長が長いとする。この被測定光が反射光学系15に入射すると、上述した通り、凹面鏡22と凸面鏡23との間で奇数回反射した後に反射光学系15から射出される。
【0030】
ここで、反射光学系15から射出される被測定光の分散方向は、符号D2を付した矢印で示す通り、反射光学系15に入射する被測定光の分散方向とは逆向きになる。反射光学系15によって、復路を進む被測定光の分散方向を往路を進む被測定光の分散方向とは逆向きにすることにより、復路を進む被測定光は回折格子13によって更に回折されるため、波長の分解能を向上させることができる。
【0031】
次に、反射光学系15の変形例について説明する。図5は、反射光学系15の第1変形例を示す側面図である。尚、図5においては、図4に示した光学部材と同一のものについては同一の符号を付してある。図5に示す通り、この第1変形例に係る反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡26を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0032】
図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、図4に示す凸面鏡23に代えて曲率半径の異なる凸面鏡26が設けられており、且つ被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている点が相違する。図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、図4に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡22と凸面鏡26とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。しかしながら、図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比が3:2に設定されている点が相違する。この相違に応じて被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている。
【0033】
上記構成の第1変形例に係る反射光学系15では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で3回反射させるとともに凸面鏡26で2回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡26との間で合計5回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡26での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比と同じ3:2である。このように、第1変形例に係る反射光学系15においても、凹面鏡22と凸面鏡26との間で被測定光を奇数回反射させて、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにしていおり、波長の分解能を向上させることができる。
【0034】
図6は、反射光学系15の第2変形例を示す側面図である。尚、図6においても、図4に示した光学部材と同一のものについては同一の符号を付してある。図6に示す通り、この第2変形例に係る反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡27を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0035】
図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、図4に示す凸面鏡23に代えて曲率半径の異なる凸面鏡27が設けられており、且つ被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている点が相違する。図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、図4に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡22と凸面鏡26とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。しかしながら、図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡27との曲率半径の比は4:3に設定されている点が相違する。この相違に応じて被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている。
【0036】
上記構成の第2変形例に係る反射光学系15では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で4回反射させるとともに凸面鏡26で3回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡26との間で合計7回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡26での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比と同じ4:3である。このように、第2変形例に係る反射光学系15においても、凹面鏡22と凸面鏡27との間で被測定光を奇数回反射させて、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにしていおり、波長の分解能を向上させることができる。
【0037】
以上の通り、反射光学系1
5の凸面鏡及び凹面鏡の組み合わせとしては、同心であって、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比がn:n+1(nは正の整数)である凸面鏡及び凹面鏡を用いることができる。かかる関係にある凸面鏡及び凹面鏡を用いた場合には、反射光学系15に入射した被測定光が凹面鏡でn+1回で反射されるとともに、凸面鏡でn回反射された後で、反射光学系15から射出される。上記のnの値を適宜変更することにより、被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔(オフセット)を容易に調整することができる。
【0038】
次に、分光装置10に設けられる反射光学系の他の構成例について説明する。図7は、反射光学系の他の構成例を示す斜視図である。尚、図7に示す反射光学系は、図2に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡14からの往路を進む被測定光が反射光学系に入射する側から見た状態を図示している。また、図8は図7に示す他の構成例に係る反射光学系の平面図であり、図9は同反射光学系の側面図である。
【0039】
図7〜図9に示す通り、反射光学系35は、スリット41、凹面鏡42、凸面鏡43、及びリフレクタ44を含んで構成され、反射光学系35に入射した被測定光は、これらの光学部材を介して反射光学系35から射出される。スリット41は、凹面鏡14の焦点位置に配置されている。従って、凹面鏡14によって集光された往路を進む被測定光は、スリット41のスリット開口の位置に集光される。また、スリット41は、図8,図9に示す通り、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線からずれた位置に配置されている。
【0040】
また、反射光学系35を平面的に見た場合及び側面から見た場合の何れの場合であっても、反射光学系35内の光路が凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称となるようにスリット41、凹面鏡42、凸面鏡43、及びリフレクタ44が配置されている。リフレクタ44は、反射光学系35を平面的に見た場合に、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してスリット41と対称に配置されている。また、図9に示す通り、リフレクタ44は互いに直交する反射面44a,44bを備えており、反射面44a,44bの各々が、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に対して45°の角度をなすよう配置されている。
【0041】
反射光学系35が備える凹面鏡42及び凸面鏡43は、図2〜図3を用いて説明した凹面鏡22及び凸面鏡23と同様に同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット41)及び被測定光の射出位置P2を通り、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に垂直な面内に設定されている。尚、図8及び図9に示す例では、凹面鏡42と凸面鏡43との曲率半径の比が2:1に設定されている場合を例示して図示しているが、図5,図6を用いて説明した場合と同様に、他の比率にすることも可能である。被測定光の射出位置P2は、図8,図9に示す通り、被測定光の入射位置P1の上方に設定されている。
【0042】
上記構成において、凹面鏡14によってスリット41上に集光した被測定光は、スリット41に入射する。ここで、被測定光はスリット41のスリット幅に応じた波長選択がなされる。スリット41のスリット開口を透過した被測定光は、まず凹面鏡42に入射する。この被測定光は凹面鏡42によって反射された後で凸面鏡43に入射し、凸面鏡43で反射された後で凹面鏡42に再度入射する。
【0043】
ここで、図7〜図9に示す通り、スリット41を通過した被測定光の光軸は、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線から斜め下方向にずれている。このため、被測定光が凹面鏡42及び凸面鏡43によってそれぞれ1回反射されることにより、被測定光は凹面鏡42の中心から斜め上方向の位置に入射する。より具体的には、前述した通り、反射光学系35を平面的に見た場合及び側面から見た場合の何れの場合であっても、反射光学系35内の光路が凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称となるように設定されているため、凹面鏡42に対する第1回目の入射位置と第2回目の入射位置とは、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関して対称である。
【0044】
凹面鏡42に再度入射した被測定光は、リフレクタ44に入射して下方に反射された後、凹面鏡42側に反射されて凹面鏡42に入射する。ここで、図7〜図9に示す通り、リフレクタ44で反射された被測定光は、凹面鏡42の中心から斜め下側に入射する。より具体的には、リフレクタ44で反射された被測定光は、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線を含む垂直な面に関して、スリット41を通過した被測定光が凹面鏡42に最初に入射される入射位置と対称な位置に入射する。
【0045】
この被測定光は凹面鏡42によって反射された後で凸面鏡43に入射し、凸面鏡43で反射された後で凹面鏡42に再度入射する。即ち、被測定光はスリット41を通過した後で凹面鏡42による3回目の反射及び凸面鏡43による2回目の反射がなされた後で凹面鏡42に再度入射する(4回目の入射)。ここで、前述した通り、反射光学系35内の光路は凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称であるため、凹面鏡42に対する第3回目の入射位置と第4回目の入射位置とは、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関して対称である。凹面鏡42による4回目の反射がなされた被測定光は、被測定光の射出位置P2で集光された後で凹面鏡14に向けて射出される。
【0046】
以上の通り、図7〜図9に示す他の構成例に係る反射光学系35は、スリット41を透過した被測定光を凹面鏡42で2回反射させるとともに凸面鏡43で1回反射させ、その後でリフレクタ44で反射させることにより再度凹面鏡42で2回反射させるとともに凸面鏡43で1回反射させている。つまり、反射光学系35は、スリット41を透過した被測定光が射出位置P2に至るまでに、被測定光を凹面鏡42で計4回反射するとともに凸面鏡4で計2回反射して、凹面鏡42と凸面鏡43との間で合計6回反射させている。
【0047】
反射光学系35は、凹面鏡42と凸面鏡43との間で被測定光を偶数回反射させているため、図1〜図6に示す反射光学系15のように入射した被測定光の分散方向を逆向きにはせず、被測定光の分散方向を変えずに射出している。かかる反射光学系35は、分散方向が逆方向にはならないため波長の分解能が向上しないが、ダイナミックレンジの向上を図ることができる。
【0048】
尚、図7〜図9に示す反射光学系35においても、反射光学系35の凸面鏡及び凹面鏡の組み合わせとしては、同心であって、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比がn:n+1(nは正の整数)である凸面鏡及び凹面鏡を用いることができる。かかる関係にある凸面鏡及び凹面鏡を用いた場合には、反射光学系35に入射した被測定光が凹面鏡で2(n+1)回反射されるとともに、凸面鏡で2n回反射された後で、反射光学系35から射出される。上記のnの値を適宜変更することにより、被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔(オフセット)を容易に調整することができる。
【0049】
以上説明した本実施形態による分光装置は、反射光学系15,35の光学部材の数を従来の反射光学系よりも少なくすることができる。このため、装置のコストを安価にすることができるとともに小型化が可能である。また、光学部品の数が少なく、且つ凹面鏡と凸面鏡との間の被測定光の反射回数を変えることで上記のオフセットを調整することができるため、組み立て調整を容易に行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態による分光装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した反射光学系15,35の凹面鏡及び凸面鏡は個別の光学部材としてもよいが、凸面鏡と凹面鏡との位置調整を省くためにこれらを一体的に形成することが望ましい。例えば、円筒形状のガラス部材の上面を凹形状にするとともに底面を凸形状にし、上面及び底面にクロム(Cr)等の金属を蒸着すれば、上面が凸面鏡であり底面が凹面鏡である光学部材とすることができる。尚、かかる光学部材を形成する場合にも、凸面鏡及び凹面鏡を同心とし、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比をn:n+1(nは正の整数)にする必要がある。
【0051】
更に、凸面鏡及び凹面鏡以外に、スリットも一体化することが望ましい。スリットを一体化する場合には、同じく円筒形状のガラス部材の上面にクロム(Cr)等の金属を蒸着してスリットを形成し、このガラス部材の底面と、凸面鏡及び凹面鏡が形成された光学部材の上面とを接着すれば、スリット、凸面鏡、及び凹面鏡が一体的に形成された光学部材を得ることができる。また更に、図7に示す反射光学系35の場合には、上面にスリットが形成されたガラス部材の上面にリフレクタ44を接着するか、或いはガラス部材の上面の一部をリフレクタ44の形状に成形すれば、スリット、凸面鏡、凹面鏡、及びリフレクタが一体化された光学部材を得ることができる。尚、ガラス部材を使用することにより屈折率の波長依存性の影響が生ずると考えられるが、スリットにより反射光学系に入射する波長領域が制限されるため屈折率の波長依存性による影響は少ない。以上説明した本実施形態の分光装置を用いれば、可視光領域から光通信に用いられる赤外光領域の広範囲に亘る波長領域の測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態による分光装置の構成を示す斜視図である。
【図2】反射光学系15を拡大した斜視図である。
【図3】反射光学系15の平面図である。
【図4】反射光学系15の側面図である。
【図5】反射光学系15の第1変形例を示す側面図である。
【図6】反射光学系15の第2変形例を示す側面図である。
【図7】反射光学系の他の構成例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す他の構成例に係る反射光学系の平面図である。
【図9】図7に示す他の構成例に係る反射光学系の側面図である。
【図10】従来のダブルパス型の分光装置の構成を示す斜視図である。
【図11】反射光学系105を拡大した斜視図である。
【図12】反射光学系105の平面図である。
【図13】従来のダブルパス型の分光装置の他の構成を示す斜視図である。
【図14】反射光学系125を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10 分光装置
13 回折格子
15 反射光学系
22 凹面鏡
23,26,27 凸面鏡
35 反射光学系
42 凹面鏡
43 凸面鏡
44 リフレクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子等の波長分散素子を用いて被測定光を分光する分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長分散素子に対して被測定光を往復させることにより、分解能を向上させるとともにダイナミックレンジを拡大させたダブルパス型の分光装置が開発されている。図10は、従来のダブルパス型の分光装置の構成を示す斜視図である。尚、図10に示す分光装置は、ツェルニー・ターナー型の光学系を有するダブルパス型の分光装置である。図10に示す通り、分光装置100は、入射スリット101、凹面鏡102、回折格子103、凹面鏡104、反射光学系105、及び射出スリット106を含んで構成される。
【0003】
分光装置100内に入射した被測定光は分光装置100内を往復して外部に射出される。つまり、往路では、入射スリット101から入射した被測定光が、凹面鏡102、回折格子103、及び凹面鏡104を順に介して反射光学系105に入射し、復路では反射光学系105から射出された被測定光が、凹面鏡104、回折格子103、及び凹面鏡102を順に介して射出スリット106から射出される。
【0004】
入射スリット101は、分光装置100に入射する被測定光の強度を制限する。凹面鏡102は、入射スリット101から入射された往路を進む被測定光を平行光にして回折格子103に入射させるとともに、回折格子103で回折された復路を進む被測定光を射出スリット106に集光する。回折格子103は、多数の溝が形成された回折面103aを有しており、凹面鏡102からの往路を進む平行光及び凹面鏡104からの復路を進む平行光を波長毎に異なる角度で回折させる。
【0005】
尚、回折格子103は、回折面103aに含まれる回転軸RXの周りで回動可能に構成されている。これにより、回折格子103によって回折されて凹面鏡104に入射される往路を進む被測定光、及び、回折格子103によって回折されて凹面鏡102に入射される復路を進む被測定光の波長を可変することができる。
【0006】
凹面鏡104は、回折格子103によって回折された往路を進む被測定光のうち、凹面鏡104に入射した被測定光のみを反射光学系105に集光させるとともに、反射光学系105から射出される復路を進む被測定光を平行光にして回折格子103に入射させる。反射光学系105は、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにして(反転して)再度凹面鏡104に入射させる。射出スリット106は、凹面鏡102によって集光される復路を進む被測定光の波長帯域を制限する。
【0007】
次に、反射光学系105について説明する。図11は反射光学系105を拡大した斜視図であり、図12は反射光学系105の平面図である。図11,図12に示す通り、反射光学系105は、第1平面ミラー110、第2平面ミラー111、第3平面ミラー112、中間スリット113、リフレクタ114、及び第4平面ミラー115を含んで構成され、反射光学系105に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系105から射出される。
【0008】
図12に示す通り、反射光学系105を平面的に見た場合には、反射光学系105はほぼ対称に構成されている。つまり、反射光学系105を平面的に見ると、第1平面ミラー110(第4平面ミラー115)で反射される被測定光の光軸OXの延長線上に中間スリット113が配置されているとともに、この光軸OXに関して第2平面ミラー111と第4平面ミラー115とが対称に配置されており、光軸OXに関して第3平面ミラー112とリフレクタ114とが対称に配置されている。尚、反射光学系105は、図10に示す凹面鏡104の焦点位置が中間スリット113の位置になるよう各光学部材が配置されている。また、リフレクタ114は、中間スリット113を透過した被測定光の光路を上方向にずらすため(シフトさせるため)に設けられている。
【0009】
以上の構成の反射光学系105は、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにする。ここで、図11,図12に示す通り、凹面鏡104から反射光学系105に入射する被測定光の分散方向を符号D11を付した矢印で示す。尚、符号D11を付した矢印の先側が波長が短く、矢印の根本側が波長が長いとする。この被測定光が反射光学系105に入射すると、第1平面ミラー110、第2平面ミラー111、及び第3平面ミラー112で順に反射された後に中間スリット113に入射する。ここで、被測定光は中間スリット113のスリット幅に応じた波長選択がなされる。
【0010】
中間スリット113を透過した被測定光は、リフレクタ114で上方向に反射された後に第4平面ミラー115及び第1平面ミラー110で反射されて反射光学系105から射出される。ここで、反射光学系105から射出される被測定光の分散方向は、符号D12を付した矢印で示す通り、反射光学系105に入射する被測定光の分散方向とは逆向きになる。反射光学系105によって、復路を進む被測定光の分散方向を往路を進む被測定光の分散方向とは逆向きにすることにより、復路を進む被測定光は回折格子103によって更に回折されるため、波長の分解能を向上させることができる。
【0011】
次に、従来の分光装置の他の例について説明する。図13は、従来のダブルパス型の分光装置の他の構成を示す斜視図である。尚、図13においては、図10に示した構成に相当する構成には同一の符号を付しており、これらについては説明を省略する。図13に示す分光装置120は、図10に示す分光装置100が備える反射光学系105に代えて反射光学系125を備えている。この反射光学系125は、反射光学系105と同様に、凹面鏡104からの被測定光の分散方向を逆向きにする。
【0012】
図14は、反射光学系125を拡大した斜視図である。図14に示す通り、反射光学系125は、スリット131、レンズ群132、及び平面ミラー133を含んで構成される。スリット131及び平面ミラー133は、その中心がレンズ群132の光軸上に位置するよう配置されている。スリット131は、凹面鏡104の焦点位置に配置されている。尚、スリット131は、凹面鏡104からの被測定光がスリット開口の下部に集光されるよう配置されている。レンズ群132は、スリット131を介した被測定光を平行光にするとともに、平面ミラー133で反射された平行光をスリット131に集光させる。平面ミラー133は、レンズ群132からの平行光を反射してレンズ群132に入射させる。
【0013】
上記構成において、スリット131のスリット開口の下部に集光された被測定光のうち、スリット131を透過した被測定光は、レンズ群132の光軸よりも下側の部分を通過してレンズ群132から平行光として射出される。ここで、レンズ群132から射出される平行光は上方に向けてある角度で射出される。レンズ群132から射出された平行光は、平面鏡133で上方に反射されてレンズ群132の上部に入射し、レンズ群132の光軸よりも上側の部分を通過してレンズ群132から射出されてスリット131のスリット開口の上部に集光される。図14に示す反射光学系125では、平面ミラー133で被測定光が反射される前後で被測定光の分散方向が逆向きになる。このため、分光装置120においても波長の分解能を向上させることができる。
【0014】
尚、以上説明した従来技術の詳細については、以下の特許文献1〜3を参照されたい。
【特許文献1】特開2000−88647号公報
【特許文献2】特開平6−221922号公報
【特許文献3】特開2003−139610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、図10〜図12を用いて説明した分光装置100においては、反射光学系105が4枚の平面ミラーと1つのリフレクタとから構成されており、反射光学系105を構成する光学部材が多いため小型化に向かず、組み立て調整が困難になるという問題がある。また、図13,図14を用いて説明した分光装置120では、反射光学系125にレンズ群132を用いているため波長分散が生じ、分光装置120の十分な性能を得ることができる波長範囲が限られてしまうという問題がある。ここで、波長分散が少ないレンズ(色消しレンズ)を用いることも考えられるが、このようなレンズは高価であるため分光装置120のコスト上昇を招いてしまうという問題がある。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化が可能であって安価且つ組み立て調整が容易な分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の分光装置は、波長分散素子(13)と、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を反射する反射光学系(15、35)とを備え、前記反射光学系で反射した光を再度前記波長分散素子に入射させて前記被測定光を分光する分光装置(10)において、前記反射光学系は、凸面鏡(23、26、27、4322、42)と凹面鏡とを含み、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることを特徴としている。
この発明によると、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光は、反射光学系が備える凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射されて反射光学系から射出された後に、再度波長分散素子に入射する。
また、本発明の分光装置は、前記凸面鏡及び前記凹面鏡が同心に配置されていることを特徴としている。
更に、本発明の分光装置は、前記凸面鏡と前記凹面鏡との曲率半径の比が、n対n+1(nは正の整数)であることを特徴としている。
ここで、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で奇数回反射させることが好ましい。
具体的には、前記凸面鏡での反射回数はn回であり、前記凹面鏡での反射回数はn+1回であることを特徴としている。
また、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることにより分散方向を反転することが望ましい。
或いは、本発明の分光装置は、前記反射光学系が、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射された光を反射して、再度前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させる反射部材を備えていることを特徴としている。
ここで、前記凸面鏡での合計の反射回数は2n回であり、前記凹面鏡での合計の反射回数は2(n+1)回であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、反射光学系が備える凸面鏡と凹面鏡との間で複数回反射させることにより反射しているため、分光装置を小型化することができるとともに安価にすることができ、更に組み立て調整を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による分光装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による分光装置の構成を示す斜視図である。尚、図1に示す分光装置は、ツェルニー・ターナー型の光学系を有するダブルパス型の分光装置である。図1に示す通り、本実施形態の分光装置10は、入射スリット11、凹面鏡12、波長分散素子としての回折格子13、凹面鏡14、反射光学系15、及び射出スリット16を含んで構成される。
【0020】
分光装置10内に入射した被測定光は分光装置10内を往復して外部に射出される。つまり、往路では、入射スリット11から入射した被測定光が、凹面鏡12、回折格子13、及び凹面鏡14を順に介して反射光学系15に入射し、復路では反射光学系15から射出された被測定光が、凹面鏡14、回折格子13、及び凹面鏡12を順に介して射出スリット16から射出される。
【0021】
入射スリット11は、分光装置10に入射する被測定光の強度を制限する。凹面鏡12は、入射スリット11から入射された往路を進む被測定光を平行光にして回折格子13に入射させるとともに、回折格子13で回折された復路を進む被測定光を射出スリット16に集光する。回折格子13は、多数の溝が形成された回折面13aを有しており、凹面鏡12からの往路を進む平行光及び凹面鏡14からの復路を進む平行光を波長毎に異なる角度で回折させる。
【0022】
尚、回折格子13は、回折面13aに含まれる回転軸RXの周りで回動可能に構成されている。これにより、回折格子13によって回折されて凹面鏡14に入射される往路を進む被測定光、及び、回折格子13によって回折されて凹面鏡12に入射される復路を進む被測定光の波長を可変することができる。
【0023】
凹面鏡14は、回折格子13によって回折された往路を進む被測定光のうち、凹面鏡14に入射した被測定光のみを反射光学系15に集光させるとともに、反射光学系15から射出される復路を進む被測定光を平行光にして回折格子13に入射させる。反射光学系15は、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにして(反転して)再度凹面鏡14に入射させる。射出スリット16は、凹面鏡12によって集光される復路を進む被測定光の波長帯域を制限する。
【0024】
次に、反射光学系15について説明する。図2は反射光学系15を拡大した斜視図であり、図3は反射光学系15の平面図であり、図4は反射光学系15の側面図である。尚、図2では、凹面鏡14からの往路を進む被測定光が反射光学系15に入射する側から見た状態を図示している。図2〜図4に示す通り、反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0025】
スリット21は、凹面鏡14の焦点位置に配置されている。従って、凹面鏡14によって集光された往路を進む被測定光は、スリット21のスリット開口の位置に集光される。また、図3に示す通り、反射光学系15を平面的に見た場合には、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23は同一直線上に配置されている。一方、図4に示す通り、反射光学系15を側面から見た場合には、反射光学系15内の光路が上下対称となるようにスリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡23が配置されている。即ち、反射光学系15をなす各光学部材は、反射光学系15に対する被測定光の入射位置P1(スリット21のスリット開口の位置)と反射光学系15からの被測定光の射出位置P2とは、凹面鏡22及び凸面鏡23の中心を通る中心線に関して対称になるよう配置されている。
【0026】
凹面鏡22と凸面鏡23とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。即ち、凹面鏡22及び凸面鏡23の曲率中心は、凹面鏡22及び凸面鏡23の中心を通る中心線と、被測定光の入射位置P1及び被測定光の射出位置P2を通る直線との交点に設定されている。図3及び図4に示す例では、凹面鏡22と凸面鏡23との曲率半径の比は2:1に設定されている。
【0027】
上記構成において、凹面鏡14によってスリット21上に集光した被測定光は、スリット21に入射する。ここで、被測定光はスリット21のスリット幅に応じた波長選択がなされる。スリット21のスリット開口を透過した被測定光は、まず凹面鏡22に入射する。この被測定光は凹面鏡22によって反射された後で凸面鏡23に入射する。凸面鏡23に入射した被測定光は凸面鏡23によって反射された後で再度凹面鏡22に入射する。但し、先に入射した位置とは異なる位置に入射する。再度凹面鏡22に入射した被測定光は凹面鏡22によって反射された後で射出位置P2に集光され、反射光学系15から射出される。
【0028】
以上の通り、図3及び図4に示す構成では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で2回反射させるとともに凸面鏡23で1回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡23との間で合計3回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡23での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡23との曲率半径の比と同じ2:1である。
【0029】
反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡23との間で被測定光を奇数回反射させることにより、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにする。ここで、図2に示す通り、凹面鏡14から反射光学系15に入射する被測定光の分散方向を符号D1を付した矢印で示す。尚、符号D1を付した矢印の先側が波長が短く、矢印の根本側が波長が長いとする。この被測定光が反射光学系15に入射すると、上述した通り、凹面鏡22と凸面鏡23との間で奇数回反射した後に反射光学系15から射出される。
【0030】
ここで、反射光学系15から射出される被測定光の分散方向は、符号D2を付した矢印で示す通り、反射光学系15に入射する被測定光の分散方向とは逆向きになる。反射光学系15によって、復路を進む被測定光の分散方向を往路を進む被測定光の分散方向とは逆向きにすることにより、復路を進む被測定光は回折格子13によって更に回折されるため、波長の分解能を向上させることができる。
【0031】
次に、反射光学系15の変形例について説明する。図5は、反射光学系15の第1変形例を示す側面図である。尚、図5においては、図4に示した光学部材と同一のものについては同一の符号を付してある。図5に示す通り、この第1変形例に係る反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡26を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0032】
図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、図4に示す凸面鏡23に代えて曲率半径の異なる凸面鏡26が設けられており、且つ被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている点が相違する。図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、図4に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡22と凸面鏡26とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。しかしながら、図5に示す第1変形例に係る反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比が3:2に設定されている点が相違する。この相違に応じて被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている。
【0033】
上記構成の第1変形例に係る反射光学系15では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で3回反射させるとともに凸面鏡26で2回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡26との間で合計5回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡26での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比と同じ3:2である。このように、第1変形例に係る反射光学系15においても、凹面鏡22と凸面鏡26との間で被測定光を奇数回反射させて、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにしていおり、波長の分解能を向上させることができる。
【0034】
図6は、反射光学系15の第2変形例を示す側面図である。尚、図6においても、図4に示した光学部材と同一のものについては同一の符号を付してある。図6に示す通り、この第2変形例に係る反射光学系15は、スリット21、凹面鏡22、及び凸面鏡27を含んで構成され、反射光学系15に入射した被測定光は、これらの光学部材を順に介して反射光学系15から射出される。
【0035】
図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、図4に示す凸面鏡23に代えて曲率半径の異なる凸面鏡27が設けられており、且つ被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている点が相違する。図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、図4に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡22と凸面鏡26とは同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット21)、被測定光の射出位置P2を通る直線上に設定されている。しかしながら、図6に示す第2変形例に係る反射光学系15は、凹面鏡22と凸面鏡27との曲率半径の比は4:3に設定されている点が相違する。この相違に応じて被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔が広げられている。
【0036】
上記構成の第2変形例に係る反射光学系15では、スリット21を透過した被測定光を凹面鏡22で4回反射させるとともに凸面鏡26で3回反射させて、凹面鏡22と凸面鏡26との間で合計7回反射させている。よって、凹面鏡22での反射回数と凸面鏡26での反射回数との比は、凹面鏡22と凸面鏡26との曲率半径の比と同じ4:3である。このように、第2変形例に係る反射光学系15においても、凹面鏡22と凸面鏡27との間で被測定光を奇数回反射させて、凹面鏡14からの被測定光の分散方向を逆向きにしていおり、波長の分解能を向上させることができる。
【0037】
以上の通り、反射光学系1
5の凸面鏡及び凹面鏡の組み合わせとしては、同心であって、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比がn:n+1(nは正の整数)である凸面鏡及び凹面鏡を用いることができる。かかる関係にある凸面鏡及び凹面鏡を用いた場合には、反射光学系15に入射した被測定光が凹面鏡でn+1回で反射されるとともに、凸面鏡でn回反射された後で、反射光学系15から射出される。上記のnの値を適宜変更することにより、被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔(オフセット)を容易に調整することができる。
【0038】
次に、分光装置10に設けられる反射光学系の他の構成例について説明する。図7は、反射光学系の他の構成例を示す斜視図である。尚、図7に示す反射光学系は、図2に示す反射光学系15と同様に、凹面鏡14からの往路を進む被測定光が反射光学系に入射する側から見た状態を図示している。また、図8は図7に示す他の構成例に係る反射光学系の平面図であり、図9は同反射光学系の側面図である。
【0039】
図7〜図9に示す通り、反射光学系35は、スリット41、凹面鏡42、凸面鏡43、及びリフレクタ44を含んで構成され、反射光学系35に入射した被測定光は、これらの光学部材を介して反射光学系35から射出される。スリット41は、凹面鏡14の焦点位置に配置されている。従って、凹面鏡14によって集光された往路を進む被測定光は、スリット41のスリット開口の位置に集光される。また、スリット41は、図8,図9に示す通り、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線からずれた位置に配置されている。
【0040】
また、反射光学系35を平面的に見た場合及び側面から見た場合の何れの場合であっても、反射光学系35内の光路が凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称となるようにスリット41、凹面鏡42、凸面鏡43、及びリフレクタ44が配置されている。リフレクタ44は、反射光学系35を平面的に見た場合に、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してスリット41と対称に配置されている。また、図9に示す通り、リフレクタ44は互いに直交する反射面44a,44bを備えており、反射面44a,44bの各々が、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に対して45°の角度をなすよう配置されている。
【0041】
反射光学系35が備える凹面鏡42及び凸面鏡43は、図2〜図3を用いて説明した凹面鏡22及び凸面鏡23と同様に同心に配置されており、これらの曲率中心は被測定光の入射位置P1(スリット41)及び被測定光の射出位置P2を通り、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に垂直な面内に設定されている。尚、図8及び図9に示す例では、凹面鏡42と凸面鏡43との曲率半径の比が2:1に設定されている場合を例示して図示しているが、図5,図6を用いて説明した場合と同様に、他の比率にすることも可能である。被測定光の射出位置P2は、図8,図9に示す通り、被測定光の入射位置P1の上方に設定されている。
【0042】
上記構成において、凹面鏡14によってスリット41上に集光した被測定光は、スリット41に入射する。ここで、被測定光はスリット41のスリット幅に応じた波長選択がなされる。スリット41のスリット開口を透過した被測定光は、まず凹面鏡42に入射する。この被測定光は凹面鏡42によって反射された後で凸面鏡43に入射し、凸面鏡43で反射された後で凹面鏡42に再度入射する。
【0043】
ここで、図7〜図9に示す通り、スリット41を通過した被測定光の光軸は、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線から斜め下方向にずれている。このため、被測定光が凹面鏡42及び凸面鏡43によってそれぞれ1回反射されることにより、被測定光は凹面鏡42の中心から斜め上方向の位置に入射する。より具体的には、前述した通り、反射光学系35を平面的に見た場合及び側面から見た場合の何れの場合であっても、反射光学系35内の光路が凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称となるように設定されているため、凹面鏡42に対する第1回目の入射位置と第2回目の入射位置とは、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関して対称である。
【0044】
凹面鏡42に再度入射した被測定光は、リフレクタ44に入射して下方に反射された後、凹面鏡42側に反射されて凹面鏡42に入射する。ここで、図7〜図9に示す通り、リフレクタ44で反射された被測定光は、凹面鏡42の中心から斜め下側に入射する。より具体的には、リフレクタ44で反射された被測定光は、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線を含む垂直な面に関して、スリット41を通過した被測定光が凹面鏡42に最初に入射される入射位置と対称な位置に入射する。
【0045】
この被測定光は凹面鏡42によって反射された後で凸面鏡43に入射し、凸面鏡43で反射された後で凹面鏡42に再度入射する。即ち、被測定光はスリット41を通過した後で凹面鏡42による3回目の反射及び凸面鏡43による2回目の反射がなされた後で凹面鏡42に再度入射する(4回目の入射)。ここで、前述した通り、反射光学系35内の光路は凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関してほぼ対称であるため、凹面鏡42に対する第3回目の入射位置と第4回目の入射位置とは、凹面鏡42及び凸面鏡43の中心を通る中心線に関して対称である。凹面鏡42による4回目の反射がなされた被測定光は、被測定光の射出位置P2で集光された後で凹面鏡14に向けて射出される。
【0046】
以上の通り、図7〜図9に示す他の構成例に係る反射光学系35は、スリット41を透過した被測定光を凹面鏡42で2回反射させるとともに凸面鏡43で1回反射させ、その後でリフレクタ44で反射させることにより再度凹面鏡42で2回反射させるとともに凸面鏡43で1回反射させている。つまり、反射光学系35は、スリット41を透過した被測定光が射出位置P2に至るまでに、被測定光を凹面鏡42で計4回反射するとともに凸面鏡4で計2回反射して、凹面鏡42と凸面鏡43との間で合計6回反射させている。
【0047】
反射光学系35は、凹面鏡42と凸面鏡43との間で被測定光を偶数回反射させているため、図1〜図6に示す反射光学系15のように入射した被測定光の分散方向を逆向きにはせず、被測定光の分散方向を変えずに射出している。かかる反射光学系35は、分散方向が逆方向にはならないため波長の分解能が向上しないが、ダイナミックレンジの向上を図ることができる。
【0048】
尚、図7〜図9に示す反射光学系35においても、反射光学系35の凸面鏡及び凹面鏡の組み合わせとしては、同心であって、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比がn:n+1(nは正の整数)である凸面鏡及び凹面鏡を用いることができる。かかる関係にある凸面鏡及び凹面鏡を用いた場合には、反射光学系35に入射した被測定光が凹面鏡で2(n+1)回反射されるとともに、凸面鏡で2n回反射された後で、反射光学系35から射出される。上記のnの値を適宜変更することにより、被測定光の入射位置P1と被測定光の射出位置P2との間隔(オフセット)を容易に調整することができる。
【0049】
以上説明した本実施形態による分光装置は、反射光学系15,35の光学部材の数を従来の反射光学系よりも少なくすることができる。このため、装置のコストを安価にすることができるとともに小型化が可能である。また、光学部品の数が少なく、且つ凹面鏡と凸面鏡との間の被測定光の反射回数を変えることで上記のオフセットを調整することができるため、組み立て調整を容易に行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態による分光装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した反射光学系15,35の凹面鏡及び凸面鏡は個別の光学部材としてもよいが、凸面鏡と凹面鏡との位置調整を省くためにこれらを一体的に形成することが望ましい。例えば、円筒形状のガラス部材の上面を凹形状にするとともに底面を凸形状にし、上面及び底面にクロム(Cr)等の金属を蒸着すれば、上面が凸面鏡であり底面が凹面鏡である光学部材とすることができる。尚、かかる光学部材を形成する場合にも、凸面鏡及び凹面鏡を同心とし、凸面鏡と凹面鏡の曲率半径の比をn:n+1(nは正の整数)にする必要がある。
【0051】
更に、凸面鏡及び凹面鏡以外に、スリットも一体化することが望ましい。スリットを一体化する場合には、同じく円筒形状のガラス部材の上面にクロム(Cr)等の金属を蒸着してスリットを形成し、このガラス部材の底面と、凸面鏡及び凹面鏡が形成された光学部材の上面とを接着すれば、スリット、凸面鏡、及び凹面鏡が一体的に形成された光学部材を得ることができる。また更に、図7に示す反射光学系35の場合には、上面にスリットが形成されたガラス部材の上面にリフレクタ44を接着するか、或いはガラス部材の上面の一部をリフレクタ44の形状に成形すれば、スリット、凸面鏡、凹面鏡、及びリフレクタが一体化された光学部材を得ることができる。尚、ガラス部材を使用することにより屈折率の波長依存性の影響が生ずると考えられるが、スリットにより反射光学系に入射する波長領域が制限されるため屈折率の波長依存性による影響は少ない。以上説明した本実施形態の分光装置を用いれば、可視光領域から光通信に用いられる赤外光領域の広範囲に亘る波長領域の測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態による分光装置の構成を示す斜視図である。
【図2】反射光学系15を拡大した斜視図である。
【図3】反射光学系15の平面図である。
【図4】反射光学系15の側面図である。
【図5】反射光学系15の第1変形例を示す側面図である。
【図6】反射光学系15の第2変形例を示す側面図である。
【図7】反射光学系の他の構成例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す他の構成例に係る反射光学系の平面図である。
【図9】図7に示す他の構成例に係る反射光学系の側面図である。
【図10】従来のダブルパス型の分光装置の構成を示す斜視図である。
【図11】反射光学系105を拡大した斜視図である。
【図12】反射光学系105の平面図である。
【図13】従来のダブルパス型の分光装置の他の構成を示す斜視図である。
【図14】反射光学系125を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10 分光装置
13 回折格子
15 反射光学系
22 凹面鏡
23,26,27 凸面鏡
35 反射光学系
42 凹面鏡
43 凸面鏡
44 リフレクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長分散素子と、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を反射する反射光学系とを備え、前記反射光学系で反射した光を再度前記波長分散素子に入射させて前記被測定光を分光する分光装置において、
前記反射光学系は、凸面鏡と凹面鏡とを含み、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることを特徴とする分光装置。
【請求項2】
前記凸面鏡及び前記凹面鏡は同心に配置されていることを特徴とする請求項1記載の分光装置。
【請求項3】
前記凸面鏡と前記凹面鏡との曲率半径の比は、n対n+1(nは正の整数)であることを特徴とする請求項2記載の分光装置。
【請求項4】
前記反射光学系は、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で奇数回反射させることを特徴とする請求項3記載の分光装置。
【請求項5】
前記凸面鏡での反射回数はn回であり、前記凹面鏡での反射回数はn+1回であることを特徴とする請求項4記載の分光装置。
【請求項6】
前記反射光学系は、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることにより分散方向を反転することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の分光装置。
【請求項7】
前記反射光学系は、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射された光を反射して、再度前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させる反射部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の分光装置。
【請求項8】
前記凸面鏡での合計の反射回数は2n回であり、前記凹面鏡での合計の反射回数は2(n+1)回であることを特徴とする請求項7記載の分光装置。
【請求項1】
波長分散素子と、被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を反射する反射光学系とを備え、前記反射光学系で反射した光を再度前記波長分散素子に入射させて前記被測定光を分光する分光装置において、
前記反射光学系は、凸面鏡と凹面鏡とを含み、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることを特徴とする分光装置。
【請求項2】
前記凸面鏡及び前記凹面鏡は同心に配置されていることを特徴とする請求項1記載の分光装置。
【請求項3】
前記凸面鏡と前記凹面鏡との曲率半径の比は、n対n+1(nは正の整数)であることを特徴とする請求項2記載の分光装置。
【請求項4】
前記反射光学系は、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で奇数回反射させることを特徴とする請求項3記載の分光装置。
【請求項5】
前記凸面鏡での反射回数はn回であり、前記凹面鏡での反射回数はn+1回であることを特徴とする請求項4記載の分光装置。
【請求項6】
前記反射光学系は、前記被測定光を前記波長分散素子に入射させて得られた光を、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させることにより分散方向を反転することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の分光装置。
【請求項7】
前記反射光学系は、前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射された光を反射して、再度前記凸面鏡と前記凹面鏡との間で複数回反射させる反射部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の分光装置。
【請求項8】
前記凸面鏡での合計の反射回数は2n回であり、前記凹面鏡での合計の反射回数は2(n+1)回であることを特徴とする請求項7記載の分光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−187550(P2007−187550A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5790(P2006−5790)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
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