説明

分割光学系及びそれを用いた撮像光学系、撮像装置

【課題】 撮影光路中に配置され、撮影光束の一部を分岐するとき、レンズ全長が長くなるのを軽減することができる光束分岐素子を得ること。
【解決手段】 撮像のための光束と瞳分割法により合焦位置を検出するための光束とを分離する光束分割光学系は、エアギャップを挟んだ少なくとも2つのプリズムにて構成されている。前述した分割前の光束が入射する第一のプリズムの、前述の分割前の光束が入射する面を第一の面、前述のエアギャップを形成する面を第二の面とする時、その第二の面には、光束分割膜を設け、撮像のために要する光束を透過し、合焦位置を検出するために要する光束を反射にて分割する機能を付与している。この反射を第一の反射とする。更に、その分割された合焦位置を検出するために要する光束は、第一の面で全反射による第二の反射を受け再び第二の面に向かい第二の面にて更に全反射にて第三の反射を起こさせる構成とした事を特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラやビデオカメラ等において、被写体からの光束を撮像素子に導く光路中において、撮影用の光束から一部の光束を分割する分割光学系、及びそれを用いた撮像光学系、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像光学系において、受動式オートフォーカス方式の1つとして、瞳分割法によって撮像光学系の光路中から光束分岐素子で光束の一部を分岐し、その分岐した光束を合焦検出用の撮像素子に入射させて、合焦信号を得る方法がある(特許文献1、2)。
【0003】
このような方式においては、分岐した光束の光路中に配置されたレンズを駆動させて合焦位置を探る(合焦位置を検出する)ため、撮影像に影響を与えずに合焦位置を探ることが出来る、という特長がある。
【特許文献1】特開2003−270517号公報
【特許文献2】特開2004−085676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の光束分岐素子を加えるとレンズ全長が長くなってしまう上、レンズ重量が重くなったり、レンズの有効径が大きくなったりしてしまう。このため、光束分割素子を撮影光路中に配置するときは、光束分割素子の撮影光路中における光路長がなるべく短いことが重要になっている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2では、これらの点について十分に考慮されておらず、光束分割素子中を通る光路長が長くなってしまっている。
【0006】
そこで、本発明は、撮影光路中に光束分岐素子を配置し撮影光束の一部を分岐する撮像光学系において、光束分岐素子を小型化し、全系の小型化を達成することができる撮像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像光学系は、被写体からの被写体光束を撮像素子に導く撮像光学系であって、前記被写体光束を、前記撮像素子に至る撮像光束と他の光束とに分割する分割光学系を備えており、該分割光学系が、前記被写体光束が入射する第1入射面と、前記入射面からの被写体光束を前記撮像光束と前記他の光束とに分割する分割面と、前記撮像光束と前記他の光束のうち前記分割面で反射された反射光束が出射する第1出射面とを有する第1プリズムと、前記分割面と対向する位置に配置され、前記撮像光束と前記他の光束のうち前記分割面を透過した透過光束が入射する第2入射面と、前記透過光束が出射する第2出射面とを有する第2プリズムとを備えており、前記反射光束が、前記分割面での1回目の反射の後、前記第1入射面での反射、前記分割面での2回目の反射を経て、前記第1出射面に至ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のように構成すれば、分割光学系の光軸方向の厚みを薄くすることができるため、レンズ全長が長くなるのを軽減し、全系の光学系の小型化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の撮像光学系は、被写体からの光束(被写体光束)を、撮像用の光束(撮像光束)と合焦位置検出用の光束(合焦検出光束)とに分割する分割光学系(光束分割光学系、光束分岐光学系)を有している。勿論、この分割光学系そのものや、この分割光学系を備える撮像装置も本発明の一部である。
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
光束分割プリズム(分割光学系、光束分割素子、光束分岐素子)と、それを有するズームレンズ(撮像光学系)、及び撮影システム(撮像装置)についての実施形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明のズームレンズ(撮像光学系)、およびそのズームレンズとカメラ本体(撮像装置本体)を有する撮像システム(撮像装置)の要部概略図である。図1において、101は本実施例のズームレンズ、108はズームレンズを着脱可能なテレビカメラ(カメラ本体)121内の結像面(撮像面)であり、この結像面の位置と撮像素子123上の撮像面とを一致させる。この撮像素子にて動画像を得ることが出来る。撮像素子としては、CCDやCMOS、撮像管、MCP(マイクロ・チャネル・プレート)、HARP(ハープ)管などが考えられる。ズームレンズ101は、合焦部(合焦レンズユニット、合焦レンズ群)102、変倍部(変倍レンズユニット、ズームレンズユニット、変倍レンズ群)103、光量調節用の絞り104、結像部(リレーレンズユニット)RLを有している。尚、本実施例では、撮像光学系としてズーム(変倍)も可能なズームレンズを例示しているが、その限りでは無く、本発明の撮像光学系は、オートフォーカス機能を持っていればズーム機能(変倍部)が無い撮像光学系であっても構わない。
【0013】
合焦部102は、合焦のために移動するレンズ群(レンズユニット)である。ここで、この合焦部102は、全体が合焦時に移動するように構成しても良いし、この合焦部の一部が合焦時に移動するように構成しても良い。
【0014】
変倍部103は、変倍(ズーミング)のために移動するレンズ群(レンズユニット)である。ここで、この変倍部103は、変倍(ズーミング)を行う際に移動するバリエータを有する他、この変倍に伴う像面変動を補正する(像面変動量を低減する)コンペンセータを有している。
【0015】
結像部RLは、被写体側から撮像素子側(像面側)に向かって、レンズ群(前側レンズユニット)105と、前述の光束分割プリズム(分割光学系)106と、レンズ群(後側レンズユニット)107を有している。ここで、レンズ群107は、合焦時に移動させても構わない。
【0016】
この図1では、光束分割プリズム106は、絞り104よりも後方(撮像素子側、撮像面側)に配置している。しかしながら、絞り104が一定値以上に絞られた(絞りの開口径がある値以上に小さくなった)場合、合焦検出素子110に至る光束の光量が少なくなってしまい、合焦検出ができない(精度が落ちる)状態になる可能性がある。そこで、光束分割プリズム106を絞り104よりも前方(被写体側)に配置しても構わない。
【0017】
ズームレンズ101は、光束分割光学系によって撮像用の光束(撮像光束)から分割(反射)された合焦用の光束(合焦検出光束)を合焦検出素子に導くレンズ群(合焦用光学系、合焦検出レンズユニット)109を有している。このレンズ群109によって、結像部RLの光束分割プリズム106にて分割(反射)された撮像光束の一部(合焦検出光束)を、合焦検出素子(光電変換素子)110に導くことにより、合焦状態の検出(合焦検出)を行っている。この合焦検出素子110は、このレンズ群109によって合焦検出素子に導かれた光束(合焦検出光束)を受光し、合焦検出用信号を出力している。そして、この合焦検出用信号に基づいて合焦部102を駆動する(後述の駆動手段113を駆動する)ことにより合焦を行っている。
【0018】
テレビカメラ(カメラ本体)121は、撮像光束(被写体からの光束)を色ごとに分解するための、光学フィルタや色分解プリズムなどによって構成されたガラスブロック122と、撮像素子123とを備えている。
【0019】
また、111、112は、各々のレンズ群102、103を光軸方向に駆動するヘリコイドやカム等の駆動機構である。113〜116は駆動機構111、112及び光量調節絞り104を電動駆動するモータ(駆動手段)である。尚、駆動機構111、112は、駆動手段113、114を使った電動駆動も行えるが、手動によるマニュアル駆動、あるいはその両方で駆動可能となっている。
【0020】
また、117〜119は、レンズ群102、103の光軸上の位置や、光量調節絞り104の絞り径を検出する為のエンコーダやポテンショメータ、あるいはフォトセンサ等の検出器である。
【0021】
次に、本実施例における撮影システムにおけるオートフォーカスのプロセスを説明する。ズームレンズ101において光束分割プリズム106にて分岐された(撮像用の光束から分離された)光束を、レンズ群109にて合焦検出素子110に導く。そして、合焦検出素子110で得られた合焦検出用信号に基づいて合焦位置演算部120で適切な合焦部の位置を演算し、合焦部をその位置に移動することにより合焦を行っている。この際、合焦位置演算部120は、検出器117〜119等で得られる合焦部102、変倍部103、絞り104等の位置情報を必要に応じて使用しつつ、合焦部102の適切な位置(合焦位置)を演算しても良い。
【0022】
図2は、本発明における実施形態の光束分割光学系についての概略図である。図2において、xはズームレンズの光軸、yは合焦検出部LAへ分岐される光束の光軸、Sは光線を分岐する為のハーフミラー面を示している。ここで、合焦検出部LAは、前述のレンズ群(合焦検出レンズユニット)109と、合焦検出素子110とに相当する。光束分岐素子は入射面a、出射面bを光軸xに対して垂直に配置され、プリズムP(第1プリズム)とプリズムP(第2プリズム)との間にエアギャップ(空気間隔)が形成されている。ここで、プリズムPは、被写体光束が入射する入射面(第1入射面)aと、ハーフミラー面(光束分割面)と、ハーフミラー面で反射された光束(反射光束、合焦検出光束)がプリズムPから合焦検出素子に向かって出射する第1出射面cとを有している。また、プリズムPは、ハーフミラー面と対向して配置され、ハーフミラー面を透過した光束(透過光束、撮像光束)が入射する第2入射面と、この第2入射面から入射した光束が出射する第2出射面を有している。
【0023】
入射面aと出射面bは平行である。入射面aと出射面bの光軸x方向の厚さはtである。プリズムPの光軸x方向の厚さはdである。Dは、検出部LAに導かれる合焦検出に必要な光束(以後、合焦検出用光束とする)の、プリズムP入射面a上における有効径を表している。Dは撮像素子123に導かれる撮像のための光束(以後、撮像用光束とする)の、プリズムP出射面b上における有効径を表している。反射面Sと面aとのなす角(プリズムPの頂角)はθである。qは出射面bの光軸xと垂直方向の長さである。pは入射面aの光軸xと垂直方向で光軸xからハーフミラー面Sまでの長さである。ξは出射面cから出射する光束の主光線と光軸xとの成す角を反時計回りに計った角度である。分岐出射面cは光軸yに対して垂直になるよう配置されている。尚、ここで、D及びDは、図1の断面、すなわちズームレンズ(撮像光学系)の光軸とハーフミラー面(光束分割面)の法線の両者を含む平面内における、それぞれの光束の幅としても構わない。
【0024】
ハーフミラー面Sには、例えば金属膜や多層膜などによる光束分割のためのコーティングが施されており、入射光束(被写体光束)を所定の割合で透過光(撮像光束)と反射光(他の光束、合焦検出光束)とに分岐している。またハーフミラー面Sは、被写体からの光束(有効光束)が通過する領域全域において、光束を分岐するように配置されている。つまり、被写体からの光束で合焦部102、及び変倍部103を通過し、後段の撮像素子123や合焦検出素子110に至る光束は全てハーフミラー面Sを介して撮像素子123や合焦検出素子110に至るように構成している。図12は入射光束(被写体光束)の一部のみを分岐した例の概略図である。この例では、撮像光束(撮影素子に至る光束)内での透過光の強度分布が不均一になる(分岐している領域の画像が暗くなる)ため、撮影像が見苦しくなってしまう。また、接合部の端部に入射する光束が接合部の端部で散乱してしまい、ゴーストが発生してしまう可能性もある。
【0025】
点線で描かれた光線は撮像のための光線有効径Dを決定する光線を、実線で描かれた光線は、検出部LAに導かれる光束の光線有効径DおよびDを決定する光線を表す。
【0026】
ハーフミラー面Sにおいて所定の反射率で反射された光束は、入射面a面で全反射した後、再びハーフミラー面Sで全反射を起こし分岐出射面cより出射する。これらの全反射条件等から、プリズムPの頂角θは次の条件式を満たす。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
【数3】

【0030】
ここでnはプリズムPならびにPの屈折率を表す。αはプリズムPに入射する全光線の中で、光軸xと成す最も大きい角度を表す。
【0031】
【数4】

【0032】
は、検出部LAに導かれる光線の中で、光軸xと成す最も大きい角度を表す。前記αおよび
【0033】
【数5】

【0034】
はプリズムに入射した後の光線が成す角度であり、軸上または軸外マージナル光線のどちらか一方である。
【0035】
(1)式は、S面における1回目の反射において全反射が起こらない条件であり、プリズム頂角θの上限を決めている。(2)式は、a面における2回目の全反射による反射が起こる条件であり、θの下限を決めている。また(3)式は、S面において3回目の反射が起こる条件で、θの上限を決めている。(1)式、(3)式は共にθの上限を決めているが、
【0036】
【数6】

【0037】
の組み合わせにより、どちらか一方がより厳しい条件となる。
【0038】
本発明の実施形態は以下の条件式(4)を満たすのが好ましい。
【0039】
【数7】

【0040】
位相差方式はコントラスト方式と異なり、撮像有効光束の一部のみを用いて合焦位置検出が可能である。この(4)式は、合焦検出精度(合焦検出光束の光量)と撮影画像の鮮明さ、明るさ(撮像光束の光量)に関連する条件である。
【0041】
まず、条件式(4)の下限を超える場合を説明する。位相差方式では、2つに瞳分割される光束(図11)の位相差信号を検出しており、それらの光束間の基線長を長く取る事により、ピントずれに対する検出分解能を高められる。また、検出用に分割された光束の光量が増加する程、短時間での合焦検出が可能となる。従って、オートフォーカス性能を向上させるには、瞳分割される光束間の基線長を長くし、検出用に分割された光束の光量を多くする事が重要となる。
【0042】
しかし、ある一定の光束径(または瞳径)において、基線長を長く取ろうとすればするほど、検出用に分割された光束の光量増加との両立は困難となる。以下、図11を用いて説明する。図11aと図11bは位相差検出用に使用するための最小の光束径(以下、便宜的にこの光束を合焦検出用光束と呼ぶ)の模式図である。合焦検出用光束は同じ光束径で分岐されている。図11aのように、瞳分割光束を合焦検出用光束に内接させながら径を小さくすれば、基線長は長く取れるが光量が減少する。一方、図11bのように、瞳分割光束を大きく切り取れば、光量は増加するが基線長が短くなる。
【0043】
このように、基線長を長く取る事と光量増加はちょうど相反する関係にあるが、撮像システムに求められる分解能と検出時間の両方を満足するには、検出部に導かれる光束径Dは最低限度を確保する必要がある。光束有効径Dに対して光束有効径Dが小さすぎて条件式(4)の下限を超えると、合焦検出部LAに導かれる光束は、前記最低限度の光束径を確保できず、短時間で精度の高い合焦位置の検出が困難となる。ここで、この条件式(4)の下限値は、より好ましくは0.12とすると良い。
【0044】
次に、条件式(4)の上限を超える場合を説明する。合焦検出のための光束が発散光として入射する場合や、軸外マージナル光線が光軸から離れていく角度で入射する場合には、入射径Dに対して更に出射径Dが大きくなる。そこで、プリズムPの大きさを小さく抑えるには、頂角θを(2)式の下限に近づける事が必要となるが、頂角θを前記下限近傍に維持したまま、(4)式の上限を超えて光束有効径Dを設定すると、出射面cにおいて下光線がケラレる可能性が高くなる。さらに、頂角θを大きく設定してやれば、前記下光線ケラレは発生しなくなるが、反対に上光線がケラレてしまう。いずれにおいても、プリズムPの厚みdを大きくしなくてはならない。故に、条件式(4)の上限を超えると、光束分岐後のレンズ群109の小型軽量化が困難となる。
【0045】
また、位相差方式にて合焦位置の検出を行う場合、合焦検出用光束を最小の光束径としている。このため、絞ることにより合焦検出用光束が遮断されてしまうと、合焦位置の検出が不可能となってしまう。合焦検出用光束径は、合焦位置を検出できる最大のF値を決めていると言うことが出来る。つまり、前記F値が大きい方が、絞りによって光束を遮断されることが少なく、安定したオートフォーカスが可能となる。特に、動画の撮影システムの場合、前記F値を大きく設定することにより絞りによる影響を受けにくくして、安定してオートフォーカスできることが好ましい。ここで、この条件式(4)の上限値は、より好ましくは0.43(更に好ましくは0.36)とすると良い。
【0046】
上記説明より、位相差方式にて合焦位置を検出する場合、合焦精度、検出時間、安定したオートフォーカス動作を鑑みて、合焦検出用光束のF値は撮像系の2倍〜10倍程度で設定することが好ましい。
【0047】
以上のように各部材を構成することにより、ズームレンズの光軸方向の厚みを薄くすることができ、撮影システムの小型軽量化が容易となる。また、分岐後の光学系に導かれる光束幅を十分確保することができるので、合焦位置を検出することが容易となる。
【0048】
次に、請求項1に記載されている構成である分岐プリズムの実施例1〜4における各パラメータを表−1に、図3〜図6に各実施例の断面図を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
ここで光路長とは光軸xに沿った入射面aから分岐出射面cまでの長さで、βは合焦検出用光束の最大入射角である。t、d、p、q、光路長の単位はmm、θ、ξ、βの単位は度である。
【0051】
図3〜6にあるように、上記実施例においては、プリズムPとPの光軸x方向への厚みdとtはd>tの関係になっている。これは、光軸x方向にレンズ全長が長くなるのを少しでも軽減するためであるが、Pの厚みをPに合わせた構成(t=d)としても良い。
【0052】
参考として、分岐プリズムの頂角を45°とし、プリズム内で1回反射させて光束分割する従来の構成に対するおおよその相対値を、表中における括弧内の数値に示した。数値tについては、相対値が0.32〜0.42の範囲であり、合焦に要する光束をプリズム内で3回反射してから出射させる事により、撮像に要する光束を透過させるプリズムPの厚みを従来の構成よりも薄くできる事を示している。更に、表中のt/Dは、撮像に用いる光束径Dに対するプリズムPの厚みの比を表しており、従来は1.0以上であるため、この数値もプリズム厚み低減の効果を示している。
【0053】
ここで、実施例3においてはdの値が0.96と、従来例に比べプリズムPの厚みがほとんど変わっていない事に着目する。これは、実施例3においてはnが他の実施例と比べ小さく、プリズムPの反射面aでの第2の反射において、全反射条件(2)式を満たすθの下限が大きくなった事による。
【0054】
これに対し、次に説明する実施例5(図7)では、実施例3の光線の入射条件を変えずにnを実施例1、2、4と同じ値としている。
【0055】
【表2】

【0056】
表−2には実施例5のプリズムの各パラメータを示している。実施例3に対して、数値dは0.96から0.50へ減少し、実施例1、2、4と同等の数値となっている。すなわち、プリズムの屈折率nを大きくする事でθの下限を小さく取れるため、その結果としてPの厚みdを薄く抑えることが可能となる。
【0057】
図8は、各実施例の光線入射条件を変えずに、屈折率nのみを変えた場合の、nに対するdのグラフである。各実施例ともにおおむね1.5<n<1.7までdは急激に減少するが、それ以上のnでは緩やかな変化となる傾向がある。従って、Pの厚みdを小さく抑えたい場合には、nを1.7程度以上とするのが望ましい。
【0058】
次に、請求項2または3に記載されている、合焦用光束の出射方向を制御するために設けた第三の面による第四の反射を起こす構成とした実施例6(図9)および7(図10)について説明する。表−3に各実施例のパラメータをまとめた。
【0059】
【表3】

【0060】
実施例6においては、合焦検出用光束の主光線は撮像面方向(ξ=0°)に出射されている。実施例7においては、合焦検出用光束の主光線は被写体方向(ξ=180°)に出射されている。以上の例から、第三面(第1反射面)によって四回目の反射を起こす事により、合焦検出用光束の出射角ξを0°〜180°に渡って制御可能となる。また、前記第三の面と光軸xが成す角度を適切に設定すれば、出射角ξを0°以下または180°以上に取る事も可能である。
【0061】
またその時、検出用光束の明るさに相当する(4)式は他の実施例と同等程度であり、焦点検出に必要な光量を確保している。すなわち、上記のような構成とする事で、高い精度で合焦位置を検出でき、また合焦位置を検出するための光束の出射方向を制御するのに適したズームレンズを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のズームレンズおよび撮像システムの要部概略図
【図2】光束分割光学系についての概略図
【図3】実施例1の光束分割光学系の断面図
【図4】実施例2の光束分割光学系の断面図
【図5】実施例3の光束分割光学系の断面図
【図6】実施例4の光束分割光学系の断面図
【図7】実施例5の光束分割光学系の断面図
【図8】屈折率nに対するプリズムPの厚みdのグラフ
【図9】実施例6の光束分割光学系の断面図
【図10】実施例7の光束分割光学系の断面図
【図11】合焦検出用光束の模式図
【図12】撮像光束の一部のみを分岐した場合のプリズム断面図
【符号の説明】
【0063】
101 ズームレンズ
102 合焦部
103 変倍部
106 光束分割プリズム
110 合焦検出素子
121 テレビカメラ
123 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの被写体光束を撮像素子に導く撮像光学系であって、
前記被写体光束を、前記撮像素子に至る撮像光束と他の光束とに分割する分割光学系を備えており、
該分割光学系が、
前記被写体光束が入射する第1入射面と、前記入射面からの被写体光束を前記撮像光束と前記他の光束とに分割する分割面と、前記撮像光束と前記他の光束のうち前記分割面で反射された反射光束が出射する第1出射面とを有する第1プリズムと、
前記分割面と対向する位置に配置され、前記撮像光束と前記他の光束のうち前記分割面を透過した透過光束が入射する第2入射面と、前記透過光束が出射する第2出射面とを有する第2プリズムとを備えており、
前記反射光束が、前記分割面での1回目の反射の後、前記第1入射面での反射、前記分割面での2回目の反射を経て、前記第1出射面に至ることを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
前記第1プリズムと前記第2プリズムとが、空気間隔を挟んで配置されており、
前記第1入射面での反射及び前記分割面での2回目の反射が全反射であることを特徴とする請求項1記載の分割光学系。
【請求項3】
前記第1プリズムが、前記第1入射面及び前記分割面及び前記第1出射面とは異なる第1反射面を有しており、
前記反射光束が、前記分割面で2回目に反射された後、前記第1反射面で反射されることにより前記第1出射面に至ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光束分割光学系。
【請求項4】
前記撮像光束が前記分割面を透過する前記透過光束であり、前記他の光束が前記分割面で反射される前記反射光束であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記他の光束が前記反射光束であり、且つ前記被写体への合焦状態を検出するために用いられる合焦検出光束であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記撮像光束が、前記分割光学系よりも前記被写体側に配置され、合焦の際に移動する合焦レンズユニットと、前記分割光学系よりも前記撮像素子側に配置され、前記分割光学系を透過した撮像光束を前記撮像素子に導く後側レンズユニットとを備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の撮像光学系。
【請求項7】
前記撮像光学系は、前記被写体側から順に、
合焦の際に移動する合焦レンズユニットと、
変倍に際して移動する変倍レンズユニットと、
光量調節用の絞りユニットと、
前記変倍レンズユニットからの光束を、前記撮像素子に導くリレーレンズユニットとを備えており、
前記リレーレンズユニットが、前記被写体側から順に、前側レンズユニット、前記分割光学系、後側レンズユニットを備えており、
前記撮像光学系が、合焦状態を検出するための合焦検出素子と、前記分割光学系からの合焦検出光束を前記合焦検出素子に導く合焦検出レンズユニットを備えていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の撮像光学系。
【請求項8】
撮像素子と、被写体からの被写体光束を前記撮像素子に導くと共に、前記被写体光束の一部を用いて合焦を行う、請求項1乃至7いずれかに記載の撮像光学系とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
入射光束を分割する分割光学系において、
前記入射光束が入射する第1入射面と、前記第1入射面からの光束を反射及び透過することにより反射光束と透過光束とに分割する分割面と、前記反射光束が出射する第1出射面とを有する第1プリズムと、
前記分割面と対向する位置に配置されており、前記透過光束が入射する第2入射面と、前記第2入射面からの光束が出射する第2出射面とを有する第2プリズムとを備えており、
前記反射光束が、前記分割面での1回目の反射の後、前記第1入射面での反射、前記分割面での2回目の反射を経て、前記第1出射面に至ることを特徴とする撮像光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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