分子検出センサ洗浄機能を備えた分子検出装置及び洗浄装置
【課題】 表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境に対する負荷が少なく、繰返し利用できる普及型の分子検出装置を提供する。
【解決手段】 表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置は、第1の反射面を有するプリズム84と、プリズム84の第1の反射面上に形成された金属層86と、第1の反射面に関し、金属層86と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源80と、金属層86上に形成された疎水層90と、光源80により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための光検出器92と、金属層86とその上に形成された疎水層90とに付着した異物を洗浄するための超音波発生器53とを含む。
【解決手段】 表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置は、第1の反射面を有するプリズム84と、プリズム84の第1の反射面上に形成された金属層86と、第1の反射面に関し、金属層86と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源80と、金属層86上に形成された疎水層90と、光源80により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための光検出器92と、金属層86とその上に形成された疎水層90とに付着した異物を洗浄するための超音波発生器53とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子を検出する装置、特に表面プラズモン共鳴を用いて洗剤の様な両親媒性を持つ分子を検出するセンサに付着した異物等を洗浄するための機能を備えた分子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内等で起こる様々な分子間の相互作用をリアルタイムに検出する、表面プラズモン共鳴現象を応用した検出装置の開発が進んでいる。表面プラズモン共鳴現象とは、例えば金属と誘電体との界面に光を照射した場合に起こる現象である。表面プラズモン共鳴現象を応用した検出装置によると、当該界面の性質(すなわち誘電体の性質)を非接触かつ高感度で検出する事ができる。また、分子にラベルを付す必要もない。
【0003】
特許文献1は、表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサを開示している。このバイオセンサは、金属層と、この金属層への入射光となる光を出射する光源と、金属層からの反射光を受光する受光器とを含む。入射光が金属層に入射する際の入射角はおよそ45〜50度である。金属層界面には疎水性高分子化合物がコーティングされている。光は、この疎水性高分子化合物がコーティングされている面とは反対側からこの金属層に入射する。このバイオセンサは、コーティングされた疎水性高分子化合物に生理活性物質が結合する際の表面プラズモン共鳴による反射光の強度低下が発生する反射角の変化を検出する事によって、各種バイオ物質の検出を行なう。
【0004】
特許文献2は、表面プラズモン共鳴を用いた検出装置を備えた微量油分検知装置を開示している。この検出装置は、特許文献1に開示されたものと同様、金属層と、光源と、受光器とを含む。金属層界面には親油性膜がコーティングされている。この親油性膜に油分が吸着する際の表面プラズモン共鳴による反射光の強度低下が発生する反射角の変化を検出する事によって微量の油分が高感度で検出される。
【特許文献1】特開2005−189061号公報
【特許文献2】特開平10−38797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術においては、疎水性高分子化合物に吸着した生理活性物質及び親油性膜に吸着した油分の除去が困難である。それゆえこれらのセンサ及び検知装置においては、一度使用されて生理活性物質及び油分が吸着すると、高感度での検出が困難となる。その結果、これらのセンサ及び検知装置は使い捨てのものになってしまう事が多い。この様に使い捨てられてしまうと、コスト削減及び環境保護の点からは好ましくない。また、使い捨ての装置であると、普及型の商品を実現する事が困難となる。
【0006】
センサ及び検知装置が使い捨てのものになってしまう事を回避するためには、生理活性物質及び油分がそれぞれ付着した疎水性高分子化合物及び親油性膜を金属層表面から除去する必要がある。しかし、これらの除去のためには試薬等を使用する必要があるので、手間がかかる。また、試薬を使用する事に起因する薬害及び環境汚染のおそれもある。
【0007】
それゆえに、本発明の目的は、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境に対する負荷が少なく、繰返し利用できる普及型の分子検出装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に係る分子検出装置は、表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、第1の反射面を有する透明基板と、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層と、第1の反射面に関し、金属層と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、金属層上に形成された疎水層と、光源により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段と、金属層上に形成された疎水層に付着した異物を洗浄するための洗浄手段とを含む。
【0009】
この分子検出装置によると、光源により出射された光が、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層で全反射する。この金属層によって全反射された反射光には、表面プラズモン共鳴による暗線が生じる。金属層上には、疎水性の疎水層とが形成されており、両親媒性分子の疎水基がこの疎水層に吸着する量により、金属層と疎水層との界面の屈折率等の光学的性質が変化して、暗線の位置が変化する。この位置の変化を検出手段により検出する。暗線の位置の変化は、疎水層に吸着した両親媒性分子の量に応じて変化する。また疎水層に吸着した両親媒性分子の量は、疎水層が臨む空間に存在する両親媒性分子の濃度に応じて変化する。従って、両親媒性分子の濃度を表面プラズモン共鳴により生じる暗線の位置の変化を用いて検出できる。また、両親媒性分子は水中における分子の濃度に応じて可逆的に疎水層に吸着したり疎水層から離れたりする。従って、検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用できる。さらに、両親媒性分子を除去する薬剤などは不要である。また、洗浄手段により金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄する事ができる。その結果、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置を提供できる。
【0010】
好ましくは、洗浄手段は、金属層及び疎水層の近傍に設けられた超音波発生器を含む。
【0011】
この分子検出装置によると、疎水層の上に油分等の異物が付着した場合に、金属層及び疎水層の近傍に設けられた超音波発生器によって異物を洗浄する事ができる。従って、付着した異物に影響されずに、繰返し測定を行なう事ができる分子検出装置を提供できる。
【0012】
好ましくは、洗浄手段は、金属層及び疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられ、金属層及び疎水層の少なくとも一方を加熱するための手段を含む。
【0013】
この分子検出装置によると、疎水層の上に油分等の異物が付着した場合に、金属層及び疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられた、加熱するための手段によって、異物の軟化を促し、加熱による対流と相まって異物を浮かせて水中に分散させる事ができる。従って、付着した異物に影響されずに、繰返し測定を行なう事ができる分子検出装置を提供できる。
【0014】
さらに好ましくは、分子検出装置はさらに、金属層と疎水層との間に形成された、金属層を保護するための保護層を含む。
【0015】
この分子検出装置によると、金属層と疎水層との間に金属層を保護するための保護層が存在する。従って、金属層の剥離及び酸化を防止できる分子検出装置を提供できる。
【0016】
好ましくは、保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛からなるグループから選ばれる材料により形成される。
【0017】
この分子検出装置によると、保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛のいずれかで形成されている。保護層が酸化物であるため、金属層への疎水層の化学的コーティングが容易になる。その結果、疎水層の強度が増加する。
【0018】
本発明の第2の局面に係る洗浄装置は、洗浄槽と、洗浄槽に水を注入するための注水手段と、洗浄槽に洗剤を注入するための洗剤注入手段と、洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段と、洗浄槽内の水中の洗剤の濃度を検出するための、上記のいずれかに記載の分子検出装置と、分子検出装置からの検出結果に基づいて、注水手段、洗剤注入手段、及び洗浄手段を制御するための制御手段とを含む。
【0019】
この洗浄装置によると、分子検出装置による洗剤濃度の検出結果に基づいて、制御手段によって注水手段、洗剤注入手段、及び洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段が制御される。従って、検出結果に基づいて適当な洗剤濃度に達する様に無駄なく、かつ、自動的に洗剤の投入及びすすぎの制御が行なわれる。その結果、洗剤及び水の節約ができ、環境負荷の低い洗浄器を提供する事ができる。
【0020】
本発明の第3の局面に係る分子検出装置は、表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、第1の反射面を有する透明基板と、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層と、第1の反射面に関し、金属層と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、光源の出力を制御するための制御手段と、金属層上に形成された疎水層と、光源により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段とを含み、制御手段は、検出手段による検出時には所定の第1の出力となる様に光源の出力を制御し、金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には第1の出力より大きな第2の出力となる様に光源の出力を制御する。
【0021】
この分子検出装置によると、光源により出射された光が、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層で全反射する。この金属層によって全反射された反射光には、表面プラズモン共鳴による暗線が生じる。金属層上には、金属層を保護するための保護層と疎水性の疎水層とが形成されており、両親媒性分子の疎水基がこの疎水層に吸着する量により、保護層と疎水層との界面の屈折率等の光学的性質が変化して、暗線の位置が変化する。この位置の変化を検出手段により検出する。暗線の位置の変化は、疎水層に吸着した両親媒性分子の量に応じて変化する。また疎水層に吸着した両親媒性分子の量は、疎水層が臨む空間に存在する両親媒性分子の濃度に応じて変化する。従って、両親媒性分子の濃度を表面プラズモン共鳴により生じる暗線の位置の変化を用いて検出できる。また、両親媒性分子は水中における分子の濃度に応じて可逆的に疎水層に吸着したり疎水層から離れたりする。従って、検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用できる。さらに、両親媒性分子を除去する薬剤などは不要である。また、金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には測定時の第1の出力より大きな第2の出力となる様に光源の出力を制御するので、金属層が光により加熱され、疎水層に付着した異物を光源の熱によって除去する事ができる。その結果、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
以上の様に本発明に係る分子検出装置によると、金属層において表面プラズモン共鳴が生じる光の入射角は、疎水層表面に吸着する両親媒性分子の吸着量に依存する。この両親媒性分子の吸着量は、水中の両親媒性分子の濃度に依存する。従って、金属層において表面プラズモン共鳴が生ずる光の入射角は水中の両親媒性分子の濃度に依存する事になる。その結果、反射光量によって両親媒性分子の濃度を高感度で測定する事が可能となる。両親媒性分子は水中における両親媒性分子の濃度に応じて疎水層に可逆的に吸着したり離れたりするため、この分子検出装置は繰返し測定に適している。従って、分子検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用する事ができる。その上、センサ表面を洗浄するための洗浄手段により、センサ表面に微量に吸着した異物も取除く事ができ、より繰返しの測定に適した分子検出装置を提供できる。
【0023】
洗浄手段としては、超音波発生器を用いたり、加熱によってセンサ表面に付着した油分等の異物の水への分散性を上げたり、センサ中の光源からセンサ表面への出射光強度を上げる事によりセンサ表面を加熱し、異物の水への分散性を上げたりするものを使用できる。両親媒性分子を除去するための薬剤などは不要である。従って、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置の実現が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサを使用した洗濯機30の構成の断面図を示す。図1を参照して、洗濯機30は、洗濯の際に水を溜めるための水受け槽40と、水受け槽40の内側に配置され、洗濯物を収容して洗濯及び脱水をするため、脱水のための水抜き穴60〜70が穿たれた洗濯兼脱水槽42と、洗濯兼脱水槽42の底面下部中央に取付けられた回転軸44と、洗濯兼脱水槽42の底面の下方に設けられた、回転軸44を回転させる動力を提供するモータ48と、モータ48の動力を回転軸44に伝達し回転軸44を回転させるためのベルト46とを含む。
【0025】
洗濯機30はさらに、水抜き穴60〜70から水抜きされて水受け槽40に溜まった水を排水するための排水弁50と、水受け槽40に溜まった水に含まれる洗剤濃度を表面プラズモン共鳴を使用して測定し、測定結果を電気信号として出力するための洗剤センサ52と、洗剤センサ52によって出力された洗剤濃度測定結果を表す信号を受けて洗剤濃度を調節する動作及び排水弁50に排水動作を行なわせるためのプロセッサを含む制御回路54と、洗剤センサ52に隣接して設けられ、制御回路54により制御され洗剤センサ52の表面に付着した異物を取除くための超音波発生器53とを含む。
【0026】
表面プラズモン共鳴の原理については後述する。
【0027】
洗濯機30はさらに、制御回路54によって制御され、洗濯兼脱水槽42に洗剤を注入するための洗剤注入装置56と、同じく制御回路54によって制御され、洗濯兼脱水槽42に水を注入するための注水弁58とを含む。
【0028】
図2に、洗剤センサ52の内部構成、並びに洗剤センサ52及び超音波発生器53に隣接した検出空間102の構成を断面図及び平面図で示す。なお、この図においては、洗剤センサ52及び超音波発生器53は、図1で示された洗剤センサ52及び超音波発生器53を時計回りに90度回転させて示してある。
【0029】
図2を参照して、洗剤センサ52は、検出空間102に全反射面が臨む様に配置された、透明基板としてのプリズム84と、プリズム84の全反射面上に成膜された、入射光を反射するための金属層86と、プリズム84の全反射面に関し、検出空間102と反対側の、全反射面に全反射条件で光が入射する様な位置に配置された光源80と、光源80から出射された入射光をプリズム84の全反射面上に集光するための集光レンズ82とを含む。
【0030】
洗剤センサ52はさらに、金属層86の剥離及び酸化を防止するために金属層86上に形成された保護層88と、保護層88上に成膜され、検出空間102中の水中に存在する両親媒性分子の疎水基を吸着させるための疎水層90と、第1の部分94と第2の部分96とに分割された受光領域を有し、各部分に入射する金属層86からの反射光の強度を検出し、電圧信号に変換するための光検出器92と、第1の部分94と第2の部分96とからの電圧信号を受けてその差を増幅しセンサ出力100として外部に出力する差動増幅器98とを含む。こうした構造を持つ洗剤センサ52による洗剤濃度の検出については後述する。
【0031】
検出空間102の、水受け槽40に面した開口部には、水流が洗剤分子と疎水層90との吸着を乱さない様に洗濯機の水流を抑えて洗剤分子の検出を適切に行なうためのひさし部104及び106が形成されている。
【0032】
図3に、図1で示した洗濯機30による洗濯処理の制御を行なう、制御回路54が実行するプログラムの制御構造の詳細をフローチャート形式で示す。図3を参照して、ステップ150では、注水と洗剤の注入とが行なわれる。ステップ152では、モータ48(図1参照)を回転させ、洗いが開始される。この時、洗い時間を計測するための図示しないタイマも起動される。
【0033】
ステップ154では、タイマによって洗いを行なう時間が規定時間内であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定時間内であれば、ステップ156に進む。規定時間が満了すると、ステップ164に進む。
【0034】
水と洗剤がある程度撹拌されたら、ステップ156で、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が検出される。
【0035】
ステップ157では、超音波発生器53を一定時間だけ作動させる事により、洗剤センサ52の疎水層90に付着した油分等の異物を洗浄する処理が行なわれる。
【0036】
ステップ158では、洗剤センサ52によって検出された洗剤の濃度が洗濯に適した規定の濃度以上であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定の濃度以上であればステップ162に進み、規定の濃度未満であれば、ステップ160に進む。ステップ160では、濃度に応じて洗剤注入装置56によってさらに洗剤が適量注入される処理が行なわれる。その後、処理はステップ154に戻り、その後の処理を繰返す。ステップ162では、一定時間洗い動作が実行され、その後ステップ154に戻る。
【0037】
ステップ164では、洗い動作を終了する処理が行なわれる。ステップ166では、排水弁50からの排水、脱水、及び注水弁58からの注水が行なわれる。ステップ168では、一定の時間、すすぎが行なわれる。ステップ170では再び、洗剤センサ52によって洗剤濃度の検出処理が行なわれる。
【0038】
ステップ171では、超音波発生器53を一定時間だけ作動させる事により、洗剤センサ52の疎水層90に付着した油分等の異物を洗浄する処理が行なわれる。
【0039】
ステップ172では、洗剤センサ52によって検出された洗剤の濃度が規定濃度以下かどうかを判定する処理が行なわれる。洗剤の濃度が規定濃度を超えていれば、ステップ166に戻り、その後の処理を繰返す。洗剤の濃度が規定濃度以下であれば、ステップ174に進む。ステップ174では排水弁50からの排水処理及び脱水処理が行なわれる。ここではさらにモータ48の回転を止め、洗濯処理を終了する。
【0040】
<洗剤濃度の検出方法>
図4を参照して、洗剤センサ52による洗剤濃度の検出原理である表面プラズモン共鳴について説明する。
【0041】
入射光が所定の入射角で導電体である金属層86に入射すると、金属層86において表面プラズモン波が励起される。通常、金属層86にレーザ光を照射し、レーザ光の波数ベクトルの金属層に平行な成分が表面プラズモン波の波数と一致した際に、共鳴が起こり、入射光のエネルギーの一部が表面プラズモン波の励起に使用され、反射光が減衰する。この現象が表面プラズモン共鳴である。
【0042】
表面プラズモンの励起条件は、屈折率又は誘電率といった金属層86の界面近傍の物性によって大きく変化する。例えば、金属層86のわずかな屈折率の変化があっても、共鳴条件が大きく変化し、表面プラズモンの励起条件が変化する。従って、反射光の光強度が低下する様な光の入射角も金属層86の屈折率の変化に追従して変化する。ところで、疎水層90に検出対象となる物質が吸着すると金属層の界面における屈折率が変化する事が知られている。その結果、疎水層90に検出対象となる物質が吸着すると、金属層の界面において屈折率の変化が生じ、表面プラズモンの励起条件に大きな変化が生ずる。従って、高感度での物質の検出が可能となる。そして、被測定物質の吸着による表面プラズモン共鳴の励起条件の変化のうち、表面プラズモン共鳴が生ずる入射角は、入射角ごとの反射光強度を光検出器92によって測定する事により検出可能である。これが、一般的な表面プラズモン共鳴を使った検出方法の原理である。なお、本実施例のように金属層86と疎水層90の間に保護層88が形成されている場合でも、保護層88の膜厚を薄くして、表面プラズモン共鳴により励起された近接場が疎水層90に十分及ぶようにすることで、疎水層90上での物質の吸着を検出することは可能である。保護層88の膜厚については後述する。
【0043】
次に、上記したプラズモン共鳴を使用した洗剤濃度の検出方法について説明する。洗剤分子は、両親媒性を有する。そのため、図4を参照して洗剤分子が投入された洗濯槽内の水中には、複数の洗剤分子が凝集したミセル110及び112が発生する。ミセルでは、洗剤分子の疎水基が内側を向き、親水基が外側を向く様に洗剤分子が凝集している。ミセルが形成されるためには、洗剤の濃度がある濃度以上でなければならない事が知られている。この様にミセルが形成される洗剤濃度を臨界ミセル濃度と呼ぶ。
【0044】
洗剤分子は両親媒性であり、図4に示す様に疎水基118と親水基116とを持つ。疎水基118は、疎水層90に吸着する事がある。
【0045】
洗剤が洗浄能力を有するのは、洗剤濃度が臨界ミセル濃度以上のときである。このとき、疎水層90に吸着する洗剤分子114の量は飽和している。洗剤濃度が臨界ミセル濃度を下回ると、ミセルは消滅し、疎水層90に吸着した洗剤分子114の一部は脱離し、疎水層90に吸着した洗剤分子の数は減少する。従って、疎水層90に対する洗剤分子114の吸着量は、水中の洗剤分子の濃度に依存する事になる。
【0046】
すなわち、洗剤の濃度が高くなると、疎水層90への洗剤分子114の吸着が進み、臨界ミセル濃度付近では吸着量は飽和する。逆に、臨界ミセル濃度よりも洗剤分子の濃度が低くなると、疎水層90から洗剤分子114の脱離が進み、疎水層90と洗剤分子114の吸着量は減る。この様に、水中の洗剤濃度に応じて吸着と脱離が生じ、平衡状態に達する。この結果、洗剤分子の疎水基118が疎水層90に吸着する量は、水中の洗剤濃度に依存し、濃度が高い場合は吸着量が多くなる。そして、濃度が低い場合は吸着量が少なくなる。
【0047】
この濃度依存性は、洗剤分子が両親媒性を有するために生じる現象である。生理活性物質及び油分等の両親媒性を有しない親油性分子ではこの様な現象は生じない。同様に、親水性分子でも濃度依存性は示さない。なお、洗剤分子の疎水基118が疎水層90と吸着すると、親水基116は水中に向く。
【0048】
臨界ミセル濃度以上であれば、油分等の粒子に対しては洗剤分子の疎水基118が吸着してその粒子を取り囲み、親水基116を外に向ける。一方、洗濯物に油分が付着している場合、それらの一部が疎水層90に付着する事があり得る。すると、この油分の付着により、洗剤センサ52の出力に誤差が生じる。その結果、洗剤検出が正しくできず、洗剤の投入量が不正確になる可能性がある。そのため、疎水層90に付着する油分等の量をできるだけ少なくする必要がある。
【0049】
図5及び図6に、光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す。図5は、洗剤分子114(図4参照)が疎水層90に吸着していない場合の強度パターンを示す。斜線部全体120が反射光ビームの形状を反映している。そのうちの左半分には、表面プラズモン共鳴によって入射光が吸収され、反射光の強度が小さくなった暗線124が生じる。強度パターンにおいて暗線が一部分に生じる理由は以下の通りである。
【0050】
図4において、入射光が集光レンズ82によって収束光となって金属層86に照射される。そして、金属層86への入射光の角度は入射光の中心の角度から収束に応じた角度範囲に広がる。これは、入射光の中心の角度からレンズの開口数に応じた角度だけ正負の両側に広がる事を意味する。
【0051】
その角度範囲の中で、限られた角度だけが表面プラズモン共鳴を励起できる。この励起可能な角度だけで入射光の吸収が生じる。従って、入射光の角度範囲の中で吸収が生じる角度はある一部分だけとなり、吸収が生じない残りの角度の入射光だけが光検出器92側へ反射する。
【0052】
そこで、光検出器92上では表面プラズモンを励起した角度では反射光は検出できず、それ以外の角度の反射光だけが検出できる。従って、光検出器92上の強度パターンには表面プラズモンを励起した角度に対応する部分が暗線となって現れる。
【0053】
ここで、洗剤の濃度が増加すると、疎水層90に吸着する洗剤分子も増加する。疎水層90に吸着する洗剤分子が増加すると金属層86の界面における屈折率等の光学的条件が変化し、表面プラズモン共鳴を励起できる入射角が増す。そして、図5における暗線124は次第に右側(反射光の角度が増加する側)に移動し、図6に示した暗線130の様なパターンを示す。つまり、暗線は、第1の部分94(図4参照)の領域から第2の部分96の領域へ次第に移動する。
【0054】
第1の部分94と第2の部分96との検出値の差を差動増幅器98から出力する事により、暗線の移動を電気的に測定できる。図7に、このときの洗剤濃度と差動増幅器98の出力であるセンサ出力100との関係を示す曲線140を示す。この図に示す様に、洗剤濃度が増加するに従って、センサ出力電圧が増加する。前述した様に、疎水層90に油分等が付着すると暗線の移動量に誤差が生じ、洗剤濃度を正しく計測できない。
【0055】
<動作>
図1及び図2を参照して、洗濯機30の動作を説明する。まず、洗濯兼脱水槽42(図1参照)に洗濯物が入れられると、洗剤注入装置56からは洗剤が注入され、注水弁58からは水が注入される。ベルト46を介してモータ48の動力が回転軸44に伝達され、洗濯兼脱水槽42が回転する。洗濯兼脱水槽42に溜められた水は、水抜き穴60〜70を通って、水受け槽40に流出する。
【0056】
この際に水受け槽40の側面に取付けられた検出空間102(図2参照)に洗剤の混入した水が流入する。多数の洗剤分子によって、水中にミセル110及び112(図4参照)が形成されているが、ミセルを形成しなかった洗剤分子114の疎水基118及び洗濯物からの油分等の汚れが疎水層90に吸着する。
【0057】
ここで、洗剤センサ52に含まれる光源80から出射された入射光は集光レンズ82によって集光され、プリズム84に成膜された金属層86に照射される。金属層86の表面には疎水層90が形成されている。入射光が所定の入射角で金属層86に入射されると、金属層86では表面プラズモンが励起される。表面プラズモンが励起される角度は、疎水層90に吸着した洗剤分子114及び油分の量に従って変化する。金属層86からの反射光は光検出器92によって2種類の電圧信号に変換され、差動増幅器98に与えられる。この電圧信号の値は、受光器の検出面に入射する反射光の強度を表す。従って、表面プラズモンにより暗線が生じた検出面の出力電圧は、他の領域のそれより低くなる。差動増幅器98は2種類の電圧が与えられると、その差をとり、増幅する。この電圧の差を使用して、反射光強度が弱くなる位置を測定する。
【0058】
この測定が行なわれると、超音波発生器53が作動し、超音波312(図8参照)が発生する。超音波発生器53は、水中に、目に見えない細かい気泡(キャビテーション)を無数に発生させる。そのキャビテーションの強くはじける瞬間に出る衝撃波が、微細なすき間の異物等を粉砕して、布やブラシ、水流では落ちない洗剤センサ52に付着した異物を取除く。このとき洗剤センサ52表面から離れた異物は、周囲にある洗剤分子と衝突しミセル内に取り込まれやすいため、再び洗剤センサ52表面に付着する量は非常に少ない。
【0059】
図8を参照して、洗剤センサ52の表面316に、異物等314が付着した場合、超音波発生器53が水中に超音波312を発生させ、異物等314を離脱させる。離脱後の異物等314は、水中に分散する。洗剤濃度の検出時に超音波312を発生させると、洗剤分子が疎水層に吸着せず、洗剤濃度の検出ができなくなるので、この様な使用方法は避ける事が好ましい。
【0060】
その後、差動増幅器98は測定結果を表す信号を制御回路54(図1参照)に送信する。制御回路54は、洗剤センサ52から送信された測定結果に従って、洗剤濃度が低すぎれば洗剤注入装置56を制御してさらに洗剤を注入させ、洗剤濃度が高すぎれば注水弁58を制御してさらに水を注入させる。
【0061】
適切な洗剤濃度で、洗剤を使用した洗濯及び脱水が完了すると、制御回路54からの制御によって排水弁50から排水が行なわれる。その後、洗濯機30はすすぎの動作を行なう。すすぎの動作の詳細については、洗剤が注入されないだけで、洗剤を使用した洗濯と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
すすぎの際にも、洗剤センサ52にすすぎ水が流入し、洗剤濃度が測定される。測定された洗剤濃度測定結果の信号は制御回路54に送信される。また、この時、洗い時と同様に超音波発生器53による洗剤センサ52の表面の洗浄が行なわれる。洗剤濃度が十分に低ければすすぎ及び脱水後、洗濯を終了し、洗剤濃度が高すぎれば制御回路54は注水弁58を制御して水を注入させて再びすすぎ及び脱水を行なう。
【0063】
<作製方法>
以下で、洗剤センサ52の具体的な構成要素を示す。光源80は波長635nmの半導体レーザ、集光レンズ82の開口数は0.05、プリズム84の材料はルミセラ(登録商標。村田製作所製。屈折率2.08)、金属層86は厚さ50nmの金、及び保護層88は厚さ2nm酸化シリコンからなる。
【0064】
入射光の中心の入射角は45度で、集光によってビーム端の入射角は±3〜4度の範囲となっている。この条件は、表面プラズモン共鳴を効率よく励起する条件の一つに従って決定されたものである。上記の波長とプリズムの屈折率を固定した場合、金属層86の膜厚は10〜100nm、保護層88の膜厚は1〜10nmである事が好ましい。
【0065】
疎水層90の作製方法は、以下の通りである。容器に疎水層を形成する材料のオクタデシルトリエトキシシラン0.064gを入れ、トルエン5.950gに溶解させ(1wt%溶液)る。さらに高屈折率プリズムを上記液体に入れて30分間室温にて撹拌する。その後、基板が取り出され、23時間室温で乾燥させられる。乾燥後、表面をアセトンで洗浄する。これにより酸化シリコンからなる保護層88上にオクタデシルシランを強く結合させることができ、強度の高い疎水層90が形成される。
【0066】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等を超音波発生器53によって除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0067】
また、洗剤センサとしては、他の実施の形態に記載の洗剤センサを用いてもよい。
【0068】
洗剤センサ52による洗剤分子検出前に毎回リセット動作として、超音波312を発生させて、異物等314を予め除去する動作を行なわせてもよい。
【0069】
なお、金属層86の材料は、金の他に銀、白金、及びアルミニウムのうちいずれでもよい。
【0070】
また、保護層88は酸化シリコンの他に、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛のうちいずれでもよい。
【0071】
上記した疎水層を形成する物質として使用されたオクタデシルトリエトキシシランは、疎水基として18個の炭素が直鎖状に結合した直鎖アルキル基を備えるが、他に分岐型のアルキル基、アルキルベンゼン基、アルキルナルタレン基、ペルフルオロアルキル基、ポリプロピレンオキサイド基、及びポリシロキサン基のいずれかを含む有機分子であってもよい。
【0072】
また、本実施の形態で説明した疎水層90作製の際の反応条件は一例である。疎水層90上に取付ける置換基の種類により、シランカップリング剤の濃度、溶媒の種類、撹拌時間、乾燥時間、及び洗浄溶媒を変更する必要がある。
【0073】
[第2の実施の形態]
<構成>
図9に、本発明の第2の実施の形態に係る洗剤センサ176及び洗剤センサに隣接した検出空間102の構成を断面図で示す。なお、図9において、第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一番号を付してあり、その名称も同一のものを用いるため、その部分の説明は繰返さない。
【0074】
図9を参照して、洗剤センサ176は、全反射面が検出空間102に臨む様に配置された透明基板としてのプリズム84と、プリズム84の全反射面上に形成された金属層86と、金属層86上に成膜された保護層88と、保護層88上に成膜された疎水層194と、図11に示す様に第1の部分182、第2の部分184、第3の部分186、及び第4の部分188に分割された受光領域を有し、金属層86から各部分への反射光の強度を検出し、それぞれ電圧に変換するための光検出器180と、第1の部分182〜第4の部分188のうちの第1の部分182と第2の部分184とからの出力電圧の差、及び第3の部分186と第4の部分188とからの出力電圧の差をそれぞれ算出し、センサ出力192として外部に出力する差動増幅器190と、金属層86及び保護層88の、対向する一対の辺に沿って設けられ、かつ一部が保護層88表面にわずかに張出して接する様に設けられた、洗剤センサ176の表面を加熱して異物を除去するためのヒータ320及び322とを含む。
【0075】
図10に、本実施の形態に係る洗剤センサ176の、受光領域上に形成された疎水層194の表面構造を示す。図10を参照して、疎水層194は、疎水性分子のみからなる疎水層252と、疎水性及び疎油性の両方を備える参照層254とを含む。この参照層は、例えばフッ素コーティングによって作製される。
【0076】
なお、この疎水層194は、中央から半分ずつの領域に分けられている。また、この境界部には入射光が強度パターン256で示す様に照射される。
【0077】
<洗剤濃度の検出方法>
本実施の形態に係る洗剤センサにおいては、疎水性分子のみからなる疎水層252を使用して洗剤濃度の相対的変化を測定する。そして、参照層254を使用して基準値を測定する。参照層254には、洗剤も油分も吸着しないため、常に安定した基準値が出力される。
【0078】
図11及び図12は、検出器の検出面での強度パターンである。図に示す様に、検出器の検出面(受光面)は、領域182〜領域188の4つの領域に分割されている。まず、洗剤濃度が低いと図11に示す様に、疎水層194の低濃度側に対応する領域182に暗線270が生じる。徐々に洗剤濃度が上がると、暗線270のうち、領域182に生じたものは領域184に移動して、図12に示す様に領域184に暗線280が生じる。一方、暗線270のうち、領域186に生じたものは移動せずにそのままの状態を保つので、暗線282が生じる。
【0079】
図13に、暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力の関係で示す。図11での暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で表すと、曲線290の様になる。図12での暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で表すと、破線292の様になる。
【0080】
これは、参照層254に対応する検出器の領域186では、図11に示す洗剤分子の濃度が低い状態から、図12に示す洗剤分子の濃度が高い状態へ変化しても、暗線の位置270は変化しないためである。このセンサ出力290からセンサ出力292の電圧を回路によって引くと、洗剤濃度の絶対値がより正確に測定可能となる。
【0081】
この様な参照層254を使用する事によって安定した基準値を出力できる理由は以下の通りである。センサには個体差がある。ここで、個体差とは、入射光の角度のわずかなばらつき並びに金属層及び保護層の膜厚のわずかなばらつき等の事である。これらの個体差に起因して、暗線の位置がばらついてしまう。
【0082】
この様に暗線の位置にばらつきが生じると、センサ出力もばらつく。このとき、参照用として疎水性分子及び疎油性分子からなる参照層254があると、疎水性分子のみからなる層252と同様に参照層254からのセンサ出力にも個体差に起因するばらつきが生じる。従って、疎水層252からのセンサ出力と参照層254からのセンサ出力値との差をとれば、センサの個体差に依存する出力電圧のばらつきが低減でき、検出誤差が減少する。
【0083】
<動作>
本実施の形態に係る洗剤センサ176と第1の実施の形態に係る洗剤センサ52との動作は、ほとんど同じである。しかし、本実施の形態に係る洗剤センサ176では、光検出器180が4つの検出領域182〜188を含む。従って、金属層86からの反射光は光検出器180からの4種類の電圧信号に変換される。差動増幅器190は、第1の部分182と第2の部分184とからの出力電圧の差、及び第3の部分186と第4の部分188とからの出力電圧の差をそれぞれ算出し、出力する。この2種類の電圧差を使用して、疎水性領域と疎油性領域との双方において洗剤の吸着量を検出できる。
【0084】
また、第1の実施の形態とは異なり、本実施の形態に係る洗剤センサ176には、洗剤センサ176の表面に接する様に取付けられたヒータ320及び322が存在する。図14に、洗剤センサ176の上に異物等330が付着した場合の断面図と平面図とを示す。図14を参照して、ヒータ320及び322により洗剤センサ52の表面が加熱される。洗剤センサ52の表面が加熱されると、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の異物は熱せられて分子振動が激しくなる。これにより異物は軟化し、更に水中に生じた対流により、水中に分散する。ヒータ320及び322による加熱は、特に油分等の油脂系の異物を除去するのに有効である。
【0085】
それ以外の動作は第1の実施の形態に記載のものと同様であるので、説明は繰返さない。
【0086】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等をヒータ320及び322によって除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0087】
本実施の形態では、洗剤センサ52の表面をヒータ320及び322によって直接加熱した。しかし、直接加熱しなくとも洗剤センサ52の近傍の水を加熱してもよい。また、加熱した水をセンサ表面に送る事で、センサ表面を洗浄してもよい。
【0088】
また、洗剤センサとしては、他の実施の形態に記載の洗剤センサを用いてもよい。
【0089】
[第3の実施の形態]
<構成>
図15に、本実施の形態に係る洗剤センサ52の断面図を示す。図15を参照して、本実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサ52の構成は、第1の実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサ52とほぼ同じである。異なっている点は、検出空間102に接する様に設置されているのが洗剤センサ52のみで、超音波発生器53は含まれていないという点である。そこで、洗剤センサ52の構成についてはここでは説明を繰返さない。本実施の形態では、超音波発生器53の様な、洗浄のための装置を使わず、測定のためのレーザ光の出力で洗剤センサ52の温度を制御する。
【0090】
図16に、光源80(図15参照)を使用した光加熱洗浄のためのプログラムの制御構造をフローチャートで示す。図16を参照して、ステップ340では、注水と洗剤の注入とが行なわれる。ステップ342では、モータ48を回転させ、洗いが開始される。この時、洗い時間を計測するための図示しないタイマも起動される。
【0091】
ステップ344では、タイマによって洗いを行なう時間が規定時間内であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定時間内であれば、ステップ346に進む。規定時間が満了すると、ステップ356に進む。
【0092】
水と洗剤がある程度撹拌されたら、ステップ346で、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が検出される。
【0093】
ステップ348では、光源80(図15参照)からの出射光の強度を上げ、強い入射光を金属層86に一定時間照射する。この照射により金属層86及び保護層88とが熱され、さらに水中に対流が生じて、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の汚れが水中に分散する。すなわち、洗剤センサ52の表面が洗浄される。
【0094】
ステップ350では、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が洗濯に適した規定の濃度以上であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定の濃度以上であればステップ352に進み、規定の濃度未満であれば、ステップ354に進む。ステップ354では、濃度に応じて洗剤注入装置56によってさらに洗剤が適量注入される処理が行なわれる。その後、処理はステップ344に戻り、その後の処理を繰返す。ステップ352では、一定時間洗い動作が実行され、その後ステップ344に戻る。
【0095】
ステップ356では、洗い動作を終了する処理が行なわれる。ステップ358では、排水弁50からの排水、脱水、及び注水弁58からの注水が行なわれる。ステップ360では、一定の時間、すすぎが行なわれる。ステップ362では再び、洗剤センサ52によって洗剤濃度の検出処理が行なわれる。
【0096】
ステップ364では、再び光源80からの出射光の強度を上げ、強い入射光を金属層86に一定時間照射し、洗剤センサ52の表面を洗浄する処理が行なわれる。
【0097】
ステップ366では、洗剤センサ52によって測定された洗剤の濃度が規定濃度以下かどうかを判定する処理が行なわれる。洗剤の濃度が規定濃度を超えていれば、ステップ358に戻り、その後の処理を繰返す。洗剤の濃度が規定濃度以下であれば、ステップ368に進む。ステップ368では排水弁50からの排水処理及び脱水処理が行なわれる。ここではさらにモータ48の回転を止め、洗濯処理を終了する。
【0098】
<動作>
図15を参照して、光源80からの出射光が洗剤センサ52の表面を加熱する。洗剤センサ52の表面が加熱されると、その熱とその熱によって水中に生じる対流とによって、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の異物は熱せられ、水中に分散する。一定時間経過後に、光の出射を終えて洗浄を終了する。光源80からの出射光による加熱は、特に油分等の油脂系の異物を除去するのに有効である。
【0099】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等を光源80の出力を上げる事により除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0100】
本実施の形態では、洗剤センサとして第1の実施の形態に記載の洗剤センサ52と同じ構成のものを例にとって説明したが、第2の実施の形態に係る洗剤センサを用いてもよい。
【0101】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】洗濯機30の断面を示す図である。
【図2】洗剤センサ52の内部構成及び洗剤センサ52に隣接した検出空間102の構成を断面で示す図である。
【図3】図1に示した洗濯機30の制御のためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】洗剤センサ52による洗剤濃度の検出原理を示す図である。
【図5】光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図6】光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図7】暗線の移動を電気的に測定したときの洗剤濃度とセンサ出力100との関係を示すグラフである。
【図8】第1の実施の形態に係る洗剤センサ52及び洗剤センサに隣接した検出空間102の内部構成を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る洗剤センサ176及び検出空間102の断面を示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る洗剤センサの疎水層194の表面構造を示す図である。
【図11】光検出器の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図12】光検出器の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図13】暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で示すグラフである。
【図14】洗剤センサ176の上に異物等330が付着した場合を示す図である。
【図15】第3の実施の形態に係る洗剤センサ338の断面を示す図である。
【図16】光加熱洗浄のためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
30 洗濯機、40 水受け槽、42 洗濯兼脱水槽、44 回転軸、46 ベルト、48 モータ、50 排水弁、52 洗剤センサ、53 超音波発生器、54 制御回路、56 洗剤注入装置、60〜70 水抜き穴、80 光源、82 集光レンズ、84 プリズム、86 金属層、88 保護層、90 疎水層、92及び180 光検出器、94及び182 第1の部分、96及び184 第2の部分、98及び190 差動増幅器、100及び192 センサ出力、104及び106 ひさし部、110及び112 ミセル、114 洗剤分子、116 親水基、118 疎水基、124、130、270、280及び282 暗線、186 第3の部分、188 第4の部分、320及び322 ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子を検出する装置、特に表面プラズモン共鳴を用いて洗剤の様な両親媒性を持つ分子を検出するセンサに付着した異物等を洗浄するための機能を備えた分子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内等で起こる様々な分子間の相互作用をリアルタイムに検出する、表面プラズモン共鳴現象を応用した検出装置の開発が進んでいる。表面プラズモン共鳴現象とは、例えば金属と誘電体との界面に光を照射した場合に起こる現象である。表面プラズモン共鳴現象を応用した検出装置によると、当該界面の性質(すなわち誘電体の性質)を非接触かつ高感度で検出する事ができる。また、分子にラベルを付す必要もない。
【0003】
特許文献1は、表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサを開示している。このバイオセンサは、金属層と、この金属層への入射光となる光を出射する光源と、金属層からの反射光を受光する受光器とを含む。入射光が金属層に入射する際の入射角はおよそ45〜50度である。金属層界面には疎水性高分子化合物がコーティングされている。光は、この疎水性高分子化合物がコーティングされている面とは反対側からこの金属層に入射する。このバイオセンサは、コーティングされた疎水性高分子化合物に生理活性物質が結合する際の表面プラズモン共鳴による反射光の強度低下が発生する反射角の変化を検出する事によって、各種バイオ物質の検出を行なう。
【0004】
特許文献2は、表面プラズモン共鳴を用いた検出装置を備えた微量油分検知装置を開示している。この検出装置は、特許文献1に開示されたものと同様、金属層と、光源と、受光器とを含む。金属層界面には親油性膜がコーティングされている。この親油性膜に油分が吸着する際の表面プラズモン共鳴による反射光の強度低下が発生する反射角の変化を検出する事によって微量の油分が高感度で検出される。
【特許文献1】特開2005−189061号公報
【特許文献2】特開平10−38797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術においては、疎水性高分子化合物に吸着した生理活性物質及び親油性膜に吸着した油分の除去が困難である。それゆえこれらのセンサ及び検知装置においては、一度使用されて生理活性物質及び油分が吸着すると、高感度での検出が困難となる。その結果、これらのセンサ及び検知装置は使い捨てのものになってしまう事が多い。この様に使い捨てられてしまうと、コスト削減及び環境保護の点からは好ましくない。また、使い捨ての装置であると、普及型の商品を実現する事が困難となる。
【0006】
センサ及び検知装置が使い捨てのものになってしまう事を回避するためには、生理活性物質及び油分がそれぞれ付着した疎水性高分子化合物及び親油性膜を金属層表面から除去する必要がある。しかし、これらの除去のためには試薬等を使用する必要があるので、手間がかかる。また、試薬を使用する事に起因する薬害及び環境汚染のおそれもある。
【0007】
それゆえに、本発明の目的は、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境に対する負荷が少なく、繰返し利用できる普及型の分子検出装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に係る分子検出装置は、表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、第1の反射面を有する透明基板と、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層と、第1の反射面に関し、金属層と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、金属層上に形成された疎水層と、光源により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段と、金属層上に形成された疎水層に付着した異物を洗浄するための洗浄手段とを含む。
【0009】
この分子検出装置によると、光源により出射された光が、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層で全反射する。この金属層によって全反射された反射光には、表面プラズモン共鳴による暗線が生じる。金属層上には、疎水性の疎水層とが形成されており、両親媒性分子の疎水基がこの疎水層に吸着する量により、金属層と疎水層との界面の屈折率等の光学的性質が変化して、暗線の位置が変化する。この位置の変化を検出手段により検出する。暗線の位置の変化は、疎水層に吸着した両親媒性分子の量に応じて変化する。また疎水層に吸着した両親媒性分子の量は、疎水層が臨む空間に存在する両親媒性分子の濃度に応じて変化する。従って、両親媒性分子の濃度を表面プラズモン共鳴により生じる暗線の位置の変化を用いて検出できる。また、両親媒性分子は水中における分子の濃度に応じて可逆的に疎水層に吸着したり疎水層から離れたりする。従って、検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用できる。さらに、両親媒性分子を除去する薬剤などは不要である。また、洗浄手段により金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄する事ができる。その結果、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置を提供できる。
【0010】
好ましくは、洗浄手段は、金属層及び疎水層の近傍に設けられた超音波発生器を含む。
【0011】
この分子検出装置によると、疎水層の上に油分等の異物が付着した場合に、金属層及び疎水層の近傍に設けられた超音波発生器によって異物を洗浄する事ができる。従って、付着した異物に影響されずに、繰返し測定を行なう事ができる分子検出装置を提供できる。
【0012】
好ましくは、洗浄手段は、金属層及び疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられ、金属層及び疎水層の少なくとも一方を加熱するための手段を含む。
【0013】
この分子検出装置によると、疎水層の上に油分等の異物が付着した場合に、金属層及び疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられた、加熱するための手段によって、異物の軟化を促し、加熱による対流と相まって異物を浮かせて水中に分散させる事ができる。従って、付着した異物に影響されずに、繰返し測定を行なう事ができる分子検出装置を提供できる。
【0014】
さらに好ましくは、分子検出装置はさらに、金属層と疎水層との間に形成された、金属層を保護するための保護層を含む。
【0015】
この分子検出装置によると、金属層と疎水層との間に金属層を保護するための保護層が存在する。従って、金属層の剥離及び酸化を防止できる分子検出装置を提供できる。
【0016】
好ましくは、保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛からなるグループから選ばれる材料により形成される。
【0017】
この分子検出装置によると、保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛のいずれかで形成されている。保護層が酸化物であるため、金属層への疎水層の化学的コーティングが容易になる。その結果、疎水層の強度が増加する。
【0018】
本発明の第2の局面に係る洗浄装置は、洗浄槽と、洗浄槽に水を注入するための注水手段と、洗浄槽に洗剤を注入するための洗剤注入手段と、洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段と、洗浄槽内の水中の洗剤の濃度を検出するための、上記のいずれかに記載の分子検出装置と、分子検出装置からの検出結果に基づいて、注水手段、洗剤注入手段、及び洗浄手段を制御するための制御手段とを含む。
【0019】
この洗浄装置によると、分子検出装置による洗剤濃度の検出結果に基づいて、制御手段によって注水手段、洗剤注入手段、及び洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段が制御される。従って、検出結果に基づいて適当な洗剤濃度に達する様に無駄なく、かつ、自動的に洗剤の投入及びすすぎの制御が行なわれる。その結果、洗剤及び水の節約ができ、環境負荷の低い洗浄器を提供する事ができる。
【0020】
本発明の第3の局面に係る分子検出装置は、表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、第1の反射面を有する透明基板と、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層と、第1の反射面に関し、金属層と反対側に、第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、光源の出力を制御するための制御手段と、金属層上に形成された疎水層と、光源により出射され、反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段とを含み、制御手段は、検出手段による検出時には所定の第1の出力となる様に光源の出力を制御し、金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には第1の出力より大きな第2の出力となる様に光源の出力を制御する。
【0021】
この分子検出装置によると、光源により出射された光が、透明基板の第1の反射面上に形成された金属層で全反射する。この金属層によって全反射された反射光には、表面プラズモン共鳴による暗線が生じる。金属層上には、金属層を保護するための保護層と疎水性の疎水層とが形成されており、両親媒性分子の疎水基がこの疎水層に吸着する量により、保護層と疎水層との界面の屈折率等の光学的性質が変化して、暗線の位置が変化する。この位置の変化を検出手段により検出する。暗線の位置の変化は、疎水層に吸着した両親媒性分子の量に応じて変化する。また疎水層に吸着した両親媒性分子の量は、疎水層が臨む空間に存在する両親媒性分子の濃度に応じて変化する。従って、両親媒性分子の濃度を表面プラズモン共鳴により生じる暗線の位置の変化を用いて検出できる。また、両親媒性分子は水中における分子の濃度に応じて可逆的に疎水層に吸着したり疎水層から離れたりする。従って、検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用できる。さらに、両親媒性分子を除去する薬剤などは不要である。また、金属層とその上に形成された疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には測定時の第1の出力より大きな第2の出力となる様に光源の出力を制御するので、金属層が光により加熱され、疎水層に付着した異物を光源の熱によって除去する事ができる。その結果、表面プラズモン共鳴現象を利用しながら、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
以上の様に本発明に係る分子検出装置によると、金属層において表面プラズモン共鳴が生じる光の入射角は、疎水層表面に吸着する両親媒性分子の吸着量に依存する。この両親媒性分子の吸着量は、水中の両親媒性分子の濃度に依存する。従って、金属層において表面プラズモン共鳴が生ずる光の入射角は水中の両親媒性分子の濃度に依存する事になる。その結果、反射光量によって両親媒性分子の濃度を高感度で測定する事が可能となる。両親媒性分子は水中における両親媒性分子の濃度に応じて疎水層に可逆的に吸着したり離れたりするため、この分子検出装置は繰返し測定に適している。従って、分子検出装置を使い捨てとする必要はなく、繰返し使用する事ができる。その上、センサ表面を洗浄するための洗浄手段により、センサ表面に微量に吸着した異物も取除く事ができ、より繰返しの測定に適した分子検出装置を提供できる。
【0023】
洗浄手段としては、超音波発生器を用いたり、加熱によってセンサ表面に付着した油分等の異物の水への分散性を上げたり、センサ中の光源からセンサ表面への出射光強度を上げる事によりセンサ表面を加熱し、異物の水への分散性を上げたりするものを使用できる。両親媒性分子を除去するための薬剤などは不要である。従って、環境負荷の少ない普及型の分子検出装置の実現が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサを使用した洗濯機30の構成の断面図を示す。図1を参照して、洗濯機30は、洗濯の際に水を溜めるための水受け槽40と、水受け槽40の内側に配置され、洗濯物を収容して洗濯及び脱水をするため、脱水のための水抜き穴60〜70が穿たれた洗濯兼脱水槽42と、洗濯兼脱水槽42の底面下部中央に取付けられた回転軸44と、洗濯兼脱水槽42の底面の下方に設けられた、回転軸44を回転させる動力を提供するモータ48と、モータ48の動力を回転軸44に伝達し回転軸44を回転させるためのベルト46とを含む。
【0025】
洗濯機30はさらに、水抜き穴60〜70から水抜きされて水受け槽40に溜まった水を排水するための排水弁50と、水受け槽40に溜まった水に含まれる洗剤濃度を表面プラズモン共鳴を使用して測定し、測定結果を電気信号として出力するための洗剤センサ52と、洗剤センサ52によって出力された洗剤濃度測定結果を表す信号を受けて洗剤濃度を調節する動作及び排水弁50に排水動作を行なわせるためのプロセッサを含む制御回路54と、洗剤センサ52に隣接して設けられ、制御回路54により制御され洗剤センサ52の表面に付着した異物を取除くための超音波発生器53とを含む。
【0026】
表面プラズモン共鳴の原理については後述する。
【0027】
洗濯機30はさらに、制御回路54によって制御され、洗濯兼脱水槽42に洗剤を注入するための洗剤注入装置56と、同じく制御回路54によって制御され、洗濯兼脱水槽42に水を注入するための注水弁58とを含む。
【0028】
図2に、洗剤センサ52の内部構成、並びに洗剤センサ52及び超音波発生器53に隣接した検出空間102の構成を断面図及び平面図で示す。なお、この図においては、洗剤センサ52及び超音波発生器53は、図1で示された洗剤センサ52及び超音波発生器53を時計回りに90度回転させて示してある。
【0029】
図2を参照して、洗剤センサ52は、検出空間102に全反射面が臨む様に配置された、透明基板としてのプリズム84と、プリズム84の全反射面上に成膜された、入射光を反射するための金属層86と、プリズム84の全反射面に関し、検出空間102と反対側の、全反射面に全反射条件で光が入射する様な位置に配置された光源80と、光源80から出射された入射光をプリズム84の全反射面上に集光するための集光レンズ82とを含む。
【0030】
洗剤センサ52はさらに、金属層86の剥離及び酸化を防止するために金属層86上に形成された保護層88と、保護層88上に成膜され、検出空間102中の水中に存在する両親媒性分子の疎水基を吸着させるための疎水層90と、第1の部分94と第2の部分96とに分割された受光領域を有し、各部分に入射する金属層86からの反射光の強度を検出し、電圧信号に変換するための光検出器92と、第1の部分94と第2の部分96とからの電圧信号を受けてその差を増幅しセンサ出力100として外部に出力する差動増幅器98とを含む。こうした構造を持つ洗剤センサ52による洗剤濃度の検出については後述する。
【0031】
検出空間102の、水受け槽40に面した開口部には、水流が洗剤分子と疎水層90との吸着を乱さない様に洗濯機の水流を抑えて洗剤分子の検出を適切に行なうためのひさし部104及び106が形成されている。
【0032】
図3に、図1で示した洗濯機30による洗濯処理の制御を行なう、制御回路54が実行するプログラムの制御構造の詳細をフローチャート形式で示す。図3を参照して、ステップ150では、注水と洗剤の注入とが行なわれる。ステップ152では、モータ48(図1参照)を回転させ、洗いが開始される。この時、洗い時間を計測するための図示しないタイマも起動される。
【0033】
ステップ154では、タイマによって洗いを行なう時間が規定時間内であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定時間内であれば、ステップ156に進む。規定時間が満了すると、ステップ164に進む。
【0034】
水と洗剤がある程度撹拌されたら、ステップ156で、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が検出される。
【0035】
ステップ157では、超音波発生器53を一定時間だけ作動させる事により、洗剤センサ52の疎水層90に付着した油分等の異物を洗浄する処理が行なわれる。
【0036】
ステップ158では、洗剤センサ52によって検出された洗剤の濃度が洗濯に適した規定の濃度以上であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定の濃度以上であればステップ162に進み、規定の濃度未満であれば、ステップ160に進む。ステップ160では、濃度に応じて洗剤注入装置56によってさらに洗剤が適量注入される処理が行なわれる。その後、処理はステップ154に戻り、その後の処理を繰返す。ステップ162では、一定時間洗い動作が実行され、その後ステップ154に戻る。
【0037】
ステップ164では、洗い動作を終了する処理が行なわれる。ステップ166では、排水弁50からの排水、脱水、及び注水弁58からの注水が行なわれる。ステップ168では、一定の時間、すすぎが行なわれる。ステップ170では再び、洗剤センサ52によって洗剤濃度の検出処理が行なわれる。
【0038】
ステップ171では、超音波発生器53を一定時間だけ作動させる事により、洗剤センサ52の疎水層90に付着した油分等の異物を洗浄する処理が行なわれる。
【0039】
ステップ172では、洗剤センサ52によって検出された洗剤の濃度が規定濃度以下かどうかを判定する処理が行なわれる。洗剤の濃度が規定濃度を超えていれば、ステップ166に戻り、その後の処理を繰返す。洗剤の濃度が規定濃度以下であれば、ステップ174に進む。ステップ174では排水弁50からの排水処理及び脱水処理が行なわれる。ここではさらにモータ48の回転を止め、洗濯処理を終了する。
【0040】
<洗剤濃度の検出方法>
図4を参照して、洗剤センサ52による洗剤濃度の検出原理である表面プラズモン共鳴について説明する。
【0041】
入射光が所定の入射角で導電体である金属層86に入射すると、金属層86において表面プラズモン波が励起される。通常、金属層86にレーザ光を照射し、レーザ光の波数ベクトルの金属層に平行な成分が表面プラズモン波の波数と一致した際に、共鳴が起こり、入射光のエネルギーの一部が表面プラズモン波の励起に使用され、反射光が減衰する。この現象が表面プラズモン共鳴である。
【0042】
表面プラズモンの励起条件は、屈折率又は誘電率といった金属層86の界面近傍の物性によって大きく変化する。例えば、金属層86のわずかな屈折率の変化があっても、共鳴条件が大きく変化し、表面プラズモンの励起条件が変化する。従って、反射光の光強度が低下する様な光の入射角も金属層86の屈折率の変化に追従して変化する。ところで、疎水層90に検出対象となる物質が吸着すると金属層の界面における屈折率が変化する事が知られている。その結果、疎水層90に検出対象となる物質が吸着すると、金属層の界面において屈折率の変化が生じ、表面プラズモンの励起条件に大きな変化が生ずる。従って、高感度での物質の検出が可能となる。そして、被測定物質の吸着による表面プラズモン共鳴の励起条件の変化のうち、表面プラズモン共鳴が生ずる入射角は、入射角ごとの反射光強度を光検出器92によって測定する事により検出可能である。これが、一般的な表面プラズモン共鳴を使った検出方法の原理である。なお、本実施例のように金属層86と疎水層90の間に保護層88が形成されている場合でも、保護層88の膜厚を薄くして、表面プラズモン共鳴により励起された近接場が疎水層90に十分及ぶようにすることで、疎水層90上での物質の吸着を検出することは可能である。保護層88の膜厚については後述する。
【0043】
次に、上記したプラズモン共鳴を使用した洗剤濃度の検出方法について説明する。洗剤分子は、両親媒性を有する。そのため、図4を参照して洗剤分子が投入された洗濯槽内の水中には、複数の洗剤分子が凝集したミセル110及び112が発生する。ミセルでは、洗剤分子の疎水基が内側を向き、親水基が外側を向く様に洗剤分子が凝集している。ミセルが形成されるためには、洗剤の濃度がある濃度以上でなければならない事が知られている。この様にミセルが形成される洗剤濃度を臨界ミセル濃度と呼ぶ。
【0044】
洗剤分子は両親媒性であり、図4に示す様に疎水基118と親水基116とを持つ。疎水基118は、疎水層90に吸着する事がある。
【0045】
洗剤が洗浄能力を有するのは、洗剤濃度が臨界ミセル濃度以上のときである。このとき、疎水層90に吸着する洗剤分子114の量は飽和している。洗剤濃度が臨界ミセル濃度を下回ると、ミセルは消滅し、疎水層90に吸着した洗剤分子114の一部は脱離し、疎水層90に吸着した洗剤分子の数は減少する。従って、疎水層90に対する洗剤分子114の吸着量は、水中の洗剤分子の濃度に依存する事になる。
【0046】
すなわち、洗剤の濃度が高くなると、疎水層90への洗剤分子114の吸着が進み、臨界ミセル濃度付近では吸着量は飽和する。逆に、臨界ミセル濃度よりも洗剤分子の濃度が低くなると、疎水層90から洗剤分子114の脱離が進み、疎水層90と洗剤分子114の吸着量は減る。この様に、水中の洗剤濃度に応じて吸着と脱離が生じ、平衡状態に達する。この結果、洗剤分子の疎水基118が疎水層90に吸着する量は、水中の洗剤濃度に依存し、濃度が高い場合は吸着量が多くなる。そして、濃度が低い場合は吸着量が少なくなる。
【0047】
この濃度依存性は、洗剤分子が両親媒性を有するために生じる現象である。生理活性物質及び油分等の両親媒性を有しない親油性分子ではこの様な現象は生じない。同様に、親水性分子でも濃度依存性は示さない。なお、洗剤分子の疎水基118が疎水層90と吸着すると、親水基116は水中に向く。
【0048】
臨界ミセル濃度以上であれば、油分等の粒子に対しては洗剤分子の疎水基118が吸着してその粒子を取り囲み、親水基116を外に向ける。一方、洗濯物に油分が付着している場合、それらの一部が疎水層90に付着する事があり得る。すると、この油分の付着により、洗剤センサ52の出力に誤差が生じる。その結果、洗剤検出が正しくできず、洗剤の投入量が不正確になる可能性がある。そのため、疎水層90に付着する油分等の量をできるだけ少なくする必要がある。
【0049】
図5及び図6に、光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す。図5は、洗剤分子114(図4参照)が疎水層90に吸着していない場合の強度パターンを示す。斜線部全体120が反射光ビームの形状を反映している。そのうちの左半分には、表面プラズモン共鳴によって入射光が吸収され、反射光の強度が小さくなった暗線124が生じる。強度パターンにおいて暗線が一部分に生じる理由は以下の通りである。
【0050】
図4において、入射光が集光レンズ82によって収束光となって金属層86に照射される。そして、金属層86への入射光の角度は入射光の中心の角度から収束に応じた角度範囲に広がる。これは、入射光の中心の角度からレンズの開口数に応じた角度だけ正負の両側に広がる事を意味する。
【0051】
その角度範囲の中で、限られた角度だけが表面プラズモン共鳴を励起できる。この励起可能な角度だけで入射光の吸収が生じる。従って、入射光の角度範囲の中で吸収が生じる角度はある一部分だけとなり、吸収が生じない残りの角度の入射光だけが光検出器92側へ反射する。
【0052】
そこで、光検出器92上では表面プラズモンを励起した角度では反射光は検出できず、それ以外の角度の反射光だけが検出できる。従って、光検出器92上の強度パターンには表面プラズモンを励起した角度に対応する部分が暗線となって現れる。
【0053】
ここで、洗剤の濃度が増加すると、疎水層90に吸着する洗剤分子も増加する。疎水層90に吸着する洗剤分子が増加すると金属層86の界面における屈折率等の光学的条件が変化し、表面プラズモン共鳴を励起できる入射角が増す。そして、図5における暗線124は次第に右側(反射光の角度が増加する側)に移動し、図6に示した暗線130の様なパターンを示す。つまり、暗線は、第1の部分94(図4参照)の領域から第2の部分96の領域へ次第に移動する。
【0054】
第1の部分94と第2の部分96との検出値の差を差動増幅器98から出力する事により、暗線の移動を電気的に測定できる。図7に、このときの洗剤濃度と差動増幅器98の出力であるセンサ出力100との関係を示す曲線140を示す。この図に示す様に、洗剤濃度が増加するに従って、センサ出力電圧が増加する。前述した様に、疎水層90に油分等が付着すると暗線の移動量に誤差が生じ、洗剤濃度を正しく計測できない。
【0055】
<動作>
図1及び図2を参照して、洗濯機30の動作を説明する。まず、洗濯兼脱水槽42(図1参照)に洗濯物が入れられると、洗剤注入装置56からは洗剤が注入され、注水弁58からは水が注入される。ベルト46を介してモータ48の動力が回転軸44に伝達され、洗濯兼脱水槽42が回転する。洗濯兼脱水槽42に溜められた水は、水抜き穴60〜70を通って、水受け槽40に流出する。
【0056】
この際に水受け槽40の側面に取付けられた検出空間102(図2参照)に洗剤の混入した水が流入する。多数の洗剤分子によって、水中にミセル110及び112(図4参照)が形成されているが、ミセルを形成しなかった洗剤分子114の疎水基118及び洗濯物からの油分等の汚れが疎水層90に吸着する。
【0057】
ここで、洗剤センサ52に含まれる光源80から出射された入射光は集光レンズ82によって集光され、プリズム84に成膜された金属層86に照射される。金属層86の表面には疎水層90が形成されている。入射光が所定の入射角で金属層86に入射されると、金属層86では表面プラズモンが励起される。表面プラズモンが励起される角度は、疎水層90に吸着した洗剤分子114及び油分の量に従って変化する。金属層86からの反射光は光検出器92によって2種類の電圧信号に変換され、差動増幅器98に与えられる。この電圧信号の値は、受光器の検出面に入射する反射光の強度を表す。従って、表面プラズモンにより暗線が生じた検出面の出力電圧は、他の領域のそれより低くなる。差動増幅器98は2種類の電圧が与えられると、その差をとり、増幅する。この電圧の差を使用して、反射光強度が弱くなる位置を測定する。
【0058】
この測定が行なわれると、超音波発生器53が作動し、超音波312(図8参照)が発生する。超音波発生器53は、水中に、目に見えない細かい気泡(キャビテーション)を無数に発生させる。そのキャビテーションの強くはじける瞬間に出る衝撃波が、微細なすき間の異物等を粉砕して、布やブラシ、水流では落ちない洗剤センサ52に付着した異物を取除く。このとき洗剤センサ52表面から離れた異物は、周囲にある洗剤分子と衝突しミセル内に取り込まれやすいため、再び洗剤センサ52表面に付着する量は非常に少ない。
【0059】
図8を参照して、洗剤センサ52の表面316に、異物等314が付着した場合、超音波発生器53が水中に超音波312を発生させ、異物等314を離脱させる。離脱後の異物等314は、水中に分散する。洗剤濃度の検出時に超音波312を発生させると、洗剤分子が疎水層に吸着せず、洗剤濃度の検出ができなくなるので、この様な使用方法は避ける事が好ましい。
【0060】
その後、差動増幅器98は測定結果を表す信号を制御回路54(図1参照)に送信する。制御回路54は、洗剤センサ52から送信された測定結果に従って、洗剤濃度が低すぎれば洗剤注入装置56を制御してさらに洗剤を注入させ、洗剤濃度が高すぎれば注水弁58を制御してさらに水を注入させる。
【0061】
適切な洗剤濃度で、洗剤を使用した洗濯及び脱水が完了すると、制御回路54からの制御によって排水弁50から排水が行なわれる。その後、洗濯機30はすすぎの動作を行なう。すすぎの動作の詳細については、洗剤が注入されないだけで、洗剤を使用した洗濯と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
すすぎの際にも、洗剤センサ52にすすぎ水が流入し、洗剤濃度が測定される。測定された洗剤濃度測定結果の信号は制御回路54に送信される。また、この時、洗い時と同様に超音波発生器53による洗剤センサ52の表面の洗浄が行なわれる。洗剤濃度が十分に低ければすすぎ及び脱水後、洗濯を終了し、洗剤濃度が高すぎれば制御回路54は注水弁58を制御して水を注入させて再びすすぎ及び脱水を行なう。
【0063】
<作製方法>
以下で、洗剤センサ52の具体的な構成要素を示す。光源80は波長635nmの半導体レーザ、集光レンズ82の開口数は0.05、プリズム84の材料はルミセラ(登録商標。村田製作所製。屈折率2.08)、金属層86は厚さ50nmの金、及び保護層88は厚さ2nm酸化シリコンからなる。
【0064】
入射光の中心の入射角は45度で、集光によってビーム端の入射角は±3〜4度の範囲となっている。この条件は、表面プラズモン共鳴を効率よく励起する条件の一つに従って決定されたものである。上記の波長とプリズムの屈折率を固定した場合、金属層86の膜厚は10〜100nm、保護層88の膜厚は1〜10nmである事が好ましい。
【0065】
疎水層90の作製方法は、以下の通りである。容器に疎水層を形成する材料のオクタデシルトリエトキシシラン0.064gを入れ、トルエン5.950gに溶解させ(1wt%溶液)る。さらに高屈折率プリズムを上記液体に入れて30分間室温にて撹拌する。その後、基板が取り出され、23時間室温で乾燥させられる。乾燥後、表面をアセトンで洗浄する。これにより酸化シリコンからなる保護層88上にオクタデシルシランを強く結合させることができ、強度の高い疎水層90が形成される。
【0066】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等を超音波発生器53によって除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0067】
また、洗剤センサとしては、他の実施の形態に記載の洗剤センサを用いてもよい。
【0068】
洗剤センサ52による洗剤分子検出前に毎回リセット動作として、超音波312を発生させて、異物等314を予め除去する動作を行なわせてもよい。
【0069】
なお、金属層86の材料は、金の他に銀、白金、及びアルミニウムのうちいずれでもよい。
【0070】
また、保護層88は酸化シリコンの他に、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛のうちいずれでもよい。
【0071】
上記した疎水層を形成する物質として使用されたオクタデシルトリエトキシシランは、疎水基として18個の炭素が直鎖状に結合した直鎖アルキル基を備えるが、他に分岐型のアルキル基、アルキルベンゼン基、アルキルナルタレン基、ペルフルオロアルキル基、ポリプロピレンオキサイド基、及びポリシロキサン基のいずれかを含む有機分子であってもよい。
【0072】
また、本実施の形態で説明した疎水層90作製の際の反応条件は一例である。疎水層90上に取付ける置換基の種類により、シランカップリング剤の濃度、溶媒の種類、撹拌時間、乾燥時間、及び洗浄溶媒を変更する必要がある。
【0073】
[第2の実施の形態]
<構成>
図9に、本発明の第2の実施の形態に係る洗剤センサ176及び洗剤センサに隣接した検出空間102の構成を断面図で示す。なお、図9において、第1の実施の形態と同一の構成要素には、同一番号を付してあり、その名称も同一のものを用いるため、その部分の説明は繰返さない。
【0074】
図9を参照して、洗剤センサ176は、全反射面が検出空間102に臨む様に配置された透明基板としてのプリズム84と、プリズム84の全反射面上に形成された金属層86と、金属層86上に成膜された保護層88と、保護層88上に成膜された疎水層194と、図11に示す様に第1の部分182、第2の部分184、第3の部分186、及び第4の部分188に分割された受光領域を有し、金属層86から各部分への反射光の強度を検出し、それぞれ電圧に変換するための光検出器180と、第1の部分182〜第4の部分188のうちの第1の部分182と第2の部分184とからの出力電圧の差、及び第3の部分186と第4の部分188とからの出力電圧の差をそれぞれ算出し、センサ出力192として外部に出力する差動増幅器190と、金属層86及び保護層88の、対向する一対の辺に沿って設けられ、かつ一部が保護層88表面にわずかに張出して接する様に設けられた、洗剤センサ176の表面を加熱して異物を除去するためのヒータ320及び322とを含む。
【0075】
図10に、本実施の形態に係る洗剤センサ176の、受光領域上に形成された疎水層194の表面構造を示す。図10を参照して、疎水層194は、疎水性分子のみからなる疎水層252と、疎水性及び疎油性の両方を備える参照層254とを含む。この参照層は、例えばフッ素コーティングによって作製される。
【0076】
なお、この疎水層194は、中央から半分ずつの領域に分けられている。また、この境界部には入射光が強度パターン256で示す様に照射される。
【0077】
<洗剤濃度の検出方法>
本実施の形態に係る洗剤センサにおいては、疎水性分子のみからなる疎水層252を使用して洗剤濃度の相対的変化を測定する。そして、参照層254を使用して基準値を測定する。参照層254には、洗剤も油分も吸着しないため、常に安定した基準値が出力される。
【0078】
図11及び図12は、検出器の検出面での強度パターンである。図に示す様に、検出器の検出面(受光面)は、領域182〜領域188の4つの領域に分割されている。まず、洗剤濃度が低いと図11に示す様に、疎水層194の低濃度側に対応する領域182に暗線270が生じる。徐々に洗剤濃度が上がると、暗線270のうち、領域182に生じたものは領域184に移動して、図12に示す様に領域184に暗線280が生じる。一方、暗線270のうち、領域186に生じたものは移動せずにそのままの状態を保つので、暗線282が生じる。
【0079】
図13に、暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力の関係で示す。図11での暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で表すと、曲線290の様になる。図12での暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で表すと、破線292の様になる。
【0080】
これは、参照層254に対応する検出器の領域186では、図11に示す洗剤分子の濃度が低い状態から、図12に示す洗剤分子の濃度が高い状態へ変化しても、暗線の位置270は変化しないためである。このセンサ出力290からセンサ出力292の電圧を回路によって引くと、洗剤濃度の絶対値がより正確に測定可能となる。
【0081】
この様な参照層254を使用する事によって安定した基準値を出力できる理由は以下の通りである。センサには個体差がある。ここで、個体差とは、入射光の角度のわずかなばらつき並びに金属層及び保護層の膜厚のわずかなばらつき等の事である。これらの個体差に起因して、暗線の位置がばらついてしまう。
【0082】
この様に暗線の位置にばらつきが生じると、センサ出力もばらつく。このとき、参照用として疎水性分子及び疎油性分子からなる参照層254があると、疎水性分子のみからなる層252と同様に参照層254からのセンサ出力にも個体差に起因するばらつきが生じる。従って、疎水層252からのセンサ出力と参照層254からのセンサ出力値との差をとれば、センサの個体差に依存する出力電圧のばらつきが低減でき、検出誤差が減少する。
【0083】
<動作>
本実施の形態に係る洗剤センサ176と第1の実施の形態に係る洗剤センサ52との動作は、ほとんど同じである。しかし、本実施の形態に係る洗剤センサ176では、光検出器180が4つの検出領域182〜188を含む。従って、金属層86からの反射光は光検出器180からの4種類の電圧信号に変換される。差動増幅器190は、第1の部分182と第2の部分184とからの出力電圧の差、及び第3の部分186と第4の部分188とからの出力電圧の差をそれぞれ算出し、出力する。この2種類の電圧差を使用して、疎水性領域と疎油性領域との双方において洗剤の吸着量を検出できる。
【0084】
また、第1の実施の形態とは異なり、本実施の形態に係る洗剤センサ176には、洗剤センサ176の表面に接する様に取付けられたヒータ320及び322が存在する。図14に、洗剤センサ176の上に異物等330が付着した場合の断面図と平面図とを示す。図14を参照して、ヒータ320及び322により洗剤センサ52の表面が加熱される。洗剤センサ52の表面が加熱されると、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の異物は熱せられて分子振動が激しくなる。これにより異物は軟化し、更に水中に生じた対流により、水中に分散する。ヒータ320及び322による加熱は、特に油分等の油脂系の異物を除去するのに有効である。
【0085】
それ以外の動作は第1の実施の形態に記載のものと同様であるので、説明は繰返さない。
【0086】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等をヒータ320及び322によって除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0087】
本実施の形態では、洗剤センサ52の表面をヒータ320及び322によって直接加熱した。しかし、直接加熱しなくとも洗剤センサ52の近傍の水を加熱してもよい。また、加熱した水をセンサ表面に送る事で、センサ表面を洗浄してもよい。
【0088】
また、洗剤センサとしては、他の実施の形態に記載の洗剤センサを用いてもよい。
【0089】
[第3の実施の形態]
<構成>
図15に、本実施の形態に係る洗剤センサ52の断面図を示す。図15を参照して、本実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサ52の構成は、第1の実施の形態に係る分子検出装置である洗剤センサ52とほぼ同じである。異なっている点は、検出空間102に接する様に設置されているのが洗剤センサ52のみで、超音波発生器53は含まれていないという点である。そこで、洗剤センサ52の構成についてはここでは説明を繰返さない。本実施の形態では、超音波発生器53の様な、洗浄のための装置を使わず、測定のためのレーザ光の出力で洗剤センサ52の温度を制御する。
【0090】
図16に、光源80(図15参照)を使用した光加熱洗浄のためのプログラムの制御構造をフローチャートで示す。図16を参照して、ステップ340では、注水と洗剤の注入とが行なわれる。ステップ342では、モータ48を回転させ、洗いが開始される。この時、洗い時間を計測するための図示しないタイマも起動される。
【0091】
ステップ344では、タイマによって洗いを行なう時間が規定時間内であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定時間内であれば、ステップ346に進む。規定時間が満了すると、ステップ356に進む。
【0092】
水と洗剤がある程度撹拌されたら、ステップ346で、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が検出される。
【0093】
ステップ348では、光源80(図15参照)からの出射光の強度を上げ、強い入射光を金属層86に一定時間照射する。この照射により金属層86及び保護層88とが熱され、さらに水中に対流が生じて、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の汚れが水中に分散する。すなわち、洗剤センサ52の表面が洗浄される。
【0094】
ステップ350では、洗剤センサ52によって洗剤の濃度が洗濯に適した規定の濃度以上であるか否かを判定する処理が行なわれる。規定の濃度以上であればステップ352に進み、規定の濃度未満であれば、ステップ354に進む。ステップ354では、濃度に応じて洗剤注入装置56によってさらに洗剤が適量注入される処理が行なわれる。その後、処理はステップ344に戻り、その後の処理を繰返す。ステップ352では、一定時間洗い動作が実行され、その後ステップ344に戻る。
【0095】
ステップ356では、洗い動作を終了する処理が行なわれる。ステップ358では、排水弁50からの排水、脱水、及び注水弁58からの注水が行なわれる。ステップ360では、一定の時間、すすぎが行なわれる。ステップ362では再び、洗剤センサ52によって洗剤濃度の検出処理が行なわれる。
【0096】
ステップ364では、再び光源80からの出射光の強度を上げ、強い入射光を金属層86に一定時間照射し、洗剤センサ52の表面を洗浄する処理が行なわれる。
【0097】
ステップ366では、洗剤センサ52によって測定された洗剤の濃度が規定濃度以下かどうかを判定する処理が行なわれる。洗剤の濃度が規定濃度を超えていれば、ステップ358に戻り、その後の処理を繰返す。洗剤の濃度が規定濃度以下であれば、ステップ368に進む。ステップ368では排水弁50からの排水処理及び脱水処理が行なわれる。ここではさらにモータ48の回転を止め、洗濯処理を終了する。
【0098】
<動作>
図15を参照して、光源80からの出射光が洗剤センサ52の表面を加熱する。洗剤センサ52の表面が加熱されると、その熱とその熱によって水中に生じる対流とによって、洗剤センサ52の表面に付着した油分等の異物は熱せられ、水中に分散する。一定時間経過後に、光の出射を終えて洗浄を終了する。光源80からの出射光による加熱は、特に油分等の油脂系の異物を除去するのに有効である。
【0099】
本実施の形態に係る洗剤検出装置によると、洗剤濃度を高感度で測定可能であり、繰返し使用する事ができる。繰返し使用するために使い捨てとする様な部品はなく、環境負荷の少ない普及型の洗剤検出装置を実現可能である。さらに、洗剤センサ52に付着した汚れ等を光源80の出力を上げる事により除去する事ができるので、洗剤濃度をより正確に測定する事が可能となる。
【0100】
本実施の形態では、洗剤センサとして第1の実施の形態に記載の洗剤センサ52と同じ構成のものを例にとって説明したが、第2の実施の形態に係る洗剤センサを用いてもよい。
【0101】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】洗濯機30の断面を示す図である。
【図2】洗剤センサ52の内部構成及び洗剤センサ52に隣接した検出空間102の構成を断面で示す図である。
【図3】図1に示した洗濯機30の制御のためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】洗剤センサ52による洗剤濃度の検出原理を示す図である。
【図5】光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図6】光検出器92の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図7】暗線の移動を電気的に測定したときの洗剤濃度とセンサ出力100との関係を示すグラフである。
【図8】第1の実施の形態に係る洗剤センサ52及び洗剤センサに隣接した検出空間102の内部構成を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る洗剤センサ176及び検出空間102の断面を示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る洗剤センサの疎水層194の表面構造を示す図である。
【図11】光検出器の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図12】光検出器の検出面で見られる反射光の強度パターンの例を示す図である。
【図13】暗線の推移を洗剤濃度とセンサ出力との関係で示すグラフである。
【図14】洗剤センサ176の上に異物等330が付着した場合を示す図である。
【図15】第3の実施の形態に係る洗剤センサ338の断面を示す図である。
【図16】光加熱洗浄のためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
30 洗濯機、40 水受け槽、42 洗濯兼脱水槽、44 回転軸、46 ベルト、48 モータ、50 排水弁、52 洗剤センサ、53 超音波発生器、54 制御回路、56 洗剤注入装置、60〜70 水抜き穴、80 光源、82 集光レンズ、84 プリズム、86 金属層、88 保護層、90 疎水層、92及び180 光検出器、94及び182 第1の部分、96及び184 第2の部分、98及び190 差動増幅器、100及び192 センサ出力、104及び106 ひさし部、110及び112 ミセル、114 洗剤分子、116 親水基、118 疎水基、124、130、270、280及び282 暗線、186 第3の部分、188 第4の部分、320及び322 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、
第1の反射面を有する透明基板と、
前記透明基板の前記第1の反射面上に形成された金属層と、
前記第1の反射面に関し、前記金属層と反対側に、前記第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、
前記金属層上に形成された疎水層と、
前記光源により出射され、前記反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段と、
前記金属層とその上に形成された前記疎水層とに付着した異物を洗浄するための洗浄手段とを含む、分子検出装置。
【請求項2】
前記洗浄手段は、前記金属層及び前記疎水層の近傍に設けられた超音波発生器を含む、請求項1に記載の分子検出装置。
【請求項3】
前記洗浄手段は、前記金属層及び前記疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられ、前記金属層及び前記疎水層の少なくとも一方を加熱するための手段を含む、請求項1に記載の分子検出装置。
【請求項4】
前記分子検出装置はさらに、前記金属層と前記疎水層との間に形成された、前記金属層を保護するための保護層を含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の分子検出装置。
【請求項5】
前記保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛からなるグループから選ばれる材料により形成される、請求項4に記載の分子検出装置。
【請求項6】
洗浄槽と、
前記洗浄槽に水を注入するための注水手段と、
前記洗浄槽に洗剤を注入するための洗剤注入手段と、
前記洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段と、
前記洗浄槽内の水中の前記洗剤の濃度を検出するための、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の分子検出装置と、
前記分子検出装置からの検出結果に基づいて、前記注水手段、前記洗剤注入手段、及び前記洗浄手段を制御するための制御手段とを含む、洗浄装置。
【請求項7】
表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、
第1の反射面を有する透明基板と、
前記透明基板の前記第1の反射面上に形成された金属層と、
前記第1の反射面に関し、前記金属層と反対側に、前記第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、
前記光源の出力を制御するための制御手段と、
前記金属層上に形成された疎水層と、
前記光源により出射され、前記反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段とを含み、
前記制御手段は、前記検出手段による検出時には所定の第1の出力となる様に前記光源の出力を制御し、前記金属層とその上に形成された前記疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には前記第1の出力より大きな第2の出力となる様に前記光源の出力を制御する、分子検出装置。
【請求項1】
表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、
第1の反射面を有する透明基板と、
前記透明基板の前記第1の反射面上に形成された金属層と、
前記第1の反射面に関し、前記金属層と反対側に、前記第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、
前記金属層上に形成された疎水層と、
前記光源により出射され、前記反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段と、
前記金属層とその上に形成された前記疎水層とに付着した異物を洗浄するための洗浄手段とを含む、分子検出装置。
【請求項2】
前記洗浄手段は、前記金属層及び前記疎水層の近傍に設けられた超音波発生器を含む、請求項1に記載の分子検出装置。
【請求項3】
前記洗浄手段は、前記金属層及び前記疎水層のいずれか少なくとも一方に接して設けられ、前記金属層及び前記疎水層の少なくとも一方を加熱するための手段を含む、請求項1に記載の分子検出装置。
【請求項4】
前記分子検出装置はさらに、前記金属層と前記疎水層との間に形成された、前記金属層を保護するための保護層を含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の分子検出装置。
【請求項5】
前記保護層は酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛からなるグループから選ばれる材料により形成される、請求項4に記載の分子検出装置。
【請求項6】
洗浄槽と、
前記洗浄槽に水を注入するための注水手段と、
前記洗浄槽に洗剤を注入するための洗剤注入手段と、
前記洗浄槽内に配置された被洗浄物の洗浄を実行するための洗浄手段と、
前記洗浄槽内の水中の前記洗剤の濃度を検出するための、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の分子検出装置と、
前記分子検出装置からの検出結果に基づいて、前記注水手段、前記洗剤注入手段、及び前記洗浄手段を制御するための制御手段とを含む、洗浄装置。
【請求項7】
表面プラズモン共鳴を用いて両親媒性分子を検出する分子検出装置であって、
第1の反射面を有する透明基板と、
前記透明基板の前記第1の反射面上に形成された金属層と、
前記第1の反射面に関し、前記金属層と反対側に、前記第1の反射面に全反射条件で光が入射する様に配置された光源と、
前記光源の出力を制御するための制御手段と、
前記金属層上に形成された疎水層と、
前記光源により出射され、前記反射面によって反射された反射光に表面プラズモン共鳴により生ずる暗線の位置の変化を検出するための検出手段とを含み、
前記制御手段は、前記検出手段による検出時には所定の第1の出力となる様に前記光源の出力を制御し、前記金属層とその上に形成された前記疎水層とに付着した異物を洗浄するための期間には前記第1の出力より大きな第2の出力となる様に前記光源の出力を制御する、分子検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−89495(P2008−89495A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272720(P2006−272720)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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