説明

分岐アルキルガラクトシド

【課題】メチル分岐構造を有する新規なアルキルガラクトシド、及びそれを含有する口腔用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルガラクトシド、及びそれを含有する口腔用組成物である。


(式中、Rは、1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が5〜14の鎖状飽和炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分岐アルキルガラクトシド及びそれを含有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルグリコシドは、アルコールに糖がグリコシド結合した化合物であり、低刺激性の界面活性剤として各種洗浄剤に幅広く利用されている。また、糖という天然素材由来であり高い生分解性を有する有用な化合物である。その中で、糖部分がD−ガラクトースであるアルキルガラクトシドは、各種の細菌が有するガラクトース受容体に対して高い親和性を有することが知られており、その機能を応用した様々な菌制御技術が開発されている。
【0003】
例えば、口腔内感染症の予防手段としては、病原性細菌の歯面への定着を阻害することが有力であると考えられており、例えば、ガラクトースやラクトースを配合してなる歯垢の歯牙付着の抑制を図る口腔用組成物(特許文献1)、炭素数10〜16の飽和脂肪酸とフルクトース又はガラクトースとがエステル結合した脂肪酸糖エステルを有効成分として含有するグラム陽性細菌に対する抗菌剤(特許文献2)、う蝕原因菌等の有害な口腔細菌の口腔内への定着を抑制した口腔用組成物(特許文献3及び4)等が知られている。
【0004】
また、上記の技術では、主として直鎖アルキル基を有するアルキルガラクトシドが使用されている。しかし、これらの直鎖アルキル基を有するものは、(i)ガラクトシドの融点が高いため、製造時に過剰に使用したアルコールを留去する際に高温が必要であり、また原料アルコール自体の沸点が高く、未反応アルコールを留去するためにも高温が必要であり、それらが着色の原因となるため、淡色〜無色のものが得られない、(ii)ガラクトシドの結晶性が高く、組成物中で析出しやすいため配合の自由度が低下する等の問題が存在する。
一方、分岐アルキル鎖を有するアルキルガラクトシドとしては、α,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドがパラベン類等の防腐剤の防腐力増強剤として開示されている(特許文献5)が、原料となる2−ヘキシルデシルアルコールは沸点が193〜197℃(33mbar)と高く、留去するのは容易ではない。その他の分岐アルキル鎖を有するアルキルガラクトシドを菌抑制のために用いられている例はない。
【0005】
【特許文献1】特公昭58−11924号公報
【特許文献2】特開2000−159675号公報
【特許文献3】特開2006−124384号公報
【特許文献4】特開2006−182692号公報
【特許文献5】特開2006−241064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メチル分岐構造を有する新規なアルキルガラクトシド、及びそれを含有する口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々のアルキルガラクトシドを合成し、その物性を検証した結果、特定のメチル分岐構造を有する鎖状飽和炭化水素基を有するアルキルガラクトシドが、主として直鎖アルキル基を有するアルキルガラクトシドと比較すると低融点であるために、配合処方の安定性に優れていると同時に、口腔内細菌等に対する共凝集抑制効果や口腔内病の予防効果に優れていることを見出した。
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)を提供する。
(1)下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルガラクトシド。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは、1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が5〜14の鎖状飽和炭化水素基を示す。)
(2)3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシド。
(3)3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシド。
(4)前記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアルキルガラクトシドを含有する口腔用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メチル分岐構造を有する新規なアルキルガラクトシドを提供することができる。本発明の新規なアルキルガラクトシドは、主として直鎖アルキル基を有するアルキルガラクトシドと比較すると低融点であるために、配合処方の安定性に優れている。このアルキルガラクトシドを含有する口腔用組成物は、口腔内細菌に対する共凝集抑制効果、及び口腔内病の予防効果に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔一般式(1)又は(2)で表されるアルキルガラクトシド〕
本発明の下記一般式(1)及び(2)で表されるアルキルガラクトシドは、現在まで知られておらず、新規化合物である。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(1)はアルキルガラクトピラノシド、一般式(2)はアルキルガラクトフラノシドであり、両者は異性体である。一般式(1)及び(2)で表されるアルキルガラクトシドのいずれにおいても、ガラクトース残基の結合様式の違いによりα体、β体の各異性体が存在する。本発明は、前記いずれの異性体、及びそれらの混合物を包含するが、口腔内細菌に対する親和性の観点から、口腔用組成物として用いる場合はピラノシド体が特に好ましい。
【0014】
一般式(1)及び(2)において、Rは、1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が5〜14の鎖状飽和炭化水素基である。Rの具体例としては、1−メチルブチル基、1、2−ジメチルプロピル基等の各種分岐ペンチル基、1−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基等の各種分岐ヘキシル基、1,2,3−トリメチルブチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−メチルヘキシル基等の各種分岐ヘプチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、3,4−ジメチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基等の各種分岐オクチル基、2,4,5−トリメチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1−メチルオクチル基等の各種分岐ノニル基、3,5,6−トリメチルヘプチル基、2,5−ジメチルオクチル基、1−メチルノニル基等の各種分岐デシル基、2,4,6−トリメチルオクチル基、3,6−ジメチルノニル基、1−メチルデシル基等の各種分岐ウンデシル基、2,4,6−トリメチルノニル基、3,6−ジメチルデシル基、1−メチルウンデシル基等の各種分岐ドデシル基、2,4,6−トリメチルデシル基、4,6−ジメチルウンデシル基、1−メチルドデシル基等の各種分岐トリデシル基、4,7,10−トリメチルウンデシル基、5,9−ジメチルドデシル基、1−メチルトリデシル基等の各種分岐テトラデシル基等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)及び(2)におけるRの炭素数が15以上になると原料アルコールの沸点が高くなり、またガラクトシドの疎水性が増して水への溶解性が低下するため、広範な配合処方を行う上で好ましくない。一方、Rの炭素数が4以下になると、口腔内細菌に対する親和性が低下するため好ましくない。以上の理由から、Rの炭素数は、好ましくは5〜14、更に好ましくは6〜11である。また、Rの有するメチル分岐構造の数が4個以上になると原料となる分岐アルコールの製造上の観点から好ましくない。
一般式(1)又は(2)で表されるアルキルガラクトシドの好適例としては、イソデシルガラクトシド、イソウンデシルガラクトシド、イソトリデシルガラクトシド等のα体、β体が挙げられ、より具体的には、3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトシド、3,7−ジメチルオクチル−α−D−ガラクトシド、3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトシド、3−メチルヘキシル−α−D−ガラクトシド等が挙げられる。
【0016】
本発明の一般式(1)及び(2)で表されるアルキルガラクトシドは、D−ガラクトースとメチル分岐アルコールから、公知の方法で合成することができる。例えば、一般式(1)で表されるアルキルガラクトピラノシドは、(i)ガラクトースの水酸基をアセチル基等で保護してからアルコールとグリコシド化反応を行い、その後脱保護を行う方法(堀他、薬学雑誌、vol.79,No.1,P80−83)で合成することができる。
一方、一般式(2)で表されるアルキルガラクトフラノシドは、(ii)塩化鉄(III)と塩化カルシウムの存在下、ガラクトースとアルコールを縮合させる方法により合成することができる(Carbohydr. Res.1998,311,P25−35)。
また、(iii)パラトルエンスルホン酸等酸触媒の存在下、ガラクトースと過剰のアルコールと直接反応させる方法(特開2007−176893号公報)を用いれば、互いに異性体の関係にある一般式(1)と(2)の化合物の混合物を調製することもできる。この場合、一般式(1)及び(2)で表されるアルキルガラクトシドのほかに、アルコール1分子に対して複数個のガラクトースが縮合したオリゴガラクトシドも少量生成するため、それらの混合物として得られる。
単一の異性体が必要な場合には、前記(i)又は(ii)の方法が好ましく、工業的に安価な生産を行うという観点からは、前記(iii)の方法が好ましい。所望により、製造方法を適宜選択することができる。
【0017】
本発明において原料として用いるメチル分岐構造を有するアルコールは、一般式(1)又は(2)におけるRより総炭素数が1つ多いアルコール、すなわち、総炭素数が6〜15の鎖状飽和1級アルコールであり、1〜3個のメチル分岐構造を有する。かかるアルコールであれば特に制限はなく、例えば、各種のメチル分岐構造を有するヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール及びその混合物等が挙げられる。
メチル分岐構造を有するヘキサノールとしては、2,3−ジメチルブタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するヘプタノールとしては、2,4−ジメチルペンタノール、3−メチルヘキサノール、4−メチルヘキサノール、5−メチルヘサノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するオクタノールとしては、2,3,4−トリメチルペンタノール、2,2,4−トリメチルペンタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2−メチルヘプタノール、5−メチルヘプタノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するノナノールとしては、2−メチルオクタノール、6−メチルオクタノール、8−メチルオクタノール等が挙げられる。
【0018】
また、メチル分岐構造を有するデカノールとしては、3,7−ジメチルオクタノール、2−メチルノナノール、8−メチルノナノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するウンデカノールとしては、1−メチルデカノール、2−メチルデカノール、9−メチルデカノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するドデカノールとしては、2−メチルウンデカノール、10−メチルウンデカノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するトリデカノールとしては、2−メチルドデカノール、11−メチルドデカノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するテトラデカノールとしては、2−メチルトリデカノール、12−メチルトリデカノール等が挙げられ、メチル分岐構造を有するペンタデカノールとしては、2−メチルテトラデカノール、13−メチルテトラデカノール等が挙げられる。
上記の中でも、用途展開、安全性等の観点から、炭素数6〜15、特に炭素数7〜12のメチル分岐構造を有する脂肪族アルコールが好ましい。
これらの分岐脂肪族アルコールは、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
市販されているメチル分岐構造を有するアルコール、又はそれを含む混合アルコールとしては、例えば、協和発酵ケミカル株式会社製の商品名:オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、オキソコール900、三菱化学株式会社製の商品名:ダイヤドール7、ダイヤドール11、ダイヤドール915、ダイヤドール115L、エクソンモービル社製の商品名:EXXAL7、EXXAL10、EXXAL13、ノナノール、Sasol社のSAFOL23等が挙げられる。
【0019】
〔口腔用組成物〕
本発明の口腔用組成物は、一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物を含有する組成物である。一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物は、Rが1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有するものの混合物であってもよい。
本発明の口腔用組成物中における、一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物の含有量は、口腔内細菌に対する共凝集抑制効果及び口腔内病の予防効果の観点から、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
本発明の口腔用組成物においては、本発明の効果を損なわない限り、ノニオン性殺菌剤等の殺菌剤、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤、タンパク質変性剤、糖アルコール、メントール等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
ノニオン性殺菌剤としては、フェノール系殺菌剤(フェノール、クレゾール、トリクロサン等)、トロボロン系殺菌剤(α−,β−,γ−ツヤブリシン、β−ドラプリン等)、ハロゲン化カルバニリド系殺菌剤(トリクロロカルバニリド等)が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルメチルタウリン塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられ、好適例として炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩、アシルサルコシン塩、アルキルメチルタウリン塩等が挙げられる。
タンパク質変性剤としては、尿素、グアニジン又はその塩(塩酸塩、硫酸塩等の酸付加塩)等が挙げられる。
糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、ラクチトール等の炭素数4〜12の糖アルコールが挙げられる。
また、口腔用組成物に汎用される湿潤剤、粘結剤、歯質強化剤、pH調整剤、酵素類、抗炎症剤、血行促進剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、色素類、香料等も適宜配合することができる。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、常法により製造することができる。また、その形態に特に制限はなく、粉歯磨、液状歯磨、練歯磨、潤製歯磨、口腔パスタ等のペースト状洗浄剤、洗口液、マウスウォッシュ等の液状洗浄剤、うがい用錠剤、歯肉マッサージクリーム、チューインガム、トローチ、キャンディ等の食品等の各種の形態とすることができる。
【実施例】
【0022】
実施例1(3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドの合成)
(1)3,7−ジメチルオクチル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシドの合成
300mLの4つ口フラスコに、β−D−ガラクトースペンタアセテート10.00g(25.6mmol)と、3,7−ジメチル−1−オクタノール8.11g(51.2mmol)を仕込み、ジクロロメタン100mLに溶解した。得られた溶液を氷浴で冷却し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体14.73g(104mmol)を滴下した。滴下後氷浴を外し、室温で2.5時間攪拌した後、NaHCO3の飽和水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物を分液ロートに移してジクロロメタン層を分離し、さらに水層を50mLのジクロロメタンを用いて抽出した。ジクロロメタン溶液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下でジクロロメタンを除去した。得られたオイルをシリカゲルカラムを用いて分画することで、3,7−ジメチルオクチル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシド7.77gを得た(2種のジアステレオマー混合物、収率62%)。
【0023】
バリアン社製のNMR装置「Mercury400」(内標:テトラメチルシラン)を用いて、得られた生成物の1H−NMRを測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた物質は下記式(5)で表される3,7−ジメチルオクチル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシドであることを確認した。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)
5.381(d, J = 3.2Hz, 1H), 5.379(d, J = 3.2, 1H), 5.199(dd, J = 10.4, 8.0, 1H), 5.195(dd, J = 10.4, 8.0, 1H), 5.012(d, J = 10.4, 1H), 5.004(d, J = 10.4, 1H), 4.452(d, J = 7.6, 1H), 4.446(d, J = 8.0, 1H), 4.190(dd, J = 11.0, 6.6, 2H), 4.121(dd, J = 11.0, 7.0, 2H), 3.97-3.86(m, 4H), 3.56-3.3.46(m, 2H), 2.148(s, 6H), 2.147(s, 6H), 2.049(s, 12H), 1.985(s, 6H), 1.70-1.08(m, 20H), 0.89-0.83(m, 18H).
【0024】
【化3】

【0025】
(2)3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドの合成
200mLのナスフラスコに、前記(1)で得られた3,7−ジメチルオクチル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシド7.00g(14.3mmol)を仕込み、脱水メタノール100mLに溶解した。これに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.12g(5.7mmol)を添加して室温で20分攪拌した。得られた反応混合物に陽イオン交換樹脂(ダウケミカル社製、商品名:Dowex50WX4−100)6.5mLを添加して触媒を中和後、ろ過により樹脂を除いた。得られたろ液から減圧下で溶媒を除去することによって3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシド4.39gを得た(2種のジアステレオマー混合物の収率96%)。
【0026】
前記と同じNMR装置を用いて、得られた生成物を分析した結果を以下に示す。これらの結果から、得られた物質は下記式(3)で表される3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドであることを確認した。
1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ(ppm)
4.197(d, J = 6.8Hz, 2H), 3.99-3.89(m, 2H), 3.829(d, J = 2.8, 1H), 3.827(d, J = 2.8, 1H), 3.77-3.69(m, 4H), 3.61-3.53(m, 2H), 3.498(dd, J = 9.8, 7.0, 2H), 3.51-3.49(overlapped, 2H), 3.450(dd, J = 9.6, 3.2, 2H), 1.72-1.08(m, 20H), 0.93-0.85(m, 18H)
13C−NMR(100MHz,CD3OD):δ(ppm)
105.7Hz, 105.6, 77.2, 75.7, 73.2, 71.0, 69.9, 69.8, 63.1, 41.3, 41.3, 39.4, 39.3, 38.8, 38.7, 31.7, 31.7, 30.0, 26.7, 24.0, 23.9, 20.9, 20.8.
【0027】
【化4】

【0028】
(3)β−D−ガラクトピラノシドの融点測定
10ccのサンプル瓶に、前記(2)で得られた3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドを少量入れ、アルミブロックヒーターで加温した。数分後温度が一定になったところでサンプルの状態を目視確認後、再度ブロックヒーターに戻して1〜2℃昇温した。この操作を繰り返し、サンプルが溶解して流動し始めた温度をサンプルの融点として記録した。結果を表1に示す。
【0029】
実施例2(3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドの合成)
(1)3−メチルヘキシル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシドの合成
実施例1(1)において、β−D−ガラクトースペンタアセテートの量を8.40g(21.5mmol)に、3,7−ジメチル−1−オクタノールを3−メチル−1−ヘキサノール5.00g(43.0mmol)に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の量を12.29g(86.6mmol)に、反応時間を1.5時間に、それぞれ変更した以外は実施例1(1)と同様の操作を行って、3−メチルヘキシル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシド5.69gを得た(2種のジアステレオマー混合物の収率59%)。
前記と同じNMR装置を用いて、得られた生成物を分析した結果を以下に示す。この結果から、得られた物質は下記式(6)で表される3−メチルヘキシル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシドであることを確認した。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)
5.381(d, J = 3.2Hz, 1H), 5.379(d, J = 3.2, 1H), 5.197(dd, J = 10.4, 8.0, 1H), 5.196(dd, J = 10.4, 8.0, 1H), 5.012(d, J = 10.4, 1H), 5.004(d, J = 10.4, 1H), 4.453(d, J = 8.0, 1H), 4.446(d, J = 8.0, 1H), 4.190(dd, J = 10.8, 6.6, 2H), 4.121(dd, J = 11.0, 7.0, 2H), 3.97-3.86(m, 4H), 3.56-3.46(m, 2H), 2.149(s, 6H), 2.147(s, 6H), 2.050(s, 6H), 2.047(s, 6H), 1.985(s, 6H), 1.72-1.06(m, 14H), 0.92-0.84(m, 12H).
【0030】
【化5】

【0031】
(2)3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドの合成
実施例1(2)において、3,7−ジメチルオクチル−2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−ガラクトピラノシドを3−メチルヘキシル−2,3,4,6−テトラアセチル−D−ガラクトピラノシド5.36g(12.0mmol)に、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液の量を0.93g(4.8mmol)に、陽イオン交換樹脂の量を5.0mLに、それぞれ変更した以外は実施例1(2)と同様の操作を行って、3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシド3.17gを得た(2種のジアステレオマー混合物の収率95%)。
前記と同じNMR装置を用いて、得られた生成物を分析した結果を以下に示す。これらの結果から、得られた物質は下記式(4)で表される3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドであることを確認した。
1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ(ppm)
4.192(d, J = 6.8Hz, 2H), 3.99-3.88(m, 2H), 3.824(d, J = 3.2, 1H), 3.822(d, J = 2.8, 1H), 3.741(dd, J = 11.4, 6.6, 2H), 3.709(dd, J = 11.2, 5.6, 2H), 3.61-3.52(m, 2H), 3.493(dd, J = 9.8, 7.0, 2H), 3.51-3.48(overlapped, 2H), 3.445(dd, J = 9.6, 3.2, 2H), 1.71-1.55(m, 4H), 1.46-1.24(m, 8H), 1.18-1.07(m, 2H), 0.91-0.87(m, 12H)
13C−NMR(100MHz,CD3OD):δ(ppm)
105.7Hz, 105.6, 77.3, 75.7, 73.2, 71.0, 69.9, 69.8, 63.2, 41.5, 41.4, 38.7, 38.6, 31.4, 31.4, 21.9, 20.9, 20.8, 15.6, 15.6.
【0032】
【化6】

【0033】
(3)β−D−ガラクトピラノシドの融点測定
実施例1と同様にして、前記(2)で得られた3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドの融点を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1で得られた3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドは、アルキル基の総炭素数が同じであるn−デシル−β−D−ガラクトピラノシド(比較例1)と比較して融点が有意に低い値を示している。同様に、実施例2で得られた3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドは、アルキル基の総炭素数が近いn−オクチル−β−D−ガラクトピラノシド(比較例2)、及びn−ヘキシル−β−D−ガラクトピラノシド(比較例3)のいずれと比較しても有意に低い融点を有していることが分かる。
【0036】
実施例3(デシルガラクトシド異性体混合物の合成)
2Lの4ッ口フラスコにパラトルエンスルホン酸一水和物0.42g(2.2mmol)、ガラクトース80g(0.44mol)、デカノール異性体混合物(協和発酵ケミカル製、商品名デカノール)1054g(6.7mol、ガラクトースの15.2倍モル)を秤量し、窒素吹き込み口とリービッヒ冷却管を取り付け、115℃まで昇温した。昇温後、系内圧力を5.3kPa(40mmHg)にして脱水反応を開始した。この際、反応混合物中に窒素を100ml/minで吹き込み、生成する水を効率よく除去するようにして、4時間反応させた。反応終了後常圧に戻し、反応混合物が80℃程度になった状態で、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.19g(2.2mmol)を加えて触媒を中和した。
中和後、不溶分をメンブランフィルターでろ別し、ろ液から過剰に用いたアルコールを減圧下で留去することによりデシルガラクトシド異性体混合物を得た(119g、収率91%)。
得られたデシルガラクトシド異性体混合物をGPC(カラム:東ソー株式会社製、商品名:TSK−GEL G2000HXL7.8×300とTSK−GEL G1000HXL7.8×300の直列使用、展開溶媒:テトラヒドロフラン)、及び1H−NMR(400MHz,CD3OD)により分析した結果、アルコール1分子に対してガラクトースが数分子結合した構造であり、平均糖縮合度は1.15であった。また、ガラクトース残基の構造は、ピラノシドとフラノシドの各異性体が混在した状態になっており、それらの存在比は、1H−NMR分析におけるアノマー位プロトンのシグナル面積比から、α−ピラノシド/β−ピラノシド/(α−フラノシド+β−フラノシド)=31/15/54であった。
実施例1と同様にして、得られたガラクトシド異性体混合物の融点を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
実施例4(ウンデシルガラクトシド異性体混合物の合成)
実施例3におけるデカノール異性体混合物に代えてウンデカノール異性体混合物(三菱化学株式会社製、商品名:ダイヤドール11)861g(5.0mol、ガラクトースの15.2倍モル)を用い、パラトルエンスルホン酸一水和物を0.32g(1.7mmol)、ガラクトースを60g(0.33mol)、反応時間を6時間、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.14g(1.7mmol)とした以外は実施例3と同様の操作を行って、ウンデシルガラクトシド異性体混合物を得た(85g、収率84%)。
得られたウンデシルガラクトシド異性体混合物を実施例3と同様に分析した結果、平均糖縮合度は1.16、ガラクトース残基の異性体存在比は、α−ピラノシド/β−ピラノシド/(α−フラノシド+β−フラノシド)=37/15/48であった。
実施例1と同様にして、得られたガラクトシド異性体混合物の融点を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
比較例4(n−デシルガラクトシド異性体混合物の合成)
実施例3におけるデカノール異性体混合物に代えてn−デカノール(花王株式会社製、商品名:カルコール1098)1317.8g(8.3mol、ガラクトースの15.0倍モル)を用い、パラトルエンスルホン酸一水和物を0.53g(2.8mmol)、ガラクトースを100g(0.56mol)、反応時間を3時間、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.23g(2.8mmol)とした以外は実施例3と同様の操作を行って、n−デシルガラクトシド異性体混合物を得た(140g、収率85%)。
得られたn−デシルガラクトシド異性体混合物を実施例3と同様に分析した結果、平均糖縮合度は1.17、ガラクトース残基の異性体存在比は、α−ピラノシド/β−ピラノシド/(α−フラノシド+β−フラノシド)=31/17/52であった。
実施例1と同様にして、得られたガラクトシド異性体混合物の融点を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
比較例5(n−ドデシルガラクトシド異性体混合物の合成)
実施例3におけるデカノール異性体混合物に代えてn−ドデカノール(花王株式会社製、商品名:カルコール2098)1551.4g(8.3mol、ガラクトースの15.0倍モル)を用い、パラトルエンスルホン酸一水和物を0.53g(2.8mmol)、ガラクトースを100g(0.56mol)、反応時間を6時間、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.23g(2.8mmol)とした以外は実施例3と同様の操作を行って、n−ドデシルガラクトシド異性体混合物を得た(140g、収率79%)。
得られたn−ドデシルガラクトシド異性体混合物を実施例3と同様に分析した結果、平均糖縮合度は1.22、ガラクトース残基の異性体存在比は、α−ピラノシド/β−ピラノシド/(α−フラノシド+β−フラノシド)=39/18/43であった。
実施例1と同様にして、得られたガラクトシド異性体混合物の融点を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例3で得られたデシルガラクトシド異性体混合物は、アルキル基の平均炭素数が同じである比較例4のn−デシルガラクトシド異性体混合物と比較して有意に低い融点を有している。同様に、実施例4で得られたウンデシルガラクトシド異性体混合物は、アルキル基の平均炭素数が近い比較例4のn−デシルガラクトシド異性体混合物、及び比較例5のn−ドデシルガラクトシド異性体混合物のいずれと比較しても有意に低い融点を有していることが分かる。
【0042】
実施例5(マウスウォッシュの調製)
実施例1で得られた3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシドを用いて、以下の処方により、マウスウォッシュ(pH8)を調製した。
エタノール 10 質量%
ソルビトール 5 質量%
マルチトール 2 質量%
サッカリンナトリウム 0.5 質量%
3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシド0.2 質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1 質量%
洗口剤用香料 0.1 質量%
安息香酸ナトリウム 0.05質量%
精製水 残部
計 100 質量%
【0043】
実施例6(練歯磨の調製)
実施例2で得られた3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシドを用いて、以下の処方により、練歯磨(pH8)を調製した。
ソルビトール 28 質量%
無水ケイ酸 15 質量%
ポリエチレングリコール400 8 質量%
キシリトール 5 質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1 質量%
歯磨き用香料 1 質量%
3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシド0.5質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.2質量%
リン酸水素二ナトリウム 0.1質量%
リン酸二水素ナトリウム 0.1質量%
精製水 残部
計 100 質量%
【0044】
実施例7(マウスウォッシュの調製)
実施例3で得られたデシルガラクトシド異性体混合物を用いて、以下の処方により、マウスウォッシュ(pH8)を調製した。
エタノール 25.04 質量%
デシルガラクトシド異性体混合物 0.10 質量%
ペパーミント油 0.015質量%
サッカリンナトリウム 0.012質量%
炭酸ナトリウム 微量
精製水 残部
計 100 質量%
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のアルキルガラクトシドは、製造時における着色を抑制することが可能であり、不飽和結合がないため光や酸化に対する安定性が高く、ガラクトシドの結晶性が低いため広範な配合処方に対応することができる。また、本発明のアルキルガラクトシドを含有する組成物は、細菌に対する共凝集抑制効果等に優れているため、口腔用組成物の他、バイオフィルム抑制・除去剤、低刺激性界面活性剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルガラクトシド。
【化1】

(式中、Rは、1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が5〜14の鎖状飽和炭化水素基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)又は(2)におけるRの総炭素数が6〜11である、請求項1に記載のアルキルガラクトシド。
【請求項3】
一般式(1)又は(2)におけるRが、1個又は2個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が6〜9の鎖状飽和炭化水素基である、請求項1又は2に記載のアルキルガラクトシド。
【請求項4】
一般式(1)又は(2)におけるRが、1個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が10の鎖状飽和炭化水素基である、請求項1又は2に記載のアルキルガラクトシド。
【請求項5】
下記式(3)で表される3,7−ジメチルオクチル−β−D−ガラクトピラノシド。
【化2】

【請求項6】
下記式(4)で表される3−メチルヘキシル−β−D−ガラクトピラノシド。
【化3】

【請求項7】
下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアルキルガラクトシドを含有する口腔用組成物。
【化4】

(式中、Rは、1〜3個のメチル基を含むメチル分岐構造を有し、総炭素数が5〜14の鎖状飽和炭化水素基を示す。)

【公開番号】特開2009−78982(P2009−78982A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247404(P2007−247404)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】