説明

分岐ポリウレタンでコーティングされた電子写真印刷法用の基材

基材を、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアまたはそれらの混合物を含有する組成物で前処理することを特徴とする、基材の印刷法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアまたはそれらの混合物を含有する組成物で前処理することを特徴とする、基材の印刷法に関する。
【0002】
電子写真印刷法の本質的な特徴は、静電的に帯電された染料系、いわゆるトナーが使用され、かつ種々の方法で現像されうる静電帯電画像が作製されることである。
【0003】
電子写真印刷法においては、2つの物理的に異なるトナー系が使用される:乾式トナー(すなわち室温では固体の形で存在し、かつ約130℃の比較的高い温度における熱作用下で初めて液体となるトナー)ならびに液体トナー(非常に低い融点を有するトナー)。
【0004】
液体トナーによる静電印刷法は、LEP(液体静電印刷(liquid electrostatic printing))またはインディゴ(Indigo)印刷法とも呼ばれる。
【0005】
紙上でのトナーの低い融点および低い定着温度(一般的に40〜100℃)に基づき、LEP法の場合の紙上でのトナーの付着は不十分であることが多い。
【0006】
WO96/06384は、塩基性官能基を有する物質を用いた表面の処理による基紙上での液体トナーの付着の改善を記載し、その際、有利にはもっぱらポリエチレンイミン(PEI、例えばポリミンP)、エトキシル化PEIs、エピクロロヒドロリン−ポリエチレンイミンならびにポリアミドのみが挙げられる。しかしながらこれらの処理方法の決定的な欠点は、より長く貯蔵した場合の白色混濁(白色のロス)ならびに紙の黄変である。
【0007】
US5281507には、印刷画像ならびにトナーの付着を改善するために(部分的に)フッ素化された炭化水素もしくは界面活性剤を基材表面上で使用することが記載される。
【0008】
EP0879917には、紙表面にアルカリpH値を付与するために塩の混合物(例えばアルミン酸塩または弱酸および強塩基の塩)が使用され、それはまた液体トナーによって改善された印刷適性をもたらす。
【0009】
WO2004/092483には、デンプン、アクリル酸ポリマーおよびさらに他の有機化合物、例えばポリグリセリンエステルからの組み合わせ物による表面処理が記載される。ポリグリセリンエステルの使用は、良好なトナーの定着を得るために極めて重要なものと見なされる。
【0010】
EP1026185は、ジイソシアネートと、イソシアネートと反応性の少なくとも2個の基との反応による樹枝状またはハイパーブランチのポリウレタンの製造法を記載し、その際、官能基の種々の反応性が必要とされ、かつそれはポリマーの合成に際して利用される。得られる高分岐もしくは樹枝状のポリウレタンは、例えば相媒介剤(Phasenvermittler)、レオロジー助剤または触媒担体としての使用に推奨される。
【0011】
WO02/36695は、印刷インキおよび印刷ワニスを製造するためのハイパーブランチポリウレタンの使用を記載する。
【0012】
DE−A10249841は、表面を変性および官能化するための樹枝状ポリウレタンの使用を開示し、例えばテキスタイルの表面はこのようにして親水化または疎水化されうる。印刷可能な基材または基材の印刷は言及されていない。
【0013】
本発明の課題は、静電印刷法、殊にLEP法の改善であった。同様に課題は、この種の印刷法のための適した基材を提供することであった。出来る限り簡単な措置によって、殊に種々の紙質にて液体トナーの出来る限り良好な定着が可能とされるべきである。
【0014】
それに従って、上で定義した方法が見つかった。
【0015】
本発明の本質的な特徴は、印刷されるべき基材を前処理するための、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアを含有する組成物の使用である。
【0016】
組成物に関して
"ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレア"という概念は、この発明の枠内で、きわめて一般的に、少なくとも1つのジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1個の基を有する少なくとも1つの化合物との反応によって得られるポリマーを包含する。それらに含まれるのは、ポリマーの繰り返し単位がウレタン基の他にウレア基、アロファネート基、ビウレット基、カルボジイミド基、アミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基またはオキサゾリドン基(オキサゾリジノン基)によっても結合されているポリマーである(例えばKunststofftaschenbuch,Saechtling,26,Aulf.,S.491ff,Carl−Hanser−Verlag,Muenche 1995を参照のこと)。"ポリウレタン"という概念は、殊に、主としてウレタン基を繰り返し単位として含有するポリマーを包含し;ポリウレアという概念は、主としてウレア基を繰り返し単位として有するポリマーを包含する。
【0017】
有利なのは、約500〜100000、有利には1000〜50000の範囲の質量平均分子量を有するポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアである。
【0018】
有利には、ウレタン基および/またはウレア基(および、存在する場合、イソシアネート基と、活性水素原子を有するそれに対して反応性の基との反応によって得られる基)の含量は、0.5〜10モル/ポリマーkg、とりわけ有利には1〜10モル/ポリマーkg、殊に2〜8モル/ポリマーkgの範囲にある。
【0019】
とりわけ有利なのは、ポリウレタン、殊にウレタン基が前述の含量を有するポリウレタンである。
【0020】
殊に、少なくとも部分的に分岐したポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレア、とりわけ有利には少なくとも部分的に分岐したポリウレタンが存在する。
【0021】
分岐ポリウレタンは、少なくとも三価の化合物、すなわち少なくとも3個のイソシアネート基またはイソシアネート基に対して反応性の少なくとも3個の基を有する化合物またはイソシアネート基および反応性基を有する化合物(その際、2つのからの合計は少なくとも3つである)の併用によって得られ;後者のものは一般的に保護基の使用下で製造される。
【0022】
本発明により使用されるポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアは、イソシアネート基、ウレタン基、ウレア基またはカーボネート基(以下では省略して基と記載)と、前記のそれぞれの基と反応性である官能基(以下では省略して"反応性基")との反応によって得られ、その際、反応に際して使用される化合物は、基のみを含有する化合物(化合物A)、反応性基のみを含有する化合物(化合物B)または基および反応性基を含有する化合物(化合物C)から選択されており、かつ基および反応性基からの合計の少なくとも1モル%、有利には少なくとも5モル%、とりわけ有利には少なくとも10モル%およびきわめて有利には少なくとも15モル%は、少なくとも三価の化合物A)、B)またはC)の構成成分である。
【0023】
きわめて有利なのは、高分岐のポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアであり;とりわけ規則的に合成された高分岐のポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアは樹枝状ポリウレタンとも呼ばれる。樹枝状ポリマーはまた、ハイパーブランチまたはデンドリマーのポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアに細分される。
【0024】
本発明の枠内で"ハイパーブランチポリマー"という概念は、きわめて一般的に、分岐構造および高い官能性によって際立つポリマーを包含する。ハイパーブランチポリマーの一般的な定義に関して、P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,Nr.14,2499も引用される。有利には、本発明により使用されるハイパーブランチポリマーはウレタン基および/またはウレア基(もしくはイソシアネート基の反応から生じるさらに他の基)以外に少なくとも4個のさらに他の官能基を有する。有利には、官能基の割合は、分子1つ当たり平均して4〜100個、とりわけ有利には5〜30個および殊に6〜20個である。
【0025】
"デンドリマー"(カスケードポリマー、アルボロール(Arborole)、等方的に分岐したポリマー、イソ分岐したポリマー、スターバーストポリマー)は、高対称性構造を有する分子的に均一な高分子である。デンドリマーは構造的に星形ポリマーから誘導され、その際、個々の鎖はそれぞれ星状に分岐している。該デンドリマーは小さい分子から出発して継続的に繰り返される一連の反応によって生じ、その際、常により高い分岐が生じ、それらの末端にはまたさらなる分岐のための出発点である官能基がそのつど存在する。そうしてモノマー末端基の数は各反応工程とともに指数的に増加し、その際、末端では球形の木構造が生じる。デンドリマー特有の特徴は、その構造を得るために実施される反応工程(世代)の数である。その均一な構造に基づき、一般にデンドリマーは定義された分子量を有する。
【0026】
本発明の意味における"ハイパーブランチポリマー"には、星形ポリマーおよび櫛形ポリマーも含まれる。
【0027】
"星形ポリマー"は、中心から3つ以上の鎖が出ているポリマーである。その際、該中心は単独の一原子または一原子群であってもよい。"櫛形ポリマー"は、線状のポリマー主鎖から出る櫛状の分岐を有するポリマーである。
【0028】
さらに適しているのは、種々の長さの側鎖および分岐ならびに分子量分布を有する、分子的にもまた構造的にも不均一な"ハイパーブランチポリマー"である。
【0029】
これらのハイパーブランチポリマーの合成には、殊にいわゆるABxモノマーが適している。これらは結合の形成下で互いに反応しうる2つの異なる官能基AおよびBを有する。その際、官能基Aは1分子当たり1個のみが含有されており、かつ官能基Bは2個以上が含有されている。上述のABxモノマーの相互反応によって、規則的に配置された分岐箇所を有する未架橋のポリマーが生じる。該ポリマーは、実際には鎖末端にもっぱらB基のみを有する。より詳細な説明は、例えばJournal of Molecular Science,Rev.Macromol.Chem.Phys.,C37(3),555−579(1997)の中で見つけられる。
【0030】
本発明に従って適したハイパーブランチポリマーは、WO97/02304、US5,936,055、DE−A10013187、DE−A10030869、DE−A19904444、DE−A10322401、US2002/161113、WO03/066702、WO2005/044897およびWO2005/075541の中に記載されており、それらはここで全面的に引用される。
【0031】
有利には、本発明に従って使用される樹枝状ポリマーは、樹枝状結合および末端単位の平均数からの合計を全体の結合(樹枝状、線状および末端の結合)の平均数の合計で割って100を掛けたものに相当する、10〜100%、有利には10〜90%および殊に10〜80%の分岐度(Degree of Branching,DB)を有する。"分岐度"の定義に関して、H.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30が指摘される。
【0032】
ハイパーブランチポリマー、すなわち分子的および構造的に不均一なポリマーが有利には使用される。一般に、これらはより簡単に、ひいてはより経済的にデンドリマーとして製造可能である。しかし有利な表面変性を獲得するために、当然のことながら構造的および分子的に均一なデンドリマーのポリマーおよび星形ポリマーも使用してよい。
【0033】
本発明に従って使用可能なハイパーブランチのポリウレタンおよびポリウレアの合成は、例えば以下で記したように行われうる。
【0034】
有利には、ハイパーブランチのポリウレタンおよびポリウレアの合成のために、イソシアネート基、ウレタン基、ウレア基またはカーボネート基のみならず、これらの基と結合の形成下で反応しうる基も有するABxモノマーが使用される。xは2〜8の自然数である。有利には、xは2または3である。Aはイソシアネート基、ウレタン基、ウレア基またはカーボネート基であり、かつBはこれらと反応性の基であり、またはその逆のケースで存在してもよい。
【0035】
有利には、イソシアネート基、ウレタン基、ウレア基またはカーボネート基と反応性の基はOH−、NH2−、NH−、SH−またはCOOH基である。
【0036】
該ABxモノマーは、公知の方法で様々の技術を用いて製造可能である。
【0037】
ABxモノマーは、例えばWO97/02304で開示された方法に従って保護基技術の適用下で合成されうる。例示的に、この技術は2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)とトリメチルロールプロパンとからのAB2モノマーの製造の箇所で説明されている。まずTDIのイソシアネート基の1つが公知の方法で、例えばオキシムとの反応によってブロックされる。残留する遊離NCO基がトリメチロールプロパンと反応させられ、その際、平均的に3個のOH基の1つがイソシアネート基と反応する。保護基の脱離後、1個のイソシアネート基と2個のOH基とを有する分子が得られる。
【0038】
とりわけ有利には、ABx分子は、DE−A19904444で開示された方法に従って合成されえ、その際、保護基は必要とされない、この方法の場合、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが使用され、かつイソシアネート基と反応性の少なくとも2個の基を有する化合物と反応させられる。反応相手の少なくとも1つは、他の反応相手に対して異なる反応性を有する基を有する。有利には、2つの反応相手は、他の反応相手に対して異なる反応性を有する基を有する。反応条件は、ある一定の反応性基のみが互いに反応しうるように選択される。例示的に、ここではヘキサメチレンジイソシアネートとジエタノールアミンとの反応が記載されている。ジエタノールアミンの場合、アミノ基はイソシアネート基に対して、2個のヒドロキシル基より明らかに高い反応性を有する。この反応性の差違は、目的に合わせウレタン構造およびウレア構造を介してハイパーブランチポリウレアウレタンを合成するために利用される。
【0039】
さらに、ABx分子は、WO03/066702の中で記載されたように製造されうる。この場合、ブロック剤によって保護されたイソシアネート基がポリアミンと反応してポリウレアが得られる。同様に該ポリウレアは、WO2005/044897によりポリアミンとジアルキルカーボネートまたはジアリールカーボネートとの反応を介してか、またはWO2005/075541によりポリアミンとウレアとの反応を介して合成されうる。
【0040】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとして、従来技術に従って公知の、かつ以下で例示的に挙げられた脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および芳香族のジイソシアネートまたはポリイソシアネートが考慮に入れられる。有利には、ここでは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマーのジフェニルメタンジイソシアネートとオリゴマーのジフェニルメタンジイソシアネート(ポリマーMDI)とからの混合物、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート−トリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート−トリマー、イソホロンジイソシアネート−トリマー、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシル)−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ドデシルジイソシアネート、リシンアルキルエステルジイソシアネート(その際、アルキルはC1〜C10である)、1,40−ジイソシアナトシクロヘキサンまたは4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0041】
とりわけ有利には、ポリウレタン、ポリウレアウレタンおよびポリウレアを合成するのに、異なる反応性のNCO基を有するジイソシアネートまたはポリイソシアネートが適している。ここでは、2,4−トルイレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、トリイソシアナトトルエン、イソホロンジイソシアネート(IP−DI)、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルー1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、1,4−ジイソシアナト−4−メチルペンタン、2,4'−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネートおよび4−メチル−シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート(H−TDI)が挙げられる。
【0042】
さらに、ポリウレタン、ポリウレアウレタンおよびポリウレアの合成のために、そのNCO基の反応性がまず同じであり、しかしながらNCO基への反応物質の最初の添加によって第二のNCO基の場合に反応性の低下が誘因されうるイソシアネートが適している。それに関する例は、そのNCO基が、非局在化されたπ電子系を介して結ばれているイソシアネート、例えば1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネートまたは2,6−トルイレンジイソシアネートである。
【0043】
さらに例えば、上記のジイソシアネートまたはポリイソシアネート、またはウレタン−、アロファネート−、ウレア−、ビウレット−、ウレトジオン−、アミド−、イソシアヌレート−、カルボジイミド−、ウレトンイミン−、オキサジアジントリオン−またはイミノオキサジアジンジオン構造によって結合したそれらの混合物から製造されうるオリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートが使用されうる。
【0044】
有利には、イソシアネートと反応性の少なくとも2個の基を有する化合物として、その官能基がNCO基に対して異なる反応性を有する二官能性、三官能性または四官能性の化合物が使用される。
【0045】
ポリウレタンおよびポリウレアウレタンの製造に有利なのは、分子中に少なくとも1個の第一級ヒドロキシル基および少なくとも1個の第二級ヒドロキシル基、少なくとも1個のヒドロキシル基および少なくとも1個のメルカプト基、とりわけ有利には少なくとも1個のヒドロキシル基および少なくとも1個のアミノ基を有する化合物、殊にアミノアルコール、アミノジオールおよびアミノトリオールである。それというのも、アミノ基の反応性はイソシアネートとの反応に際してのヒドロキシル基の反応性より明らかに高いからである。
【0046】
イソシアネートと反応性の少なくとも2個の基を有する挙げられる化合物の例は、プロピレングリコール、グリセリン、メルカプトエタノール、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。さらに、上で挙げられた化合物の混合物も使用可能である。
【0047】
ジイソシアネートおよびアミノジオールとからポリウレタンを製造するためのABx分子の製造がここで例示的に説明される。この場合、まずジイソシアネート1モルがアミノジオール1モルと低い温度で、有利には−10〜30℃の範囲内で反応させられる。この温度範囲内で、ウレタン形成反応の実質的に完全な抑制が行われ、かつイソシアネートのNCO基はもっぱらアミノジオールのアミノ基とだけ反応する。形成されたABx分子、ここではAB2型は、1個の遊離NCO基ならびに2個の遊離OH基を有し、かつハイパーブランチポリウレタンの合成のために使用されうる。
【0048】
加熱および/または触媒添加によって、このAB2分子は分子間で反応しハイパーブランチポリウレタンが得られる。有利には、ハイパーブランチポリウレタンの合成は、AB2分子を事前に分離することなくさらなる反応工程において、高められた温度で、有利には30〜80℃の範囲内で行われうる。2個のOH基および1個のNCO基を有する先に記したAB2分子が使用される場合、1分子当たり1個の遊離NCO基ならびに−重合度に応じて−多少とも大きい数のOH基を有するハイパーブランチポリマーが生じる。反応は高い反応率まで実施されえ、それによって非常に高分子の構造が得られる。しかし反応はまた、例えば適した単官能性化合物の添加によってか、またはAB2分子を製造するための出発化合物の1つを添加することによって、所望された分子量に達した場合に中断してもよい。中断のために使用される出発化合物に応じて、完全にNCO末端化された分子または完全にOH末端化された分子のどちらかが生じる。
【0049】
代替的に、例えばグリセリン1モルと2,4−TDI 2モルとからのAB2分子も製造されうる。低い温度の場合、有利には第一級アルコール基ならびに4位のイソシアネート基が反応し、かつ1個のOH基および2個のイソシアネート基を有する付加物が形成され、かつそれはすでに記したように、より高い温度の場合にハイパーブランチポリウレタンへと反応しうる。遊離OH基ならびに−重合度に応じて−多少とも大きい数のNCO基を有するハイパーブランチポリマーがまず生じる。
【0050】
WO2005/044897およびWO2005/075541に記載のポリウレアの製造に関して、有利には、分子中に少なくとも2個のアミノ基を有する、ウレア基またはカーボネート基と反応性の生成物が使用される。
【0051】
これは例えば、エチレンジアミン、N−アルキルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、ヘキメチレンジアミン、N−アルキルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、アミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェファミン(Jeffamine))、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、N'−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、トリスアミノノナンまたはメラミンである。さらに、上で挙げられた化合物の混合物も使用可能である。
【0052】
ハイパーブランチのポリウレタンおよびポリウレアの製造は、原則的に溶媒なしで、有利にはしかし溶かして行ってもよい。溶媒として原則的に適しているのは、反応温度で液体の、かつモノマーおよびポリマーに対して不活性の全ての化合物である。
【0053】
他の生成物は、さらに他の合成変法によって入手されうる。例示的に、以下のものがこの部分で挙げられる:
例えばAB3分子は、ジイソシアネートと、イソシアネートに対して反応性の少なくとも4個の基を有する化合物との反応によって得られる。例示的に、トルイレンジイソシアネートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの反応が挙げられる。
【0054】
重合の中断のために、そのつどのA基と反応しうる多官能性化合物も使用されうる。このように、複数の小さいハイパーブランチ分子は結合して大きいハイパーブランチ分子へとなりうる。
【0055】
例えば鎖延長された分枝を有するハイパーブランチのポリウレタンおよびポリウレアは、重合反応のためにABx分子の他に付加的にモル比1:1においてジイソシアネートと、イソシアネート基と反応性の2個の基を有する化合物とが使用されることによって得られる。これらの付加的なAA−もしくはBB化合物はまた、この反応条件に際してしかしA−またはB基に対して反応性であってはならないさらに他の官能基も持っていてよい。このように、さらに他の官能基はハイパーブランチポリマー中に導入されうる。
【0056】
ハイパーブランチポリマーのさらに他の合成変法は、DE−A10013187およびDE−A10030869の中で見つけられる。
【0057】
一般的に、前で記載されたウレタン基および/またはウレア基を有するハイパーブランチポリマーは、基材の表面特性を変性するためのものとしてすでに使用されうる。その際、該ポリマーの表面変性する特性は、合成により導入された官能基に従う。
【0058】
有利には、前で記載されたハイパーブランチポリマーは、基材表面の変性のためその使用前にさらに重合類似反応に供される。そうしてポリマーの特性は、重合類似反応のために使用される化合物の種類および量に依存して、目的に合わせてそのつどの使用に合わせられうる。それゆえ有利なのは、前で記載されたような基材であって、その際、ハイパーブランチポリマーは、縮合反応または付加反応しうるウレタン基および/またはウレア基および/またはさらに他の官能基を有するハイパーブランチポリマーと、以下の化合物:
a)縮合反応または付加反応しうるハイパーブランチポリマーの基に相補的な少なくとも1個の官能基および付加的に少なくとも1個の親水性基を有する化合物、
b)縮合反応または付加反応しうるハイパーブランチポリマーの基に相補的な少なくとも1個の官能基および付加的に少なくとも1個の疎水性基を有する化合物、
およびその混合物
の中から選択される少なくとも1つの化合物との反応によって基材表面上で得られる。
【0059】
"相補的な官能基"とは、本発明の枠内で、縮合反応または付加反応において互いに反応しうる一対の官能基と理解される。"相補的な化合物は"、互いに相補的な官能基を有する化合物の対である。
【0060】
ハイパーブランチポリマーおよび成分a)およびb)の有利な相補的な官能基は、下の概略図の相補的な官能基の中から選択される。
【0061】
【表1】

【0062】
有利には、RおよびR'は独立して、水素、アルキル、とりわけ有利にはC1〜C20−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、異性体のペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン等、シクロアルキル、とりわけ有利にはC5〜C8−シクロアルキル、例えばシクロペンチルおよびシクロヘキシル、アリール、とりわけ有利にはフェニル、ヘタリール等の中から選択されている。
【0063】
例えば、有利な相補的な化合物は、一方では、例えばアルコール基、第一級アミン基および第二級アミン基およびチオール基の中から選択されている活性水素原子を有する化合物であり、かつ他方では、それに対して反応性の基、有利にはイソシアネート基を有する化合物である。その際、一般に、どの官能基がポリマー成分を有し、かつどれが化合物a)および/またはb)を有するかは重要ではない。
【0064】
適した化合物a)の親水性基は、イオノゲン性、イオン性および非イオン性の親水性基の中から選択される。有利には、イオノゲン性もしくはイオン性の基は、カルボン酸基および/またはスルホン酸基および/または窒素含有基(アミン)もしくはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/または四級化またはプロトン化された基である。酸基を含有する化合物a)は、部分的なまたは完全な中和によって相応する塩に変化させられうる。中和のための適した塩基は、例えばアルカリ金属塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムおよびアルカリ土類金属塩基、例えば水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムならびにアンモニアおよびアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等である。アミン窒素原子を有する化合物a)から、荷電されたカチオン性基が、例えば酢酸のようなカルボン酸によるプロトン化によってか、またはC1〜C4−アルキルハロゲン化物またはC1〜C4−硫酸アルキルによる四級化によって生成されうる。そのようなアルキル化剤の例は、塩化エチル、臭化エチル、硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルである。
【0065】
重合類似反応によって得られる、イオン性の親水性基を有するハイパーブランチポリマーは、一般に水溶性または水分散性である。
【0066】
有利には、成分a)として、ヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、ヒドロキシコハク酸(リンゴ酸)、ヒドロキシピバリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、12−ヒドロキシドデカン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等が使用される。
【0067】
さらに有利には、成分a)として、ヒドロキシスルホン酸、例えばヒドロキシメタンスルホン酸または2−ヒドロキシエタンスルホン酸が使用される。
【0068】
さらに有利には、成分a)として、メルカプトカルボン酸、例えばメルカプト酢酸が使用される。
【0069】
さらに有利には、成分a)として、式:
HN−Y−SO
[式中、
Yは、o−、m−またはp−フェニレンまたは直鎖または分岐鎖のC2〜C6−アルキレンであり、それは場合によって1、2または3個のヒドロキシ基によって置換されており、かつ
R1は、水素原子、C1〜C12−アルキル基(有利には、C1〜C10−および殊にC1〜C6−アルキル基)またはC5〜C6−シクロアルキル基であり、その際、アルキル基またはシクロアルキル基は、場合によって1、2または3個のヒドロキシ基、カルボキシル基またはスルホン酸基によって置換されていてもよい]
のアミノスルホン酸が使用される。
【0070】
有利には、上の式のアミノスルホン酸は、タウリン、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸または2−アミノエチルアミノエタンスルホン酸である。
【0071】
さらに有利には、成分a)として、a−、b−またはg−アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、トリプトファン、b−アラニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸が使用される。
【0072】
さらに有利には、成分a)としてポリエーテロールが使用される。適したポリエーテロールは、エーテル結合を含有しかつ、例えば約300〜10000の範囲の分子量を有する、線状または分岐状の末端ヒドロキシル基を有する物質である。それらには例えば、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、アルキレンオキシド単位を統計学的に分布してまたはブロックの形で重合により導入して含有する、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとからのコポリマーが含まれる。適しているのはまた、アンモニアによるポリエーテロールのアミノ化によって製造可能であるα,ω−ジアミノポリエーテルである。この種の化合物は、JeffamineRの名称で市販されている。
【0073】
さらに有利なのは、ジアミン、ポリアミンおよびその混合物の中から選択される成分a)である。
【0074】
適したアミンa)は、一般的に約2〜30個の、有利には約2〜20個の炭素原子を有する、直鎖および分岐鎖の、脂肪族および脂環式のアミンである。それらには例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、4−アザヘプタメチレンジアミン、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)−ブタン−1,4−ジアミン、およびその混合物が含まれる。一般的に、適したポリアミンa)は、約400〜10000の、有利には約500〜8000の数平均分子量を有する。それらには例えば、末端の第一級または第二級アミノ基を有するポリアミド、ポリアルキレンイミン、有利にはポリチレンイミンおよび、ポリ−N−ビニルアミド、例えばポリ−N−ビニルアセトアミドの加水分解によって得られるビニルアミンが含まれる。
【0075】
さらに有利なのは、ポリオールの中から選択される成分a)である。それには例えば、2〜18個の炭素原子、有利には2〜10個のC原子を有するジオール、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1.4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールが含まれる。適したトリオールおよび高級ポリオールは、3〜25個のC原子、有利には3〜18個のC原子、殊に有利には3〜6個のC原子を有する化合物である。使用可能なトリオールの例は、グリセリンまたはトリメチロールプロパンである。高級ポリオールとして、例えばエリトリトール、ペンタエリトリトールおよびソルビトールが使用されうる。
【0076】
さらに有利には、成分a)としてアミノアルコールが使用される。有利には、これらは2〜16個の炭素原子、とりわけ有利には3〜12個の炭素原子を有する、例えばモノエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、エチルイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、1−エチルアミノブタン−2−オール、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)−アミノメタン、4−メチル−4−アミノペンタン−2−オールおよびN−(2−ヒドロキシエチル)−アニリンおよびその混合物である。
【0077】
化合物b)の適した疎水性基は、8〜40個の炭素原子、有利には9〜35個の炭素原子、殊に10〜30個の炭素原子を有する飽和または不飽和の炭化水素基の中から選択されている。有利なのは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基である。シクロアルキル基またはアリール基は、1、2または3個の置換基、有利にはアルキル置換基またはアルケニル置換基を有してもよい。本発明の枠内で、"アルケニル基"は、1個、2個以上の炭素−炭素−二重結合を有する基とされる。
【0078】
本発明の枠内で、C8〜C40−アルキルという言い回しは、直鎖および分枝鎖のアルキル基を包含する。有利には、それは直鎖および分岐鎖のC9〜C35−アルキル基、とりわけ有利にはC10〜C30−アルキル基および特にC12〜C26−アルキル基である。有利には、それは例えば天然または合成の脂肪酸および脂肪アルコールならびにオキソアルコール中にも存在する、主として線状のアルキル基である。それらには、殊にn−オクチル、エチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、パルミチル(=セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、アラキニル、ベヘニル、リグノセレニル、セロチニル、メリシニル等が含まれる。
【0079】
有利にはC8〜C40−アルケニルは、一不飽和、二不飽和または多不飽和であってもよい、直鎖および分岐鎖のアルケニル基である。有利なのは、C9〜C35−アルケニル基、殊にC10〜C30−アルケニル基および特にC12〜C26−アルケニル基である。それらには、殊にオクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、リノリリル、リノレニリル、エラオステアリリル等、および殊にオレイル(9−オクタデセニル)が含まれる。
【0080】
それから有利には、式b)の化合物は、アルキルアミン、例えば1−オクチルアミン、1−ノニルアミン、1−デシルアミン、1−ウンデシルアミン、1−ウンデカー10−エニルアミン、1−トリデシルアミン、1−テトラデシルアミン、1−ペンタデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン、1−ヘプタデシルアミン、1−オクタデシルアミン、1−オクタデカ−9,12−ジエニルアミン、1−ノナデシルアミン、1−エイコシルアミン、1−エイコサ−9−エニルアミン、1−ヘネイコシルアミン、1−ドコシルアミン、および殊にオレイルアミンおよび1−ヘキサデシルアミン(セチルアミン)または天然に存在する脂肪酸から製造されたアミン混合物、例えば、主として飽和および不飽和のC14−、C16〜C18−アルキルアミンを含有する獣脂脂肪族アルコールまたは飽和、一不飽和および二不飽和のC8〜C22−アルキルアミン、有利にはC12〜C14−アルキルアミンを含有するココヤシアミンである。
【0081】
さらに有利には、化合物b)は、前で挙げられた疎水性基の1つを有する一価のアルコールの中から選択されている。そのようなアルコールおよびアルコール混合物b)は、例えば天然の脂肪および油からの脂肪酸または、例えばパラフィンの接触酸化からの合成脂肪酸の加水分解によって得られる。さらに、適したアルコールおよびアルコール混合物b)は、オレフィンのヒドロホルミル化とアルデヒドの同時の水素化によって得られ、その際、一般的に、直鎖および分岐鎖の第一級アルコール(オキソアルコール)からの混合物が生じる。さらに、適したアルコールおよびアルコール混合物b)は、公知の方法に従ったn−パラフィンの部分酸化によって得られ、その際、主として線状の第二級アルコールが得られる。さらに適しているのは、オルガノアルミニウム合成によって得られる、実質的に直鎖および偶数の第一級チーグラーアルコールである。
【0082】
適した一価のアルコールb)は、例えばオクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール等およびその混合物である。
【0083】
例えば適したモノイソシアネートb)は、前で挙げられたアミンおよびアミン混合物からホスゲン化によってかまたは天然または合成の脂肪酸および脂肪酸混合物からホフマン(Hofmann)分解、クルチウス(Curtius)分解またはロッセン(Lossen)分解によって得られるC8〜C40−アルキルイソシアネートである。
【0084】
前で挙げられた化合物a)およびb)は、それぞれ単独に、もっぱら親水性化合物a)のみからなるかまたはもっぱら疎水性化合物b)のみからなる混合物として、ならびに親水性化合物a)と疎水性化合物b)との混合物として使用されうる。ウレタン基および/またはウレア基を有するハイパーブランチポリマーと個々の化合物a)またはb)またはその混合物との重合類似反応によって、ハイパーブランチポリマーの表面変性する特性が幅広い範囲において変化させられうる。それによって、これらのポリマーで変性された基材に表面特性が付与されえ、該表面特性は、水および水性液体に対する強い親和性(親水性)から水および水性液体に対する非常にわずかな親和性(疎水性)にまで及ぶ。
【0085】
以下では、重合類似反応に関するさらに他のいくつかの実施態様が示される:
アクリレート基を含有する化合物、例えばアクリレート基を含有するアルコール、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応によって、重合可能なオレフィン基を有し、かつ放射線架橋性の、殊にUV架橋性のポリマーの製造のために使用されうるハイパーブランチポリウレタンが得られる。相応して置換されたアルコールとの反応によって、カチオン架橋性ポリマーのために用いられうるエポキシド基またはビニルエーテル基ももたらされうる。
【0086】
酸化乾燥性のハイパーブランチのポリウレタンまたはポリウレアは、NCO基またはウレタン基を含有するポリマーを、少なくとも1個のOH基を有する一不飽和または多不飽和の脂肪酸エステルと、または殊に3〜40個の炭素原子を有する一不飽和または多不飽和の脂肪アルコールまたは脂肪アミンと反応させることによって得られる。例えば、リノール酸、リノレン酸またはエラエオステアリン酸のOH基を含有するエステルがNCO基と反応させられうる。さらに、NCO基またはウレタン基はしかしまた、ビニル基またはアリル基を含有するアルコールまたはアミンと直接反応させてもよい。
【0087】
違った種類の官能基を有するハイパーブランチのポリウレタンまたはポリウレアの製造のために、例えば2,4−TDI 2モルをトリメチロールプロパン1モルとジメチロールプロピオン酸1モルとからの混合物と反応させてもよい。この場合、カルボン酸基のみならずOH基も有する生成物が得られる。
【0088】
さらにそのような生成物は、重合を所望された反応度で中断し、引き続き、最初から存在する官能基の一部のみ、例えばOH基またはNCO基の一部のみを反応させるABx分子で重合させることによっても得ることができる。そうして例えば、2,4−TDIとグリセリンとからのNCO末端ポリマーの場合、NCO基の一部をエタノールアミンと反応させ、かつ残りのNCO基をメルカプト酢酸と反応させてもよい。
【0089】
さらに、イソホロンジイソシアネートとジエタノールアミンとからのOH末端ポリマーは、例えばOH基の一部をドデシルイソシアネートと、またはドデカン酸と反応させることによって後で疎水化してもよい。有利には、ハイパーブランチポリウレタンの再官能基化(Umfunktionalisierung)または適用問題へのポリマー特性の適合は、重合反応に引き続きNOC末端ポリウレタンを前もって分離することなく即座に行われうる。しかし官能基化はまた別個の反応においても行ってよい。
【0090】
本発明に従って使用されるハイパーブランチポリマーは、他の表面活性物質と混合してまたは組み合わせて使用してもよい。それらには、通常のアニオン性、非イオン性またはカチオン性の界面活性剤もしくは湿潤剤が含まれる。本発明に従って使用されるハイパーブランチポリマーは、所望される場合、例えば基材の表面特性を変性するのに通常用いられる他のポリマーと組み合わせても使用してよい。そのような組み合わせによって、表面変性する作用を増大させることが適宜可能である。
【0091】
有利な一実施態様において、多く分岐したポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレア、有利にはポリウレタンが他のポリマー添加剤を用いずに使用される。
【0092】
他の有利な一実施態様において、該組成物はポリウレタン、ポリウレタンウレアまたはポリウレアの他にデンプンも含有する。
【0093】
デンプンとはこの組成物中で、天然の、変性されたまたは分解された各々のデンプンと理解されるべきである。天然のデンプンは、アミロース、アミロペクチンまたはそれらの混合物から成っていてよい。変性デンプンは、酸化デンプン、デンプンエステルまたはデンプンエーテルであってもよい。アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の変性デンプンが考慮に入れられる。
【0094】
加水分解によって、デンプンの分子量が減少されうる(分解デンプン)。分解生成物として、オリゴサッカリドまたはデキシトリンが考慮に入れられる。該デンプンは種々の供給源に由来してもよく、例えば穀物デンプン、トウモロコシデンプンまたはバレイショデンプン、殊に、トウモロコシ、ろう状トウモロコシ、米、タピオカ、コムギ、オオムギまたはカラスムギからのデンプンであってよい。有利なのはバレイショデンプン、もしくは変性されたまたは分解されたバレイショデンプンである。
【0095】
殊に該組成物は、ポリウレタン、ポリウレタンウレアまたはポリウレアおよびデンプンの合計100質量部に対して、ポリウレタン、ポリウレタンウレアまたはポリウレア10〜100質量部、とりわけ有利には50〜100質量%およびデンプン90〜0質量部、とりわけ有利には50〜0質量%を含有する。
【0096】
該組成物はさらに他の成分を含有してもよく、適した添加剤は、例えばWO2004/092483の中で記載されており;例えばポリグリセリンエステルが挙げられる。
【0097】
しかしながらさらなる添加剤の併用は、本発明の枠内でどうしても必要というわけではなく、殊にトナーの改善された付着にさらなる添加剤は必要ではない。
【0098】
有利なのは水性組成物、殊に、ポリウレタン、ポリウレタンウレアまたはポリウレアおよび場合によってデンプンが溶解しているかまたは分散している組成物である。
【0099】
該組成物は、通常の方法に従って、印刷されるべき基材上に塗布されえ、その際、有利なのは、組成物が基材に拡散して入り込まないかまたはほとんど入り込まない方法、例えば噴霧またはカーテンコーティングによる、フィルムプレス(Filmpresse)を用いた塗布である。
【0100】
処理および印刷されるべき基材に関して
有利には、該組成物で前処理された基材は電子写真印刷法において印刷される。
【0101】
電子写真印刷法の重要な特徴は、静電的に帯電された染料系、いわゆるトナーが使用され、かつ種々の方法で現像されうる静電帯電画像が作製されることである。
【0102】
とりわけ有利なのは、LEP(液体静電印刷法)またはインディゴ印刷法と呼ばれる静電印刷法である。
【0103】
この印刷法の重要な特徴は、室温(20℃)で液体として存在するかまたは粘着性ペーストとして存在する液体トナーの使用である。
【0104】
トナーが基材上で定着される温度は、他の静電法と比べて比較的低く、例えば40〜100℃である。
【0105】
印刷されるべき基材は、例えば紙またはポリマーフィルムであってよい。
【0106】
有利なのは未塗工の紙、つまり、紙用塗工液(Papierstreichmasse)でコーティングされていない原紙であるが、しかしながら液体トナーの付着力を改善するために他の紙質もそれにより処理してよい。
【0107】
殊に、印刷されるべき基材は上質紙(holzfreies Papier)であってもよい。
【0108】
印刷されるべき基材は該組成物で前処理、殊にコーティングされている(上記を参照のこと)。その際、有利には該組成物の量は、0.05g/m〜15g/m(固体)、有利には0.1g/m〜5g/m(固体)である。
【0109】
前処理された基材の使用によって、通常の印刷法の場合に、殊にしかし静電法の場合に、かつ有利にはLEP法の場合に極めて優れた結果が得られる。基材上でのトナーの付着は非常に良好であり、かつ印刷画像は高品質である。
【0110】
実施例:
実施例1:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジエタノールアミン(DEA)とからのポリウレア−ポリウレタン
ジメチルアセトアミド(DMAc)672g中に溶解したHDI672gを、窒素ブランケット下で装入し、かつ0℃に冷却した。この温度にて、良好な攪拌下でDMAc422g中のジエタノールアミン422gからの溶液を120分内に添加した。添加後、反応溶液を50℃に加熱し、かつNCO含量の減少を滴定法により調べた。3.4質量%のNCO含量に達した際に20℃に冷却し、もう一度、DMAc162g中に溶解したジエタノールアミン162gを添加し、かつ30分のあいだ後攪拌した。引き続き、回転蒸発器により真空中で反応溶液から溶剤を除去した。このポリマーを、検出器としての屈折計を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって分析した。移動相としてジメチルアセトアミドを用い、分子量を測定するための標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。分子量測定により、2550DaのMnおよび4200DaのMwとが明らかになった。
【0111】
実施例2:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジイソプロパノールアミン(DIIPA)とからのポリウレア−ポリウレタン
乾燥テトラヒドロフラン(THF)672g中に溶解したHDI672gを、窒素ブランケット下で装入し、かつ0℃に冷却した。この温度にて、良好な攪拌下でTHF532g中のDIIPA532gからの溶液を60分内に添加した。添加後、反応混合物を50℃に加熱し、かつNCO含量の減少を滴定法により調べた。2.2質量%のNCO含量に達した際に20℃に冷却し、もう一度、THF180g中に溶解したDIIPA180gを添加し、かつ30分のあいだ後攪拌した。引き続き、回転蒸発器により真空中で反応溶液から溶剤を除去した。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分析を、実施例1で記載したように行った。データは、Mn=1250Da、Mw=2600Daであった。
【0112】
実施例3:ウレアとジエチレントリアミンとからのポリウレア
ジエチレントリアミン103gと炭酸カリウム1.4gとを、攪拌機、還流冷却器および内部温度計を備え付けた三つ口フラスコ内に装入し、かつ150℃に加熱した。次いでこの温度にて、同様に150℃に加熱したウレア60gを、加熱可能な供給容器から30分以内に添加した。ガス発生は、供給開始後すぐに始まった。供給した後、反応混合物をさらに6時間のあいだ150℃にて攪拌し、その後、室温に冷却した。
【0113】
このポリウレアを、検出器としての屈折計を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって分析した。移動相としてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、分子量を測定するための標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。分子量測定により、1800DaのMnおよび2400DaのMwとが明らかになった。
【0114】
実施例4:炭酸ジエチルとトリス(アミノエチル)アミンとからのポリウレア
トリス(アミノエチル)アミン450g、炭酸ジエチル363.9gおよびジブチルスズジラウレート0.2gとを、攪拌機、還流冷却器および内部温度計を備え付けた三つ口フラスコ内に装入し、かつこの混合物を140℃に加熱した。反応継続時間の進行に伴って、その際、反応混合物の内部温度は、遊離したエタノールの蒸発冷却が始まることによって結果的に約110〜120℃に減少した。還流下で4hの反応継続時間後、還流冷却器を下降冷却器と交換し、エタノールを留去し、かつ温度をゆっくりと170℃にまで高めた。エタノール発生の終了後、反応混合物を室温に冷却した。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定を、実施例3で記載したように行った。それにより7300DaのMnおよび31500DaのMwとが明らかになった。
【0115】
デンプン/ポリマー−混合物の施与:
酸で分解したバレイショデンプンを、製造元の指示に従って、水中で20%の濃度で95℃に30分間加熱した。引き続き、このデンプン溶液を10%の固体含有率に希釈し、かつ約60℃に冷却した。このデンプン溶液ならびに実施例の中で記載したポリマーから調製物を製造し、その際、出来上がった調製物の固体含有率を10%に調整した。これらの混合物を、サイズプレスによって上質紙(坪量90g/m)に施与した。引き続き、紙を接触乾燥方式によって90℃にて乾燥し、次いで24hのあいだ50%の相対湿度および24℃の温度にて温度調節した。次いで、紙をカレンダー仕上げした(1nip、100daN/cm)。
【0116】
印刷試験を、Hewlett−Packard Indigo Digital printing maschine 3000により実施した。トナー付着性テストを、テープ引張り法(tape pull Methode)(DIN V EN V 12283)に従って3M ♯230 接着テープを用いて実施した。そのために、該接着テープを気泡が含まれることなく印刷面に貼り付け、次いで一定速度でほぼ180゜の角度において剥がした。ピック試験(Rupftest)により、印刷のインク濃度を濃度計によって測定し、かつ数値を結果表に記した。ピック試験に従ったトナーの付着力もしくはインク濃度の測定を、一定の時間間隔後(即時に/1分/10分/1時間/24時間)に行った。
【0117】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の印刷法において、前記基材を、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアまたはそれらの混合物を含有する組成物で前処理することを特徴とする、基材の印刷法。
【請求項2】
少なくとも部分的に分岐したポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアまたはそれらからの混合物を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアが、イソシアネート基、ウレタン基、ウレア基またはカーボネート基(以下で省略して基と記載)と、前記のそれぞれの基と反応性である官能基(以下で省略して"反応性基")との反応によって得られ、その際、反応に際して使用される化合物が、基のみを含有する化合物(化合物A)、反応性基のみを含有する化合物(化合物B)または基および反応性基を含有する化合物(化合物C)から選択されており、かつ基および反応性基からの合計の少なくとも1モル%、有利には少なくとも5モル%が、少なくとも三価の化合物A)、B)またはC)の構成成分であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
高分岐または樹枝状ポリウレタン、樹枝状ポリウレアウレタンまたは樹枝状ポリウレアを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアの他にデンプンも含有してよいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレアおよびデンプンの合計100質量部に対して、ポリウレタン、ポリウレアウレタンまたはポリウレア10〜100質量部およびデンプン0〜90質量部を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が水溶液または分散液であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
印刷法が電子写真法であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
印刷法がLEP法(液体電子写真印刷)であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
印刷されるべき基材が紙またはポリマーフィルムであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
印刷されるべき基材が未塗工の紙であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
印刷されるべき基材が上質紙であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
基材を前記組成物でコーティングするかまたは含浸することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
基材を、前記組成物(固体)の0.05g/m〜15g/mで、有利には0.1g/m〜5g/mでコーティングするかまたは含浸することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法によって得られる印刷された基材。

【公表番号】特表2009−530678(P2009−530678A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500820(P2009−500820)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052334
【国際公開番号】WO2007/107478
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】