説明

分岐状疎水性鎖を含むアクリル増粘剤の使用によるコーティングスリップの製造方法、および得られるスリップ

本発明は、鉱物材料を含有する紙用コーティングスリップを製造する方法であって、該スリップを増粘するための剤として、少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、14〜21個の炭素原子を含み、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を含む、飽和または不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリール鎖の末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーとを含む水溶性ポリマーを使用する、方法を含む。当該ポリマーは、コーティングスリップに直接添加されるか、または水中において鉱物材料を粉砕、分散、もしくは濃縮する前工程の際に添加され、その後に乾燥工程を行っても行わなくてもよい。このようにして、当該スリップの水分保持が改善され、このことが、当該スリップによって塗工される紙のより良好な印刷特性に貢献する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
塗工紙シートを製造する場合、第一の工程は、製紙機械によってパルプを未塗工紙シートに変換する工程から成る。パルプは、天然セルロースもしくは合成繊維、水、および1種類以上の鉱物材料、例えば炭酸カルシウムなど、ならびに他の様々な添加剤、例えば、いわゆる「固着」剤など、を本質的に含有する。このような場合、鉱物材料(例えば、炭酸カルシウムなど)の使用は、「充填剤」の使用と呼ばれる。
【0002】
第二の工程は、前述において得られたシートに塗工する工程から成る。この操作は、特に、水、炭酸カルシウムなどの1種類以上の鉱物材料、1種類以上のバインダー、および様々な添加剤を含有する、「コーティングスリップ」として公知の水性化合物を、原紙表面に堆積させる工程から成る。コーティングスリップを製造する場合、鉱物材料(例えば炭酸カルシウムなど)の使用は、「塗工顔料」と呼ばれる。
【0003】
原紙上に堆積させた後、コーティングスリップは、元来、スリップ中に含有される水および水溶性物質もしくは懸濁物質を原紙へ移行させる傾向を有している。したがって、堆積したコーティングスリップの厚さにおける水溶性物質もしくは懸濁物質の均一分散を維持する観点から、原紙へのこの浸透を遅くすることが望ましく、そうすることにより、紙の最終的な表面状態および印刷適性が改善される。
【0004】
コーティングスリップの紙への浸透を遅くするには、コーティングスリップと紙シートのどちらに着目するかにより2つの方法が存在する。
【0005】
第一の方法は、有孔率を減少させるか、または疎水性度を増加させることによって、原紙の吸収特性を変更することから成る。このために、紙シートを製造するときに、「スリップ浸透防止剤」として知られている特殊な剤、例えば親水性樹脂(特開平06−219038号(特許文献1))など、疎水性「固着」剤、例えば硫酸アルミニウムを含有する樹脂(国際公開公報第96/23105号(特許文献2))など、または充填剤として紙シートに使用される炭酸カルシウムの表面を疎水性にする「処理」剤も使用することが可能であり、そのような剤としては、例えば、C16〜C18脂肪酸(米国特許第5,514,212号(特許文献3))、またはアクリレート−アクリロニトリル−ベースのおよびスチレン−ベースの疎水性ポリマー(国際公開公報第01/86067号(特許文献4))が挙げられる。
【0006】
現時点ではまだ公開されていないが、第0608927号として出願された仏国特許出願(特許文献5)も注目すべきであり、当該出願には、充填剤としての炭酸カルシウムを、本発明の対象であるポリマーと共に分散および/または粉砕させた水性懸濁液の使用について記載されている。したがって、この出願は、コーティングスリップの配合組成それ自体には関係せず、ならびに本発明のポリマーのスリップの増粘剤としての驚くべき効果についても記載されていない。しかしながら、当該出願は、ポリマーと充填剤として使用された炭酸カルシウムとを併用することにより、紙シートの疎水度を増加させ、それによってスリップの紙シートへの浸透を遅くすることを可能にするという、当該ポリマーの驚くべき挙動を明らかにしている。
【0007】
一方、本発明は、スリップの粘度を増加させることによってその浸透を遅くしようとする溶液の部類に当てはまる。この方法においてスリップの粘度が増加する場合、紙シートへの浸透、すなわち、水および水溶性物質の紙シートへの浸透が遅くなり、したがって、これは、「水分保持」の向上と呼ばれる。
【0008】
この点に関して、デンプン、ポリビニルアルコール(PVOH)、カルボキシメチルセルロースベースのポリマー(CMC)、ラテックス、および高度にカルボキシル化されたポリマーエマルション、ポリアクリレートなどのポリカルボキシレート、またはアルカリ中で膨潤する特殊な種類のポリマーを、コーティングスリップの水分保持剤/増粘剤として使用することができることは広く公知である。これらの生成物は、特に欧州特許第0509878号(特許文献6)において、アルカリ中で膨潤するポリマーに関連する発明の対象として、ならびに上記において言及した他のポリマーの最優良事例として、記載されている。
【0009】
実用的見地から、当業者は、とりわけアクリル性増粘剤(例えば、COATEX(商標)社によって販売されているRheocoat(商標)35またはBASF(商標)社によって販売されているSterocoll(商標))、およびセルロース剤(例えば、BASF(商標)社によって販売されているFinnfix(商標))を使用する。しかしながら、セルロース増粘剤は、粉末として存在するという欠点を有しており、このことは、施設における汚染問題(それらの粉末としての性質から)ならびに取り扱い上の問題(チューブを通して粉末を輸送することが困難である)の原因となり、一般的に、水溶液中に置かれなければならず、このことは、さらなる工程における混合機に関係してくる。したがって、当業者は、アクリルポリマーを使用することを好むが、その一方で、塗料配合組成中におけるこれらアクリルポリマーの量を引き下げることを目的とする国際公開公報第2006/081501号(特許文献7)および欧州特許第0839956号(特許文献8)に示されるように、ますます厳しくなる環境保護規制も意識している。
【0010】
この後者の規制は、明らかに、コーティングスリップ中の以下のすべてのアクリルポリマーに当てはまる:
−上記において言及された、スリップの製造時に添加されるアクリル性増粘剤、
−水媒体中における炭酸カルシウムの分散、粉砕、添加、または濃縮工程の際に使用され、必要に応じて、続いて乾燥工程が行われ、結果として得られる懸濁液、分散液、または乾燥物がコーティングスリップの製造において使用される、アクリルタイプの分散剤および粉砕助剤。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−219038号
【特許文献2】国際公開公報第96/23105号
【特許文献3】米国特許第5,514,212号
【特許文献4】国際公開公報第01/86067号
【特許文献5】仏国特許出願第0608927号
【特許文献6】欧州特許第0509878号
【特許文献7】国際公開公報第2006/081501号
【特許文献8】欧州特許第0839956号
【発明の概要】
【0012】
したがって、本願において対処される技術的問題は、
−当該コーティングスリップで塗工された塗工紙シート中へのスリップの浸透を遅くする溶液を見出すこと
−粉末形態のセルロース増粘剤よりも好ましいアクリルポリマーの使用
−鉱物材料の水性懸濁液の製造、次いで、得られた懸濁液または分散液または乾燥鉱物材料からのスリップの製造の両方を含む、スリップ製造手法全体において使用されるアクリルポリマー(増粘剤、分散剤、粉砕助剤)の総量を減じる必要性
であると考えられる。
【0013】
紙シート中へのスリップの浸透を遅くすることは、スリップの粘度の増加およびより良好な水分保持の結果として達成されると考えられる。最終的に、それによって、塗工紙シートの印刷適性の特性の向上が達成されると考えられる。
【0014】
このために、出願人は、
−コーティングスリップを増粘する剤として、
(a)少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)14〜21個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖の末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
から成る水溶性ポリマーの使用、ならびに
−当該ポリマーが、スリップへの直接添加によって使用されるか、ならびに/または水中での鉱物材料の分散および/もしくは粉砕および/もしくは濃縮工程中に使用され、必要に応じて、続いて乾燥工程が行われること
を特徴とする、少なくとも1種類の鉱物材料を含有する製紙用コーティングスリップの製造方法を開発した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「直接添加」は、既に鉱物材料を含有するコーティングスリップ中に、ポリマーを直接添加することを意味する。他の添加手段では、鉱物材料は、ポリマーの存在下において、最初に水中において分散および/または粉砕および/または濃縮され、必要に応じてその後に乾燥工程が行われ、次いで、得られた懸濁液または水性分散液または乾燥材料が、コーティングスリップの製造において使用される。
【0016】
これらのそれぞれの方法において、本発明の対象であるポリマーを含有しない同じスリップと比較して、使用されるアクリルポリマー(分散剤、粉砕助剤、および増粘剤)の量全体における減少が達成され、ならびに増粘および水分保持に関して、同等またはさらに改善された性能が達成される。
【0017】
結果として得られたコーティングスリップは、従来技術を使用して製造された、当該ポリマーを含有しないものと比較して、
−従来法を用いて製造されたスリップに含有される量に等しい重量のアクリルポリマー(分散剤、粉砕助剤、および増粘剤)を含有しつつ、より優れた増粘効果(25℃で毎分10回転および100回転でのBrookfield(商標)粘度)およびより良好な水分保持を有するか、または
−従来法を用いて製造されたスリップ中の量より少ない重量のアクリルポリマー(分散剤、粉砕助剤、および増粘剤)を含有しつつ、増粘効果(25℃で毎分10回転および100回転のBrookfield(商標)粘度)および同等の水分保持を示す。
【0018】
さらに、最終的なスリップにおいて改善された特性が得られることに加えて、当該ポリマーはさらに、鉱物材料の分散液および水性懸濁液を達成することを可能にし(水性媒体中における分散、粉砕、添加、または濃縮工程の際に添加された場合)、これは、当業者にとってまったく許容可能であり、すなわち、ポンプ輸送および取り扱いに特に適している。詳細には、25℃で1,000mPa.s.より低いBrookfield(商標)粘度の分散液および水懸濁液が得られる。
【0019】
そのような結果を説明するために、任意の特定の理論に束縛されるわけではないが、本発明のポリマーは、疎水性のR’基とコーティングスリップ中に含有されるラテックスとの間の結合相互作用を介することにより、水中において鉱物材料を安定化、分散、および粉砕する特性と、さらにラテックスの存在下での増粘効果との両方を発現し得ると本出願人は考える。そのような相互作用が、本発明のこのポリマーによって引き起こされた増粘効果の原因であると考えられる。
【0020】
式(I)のモノマーおよび疎水性のR’側鎖を有するアクリル酸のポリマーは、R’側鎖の長さを幅広く変更したものが既に当業者には公知であるが、今までに増粘効果は得られていないため、この後者の結果は、特に驚くべきことである。これは、これらすべてのポリマーが、鉱物充填剤の分散剤として説明されているためであり、したがって、この分散メカニズムは、剪断減粘性現象(shear thinning phenomenon)に関係しており、この場合の当業者によって求められている増粘効果には関係していない。
【0021】
欧州特許第1294476号には、このように、アクリル酸などのアニオン性モノマーと式−(I)のモノマーとによるポリマーについて記載されており、この場合、R’は、1〜5個の炭素原子を有する弱い疎水性基を示しており、これらのポリマーは、特に良好な炭酸カルシウム分散剤として挙動する。
【0022】
欧州特許第1565504号には、アクリル酸と式−(I)のモノマーとによるコポリマーについて記載されており、この場合、R’は、1〜40個の非常に広範囲の炭素原子を有しており、これらのポリマーは、コーティングスリップの光学的光沢を向上させ、炭酸カルシウムの分散工程を介してそれらに添加され得る。欧州特許第1569970号および欧州特許第1572764号には、同じ化学構造であるが、それぞれ塗工紙シートの粉砕助剤および光沢改良剤としての使用について記載されている。
【0023】
国際公開公報第2007/069037号では、アクリル酸と、R’が1〜40個の炭素原子を有するが、好ましくはメチル基である式−(I)のモノマーとによるポリマーが、コーティングスリップの粘度を比較的低いままに維持しつつ、コーティングスリップの水分保持における持続的改良を可能にするということが開示されている。
【0024】
最後に、欧州特許第0892020号および欧州特許第0892111号では、少なくとも22個の炭素原子を有する疎水性基のR’の特定の選択により、アクリル酸と式−(I)のモノマーとによるポリマーが、吸水性鉱物材料(炭酸カルシウム)および疎水性鉱物材料(タルク)の両方の水中における効果的な分散もしくは粉砕を可能にすることが教示されている。
【0025】
その結果として、既に、従来技術において、R’基に対する多数の可能性が考えられ、それぞれが、明らかに、分散剤ポリマー、粉砕助剤、または光沢および光学的光沢を向上させるものを生じる結果となっているが、紙用コーティングスリップ増粘剤にはつながらなかった。出願人の指摘した長所の1つは、第一に、異なるR’基の選択が、結果として増粘効果を生じることにつながるだろうということである。
【0026】
別の長所は、14〜21個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、分岐した疎水性鎖の非常に特定の選択により、そのようなR’基を同定する方法を本出願人が見出したということである。そのような選択を明らかにしたものも、または提案したものも無く、そのような選択によってそのように顕著な技術的効果が得られることを示唆したものも無く、コーティングスリップ中のアクリルポリマーの量を減らすことにより、従来法と同等の増粘性能が得られる。
【0027】
さらに、本発明の第一の目的は、少なくとも1種類の鉱物材料を含有する紙用コーティングスリップを製造する手順から成り、
−スリップのための増粘剤として、
(a)少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれ少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する、少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含む水溶性ポリマーを使用し、かつ
−当該ポリマーが、スリップへの直接添加によって使用され、ならびに/または水中での鉱物材料の分散および/もしくは粉砕および/もしくは濃縮工程中に使用され、必要に応じてその後に乾燥工程が行われる
ことを特徴とする。
【0028】
この方法は、さらに、当該ポリマーが、各モノマーを重量パーセントとして表現した場合(これらのパーセントの合計は100%に等しい)、
(a)5%〜95%、好ましくは50%〜95%、理想的には70%〜95%の、少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、理想的に5%〜30%の、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含むことによっても特徴付けられる。
【0029】
この方法はさらに、モノマー(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択されることによっても特徴付けられる。
【0030】
この方法は、さらに、モノマー(b)が式−(I)のモノマーであることによっても特徴付けられる:

式中、
−m、n、p、およびqは整数であり、ならびにm、n、pは150未満であり、qは0より大きく、m、n、およびpのうちの少なくとも1つの整数はゼロではなく、
−Rは、重合性不飽和官能基を有する基であり、好ましくはビニル基に属し、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、およびビニルフタル酸エステル基に属し、ならびにアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α−α’ジメチルイソプロペニル−ベンジルウレタン、アリルウレタンを含む不飽和ウレタン基に属し、ならびに置換もしくは非置換のアリルエステルもしくはビニルエステルの基に属し、またはエチレン−不飽和アミドもしくはイミド基に属する基であり、
−R1およびR2は、同一であり、かつ水素原子またはアルキル基を表し、
−R’は、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖を表し、理想的には、R’は、2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル1−ドデカニル、およびそれらの混合物から選択される。
【0031】
この方法はさらに、当該水溶性ポリマーが、一価または多価の官能性を有する1種類以上の、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される中和剤によって部分的にまたは完全に中和されることによっても特徴付けられる。
【0032】
この方法は、さらに、当該鉱物材料が、天然もしくは合成の炭酸カルシウム、カオリン、タルク、またはそれらの混合物から選択されること、好ましくは天然もしくは合成の炭酸カルシウムもしくはカオリンまたはそれらの混合物であること、理想的には天然の炭酸カルシウムおよびカオリンの混合物であることを特徴とする。
【0033】
当該方法は、さらに、鉱物材料の乾燥重量に対して、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、好ましくは0.2乾燥重量%〜0.8乾燥重量%のポリマーを使用することを特徴とする。
【0034】
本発明の第二の目的は、少なくとも1種類の鉱物材料を含有する紙用コーティングスリップから成り、ならびに、当該コーティングスリップが、増粘剤として、
(a)少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する、少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含む水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0035】
このコーティングスリップは、さらに、当該ポリマーが、各モノマーを重量パーセントで表現した場合(これらのパーセントの合計は100%に等しい)、
(a)5%〜95%、好ましくは50%〜95%、理想的には70%〜95%の、少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、理想的に5%〜30%の、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含むことを特徴とする。
【0036】
このコーティングスリップはさらに、モノマー(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする。
【0037】
このコーティングスリップはさらに、モノマー(b)が式−(I)のモノマーであることを特徴とする:

式中、
−m、n、p、およびqは整数であり、ならびにm、n、およびpは150未満であり、qは0より大きく、ならびにm、n、およびpのうちの少なくとも1つの整数はゼロではなく、
−Rは、重合性不飽和官能基を含有する基を表し、好ましくはビニル基に属し、ならびに、アクリル酸、メタクリル酸、および、マレイン酸エステル基に属し、ならびにアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α−α’ジメチル−イソプロペニル−ベンジルウレタン、アリルウレタンを含む不飽和ウレタン基に属し、ならびに置換もしくは非置換のアリルもしくはビニルエステル基に属し、またはエチレン−不飽和アミドもしくはイミド基に属し、
−R1およびR2は、同一であり、かつ水素原子またはアルキル基を表し、
−R’は、14〜24個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖を表し、理想的には、R’は、2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル1−ドデカニル、およびそれらの混合物から選択される。
【0038】
このコーティングスリップは、さらに、水溶性ポリマーが、一価または多価の官能性を有する1種類以上の、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される中和剤によって部分的にまたは完全に中和されていることを特徴とする。
【0039】
このコーティングスリップは、さらに、当該鉱物材料が、天然もしくは合成の炭酸カルシウム、カオリン、タルク、およびそれらの混合物から選択されること、好ましくは天然もしくは合成の炭酸カルシウムもしくはカオリンあるいはそれらの混合物であること、理想的には天然の炭酸カルシウムおよびカオリンの混合物であることを特徴とする。
【0040】
このコーティングスリップは、さらに、鉱物材料の乾燥重量に対して、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、好ましくは0.2乾燥重量%〜0.8乾燥重量%のポリマーを含有することを特徴とする。
【実施例】
【0041】
実施例1
この試験は、本発明のプロセスを説明するものであり、本発明のポリマーを、炭酸カルシウムの水性懸濁液中で添加または粉砕工程の際に使用する。次に、これらの懸濁液は、本発明の対象であるポリマーを用いずに従来法により炭酸カルシウムの水性懸濁液から製造されたコーティングスリップと比較して、向上した水分保持性および増粘性を有するコーティングスリップの製造において使用され、この場合、両方のスリップは、最終的に同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液に添加された分散剤または粉砕助剤と、スリップに添加された増粘剤)を有する。
【0042】
試験No.1
この試験は、従来法を説明するものであり、OMYA(商標)社によってSetacarb(商標)MEの名称で販売されている炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)から作製された水性懸濁液に、
−70モル重量%のカルボン酸部位がナトリウムによって中和され、30モル重量%のカルボン酸部位が石灰によって中和されており、かつ
−分子量が、5,500g/モル(国際公開公報第2007/069037号に記載の方法を用いて特定した)に等しい
アクリル酸ホモポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.2乾燥重量%添加することによって使用する。
【0043】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の74.2%に等しく、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、水性懸濁液が得られる。
【0044】
試験No.1a
この試験は、本発明を説明するものであり、OMYA(商標)社によってSetacarb(商標)MEの名称で販売されている炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)から作製された水性懸濁液に、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)のモノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖状疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.2乾燥重量%添加することによって使用する。
【0045】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の74.1%に等しく、毎分100回転で測定したそのBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、試験No.1において得られたのと同様の水性懸濁液が得られる。
【0046】
試験No.2
この試験は、従来技術を説明するものであり、OMYA(商標)社によってH90(商標)MEの名称で販売されている炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)から作製された水性懸濁液に、
−70モル重量%のカルボン酸部位がナトリウムによって中和され、30重量%のカルボン酸部位が石灰によって中和されており、かつ
−分子量が、5,500g/モル(国際公開公報第2007/069037号に記載の方法を用いて特定した)に等しい
アクリル酸ホモポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.2乾燥重量%添加することによって使用する。
【0047】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の77.1%に等しく、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、取り扱いが困難で特にポンプ輸送が困難である15,00mPa.sを上回る、水性懸濁液が得られる。
【0048】
試験No.2a
この試験は、本発明を説明するものであり、OMYA(商標)社によってH90(商標)MEの名称で販売されている炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)から作製された水性懸濁液に、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)のモノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖状疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.2乾燥重量%添加することによって使用する。
【0049】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の77.4%に等しい、試験No.2において得られたのと同様の水性懸濁液が得られる。しかしながら、毎分100回転で測定したそのBrookfield(商標)粘度は、試験No.2において得られた懸濁液とは異なり、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である。
【0050】
試験No.3
この試験は、従来技術を説明するものであり、粒子の50重量%がこの値より大きい直径を有する、直径が6.7μmである炭酸カルシウム(フランス産のカルサイト)を粉砕する工程の際、
−70モル重量%のカルボン酸部位がナトリウムによって中和され、30モル重量%のカルボン酸部位が石灰によって中和されており、かつ
−分子量が、5,500g/モル(国際公開公報第2007/069037号に記載の方法を用いて特定した)に等しい
アクリル酸のホモポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して1乾燥重量%使用する。
【0051】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の71.7%に等しく、粒子の58.9重量%および88.5重量%が、それぞれ1μm未満および2μm未満であり、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、水性懸濁液が得られる。
【0052】
試験No.3a
この試験は、本発明を説明するものであり、粒子の50重量%がこの値より大きい直径を有する、直径が6.7μmである炭酸カルシウム(フランス産のカルサイト)の粉砕工程中、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)モノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して1乾燥重量%使用する。
【0053】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の71.4%に等しく、粒子の57.8重量%および87.4重量%が、それぞれ1μm未満および2μm未満であり、さらに、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、試験No.3で得られたのと同様の水性懸濁液が得られる。
【0054】
試験No.3および3aでは、国際公開公報第01/96007号に記載の方法を用いて、粉砕を実施する。
【0055】
試験No.1〜3aのそれぞれについて、次に、
−100乾燥重量部の試験されるべき炭酸カルシウムの水性懸濁液
−炭酸カルシウム各100乾燥重量部あたり、11乾燥重量部の、DOW(商標) CHEMICALS社によってDL966という名称で販売されているスチレン−ブタジエンラテックス
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、0.25乾燥重量部のポリビニルアルコール
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、0.6乾燥重量部の、CLARIANT(商標)社によってBlancophor(商標) Pという名称で販売されている光学的光沢剤
−0.4乾燥重量部の、COATEX(商標)社によってRheocarb(商標)という名称で販売されているアクリル性増粘剤/水分保持剤
を含む紙用コーティングスリップを作製した。
【0056】
次に、試験1〜3aで得られた各スリップに対して、25℃で毎分10回転および100回転におけるBrookfield(商標)粘度、ならびにそれらの水分保持を測定する。この測定は、GRADEK(商標)社によって販売されているAAGWR装置を使用して測定する。当該装置は、測定チャンバを具備しており、「試験吸取紙(Test Blotter Paper)」と呼ばれる試験用紙を中に入れ、「試験フィルターPCTE(Test Filter PCTE)」と呼ばれる多孔性のプラスチックシートで覆う。なお、当該試験用紙およびシートはGRADEK(商標)社によって販売されている。
【0057】
次いで、10mlの試験されるべきコーティングスリップを前記チャンバに入れる。
【0058】
AAGWR装置は、ある特定の圧力をコーティングスリップに印加し、それによって、当該スリップに含有される水および水溶性物質の全部または一部を、多孔性のプラスチックシートを通して、試験紙に浸透させる。
【0059】
実際には、0.5barの圧力を90秒間印加する。
【0060】
実験前と実験後の試験紙の重量の差は、実験の際に試験紙に浸透した、スリップ内に含有された水および水溶性物質の重量を示す。
【0061】
試験No.1〜3aのすべての結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
これらの知見を対で比較すると、本発明を使用した際のBrookfield(商標)粘度の方が、常により高いことがわかり、これは、最初の懸濁液が対応する試験No.2よりもよりいっそう流動性である試験No.2aにおいて、さらに顕著である。
【0064】
同様に、水分保持は、本発明を使用する場合に常にかなり低く、このことは、当該コーティングスリップが、あまり原紙に浸透していないことを意味する。したがって、得られた紙の印刷適性は、より良好であろうし、ならびにこれは、実際に使用されるのと同じアクリルポリマー(水性分散液を製造する際の分散剤もしくは粉砕剤、およびコーティングスリップを製造する際の増粘剤)の等量に対しても当てはまるであろう。
【0065】
実施例2
この試験は、本発明の方法を説明するものであり、分散または濃縮工程の際に、新規に発明されたポリマーを炭酸カルシウムの水性懸濁液中で使用する。次に、これらの懸濁液は、新規に発明されたポリマーを用いずに従来法により炭酸カルシウムの水性懸濁液から製造されるコーティングスリップと比較して、向上した水分保持および増粘効果を有するコーティングスリップの製造に使用され、この場合、両方のスリップは、最終的に同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液に添加された分散剤または粉砕助剤と、スリップに添加された増粘剤)を有する。
【0066】
試験No.4
この試験は、従来技術を説明するものであり、粉砕助剤を使用せずに粉砕された、粒子の60乾燥重量%が1μm未満の中位径を有する炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)のケーキを水に分散させるために、
ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
−分子量が15,600g/モルに等しい(国際公開公報第2007 / 069037号に記載されている方法を用いて測定)
アクリル酸と無水マレイン酸(70:30の質量比において)とによるコポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.4乾燥重量%使用する。
【0067】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の67.4%に等しく、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、水性懸濁液が得られる。
【0068】
試験No.4a
この試験は、本発明を説明するものであり、炭酸カルシウム(ノルウェー産の大理石)を水に分散させるために、
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)のモノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖状疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.4乾燥重量%使用する。
【0069】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の67.0%に等しく、毎分100回転で測定したそのBrookfield(商標)粘度が、これによりユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、試験No.4において得られたのと同様の水性懸濁液が得られる。
【0070】
試験No.5
この試験は、従来技術を説明するものであり、20%の最初の乾燥採取物を有する炭酸カルシウム(フィンランド産の大理石)の水性懸濁液の濃縮工程の際、
−ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
−分子量が15,600g/モルに等しい(国際公開公報第2007/069037号に記載されている方法を用いて測定)、
アクリル酸と無水マレイン酸(70:30の質量)とによるコポリマーを、炭酸塩に対して0.8乾燥重量%使用する。
【0071】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の71.5%に等しく、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、水性懸濁液が得られる。
【0072】
試験No.5a
この試験は、本発明を説明するものであり、20%の最初の乾燥採取物を有する炭酸カルシウム(フィンランド産の大理石)の水性懸濁液を濃縮する工程の際、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)のモノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖状疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩に対して0.8乾燥重量%使用する。
【0073】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の71.4%に等しい、試験No.2において得られたのと同様の水性懸濁液が得られる。しかしながら、毎分100回転で測定したそのBrookfield(商標)粘度は、試験No.2において得られた懸濁液とは異なり、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である。試験No.5および5aでは、濃縮は、当業者に周知の方法を用い、EPCOM(商標)社によって販売されている加熱型濃縮装置を使用して実施される。
【0074】
次に、試験No.4および5のそれぞれに対して、
−70乾燥重量部の、試験されるべき炭酸カルシウムの水性懸濁液、
−30乾燥重量部の、HUBER(商標)社によってHydragloss(商標)90という名称で販売されている粉末状カオリン、
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、11乾燥重量部の、DOW(商標)CHEMICALS社によってDL966という名称で販売されているスチレン−ブタジエンラテックス、
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、1乾燥重量部のポリビニルアルコール、
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、1乾燥重量部の、CLARIANT(商標)社によってBlancophor(商標)Pという名称で販売されている光学的光沢剤、
−0.8乾燥重量部の、COATEX(商標)社によってRheocarb(商標)という名称で販売されているアクリル性増粘剤/水分保持剤
を含む紙用コーティングスリップを作製した。
【0075】
次に、試験No.4〜5aで得られた各スリップに対して、25℃で毎分10回転および100回転におけるBrookfield(商標)粘度、ならびにそれらの水分保持を測定した。
【0076】
得られたすべての結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
これらの知見を対で比較すると、本発明を使用した際のBrookfield(商標)粘度の方が常により高く、ならびに水分保持は、本発明による方がかなり低いことがわかり、このことは、当該コーティングスリップが、それほど原紙に浸透しなかったことを意味する。したがって、結果として得られる紙の印刷適性は改善されていると考えられ、かつこれは、従来法において使用されるのと同じアクリルポリマー(水性分散液を製造する際の分散剤もしくは粉砕剤、およびコーティングスリップを製造する際の増粘剤)の等量に対しても当てはまると考えられる。
【0079】
実施例3
この試験は、本発明を用いる方法を説明するものであり、本発明のポリマーは、炭酸カルシウムの水性懸濁液において粉砕工程の際に使用される。次に、これらの懸濁液は、新規に発明されたポリマーを用いずに従来法により炭酸カルシウムの水性懸濁液から製造されたコーティングスリップと比較して、向上した水分保持性および増粘性を有するコーティングスリップの製造において使用され、この場合、両方のスリップは、最終的に同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液に添加された分散剤または粉砕助剤と、スリップに添加された増粘剤)を有する。
【0080】
試験No.6
この試験は、従来技術を説明するものであり、粒子の50重量%が2.4μmより大きな直径を有する炭酸カルシウム(フランス産の白亜)を水中で粉砕するために、
−70モル重量%のカルボン酸部位がナトリウムによって中和され、30重量%のカルボン酸部位が石灰によって中和され、かつ
−分子量が、5,500g/モル(国際公開公報第2007/069037号に記載の方法を用いて特定した)に等しい
アクリル酸のホモポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.45乾燥重量%使用する。
【0081】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の73.9%に等しく、粒子の39.6重量%および76.7重量%が、それぞれ1μm未満および2μm未満であり、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、水性懸濁液が得られる。
【0082】
試験No.6a
この試験は、本発明を説明するものであり、粒子の50重量%が2.4μmより大きな直径を有する炭酸カルシウム(フランス産の白亜)を水中で粉砕するために、
(a)75重量%のアクリル酸と、
(b)25重量%の、式−(I)のモノマーであって、
−Rがメタクリレート基を表し、
−R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する直鎖疎水性鎖を表し、
−m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して0.45乾燥重量%使用する。
【0083】
その結果、炭酸カルシウムの乾燥重量での含有量が、総重量の73.5%に等しく、粒子の37.8重量%および75.8重量%が、それぞれ1μm未満および2μm未満であり、毎分100回転で測定したBrookfield(商標)粘度が、ユーザーによる取り扱いを十分容易にする1,000mPa.s未満である、試験No.6において得られたものと同様の水性懸濁液が得られる。
【0084】
次に、試験No.6および6aの両方に対して、
−100乾燥重量部の、試験されるべき炭酸カルシウムの水性懸濁液、
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、8乾燥重量部の、DOW(商標)CHEMICALS社によってDL966という名称で販売されているスチレン−ブタジエンラテックス、
−4乾燥重量部の、ROQUETTE(商標)社によってAmilys(商標)という名称で販売されているデンプン、
−炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、1.5乾燥重量部の、CLARIANT(商標)社によってBlancophor(商標)Pという名称で販売されている光学的光沢剤、
−0.3乾燥重量部の、COATEX(商標)社によってRheocarb(商標)という名称で販売されているアクリル性増粘剤/水分保持剤
を含む紙用コーティングスリップを作製した。
【0085】
次に、試験No.6〜6aから得られた各スリップに対して、25℃で毎分10回転および100回転におけるBrookfield(商標)粘度、ならびにそれらの水分保持を測定する。得られた結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
これらの知見を比較すると、本発明が使用された際のBrookfield(商標)粘度の方が常により高く、ならびに水分保持は、本発明による方がかなり低いことがわかり、このことは、当該コーティングスリップが、それほど原紙に浸透していないことを意味する。したがって、結果として得られる紙の印刷適性は、良好であると考えられ、かつこれは、従来法において使用されるのと同じアクリルポリマー(水性分散液を製造する際の分散剤もしくは粉砕剤、およびコーティングスリップを製造する際の増粘剤)の等量に対しても当てはまると考えられる。
【0088】
実施例4
この試験は、炭酸カルシウムの水性懸濁液における粉砕工程の際の、本発明のポリマーの使用を説明するものである。次に、この懸濁液は、本発明のポリマーを用いずに従来技術により炭酸カルシウムの水性懸濁液から製造されたコーティングスリップと比較して、向上した水分保持および増粘性を有するコーティングスリップの製造において使用され、この場合、両方のスリップは、最終的に同じ量のアクリルポリマー(水性懸濁液に添加された分散剤または粉砕助剤と、スリップに添加された増粘剤)を有する。
【0089】
試験No.7
この試験は、従来法を説明するものであり、粒子の50重量%がこの値より大きい直径を有する、直径が6.7μmである炭酸カルシウム(フランス産のカルサイト)の粉砕工程中、
(c)70モル重量%のカルボン酸部位がナトリウムによって中和され、30モル重量%のカルボン酸部位が石灰によって中和されており、かつ
(d)分子量が、5,500g/モル(国際公開公報第2007/069037号に記載の方法を用いて特定した)に等しい
アクリル酸のホモポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して1乾燥重量%使用する。
【0090】
試験No.8
この試験は、本発明を説明するものであり、粒子の50重量%がこの値より大きい直径を有する、直径が6.7μmである炭酸カルシウム(フランス産のカルサイト)の粉砕工程の際、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)85重量%のアクリル酸と、
(b)15重量%の、式−(I)のモノマーであって、
1.Rがメタクリレート基を表し、
2.R’が、2−ヘキシル1−デカニルの16個の炭素原子を有する分岐状疎水性鎖を表し、
3.m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して1乾燥重量%使用する。
【0091】
試験No.9
この試験は、本発明を説明するものであり、粒子の50重量%がこの値より大きい直径を有する、直径が6.7μmである炭酸カルシウム(フランス産のカルサイト)の粉砕工程の際、ナトリウムによって完全に中和されており、かつ
(a)85重量%のアクリル酸と、
(b)15重量%の、式−(I)のモノマーであって、
4.Rがメタクリレート基を表し、
5.R’が、2−ヘキシル1−ドデカニルの20個の炭素原子を有する分岐状疎水性鎖を表し、
6.m=p=0、q=1、n=25
であるモノマーと
を含む水溶性ポリマーを、炭酸塩の乾燥重量に対して1乾燥重量%使用する。
【0092】
試験No.7〜9のそれぞれに対して、次に、
7.100乾燥重量部の試験されるべき炭酸カルシウムの水性懸濁液、
8.炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、11乾燥重量部の、DOW(商標)CHEMICALS社によってDL966という名称で販売されているスチレン−ブタジエンラテックス、
9.炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、0.25乾燥重量部のポリビニルアルコール、
10.炭酸カルシウム100乾燥重量部あたり、0.6乾燥重量部の、CLARIANT(商標)社によってBlancophor(商標)Pという名称で販売されている光学的光沢剤、
11.0.2乾燥重量部の、COATEX(商標)社によってRheocarb(商標)という名称で販売されているアクリル性増粘剤/水分保持剤
を含む紙用コーティングスリップを作製する。
【0093】
次に、試験No.7〜9から得られた各スリップに対して、25℃で毎分10回転および100回転におけるBrookfield(商標)粘度、ならびにそれらの水分保持を、上記において説明した方法を用いて測定する。対応する結果は表4に示す。
【0094】
これらの調査結果を比較すると、本発明を使用した場合のBrookfield(商標)粘度の方が常により高く、ならびに水分保持は、本発明による方がかなり低いことがわかり、このことは、当該コーティングスリップが、それほど原紙に浸透していないことを意味する。したがって、結果として得られた紙の印刷適性は、良好であると考えられ、かつこれは、従来法において使用されるのと同じアクリルポリマー(水性分散液を製造する際の粉砕剤、およびコーティングスリップを製造する際の増粘剤)の等量に対しても当てはまると考えられる。
【0095】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の鉱物材料を含有する紙用コーティングスリップを製造する方法であって、
−コーティングスリップを増粘するための剤として、
(a)少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する、少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含む水溶性ポリマーを使用し、かつ
−前記ポリマーが、スリップへの直接添加によって使用されるか、かつ/または水中での鉱物材料の分散および/もしくは粉砕および/もしくは濃縮工程において使用され、必要に応じてその後に乾燥工程が行われる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ポリマーが、各モノマーを重量パーセントとして表現した場合(これらのパーセントの合計は100%に等しい)、
(a)5モル重量%〜95モル重量%、好ましくは50モル重量%〜95モル重量%、理想的には70モル重量%〜95モル重量%の、少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、理想的に5%〜30%の、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノマー(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
モノマー(b)が、式−(I)のモノマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法:

式中、
−m、n、p、およびqは整数であり、かつm、n、pは150未満であり、qは0より大きく、m、n、およびpのうちの少なくとも1つの整数はゼロではなく、
−Rは、重合性不飽和官能基を含有する基を表し、好ましくはビニル基に属し、かつ、アクリル酸、メタクリル酸、および、マレイン酸エステル基に属し、かつアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α−α’ジメチル−イソプロペニル−ベンジルウレタン、アリルウレタンを含む不飽和ウレタン基にも属し、ならびに置換もしくは非置換のアリルもしくはビニルエステル基に属し、またはエチレン−不飽和アミドもしくはイミド基に属し、
−R1およびR2は、同一または異なっており、かつ水素原子またはアルキル基を表し、
−R’は、14〜24個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖を表し、理想的には、R’は、2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル1−ドデカニル、およびそれらの混合物から選択される。
【請求項5】
水溶性ポリマーが、一価または多価の官能性を有する1種類以上の、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される中和剤によって部分的にまたは完全に中和されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
鉱物材料が、天然もしくは合成の炭酸カルシウム、カオリン、タルク、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは天然もしくは合成の炭酸カルシウムもしくはカオリンまたはそれらの混合物であり、理想的には天然の炭酸カルシウムおよびカオリンの混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
鉱物材料の乾燥重量に対して、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、好ましくは0.2乾燥重量%〜0.8乾燥重量%のポリマーを使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
増粘剤として、
(a)少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する、少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含む水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、少なくとも1種類の鉱物材料を含有する紙用コーティングスリップ。
【請求項9】
ポリマーが、各モノマーを重量パーセントとして表現した場合(これらのパーセントの合計は100%に等しい)、
(a)5%〜95%、好ましくは50%〜95%、理想的には70%〜95%の、少なくとも1種類のエチレン−不飽和アニオン性モノマーと、
(b)5%〜95%、好ましくは5%〜50%、理想的に5%〜30%の、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖による末端を有する少なくとも1種類のエチレン−不飽和オキシアルキルモノマーと
を含むことを特徴とする、請求項8記載のコーティングスリップ。
【請求項10】
モノマー(a)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項8または9記載のコーティングスリップ。
【請求項11】
モノマー(b)が、式−(I)のモノマーであることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項記載のコーティングスリップ:

式中、
−m、n、p、およびqは整数であり、かつm、n、pは150未満であり、qは0より大きく、m、n、およびpのうちの少なくとも1つの整数はゼロではなく、
−Rは、重合性不飽和官能基を含有する基であり、好ましくはビニル基に属し、かつアクリル酸、メタクリル酸、および、マレイン酸エステル基に属し、かつアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α−α’ジメチル−イソプロペニル−ベンジルウレタン、アリルウレタンを含む不飽和ウレタン基にも属し、ならびに置換もしくは非置換のアリルもしくはビニルエステル基に属し、またはエチレン−不飽和アミドもしくはイミド基に属し、
−R1およびR2は、同一であり、かつ水素原子またはアルキル基を表し、
−R’は、14〜21個、好ましくは15〜20個の炭素原子を有し、かつそれぞれが少なくとも6個の炭素原子を有する2つの分岐鎖を有する、飽和もしくは不飽和の分岐した疎水性アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール鎖を表し、理想的には、R’は、2−ヘキシル1−デカニル、2−オクチル1−ドデカニル、およびそれらの混合物から選択される。
【請求項12】
水溶性ポリマーが、一価または多価の官能性を有する1種類以上の、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される中和剤によって部分的にまたは完全に中和されていることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項記載のコーティングスリップ。
【請求項13】
鉱物材料が、天然もしくは合成の炭酸カルシウム、カオリン、タルク、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは天然もしくは合成の炭酸カルシウムもしくはカオリンまたはそれらの混合物であり、理想的には天然の炭酸カルシウムおよびカオリンの混合物であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項記載のコーティングスリップ。
【請求項14】
鉱物材料の乾燥重量に対して、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、好ましくは0.2乾燥重量%〜0.8乾燥重量%のポリマーを含有することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか一項記載のコーティングスリップ。

【公表番号】特表2011−506796(P2011−506796A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538936(P2010−538936)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003394
【国際公開番号】WO2009/077830
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510121411)オムヤ ディベロプメント アーゲー (4)
【Fターム(参考)】