分岐部ステント、および身体の管腔内に配置する方法
主要脈管が第1および第2の枝脈管に分かれる脈管分岐部に分岐部ステントを展開する方法であって、
収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、
分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、
前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、
分岐部で分岐部ステントを展開するステップと
を含む。また、デバイスも開示される。
収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、
分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、
前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、
分岐部で分岐部ステントを展開するステップと
を含む。また、デバイスも開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2002年8月20日出願の米国特許出願第10/225,484号の一部継続出願であり、これは、2000年5月30日出願の米国特許出願第09/580,597号、米国特許第6,666,883号の一部継続出願であり、これは、1998年4月3日出願の米国特許出願第09/011,214号、米国特許第6,068,655号の一部継続出願であり、これは、1996年6月6日出願のフランス特許出願第2749500号の優先権を主張する1997年6月5日出願の国際特許出願PCT/FR97/00999号の国内移行出願である。これらの開示の全体を参照により本願に組み込む。
【0002】
本発明は、例えば主要導管が2つの二次導管へと分かれる領域など、分岐領域の身体の導管、典型的には血管の治療を可能にする装置に関する。本発明は、また、この装置を配置するための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
直線状の血管の狭窄を、一般にステントと呼ばれる半径方向に拡張可能な管状デバイスを用いて治療することが知られている。このステントは、狭窄領域のところまで、特に経皮的経路によって、未拡張状態で管の内腔に導入される。所定の位置に届くと、ステントは、管壁を支持し、したがって管の適切な断面を再構築するような方法で拡張される。
【0004】
ステントデバイスは、非弾性材料で作製することができ、その場合、ステントは、該ステントがその上に係合した膨張可能なバルーンによって拡張される。あるいは、ステントは、例えば弾性材料で作製して、自己拡張型とすることもできる。自己拡張型ステントは、通常、該ステントを収縮状態で保持するシースから引き出されると、自発的に拡張する。
【0005】
例えば、米国特許第4,733,065号および同第4,806,062号は、既存のステントデバイスと、対応する配置技術とを示しており、それらの特許を参照により本願に組み込む。
【0006】
従来のステントは、主要導管と二次導管の一方との両方に係合すると、他方の二次導管が即時に、または遅れて閉塞を引き起こすおそれがあるので、分岐部の領域に位置する狭窄の治療に完全に適しているわけではない。
【0007】
それぞれが金属フィラメントのらせん巻きによって形成された第1および第2の要素を含むステントを用いて、脈管分岐部を補強することが知られている。2つの要素のうちの第1の要素は、主要導管の直径に対応する直径を有する第1の部分と、二次導管のうちの第1の二次導管の直径に対応する直径を有する第2の部分とを有する。第1の要素は、主要導管に係合するためのものであり、第2の要素は、第1の二次導管に係合するためのものである。第2の要素は、第2の二次導管の直径に対応する直径を有する。第1の要素が所定の位置に配置された後、次に、第2の要素が、その巻きの1つ、または複数を第1の要素の巻きに係合させることによって、第1の要素に連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この機器は、分岐部の補強を可能にするが、その構造と、その2つの構成要素が半径方向に拡張する可能性が低いことから、管の狭窄または閉塞性病変を治療するには適していないように思われる。
【0009】
さらに、第1の要素の形状は、主要導管の端部と二次導管の端部との間に広がった遷移ゾーンを有する分岐部の形状には対応していない。したがって、この機器は、この壁を十分に支持することも、この壁の領域の解離を治療することも可能にしない。さらに、これらの2つの要素を別々に配置することは、非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
主要脈管が第1および第2の枝脈管に分かれる脈管分岐部に分岐部ステントを展開する方法は、収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、分岐部で分岐部ステントを展開するステップとを含む。
【0011】
一実施形態では、ステントは自己拡張型である。他の実施形態では、該方法は、前記配置ステップの前に、膨張バルーンによって脈管分岐部を広げるステップを、前記展開ステップの後に、膨張バルーンによって分岐部ステントの第1の端部を拡張させるステップを、また、第1の枝脈管に枝脈管ステントを送出するステップ、および/または、第2の枝脈管に第2の枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む。ある実施形態では、枝脈管ステントは、その一部分が分岐部ステントの一部分に重なるように展開される。
【0012】
一実施形態では、脈管分岐部は、冠状動脈、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、および腎動脈のうちの1つ以上からなる群から選択される。他の実施形態では、第1の端部を部分的に拡張させるステップは、分岐部ステントを取り囲むシースを半ばまで後退させることを含む。シースは、1つ、または複数の保持バンドを含むことができる。
【0013】
他の実施形態では、主要脈管が、分岐部にカリナを形成する2つの枝脈管に分かれる分岐部にステントを展開する方法が、分岐部でステントを部分的に展開するステップと、ステントが少なくとも部分的にカリナをまたぐように、ステントを枝脈管の方に前進させるステップと、分岐部でステントを展開するステップとを含む。該方法は、分岐部でバルーンを膨張させるステップをさらに含むことができる。
【0014】
他の実施形態では、分岐部ステントは、分岐部ステントの第1の端部から第2の端部まで、分岐部ステントの長手軸に沿って延びる複数のセルを含み、各セルは、分岐部ステントの周囲に延び、ほぼ直線状のジグザグパターンで延びる複数のストラットを有しており、この分岐部ステントは収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、拡張したときには分岐部ステントの第1の端部が第2の端部よりも大きな直径を有しており、さらに、第1の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に放射線不透過性マーカを収容するように構成されたアイレットを含む。
【0015】
ある実施形態では、分岐部ステントは、キノコ型とすることができる放射線不透過性マーカも含む。ある実施形態では、放射線不透過性マーカはアイレットに圧入されている。放射線不透過性マーカは金またはタンタルを含むことができる。ある実施形態では、放射線不透過性マーカは、ステントに適合する起電力をもつように選択される。一実施形態では、分岐部ステントは、第2の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に第2の放射線不透過性マーカを収容するように構成された第2のアイレットも含む。
【0016】
このように本発明の一般的な性質について要約したが、本発明の特定の好ましい実施形態および変更形態は、添付図面を参照して本明細書の詳細な説明から当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】拡張状態で示されるステントシステムの第1の実施形態の側面図である。
【図2】送出カテーテル上に配置され、半径方向に収縮した状態で示される、図1のステントシステムの部分切欠斜視図である。
【図3】図1のステントシステムによって治療可能な分岐部の長手方向断面図である。
【図4】送出カテーテルがその中に配置された様子を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図5】送出カテーテルの一部分の上で部分的に収縮した状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図6】拡張し、完全に展開した状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図7】その中に展開された状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、動脈瘤を引き起こした分岐部の断面図である。
【図8】拡張状態で示される第2の実施形態によるステントシステムの側面図である。
【図9】特定の特徴および利点を有するステントシステムを展開するために使用可能な送出カテーテルの平面図である。
【図9A】図9の送出カテーテルの近位ハンドピースの代替実施形態を示す図である。
【図9B】図9の送出カテーテルの代替実施形態を示す図である。
【図9C】特に代替的な引っ張りワイヤ管腔を示す、線9C−9Cを通って切り取った、図9の送出カテーテルの一部分の断面図である。
【図9D】特に保持バンドを示す、線9D−9Dを通って切り取った、図9の送出カテーテルの一部分の断面図である。
【図9E】図9の送出カテーテルの後退バンド保持アセンブリの詳細図である。
【図10】その上に配置されたステントシステムを含む、図9のカテーテルの遠位部分の部分切欠図である。
【図10A】図9Bの送出カテーテルの遠位端アセンブリの代替実施形態を示す図である。
【図10B】図10に示される外側シースの遠位部分の詳細図である。
【図10C】図10の線10C−10Cに沿った断面図である。
【図11A】図9のカテーテルの遷移部分の平面図である。
【図11B】図11Aの線11B−11Bに沿った遷移部分の断面図である。
【図11C】図11Aの線11C−11Cに沿った遷移部分の横断面図である。
【図11D】図11Aの線11D−11Dに沿った近位シャフトの断面図である。
【図12】特定の特徴および利点を有する送出カテーテルの一実施形態の遠位部分の側断面図である。
【図13】一実施形態の送出カテーテルがその中に配置された様子を示す、分岐部の断面図である。
【図14】部分的に展開した状態の第1のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図15】完全に展開した状態の第1のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図16】部分的に展開した状態の第2のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図17】完全に展開した状態の第2のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図18】第2の枝脈管ステントが第2の枝脈管内に展開された、図17の分岐部の断面図である。
【図19】円筒形のステントを送出する単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図20】シースを近位詳細図で示す、図19の単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図21】円錐形のステントを送出する単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図22】シースを近位詳細図で示す、図21の単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図23A】本発明の一実施形態によるテーパ状の分岐部ステントの側面図である。
【図23B】圧縮された向きで示される、図23Aの分岐部ステントの側壁パターンを示す図である。
【図23C】本発明の代替的なテーパ状のステントの側面図である。
【図23D】マーカ保持バンドの拡大図である。
【図23E】マーカ保持バンド内に取り付ける前のマーカの側面図である。
【図23F】本発明のステントに取り付けられたマーカの斜視図である。
【図24A】本発明の他の実施形態によるテーパ状の分岐部ステントの側面図である。
【図24B】図24Aの分岐部ステントの側壁パターンを示す図である。
【図25】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図26】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図27】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図28】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図29】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図30】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図31】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述のように、添付図面は、分岐部の領域で人体内の脈管(例えば導管)を治療するのに使用するステントシステムと、対応する送出システムとを示す。図3は、主要導管または主要脈管32が2つの二次枝導管または二次枝脈管34へと分かれる分岐部30を示す。ステントシステムは、一般に、分岐部30の領域で使用されるように特に設計された一対の異種ステントを含む。このような異種ステントは、次いで、人体内に挿入するために細長いカテーテル上に配置される。異種ステントは、以下でさらに詳細に記載するように、自己拡張型であってもよいし、その周囲にステントを配置できるバルーンなどによって手動で拡張可能であってもよい。
【0019】
図1は、図示したような分岐部の領域での身体の導管の治療を可能にする拡張可能なステントシステム10の一実施形態を示す。図1に拡張状態で示されるステントシステム10は、一般に、それぞれ2つのセグメントに分けることのできる、第1のステント部分12と第2のステント部分14とを含んでおり、したがって、網目構造の4つの連続セグメント22、24、26、28を作り出している。第1のステント12は、一般に、分岐部の枝導管または枝脈管34内に配置されるように構成され、第2のステント14は、一般に、主要脈管32内に配置されるように構成される。所望に応じて、それらのセグメントは、1つ、または複数の材料ブリッジ18によって互いに連結することができる。ステント12、14は、一般に、収縮位置と拡張位置との間で可動である。当業者には明らかなように、ステントは、自己拡張型であっても、バルーン拡張型であってもよい。
【0020】
ここに示される実施形態によれば、ステント12、14は、一般に、複数のメッシュセル36を含む拡張可能なメッシュ構造を含む。これらのセグメントのメッシュセル36は、一実施形態ではステント12、14の長手方向に細長く、また、ここに示される実施形態では、いずれの場合も、ほぼ六角形の形状を有する。ステントセグメント22、24、26および28を形成するために使用されるメッシュは、ステントで使用するのに適していることが知られている他の様々な形状を含んでよいことが当業者には認識される。例えば、適切なステントは、繰り返しの四辺形形状、八角形形状、一連の湾曲、または拡大した内径で脈管あるいは導管を十分に保持するようにステントが拡張可能となるような任意の様々な形状を有するメッシュを含むことができる。
【0021】
第1のステント12は、2つのセグメント22および24に分けることができ、それらのセグメントは互いに同一であってもよく、通常、二次枝導管34のうちの1つの直径よりも十分に大きな直径をもつ管状形状を有する。第1のステントが、本明細書に記載するように機能するような様々な形状を含んでよいことが当業者には認識される。第1のステント12は、その長さ方向に沿って一定の直径を有する、ほぼ円筒形の形状に拡張可能なものとすることができる。第1のステント12は、特定の所望の配置場所に応じて、様々な長さを有することができる。例えば、第1のステント12の長さは、通常、所望に応じて約1センチメートル〜約4センチメートルである。
【0022】
第2のステント14は、好ましくは、第1のステント12に近接して展開するように構成され、第2のステント14もまた、上側セグメント26および下側セグメント28に分けることができる。第2のステント14の下側セグメント28は、通常、管状の断面形状を有し、主要導管32の直径よりも十分に大きい拡張直径を有する(図3)。第2のステント14の上側セグメント26は、好ましくは、その近位(下側)端部40の直径よりもその遠位(上側)端部38の直径がより大きい。一実施形態では、第2のステント部分の上側セグメントは、ほぼ円錐形の形状を含む。代替実施形態では、第2のステント14は、その全長に沿って遠位方向で半径方向外側にテーパ状であってもよい。ただし、いずれの実施形態でも、第2のステント14の遠位端38の拡張直径は、好ましくは、第1のステント12の近位端42の拡張直径よりも十分に大きい。例えば、第2のステント14の遠位端38は、第1のステント12の近位端42の直径の少なくとも約105%、好ましくは少なくとも約110%の直径に拡張することができる。ある実施形態では120%以上もの直径にまで拡張することができる。第2のステント14は、特定の所望の配置場所に応じて、様々な長さを有することができる。例えば、第2のステント14は、通常、所望に応じて1センチメートル〜4センチメートルである。
【0023】
図1に示されるように、その拡張状態では、第2のステント14の上側セグメント26は、通常、下側セグメント28のメッシュの幅に比べて、一方では二重ステントデバイス10の長手方向、第2のステント14の遠位端38の方向で、他方では第2のステント14の横方向、ブリッジ18の延長部に位置し、直径方向に対向する円錐母線の方向で、その幅が徐々に増大するメッシュセル36を有する。言い換えると、第2のステント14の上側セグメント26は、好ましくは、第2のステント14がほぼ漏斗形状に拡張するように、ステント14の遠位端38で近位端40での寸法よりも大きい寸法を有することのできる多数のセル形状36を備えたメッシュを含む。
【0024】
ここに示される実施形態では、このメッシュセル36の幅の増大は、長手方向に配置されたメッシュセル36のエッジ48の長さが増大し、さらに対向する2つのエッジ48間に形成される角度が増大した結果として起こる。
【0025】
したがって、このセグメント26は、拡張したときに第1のステント12の長手軸に対して傾斜した軸線を有する切頭形状を有することができる。この形状は、例えば、二次導管34の端部から主要導管32の端部を隔てる、広がった遷移ゾーン46(図3)の領域に示される分岐部の形状に対応する。好ましい一実施形態では、第2のステント14は、第1のステント12に近接して配置される。例えば、第2のステント14の遠位端38は、好ましくは、第1のステント12の遠位端42から距離約4mm以内に配置され、より好ましくは、この距離は約2mm未満であり、最も好ましくは、ステントが互いに1mm以内に配置される。
【0026】
図1に示される実施形態では、第1のステント12と第2のステント14との間の距離は、それらの間にブリッジ18を設けることによって、ほぼ一定に維持される。ブリッジ18は、第1および第2のステント12および14を互いに接合するために、および/または、各ステント12および14の上側セグメント22、24および下側セグメント26、28を1つに接合するために設けることができる。ブリッジ18が存在する場合、これはセグメント22、24および26、28の隣接する端部を連結することができ、通常、幅は小さいので、ある程度屈曲して、これらのセグメントの向きを互いに対して定める、特に、第1のステント12の下側セグメント24の向きを第2のステント14の上側セグメント26に対して定めることが可能である。
【0027】
さらに、他の実施形態では、ブリッジ18は連結されたセグメントのうちの1つと一体とし、溶接などによって他の連結されたセグメントに別途、連結することもできる。例えば、第1のステント12と第2のステント14とを連結するブリッジ18は、第2のステント14の上側セグメント26と一体とし、第1のセグメント26の下側セグメント24に連結することができる。あるいは、ブリッジ18は、第1のステント12の下側セグメント24と一体とし、第2のステント14の上側セグメント26に連結することもできる。
【0028】
他の実施形態では、ブリッジ18は、溶接、接着、他の接合方法などによってセグメント22、24、26、28に別々に連結された、別個の材料片とすることができる。これらの実施形態すべてで、第1のステント12は、第2のステント14とは異なる材料片から作製することができる。(例えば、レーザ切断技術によって)第1のステント12を作製する元となる管は、第2のステント14を作製する元となる管より小さい直径を有することができる。それぞれの管は、同一の材料から作製されていてもよく、同一の材料から作製されていなくてもよい。あるいは、第1および第2のステントは、単一の材料片から形成してもよい。
【0029】
第2のステント14のセグメント26および28が、第1のステント12のセグメント22および24よりも小さい直径の管から作製される場合には、第1のステントのセグメント22および24の半径方向力は、特に断面がより大きいところで、第2のステントのセグメント26および28の半径方向力よりも大きくなる。
【0030】
したがって、ブリッジ18は、これらの管の1つから作製することができ、したがって、セグメント22および24、またはセグメント26および28と一体にすることができる。あるいは、ブリッジ18は別個の材料片とすることもできる。
【0031】
他の実施形態では、設置時および使用時に個々のセグメントを所望に応じて間隔をあけて配置するように、ブリッジ18は省略される。それでも、これらの個々のセグメントは、同一のコア/シースアセンブリ内で送出され、植え込まれる。
【0032】
2つの連続セグメント間のブリッジ18は、6つよりも多くすることも、少なくすることもでき、また、それらの多方向の弾性を可能にするオメガ形以外の形状、特にV字形またはW字形を有することができる。
【0033】
例えば、図8は、抑制されていない、拡張した状態で示される、第1および第2のステント12および14を有するステントシステム10の代替実施形態を示す。この実施形態によれば、各ステント12、14は、2つのセグメント22、24および26、28に分けることができ、第1および第2のステント12および14を互いに連結する1つ、または複数の可撓性ブリッジ18を含むことができる。この実施形態では、第1および第2のステント12および14の2つの連続セグメント22、24および26、28は、複数の(例えば6つの)オメガ形ブリッジ50によって連結される。これらのブリッジ50の湾曲した中央部分52は、様々なセグメントが互いに対して適切な長手方向を向くのを可能にする、多方向の弾性を有することができる。これらのブリッジ50の利点は、ステントを長手方向に連続させることであり、これは、ステントシステムが非常に湾曲したゾーン内を通過するのを容易にし、この湾曲(動脈硬化の場合には危険なことがある)を低減する必要をなくす。
【0034】
したがって、図8のステントシステム10は、追加的な支持を保証するために、また必要であれば分岐部30内でのステントの保持を増加するために、順々に配置されたいくつかのセグメント22、24、26、28を含むことができる。第2のステント14の上側セグメント26は、処置される分岐部の解剖学的構造によって必要となる場合、第1のステントの長手軸と一致し、この長手軸に対して傾斜していない軸線を有することができる。
【0035】
あるいは、第1のステント12の下側セグメント24自体が、拡張した状態で、第2のステントの形状に類似した、特定の分岐部では二次導管34が広がった遷移ゾーン46に連結される、広がった連結ゾーン(近位方向に直径が増大する)の形状に対応する、広がった形状を有することができる。したがって、第1のステント12の下側セグメント24、または第1のステント12全体は、その遠位端の第1の直径と、その近位端のより大きな第2の直径とを有し、その間に直線的または徐々に湾曲する(フレア状)テーパを有することができる。したがって、この実施形態によれば、このセグメント24は、この広がった連結ゾーンの形状に対応する形状を有し、その完璧な支持を保証する。
【0036】
自己拡張型ステントを作製する方法の一つは、ニッケル/チタン合金(例えば、NITINOLという名称で知られる合金を適切に使用することができる)のシートを基本形状に適切に切断し、次いで、得られたブランクを巻いて管状形状にすることによる。ブランクは、互いに近づき合う、このブランクの反対側のエッジを溶接することによって、円筒形または円錐台形に保つことができる。(1つ、または複数の)ステントは、また、当該技術分野で公知のように、金属管素材からレーザ切断によって形成することもできる。あるいは、ステントは、適切な弾性材料の1本もしくは多数のワイヤから、または薄い小板から、選択的に曲げて、適切な円筒形または非円筒形の管状形状を形成することによって形成することもできる。ステントの形成には多くの方法および材料が利用可能であり、本明細書にはそれらの一部が記載されるにすぎないことが当業者には理解される。
【0037】
一部のニッケル/チタン合金は、10℃程度の温度で可鍛性であるが、人体の温度にほぼ相当する温度でニュートラルな形状に回復することができる。図2は、半径方向に収縮した状態で送出カテーテル上に配置されたステントシステム10を示す。一実施形態では、自己拡張型ステントは、ニッケル/チタンまたは他の形状記憶合金である構成材料を、その変態温度寄居引く温度にまで冷却することによって、収縮させることができる。ステントは、その後、変態温度より高い温度に曝露することによって、拡張させることができる。本用途では、正常な体温以下の変態温度を有する形状記憶合金を使用することができる。また、十分に弾性の高い材料で作製された自己拡張型ステントも、半径方向に圧縮力を加えることによって、拡張形状から機械的に収縮させることができることが当業者には認識される。ステントは、次いで、材料自体の弾性の影響で拡張することができる。ニッケル−チタン、および、他の合金、いくつか例を挙げれば、銀−カドミウム(Ag−Cd)、金−カドミウム(Au−Cd)、鉄−白金(Fe3−Pt)などが特定の温度範囲内で望ましい超弾性の性質を示す。
【0038】
一実施形態では、ステントが収縮すると、この収縮状態でメッシュセル36がほぼ長方形の形状となるように、メッシュセル36の横方向のエッジ49に対して、メッシュセルのエッジ48が回転することができる。他の材料および製造方法を用いて適切な自己拡張型ステントを作製することができることが当業者には認識される。
【0039】
あるいは、使用されるステントは、以下でさらに検討するように、潅流があっても、なくても、膨張可能な膨張バルーンを用いて手動で拡張可能とすることもできる。バルーン拡張型ステントを作製する多くの方法が当業者には公知である。バルーン拡張型ステントは、ステンレス鋼やチタン合金など、所望の機械的特性を有する様々な生体適合性材料で作製することができる。バルーン拡張型ステントは、好ましくは、拡張した状態で、管壁を所望の直径に保持するのに十分な半径方向の剛性を有する。バルーン拡張型の第2のステント14の場合、第2のステント14がその上に配置されるバルーンは、第2のステント14の所望の形状に合致するように特に構成することができる。具体的には、そのようなバルーンは、好ましくは、近位端の直径よりも遠位端の直径が大きくなる。
【0040】
したがって、本明細書の検討によれば、分岐部30の領域での病的状態の治療を可能にする1対の異種ステントが提供される。このシステムには、前述した多くの利点、特に、管壁の完璧な支持を保証し、配置が比較的簡単であるという利点がある。
【0041】
簡単にするために、抑制されていない拡張した状態で、二次導管のうちの1つの断面よりも十分に大きい断面を有するセグメントを、以下、「二次セグメント」と呼び、拡張した状態で、切頭形状を有するセグメントを、以下、「切形セグメント」と呼ぶ。
【0042】
二次セグメントは、収縮状態で二次導管に導入されることが意図されており、拡張したときには、好ましくは、導管の壁を支持することになる。この拡張は、導管の領域に位置する狭窄または解離の治療を可能にするだけではなく、導管内での装置の完全な固定も保証することができる。
【0043】
この位置では、切形セグメントは、それが十分に支持することのできる、分岐部の広がった遷移ゾーンの範囲を定める導管の壁を支持する。このように、この装置を用いて、脈管壁を一様に支持し、したがってこの管壁が損傷する危険なしに、この部位で発生する狭窄または解離を治療することができる。
【0044】
この2つのセグメントは、拡張時に、それらが互いに対して適切な向きになるように構成することができる。
【0045】
有利には、少なくとも切形セグメントは、それに半径方向の不透過性を与える膜(例えば、DACRON(登録商標)またはePTFE)によって被覆することができる。この膜によって、その膜と導管壁との間に、動脈硬化性粒子や細胞凝集物など、処置されている病変から生じるおそれのある粒子を捕捉し、したがって体内でのこれらの粒子の移動を回避することが可能になる。したがって、この装置は、さらに、分岐部内で液体を誘導し、それによって動脈瘤を形成する壁に応力が加わるのを防ぐことにより、動脈瘤の治療を可能にすることができる。
【0046】
セグメントは、前述のように、切形セグメント用の管が二次セグメント用の管よりも大きい直径を有する、異なる直径の材料の管から作製することができる。管は、同一の材料から作製することができる。異なる直径の管を使用すると、切形セグメントは、特により大きな直径のところで、より大きな半径方向力を有することができる。
【0047】
この装置は、二次導管の壁の追加的な支持を保証するために、また必要であれば分岐部内でのステントの固定力を高めるために、順々に配置されるいくつかの二次セグメントを含むことができる。これと同じ目的で、この装置は、主要導管に向けられた切形セグメントの側に、拡張した状態で主要導管の断面よりも十分に大きい断面を有する、半径方向に拡張可能なセグメントを少なくとも1つ含むことができる。
【0048】
これらの様々な補助セグメントは、前述のような可撓性リンクを用いて、互いに、また、前述した2つのセグメントに連結してもよく、連結しなくてもよい。
【0049】
可撓性リンクは、セグメントのうちの1つと一体とし、他のセグメントに別途、連結することができ、または、可撓性リンクは、溶接などによって両方のセグメントに別個に連結された別個の材料片とすることができる。
【0050】
好ましくは、2つの連続セグメント間の可撓性リンクは、これらの2つのセグメントの隣接する2つの端部を連結する、1つ、または複数の材料ブリッジから構成される。1つ、または複数のブリッジは、有利には、セグメントを形成する材料と同じ材料で作製される。
【0051】
各セグメントは、メッシュがステントの長手方向に細長く、各メッシュがほぼ六角形の形状を有する網目構造を有することができる。切形セグメントのメッシュは、ステントの長手方向、拡張状態で最大の断面を有するこのセグメントの端部の方向で、徐々に増大する幅を有することができる。
【0052】
このメッシュの幅の増大は、長手方向に配置されたメッシュのエッジの長さの増大、および/または、同一のメッシュの対向する2つのエッジ間に形成される角度の増大の結果である。
【0053】
さらに、切形セグメントは、治療される分岐部の解剖学的構造に最適に適合するように、二次セグメントの長手軸には一致せず、この二次セグメントの長手軸に対して傾斜した軸線を有することができる。この場合、切形セグメントのメッシュの幅は、また、ステントの横方向、このセグメントと隣接するセグメントとを連結するブリッジの延長部に位置し、直径方向に対向する円錐母線の方向で、徐々に増大する。
【0054】
この装置は、それ自体の上で装置が後退できるように、また、人体の温度にほぼ一致する温度でニュートラルな形状に回復できるように、人体の温度よりも著しく低い温度で可鍛性になるが、弾力性はない形状記憶金属で作製することができる。この金属は、NITINOLという名称で知られるニッケル/チタン合金とすることができる。
【0055】
1つ、または複数のステントを配置するための展開カテーテルは、ステントを配置する手段と、ステントが所定の位置にくると、その拡張を可能にする手段とを備える。これらの手段は、このステントが弾性材料製である場合には、その中に収縮状態でステントが配置される着脱式シースを有するカテーテル、または、このステントが非弾性材料製である場合には、その上にステントが配置される膨張可能なバルーンを含む支持コアを備えることができる。
【0056】
いずれの場合でも、この機器は、本発明によれば、切形セグメントを分岐部の広がったゾーンの領域内で正確に配置することができるように、患者の身体を通して切形セグメントの長手方向の位置を識別し、アクセスすることを可能にする手段を備える。
【0057】
この同じセグメントの拡張がステントの軸に対して一様でない場合、機器は、最大の拡張を有するこのセグメントの部分を分岐部に対して適切な方式で配置することができるように、患者の身体を通して、治療される分岐部に対するステントの角度方向を識別することを可能にする手段をさらに備える。
【0058】
図9を参照すると、ステントシステムは、一般に、細長い可撓性ステント展開カテーテル100を使用して展開される。文中では、追加の機能がない多数ステント設置カテーテルを主に記載しているが、本明細書に記載のステント展開カテーテルは、例えば、潅流導管を有する、または有さない、1つ、または複数の血管形成用バルーン、放射線または薬物送達能力、ステントのサイズの特徴など、追加の特徴、またはこれらの特徴の任意の組合せを組み込むように、容易に変更することができ、また単一のステントだけを展開するように単純化することもできる。
【0059】
細長い送出カテーテル100は、一般に、近位端アセンブリ102と、管状本体111を含む近位シャフト区間110と、遠位管状本体113を含む遠位シャフト区間120と、遠位端アセンブリ107とを含む。近位端102は、当業者には理解されるように、薬物、造影剤、バルーン拡張型ステントの実施形態では膨張剤の注入などのための、1つ、または複数の止血弁および/またはアクセスポート106を有するハンドピース140を含むことができる。さらに、オーバーザワイヤー(over-the-wire)の実施形態では、近位ガイドワイヤポート172をハンドピース140上に設けることができる(図9A参照)。カテーテル100の近位端に配置されたハンドピース140は、また、以下で検討するように、カテーテル遠位端107上に配置されたステントの展開を制御するように構成することができる。
【0060】
カテーテルの長さは、所望の用途に依存する。例えば、大腿動脈から入って冠状動脈に到達させる用途で使用するには、約120cm〜約140cmの範囲の長さが典型的である。頭蓋内動脈または下部頸動脈への適用は、当業者には明らかなように、血管のアクセス位置によって異なるカテーテルシャフト長さを必要とすることがある。
【0061】
カテーテル100は、好ましくは、送出カテーテルの全外径(例えば、断面形状)を最小にし、同時に、テーパ状の先端部122が遠位に経腔的に前進することが可能であるのに十分なカラムの強度を与えるために、できる限り小さな外径を有している。カテーテル100は、また、好ましくは、ステント118を露出させるために、軸方向に可動の外側シース114を中心コア112に対して近位方向に後退させるのに十分なカラムの強度を有する。送出カテーテル100は、以下でさらに検討するが、当業者には一般に理解されるように、「オーバーザワイヤー(over-the-wire)」タイプまたは「ラピッドエクスチェンジ(rapid exchange)」タイプで提供することができる。
【0062】
末梢血管用途を対象としたカテーテルでは、外側シース114は、一般的に、約0.065インチ〜約0.092インチの範囲内の外径を有する。冠状血管用途では、外側シース114は、約0.039インチ〜約0.065インチの範囲内の外径を有することができる。また、その直径の機能的な結果がカテーテルの所期の目的にとって許容可能であれば、好ましい範囲以外の直径も使用することができる。例えば、所定の用途でのカテーテル100の全ての部分についての直径の下限は、カテーテルに含まれるガイドワイヤ、引っ張りワイヤ、または他の機能的管腔の数と、カテーテルを通じて送出される膨張流体、造影剤、または薬物の許容可能な最小流量、および収縮したステントの最小直径とに応じて変化する。
【0063】
近位ステント14上に非対称の遠位端を有する実施形態では、回転時の捻れを回避し、進めるのを助けるように、カテーテル100がトルクを伝達する能力も望ましいことがある。カテーテル100は、任意の様々なトルクおよび/またはカラム強度向上構造、例えば、軸方向に延びる剛化ワイヤ、らせん状に巻き付けられた支持層、または、カテーテル100に組み込むか、カテーテル100上に積層することができる編組または織り補強フィラメントを備えることができる。例えば、Chienらの米国特許第5,891,114号を参照のこと。なお、その開示は、参照により完全に本願に組み込む。
【0064】
図11Dを参照すると、図11Aのカテーテルシャフト100の近位区間106を通る断面図が示されている。図11Dに示される実施形態は、ラピッドエクスチェンジタイプの実施形態を表しており、引っ張りワイヤ管腔220を含む1本または多数の管腔押し出し部、または皮下注射管を含むことができる。オーバーザワイヤータイプの実施形態では、近位区間106は、ガイドワイヤ管腔132および引っ張りワイヤ管腔220の近位拡張部をさらに含む。図11Cを参照のこと。近位管111は、また、当業者には理解されるように、バルーンカテーテルの実施形態では、膨張管腔を含むことができる。
【0065】
カテーテルは、遠位端107で、人体の導管内に1つ、または複数のステントを保持して展開するように構成される。図10Aおよび図12を参照すると、送出カテーテル100の遠位端アセンブリ107は、一般に、内部コア112と、軸方向に可動の外側シース114と、任意で1つ、または複数の膨張可能なバルーン116(図12)とを含む。内部コア112は、好ましくは、少なくとも部分的には標準0.014インチのガイドワイヤなどのガイドワイヤ上を辿るように設計された薄肉管である。外側シース114は、好ましくは、好ましくはその上にステント118が配置される中心コア112の少なくとも遠位部分120に沿って延びる。
【0066】
外側シース114は、カテーテル100の相当な長さにわたって延びることができ、また、以下で検討するように、近位ガイドワイヤアクセスポート172の遠位側で比較的短い長さを有することもできる。一般に、外側シース114は、約5cm〜約25cmの間の長さである。
【0067】
図10を参照すると、ここに示される外側シース114は、近位区間115と、遠位区間117と、移行部119とを含む。近位区間115は、管状本体113の外径よりもわずかに大きい内径を有する。これにより、近位区間115は管状本体113によって滑動自在に運ぶことができる。外側シース114は、その長さ全体にわたって同じ外径を有するように構築できるが、ここに示される外側シース114は、移行部119で直径が増加する。外側シース114の遠位区間117の内径は、本明細書の別の箇所で記載されるように、1つ、または複数のステントを滑動自在に捕捉するように寸法設定される。図10に示されるような段階的に直径が増加する実施形態では、移行部119から遠位端までの遠位区間117の軸方向の長さは、好ましくは、カテーテル100によって運ばれる1つ、または複数のステントを覆うのに十分である。したがって、2つのステントの実施形態における遠位区間117は、一般に、少なくとも長さ約3cmであり、多くの場合、長さ約5cm〜約10cmの範囲内である。近位区間115の軸方向の長さは、所望の性能特性に応じて大幅に変更することができる。例えば、近位区間115は、1センチメートルまたは2センチメートルほどの短さのものとすることができ、また、カテーテルの全長の少なくとも約75%または90%以上の長さまでのものとすることもできる。ここに示される実施形態では、近位区間115は、一般に、長さ約5cm〜約15cmの範囲内である。
【0068】
外側シース114および内部コア112は、適切な生体適合性ポリマー材料の押出し成形などによって、ラピッドエクスチェンジまたはオーバーザワイヤーカテーテル本体を製造する様々な公知の技術のいずれかによって製造することができる。この用途のための公知の材料としては、高密度および中密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、PEBAX、PEEK、および、その開示が参照により完全に本明細書に組み込まれるSaabの米国特許第5,499,973号に開示されているもの等、他の様々な材料が挙げられる。あるいは、中心コア112および/または外側シース114の少なくとも近位部分または全部分は、カテーテルおよびガイドワイヤの技術分野で理解されているように、金属またはポリマーのばねコイル、1枚壁の皮下注射器の管、または編組補強壁を含むこともできる。
【0069】
外側シース114の遠位部分117は、ステント118を収縮状態で保持するために、ステント118上に同心で配置される。したがって、外側シース114の遠位部分117は、着脱式抑制部の一形態である。着脱式抑制部は、好ましくは、自己拡張型ステントの半径方向外向きの付勢下での変形に耐えることができるのに十分な半径方向強度を有する。外側シース114の遠位部分117は、外側シース114のその部分に半径方向の強度およびカラム強度を加えるために、ばねコイル、1枚壁の皮下注射器の管、縞状または編組補強壁などの様々な構造を備えることができる。あるいは、着脱式抑制部は、ステントが血流の流動環境および/または温度に曝露されると、抑制材料が溶解し、したがって自己拡張型ステントを解放するように、水溶性の接着剤または他の材料などのような、他の要素を含むこともできる。当業者には理解されるように、ポリグリコール酸族の様々な化合物などの、様々な時間間隔にわたって水性環境に被吸収性である多種多様な生体適合物質が知られている。さらに他の実施形態では、着脱式抑制部は、ステントの周囲に配置された複数の長手軸部材を含むことができる。この実施形態によれば、1個〜10個またはそれ以上のいずれかの個数の軸部材を使用して、着脱式抑制部を提供することができる。軸部材は、円筒形のロッド、扁平もしくは湾曲したバー、または適切であると判定される他の形状のいずれをも含むことができる。
【0070】
状況によっては、自己拡張型ステントは、時間とともに、外側シース114の内壁に埋まり込む傾向がある。図9Dおよび図10Aに示されるように、ステントがシース114の材料に埋め込まれるのを防ぐために、複数の拡張制限バンド121をステント12、14の区間を取り囲むように設けることができる。バンド121は、ステント設計に応じて、任意の様々な数または位置で設けることができる。図10Aは、4つの近位ステント区間127のそれぞれの中間点、および5つの遠位ステント区間のそれぞれの中間点に配置されたバンドを示す。代替実施形態では、バンド121は、隣接するステント区間の端部の上に配置される。バンド121は、ステンレス鋼、または他のいずれかの適切な金属あるいは比較的弾性がないポリマーで作製することができる。言うまでもなく、自己拡張型ステントがプラスチックのシースに埋まり込むのを防ぐために、他の多くの構造も使用することができる。このような代替的な構造としては、可撓性コイル、編組管、1枚壁の管、または本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかな他の抑制構造が挙げられる。
【0071】
外側シース114の内表面および/または中心コア112の外表面には、さらに、パラレン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料、または外側シース114および/または中心コア112の材料に応じて適切である、当該技術分野で公知の他の材料など、滑らかなコーティングまたはライニングを設けることができる。
【0072】
図10Bは、遠位先端部の環状凹部230内に収容されたシース114の遠位部分を示す。ここに示されるように、シース114の少なくとも遠位部分は、外側管213と内側管またはコーティング212とを有する2層構造を有することができる。外側管213の外表面は、好ましくは、治療される脈管内で容易に滑動するように構成されており、内表面は、一般に、ステントに対して静止摩擦係数が低く、したがって、シースがステント上を滑らかに滑動できるように構成されている。外側管213は、例えば、HDPEまたはPEBAXで作製するか、コーティングすることができ、内側管212は、例えば、HDPE、PTFEまたはFEPで作製するか、コーティングすることができる。ただし、内側管がPTFEライナーで作製される実施形態では、滑らかな内層または管212の遠位端214は、好ましくは、外側管213の遠位端216から約1mm〜約3mmの範囲内の距離だけ近位に間隔をあけて配置される。これは、PTFE表面の高い滑性により、ステントが展開時に尚早にシースから遠位に飛び出るのを防ぐのに役立つ。
【0073】
図10は、シース後退システムの一実施形態を示す。ここに示されるシステムは、一般に、シース引っ張りワイヤ222と、引っ張りワイヤスロット224と、シース後退バンド226と、外側シース114とを含む。シース後退バンド226は、外側シース114の一部分に熱的に、または接着剤で接着した、あるいは他の方法で固定した管状要素とすることができる。ここに示される実施形態では、後退バンド226は、約0.055インチの外径と、約0.0015インチの壁厚と、0.060インチの軸方向の長さとを有するステンレス鋼の管片を含む。ただし、所望の機能をなお達成しながら、他の寸法を容易に用いることができる。シース後退バンド226は、外側シース114の遠位部分117内で、直径移行部119のすぐ遠位に配置される。後退バンド226は、該後退バンドの各端部で外側シースの内側表面に1対のバンド225を熱融着することによって、外側シース114の内側表面に連結することができる(図9E参照)。あるいは、後退バンド226は、接着剤やエポキシ樹脂を用いて、または、クリンプやスエージング、あるいはこれらの組合せなどの機械的方法によって、外側シースに取り付けることもできる。この方法では、後退バンド226を外側シース114から近位に移動させるために必要となる引張力が、臨床で用いられる引っ張りワイヤ222に加えられる近位方向への牽引力を大きく上回る。引っ張りワイヤ222の遠位端は、好ましくは、シース後退バンド226に溶接、はんだ付け、接着、または他の方法で固定される。あるいは、引っ張りワイヤ222は外側シースに直接接着することもできる。
【0074】
図10を参照すると、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、シース114を完全に後退させるのに十分な長さのものである。したがって、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、ステント止め具218の遠位端からシース114の遠位端までの距離と少なくとも同じ長さである。2つのステントの展開システムでは、約1cm〜約10cmの範囲内のスロット長さが、現在、考えられている。ここに示されるように、シース114が遠位位置にあるとき、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、シース114の近位部分115によって完全に覆われる。あるいは、シース114の近位拡張部がカテーテル100の全長に延びる前述の一実施形態では、シース114は、制御装置150に直接取り付けることができ、その場合、ここに示される引っ張りワイヤ222およびスロット224は使用しなくてもよい。
【0075】
例えば図9Bおよび9Cに示される他の実施形態では、引っ張りワイヤ管腔220は、ここに示されるスロットを使用しなくてもよいほど十分に後退バンド226から近位側で終端することができる。
【0076】
引っ張りワイヤ222は、円形、扁平で真直、またはテーパ状など、当業者に公知の様々な適切な形状を有することができる。真直な円形引っ張りワイヤ222の直径は、約0.008インチ〜約0.018インチとすることができ、一実施形態では約0.009インチである。他の実施形態では、引っ張りワイヤ222は、0.015インチ、0.012インチ、および0.009インチの連続的な遠位直径を有する複数のテーパ形状と、0.006インチ×0.012インチの遠位の扁平形状とを有する。引っ張りワイヤ222は、ステンレス鋼やニチノールなど、当業者に公知の様々な適切な材料のいずれかから作製することができ、編組または単一のストランドとすることができ、テフロン(登録商標)やパラレンなどの様々な適切な滑らかな材料でコーティングすることができる。ワイヤ222は、シース114をコア112に対して近位に後退させるのに十分な引張強度を有する。ある実施形態では、ワイヤ222は、シース114をコア112およびステント12、14に対して遠位に前進させるのに十分なカラム強度を有することができる。例えば、遠位ステント12が部分的に展開されており、そのステント12を再配置すべきと臨床医が判定した場合、シース114をステント12に対して遠位に前進させ、それによってそのステントをコア上に再収縮させて捕捉することができる。
【0077】
一般に、引っ張りワイヤ222の引張強度または圧縮率は、また、外側シース114の所望の動作モードに応じて変更することができる。例えば、前述の実施形態の代替形態として、引っ張りワイヤ222を軸方向に遠位に前進させることによって、外側シース114を遠位に前進させて、ステント118を解放することができる。複合的な一実施形態では、外側シース114は、近位部分と遠位部分とに分けられる。引っ張りワイヤが近位部分に連結されて、近位ステントを解放するように近位方向に後退することを可能にする。押しワイヤが遠位部分に取り付けられて、遠位方向に前進することを可能にし、それによって遠位ステントを解放することを可能にする。カテーテル100のこれらの構造の詳細およびワイヤ222の性質は、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかなように、これらの実施形態のそれぞれの必要に合わせて変化させることができる。
【0078】
ステント118は、中心の支持コア112上に運ばれ、その上で半径方向に収縮される。この収縮によって、ステント118は、導管32および34の断面よりも小さな断面を有し、後述するように、これらの導管内に導入することができる。ステント118は、好ましくは、中心コア112の隣接部分よりも小さな直径を有する中心コア112の半径方向内側に窪んだ遠位部分129上に配置される。図12を参照のこと。この凹部129は、好ましくは、遠位先端部122上の近位側に面した表面の形態とすることのできるショルダー124などの遠位当接部によって、遠位側が画定される。遠位先端部122は、ステント118が拡張したときにはステントの外径よりも小さいが、ステント118が収縮したときにはステントの直径よりも大きい外径を有する。この当接部124は、その結果、ステント118が収縮したときにステント118がコア112から遠位に前進するのを防止する。
【0079】
コア112に対するステント118の近位方向への移動は、ステントが半径方向に収縮した形状にあるときには、環状のショルダー125などの近位当接表面によって防止される。遠位当接部124および近位当接部125は、圧縮されたステント118を収容するコア112内の環状の凹部129の軸方向の端部によって形成された環状端面の形態とすることができる。図12を参照のこと。図10Aに示される一実施形態では、近位当接部125は、ステント止め具218によって運ばれる。ステント止め具218は、中心コア112と一体とすることも、中心コア112に取り付けることもでき、外側シース114の内側表面と滑動状態で接触するような外径を有する。したがって、圧縮されたステント14は、止め具218と外側シース114との間に嵌合しない。
【0080】
展開デバイス100は、一般的には、内部コア112の遠位端に固定された軟質のテーパ状の先端部122を有し、通常、当該技術分野で公知のようにガイドワイヤ出口ポート126を有する。テーパ状の遠位先端部122は、治療される分岐部の領域にステントシステム118を配置するために、脈管系の挿入と、非外傷性ナビゲーションを容易にする。遠位先端部122は、ポリエチレン、ナイロン、PTFE、PEBAXなど、医療用デバイスの分野で周知の様々なポリマー材料のうちのいずれかから作製することができる。図10に示される実施形態では、遠位先端部122は、先端部と外側シースとの間の移行部が滑らかな外部表面を備えるように、外側シース114の遠位部分がその中にくるようにサイズ設定され、かつ構成された環状凹部230を含む。
【0081】
遠位先端部122は、一実施形態では、先端部122の近位端128で外側シース114の外径とほぼ同じ外径から、先端部122の遠位端130でガイドワイヤの外径よりもわずかに大きい外径へとテーパ状になる。送出カテーテル100の一実施形態における遠位先端部122の全長は約3mm〜約12mmであり、一実施形態では、遠位先端部は長さ約8mmである。遠位先端部122のテーパの長さおよび率は、所望の追跡性および可撓性の特性に応じて変更することができる。先端部122は、直線、曲線、または適切であることが知られている他のいずれかの方式でテーパ状であることができる。
【0082】
図11Bおよび図12を参照すると、中心コア112の遠位部分は、好ましくは、ガイドワイヤ170上へのコア112の滑動自在な係合を可能にする、長手軸方向の管腔132を有する。ガイドワイヤ管腔132は、好ましくは、ガイドワイヤがその中を通ることができる近位アクセスポート172と、遠位アクセスポート126とを含む。近位アクセスポート172は、図11Aおよび図11Bに示されるように、また後述するように、カテーテル100の長さに沿ったあるポイントに配置することができ(ラピッドエクスチェンジ)、また、近位アクセスポート172は、カテーテル100の近位端102に配置することもできる(オーバーザワイヤー)。ラピッドエクスチェンジタイプの一実施形態では、近位アクセスポート172は、一般に、遠位アクセスポート126から約25cm以内にあり、好ましくは遠位アクセスポート126から約20cm〜約30cmの間にある。ガイドワイヤ管腔132は、該ガイドワイヤ管腔132の長さの相当な部分について、カテーテルの中心線と同心でなくてもよい。
【0083】
図11Aおよび図11Bは、近位ガイドワイヤアクセスポート172とガイドワイヤ管腔132とを含む、近位シャフト管111と遠位シャフト管113との間の移行部を示す。ガイドワイヤ管腔132は、共押出によって延びることができ、また、近位シャフト管111に対して接着された、収縮包装管によって結合させた、または他の何らかの方法で保持させた管の別個の区間とすることができる。
【0084】
図11Bに断面図で示される構造では、引っ張りワイヤ管腔220を有する近位シャフト管111は、引っ張りワイヤ管腔220の延長部とガイドワイヤ管腔132とを有する遠位シャフト管113に接合される。ここに示される実施形態では、近位シャフト管111は、遠位に延びて、コネクタ管230の近位端に達する。マンドレル(心棒)が各管腔内に配置され、収縮管236が加熱されて接合部を接着する。続いて、収縮包装に開口部が形成され、ガイドワイヤ管腔132にアクセスできるようにする近位アクセスポート172が形成される。
【0085】
一実施形態では、近位シャフト管111は、約0.025インチの外径と、約0.003インチの壁厚とを有するステンレス鋼の皮下注射器管を含む。皮下注射管の遠位端123は、テーパ状の形状へと切断または研削される。テーパ状ゾーンの軸方向の長さは、カテーテル100の所望の可撓性の特性に応じて、広範囲に変化させることができる。一般に、テーパの軸方向の長さは約1cm〜約5cmの範囲内であり、一実施形態では、約2.5cmである。カテーテルの遠位部分との移行部で皮下注射管の遠位端をテーパ状にすると、当業者には理解されるように、カテーテルの長さに沿って、比較的可撓性の低い近位区間から、比較的可撓性の高い遠位区間へと、可撓性特性のスムーズな変化がもたらされる。
【0086】
図12を参照すると、任意でバルーンも備える、二重ステント展開カテーテルの遠位端が示されている。ガイドワイヤ170が、ガイドワイヤ管腔132内に配置された状態で示されている。当業者には理解できるように、ガイドワイヤ170の直径は、ガイドワイヤ管腔132の内径よりもわずかに小さいもの(例えば、約0.001インチ〜0.003インチ)として示されている。ガイドワイヤ170とガイドワイヤ管腔132の内径との間の堅い嵌合を避けると、ガイドワイヤ170上のカテーテルの滑動性が向上する。極小の直径のカテーテル設計では、カテーテル100がガイドワイヤ170に対して軸方向に移動するときの摩擦を最小限に抑えるために、ガイドワイヤ170の外側表面および/またはガイドワイヤ管腔132の内壁を滑らかな被覆剤でコーティングすることが望ましい場合がある。ガイドワイヤ170または中心コア112の材料に応じて、パラレン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料、または当該技術分野で公知の適切な他の材料など、様々なコーティング剤を用いることができる。
【0087】
図12に示されるように、近位膨張ポートをカテーテルの遠位端によって運ばれる1つ、または複数の膨張可能なバルーン116と流体連通させるために、膨張管腔134は、カテーテル100の長さ全体にわたって延びることもできる。
【0088】
膨張可能なバルーン116がある場合、これは所望の臨床プロトコルに応じて、図12に示されるステント14などの一方もしくは両方のステントの下に、またはステントの近位もしくは遠位に配置することができる。図12に示される一実施形態では、ステントは、前述のように、初めに外側シース114が近位に後退することによって解放される自己拡張型ステントとすることができる。その後、ステントを拡張させる、および/または、ステントを形作るために、カテーテルを再配置することなく、バルーンを膨張させるように、バルーン16はステント内に同心で配置されることができる。ステントを適当なサイズおよび/または形状にするために、またはステントの後ろ側に捕捉された物質を圧縮して管腔の径を増大させるために(例えば、血管形成)、ステント展開後に膨張することが望ましいことがある。本発明を実施する代替的な一方式では、血管形成は、ステント展開カテーテル100上のバルーンによって、または別個の血管形成用バルーンカテーテル(または回転性関節切除術(artherectomy)、レーザ、もしくは他の再開通デバイス)によって、ステントの展開前に、達成される。その後、ステント展開カテーテル100は広げられた病変内に配置され、その後にステントは展開される。したがって、バルーンの膨張は、展開カテーテル100、または異なる処置カテーテルを使用して達成することができ、また、処置部位での1つ、または複数のステントの展開前に、展開と同時に、または展開後に行ってもよい。
【0089】
図9および図9Bに見られるように、カテーテルは、また、カテーテル100の近位端にハンドピース140を含む。ハンドピース140は、以下で説明するように、臨床医によってステントシステム118をナビゲートし、展開するように構成されている。ハンドピース140は、好ましくは、一方もしくは両方のステントの展開の程度を制御し、示すように構成されている制御装置150を含む。制御装置150は、一般的に、制御装置150が近位に後退すると、シース114が近位に後退するように、シース114と機械的に連絡している。遠位への移動、回転可能なホイールの回転運動、または制御装置150の他の様々な動作を代替的に使用して、1つ、または複数のステントを露出させるためにシース114を遠位に前進させる、または近位に後退させるなど、軸方向に移動させることができることが当業者には認識される。
【0090】
ここに示される制御装置150は、好ましくは、第1の位置から、第1のステント12を部分的に展開するための第2の位置、および第1のステント12を完全に展開するための第3の位置へと移動可能である。また、任意で、第2のステント14の部分的な展開および完全な展開を達成するために、第4および第5の位置を設けることができる。制御装置150は、シース114がコア112に対して後退すると露出する各ステント12または14の量を示すように構成された、表示160を含むことができる。表示160は、へこみ、切り欠き、または展開の進行を視覚的に示すための他のマーキングを含むことができる。制御装置150は、さらに、または代替的に、様々な切り欠き、もしくは他の一時的な留め具のいずれかを使用して、ステント12、14の部分的な展開および完全な展開に対応する位置にスライダを「カチッ」と入れるように、音および/または触覚的フィードバックを提供することもできる。また、整列可能な電気的接触ポイントも使用することができる。所望に応じて制御装置150を設けるために、多くの方法および構造が利用可能であることが当業者には認識される。
【0091】
カテーテル100は、当業者には認識されるように、カテーテル上に刻印された、または他の方法でカテーテルに接合された、放射線不透過性化合物を含む複数の放射線不透過性マーカ250(図2、図10、および図10Aから最もよくわかる)を含むことができる。適切なマーカは、白金、金、バリウム化合物、およびタングステン/レニウム合金などの様々な材料から製造することができる。マーカ250Aのうちのいくつかは環状形状を有し、シース114の全周にわたって延びることができる。環状マーカ250Aは、第1のステント12の遠位端の領域、第2のステント14の遠位端の領域、およびブリッジ18の領域(図1)、またはステント12、14を分離するスペースに配置することができる。第4のマーカ252は、ブリッジ18の延長部に配置された第2のステント14の下側セグメントの母線と直径方向の反対側の母線のほぼ中間点に配置することができる。図2は、分岐部内のカテーテルの回転位置を決定するために、外側シース114に沿った所望の位置に設けられる、ダイヤモンド形で厚さの薄いマーカ252を示す。マーカ250および252は、コア112上に刻印することも、シース114上に刻印することもでき、また、シース114上ではなく、ブリッジ18上など、ステント12、14上に直接刻印することもできる。
【0092】
図10および図10Aを参照すると、3つのマーカ253が、第2のステント14の遠位端に、互いに対して120°の間隔をあけて配置された状態で示されている。3つのマーカ254も、第1のステント12の近位端に、互いに対して120°の間隔をあけて配置される。各ステント12、14は、また、その反対側の端部に単一のマーカ210を含む(例えば、第1のステント12は遠位端に単一のマーカ210を有しており、第2のステント14は近位端に単一のマーカ210を有する)。言うまでもなく、当業者の所望に応じて、他のマーカの配置を使用することができる。
【0093】
中央マーカ252は、適切な放射線写真撮影装置を共に用いることにより、2つのステント12、14を隔てるブリッジ18の位置を可視化することができる。したがって、専門家が、第2のステント14の場所を可視化して、ステントを広がったゾーン46およびカリナに対して正確に配置できるようにできる。端部マーカ250Aによって、専門家は、確実にステント12、14がそれぞれ主要導管/1次導管32および二次導管/枝導管34内に正確に配置されるようにすることができる。
【0094】
一方、図2に示されるダイヤモンド形マーカ252は、それが放射線写真撮影装置の半径に対して垂直な向きにあるか、平行な向きにあるかに応じて、平面図または側面図で視認可能である。したがって、分岐部30に対するステント12、14の角度方向を特定して、最大の拡張を有する第2のステント14の部分を、広がった遷移ゾーン46に対して適切な方式で配置できるようにできる。
【0095】
次に、1対の異種ステントを分岐部の領域に配置し、展開する方法について、図3〜図6および図13〜図17を参照して説明する。以下の検討の部分は、2つの異種ステント部分の送出に関するが、本発明の特定の態様を実現しながら、より多数の、あるいはより少数のステントおよび/または類似の拡張構成を有するステントを使用できることが当業者には認識される。
【0096】
上記で概説し、図13〜図17に示したステントシステムを送出する方法は、治療される分岐部30の位置を特定するステップと、適切な送出カテーテル100を用意するステップと、その上にステント12、14が配置された送出カテーテルの遠位部分107を治療される分岐部の枝脈管内に配置するステップと、枝脈管34内で第1のステント12を部分的に展開するステップと、必要に応じて第1のステント12の位置を観察/調節するステップと、次いで、第1のステント12を完全に展開するステップとを含む。第2のステント14は、部分的に展開され、好ましくは、X線透視法による可視化の下で、引っ張りワイヤ管腔220を通じて造影剤を注入するなどして、再び位置が観察される。第2のステント14の位置は、必要に応じて、調節することができ、最後に、第2のステント14は完全に展開される。人体内の血管または他の流体導管内でカテーテルをナビゲートする方法は当業者には周知であり、したがって本明細書では論じない。
【0097】
送出カテーテル100は、前述の実施形態のいずれかに従って、外側シース114を送出カテーテルに沿って軸方向に移動させて、ステント12、14を選択的に展開させ、それによりステントシステム10を選択的に露出させることができるように構築することができる。これは、シース114を分岐部に対して固定された状態で保持し、中心コア112を選択的に遠位に前進させることによって達成することができる。したがって、本発明は、ステント展開の一方法として、外側シースを近位に後退させるのではなく、中心コア(内側シース)を遠位に前進させることによって、1つ、または複数のステントを展開することを企図する。ステントシステムは、代替的に、中心コアを分岐に対して固定された状態で保持し、シース114を選択的に近位に後退させることによって展開することもできる。カテーテルは、また、シースを遠位に前進させ、それによって中心コア112上の部分的に展開したステントを再収縮させて、再配置または取り出しを可能にするように構成させることができる。
【0098】
適切な放射線写真撮影装置によって部分的に展開されたステントの位置を可視化するために、カテーテルを通じて造影剤をステントを配置した領域に導入することができる。適切な多くの造影剤が当業者には知られている。造影剤は、ステントシステム10のいずれの展開段階でも導入することができる。例えば、造影剤は、第1のステント12を部分的に展開した後、第1のステント12を完全に展開した後、第2のステント14を部分的に展開した後、または第2のステント14を完全に展開した後に導入することができる。
【0099】
ステントシステム10の展開の程度は、好ましくは、前述のハンドピース140上のインジケータによって明らかになる。ハンドピース140および外側シースは、好ましくは、ハンドピース140上の制御装置が作動すると、遠位先端部122およびステント12、14に対して外側シース114が近位に移動するように構成される。ハンドピース140およびシース114は、また、シースをステント12、14に対して遠位に前進させることができるように、したがって、場合によってはコア112上でステント12、14のうちの1つを再収縮させることができるように構成することができる。これは、外側シース114の一部分に取り付けられた遠位端223と、ハンドピース140に取り付けられるように構成された近位端とを有する引っ張りワイヤ222を設けることによって達成することができる。あるいは、ハンドピース140を省略することもでき、後退ワイヤ222を臨床医が直接操作することもできる。
【0100】
図4〜図6に示される代替実施形態では、第1および/または第2のステント12、14を単一の動作で展開し、したがって、ステント12、14を完全に展開する前に再配置するステップを省略することができる。次いで、図5および図6に示されるように、シース114は、ステント12、14の完全な拡張を可能にするために、徐々に引き下げられる。
【0101】
好ましい一実施形態では、第2のステント14は、第1のステント12に近接して配置される。例えば、第2のステント14の遠位端38は、第1のステント12の近位端42から距離約4mm以内に配置することができ、より好ましくは、この距離は約2mm未満であり、最も好ましくは、第1および第2のステント12、14は互いから1mm以内に配置する。第1および第2のステント12、14の相対的な配置が、少なくとも一部は、前述のブリッジ18の有無によって決まることが当業者には認識される。いずれのブリッジ18の軸方向の可撓性も、一方のステントに対する他方のステントの可動度に影響を与えることになる。したがって、ステントシステム10は、好ましくは、治療される特定の分岐部に最も適しているように選択される。
【0102】
前述のように、ステント12、14は、自己拡張型、またはバルーン拡張型(例えば、実質的に非弾性の材料で作製される)とすることができる。したがって、第1および/または第2のステントを部分的に展開するステップは、ステントがその上に配置されるバルーン内に膨張流体を導入することを含むか、あるいは、ステントを自己拡張できるようにすることもできる。バルーン拡張型の第2のステント14の場合、第2のステント14がその上に配置されるバルーン116(図12A)は、特に第2のステント14の特定の形状に対応するように構成することができる。具体的には、そのようなバルーンは、好ましくは、近位端の直径よりも遠位端の直径が大きいことになる。
【0103】
ステント12、14が完全に拡張した後、コア112およびガイドワイヤ170を含む送出カテーテル100の遠位端を患者の導管および脈管系から引き出すことができる。あるいは、送出カテーテル上に追加のステントを設け、分岐部の一方または両方の枝脈管内に配置して展開することができる。例えば、図6または図17に示されるように、第2のステント14を展開した後、第3のステントを第2の枝脈管内に配置して展開できるように、カテーテル100およびガイドワイヤ170を第2の枝脈管内に後退させて再配置することができる。
【0104】
図18を参照すると、分岐部の両方の枝脈管を完全にステントで支持するように、第2の枝脈管ステント13を第2の枝脈管内に展開することができる。第2の枝脈管ステント13は、当技術分野で周知で、本明細書の他の箇所で一部開示されるような自己拡張型、またはバルーン拡張型ステントとすることができる。第2の枝脈管ステント13は、主要ステント14および/または第1の枝脈管ステント12の前または後に展開することができる。本発明の一応用例では、主要脈管ステント14および第1の枝脈管ステント12は、本明細書ですでに記載したように配置される。バルーンカテーテルや自己拡張型ステント展開カテーテルなどのステント展開カテーテル(図示せず)は、経腔的に分岐部まで進められ、主要脈管ステント14内で進められる。次いで、第2の枝脈管ステント13は、主要脈管ステント14の遠位端と端部同士を接触させるか、該遠位端から間隔をおいて配置するか、または該遠位端と重なり合うように、第2の枝脈管内で位置合わせすることができる。次いで、第2の枝脈管ステント13を展開することができ、展開カテーテルが取り出される。
【0105】
当業者には明らかなように、本明細書に記載のステントシステム10およびステント送出システム100は、人間の患者の脈管系および他の流体導管系で一般的に見られる多くの病的状態を治療するのに有用である。この装置を用いた処置には、動脈硬化あるいは内部細胞増殖の場合には分岐部の適切な直径の再構築を、または導管の壁の局所的もしくは非局所的解離の矯正、または動脈瘤の場合には動脈瘤嚢を除去しながらの正常な直径の分岐部の再形成を含むことができる。
【0106】
本発明にしたがって展開されるステントの1つ、または複数は、分岐部位で時間とともに溶出する薬物でコーティングされるか、薬物を他の方法で運ぶことができる。治療に有用な様々な薬剤、例えば、これだけに限るものではないが、再狭窄抑制剤、血小板凝集抑制剤、または内皮形成促進剤などの様々な薬剤のいずれを使用することもできる。適切な薬剤のいくつかとしては、ラパマイシン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止可能なモノクローナル抗体などの平滑筋細胞増殖阻害剤;デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、アセチルサリチル酸、およびメサラミン、リポキシゲナーゼ阻害剤などの抗炎症剤;ベラパミル、ジルチアゼム、およびニフェジピンなどのカルシウム流入遮断剤;パクリタキセル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、スクアラミン、およびチミジンキナーゼ阻害剤などの抗悪性腫瘍/抗増殖/抗細胞分裂剤;L−アルギニン;アストリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、およびニトロフイラントインなどの抗菌剤;リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔剤;リシドミン、モルシドミン、NO−タンパク質付加体、NO−多糖類付加体、ポリマーもしくはオリゴマーNO付加体、または化学的複合体などの酸化窒素(NO)供与体;D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、およびダニ抗血小板因子などの抗凝血剤;インターロイキン、インターフェロン、およびフリーラジカルスカベンジャー;成長因子、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞成長促進剤;成長因子阻害剤(例えば、PDGF阻害剤−トラピジル)、成長因子受容体アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とからなる2機能性分子、抗体と細胞毒素とからなる2機能性分子などの血管細胞成長阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤、チマーゼ阻害剤、例えば、トラニラスト、ACE阻害剤、例えば、エナラプリル、MMP阻害剤(例えば、アイロマスタット、メタスタット)、GP IIb/IIIa阻害剤(例えば、インターグリリン、アブシキシマブ)、セラトニンアンタゴニスト、および5−HT吸収阻害剤;コレステロール降下剤;血管拡張剤;ならびに内因性血管活性メカニズムを妨害する薬剤が挙げられる。また、ポリヌクレオチド配列が、p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkB、およびE2Fデコイなどの抗再狭窄剤、チミジンキナーゼ(「TK」)、およびこれらの組合せ、ならびに細胞増殖を防止するのに有用な他の薬剤の働きをすることができる。活性物質の選択は、所望の臨床結果、ならびに特定の患者の状態および禁忌の性質を考慮して行うことができる。薬物を含むか、含まないかにかかわらず、本明細書に開示のステントはいずれも、生体吸収性材料から作製することができる。
【0107】
図3に示される分岐部30は、導管32および34内を循環する液体の流れを妨げる、断面の狭窄を生じる突出部35を有する。脈管分岐部の場合、これらの突出部は、例えば、動脈硬化または細胞増殖に起因する。本明細書に記載のステントシステムは、導管32、34および広がった遷移ゾーン46の適切な直径を再構築することによって、この分岐部の処置を可能にする。
【0108】
図7に示されるように、ステントシステム10は、また、動脈瘤242を治療するためにも使用することができる。動脈瘤242は、血管壁の疾患または弱化によって引き起こされる、血管の局所的、病的な血液が充満した膨張部分と定義される。したがって、動脈瘤の領域には「代用」血管壁を設けることが望ましい。このため、第1または第2のステント12、14は、導管32、34内を循環する流体を実質的に通さないフィルム240で少なくとも部分的に被覆することができる。ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度および中密度ポリエチレンなど、多くの適切なフィルムが当業者には知られている。フィルムは、ステント12、14に縫合することができ、または、ステントが脈管32内で拡張すると、フィルム240がステントと脈管壁との間にはさまれて保持されるように、ステントの周囲に巻き付けることもできる。ステントは、これで、分岐部30内で液体を導き、その結果として動脈瘤242を形成する血管壁に応力が加わるのを防ぐ。
【0109】
ある実施形態では、第1の(円筒形)ステント12および第2の(テーパ状)ステント14を、それぞれ、個々の送出カテーテル上に設けることができる。図19〜図22を参照して、以下、分岐部における病状の治療のために単一のステントを展開する際に使用するステント送出システムの実施形態について説明する。
【0110】
図19および図20は、拡張した状態にあるときに、ほぼ真直または円筒形の形状を有する単一のステントを展開するように構成されたシステムを示しており、例えば、ステント12は、前述の実施形態の円筒形のステント12とほぼ同一とすることができる。このシステムは、一般に、ほぼ前述したような、カテーテルの遠位端上に配置された単一のステント12を有する、細長い送出カテーテル100を含む。ステント12は、保持バンド121など、複数の半径方向の抑制部を有する後退可能なシース114で取り囲まれている。ここに示される実施形態では、ステント12を圧縮した状態に保持するために、5つの保持バンド121が設けられている。あるいは、また、他の個数の保持バンド121を使用することもできる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは6つ、またはそれ以上の保持バンド121を、特定のステントについて、所望に応じて使用することができる。
【0111】
図20は、外側シース114の近位側の詳細とともに、図19のシステムを示す。真直なステント12とともに使用する送出システムは、一般的に、シース114が後退すると、ステント12の近位端が当接することになる環状のショルダー125を備えたステント止め具218を含む。図20に示されるように、ステント止め具218は、後退バンド226でシース114に取り付けられた引っ張りワイヤ222に加わる近位方向への力によってシースが後退すると、近位マーカ254に当接することになる(そのようなマーカを有する実施形態の場合)。
【0112】
図21および図22は、拡張した状態にあるときに、ほぼ円錐形、または他のテーパ形状を有する単一のステントを展開するように構成されたシステムを示す。例えば、円錐形のステント14は、前述の主要脈管ステント14と同一または類似のものとすることができる。図21のシステムは、一般に、ほぼ前述したような、カテーテル100の遠位端上に配置された単一の円錐形のステント14を有する、細長い送出カテーテル100を含む。ステント14は、複数の保持バンド121などの半径方向の保持構造を含むことができる、後退可能なシース114で取り囲まれている。ここに示される実施形態では、ステント14を圧縮した状態に保持し、シース114に押込むのに耐えるために、4つの保持バンド121が設けられている。この数の保持バンドが、図23Aに示される実施形態の円錐形のステント14に特に適している。あるいは、また、他の個数の保持バンド121を使用することもできる。例えば、1つ、2つ、3つ、5つ、もしくは6つ、またはそれ以上の保持バンド121を、特定の円錐形のステントについて、所望に応じて使用することができる。
【0113】
図22は、外側シース114の近位側の詳細とともに、図21のシステムを示す。円錐形のステント14とともに使用する送出システムは、シースが後退すると、ステント14が当接するエッジを与えるように構成された、外側シース内に配置された環状のショルダー125を備えたステント止め具218を含むことができる。図21および図22に示される、この実施形態のステント止め具218は、円錐形のステント14の近位マーカ210をその中に入れられるスロット211を含む。それとは対照的に、円筒形のステントとともに使用されるように構成された図19および図20に示される実施形態では、または特定の円錐形のステントの設計を考慮して不必要な場合は、このスロット211を省略することができる。
【0114】
単一のステントとともに使用されるように構成された送出システムは、しばしば、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかなように、前述の2つのステントの送出システムとは異なるサイズに設定される。例えば、単一ステント送出カテーテルでステントを受ける凹部129の軸方向の長さは、多くの場合、2つのステント用のカテーテルよりもいくらか短い。一般に、冠状動脈の分岐部で使用するための単一のテーパ状のステント用システムにおいて、ステントを受ける凹部129の軸方向の長さは、約8mm〜約18mmの範囲内であり、多くの場合、約10mm〜約13mmの範囲内である。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントは、一般に、軸方向の長さが少なくとも10mmであり、例えば、10mm、11mm、12mm、および13mmを使用することができる。冠状動脈への適用のためには、近位の拡張した直径は、一般的に、約3mm〜約6mmの範囲内であり、多くの場合、約3.5mm〜約5.5mmであり、一実施形態では、近位の拡張した直径は、約4.5mmである。遠位の拡張した直径は、一般的に、約5mm〜約8mmの範囲内であり、多くの場合、約5.5mm〜約7.5mmである。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントの一実施形態では、遠位の拡張した直径は、約6.5mmである。一実施形態では、単一ステント用カテーテルの外側シース114および内側ステント受取り凹部は、2つのステント用システムにおいて対応する部分よりも約11mm短くすることができる。
【0115】
頸動脈または胆管への適用に使用するためのテーパ状のステントは、一般に、約15mm〜約20mmまでの範囲内であり、多くの場合、約17mm〜約19mmの軸方向の長さを有する。ある特定の一実施形態では、頸動脈または胆管への適用に使用するためのテーパ状のステントは、約18mmの軸方向の長さを有する。頸動脈または胆管への適用では、近位の拡張した直径は、一般的に、約8mm〜約12mmの範囲内であり、多くの場合、約9mm〜約11mmであり、一実施形態では、近位の拡張した直径は、約10mmである。遠位の拡張した直径は、一般的に、約11mm〜約15mmの範囲内であり、多くの場合、約12mm〜約14mmである。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントの一実施形態では、遠位の拡張した直径は、約13mmである。一般に、遠位の拡張した直径は、通常、軸方向の長さの少なくとも約40%であり、多くの場合、遠位の拡張した直径は、軸方向の長さの50%よりも大きい。
【0116】
図23Aおよび図23Bは、本発明の他の実施形態による分岐部ステント300を示す。分岐部ステント300は、第1の端部302(時に、近位端302と呼ばれる)と、第2の端部304(時に、遠位端304と呼ばれる)とを有する。分岐部ステント300は、一般に、リンク312によって互いに連結された一連のセグメント306から形成される。各セグメント306は、概ね、ジグザグパターンで延びるストラット308から形成され、ストラット308は、多数の曲線状、正弦曲線状、または他の形状およびパターンで設けることができる。一実施形態では、ストラット308は、近位頂点から遠位頂点までほぼ直線的に延びる。
【0117】
分岐部ステント300の近位端302は、近位マーカ330を保持する近位マーカ支持体328を含む。近位端302は、1つよりも多くの近位マーカ支持体328、例えば、2つもしくは3つの近位マーカ支持体328、5つの近位マーカ支持体328、7つの近位マーカ支持体328、またはそれ以上を含むことができる。分岐部ステント300の近位端302は、一般に、少なくとも1つの近位マーカ支持体328を含んでおり、多くの場合、奇数個の近位マーカ支持体328を含む。
【0118】
分岐部ステント300の遠位端304は、少なくとも1つの遠位マーカ326を保持する少なくとも1つの遠位マーカ支持体324を含む。1つよりも多くの遠位マーカ支持体324を遠位端304に設けることができる。例えば、図23Aに示されるように、3つの遠位マーカ支持体324を設けることができる。他の実施形態では、3つよりも多くの遠位マーカ支持体324、例えば、5つの遠位マーカ支持体324、7つの遠位マーカ支持体324、またはそれ以上が、分岐部ステント300の遠位端304に設けられる。
【0119】
ここに示される実施形態では、マーカ支持体324は、マーカ326を収容するための開口部327をそこに画定する、環状の材料バンド325の形態である。マーカ支持体324は、ステントとは別個に形成し、ろう付け、はんだ付け、溶接など、当該技術分野で公知の様々な技術のいずれかを使用してステントに接合させることができる。ただし、好ましくは、マーカ支持体324は、ステントの壁パターンの形成と同じプロセスにおいて、レーザ切断または他のエッチング方法を使用して管素材から切断するなどによって、ステントと一体的に形成される。これによって、接合する接合部をもつ必要がなくなる。
【0120】
図23Dを参照すると、環状バンド325は、マーカ326を収容する開口部327を画定する。環状バンド325および開口部327は、円形、正方形、長方形、楕円形、または他の形状など、任意の様々な形状を有することができる。ここに示される実施形態では、開口部327は、円周方向に延びる主軸(長軸)と、軸方向に延びる短軸とを有する、細長い、または楕円形の形状を有する。開口部327の円周方向の寸法は、ここに示される実施形態では、開口部327の軸方向の寸法よりも大きく、それによって、軸方向の長さを最小にしながら、マーカの質量を最大にすることが可能となる。開口部327の円周方向の寸法は、約0.5mm〜約1.0mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.7mmである。開口部327の軸方向の寸法は、約0.3mm〜約0.8mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.5mmである。図23Dに示される平面図で採用される環状バンド325の幅は、約0.08mm〜約0.250mmの範囲内のいずれかとすることができる。一実施形態では、幅は、約0.12mmである。同じ図から得られる隣接ストラット329の幅は、約0.075mm〜約0.250mmの範囲内のいずれかとすることができる。一般に、環状バンド325の幅は、隣接ストラット329の幅よりもわずかに大きい。一実施形態では、隣接ストラット329の幅は、約0.1mmである。
【0121】
図23Eを参照すると、ステントに取り付けられる前のマーカ326の側面図が示されている。マーカ326は、一般に、第1の断面積を有する本体部分331と、より大きな第2の断面積を有する上端部333とを含み、ほぼキノコ型の形状の構成要素となっている。本体331は、上端部333とは反対側の本体の端部に、先端部335を有する。本体331は、一般に、円筒形の形状を有することができ、また、卵形、楕円形、正方形、または他の形状など、非円形の断面形状を有することもできる。本体331は、一般に、約0.3mm〜約0.75mmの範囲内の、一実施形態では約0.5mmの直径を有するものとされる。先端部335から上端部333までの構成要素の軸方向の長さは、約0.25mm〜約0.5mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.38mmである。上端部333の直径は、好ましくは、本体331の直径よりも少なくとも約0.1mm、好ましくは少なくとも約0.15mm大きい。一実施形態では、上端部333の直径は、約0.5mm〜約0.9mmの範囲内であり、一実施形態では、約0.7mmである。上端部333の軸方向の長さは、好ましくは、少なくとも約0.05mmであり、かつ約0.2mm以下である。一実施形態では、その長さは、約0.08mmである。また、ステント寸法および設計に応じて、記載した範囲以外の寸法も使用することができる。
【0122】
組立てにおいては、マーカ326は、ステントの管腔内に配置され、先端部335は、ステントの内側(「管腔側」)からステントの外側(非管腔側)へと、環状バンド325の開口部327を通して進められる。これによって、予め一体的に形成された上端部333がステントの内側表面に接して配置される。その後、本体331は、表面335に対する嵌入または他の加圧などによって軸方向に圧縮されて、表面335を対応するキノコ型へと再形成し、それによって本体331の直径に対して、その半径方向の直径を増大させ、ステントの外側表面上に固定表面を与える。軸方向の長さが約0.38mmから始まるマーカは、圧縮後、約0.2mm〜約0.3mmの範囲内のいずれかの軸方向の長さに縮小される。一実施形態では、圧縮後のマーカの軸方向の長さは、壁厚約0.160mmのステントに取り付けられたときには約0.24mmである。圧縮は、上端部333をステント内のアンビル表面に接して配置し、表面335に圧縮ピンを押し込むことによって達成することができる。アンビルおよび圧縮ピンの表面は、平面とすることもでき、また、得られるマーカの末端表面を、ステントの半径に相当する半径で湾曲させるために、丸みをつけることもできる。
【0123】
図23Fに、取り付けられたマーカが示されている。本発明の一実装形態では、マーカを貫く軸方向の長さは、壁厚約0.160mmのステントでは約0.244mmである。一実装形態では、マーカ326は、質量約1.70mgの金を含む。金のマーカの質量は、一般に、少なくとも約1.0mgを超えるが、処置時の所望の可視度に応じて、マーカの質量は変更することができる。
【0124】
マーカ支持体324は、ステントの「外」に、またはステントの端部を越えたところに配置される。この場合、ステントの端部は、ステントの長手軸に対して横方向に延びる平面であり、複数の頂点または尖端320を含む。この方向づけは、放射線不透過性マーカ326を、軸方向で測定されるステントの端部をわずかに越えたところに配置する。ステントの長手軸に平行方向で測定されるマーカ支持体324の長さ、または直径は、一般に、隣接セグメント306の軸方向の長さの少なくとも10%、ある実施形態では、少なくとも約20%であり、少なくとも約30%以上であってもよい。
【0125】
近位および遠位マーカ330、326は、当業者に公知の様々なマーカのいずれであってもよく、様々な形状のいずれを有していてもよい。近位および遠位マーカ330、326は、本明細書に記載のマーカのいずれをも含むことができる。例えば、マーカ330、326は、放射線不透過性とする、または放射線不透過性の特性を有することができる。マーカ330、326は、円筒形(側面から見ると円形)、ダイヤモンド形、正方形、円錐台形、または分岐部ステント300とともに使用するのに適した他の任意の形状とすることができる。マーカ330、326は、はんだ付け、ろう付け、接着や、他の付着機能とともに、またはなしで、近位および遠位マーカ支持体328、324内にマーカを圧着する、圧入する、型締させる、螺入する、または捩り入れるなど、任意の様々な方法で分岐部ステントに取り付けることができる。他の実施形態では、マーカ328、324は、分岐部ステント300のセグメント306、ステント308、および/または、近位および遠位マーカ支持体328上に塗布される。
【0126】
分岐部ステント300の各セルセグメントのストラット308は、ストラット308がジグザグパターンで分岐部ステント300の周囲に延びるときに、遠位尖端320および近位尖端322を形成する。リンク312は、1つのセグメント306の遠位尖端320から隣接セグメント306の近位尖端322まで遠位方向に延びることによって、隣接セグメント306を連結する。
【0127】
リンク312は、長方形、円筒形、テーパ形、または他の任意の形状など、当業者に公知の様々な断面形状のいずれかを有することができる。一実施形態では、リンク312は、その長さ全体にわたって一定の横断面積を有しており、他の実施形態では、リンク312は、分岐部ステント300の可撓性を高めるために、その長さに沿ってより小さい断面積(例えば直径)へと小さくなっていく。例えば、一実施形態では、リンク312またはリンクのうちの少なくとも一部は、鼓形の形状を有していて、リンクの中央部分よりもリンクの端部で広くなっている。他の実施形態では、リンク312は、一端が他端よりも広い。リンク312は、隣接ストラット308の直径にほぼ等しい、その直径よりも小さい、またはその直径よりも大きい断面積を有することができる。リンク312は、様々な長さを選択することができる。例えば、ある実施形態では、リンク312は、約0.5mm以下、約0.75mm以下、または約1mm未満の長さである。
【0128】
分岐部ステント300は、折り畳まれた、または直径が縮小された形状から、図23Aに示されるような、拡張された、または直径が拡大された形状へと拡張させることができる。拡張されたときには、分岐部ステント300は、近位(展開されたとき、上流)の直径316が、遠位(展開されたとき、下流)の直径318よりも小さい。中央管腔334が、分岐部ステント300内を、その近位端302から遠位端304まで延びる。ある実施形態では、ステント300の近位直径316は、約3.25mm以下、約4.75mm以下、または約5.25mm以下であり、遠位直径318は、少なくとも約5.5mm、少なくとも約7mm、または少なくとも約8mmである。ある実施形態では、ステント300は、約2mm〜4mmの範囲の近位直径316と、約4mm〜7mmの遠位直径とを有する。他の実施形態では、近位直径316は、約3mm〜5mmの範囲内にあり、遠位直径318は、約5mm〜9mmの範囲内にある。他の実施形態では、近位直径は、約4mm〜7mmの範囲内にあり、遠位直径318は、約8mm〜14mmの範囲内にある。
【0129】
各ストラット308の遠位尖端320から近位尖端322までの長さは、ストラット長さ310を画定する。さらに、隣接セグメント306の遠位尖端320と近位尖端322との間の距離は、リンク長さ314を画定する。リンク312は、臨床的に望ましいように、リンク長さ314が一様であるものとすることもでき、一様ではないものとすることもできる。例えば、リンク長さ314を変化させると、各セグメント306間の分岐部ステント300の可撓性の制御を可能にすることができる。さらに、より多くのリンク312を隣接セル306間に設けると、分岐部ステント300の再配置性を向上させることができる。例えば、リンク312が隣接する遠位尖端および近位尖端320、322の全ての対を連結するときには、分岐部ステント300は、展開されたときに束ねられず、一様な円錐形(またはフレア形)の形で展開カテーテルであることになる。
【0130】
図23Bは、分岐部ステント300の側壁パターンの一実施形態を明確に示すために、図23Aの分岐部ステント300を広げて平らにした図を示す。図23Cでは、ストラット長さ310およびリンク長さ314が明確に示されている。ある実施形態では、ストラット308は、すべて、ほぼ同一のストラット長さ310を有する。他の実施形態では、最も遠位側のセグメント306のストラット308のストラット長さ310は、他のセグメントのストラット308のストラット長さ310よりも大きい。ストラット長さ310は、多くの場合、約1mm〜3mmの範囲内にある。リンク長さ314は、ある場合、0.5mm〜0.75mmの範囲内、または約1mm未満である。
【0131】
図23Aおよび図23Bに示されるステントは、拘束されない拡張形状ではテーパ状の形状を有し、4つのセグメント306を含む。ステントの所望の性能特性および寸法に応じて、1個のセグメント306から、10個もしくは12個、またはそれ以上の個数のセグメント306まで、いずれの個数のセグメント306を用いることができる。図23Cに示される実施形態では、例えば、5つのセグメント306を有するステントが、拡張形状で示されている。
【0132】
図23Aに示される分岐部ステント300は、拘束されない拡張形状ではテーパ状の形状を有する。ただし、分岐部ステント300として様々な形状のうちのいずれでも使用することができ、一般に、拘束されない拡張時には遠位端304が近位端302よりも大きい断面積を有するという共通の特徴をもつ。例えば、フレア形の分岐部ステント300が図24A〜Cに示されている。図24Aのフレア形の分岐部ステント300には、一実施形態では、図23Aの分岐部ステント300と同じ構成要素の多くが含まれる。ただし、フレア形の分岐部ステント300は、その近位端302のところよりも、その遠位端304のところに、より長いストラット長さ310のセグメント306を有することができる。
【0133】
テーパ角度またはフレア形状は、分岐部ステント300がその中に展開される、特定の分岐部に対応するように選択することができる。例えば、分岐部ステント300は、少なくとも約20°、少なくとも約25°、または少なくとも約30°のテーパ半角を有することができる。他の実施形態では、分岐部ステント300は、35°よりも大きなテーパ半角を有する。
【0134】
分岐部ステント300は、多くの場合、その外側表面で拘束されない拡張したテーパ角度またはフレア形状が一様となるように、対称的なテーパ角度またはフレア形状を有する。このような形状は、円形に近い断面を有する、ほぼ円筒形の分岐部内に分岐部ステント300を展開するときに有利なことがある。ただし、分岐部の断面が非円筒形(例えば、長円形、楕円形、細長い形状など)である他の実施形態では、分岐部ステント300は、対応する非対称的なテーパ角度またはフレア形状を有することができる。非対称的であるときには、分岐部ステント300の、ある側面から見たときのテーパ角度またはフレア形状は、分岐部ステント300の、異なる側面から見たときのテーパ角度またはフレア形状とは異なる。いずれの場合でも、ステントは、展開時に本来の解剖学的構造の形状に適合するように構成することができる。
【0135】
追加のリンク312を、分岐部ステント300の隣接セグメント306間に設けることができる。例えば、図23Aの分岐部ステントでは、図23Bで最もよくわかるように、テーパ状の分岐部ステント300は、最も近位側のセグメント306と、それに隣接するセグメント306とを連結する7つのリンク312を有する。最も遠位側のセグメント306は、それに隣接するセグメント306に、4つのリンク312によって連結されている。ただし、図24A〜Cのフレア形の分岐部ステント300では、最も近位側のセグメント306は、その隣接セグメントに、7つのリンク312によって連結されており、同様に、最も遠位側のセグメント306は、その隣接セグメント306に、7つのリンク312によって連結されている。
【0136】
ここに示される実施形態では、各セグメント306は、約14個の近位頂点322と、14個の遠位頂点320とを有する。所望のステント性能および所定の解剖学的構造に応じて、頂点の数は相当に変更することができる。所望の性能に応じて、約6個〜20個、またはそれ以上のいずれかの個数の頂点を使用することができる。図23Aに示される実施形態では、近位セグメント306は、14個の遠位頂点320と、7個のリンク312とを有する。リンク312が、ステントの周囲に均等に間隔をあけて配置されるので、頂点は、1つおきにリンク312を備える。あるいは、リンク312を、頂点2つおきに、頂点3つおきに、またはそれ以上の間隔で、設けることもできる。通常、2つの隣接セグメント306間には、2つ、または3つ以上のリンク312が配置される。より高密度でリンクを配置する構成では、リンク312を、3つの隣接頂点のうちの2つに、4つのうちの3つに、もしくは5つのうちの4つに、またはそれ以上の密度で設けることができ、それには、セグメント306の周囲のあらゆる頂点上にリンク312を設けることも含まれる。リンク312と頂点との比が増大するにつれて、ステントの特定の機能特性を改善できるが、当業者には理解されるように、ステント可撓性が低下することになる。
【0137】
図23Aおよび図24Aに示されるように、拡張されたときには、分岐部ステント300は、その近位端302から遠位端304まで延びる拡張長さ332を有する。圧縮されたときには、分岐部ステント300は、同様に、その近位端302から遠位端304まで延びる圧縮長さ336を有する。ある実施形態では、拡張長さ332および圧縮長さ336は等しい、またはほぼ同じである。そのような場合、分岐部ステント300は、非短縮型、またはほぼ非短縮型である。他の実施形態では、分岐部ステント300の拡張長さ332は、圧縮長さ336よりも短い。圧縮長さ336と拡張長さ332との間の差は、約1%以下、約1.5%以下、約5%以下、または約7%以下とすることができる。
【0138】
分岐部ステント300は、多くの場合、自己拡張型であるが、所望の場合、バルーン拡張型とすることができる。自己拡張型の分岐部ステント300は、ニッケル/チタン、NITINOL(登録商標)、Elgiloyなどの擬弾性合金、または当業者に公知の他の擬弾性合金のいずれでもから作製することができる。さらに、分岐部ステントは、ステンレス鋼、ポリマー、またはプラスチックから作製することができる。
【0139】
ある実施形態では、分岐部ステント300は、当該技術分野で公知のレーザ切断技術などによって、管から切断して作製される。ただし、分岐部ステント300は、代わりに、材料のシートに所望のパターンを切り込み、シートを巻いて、円筒形、円錐台形、またはフレア形にすることによって形成することもできる。他の実施形態では、分岐部ステントは、ワイヤを所望の形状に編むことによって形成される。
【0140】
図25は、本明細書に記載のいずれかの実施形態による分岐部ステントをその中に送出できる脈管分岐部400を示す。脈管分岐部400は、一般に、主要脈管402が第1の枝脈管404と第2の枝脈管406とに分枝するところに生じる。流体は、一般に、脈管構造内を、主要脈管402から第1および第2の枝脈管404、406それぞれへと流れる。流体流れ408の方向は、一般に、分岐部400に対して近位の場所410から、分岐部400に対して遠位の場所412へと、下流に向かう向きである。
【0141】
カリナ414は、第1の枝脈管404と第2の枝脈管406とが交わる地点に形成される。カリナ414は、一般に、サドルのような形状を有し、多くの場合、主要脈管402から各枝脈管404、406へ流体がスムーズに流れることができる。
【0142】
基準直径416は、ある場合には、第1および第2の枝脈管404、406、ならびにカリナ414に近い場所における主要脈管402の内径として決定される。例えば、基準直径416は、カリナ414から約2〜4mm、約4〜6mm、約5〜7mm、または約5mmの近さの場所における主要脈管410の直径とすることができる。
【0143】
場合によっては、病変(図示せず)は、分岐部400に近い主要脈管402の内壁に沿って形成される。そのような場合、基準直径416は、一般に、病変に近い場所における主要脈管402の内径である。例えば、基準直径416は、病変から約2〜4mm、約4〜6mm、約5〜7mm、または約5mmの近さの場所における主要脈管410の直径とすることができる。他の実施形態では、基準直径416は、広がっていく遷移ゾーンからすぐ近位の、または上流の主要脈管402の直径である。分岐部に病変が存在する状況では、基準直径416は、病変からすぐ近位の、または上流の主要脈管402の直径とすることができる。
【0144】
カリナ面418は、主要脈管402を横切る方向に延び、カリナ414の接線で主要脈管402が第1および第2の枝脈管404、406の両方に分枝するところで主要脈管402と交わる。孔径420は、一般に、両方の枝脈管をまたぐ、カリナ面418における主要脈管402の直径である。
【0145】
ある実施形態では、分岐部ステント300を展開する前に、分岐部400の狭窄した面を広げることが有利なことがあり、または臨床的に必要なことがある。例えば、膨張させたときに、バルーンの壁が分岐部400の枝脈管または主要脈管のいずれかの管壁に接触して外向きの力を加えるように、バルーンカテーテル(図示せず)を分岐部400に送出し、展開させることができる。このプレ拡張は、2つのガイドワイヤと、連続的および/または接触している膨張もしくはバルーンとを使用することなど、様々な技術のいずれかを使用して実施することができる。
【0146】
図26は、本発明の一実施形態による分岐部での分岐部ステントの展開を示す。プレ拡張を容易にするために使用できる第2のガイドワイヤは、簡単のために、省略されている。ガイドワイヤ430が、主要脈管402を通して枝脈管に挿入される。ガイドワイヤ430は、その上で送出カテーテル432を患者の脈管系内で前進させることのできるレールの役割を果たす。送出カテーテル432の遠位端は、該送出カテーテル432がガイドワイヤ430上を進められるときに、脈管系の内壁に損傷を与えるのを最小限に抑える、または低減するために、非外傷性先端部434を含むことができる。後退可能なシース436で、送出カテーテル432に取り付けられた分岐部ステント300を覆う。分岐部ステント300が自己拡張型のときには、後退可能なシース436の後退によって、分岐部ステント300がその圧縮形状(図26に示される)からその拡張形状(図23Aに示される)へと拡張できるようになる。遠位および近位マーカ326、330は、分岐部ステント300の可視化と、脈管系内でのその正確な場所の決定とを可能にする。
【0147】
分岐部ステント300を分岐部400に送出するためには、図27に示されるように、分岐部ステント300の遠位マーカ326がカリナ414に隣接するまで、送出カテーテル432が進められる。当業者に周知の様々な技術のいずれかを使用して、患者の脈管系内のマーカ326を可視化することができる。
【0148】
分岐部ステント300の遠位マーカ326がカリナ面418とほぼ一直線に並ぶようになると、またはカリナ面418のすぐ遠位側にくると、後退可能なシース436は、図28に示されるように、半ばまで後退させる。後退可能なシース436は、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306を露出させるのに十分なように後退させる。分岐部ステント300が自己拡張型であるときには、最も遠位側のセグメント306は、図28に示されるように、半ばまで自己拡張することになる。最も遠位側のセグメント306が拡張するとき、遠位マーカ326は互いに離れる。遠位マーカ326は、分岐部ステントの最も遠位側のセグメント306の遠位尖端320がカリナ414の近位、カリナ414に隣接する場所にくるように、ほぼカリナ面418内に配置される。
【0149】
後退可能なシース436は、次いで、さらに近位方向に後退させて、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306に隣接した第2のセグメント306を露出させる。カテーテル432は、また、わずかに遠位方向に動かされて、少なくともマーカと、任意で遠位尖端320とが、図29に示されるように、カリナ面418の遠位にくるように、カリナ面418を越えたところまで遠位尖端320および遠位マーカ326を前進させる。この時点で、遠位に開いた「v」または他の凹面を形成する最も遠位側のセグメント306の2つの隣接ストラット308は、カリナ414をまたぎ始める。カリナ414をまたぐとき、第1のストラット408は、少なくとも一部分が第1の枝脈管404内に存在することができ、第2のストラット408(第1のストラット408に隣接できる)は、少なくとも一部分が第2の枝脈管406内に存在することができる。他の実施形態では、カリナ414をまたぐとき、第1のストラット408が第1の枝脈管404に向けられ、第2のストラット408が第2の枝脈管406に向けられる。第1のストラット408は、第2のストラット408に隣接することができる。分岐部ステント300の正確な位置および向きは、当業者に公知の様々な可視化技術のいずれかを使用して確認することができる。
【0150】
分岐部ステント300は、図30に概略的に示されるように、第1および第2の枝脈管404、406内にそれぞれ配置された、隣接する第1および第2のストラット308間に形成された、近位尖端322へと通じる遠位を向く凹部の内壁にカリナ414が接触するまで、遠位方向に進められる。次いで、後退可能なシース436は十分に後退させて、カテーテル432から分岐部ステント300を完全に解放することができる。カテーテル432から解放されると、分岐部ステント300は、その完全な拡張形状へと拡張し、ほぼ脈管分岐部400の内側表面に沿い、密着する。完全に拡張されたときには、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306の遠位尖端320は、カリナ面418から少なくとも約1mm、ある実装形態では、約2mm〜約4mm遠位に配置される。
【0151】
展開された後に、分岐部ステント300は、適当なステントの配置および向きを確実にするために、ポスト膨張させることができる。例えば、バルーンカテーテルを分岐部400に前進させ、分岐部ステント300内で少なくとも部分的に膨張させることができる。バルーンは、膨張させたときに、そのバルーンが分岐部ステント300の遠位セグメント306にさらなる拡張をもたらすように形成することができる。さらに、バルーンカテーテルを使用して、分岐部に送出されたときに、バルーン拡張型分岐部ステント300を圧縮状態から拡張状態へと拡張させて、本明細書に記載の展開されたテーパ形状を達成することができる。
【0152】
図31に示されるように、枝脈管ステント500を、任意選択で、枝脈管404、406のいずれか一方、または両方に送出することができる。枝脈管ステント500は、一般に、拘束されない形状に完全に拡張されたときには、円筒形状を有する。枝脈管ステント500は、当業者に周知の様々な壁パターンまたは設計のいずれをも含むこともでき、また、図23Aおよび図24Aに記載の分岐部ステントとともに使用されるようなストラットおよび尖端を有するセルを含むことができる。
【0153】
枝脈管ステント500は、分岐部ステント300を送出するために使用されたのと同じカテーテル432を用いて、ガイドワイヤ430上で送出することができる。あるいは、分岐部ステント300を送出するために使用されたカテーテル432を脈管系から取り出し、その後に、枝脈管ステント500を収容している第2のカテーテルを送入してもよい。本明細書に記載のカテーテルのいずれをも使用して、分岐部ステント300および/または枝脈管ステント500を送出することができる。
【0154】
図31に示される一実施形態では、円筒形の枝脈管ステント500が、予め展開された分岐部ステント300の管腔334を通じて、分岐部400の枝脈管に送出される。枝脈管ステント500は、該枝脈管ステント500の近位端504が分岐部ステント300の遠位端304に部分的に重なるように展開される。枝脈管ステント500の近位尖端502は、カリナ面418の近位に配置することができ、それによって、分岐部ステント300の最も遠位側のセル306に少なくとも部分的に重なる。
【0155】
本明細書に記載のステント、ステント展開システム、および方法は、前述のように、ヒトの患者の体内のいかなる数の分岐部を治療するように構成することができる。例えば、左冠状動脈および右冠状動脈の両方の分岐部、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、腎動脈の分岐部、または他の冠状動脈分岐部である。あるいは、この装置は、気管分岐部や胆管分岐部などの非血管分岐部に、例えば、総胆管と胆嚢管との間、または主胆管の分岐部の領域で使用することもできる。
【0156】
本明細書では特定の好ましい実施形態および実施例について記載してきたが、本発明の主題が、ここで具体的に開示された実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびに、それらの自明の変更形態および均等物にまで及ぶことが当業者には理解される。したがって、本明細書で開示される本発明の主題の範囲は、前述した特定の開示された実施形態だけに限定されず、特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるものとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2002年8月20日出願の米国特許出願第10/225,484号の一部継続出願であり、これは、2000年5月30日出願の米国特許出願第09/580,597号、米国特許第6,666,883号の一部継続出願であり、これは、1998年4月3日出願の米国特許出願第09/011,214号、米国特許第6,068,655号の一部継続出願であり、これは、1996年6月6日出願のフランス特許出願第2749500号の優先権を主張する1997年6月5日出願の国際特許出願PCT/FR97/00999号の国内移行出願である。これらの開示の全体を参照により本願に組み込む。
【0002】
本発明は、例えば主要導管が2つの二次導管へと分かれる領域など、分岐領域の身体の導管、典型的には血管の治療を可能にする装置に関する。本発明は、また、この装置を配置するための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
直線状の血管の狭窄を、一般にステントと呼ばれる半径方向に拡張可能な管状デバイスを用いて治療することが知られている。このステントは、狭窄領域のところまで、特に経皮的経路によって、未拡張状態で管の内腔に導入される。所定の位置に届くと、ステントは、管壁を支持し、したがって管の適切な断面を再構築するような方法で拡張される。
【0004】
ステントデバイスは、非弾性材料で作製することができ、その場合、ステントは、該ステントがその上に係合した膨張可能なバルーンによって拡張される。あるいは、ステントは、例えば弾性材料で作製して、自己拡張型とすることもできる。自己拡張型ステントは、通常、該ステントを収縮状態で保持するシースから引き出されると、自発的に拡張する。
【0005】
例えば、米国特許第4,733,065号および同第4,806,062号は、既存のステントデバイスと、対応する配置技術とを示しており、それらの特許を参照により本願に組み込む。
【0006】
従来のステントは、主要導管と二次導管の一方との両方に係合すると、他方の二次導管が即時に、または遅れて閉塞を引き起こすおそれがあるので、分岐部の領域に位置する狭窄の治療に完全に適しているわけではない。
【0007】
それぞれが金属フィラメントのらせん巻きによって形成された第1および第2の要素を含むステントを用いて、脈管分岐部を補強することが知られている。2つの要素のうちの第1の要素は、主要導管の直径に対応する直径を有する第1の部分と、二次導管のうちの第1の二次導管の直径に対応する直径を有する第2の部分とを有する。第1の要素は、主要導管に係合するためのものであり、第2の要素は、第1の二次導管に係合するためのものである。第2の要素は、第2の二次導管の直径に対応する直径を有する。第1の要素が所定の位置に配置された後、次に、第2の要素が、その巻きの1つ、または複数を第1の要素の巻きに係合させることによって、第1の要素に連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この機器は、分岐部の補強を可能にするが、その構造と、その2つの構成要素が半径方向に拡張する可能性が低いことから、管の狭窄または閉塞性病変を治療するには適していないように思われる。
【0009】
さらに、第1の要素の形状は、主要導管の端部と二次導管の端部との間に広がった遷移ゾーンを有する分岐部の形状には対応していない。したがって、この機器は、この壁を十分に支持することも、この壁の領域の解離を治療することも可能にしない。さらに、これらの2つの要素を別々に配置することは、非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
主要脈管が第1および第2の枝脈管に分かれる脈管分岐部に分岐部ステントを展開する方法は、収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、分岐部で分岐部ステントを展開するステップとを含む。
【0011】
一実施形態では、ステントは自己拡張型である。他の実施形態では、該方法は、前記配置ステップの前に、膨張バルーンによって脈管分岐部を広げるステップを、前記展開ステップの後に、膨張バルーンによって分岐部ステントの第1の端部を拡張させるステップを、また、第1の枝脈管に枝脈管ステントを送出するステップ、および/または、第2の枝脈管に第2の枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む。ある実施形態では、枝脈管ステントは、その一部分が分岐部ステントの一部分に重なるように展開される。
【0012】
一実施形態では、脈管分岐部は、冠状動脈、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、および腎動脈のうちの1つ以上からなる群から選択される。他の実施形態では、第1の端部を部分的に拡張させるステップは、分岐部ステントを取り囲むシースを半ばまで後退させることを含む。シースは、1つ、または複数の保持バンドを含むことができる。
【0013】
他の実施形態では、主要脈管が、分岐部にカリナを形成する2つの枝脈管に分かれる分岐部にステントを展開する方法が、分岐部でステントを部分的に展開するステップと、ステントが少なくとも部分的にカリナをまたぐように、ステントを枝脈管の方に前進させるステップと、分岐部でステントを展開するステップとを含む。該方法は、分岐部でバルーンを膨張させるステップをさらに含むことができる。
【0014】
他の実施形態では、分岐部ステントは、分岐部ステントの第1の端部から第2の端部まで、分岐部ステントの長手軸に沿って延びる複数のセルを含み、各セルは、分岐部ステントの周囲に延び、ほぼ直線状のジグザグパターンで延びる複数のストラットを有しており、この分岐部ステントは収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、拡張したときには分岐部ステントの第1の端部が第2の端部よりも大きな直径を有しており、さらに、第1の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に放射線不透過性マーカを収容するように構成されたアイレットを含む。
【0015】
ある実施形態では、分岐部ステントは、キノコ型とすることができる放射線不透過性マーカも含む。ある実施形態では、放射線不透過性マーカはアイレットに圧入されている。放射線不透過性マーカは金またはタンタルを含むことができる。ある実施形態では、放射線不透過性マーカは、ステントに適合する起電力をもつように選択される。一実施形態では、分岐部ステントは、第2の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に第2の放射線不透過性マーカを収容するように構成された第2のアイレットも含む。
【0016】
このように本発明の一般的な性質について要約したが、本発明の特定の好ましい実施形態および変更形態は、添付図面を参照して本明細書の詳細な説明から当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】拡張状態で示されるステントシステムの第1の実施形態の側面図である。
【図2】送出カテーテル上に配置され、半径方向に収縮した状態で示される、図1のステントシステムの部分切欠斜視図である。
【図3】図1のステントシステムによって治療可能な分岐部の長手方向断面図である。
【図4】送出カテーテルがその中に配置された様子を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図5】送出カテーテルの一部分の上で部分的に収縮した状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図6】拡張し、完全に展開した状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、図3の分岐部の断面図である。
【図7】その中に展開された状態で示されるステントシステムの一実施形態を示す、動脈瘤を引き起こした分岐部の断面図である。
【図8】拡張状態で示される第2の実施形態によるステントシステムの側面図である。
【図9】特定の特徴および利点を有するステントシステムを展開するために使用可能な送出カテーテルの平面図である。
【図9A】図9の送出カテーテルの近位ハンドピースの代替実施形態を示す図である。
【図9B】図9の送出カテーテルの代替実施形態を示す図である。
【図9C】特に代替的な引っ張りワイヤ管腔を示す、線9C−9Cを通って切り取った、図9の送出カテーテルの一部分の断面図である。
【図9D】特に保持バンドを示す、線9D−9Dを通って切り取った、図9の送出カテーテルの一部分の断面図である。
【図9E】図9の送出カテーテルの後退バンド保持アセンブリの詳細図である。
【図10】その上に配置されたステントシステムを含む、図9のカテーテルの遠位部分の部分切欠図である。
【図10A】図9Bの送出カテーテルの遠位端アセンブリの代替実施形態を示す図である。
【図10B】図10に示される外側シースの遠位部分の詳細図である。
【図10C】図10の線10C−10Cに沿った断面図である。
【図11A】図9のカテーテルの遷移部分の平面図である。
【図11B】図11Aの線11B−11Bに沿った遷移部分の断面図である。
【図11C】図11Aの線11C−11Cに沿った遷移部分の横断面図である。
【図11D】図11Aの線11D−11Dに沿った近位シャフトの断面図である。
【図12】特定の特徴および利点を有する送出カテーテルの一実施形態の遠位部分の側断面図である。
【図13】一実施形態の送出カテーテルがその中に配置された様子を示す、分岐部の断面図である。
【図14】部分的に展開した状態の第1のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図15】完全に展開した状態の第1のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図16】部分的に展開した状態の第2のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図17】完全に展開した状態の第2のステントを示す、分岐部の断面図である。
【図18】第2の枝脈管ステントが第2の枝脈管内に展開された、図17の分岐部の断面図である。
【図19】円筒形のステントを送出する単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図20】シースを近位詳細図で示す、図19の単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図21】円錐形のステントを送出する単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図22】シースを近位詳細図で示す、図21の単一ステント送出システムの概略側面図である。
【図23A】本発明の一実施形態によるテーパ状の分岐部ステントの側面図である。
【図23B】圧縮された向きで示される、図23Aの分岐部ステントの側壁パターンを示す図である。
【図23C】本発明の代替的なテーパ状のステントの側面図である。
【図23D】マーカ保持バンドの拡大図である。
【図23E】マーカ保持バンド内に取り付ける前のマーカの側面図である。
【図23F】本発明のステントに取り付けられたマーカの斜視図である。
【図24A】本発明の他の実施形態によるテーパ状の分岐部ステントの側面図である。
【図24B】図24Aの分岐部ステントの側壁パターンを示す図である。
【図25】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図26】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図27】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図28】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図29】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図30】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【図31】脈管分岐部への分岐部ステントの送出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述のように、添付図面は、分岐部の領域で人体内の脈管(例えば導管)を治療するのに使用するステントシステムと、対応する送出システムとを示す。図3は、主要導管または主要脈管32が2つの二次枝導管または二次枝脈管34へと分かれる分岐部30を示す。ステントシステムは、一般に、分岐部30の領域で使用されるように特に設計された一対の異種ステントを含む。このような異種ステントは、次いで、人体内に挿入するために細長いカテーテル上に配置される。異種ステントは、以下でさらに詳細に記載するように、自己拡張型であってもよいし、その周囲にステントを配置できるバルーンなどによって手動で拡張可能であってもよい。
【0019】
図1は、図示したような分岐部の領域での身体の導管の治療を可能にする拡張可能なステントシステム10の一実施形態を示す。図1に拡張状態で示されるステントシステム10は、一般に、それぞれ2つのセグメントに分けることのできる、第1のステント部分12と第2のステント部分14とを含んでおり、したがって、網目構造の4つの連続セグメント22、24、26、28を作り出している。第1のステント12は、一般に、分岐部の枝導管または枝脈管34内に配置されるように構成され、第2のステント14は、一般に、主要脈管32内に配置されるように構成される。所望に応じて、それらのセグメントは、1つ、または複数の材料ブリッジ18によって互いに連結することができる。ステント12、14は、一般に、収縮位置と拡張位置との間で可動である。当業者には明らかなように、ステントは、自己拡張型であっても、バルーン拡張型であってもよい。
【0020】
ここに示される実施形態によれば、ステント12、14は、一般に、複数のメッシュセル36を含む拡張可能なメッシュ構造を含む。これらのセグメントのメッシュセル36は、一実施形態ではステント12、14の長手方向に細長く、また、ここに示される実施形態では、いずれの場合も、ほぼ六角形の形状を有する。ステントセグメント22、24、26および28を形成するために使用されるメッシュは、ステントで使用するのに適していることが知られている他の様々な形状を含んでよいことが当業者には認識される。例えば、適切なステントは、繰り返しの四辺形形状、八角形形状、一連の湾曲、または拡大した内径で脈管あるいは導管を十分に保持するようにステントが拡張可能となるような任意の様々な形状を有するメッシュを含むことができる。
【0021】
第1のステント12は、2つのセグメント22および24に分けることができ、それらのセグメントは互いに同一であってもよく、通常、二次枝導管34のうちの1つの直径よりも十分に大きな直径をもつ管状形状を有する。第1のステントが、本明細書に記載するように機能するような様々な形状を含んでよいことが当業者には認識される。第1のステント12は、その長さ方向に沿って一定の直径を有する、ほぼ円筒形の形状に拡張可能なものとすることができる。第1のステント12は、特定の所望の配置場所に応じて、様々な長さを有することができる。例えば、第1のステント12の長さは、通常、所望に応じて約1センチメートル〜約4センチメートルである。
【0022】
第2のステント14は、好ましくは、第1のステント12に近接して展開するように構成され、第2のステント14もまた、上側セグメント26および下側セグメント28に分けることができる。第2のステント14の下側セグメント28は、通常、管状の断面形状を有し、主要導管32の直径よりも十分に大きい拡張直径を有する(図3)。第2のステント14の上側セグメント26は、好ましくは、その近位(下側)端部40の直径よりもその遠位(上側)端部38の直径がより大きい。一実施形態では、第2のステント部分の上側セグメントは、ほぼ円錐形の形状を含む。代替実施形態では、第2のステント14は、その全長に沿って遠位方向で半径方向外側にテーパ状であってもよい。ただし、いずれの実施形態でも、第2のステント14の遠位端38の拡張直径は、好ましくは、第1のステント12の近位端42の拡張直径よりも十分に大きい。例えば、第2のステント14の遠位端38は、第1のステント12の近位端42の直径の少なくとも約105%、好ましくは少なくとも約110%の直径に拡張することができる。ある実施形態では120%以上もの直径にまで拡張することができる。第2のステント14は、特定の所望の配置場所に応じて、様々な長さを有することができる。例えば、第2のステント14は、通常、所望に応じて1センチメートル〜4センチメートルである。
【0023】
図1に示されるように、その拡張状態では、第2のステント14の上側セグメント26は、通常、下側セグメント28のメッシュの幅に比べて、一方では二重ステントデバイス10の長手方向、第2のステント14の遠位端38の方向で、他方では第2のステント14の横方向、ブリッジ18の延長部に位置し、直径方向に対向する円錐母線の方向で、その幅が徐々に増大するメッシュセル36を有する。言い換えると、第2のステント14の上側セグメント26は、好ましくは、第2のステント14がほぼ漏斗形状に拡張するように、ステント14の遠位端38で近位端40での寸法よりも大きい寸法を有することのできる多数のセル形状36を備えたメッシュを含む。
【0024】
ここに示される実施形態では、このメッシュセル36の幅の増大は、長手方向に配置されたメッシュセル36のエッジ48の長さが増大し、さらに対向する2つのエッジ48間に形成される角度が増大した結果として起こる。
【0025】
したがって、このセグメント26は、拡張したときに第1のステント12の長手軸に対して傾斜した軸線を有する切頭形状を有することができる。この形状は、例えば、二次導管34の端部から主要導管32の端部を隔てる、広がった遷移ゾーン46(図3)の領域に示される分岐部の形状に対応する。好ましい一実施形態では、第2のステント14は、第1のステント12に近接して配置される。例えば、第2のステント14の遠位端38は、好ましくは、第1のステント12の遠位端42から距離約4mm以内に配置され、より好ましくは、この距離は約2mm未満であり、最も好ましくは、ステントが互いに1mm以内に配置される。
【0026】
図1に示される実施形態では、第1のステント12と第2のステント14との間の距離は、それらの間にブリッジ18を設けることによって、ほぼ一定に維持される。ブリッジ18は、第1および第2のステント12および14を互いに接合するために、および/または、各ステント12および14の上側セグメント22、24および下側セグメント26、28を1つに接合するために設けることができる。ブリッジ18が存在する場合、これはセグメント22、24および26、28の隣接する端部を連結することができ、通常、幅は小さいので、ある程度屈曲して、これらのセグメントの向きを互いに対して定める、特に、第1のステント12の下側セグメント24の向きを第2のステント14の上側セグメント26に対して定めることが可能である。
【0027】
さらに、他の実施形態では、ブリッジ18は連結されたセグメントのうちの1つと一体とし、溶接などによって他の連結されたセグメントに別途、連結することもできる。例えば、第1のステント12と第2のステント14とを連結するブリッジ18は、第2のステント14の上側セグメント26と一体とし、第1のセグメント26の下側セグメント24に連結することができる。あるいは、ブリッジ18は、第1のステント12の下側セグメント24と一体とし、第2のステント14の上側セグメント26に連結することもできる。
【0028】
他の実施形態では、ブリッジ18は、溶接、接着、他の接合方法などによってセグメント22、24、26、28に別々に連結された、別個の材料片とすることができる。これらの実施形態すべてで、第1のステント12は、第2のステント14とは異なる材料片から作製することができる。(例えば、レーザ切断技術によって)第1のステント12を作製する元となる管は、第2のステント14を作製する元となる管より小さい直径を有することができる。それぞれの管は、同一の材料から作製されていてもよく、同一の材料から作製されていなくてもよい。あるいは、第1および第2のステントは、単一の材料片から形成してもよい。
【0029】
第2のステント14のセグメント26および28が、第1のステント12のセグメント22および24よりも小さい直径の管から作製される場合には、第1のステントのセグメント22および24の半径方向力は、特に断面がより大きいところで、第2のステントのセグメント26および28の半径方向力よりも大きくなる。
【0030】
したがって、ブリッジ18は、これらの管の1つから作製することができ、したがって、セグメント22および24、またはセグメント26および28と一体にすることができる。あるいは、ブリッジ18は別個の材料片とすることもできる。
【0031】
他の実施形態では、設置時および使用時に個々のセグメントを所望に応じて間隔をあけて配置するように、ブリッジ18は省略される。それでも、これらの個々のセグメントは、同一のコア/シースアセンブリ内で送出され、植え込まれる。
【0032】
2つの連続セグメント間のブリッジ18は、6つよりも多くすることも、少なくすることもでき、また、それらの多方向の弾性を可能にするオメガ形以外の形状、特にV字形またはW字形を有することができる。
【0033】
例えば、図8は、抑制されていない、拡張した状態で示される、第1および第2のステント12および14を有するステントシステム10の代替実施形態を示す。この実施形態によれば、各ステント12、14は、2つのセグメント22、24および26、28に分けることができ、第1および第2のステント12および14を互いに連結する1つ、または複数の可撓性ブリッジ18を含むことができる。この実施形態では、第1および第2のステント12および14の2つの連続セグメント22、24および26、28は、複数の(例えば6つの)オメガ形ブリッジ50によって連結される。これらのブリッジ50の湾曲した中央部分52は、様々なセグメントが互いに対して適切な長手方向を向くのを可能にする、多方向の弾性を有することができる。これらのブリッジ50の利点は、ステントを長手方向に連続させることであり、これは、ステントシステムが非常に湾曲したゾーン内を通過するのを容易にし、この湾曲(動脈硬化の場合には危険なことがある)を低減する必要をなくす。
【0034】
したがって、図8のステントシステム10は、追加的な支持を保証するために、また必要であれば分岐部30内でのステントの保持を増加するために、順々に配置されたいくつかのセグメント22、24、26、28を含むことができる。第2のステント14の上側セグメント26は、処置される分岐部の解剖学的構造によって必要となる場合、第1のステントの長手軸と一致し、この長手軸に対して傾斜していない軸線を有することができる。
【0035】
あるいは、第1のステント12の下側セグメント24自体が、拡張した状態で、第2のステントの形状に類似した、特定の分岐部では二次導管34が広がった遷移ゾーン46に連結される、広がった連結ゾーン(近位方向に直径が増大する)の形状に対応する、広がった形状を有することができる。したがって、第1のステント12の下側セグメント24、または第1のステント12全体は、その遠位端の第1の直径と、その近位端のより大きな第2の直径とを有し、その間に直線的または徐々に湾曲する(フレア状)テーパを有することができる。したがって、この実施形態によれば、このセグメント24は、この広がった連結ゾーンの形状に対応する形状を有し、その完璧な支持を保証する。
【0036】
自己拡張型ステントを作製する方法の一つは、ニッケル/チタン合金(例えば、NITINOLという名称で知られる合金を適切に使用することができる)のシートを基本形状に適切に切断し、次いで、得られたブランクを巻いて管状形状にすることによる。ブランクは、互いに近づき合う、このブランクの反対側のエッジを溶接することによって、円筒形または円錐台形に保つことができる。(1つ、または複数の)ステントは、また、当該技術分野で公知のように、金属管素材からレーザ切断によって形成することもできる。あるいは、ステントは、適切な弾性材料の1本もしくは多数のワイヤから、または薄い小板から、選択的に曲げて、適切な円筒形または非円筒形の管状形状を形成することによって形成することもできる。ステントの形成には多くの方法および材料が利用可能であり、本明細書にはそれらの一部が記載されるにすぎないことが当業者には理解される。
【0037】
一部のニッケル/チタン合金は、10℃程度の温度で可鍛性であるが、人体の温度にほぼ相当する温度でニュートラルな形状に回復することができる。図2は、半径方向に収縮した状態で送出カテーテル上に配置されたステントシステム10を示す。一実施形態では、自己拡張型ステントは、ニッケル/チタンまたは他の形状記憶合金である構成材料を、その変態温度寄居引く温度にまで冷却することによって、収縮させることができる。ステントは、その後、変態温度より高い温度に曝露することによって、拡張させることができる。本用途では、正常な体温以下の変態温度を有する形状記憶合金を使用することができる。また、十分に弾性の高い材料で作製された自己拡張型ステントも、半径方向に圧縮力を加えることによって、拡張形状から機械的に収縮させることができることが当業者には認識される。ステントは、次いで、材料自体の弾性の影響で拡張することができる。ニッケル−チタン、および、他の合金、いくつか例を挙げれば、銀−カドミウム(Ag−Cd)、金−カドミウム(Au−Cd)、鉄−白金(Fe3−Pt)などが特定の温度範囲内で望ましい超弾性の性質を示す。
【0038】
一実施形態では、ステントが収縮すると、この収縮状態でメッシュセル36がほぼ長方形の形状となるように、メッシュセル36の横方向のエッジ49に対して、メッシュセルのエッジ48が回転することができる。他の材料および製造方法を用いて適切な自己拡張型ステントを作製することができることが当業者には認識される。
【0039】
あるいは、使用されるステントは、以下でさらに検討するように、潅流があっても、なくても、膨張可能な膨張バルーンを用いて手動で拡張可能とすることもできる。バルーン拡張型ステントを作製する多くの方法が当業者には公知である。バルーン拡張型ステントは、ステンレス鋼やチタン合金など、所望の機械的特性を有する様々な生体適合性材料で作製することができる。バルーン拡張型ステントは、好ましくは、拡張した状態で、管壁を所望の直径に保持するのに十分な半径方向の剛性を有する。バルーン拡張型の第2のステント14の場合、第2のステント14がその上に配置されるバルーンは、第2のステント14の所望の形状に合致するように特に構成することができる。具体的には、そのようなバルーンは、好ましくは、近位端の直径よりも遠位端の直径が大きくなる。
【0040】
したがって、本明細書の検討によれば、分岐部30の領域での病的状態の治療を可能にする1対の異種ステントが提供される。このシステムには、前述した多くの利点、特に、管壁の完璧な支持を保証し、配置が比較的簡単であるという利点がある。
【0041】
簡単にするために、抑制されていない拡張した状態で、二次導管のうちの1つの断面よりも十分に大きい断面を有するセグメントを、以下、「二次セグメント」と呼び、拡張した状態で、切頭形状を有するセグメントを、以下、「切形セグメント」と呼ぶ。
【0042】
二次セグメントは、収縮状態で二次導管に導入されることが意図されており、拡張したときには、好ましくは、導管の壁を支持することになる。この拡張は、導管の領域に位置する狭窄または解離の治療を可能にするだけではなく、導管内での装置の完全な固定も保証することができる。
【0043】
この位置では、切形セグメントは、それが十分に支持することのできる、分岐部の広がった遷移ゾーンの範囲を定める導管の壁を支持する。このように、この装置を用いて、脈管壁を一様に支持し、したがってこの管壁が損傷する危険なしに、この部位で発生する狭窄または解離を治療することができる。
【0044】
この2つのセグメントは、拡張時に、それらが互いに対して適切な向きになるように構成することができる。
【0045】
有利には、少なくとも切形セグメントは、それに半径方向の不透過性を与える膜(例えば、DACRON(登録商標)またはePTFE)によって被覆することができる。この膜によって、その膜と導管壁との間に、動脈硬化性粒子や細胞凝集物など、処置されている病変から生じるおそれのある粒子を捕捉し、したがって体内でのこれらの粒子の移動を回避することが可能になる。したがって、この装置は、さらに、分岐部内で液体を誘導し、それによって動脈瘤を形成する壁に応力が加わるのを防ぐことにより、動脈瘤の治療を可能にすることができる。
【0046】
セグメントは、前述のように、切形セグメント用の管が二次セグメント用の管よりも大きい直径を有する、異なる直径の材料の管から作製することができる。管は、同一の材料から作製することができる。異なる直径の管を使用すると、切形セグメントは、特により大きな直径のところで、より大きな半径方向力を有することができる。
【0047】
この装置は、二次導管の壁の追加的な支持を保証するために、また必要であれば分岐部内でのステントの固定力を高めるために、順々に配置されるいくつかの二次セグメントを含むことができる。これと同じ目的で、この装置は、主要導管に向けられた切形セグメントの側に、拡張した状態で主要導管の断面よりも十分に大きい断面を有する、半径方向に拡張可能なセグメントを少なくとも1つ含むことができる。
【0048】
これらの様々な補助セグメントは、前述のような可撓性リンクを用いて、互いに、また、前述した2つのセグメントに連結してもよく、連結しなくてもよい。
【0049】
可撓性リンクは、セグメントのうちの1つと一体とし、他のセグメントに別途、連結することができ、または、可撓性リンクは、溶接などによって両方のセグメントに別個に連結された別個の材料片とすることができる。
【0050】
好ましくは、2つの連続セグメント間の可撓性リンクは、これらの2つのセグメントの隣接する2つの端部を連結する、1つ、または複数の材料ブリッジから構成される。1つ、または複数のブリッジは、有利には、セグメントを形成する材料と同じ材料で作製される。
【0051】
各セグメントは、メッシュがステントの長手方向に細長く、各メッシュがほぼ六角形の形状を有する網目構造を有することができる。切形セグメントのメッシュは、ステントの長手方向、拡張状態で最大の断面を有するこのセグメントの端部の方向で、徐々に増大する幅を有することができる。
【0052】
このメッシュの幅の増大は、長手方向に配置されたメッシュのエッジの長さの増大、および/または、同一のメッシュの対向する2つのエッジ間に形成される角度の増大の結果である。
【0053】
さらに、切形セグメントは、治療される分岐部の解剖学的構造に最適に適合するように、二次セグメントの長手軸には一致せず、この二次セグメントの長手軸に対して傾斜した軸線を有することができる。この場合、切形セグメントのメッシュの幅は、また、ステントの横方向、このセグメントと隣接するセグメントとを連結するブリッジの延長部に位置し、直径方向に対向する円錐母線の方向で、徐々に増大する。
【0054】
この装置は、それ自体の上で装置が後退できるように、また、人体の温度にほぼ一致する温度でニュートラルな形状に回復できるように、人体の温度よりも著しく低い温度で可鍛性になるが、弾力性はない形状記憶金属で作製することができる。この金属は、NITINOLという名称で知られるニッケル/チタン合金とすることができる。
【0055】
1つ、または複数のステントを配置するための展開カテーテルは、ステントを配置する手段と、ステントが所定の位置にくると、その拡張を可能にする手段とを備える。これらの手段は、このステントが弾性材料製である場合には、その中に収縮状態でステントが配置される着脱式シースを有するカテーテル、または、このステントが非弾性材料製である場合には、その上にステントが配置される膨張可能なバルーンを含む支持コアを備えることができる。
【0056】
いずれの場合でも、この機器は、本発明によれば、切形セグメントを分岐部の広がったゾーンの領域内で正確に配置することができるように、患者の身体を通して切形セグメントの長手方向の位置を識別し、アクセスすることを可能にする手段を備える。
【0057】
この同じセグメントの拡張がステントの軸に対して一様でない場合、機器は、最大の拡張を有するこのセグメントの部分を分岐部に対して適切な方式で配置することができるように、患者の身体を通して、治療される分岐部に対するステントの角度方向を識別することを可能にする手段をさらに備える。
【0058】
図9を参照すると、ステントシステムは、一般に、細長い可撓性ステント展開カテーテル100を使用して展開される。文中では、追加の機能がない多数ステント設置カテーテルを主に記載しているが、本明細書に記載のステント展開カテーテルは、例えば、潅流導管を有する、または有さない、1つ、または複数の血管形成用バルーン、放射線または薬物送達能力、ステントのサイズの特徴など、追加の特徴、またはこれらの特徴の任意の組合せを組み込むように、容易に変更することができ、また単一のステントだけを展開するように単純化することもできる。
【0059】
細長い送出カテーテル100は、一般に、近位端アセンブリ102と、管状本体111を含む近位シャフト区間110と、遠位管状本体113を含む遠位シャフト区間120と、遠位端アセンブリ107とを含む。近位端102は、当業者には理解されるように、薬物、造影剤、バルーン拡張型ステントの実施形態では膨張剤の注入などのための、1つ、または複数の止血弁および/またはアクセスポート106を有するハンドピース140を含むことができる。さらに、オーバーザワイヤー(over-the-wire)の実施形態では、近位ガイドワイヤポート172をハンドピース140上に設けることができる(図9A参照)。カテーテル100の近位端に配置されたハンドピース140は、また、以下で検討するように、カテーテル遠位端107上に配置されたステントの展開を制御するように構成することができる。
【0060】
カテーテルの長さは、所望の用途に依存する。例えば、大腿動脈から入って冠状動脈に到達させる用途で使用するには、約120cm〜約140cmの範囲の長さが典型的である。頭蓋内動脈または下部頸動脈への適用は、当業者には明らかなように、血管のアクセス位置によって異なるカテーテルシャフト長さを必要とすることがある。
【0061】
カテーテル100は、好ましくは、送出カテーテルの全外径(例えば、断面形状)を最小にし、同時に、テーパ状の先端部122が遠位に経腔的に前進することが可能であるのに十分なカラムの強度を与えるために、できる限り小さな外径を有している。カテーテル100は、また、好ましくは、ステント118を露出させるために、軸方向に可動の外側シース114を中心コア112に対して近位方向に後退させるのに十分なカラムの強度を有する。送出カテーテル100は、以下でさらに検討するが、当業者には一般に理解されるように、「オーバーザワイヤー(over-the-wire)」タイプまたは「ラピッドエクスチェンジ(rapid exchange)」タイプで提供することができる。
【0062】
末梢血管用途を対象としたカテーテルでは、外側シース114は、一般的に、約0.065インチ〜約0.092インチの範囲内の外径を有する。冠状血管用途では、外側シース114は、約0.039インチ〜約0.065インチの範囲内の外径を有することができる。また、その直径の機能的な結果がカテーテルの所期の目的にとって許容可能であれば、好ましい範囲以外の直径も使用することができる。例えば、所定の用途でのカテーテル100の全ての部分についての直径の下限は、カテーテルに含まれるガイドワイヤ、引っ張りワイヤ、または他の機能的管腔の数と、カテーテルを通じて送出される膨張流体、造影剤、または薬物の許容可能な最小流量、および収縮したステントの最小直径とに応じて変化する。
【0063】
近位ステント14上に非対称の遠位端を有する実施形態では、回転時の捻れを回避し、進めるのを助けるように、カテーテル100がトルクを伝達する能力も望ましいことがある。カテーテル100は、任意の様々なトルクおよび/またはカラム強度向上構造、例えば、軸方向に延びる剛化ワイヤ、らせん状に巻き付けられた支持層、または、カテーテル100に組み込むか、カテーテル100上に積層することができる編組または織り補強フィラメントを備えることができる。例えば、Chienらの米国特許第5,891,114号を参照のこと。なお、その開示は、参照により完全に本願に組み込む。
【0064】
図11Dを参照すると、図11Aのカテーテルシャフト100の近位区間106を通る断面図が示されている。図11Dに示される実施形態は、ラピッドエクスチェンジタイプの実施形態を表しており、引っ張りワイヤ管腔220を含む1本または多数の管腔押し出し部、または皮下注射管を含むことができる。オーバーザワイヤータイプの実施形態では、近位区間106は、ガイドワイヤ管腔132および引っ張りワイヤ管腔220の近位拡張部をさらに含む。図11Cを参照のこと。近位管111は、また、当業者には理解されるように、バルーンカテーテルの実施形態では、膨張管腔を含むことができる。
【0065】
カテーテルは、遠位端107で、人体の導管内に1つ、または複数のステントを保持して展開するように構成される。図10Aおよび図12を参照すると、送出カテーテル100の遠位端アセンブリ107は、一般に、内部コア112と、軸方向に可動の外側シース114と、任意で1つ、または複数の膨張可能なバルーン116(図12)とを含む。内部コア112は、好ましくは、少なくとも部分的には標準0.014インチのガイドワイヤなどのガイドワイヤ上を辿るように設計された薄肉管である。外側シース114は、好ましくは、好ましくはその上にステント118が配置される中心コア112の少なくとも遠位部分120に沿って延びる。
【0066】
外側シース114は、カテーテル100の相当な長さにわたって延びることができ、また、以下で検討するように、近位ガイドワイヤアクセスポート172の遠位側で比較的短い長さを有することもできる。一般に、外側シース114は、約5cm〜約25cmの間の長さである。
【0067】
図10を参照すると、ここに示される外側シース114は、近位区間115と、遠位区間117と、移行部119とを含む。近位区間115は、管状本体113の外径よりもわずかに大きい内径を有する。これにより、近位区間115は管状本体113によって滑動自在に運ぶことができる。外側シース114は、その長さ全体にわたって同じ外径を有するように構築できるが、ここに示される外側シース114は、移行部119で直径が増加する。外側シース114の遠位区間117の内径は、本明細書の別の箇所で記載されるように、1つ、または複数のステントを滑動自在に捕捉するように寸法設定される。図10に示されるような段階的に直径が増加する実施形態では、移行部119から遠位端までの遠位区間117の軸方向の長さは、好ましくは、カテーテル100によって運ばれる1つ、または複数のステントを覆うのに十分である。したがって、2つのステントの実施形態における遠位区間117は、一般に、少なくとも長さ約3cmであり、多くの場合、長さ約5cm〜約10cmの範囲内である。近位区間115の軸方向の長さは、所望の性能特性に応じて大幅に変更することができる。例えば、近位区間115は、1センチメートルまたは2センチメートルほどの短さのものとすることができ、また、カテーテルの全長の少なくとも約75%または90%以上の長さまでのものとすることもできる。ここに示される実施形態では、近位区間115は、一般に、長さ約5cm〜約15cmの範囲内である。
【0068】
外側シース114および内部コア112は、適切な生体適合性ポリマー材料の押出し成形などによって、ラピッドエクスチェンジまたはオーバーザワイヤーカテーテル本体を製造する様々な公知の技術のいずれかによって製造することができる。この用途のための公知の材料としては、高密度および中密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、PEBAX、PEEK、および、その開示が参照により完全に本明細書に組み込まれるSaabの米国特許第5,499,973号に開示されているもの等、他の様々な材料が挙げられる。あるいは、中心コア112および/または外側シース114の少なくとも近位部分または全部分は、カテーテルおよびガイドワイヤの技術分野で理解されているように、金属またはポリマーのばねコイル、1枚壁の皮下注射器の管、または編組補強壁を含むこともできる。
【0069】
外側シース114の遠位部分117は、ステント118を収縮状態で保持するために、ステント118上に同心で配置される。したがって、外側シース114の遠位部分117は、着脱式抑制部の一形態である。着脱式抑制部は、好ましくは、自己拡張型ステントの半径方向外向きの付勢下での変形に耐えることができるのに十分な半径方向強度を有する。外側シース114の遠位部分117は、外側シース114のその部分に半径方向の強度およびカラム強度を加えるために、ばねコイル、1枚壁の皮下注射器の管、縞状または編組補強壁などの様々な構造を備えることができる。あるいは、着脱式抑制部は、ステントが血流の流動環境および/または温度に曝露されると、抑制材料が溶解し、したがって自己拡張型ステントを解放するように、水溶性の接着剤または他の材料などのような、他の要素を含むこともできる。当業者には理解されるように、ポリグリコール酸族の様々な化合物などの、様々な時間間隔にわたって水性環境に被吸収性である多種多様な生体適合物質が知られている。さらに他の実施形態では、着脱式抑制部は、ステントの周囲に配置された複数の長手軸部材を含むことができる。この実施形態によれば、1個〜10個またはそれ以上のいずれかの個数の軸部材を使用して、着脱式抑制部を提供することができる。軸部材は、円筒形のロッド、扁平もしくは湾曲したバー、または適切であると判定される他の形状のいずれをも含むことができる。
【0070】
状況によっては、自己拡張型ステントは、時間とともに、外側シース114の内壁に埋まり込む傾向がある。図9Dおよび図10Aに示されるように、ステントがシース114の材料に埋め込まれるのを防ぐために、複数の拡張制限バンド121をステント12、14の区間を取り囲むように設けることができる。バンド121は、ステント設計に応じて、任意の様々な数または位置で設けることができる。図10Aは、4つの近位ステント区間127のそれぞれの中間点、および5つの遠位ステント区間のそれぞれの中間点に配置されたバンドを示す。代替実施形態では、バンド121は、隣接するステント区間の端部の上に配置される。バンド121は、ステンレス鋼、または他のいずれかの適切な金属あるいは比較的弾性がないポリマーで作製することができる。言うまでもなく、自己拡張型ステントがプラスチックのシースに埋まり込むのを防ぐために、他の多くの構造も使用することができる。このような代替的な構造としては、可撓性コイル、編組管、1枚壁の管、または本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかな他の抑制構造が挙げられる。
【0071】
外側シース114の内表面および/または中心コア112の外表面には、さらに、パラレン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料、または外側シース114および/または中心コア112の材料に応じて適切である、当該技術分野で公知の他の材料など、滑らかなコーティングまたはライニングを設けることができる。
【0072】
図10Bは、遠位先端部の環状凹部230内に収容されたシース114の遠位部分を示す。ここに示されるように、シース114の少なくとも遠位部分は、外側管213と内側管またはコーティング212とを有する2層構造を有することができる。外側管213の外表面は、好ましくは、治療される脈管内で容易に滑動するように構成されており、内表面は、一般に、ステントに対して静止摩擦係数が低く、したがって、シースがステント上を滑らかに滑動できるように構成されている。外側管213は、例えば、HDPEまたはPEBAXで作製するか、コーティングすることができ、内側管212は、例えば、HDPE、PTFEまたはFEPで作製するか、コーティングすることができる。ただし、内側管がPTFEライナーで作製される実施形態では、滑らかな内層または管212の遠位端214は、好ましくは、外側管213の遠位端216から約1mm〜約3mmの範囲内の距離だけ近位に間隔をあけて配置される。これは、PTFE表面の高い滑性により、ステントが展開時に尚早にシースから遠位に飛び出るのを防ぐのに役立つ。
【0073】
図10は、シース後退システムの一実施形態を示す。ここに示されるシステムは、一般に、シース引っ張りワイヤ222と、引っ張りワイヤスロット224と、シース後退バンド226と、外側シース114とを含む。シース後退バンド226は、外側シース114の一部分に熱的に、または接着剤で接着した、あるいは他の方法で固定した管状要素とすることができる。ここに示される実施形態では、後退バンド226は、約0.055インチの外径と、約0.0015インチの壁厚と、0.060インチの軸方向の長さとを有するステンレス鋼の管片を含む。ただし、所望の機能をなお達成しながら、他の寸法を容易に用いることができる。シース後退バンド226は、外側シース114の遠位部分117内で、直径移行部119のすぐ遠位に配置される。後退バンド226は、該後退バンドの各端部で外側シースの内側表面に1対のバンド225を熱融着することによって、外側シース114の内側表面に連結することができる(図9E参照)。あるいは、後退バンド226は、接着剤やエポキシ樹脂を用いて、または、クリンプやスエージング、あるいはこれらの組合せなどの機械的方法によって、外側シースに取り付けることもできる。この方法では、後退バンド226を外側シース114から近位に移動させるために必要となる引張力が、臨床で用いられる引っ張りワイヤ222に加えられる近位方向への牽引力を大きく上回る。引っ張りワイヤ222の遠位端は、好ましくは、シース後退バンド226に溶接、はんだ付け、接着、または他の方法で固定される。あるいは、引っ張りワイヤ222は外側シースに直接接着することもできる。
【0074】
図10を参照すると、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、シース114を完全に後退させるのに十分な長さのものである。したがって、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、ステント止め具218の遠位端からシース114の遠位端までの距離と少なくとも同じ長さである。2つのステントの展開システムでは、約1cm〜約10cmの範囲内のスロット長さが、現在、考えられている。ここに示されるように、シース114が遠位位置にあるとき、引っ張りワイヤスロット224は、好ましくは、シース114の近位部分115によって完全に覆われる。あるいは、シース114の近位拡張部がカテーテル100の全長に延びる前述の一実施形態では、シース114は、制御装置150に直接取り付けることができ、その場合、ここに示される引っ張りワイヤ222およびスロット224は使用しなくてもよい。
【0075】
例えば図9Bおよび9Cに示される他の実施形態では、引っ張りワイヤ管腔220は、ここに示されるスロットを使用しなくてもよいほど十分に後退バンド226から近位側で終端することができる。
【0076】
引っ張りワイヤ222は、円形、扁平で真直、またはテーパ状など、当業者に公知の様々な適切な形状を有することができる。真直な円形引っ張りワイヤ222の直径は、約0.008インチ〜約0.018インチとすることができ、一実施形態では約0.009インチである。他の実施形態では、引っ張りワイヤ222は、0.015インチ、0.012インチ、および0.009インチの連続的な遠位直径を有する複数のテーパ形状と、0.006インチ×0.012インチの遠位の扁平形状とを有する。引っ張りワイヤ222は、ステンレス鋼やニチノールなど、当業者に公知の様々な適切な材料のいずれかから作製することができ、編組または単一のストランドとすることができ、テフロン(登録商標)やパラレンなどの様々な適切な滑らかな材料でコーティングすることができる。ワイヤ222は、シース114をコア112に対して近位に後退させるのに十分な引張強度を有する。ある実施形態では、ワイヤ222は、シース114をコア112およびステント12、14に対して遠位に前進させるのに十分なカラム強度を有することができる。例えば、遠位ステント12が部分的に展開されており、そのステント12を再配置すべきと臨床医が判定した場合、シース114をステント12に対して遠位に前進させ、それによってそのステントをコア上に再収縮させて捕捉することができる。
【0077】
一般に、引っ張りワイヤ222の引張強度または圧縮率は、また、外側シース114の所望の動作モードに応じて変更することができる。例えば、前述の実施形態の代替形態として、引っ張りワイヤ222を軸方向に遠位に前進させることによって、外側シース114を遠位に前進させて、ステント118を解放することができる。複合的な一実施形態では、外側シース114は、近位部分と遠位部分とに分けられる。引っ張りワイヤが近位部分に連結されて、近位ステントを解放するように近位方向に後退することを可能にする。押しワイヤが遠位部分に取り付けられて、遠位方向に前進することを可能にし、それによって遠位ステントを解放することを可能にする。カテーテル100のこれらの構造の詳細およびワイヤ222の性質は、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかなように、これらの実施形態のそれぞれの必要に合わせて変化させることができる。
【0078】
ステント118は、中心の支持コア112上に運ばれ、その上で半径方向に収縮される。この収縮によって、ステント118は、導管32および34の断面よりも小さな断面を有し、後述するように、これらの導管内に導入することができる。ステント118は、好ましくは、中心コア112の隣接部分よりも小さな直径を有する中心コア112の半径方向内側に窪んだ遠位部分129上に配置される。図12を参照のこと。この凹部129は、好ましくは、遠位先端部122上の近位側に面した表面の形態とすることのできるショルダー124などの遠位当接部によって、遠位側が画定される。遠位先端部122は、ステント118が拡張したときにはステントの外径よりも小さいが、ステント118が収縮したときにはステントの直径よりも大きい外径を有する。この当接部124は、その結果、ステント118が収縮したときにステント118がコア112から遠位に前進するのを防止する。
【0079】
コア112に対するステント118の近位方向への移動は、ステントが半径方向に収縮した形状にあるときには、環状のショルダー125などの近位当接表面によって防止される。遠位当接部124および近位当接部125は、圧縮されたステント118を収容するコア112内の環状の凹部129の軸方向の端部によって形成された環状端面の形態とすることができる。図12を参照のこと。図10Aに示される一実施形態では、近位当接部125は、ステント止め具218によって運ばれる。ステント止め具218は、中心コア112と一体とすることも、中心コア112に取り付けることもでき、外側シース114の内側表面と滑動状態で接触するような外径を有する。したがって、圧縮されたステント14は、止め具218と外側シース114との間に嵌合しない。
【0080】
展開デバイス100は、一般的には、内部コア112の遠位端に固定された軟質のテーパ状の先端部122を有し、通常、当該技術分野で公知のようにガイドワイヤ出口ポート126を有する。テーパ状の遠位先端部122は、治療される分岐部の領域にステントシステム118を配置するために、脈管系の挿入と、非外傷性ナビゲーションを容易にする。遠位先端部122は、ポリエチレン、ナイロン、PTFE、PEBAXなど、医療用デバイスの分野で周知の様々なポリマー材料のうちのいずれかから作製することができる。図10に示される実施形態では、遠位先端部122は、先端部と外側シースとの間の移行部が滑らかな外部表面を備えるように、外側シース114の遠位部分がその中にくるようにサイズ設定され、かつ構成された環状凹部230を含む。
【0081】
遠位先端部122は、一実施形態では、先端部122の近位端128で外側シース114の外径とほぼ同じ外径から、先端部122の遠位端130でガイドワイヤの外径よりもわずかに大きい外径へとテーパ状になる。送出カテーテル100の一実施形態における遠位先端部122の全長は約3mm〜約12mmであり、一実施形態では、遠位先端部は長さ約8mmである。遠位先端部122のテーパの長さおよび率は、所望の追跡性および可撓性の特性に応じて変更することができる。先端部122は、直線、曲線、または適切であることが知られている他のいずれかの方式でテーパ状であることができる。
【0082】
図11Bおよび図12を参照すると、中心コア112の遠位部分は、好ましくは、ガイドワイヤ170上へのコア112の滑動自在な係合を可能にする、長手軸方向の管腔132を有する。ガイドワイヤ管腔132は、好ましくは、ガイドワイヤがその中を通ることができる近位アクセスポート172と、遠位アクセスポート126とを含む。近位アクセスポート172は、図11Aおよび図11Bに示されるように、また後述するように、カテーテル100の長さに沿ったあるポイントに配置することができ(ラピッドエクスチェンジ)、また、近位アクセスポート172は、カテーテル100の近位端102に配置することもできる(オーバーザワイヤー)。ラピッドエクスチェンジタイプの一実施形態では、近位アクセスポート172は、一般に、遠位アクセスポート126から約25cm以内にあり、好ましくは遠位アクセスポート126から約20cm〜約30cmの間にある。ガイドワイヤ管腔132は、該ガイドワイヤ管腔132の長さの相当な部分について、カテーテルの中心線と同心でなくてもよい。
【0083】
図11Aおよび図11Bは、近位ガイドワイヤアクセスポート172とガイドワイヤ管腔132とを含む、近位シャフト管111と遠位シャフト管113との間の移行部を示す。ガイドワイヤ管腔132は、共押出によって延びることができ、また、近位シャフト管111に対して接着された、収縮包装管によって結合させた、または他の何らかの方法で保持させた管の別個の区間とすることができる。
【0084】
図11Bに断面図で示される構造では、引っ張りワイヤ管腔220を有する近位シャフト管111は、引っ張りワイヤ管腔220の延長部とガイドワイヤ管腔132とを有する遠位シャフト管113に接合される。ここに示される実施形態では、近位シャフト管111は、遠位に延びて、コネクタ管230の近位端に達する。マンドレル(心棒)が各管腔内に配置され、収縮管236が加熱されて接合部を接着する。続いて、収縮包装に開口部が形成され、ガイドワイヤ管腔132にアクセスできるようにする近位アクセスポート172が形成される。
【0085】
一実施形態では、近位シャフト管111は、約0.025インチの外径と、約0.003インチの壁厚とを有するステンレス鋼の皮下注射器管を含む。皮下注射管の遠位端123は、テーパ状の形状へと切断または研削される。テーパ状ゾーンの軸方向の長さは、カテーテル100の所望の可撓性の特性に応じて、広範囲に変化させることができる。一般に、テーパの軸方向の長さは約1cm〜約5cmの範囲内であり、一実施形態では、約2.5cmである。カテーテルの遠位部分との移行部で皮下注射管の遠位端をテーパ状にすると、当業者には理解されるように、カテーテルの長さに沿って、比較的可撓性の低い近位区間から、比較的可撓性の高い遠位区間へと、可撓性特性のスムーズな変化がもたらされる。
【0086】
図12を参照すると、任意でバルーンも備える、二重ステント展開カテーテルの遠位端が示されている。ガイドワイヤ170が、ガイドワイヤ管腔132内に配置された状態で示されている。当業者には理解できるように、ガイドワイヤ170の直径は、ガイドワイヤ管腔132の内径よりもわずかに小さいもの(例えば、約0.001インチ〜0.003インチ)として示されている。ガイドワイヤ170とガイドワイヤ管腔132の内径との間の堅い嵌合を避けると、ガイドワイヤ170上のカテーテルの滑動性が向上する。極小の直径のカテーテル設計では、カテーテル100がガイドワイヤ170に対して軸方向に移動するときの摩擦を最小限に抑えるために、ガイドワイヤ170の外側表面および/またはガイドワイヤ管腔132の内壁を滑らかな被覆剤でコーティングすることが望ましい場合がある。ガイドワイヤ170または中心コア112の材料に応じて、パラレン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料、または当該技術分野で公知の適切な他の材料など、様々なコーティング剤を用いることができる。
【0087】
図12に示されるように、近位膨張ポートをカテーテルの遠位端によって運ばれる1つ、または複数の膨張可能なバルーン116と流体連通させるために、膨張管腔134は、カテーテル100の長さ全体にわたって延びることもできる。
【0088】
膨張可能なバルーン116がある場合、これは所望の臨床プロトコルに応じて、図12に示されるステント14などの一方もしくは両方のステントの下に、またはステントの近位もしくは遠位に配置することができる。図12に示される一実施形態では、ステントは、前述のように、初めに外側シース114が近位に後退することによって解放される自己拡張型ステントとすることができる。その後、ステントを拡張させる、および/または、ステントを形作るために、カテーテルを再配置することなく、バルーンを膨張させるように、バルーン16はステント内に同心で配置されることができる。ステントを適当なサイズおよび/または形状にするために、またはステントの後ろ側に捕捉された物質を圧縮して管腔の径を増大させるために(例えば、血管形成)、ステント展開後に膨張することが望ましいことがある。本発明を実施する代替的な一方式では、血管形成は、ステント展開カテーテル100上のバルーンによって、または別個の血管形成用バルーンカテーテル(または回転性関節切除術(artherectomy)、レーザ、もしくは他の再開通デバイス)によって、ステントの展開前に、達成される。その後、ステント展開カテーテル100は広げられた病変内に配置され、その後にステントは展開される。したがって、バルーンの膨張は、展開カテーテル100、または異なる処置カテーテルを使用して達成することができ、また、処置部位での1つ、または複数のステントの展開前に、展開と同時に、または展開後に行ってもよい。
【0089】
図9および図9Bに見られるように、カテーテルは、また、カテーテル100の近位端にハンドピース140を含む。ハンドピース140は、以下で説明するように、臨床医によってステントシステム118をナビゲートし、展開するように構成されている。ハンドピース140は、好ましくは、一方もしくは両方のステントの展開の程度を制御し、示すように構成されている制御装置150を含む。制御装置150は、一般的に、制御装置150が近位に後退すると、シース114が近位に後退するように、シース114と機械的に連絡している。遠位への移動、回転可能なホイールの回転運動、または制御装置150の他の様々な動作を代替的に使用して、1つ、または複数のステントを露出させるためにシース114を遠位に前進させる、または近位に後退させるなど、軸方向に移動させることができることが当業者には認識される。
【0090】
ここに示される制御装置150は、好ましくは、第1の位置から、第1のステント12を部分的に展開するための第2の位置、および第1のステント12を完全に展開するための第3の位置へと移動可能である。また、任意で、第2のステント14の部分的な展開および完全な展開を達成するために、第4および第5の位置を設けることができる。制御装置150は、シース114がコア112に対して後退すると露出する各ステント12または14の量を示すように構成された、表示160を含むことができる。表示160は、へこみ、切り欠き、または展開の進行を視覚的に示すための他のマーキングを含むことができる。制御装置150は、さらに、または代替的に、様々な切り欠き、もしくは他の一時的な留め具のいずれかを使用して、ステント12、14の部分的な展開および完全な展開に対応する位置にスライダを「カチッ」と入れるように、音および/または触覚的フィードバックを提供することもできる。また、整列可能な電気的接触ポイントも使用することができる。所望に応じて制御装置150を設けるために、多くの方法および構造が利用可能であることが当業者には認識される。
【0091】
カテーテル100は、当業者には認識されるように、カテーテル上に刻印された、または他の方法でカテーテルに接合された、放射線不透過性化合物を含む複数の放射線不透過性マーカ250(図2、図10、および図10Aから最もよくわかる)を含むことができる。適切なマーカは、白金、金、バリウム化合物、およびタングステン/レニウム合金などの様々な材料から製造することができる。マーカ250Aのうちのいくつかは環状形状を有し、シース114の全周にわたって延びることができる。環状マーカ250Aは、第1のステント12の遠位端の領域、第2のステント14の遠位端の領域、およびブリッジ18の領域(図1)、またはステント12、14を分離するスペースに配置することができる。第4のマーカ252は、ブリッジ18の延長部に配置された第2のステント14の下側セグメントの母線と直径方向の反対側の母線のほぼ中間点に配置することができる。図2は、分岐部内のカテーテルの回転位置を決定するために、外側シース114に沿った所望の位置に設けられる、ダイヤモンド形で厚さの薄いマーカ252を示す。マーカ250および252は、コア112上に刻印することも、シース114上に刻印することもでき、また、シース114上ではなく、ブリッジ18上など、ステント12、14上に直接刻印することもできる。
【0092】
図10および図10Aを参照すると、3つのマーカ253が、第2のステント14の遠位端に、互いに対して120°の間隔をあけて配置された状態で示されている。3つのマーカ254も、第1のステント12の近位端に、互いに対して120°の間隔をあけて配置される。各ステント12、14は、また、その反対側の端部に単一のマーカ210を含む(例えば、第1のステント12は遠位端に単一のマーカ210を有しており、第2のステント14は近位端に単一のマーカ210を有する)。言うまでもなく、当業者の所望に応じて、他のマーカの配置を使用することができる。
【0093】
中央マーカ252は、適切な放射線写真撮影装置を共に用いることにより、2つのステント12、14を隔てるブリッジ18の位置を可視化することができる。したがって、専門家が、第2のステント14の場所を可視化して、ステントを広がったゾーン46およびカリナに対して正確に配置できるようにできる。端部マーカ250Aによって、専門家は、確実にステント12、14がそれぞれ主要導管/1次導管32および二次導管/枝導管34内に正確に配置されるようにすることができる。
【0094】
一方、図2に示されるダイヤモンド形マーカ252は、それが放射線写真撮影装置の半径に対して垂直な向きにあるか、平行な向きにあるかに応じて、平面図または側面図で視認可能である。したがって、分岐部30に対するステント12、14の角度方向を特定して、最大の拡張を有する第2のステント14の部分を、広がった遷移ゾーン46に対して適切な方式で配置できるようにできる。
【0095】
次に、1対の異種ステントを分岐部の領域に配置し、展開する方法について、図3〜図6および図13〜図17を参照して説明する。以下の検討の部分は、2つの異種ステント部分の送出に関するが、本発明の特定の態様を実現しながら、より多数の、あるいはより少数のステントおよび/または類似の拡張構成を有するステントを使用できることが当業者には認識される。
【0096】
上記で概説し、図13〜図17に示したステントシステムを送出する方法は、治療される分岐部30の位置を特定するステップと、適切な送出カテーテル100を用意するステップと、その上にステント12、14が配置された送出カテーテルの遠位部分107を治療される分岐部の枝脈管内に配置するステップと、枝脈管34内で第1のステント12を部分的に展開するステップと、必要に応じて第1のステント12の位置を観察/調節するステップと、次いで、第1のステント12を完全に展開するステップとを含む。第2のステント14は、部分的に展開され、好ましくは、X線透視法による可視化の下で、引っ張りワイヤ管腔220を通じて造影剤を注入するなどして、再び位置が観察される。第2のステント14の位置は、必要に応じて、調節することができ、最後に、第2のステント14は完全に展開される。人体内の血管または他の流体導管内でカテーテルをナビゲートする方法は当業者には周知であり、したがって本明細書では論じない。
【0097】
送出カテーテル100は、前述の実施形態のいずれかに従って、外側シース114を送出カテーテルに沿って軸方向に移動させて、ステント12、14を選択的に展開させ、それによりステントシステム10を選択的に露出させることができるように構築することができる。これは、シース114を分岐部に対して固定された状態で保持し、中心コア112を選択的に遠位に前進させることによって達成することができる。したがって、本発明は、ステント展開の一方法として、外側シースを近位に後退させるのではなく、中心コア(内側シース)を遠位に前進させることによって、1つ、または複数のステントを展開することを企図する。ステントシステムは、代替的に、中心コアを分岐に対して固定された状態で保持し、シース114を選択的に近位に後退させることによって展開することもできる。カテーテルは、また、シースを遠位に前進させ、それによって中心コア112上の部分的に展開したステントを再収縮させて、再配置または取り出しを可能にするように構成させることができる。
【0098】
適切な放射線写真撮影装置によって部分的に展開されたステントの位置を可視化するために、カテーテルを通じて造影剤をステントを配置した領域に導入することができる。適切な多くの造影剤が当業者には知られている。造影剤は、ステントシステム10のいずれの展開段階でも導入することができる。例えば、造影剤は、第1のステント12を部分的に展開した後、第1のステント12を完全に展開した後、第2のステント14を部分的に展開した後、または第2のステント14を完全に展開した後に導入することができる。
【0099】
ステントシステム10の展開の程度は、好ましくは、前述のハンドピース140上のインジケータによって明らかになる。ハンドピース140および外側シースは、好ましくは、ハンドピース140上の制御装置が作動すると、遠位先端部122およびステント12、14に対して外側シース114が近位に移動するように構成される。ハンドピース140およびシース114は、また、シースをステント12、14に対して遠位に前進させることができるように、したがって、場合によってはコア112上でステント12、14のうちの1つを再収縮させることができるように構成することができる。これは、外側シース114の一部分に取り付けられた遠位端223と、ハンドピース140に取り付けられるように構成された近位端とを有する引っ張りワイヤ222を設けることによって達成することができる。あるいは、ハンドピース140を省略することもでき、後退ワイヤ222を臨床医が直接操作することもできる。
【0100】
図4〜図6に示される代替実施形態では、第1および/または第2のステント12、14を単一の動作で展開し、したがって、ステント12、14を完全に展開する前に再配置するステップを省略することができる。次いで、図5および図6に示されるように、シース114は、ステント12、14の完全な拡張を可能にするために、徐々に引き下げられる。
【0101】
好ましい一実施形態では、第2のステント14は、第1のステント12に近接して配置される。例えば、第2のステント14の遠位端38は、第1のステント12の近位端42から距離約4mm以内に配置することができ、より好ましくは、この距離は約2mm未満であり、最も好ましくは、第1および第2のステント12、14は互いから1mm以内に配置する。第1および第2のステント12、14の相対的な配置が、少なくとも一部は、前述のブリッジ18の有無によって決まることが当業者には認識される。いずれのブリッジ18の軸方向の可撓性も、一方のステントに対する他方のステントの可動度に影響を与えることになる。したがって、ステントシステム10は、好ましくは、治療される特定の分岐部に最も適しているように選択される。
【0102】
前述のように、ステント12、14は、自己拡張型、またはバルーン拡張型(例えば、実質的に非弾性の材料で作製される)とすることができる。したがって、第1および/または第2のステントを部分的に展開するステップは、ステントがその上に配置されるバルーン内に膨張流体を導入することを含むか、あるいは、ステントを自己拡張できるようにすることもできる。バルーン拡張型の第2のステント14の場合、第2のステント14がその上に配置されるバルーン116(図12A)は、特に第2のステント14の特定の形状に対応するように構成することができる。具体的には、そのようなバルーンは、好ましくは、近位端の直径よりも遠位端の直径が大きいことになる。
【0103】
ステント12、14が完全に拡張した後、コア112およびガイドワイヤ170を含む送出カテーテル100の遠位端を患者の導管および脈管系から引き出すことができる。あるいは、送出カテーテル上に追加のステントを設け、分岐部の一方または両方の枝脈管内に配置して展開することができる。例えば、図6または図17に示されるように、第2のステント14を展開した後、第3のステントを第2の枝脈管内に配置して展開できるように、カテーテル100およびガイドワイヤ170を第2の枝脈管内に後退させて再配置することができる。
【0104】
図18を参照すると、分岐部の両方の枝脈管を完全にステントで支持するように、第2の枝脈管ステント13を第2の枝脈管内に展開することができる。第2の枝脈管ステント13は、当技術分野で周知で、本明細書の他の箇所で一部開示されるような自己拡張型、またはバルーン拡張型ステントとすることができる。第2の枝脈管ステント13は、主要ステント14および/または第1の枝脈管ステント12の前または後に展開することができる。本発明の一応用例では、主要脈管ステント14および第1の枝脈管ステント12は、本明細書ですでに記載したように配置される。バルーンカテーテルや自己拡張型ステント展開カテーテルなどのステント展開カテーテル(図示せず)は、経腔的に分岐部まで進められ、主要脈管ステント14内で進められる。次いで、第2の枝脈管ステント13は、主要脈管ステント14の遠位端と端部同士を接触させるか、該遠位端から間隔をおいて配置するか、または該遠位端と重なり合うように、第2の枝脈管内で位置合わせすることができる。次いで、第2の枝脈管ステント13を展開することができ、展開カテーテルが取り出される。
【0105】
当業者には明らかなように、本明細書に記載のステントシステム10およびステント送出システム100は、人間の患者の脈管系および他の流体導管系で一般的に見られる多くの病的状態を治療するのに有用である。この装置を用いた処置には、動脈硬化あるいは内部細胞増殖の場合には分岐部の適切な直径の再構築を、または導管の壁の局所的もしくは非局所的解離の矯正、または動脈瘤の場合には動脈瘤嚢を除去しながらの正常な直径の分岐部の再形成を含むことができる。
【0106】
本発明にしたがって展開されるステントの1つ、または複数は、分岐部位で時間とともに溶出する薬物でコーティングされるか、薬物を他の方法で運ぶことができる。治療に有用な様々な薬剤、例えば、これだけに限るものではないが、再狭窄抑制剤、血小板凝集抑制剤、または内皮形成促進剤などの様々な薬剤のいずれを使用することもできる。適切な薬剤のいくつかとしては、ラパマイシン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止可能なモノクローナル抗体などの平滑筋細胞増殖阻害剤;デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、アセチルサリチル酸、およびメサラミン、リポキシゲナーゼ阻害剤などの抗炎症剤;ベラパミル、ジルチアゼム、およびニフェジピンなどのカルシウム流入遮断剤;パクリタキセル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、スクアラミン、およびチミジンキナーゼ阻害剤などの抗悪性腫瘍/抗増殖/抗細胞分裂剤;L−アルギニン;アストリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、およびニトロフイラントインなどの抗菌剤;リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔剤;リシドミン、モルシドミン、NO−タンパク質付加体、NO−多糖類付加体、ポリマーもしくはオリゴマーNO付加体、または化学的複合体などの酸化窒素(NO)供与体;D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、およびダニ抗血小板因子などの抗凝血剤;インターロイキン、インターフェロン、およびフリーラジカルスカベンジャー;成長因子、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞成長促進剤;成長因子阻害剤(例えば、PDGF阻害剤−トラピジル)、成長因子受容体アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とからなる2機能性分子、抗体と細胞毒素とからなる2機能性分子などの血管細胞成長阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤、チマーゼ阻害剤、例えば、トラニラスト、ACE阻害剤、例えば、エナラプリル、MMP阻害剤(例えば、アイロマスタット、メタスタット)、GP IIb/IIIa阻害剤(例えば、インターグリリン、アブシキシマブ)、セラトニンアンタゴニスト、および5−HT吸収阻害剤;コレステロール降下剤;血管拡張剤;ならびに内因性血管活性メカニズムを妨害する薬剤が挙げられる。また、ポリヌクレオチド配列が、p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkB、およびE2Fデコイなどの抗再狭窄剤、チミジンキナーゼ(「TK」)、およびこれらの組合せ、ならびに細胞増殖を防止するのに有用な他の薬剤の働きをすることができる。活性物質の選択は、所望の臨床結果、ならびに特定の患者の状態および禁忌の性質を考慮して行うことができる。薬物を含むか、含まないかにかかわらず、本明細書に開示のステントはいずれも、生体吸収性材料から作製することができる。
【0107】
図3に示される分岐部30は、導管32および34内を循環する液体の流れを妨げる、断面の狭窄を生じる突出部35を有する。脈管分岐部の場合、これらの突出部は、例えば、動脈硬化または細胞増殖に起因する。本明細書に記載のステントシステムは、導管32、34および広がった遷移ゾーン46の適切な直径を再構築することによって、この分岐部の処置を可能にする。
【0108】
図7に示されるように、ステントシステム10は、また、動脈瘤242を治療するためにも使用することができる。動脈瘤242は、血管壁の疾患または弱化によって引き起こされる、血管の局所的、病的な血液が充満した膨張部分と定義される。したがって、動脈瘤の領域には「代用」血管壁を設けることが望ましい。このため、第1または第2のステント12、14は、導管32、34内を循環する流体を実質的に通さないフィルム240で少なくとも部分的に被覆することができる。ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度および中密度ポリエチレンなど、多くの適切なフィルムが当業者には知られている。フィルムは、ステント12、14に縫合することができ、または、ステントが脈管32内で拡張すると、フィルム240がステントと脈管壁との間にはさまれて保持されるように、ステントの周囲に巻き付けることもできる。ステントは、これで、分岐部30内で液体を導き、その結果として動脈瘤242を形成する血管壁に応力が加わるのを防ぐ。
【0109】
ある実施形態では、第1の(円筒形)ステント12および第2の(テーパ状)ステント14を、それぞれ、個々の送出カテーテル上に設けることができる。図19〜図22を参照して、以下、分岐部における病状の治療のために単一のステントを展開する際に使用するステント送出システムの実施形態について説明する。
【0110】
図19および図20は、拡張した状態にあるときに、ほぼ真直または円筒形の形状を有する単一のステントを展開するように構成されたシステムを示しており、例えば、ステント12は、前述の実施形態の円筒形のステント12とほぼ同一とすることができる。このシステムは、一般に、ほぼ前述したような、カテーテルの遠位端上に配置された単一のステント12を有する、細長い送出カテーテル100を含む。ステント12は、保持バンド121など、複数の半径方向の抑制部を有する後退可能なシース114で取り囲まれている。ここに示される実施形態では、ステント12を圧縮した状態に保持するために、5つの保持バンド121が設けられている。あるいは、また、他の個数の保持バンド121を使用することもできる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは6つ、またはそれ以上の保持バンド121を、特定のステントについて、所望に応じて使用することができる。
【0111】
図20は、外側シース114の近位側の詳細とともに、図19のシステムを示す。真直なステント12とともに使用する送出システムは、一般的に、シース114が後退すると、ステント12の近位端が当接することになる環状のショルダー125を備えたステント止め具218を含む。図20に示されるように、ステント止め具218は、後退バンド226でシース114に取り付けられた引っ張りワイヤ222に加わる近位方向への力によってシースが後退すると、近位マーカ254に当接することになる(そのようなマーカを有する実施形態の場合)。
【0112】
図21および図22は、拡張した状態にあるときに、ほぼ円錐形、または他のテーパ形状を有する単一のステントを展開するように構成されたシステムを示す。例えば、円錐形のステント14は、前述の主要脈管ステント14と同一または類似のものとすることができる。図21のシステムは、一般に、ほぼ前述したような、カテーテル100の遠位端上に配置された単一の円錐形のステント14を有する、細長い送出カテーテル100を含む。ステント14は、複数の保持バンド121などの半径方向の保持構造を含むことができる、後退可能なシース114で取り囲まれている。ここに示される実施形態では、ステント14を圧縮した状態に保持し、シース114に押込むのに耐えるために、4つの保持バンド121が設けられている。この数の保持バンドが、図23Aに示される実施形態の円錐形のステント14に特に適している。あるいは、また、他の個数の保持バンド121を使用することもできる。例えば、1つ、2つ、3つ、5つ、もしくは6つ、またはそれ以上の保持バンド121を、特定の円錐形のステントについて、所望に応じて使用することができる。
【0113】
図22は、外側シース114の近位側の詳細とともに、図21のシステムを示す。円錐形のステント14とともに使用する送出システムは、シースが後退すると、ステント14が当接するエッジを与えるように構成された、外側シース内に配置された環状のショルダー125を備えたステント止め具218を含むことができる。図21および図22に示される、この実施形態のステント止め具218は、円錐形のステント14の近位マーカ210をその中に入れられるスロット211を含む。それとは対照的に、円筒形のステントとともに使用されるように構成された図19および図20に示される実施形態では、または特定の円錐形のステントの設計を考慮して不必要な場合は、このスロット211を省略することができる。
【0114】
単一のステントとともに使用されるように構成された送出システムは、しばしば、本明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかなように、前述の2つのステントの送出システムとは異なるサイズに設定される。例えば、単一ステント送出カテーテルでステントを受ける凹部129の軸方向の長さは、多くの場合、2つのステント用のカテーテルよりもいくらか短い。一般に、冠状動脈の分岐部で使用するための単一のテーパ状のステント用システムにおいて、ステントを受ける凹部129の軸方向の長さは、約8mm〜約18mmの範囲内であり、多くの場合、約10mm〜約13mmの範囲内である。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントは、一般に、軸方向の長さが少なくとも10mmであり、例えば、10mm、11mm、12mm、および13mmを使用することができる。冠状動脈への適用のためには、近位の拡張した直径は、一般的に、約3mm〜約6mmの範囲内であり、多くの場合、約3.5mm〜約5.5mmであり、一実施形態では、近位の拡張した直径は、約4.5mmである。遠位の拡張した直径は、一般的に、約5mm〜約8mmの範囲内であり、多くの場合、約5.5mm〜約7.5mmである。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントの一実施形態では、遠位の拡張した直径は、約6.5mmである。一実施形態では、単一ステント用カテーテルの外側シース114および内側ステント受取り凹部は、2つのステント用システムにおいて対応する部分よりも約11mm短くすることができる。
【0115】
頸動脈または胆管への適用に使用するためのテーパ状のステントは、一般に、約15mm〜約20mmまでの範囲内であり、多くの場合、約17mm〜約19mmの軸方向の長さを有する。ある特定の一実施形態では、頸動脈または胆管への適用に使用するためのテーパ状のステントは、約18mmの軸方向の長さを有する。頸動脈または胆管への適用では、近位の拡張した直径は、一般的に、約8mm〜約12mmの範囲内であり、多くの場合、約9mm〜約11mmであり、一実施形態では、近位の拡張した直径は、約10mmである。遠位の拡張した直径は、一般的に、約11mm〜約15mmの範囲内であり、多くの場合、約12mm〜約14mmである。冠状動脈への適用に使用するためのテーパ状のステントの一実施形態では、遠位の拡張した直径は、約13mmである。一般に、遠位の拡張した直径は、通常、軸方向の長さの少なくとも約40%であり、多くの場合、遠位の拡張した直径は、軸方向の長さの50%よりも大きい。
【0116】
図23Aおよび図23Bは、本発明の他の実施形態による分岐部ステント300を示す。分岐部ステント300は、第1の端部302(時に、近位端302と呼ばれる)と、第2の端部304(時に、遠位端304と呼ばれる)とを有する。分岐部ステント300は、一般に、リンク312によって互いに連結された一連のセグメント306から形成される。各セグメント306は、概ね、ジグザグパターンで延びるストラット308から形成され、ストラット308は、多数の曲線状、正弦曲線状、または他の形状およびパターンで設けることができる。一実施形態では、ストラット308は、近位頂点から遠位頂点までほぼ直線的に延びる。
【0117】
分岐部ステント300の近位端302は、近位マーカ330を保持する近位マーカ支持体328を含む。近位端302は、1つよりも多くの近位マーカ支持体328、例えば、2つもしくは3つの近位マーカ支持体328、5つの近位マーカ支持体328、7つの近位マーカ支持体328、またはそれ以上を含むことができる。分岐部ステント300の近位端302は、一般に、少なくとも1つの近位マーカ支持体328を含んでおり、多くの場合、奇数個の近位マーカ支持体328を含む。
【0118】
分岐部ステント300の遠位端304は、少なくとも1つの遠位マーカ326を保持する少なくとも1つの遠位マーカ支持体324を含む。1つよりも多くの遠位マーカ支持体324を遠位端304に設けることができる。例えば、図23Aに示されるように、3つの遠位マーカ支持体324を設けることができる。他の実施形態では、3つよりも多くの遠位マーカ支持体324、例えば、5つの遠位マーカ支持体324、7つの遠位マーカ支持体324、またはそれ以上が、分岐部ステント300の遠位端304に設けられる。
【0119】
ここに示される実施形態では、マーカ支持体324は、マーカ326を収容するための開口部327をそこに画定する、環状の材料バンド325の形態である。マーカ支持体324は、ステントとは別個に形成し、ろう付け、はんだ付け、溶接など、当該技術分野で公知の様々な技術のいずれかを使用してステントに接合させることができる。ただし、好ましくは、マーカ支持体324は、ステントの壁パターンの形成と同じプロセスにおいて、レーザ切断または他のエッチング方法を使用して管素材から切断するなどによって、ステントと一体的に形成される。これによって、接合する接合部をもつ必要がなくなる。
【0120】
図23Dを参照すると、環状バンド325は、マーカ326を収容する開口部327を画定する。環状バンド325および開口部327は、円形、正方形、長方形、楕円形、または他の形状など、任意の様々な形状を有することができる。ここに示される実施形態では、開口部327は、円周方向に延びる主軸(長軸)と、軸方向に延びる短軸とを有する、細長い、または楕円形の形状を有する。開口部327の円周方向の寸法は、ここに示される実施形態では、開口部327の軸方向の寸法よりも大きく、それによって、軸方向の長さを最小にしながら、マーカの質量を最大にすることが可能となる。開口部327の円周方向の寸法は、約0.5mm〜約1.0mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.7mmである。開口部327の軸方向の寸法は、約0.3mm〜約0.8mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.5mmである。図23Dに示される平面図で採用される環状バンド325の幅は、約0.08mm〜約0.250mmの範囲内のいずれかとすることができる。一実施形態では、幅は、約0.12mmである。同じ図から得られる隣接ストラット329の幅は、約0.075mm〜約0.250mmの範囲内のいずれかとすることができる。一般に、環状バンド325の幅は、隣接ストラット329の幅よりもわずかに大きい。一実施形態では、隣接ストラット329の幅は、約0.1mmである。
【0121】
図23Eを参照すると、ステントに取り付けられる前のマーカ326の側面図が示されている。マーカ326は、一般に、第1の断面積を有する本体部分331と、より大きな第2の断面積を有する上端部333とを含み、ほぼキノコ型の形状の構成要素となっている。本体331は、上端部333とは反対側の本体の端部に、先端部335を有する。本体331は、一般に、円筒形の形状を有することができ、また、卵形、楕円形、正方形、または他の形状など、非円形の断面形状を有することもできる。本体331は、一般に、約0.3mm〜約0.75mmの範囲内の、一実施形態では約0.5mmの直径を有するものとされる。先端部335から上端部333までの構成要素の軸方向の長さは、約0.25mm〜約0.5mmの範囲内のいずれかとすることができ、一実施形態では、約0.38mmである。上端部333の直径は、好ましくは、本体331の直径よりも少なくとも約0.1mm、好ましくは少なくとも約0.15mm大きい。一実施形態では、上端部333の直径は、約0.5mm〜約0.9mmの範囲内であり、一実施形態では、約0.7mmである。上端部333の軸方向の長さは、好ましくは、少なくとも約0.05mmであり、かつ約0.2mm以下である。一実施形態では、その長さは、約0.08mmである。また、ステント寸法および設計に応じて、記載した範囲以外の寸法も使用することができる。
【0122】
組立てにおいては、マーカ326は、ステントの管腔内に配置され、先端部335は、ステントの内側(「管腔側」)からステントの外側(非管腔側)へと、環状バンド325の開口部327を通して進められる。これによって、予め一体的に形成された上端部333がステントの内側表面に接して配置される。その後、本体331は、表面335に対する嵌入または他の加圧などによって軸方向に圧縮されて、表面335を対応するキノコ型へと再形成し、それによって本体331の直径に対して、その半径方向の直径を増大させ、ステントの外側表面上に固定表面を与える。軸方向の長さが約0.38mmから始まるマーカは、圧縮後、約0.2mm〜約0.3mmの範囲内のいずれかの軸方向の長さに縮小される。一実施形態では、圧縮後のマーカの軸方向の長さは、壁厚約0.160mmのステントに取り付けられたときには約0.24mmである。圧縮は、上端部333をステント内のアンビル表面に接して配置し、表面335に圧縮ピンを押し込むことによって達成することができる。アンビルおよび圧縮ピンの表面は、平面とすることもでき、また、得られるマーカの末端表面を、ステントの半径に相当する半径で湾曲させるために、丸みをつけることもできる。
【0123】
図23Fに、取り付けられたマーカが示されている。本発明の一実装形態では、マーカを貫く軸方向の長さは、壁厚約0.160mmのステントでは約0.244mmである。一実装形態では、マーカ326は、質量約1.70mgの金を含む。金のマーカの質量は、一般に、少なくとも約1.0mgを超えるが、処置時の所望の可視度に応じて、マーカの質量は変更することができる。
【0124】
マーカ支持体324は、ステントの「外」に、またはステントの端部を越えたところに配置される。この場合、ステントの端部は、ステントの長手軸に対して横方向に延びる平面であり、複数の頂点または尖端320を含む。この方向づけは、放射線不透過性マーカ326を、軸方向で測定されるステントの端部をわずかに越えたところに配置する。ステントの長手軸に平行方向で測定されるマーカ支持体324の長さ、または直径は、一般に、隣接セグメント306の軸方向の長さの少なくとも10%、ある実施形態では、少なくとも約20%であり、少なくとも約30%以上であってもよい。
【0125】
近位および遠位マーカ330、326は、当業者に公知の様々なマーカのいずれであってもよく、様々な形状のいずれを有していてもよい。近位および遠位マーカ330、326は、本明細書に記載のマーカのいずれをも含むことができる。例えば、マーカ330、326は、放射線不透過性とする、または放射線不透過性の特性を有することができる。マーカ330、326は、円筒形(側面から見ると円形)、ダイヤモンド形、正方形、円錐台形、または分岐部ステント300とともに使用するのに適した他の任意の形状とすることができる。マーカ330、326は、はんだ付け、ろう付け、接着や、他の付着機能とともに、またはなしで、近位および遠位マーカ支持体328、324内にマーカを圧着する、圧入する、型締させる、螺入する、または捩り入れるなど、任意の様々な方法で分岐部ステントに取り付けることができる。他の実施形態では、マーカ328、324は、分岐部ステント300のセグメント306、ステント308、および/または、近位および遠位マーカ支持体328上に塗布される。
【0126】
分岐部ステント300の各セルセグメントのストラット308は、ストラット308がジグザグパターンで分岐部ステント300の周囲に延びるときに、遠位尖端320および近位尖端322を形成する。リンク312は、1つのセグメント306の遠位尖端320から隣接セグメント306の近位尖端322まで遠位方向に延びることによって、隣接セグメント306を連結する。
【0127】
リンク312は、長方形、円筒形、テーパ形、または他の任意の形状など、当業者に公知の様々な断面形状のいずれかを有することができる。一実施形態では、リンク312は、その長さ全体にわたって一定の横断面積を有しており、他の実施形態では、リンク312は、分岐部ステント300の可撓性を高めるために、その長さに沿ってより小さい断面積(例えば直径)へと小さくなっていく。例えば、一実施形態では、リンク312またはリンクのうちの少なくとも一部は、鼓形の形状を有していて、リンクの中央部分よりもリンクの端部で広くなっている。他の実施形態では、リンク312は、一端が他端よりも広い。リンク312は、隣接ストラット308の直径にほぼ等しい、その直径よりも小さい、またはその直径よりも大きい断面積を有することができる。リンク312は、様々な長さを選択することができる。例えば、ある実施形態では、リンク312は、約0.5mm以下、約0.75mm以下、または約1mm未満の長さである。
【0128】
分岐部ステント300は、折り畳まれた、または直径が縮小された形状から、図23Aに示されるような、拡張された、または直径が拡大された形状へと拡張させることができる。拡張されたときには、分岐部ステント300は、近位(展開されたとき、上流)の直径316が、遠位(展開されたとき、下流)の直径318よりも小さい。中央管腔334が、分岐部ステント300内を、その近位端302から遠位端304まで延びる。ある実施形態では、ステント300の近位直径316は、約3.25mm以下、約4.75mm以下、または約5.25mm以下であり、遠位直径318は、少なくとも約5.5mm、少なくとも約7mm、または少なくとも約8mmである。ある実施形態では、ステント300は、約2mm〜4mmの範囲の近位直径316と、約4mm〜7mmの遠位直径とを有する。他の実施形態では、近位直径316は、約3mm〜5mmの範囲内にあり、遠位直径318は、約5mm〜9mmの範囲内にある。他の実施形態では、近位直径は、約4mm〜7mmの範囲内にあり、遠位直径318は、約8mm〜14mmの範囲内にある。
【0129】
各ストラット308の遠位尖端320から近位尖端322までの長さは、ストラット長さ310を画定する。さらに、隣接セグメント306の遠位尖端320と近位尖端322との間の距離は、リンク長さ314を画定する。リンク312は、臨床的に望ましいように、リンク長さ314が一様であるものとすることもでき、一様ではないものとすることもできる。例えば、リンク長さ314を変化させると、各セグメント306間の分岐部ステント300の可撓性の制御を可能にすることができる。さらに、より多くのリンク312を隣接セル306間に設けると、分岐部ステント300の再配置性を向上させることができる。例えば、リンク312が隣接する遠位尖端および近位尖端320、322の全ての対を連結するときには、分岐部ステント300は、展開されたときに束ねられず、一様な円錐形(またはフレア形)の形で展開カテーテルであることになる。
【0130】
図23Bは、分岐部ステント300の側壁パターンの一実施形態を明確に示すために、図23Aの分岐部ステント300を広げて平らにした図を示す。図23Cでは、ストラット長さ310およびリンク長さ314が明確に示されている。ある実施形態では、ストラット308は、すべて、ほぼ同一のストラット長さ310を有する。他の実施形態では、最も遠位側のセグメント306のストラット308のストラット長さ310は、他のセグメントのストラット308のストラット長さ310よりも大きい。ストラット長さ310は、多くの場合、約1mm〜3mmの範囲内にある。リンク長さ314は、ある場合、0.5mm〜0.75mmの範囲内、または約1mm未満である。
【0131】
図23Aおよび図23Bに示されるステントは、拘束されない拡張形状ではテーパ状の形状を有し、4つのセグメント306を含む。ステントの所望の性能特性および寸法に応じて、1個のセグメント306から、10個もしくは12個、またはそれ以上の個数のセグメント306まで、いずれの個数のセグメント306を用いることができる。図23Cに示される実施形態では、例えば、5つのセグメント306を有するステントが、拡張形状で示されている。
【0132】
図23Aに示される分岐部ステント300は、拘束されない拡張形状ではテーパ状の形状を有する。ただし、分岐部ステント300として様々な形状のうちのいずれでも使用することができ、一般に、拘束されない拡張時には遠位端304が近位端302よりも大きい断面積を有するという共通の特徴をもつ。例えば、フレア形の分岐部ステント300が図24A〜Cに示されている。図24Aのフレア形の分岐部ステント300には、一実施形態では、図23Aの分岐部ステント300と同じ構成要素の多くが含まれる。ただし、フレア形の分岐部ステント300は、その近位端302のところよりも、その遠位端304のところに、より長いストラット長さ310のセグメント306を有することができる。
【0133】
テーパ角度またはフレア形状は、分岐部ステント300がその中に展開される、特定の分岐部に対応するように選択することができる。例えば、分岐部ステント300は、少なくとも約20°、少なくとも約25°、または少なくとも約30°のテーパ半角を有することができる。他の実施形態では、分岐部ステント300は、35°よりも大きなテーパ半角を有する。
【0134】
分岐部ステント300は、多くの場合、その外側表面で拘束されない拡張したテーパ角度またはフレア形状が一様となるように、対称的なテーパ角度またはフレア形状を有する。このような形状は、円形に近い断面を有する、ほぼ円筒形の分岐部内に分岐部ステント300を展開するときに有利なことがある。ただし、分岐部の断面が非円筒形(例えば、長円形、楕円形、細長い形状など)である他の実施形態では、分岐部ステント300は、対応する非対称的なテーパ角度またはフレア形状を有することができる。非対称的であるときには、分岐部ステント300の、ある側面から見たときのテーパ角度またはフレア形状は、分岐部ステント300の、異なる側面から見たときのテーパ角度またはフレア形状とは異なる。いずれの場合でも、ステントは、展開時に本来の解剖学的構造の形状に適合するように構成することができる。
【0135】
追加のリンク312を、分岐部ステント300の隣接セグメント306間に設けることができる。例えば、図23Aの分岐部ステントでは、図23Bで最もよくわかるように、テーパ状の分岐部ステント300は、最も近位側のセグメント306と、それに隣接するセグメント306とを連結する7つのリンク312を有する。最も遠位側のセグメント306は、それに隣接するセグメント306に、4つのリンク312によって連結されている。ただし、図24A〜Cのフレア形の分岐部ステント300では、最も近位側のセグメント306は、その隣接セグメントに、7つのリンク312によって連結されており、同様に、最も遠位側のセグメント306は、その隣接セグメント306に、7つのリンク312によって連結されている。
【0136】
ここに示される実施形態では、各セグメント306は、約14個の近位頂点322と、14個の遠位頂点320とを有する。所望のステント性能および所定の解剖学的構造に応じて、頂点の数は相当に変更することができる。所望の性能に応じて、約6個〜20個、またはそれ以上のいずれかの個数の頂点を使用することができる。図23Aに示される実施形態では、近位セグメント306は、14個の遠位頂点320と、7個のリンク312とを有する。リンク312が、ステントの周囲に均等に間隔をあけて配置されるので、頂点は、1つおきにリンク312を備える。あるいは、リンク312を、頂点2つおきに、頂点3つおきに、またはそれ以上の間隔で、設けることもできる。通常、2つの隣接セグメント306間には、2つ、または3つ以上のリンク312が配置される。より高密度でリンクを配置する構成では、リンク312を、3つの隣接頂点のうちの2つに、4つのうちの3つに、もしくは5つのうちの4つに、またはそれ以上の密度で設けることができ、それには、セグメント306の周囲のあらゆる頂点上にリンク312を設けることも含まれる。リンク312と頂点との比が増大するにつれて、ステントの特定の機能特性を改善できるが、当業者には理解されるように、ステント可撓性が低下することになる。
【0137】
図23Aおよび図24Aに示されるように、拡張されたときには、分岐部ステント300は、その近位端302から遠位端304まで延びる拡張長さ332を有する。圧縮されたときには、分岐部ステント300は、同様に、その近位端302から遠位端304まで延びる圧縮長さ336を有する。ある実施形態では、拡張長さ332および圧縮長さ336は等しい、またはほぼ同じである。そのような場合、分岐部ステント300は、非短縮型、またはほぼ非短縮型である。他の実施形態では、分岐部ステント300の拡張長さ332は、圧縮長さ336よりも短い。圧縮長さ336と拡張長さ332との間の差は、約1%以下、約1.5%以下、約5%以下、または約7%以下とすることができる。
【0138】
分岐部ステント300は、多くの場合、自己拡張型であるが、所望の場合、バルーン拡張型とすることができる。自己拡張型の分岐部ステント300は、ニッケル/チタン、NITINOL(登録商標)、Elgiloyなどの擬弾性合金、または当業者に公知の他の擬弾性合金のいずれでもから作製することができる。さらに、分岐部ステントは、ステンレス鋼、ポリマー、またはプラスチックから作製することができる。
【0139】
ある実施形態では、分岐部ステント300は、当該技術分野で公知のレーザ切断技術などによって、管から切断して作製される。ただし、分岐部ステント300は、代わりに、材料のシートに所望のパターンを切り込み、シートを巻いて、円筒形、円錐台形、またはフレア形にすることによって形成することもできる。他の実施形態では、分岐部ステントは、ワイヤを所望の形状に編むことによって形成される。
【0140】
図25は、本明細書に記載のいずれかの実施形態による分岐部ステントをその中に送出できる脈管分岐部400を示す。脈管分岐部400は、一般に、主要脈管402が第1の枝脈管404と第2の枝脈管406とに分枝するところに生じる。流体は、一般に、脈管構造内を、主要脈管402から第1および第2の枝脈管404、406それぞれへと流れる。流体流れ408の方向は、一般に、分岐部400に対して近位の場所410から、分岐部400に対して遠位の場所412へと、下流に向かう向きである。
【0141】
カリナ414は、第1の枝脈管404と第2の枝脈管406とが交わる地点に形成される。カリナ414は、一般に、サドルのような形状を有し、多くの場合、主要脈管402から各枝脈管404、406へ流体がスムーズに流れることができる。
【0142】
基準直径416は、ある場合には、第1および第2の枝脈管404、406、ならびにカリナ414に近い場所における主要脈管402の内径として決定される。例えば、基準直径416は、カリナ414から約2〜4mm、約4〜6mm、約5〜7mm、または約5mmの近さの場所における主要脈管410の直径とすることができる。
【0143】
場合によっては、病変(図示せず)は、分岐部400に近い主要脈管402の内壁に沿って形成される。そのような場合、基準直径416は、一般に、病変に近い場所における主要脈管402の内径である。例えば、基準直径416は、病変から約2〜4mm、約4〜6mm、約5〜7mm、または約5mmの近さの場所における主要脈管410の直径とすることができる。他の実施形態では、基準直径416は、広がっていく遷移ゾーンからすぐ近位の、または上流の主要脈管402の直径である。分岐部に病変が存在する状況では、基準直径416は、病変からすぐ近位の、または上流の主要脈管402の直径とすることができる。
【0144】
カリナ面418は、主要脈管402を横切る方向に延び、カリナ414の接線で主要脈管402が第1および第2の枝脈管404、406の両方に分枝するところで主要脈管402と交わる。孔径420は、一般に、両方の枝脈管をまたぐ、カリナ面418における主要脈管402の直径である。
【0145】
ある実施形態では、分岐部ステント300を展開する前に、分岐部400の狭窄した面を広げることが有利なことがあり、または臨床的に必要なことがある。例えば、膨張させたときに、バルーンの壁が分岐部400の枝脈管または主要脈管のいずれかの管壁に接触して外向きの力を加えるように、バルーンカテーテル(図示せず)を分岐部400に送出し、展開させることができる。このプレ拡張は、2つのガイドワイヤと、連続的および/または接触している膨張もしくはバルーンとを使用することなど、様々な技術のいずれかを使用して実施することができる。
【0146】
図26は、本発明の一実施形態による分岐部での分岐部ステントの展開を示す。プレ拡張を容易にするために使用できる第2のガイドワイヤは、簡単のために、省略されている。ガイドワイヤ430が、主要脈管402を通して枝脈管に挿入される。ガイドワイヤ430は、その上で送出カテーテル432を患者の脈管系内で前進させることのできるレールの役割を果たす。送出カテーテル432の遠位端は、該送出カテーテル432がガイドワイヤ430上を進められるときに、脈管系の内壁に損傷を与えるのを最小限に抑える、または低減するために、非外傷性先端部434を含むことができる。後退可能なシース436で、送出カテーテル432に取り付けられた分岐部ステント300を覆う。分岐部ステント300が自己拡張型のときには、後退可能なシース436の後退によって、分岐部ステント300がその圧縮形状(図26に示される)からその拡張形状(図23Aに示される)へと拡張できるようになる。遠位および近位マーカ326、330は、分岐部ステント300の可視化と、脈管系内でのその正確な場所の決定とを可能にする。
【0147】
分岐部ステント300を分岐部400に送出するためには、図27に示されるように、分岐部ステント300の遠位マーカ326がカリナ414に隣接するまで、送出カテーテル432が進められる。当業者に周知の様々な技術のいずれかを使用して、患者の脈管系内のマーカ326を可視化することができる。
【0148】
分岐部ステント300の遠位マーカ326がカリナ面418とほぼ一直線に並ぶようになると、またはカリナ面418のすぐ遠位側にくると、後退可能なシース436は、図28に示されるように、半ばまで後退させる。後退可能なシース436は、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306を露出させるのに十分なように後退させる。分岐部ステント300が自己拡張型であるときには、最も遠位側のセグメント306は、図28に示されるように、半ばまで自己拡張することになる。最も遠位側のセグメント306が拡張するとき、遠位マーカ326は互いに離れる。遠位マーカ326は、分岐部ステントの最も遠位側のセグメント306の遠位尖端320がカリナ414の近位、カリナ414に隣接する場所にくるように、ほぼカリナ面418内に配置される。
【0149】
後退可能なシース436は、次いで、さらに近位方向に後退させて、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306に隣接した第2のセグメント306を露出させる。カテーテル432は、また、わずかに遠位方向に動かされて、少なくともマーカと、任意で遠位尖端320とが、図29に示されるように、カリナ面418の遠位にくるように、カリナ面418を越えたところまで遠位尖端320および遠位マーカ326を前進させる。この時点で、遠位に開いた「v」または他の凹面を形成する最も遠位側のセグメント306の2つの隣接ストラット308は、カリナ414をまたぎ始める。カリナ414をまたぐとき、第1のストラット408は、少なくとも一部分が第1の枝脈管404内に存在することができ、第2のストラット408(第1のストラット408に隣接できる)は、少なくとも一部分が第2の枝脈管406内に存在することができる。他の実施形態では、カリナ414をまたぐとき、第1のストラット408が第1の枝脈管404に向けられ、第2のストラット408が第2の枝脈管406に向けられる。第1のストラット408は、第2のストラット408に隣接することができる。分岐部ステント300の正確な位置および向きは、当業者に公知の様々な可視化技術のいずれかを使用して確認することができる。
【0150】
分岐部ステント300は、図30に概略的に示されるように、第1および第2の枝脈管404、406内にそれぞれ配置された、隣接する第1および第2のストラット308間に形成された、近位尖端322へと通じる遠位を向く凹部の内壁にカリナ414が接触するまで、遠位方向に進められる。次いで、後退可能なシース436は十分に後退させて、カテーテル432から分岐部ステント300を完全に解放することができる。カテーテル432から解放されると、分岐部ステント300は、その完全な拡張形状へと拡張し、ほぼ脈管分岐部400の内側表面に沿い、密着する。完全に拡張されたときには、分岐部ステント300の最も遠位側のセグメント306の遠位尖端320は、カリナ面418から少なくとも約1mm、ある実装形態では、約2mm〜約4mm遠位に配置される。
【0151】
展開された後に、分岐部ステント300は、適当なステントの配置および向きを確実にするために、ポスト膨張させることができる。例えば、バルーンカテーテルを分岐部400に前進させ、分岐部ステント300内で少なくとも部分的に膨張させることができる。バルーンは、膨張させたときに、そのバルーンが分岐部ステント300の遠位セグメント306にさらなる拡張をもたらすように形成することができる。さらに、バルーンカテーテルを使用して、分岐部に送出されたときに、バルーン拡張型分岐部ステント300を圧縮状態から拡張状態へと拡張させて、本明細書に記載の展開されたテーパ形状を達成することができる。
【0152】
図31に示されるように、枝脈管ステント500を、任意選択で、枝脈管404、406のいずれか一方、または両方に送出することができる。枝脈管ステント500は、一般に、拘束されない形状に完全に拡張されたときには、円筒形状を有する。枝脈管ステント500は、当業者に周知の様々な壁パターンまたは設計のいずれをも含むこともでき、また、図23Aおよび図24Aに記載の分岐部ステントとともに使用されるようなストラットおよび尖端を有するセルを含むことができる。
【0153】
枝脈管ステント500は、分岐部ステント300を送出するために使用されたのと同じカテーテル432を用いて、ガイドワイヤ430上で送出することができる。あるいは、分岐部ステント300を送出するために使用されたカテーテル432を脈管系から取り出し、その後に、枝脈管ステント500を収容している第2のカテーテルを送入してもよい。本明細書に記載のカテーテルのいずれをも使用して、分岐部ステント300および/または枝脈管ステント500を送出することができる。
【0154】
図31に示される一実施形態では、円筒形の枝脈管ステント500が、予め展開された分岐部ステント300の管腔334を通じて、分岐部400の枝脈管に送出される。枝脈管ステント500は、該枝脈管ステント500の近位端504が分岐部ステント300の遠位端304に部分的に重なるように展開される。枝脈管ステント500の近位尖端502は、カリナ面418の近位に配置することができ、それによって、分岐部ステント300の最も遠位側のセル306に少なくとも部分的に重なる。
【0155】
本明細書に記載のステント、ステント展開システム、および方法は、前述のように、ヒトの患者の体内のいかなる数の分岐部を治療するように構成することができる。例えば、左冠状動脈および右冠状動脈の両方の分岐部、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、腎動脈の分岐部、または他の冠状動脈分岐部である。あるいは、この装置は、気管分岐部や胆管分岐部などの非血管分岐部に、例えば、総胆管と胆嚢管との間、または主胆管の分岐部の領域で使用することもできる。
【0156】
本明細書では特定の好ましい実施形態および実施例について記載してきたが、本発明の主題が、ここで具体的に開示された実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびに、それらの自明の変更形態および均等物にまで及ぶことが当業者には理解される。したがって、本明細書で開示される本発明の主題の範囲は、前述した特定の開示された実施形態だけに限定されず、特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要脈管が第1および第2の枝脈管に分かれる脈管分岐部に分岐部ステントを展開する方法であって、
収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、
分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、
前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、
分岐部で分岐部ステントを展開するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ステントが自己拡張型である、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項3】
前記配置ステップの前に、膨張バルーンによって脈管分岐部を広げるステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項4】
前記展開ステップの後に、膨張バルーンによって分岐部ステントの第1の端部を拡張させるステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項5】
前記第1の枝脈管に枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項6】
前記第2の枝脈管に第2の枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む、請求項5に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項7】
前記枝脈管ステントが、その一部分が分岐部ステントの一部分に重なるように展開される、請求項5に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項8】
前記脈管分岐部が、冠状動脈、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、および腎動脈のうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項9】
前記第1の端部を部分的に拡張させるステップが、分岐部ステントを取り囲むシースを半ばまで後退させることを含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項10】
前記シースが1つ、または複数の保持バンドを含む、請求項9に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項11】
主要脈管が、分岐部にカリナを形成する2つの枝脈管に分かれる分岐部にステントを展開する方法であって、
分岐部でステントを部分的に展開するステップと、
ステントが少なくとも部分的にカリナをまたぐように、ステントを枝脈管の方に前進させるステップと、
分岐部でステントを展開するステップと
を含む方法。
【請求項12】
分岐部でバルーンを膨張させるステップをさらに含む、請求項11に記載の、ステントを展開する方法。
【請求項13】
分岐部ステントであって、
分岐部ステントの第1の端部から第2の端部まで、分岐部ステントの長手軸に沿って、端と端とを連結して同軸上に延びる複数のセグメントを含み、
各セグメントが、分岐部ステントの周囲に延び、ジグザグパターンで延びる複数のストラットを有しており、
この分岐部ステントは収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、拡張したときには分岐部ステントの第1の端部が第2の端部よりも大きな直径を有しており、
さらに、
第1の端部に隣接して配置されたセグメントと一体的に形成され、その中に放射線不透過性マーカを収容するように構成されたアイレットを含む、分岐部ステント。
【請求項14】
放射線不透過性マーカをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項15】
前記放射線不透過性マーカがキノコ型である、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項16】
前記放射線不透過性マーカがアイレットに圧入されている、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項17】
前記放射線不透過性マーカが金を含む、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項18】
前記放射線不透過性マーカがタンタルを含む、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項19】
前記放射線不透過性マーカが、ステントに適合する起電力をもつように選択されている、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項20】
第2の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に第2の放射線不透過性マーカを収容するように構成された第2のアイレットをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項21】
ステントの第1の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも2つのアイレットを含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項22】
第1の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも3つのアイレットを含む、請求項21に記載の分岐部ステント。
【請求項23】
ステントの第2の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも2つのアイレットをさらに含む、請求項21に記載の分岐部ステント。
【請求項24】
分岐部ステントの第1の端部と第2の端部との間に、端と端とを連結して同軸上に延びる4つのセグメントを含み、
ステントの第1の端部に一体的に形成された3つのアイレットと、ステントの第2の端部に一体的に形成された1つのアイレットとをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項25】
第1の端部と第2の端部とを備えた管状本体を有し、
第1の収縮直径から第2の拡張直径へと拡張可能であり、
ステントの第1の端部を越えたところに配置された少なくとも1つの第1の放射線不透過性マーカと、ステントの第2の端部を越えたところに配置された少なくとも1つの第2の放射線不透過性マーカおよび少なくとも1つの第3の放射線不透過性マーカとをさらに含むステント。
【請求項1】
主要脈管が第1および第2の枝脈管に分かれる脈管分岐部に分岐部ステントを展開する方法であって、
収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部近くのマーカとを備え、この分岐部ステントが拡張したときには第1の端部の直径が第2の端部の直径よりも大きい分岐部ステントを、前記マーカが脈管分岐部のところでカリナ面とほぼ一直線に並ぶように、脈管分岐部に配置するステップと、
分岐部ステントの第1の端部を部分的に拡張させるステップと、
前記マーカがカリナ面を通り過ぎて、第1の枝脈管の方に配置されるように、分岐部ステントの位置を調節するステップと、
分岐部で分岐部ステントを展開するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ステントが自己拡張型である、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項3】
前記配置ステップの前に、膨張バルーンによって脈管分岐部を広げるステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項4】
前記展開ステップの後に、膨張バルーンによって分岐部ステントの第1の端部を拡張させるステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項5】
前記第1の枝脈管に枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項6】
前記第2の枝脈管に第2の枝脈管ステントを送出するステップをさらに含む、請求項5に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項7】
前記枝脈管ステントが、その一部分が分岐部ステントの一部分に重なるように展開される、請求項5に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項8】
前記脈管分岐部が、冠状動脈、頸動脈、大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈、および腎動脈のうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項9】
前記第1の端部を部分的に拡張させるステップが、分岐部ステントを取り囲むシースを半ばまで後退させることを含む、請求項1に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項10】
前記シースが1つ、または複数の保持バンドを含む、請求項9に記載の、分岐部ステントを展開する方法。
【請求項11】
主要脈管が、分岐部にカリナを形成する2つの枝脈管に分かれる分岐部にステントを展開する方法であって、
分岐部でステントを部分的に展開するステップと、
ステントが少なくとも部分的にカリナをまたぐように、ステントを枝脈管の方に前進させるステップと、
分岐部でステントを展開するステップと
を含む方法。
【請求項12】
分岐部でバルーンを膨張させるステップをさらに含む、請求項11に記載の、ステントを展開する方法。
【請求項13】
分岐部ステントであって、
分岐部ステントの第1の端部から第2の端部まで、分岐部ステントの長手軸に沿って、端と端とを連結して同軸上に延びる複数のセグメントを含み、
各セグメントが、分岐部ステントの周囲に延び、ジグザグパターンで延びる複数のストラットを有しており、
この分岐部ステントは収縮直径から拡張直径へと拡張可能であり、拡張したときには分岐部ステントの第1の端部が第2の端部よりも大きな直径を有しており、
さらに、
第1の端部に隣接して配置されたセグメントと一体的に形成され、その中に放射線不透過性マーカを収容するように構成されたアイレットを含む、分岐部ステント。
【請求項14】
放射線不透過性マーカをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項15】
前記放射線不透過性マーカがキノコ型である、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項16】
前記放射線不透過性マーカがアイレットに圧入されている、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項17】
前記放射線不透過性マーカが金を含む、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項18】
前記放射線不透過性マーカがタンタルを含む、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項19】
前記放射線不透過性マーカが、ステントに適合する起電力をもつように選択されている、請求項14に記載の分岐部ステント。
【請求項20】
第2の端部に隣接して配置されたセルと一体的に形成され、その中に第2の放射線不透過性マーカを収容するように構成された第2のアイレットをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項21】
ステントの第1の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも2つのアイレットを含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項22】
第1の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも3つのアイレットを含む、請求項21に記載の分岐部ステント。
【請求項23】
ステントの第2の端部に、放射線不透過性マーカを収容する少なくとも2つのアイレットをさらに含む、請求項21に記載の分岐部ステント。
【請求項24】
分岐部ステントの第1の端部と第2の端部との間に、端と端とを連結して同軸上に延びる4つのセグメントを含み、
ステントの第1の端部に一体的に形成された3つのアイレットと、ステントの第2の端部に一体的に形成された1つのアイレットとをさらに含む、請求項13に記載の分岐部ステント。
【請求項25】
第1の端部と第2の端部とを備えた管状本体を有し、
第1の収縮直径から第2の拡張直径へと拡張可能であり、
ステントの第1の端部を越えたところに配置された少なくとも1つの第1の放射線不透過性マーカと、ステントの第2の端部を越えたところに配置された少なくとも1つの第2の放射線不透過性マーカおよび少なくとも1つの第3の放射線不透過性マーカとをさらに含むステント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2010−524585(P2010−524585A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504291(P2010−504291)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060884
【国際公開番号】WO2008/131266
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505061517)デバックス、 インク. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060884
【国際公開番号】WO2008/131266
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505061517)デバックス、 インク. (3)
【Fターム(参考)】
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