説明

分散アンテナシステム、分散アンテナ切替方法、基地局装置及びアンテナスイッチ装置

【課題】スループットに応じて最適な通信方式を選択する。
【解決手段】複数のアンテナを空間に分散配置した分散アンテナシステムにおいて、基地局装置102で、上り下り通信の端末スループット、同時通信端末数、分散アンテナから端末アンテナまでの無線伝搬チャネルの情報を収集し、端末スループットが要求値より下回った場合、もしくは要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合に、各々の通信モードのスループットを同時通信端末数と無線伝搬チャネル情報から推定し、推定スループットと要求値の比較によって通信モードを選択し、選択した通信モードのアンテナ接続パタンで分散アンテナと基地局装置102を接続し、基地局装置と端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散アンテナシステム、分散アンテナ切替方法、基地局装置及びアンテナスイッチ装置に係り、特に、多数のアンテナを地理的に分散配置した無線通信システムにおいて、トラフィックの状況に応じて最適なアンテナを効率的に用いて通信するための分散アンテナシステム、分散アンテナ切替方法、基地局装置及びアンテナスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線通信システムでは、スマートフォンの登場などによってデータ通信系の高速通信需要が更なる高まりを見せており、次世代高速無線方式のLTE(Long Term Evolution)方式やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)方式による高速無線インフラが整備されようとしている。従来の携帯電話システムでは、1つの基地局装置で広域をカバーするマクロセル方式が採用されている。マクロセルでは電波が届きにくい建物内部の無線環境をよくするために、アンテナを建物内部に分散配置する分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)が知られている。従来の分散アンテナシステムでは、基地局装置から漏洩同軸ケーブルを引きまわして、敷設したケーブルの周囲に電波を輻射する方法が知られている。また、基地局装置が入出力するアナログ伝送信号を分岐結合する装置を介して複数のアンテナに同軸ケーブルで分配する方法が知られている。従来の分散アンテナシステムにおいては、基地局装置の入出力信号を複数のアンテナに分配しているため、すべてのアンテナから同じ信号が入出力されている。
【0003】
近年、前述のLTEやWiMAXといった高速無線通信方式では、周波数利用効率向上の観点から、複数アンテナからデータを送信して複数アンテナで受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が採用されている。このMIMO技術では、複数のアンテナから異なる信号を送受信することが必要となるため、分散アンテナシステムにおいても複数のアンテナから異なる信号を送受信することが求められている。
【0004】
MIMO技術を分散アンテナシステムに適用する場合の背景技術として、特開2010−068496(特許文献1)がある。この文献には、「端末の電力測定部が、分散アンテナシステムの各アンテナから送信されているパイロット信号の受信電力を長期間測定する。端末は、受信電力が強い所定数個のアンテナを通信アンテナ候補として選択し通信アンテナ候補及びそれに対応する受信電力を無線基地局装置に通知する。端末のチャネル推定部は、無線基地局装置から、通信可能アンテナとそれに付与されるアンテナインデックス情報とを受信して、通信可能なアンテナに関してチャネル推定を行う。MIMO通信を行うためには基地局装置の送信信号に対して演算を行うプリコーディングマトリクスを決定する必要があるが、端末のチャネル推定に基づいて通信可能なアンテナに関するプリコーディングマトリックスインデックス(PMI)を求め、アンテナインデックス情報を使って無線基地局装置に通信して通知することによって、データ通信を実行するアンテナ毎の位相回転量、電力比率等を制御する。」ことが開示されている。
【0005】
マクロセルラシステムに分散アンテナシステムを適用した場合、広域で地理的に離れたアンテナ間では相互干渉量が小さいため、同時に通信をしてもよい。特開平11−261474(特許文献2)では、分散アンテナシステムのアンテナ間の結合量を測定して、相互の干渉量が少ないアンテナは同時に同じ周波数チャンネルの通信することで繰り返しによる周波数利用効率を向上する技術が開示されている。
【0006】
また、MIMO通信においては、複数のユーザを収容する場合に、TDMA(Time Division Multiple Access)で端末のタイムスロットを時分割し、1つのタイムスロットでMIMO通信を行う方法と、同時に複数のユーザで同時通信するマルチユーザMIMO通信をする方法があり、非特許文献1には各々の通信容量に関する検討結果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−068496
【特許文献2】特開平11−261474
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Tamaki, Kibeom Seong, Cioffi, J.M, “Downlink MIMO Systems Ustilizing Cooperation among Base Stations in a Slow Fading Channel”, in Proceedings of IEEE International Conference on ICC2007, June 2007, pp.4728 − 4733.
【非特許文献2】http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/mimo/1−1−1.pdf#page=3
【非特許文献3】http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/mimo/1−2−2.pdf#page=3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
分散アンテナシステムのメリットとして、アンテナと基地局装置の間の配線を一度敷設しておけば、無線規格が新しい規格に変更された場合でも、古い世代の通信方式と新しい世代の通信の両方をサポートできるというメリットがある。
【0010】
特許文献1に開示されているMIMO通信は、LTE規格という新しい世代の通信方式におけるMIMO通信技術を分散アンテナシステムに適用するための技術が開示されており、MIMO通信に対応した端末が前提となっている。
【0011】
現行世代のMIMOに対応していない端末や、廉価版の端末でMIMO通信に対応していない端末が分散アンテナシステム配下にあった場合については考慮されていない。
現行世代の端末では、送信アンテナが1つで受信アンテナが2本のダイバーシティ受信をするSIMO(Single Input Multiple Output)通信を行っているケースが多いため、SIMO通信とMIMO通信の切替が必要になってくる。
【0012】
また、MIMO通信をサポートしている端末であっても、要求スループットが小さい場合には、MIMO通信を行わなくても、分散アンテナシステムで端末の近くのアンテナを用いてSIMO通信することによって強い受信電力のため十分なスループットを達成する場合もある。このため、常に、MIMO通信を行う必要がない場合がある。MIMO通信のために、基地局装置と端末間の無線情報をフィードバックすることは不必要に無線リソースを使用していることになる。
逆に、SIMO通信をしていても同時通信端末数が増加すると、スループットが劣化して要求スループットを満たせなくなる場合があり、MIMO通信の必要が出てくる場合がある。
【0013】
特許文献2では、アンテナ間の結合量が少ないアンテナにいる複数の端末が同時通信する方法が開示されている。ただし、アンテナ間の結合量が大きいところでも、同時に収容してマルチユーザMIMO処理を行うことによって、ユーザ間の空間直交性を持たせることが可能であり、同時収容可能な場合もある。このため、マルチユーザに対しては空間的に干渉の少ないSIMOで同時通信をする方法や、相互の干渉量が多い環境であってもマルチユーザMIMO通信を行うことで要求スループットを満たすことも可能である。一方で、常にマルチユーザMIMO信号処理を行うことは、基地局装置や端末の信号処理量を増大させるため、端末の要求スループットが低い場合には不必要な処理をしていることになる。
【0014】
非特許文献1には、複数の通信モードの例として、マルチユーザMIMO通信モードと、MIMO通信をユーザ間で時分割する通信モードのシステム容量の比較が開示されているが、通信モードの切り替え方法や、分散アンテナシステムへの適用方法の開示はない。
【0015】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、端末がMIMO通信、またはSIMO通信のどちらが適切かを判断して、分散アンテナシステムで使用すべき最適なアンテナを選択し、最適な無線通信モードを選択する分散アンテナシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、基地局装置と端末の間でトラフィックに応じて通信モードを切り替えて、通信モードに応じて最適なアンテナを選択して、基地局装置のアンテナポートと分散アンテナ間の接続を切り替えて通信を継続することを特徴とする分散アンテナシステムを提供する。
【0017】
本発明における分散アンテナシステムでは、複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数のアンテナを持つ端末と、1つないし複数のアンテナを収容する分配装置と、複数の分配装置を空間的に分散配置して分配装置のアンテナと基地局装置のアンテナポートの接続を上り下り通信で切り替えるアンテナスイッチとを備える。また、アンテナスイッチと分配装置の間については、同軸ケーブルなど引きまわす方法もあるが、DAS親機とDAS子機を介して接続する構成であってもよい。この場合は、DAS親機をアンテナスイッチに接続し、DAS親機とDAS子機を光ファイバ等で接続して、DAS子機から分配装置までを光ファイバ、もしくは同軸ケーブル、もしくはUTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルなどで接続する。
【0018】
基地局装置では、上り下り通信の端末スループット、同時通信端末数、分散アンテナから端末アンテナまでの無線伝搬チャネルの情報を収集し、端末スループットが要求値より下回った場合、もしくは要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合に、通信モードを切り替える判断を実施する。
【0019】
通信モードとしては、SISO通信(Single User Single Input Single Output)、SIMO通信(Single Input Multiple Output)、MIMO通信(Multiple Input Multiple Output)通信があり、ある時刻において1つの端末のみが通信を行うシングルユーザモード(Single User)と、ある時刻において複数の端末が同時通信を行うマルチユーザモード(Multi−User)があり、SU−SISO/MU−SISO/SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMOの通信モードがある。
【0020】
このうち、端末がサポートすることができる通信モードから、スループットを推定し、推定スループットが要求スループットを満足する通信モードを選択する。
スループットの推定は、各々の通信モードにおいて、分散アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを端末への送受信アンテナに割り当てるかを決め、同時通信端末数と無線伝搬チャネル情報からスループットを推定する。
【0021】
具体的には、分配装置のアンテナと端末のアンテナ間の無線チャネル情報をベースに容量計算を行ってスループットを推定する方法や、SU−SISOもしくはSU−SIMOの実績に対して係数を乗算することで、その他の通信モードのスループットを推定する方法、また、各通信モードでの過去の端末スループットの実績を記憶しておき、過去の実績値を推定スループットとして用いる方法がある。
最適な通信モードが選ばれたら、その通信モードにおけるアンテナ接続パタンをアンテナスイッチに設定することによって、分配装置のアンテナと基地局装置のアンテナポートを接続して、最適な通信モードにて端末と基地局装置が通信を継続する。
【0022】
本発明の第1の解決手段によると、
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、を備えた分散アンテナシステムにおいて、
ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチ
を備え、
前記基地局装置は、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集し、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択し、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択されたアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信し、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断し、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチは、
前記アンテナ接続パタンを前記基地局装置から受け、
前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする分散アンテナシステムが提供される。
【0023】
本発明の第2の解決手段によると、
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチとを備えた分散アンテナシステムにおける基地局装置であって、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集する信号処理部と、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択するアンテナ選択部と、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記アンテナ選択部が選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信する通信モード切替処理部であって、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断する、前記通信モード切替処理部と、
を備え、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
前記信号処理部は、前記通信モード切替処理部及び前記アンテナ選択部により、選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチより、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする基地局装置が提供される。
【0024】
本発明の第3の解決手段によると、
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、を備えた分散アンテナシステムにおいて、複数の前記分配装置と前記基地局装置との間の接続を切り替えるためのアンテナスイッチ装置であって、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択されたアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信しているとき、
前記基地局装置から、第1の通信モードを第2の通信モードへ切り替えために、選択された第2の通信モード及び選択され所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを受け取る制御部と、
前記制御部により、上り及び下り通信を、それぞれ、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える受信スイッチ合成処理部及び送信スイッチ部と、
を備え、
ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えることで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とするアンテナスイッチ装置が提供される。
【0025】
本発明の第4の解決手段によると、
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチとを備えた分散アンテナシステムにおける分散アンテナ切替方法であって、
前記基地局装置は、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集し、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択し、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信し、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断し、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチは、
前記アンテナ接続パタンを前記基地局装置から受け、
前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする分散アンテナ切替方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、端末が要求するスループットを満たす最適なアンテナと最適な通信モードが選択される。端末のトラフィックが低い状況でSIMO通信が選ばれた場合は、常にMIMO通信のフィードバックを行う必要がなく、無線リソースを有効に活用することができる。また、SIMO通信を選ぶことによって、MIMO通信にかかる信号処理量よりもSIMO通信の信号処理量が低減され、端末の消費電力を低くおさえることができる。
また、混雑してきたときは、マルチユーザMIMO通信にてシステムスループットの最大化が図られるため、トラフィックの増減に対してスケーラブルに運用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Passive DASのシステム構成図
【図2】本発明の実施形態におけるActive DASのシステム構成図
【図3】広域エリアでダウンリンク通信を行う場合のアンテナスイッチ動作の実施形態
【図4】広域エリアでアップリンク通信を行う場合のアンテナスイッチ動作の実施形態
【図5】SIMO通信を行う最適なアンテナを絞り込む際におけるアンテナスイッチの接続パタン変更動作の説明図
【図6】広域なエリアでアップリンク通信を行う場合における最大比合成と選択合成の説明図
【図7】SIMO通信とMIMO通信の通信モードを切り替える際におけるアンテナスイッチの接続パタン変更動作の説明図
【図8】SU−SIMO(時分割通信)とMU−MIMO(同時通信)の説明図
【図9】ダウンリンク通信における通信モードとスループットの例についての説明図
【図10】同時通信端末数とスループットの関係に応じて通信モードを切り替える動作の説明図
【図11】通信モード切替における制御シーケンスの説明図
【図12】本発明の実施形態における基地局装置の構成図
【図13】本発明の実施形態における基地局装置の同時通信端末数計測部アルゴリズムの説明図
【図14】本発明の実施形態における端末リスト情報と同時通信端末情報の説明図
【図15】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部アルゴリズムの説明図
【図16】実施形態4における基地局装置の通信モード切替処理部アルゴリズムの説明図
【図17】本発明の別の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のSU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO通信モード選択アルゴリズムの説明図
【図18】本発明の実施形態における基地局装置におけるチャネル情報の説明図
【図19】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部でのスループット推定方法に関する説明図
【図20】パイロット信号の送信オーバヘッドに関する説明図
【図21】本発明の実施形態における分配装置のアンテナ間のチャネル情報を収集するためのパイロット信号送信方法の説明図
【図22】本発明の実施形態における分配装置のアンテナ間のチャネル情報を収集とアンテナクラスタ計算に関する制御シーケンスの説明図
【図23】本発明の実施形態における分配装置のアンテナ間のチャネル情報の説明図
【図24】本発明の実施形態におけるSIMO通信からMIMO通信に切り替える際のMIMO候補アンテナ選択とMIMO通信制御シーケンスの説明図
【図25】端末からのパイロット信号を利用したSIMO/MIMOアンテナ候補選択に関する説明図
【図26】本発明の実施形態における基地局装置のアンテナ選択部アルゴリズムの説明図
【図27】本発明の実施形態における分配装置の構成図
【図28】本発明の実施形態におけるアンテナスイッチの構成図
【図29】本発明の実施形態における端末の構成図
【図30】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のSU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO通信モード選択(速度UP)アルゴリズムの説明図
【図31】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のSU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO通信モード選択(速度Down)アルゴリズムの説明図
【図32】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のSU−SIMO判定処理アルゴリズム
【図33】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のMU−SIMO判定処理アルゴリズム
【図34】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のSU−MIMO判定処理アルゴリズム
【図35】本発明の実施形態における基地局装置の通信モード切替処理部のMU−MIMO判定処理アルゴリズム
【図36】本発明の実施形態における基地局装置の送信アンテナ数決定に関する説明図
【図37】本発明の実施形態における基地局装置のアンテナクラスタ情報の説明図
【図38】本発明の別の実施形態における分配装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
A.実施形態1
1.分散アンテナシステム
本実施形態では、端末のトラフィックの状況に応じて、最適なアンテナと通信モードを選択する基地局装置を特徴とする分散アンテナシステムについて説明する。
【0029】
まず、図1を用いて本発明に関連する分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)の一つの実施形態について説明する。このシステム構成では、基地局装置102が活用するアンテナ106a,106b,106c,106d,106c,106e,106f,106g,106h,106iを空間的に分散した場所に配置し、DAS親機103とDAS子機104a,104b,104cを介して基地局装置102のアンテナポートの入出力信号を伝達する。DAS親機103とDAS子機104a,104b,104cは、光ファイバなどを用いた高速ディジタル通信を行っている。この区間で無線のアナログ信号をそのまま伝送する方法と、アナログ信号をディジタル変換して伝送する方法がある。分岐結合装置105a,105b,105cは、アナログ伝送信号をN方向に分岐結合する装置である。例えば、端末107aは、周囲にある1つないし複数のアンテナ106a,106bを介して基地局装置102と無線通信を行い、高速バックホール回線終端装置101を介して外部ネットワークと接続してインターネット接続を行うことができる。図1の例では、基地局装置102のアンテナポートが1つの例を示している。この場合、基地局装置102の1つのアンテナポートの信号が全てのアンテナと分岐・結合されているため、複数のアンテナから同一の信号しか入出力することができず、上述のMIMO技術を適用することができない。基地局装置102が例えば、二つのアンテナポートを持っていた場合に、上述のMIMO技術を適用する場合には、二つのアンテナポートの信号が独立して接続する必要があり、例えば、アンテナ106aまでの同軸ケーブルとは別の系統で繋ぐ必要がある。つまり、二本の同軸ケーブルを引きまわすことになり、配線の量が増える。
【0030】
図2は、本実施形態における分散アンテナシステム構成図の例である。端末107a,107b,107cと、分配装置108a,108b,108c,108d,108e,108fと、DAS(Distributed Antenna System)子機104a,104b,104cと、DAS親機103と、アンテナスイッチ109と、基地局装置102と高速バックホール回線終端装置101とを備える。この構成では、基地局装置102が持つ複数のアンテナポートよりも多い数のアンテナをサポートするためのアンテナスイッチ109を持つことが特徴である。アンテナスイッチ109の機能は、基地局装置102やDAS親機103の中にあってもよい。アンテナスイッチ109によって、基地局装置102の複数のアンテナポートと、複数の分配装置108a,108a,108b,108c,108d,108e,108fが持つ複数のアンテナ106a1,106a2,106b1,106b2,106c1,106c2,106d1,106d2,106e1,106e2,106f1,106f2の間の接続を切り替えることによって、特定場所だけMIMO通信を適用してスループットを向上することが可能になる。
【0031】
例えば、端末107aは分配装置108aのアンテナ106a1と106a2の二本のアンテナを利用して送受信2本のMIMO通信をすることができる。また、アンテナスイッチ109がアンテナ切替を行うことによって、分配装置108aのアンテナ106a1と、分配装置108bのアンテナ106b1の二本のアンテナを用いて、送受信2本のMIMO通信に切り替えることができる。伝搬状況に応じて、最適なアンテナを選択することによってスループットを向上することができる。ただし、システム全体で扱うアンテナの数が多いと、最適なアンテナを即時に探し出すのに時間がかかるという課題がある。
【0032】
以下、アンテナスイッチ109の動作例について説明する。以降では、図2における基地局装置102から出ている入出力信号が8並列である実施形態を示し、それぞれ<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>、<7>、<8>と定義する(なお、図中は丸数字で表す。以下同様)。基地局装置102が扱うアンテナポート数が8本であるということは、MIMO通信における送受信アンテナが最大8本まで可能であるという意味である。IMT−Advanced規格では送受信8本のアンテナでのMIMO通信が規定されており、IMT−Advanced規格における基地局装置102は最大8本サポートすることが可能である。なお、この並列数は標準規格によって定まるものであり、本発明は8本以上であってもよい。なお、図2では便宜上8本の信号線を記載したが、8本の信号が多重化されて1本の信号線で伝送されてもよい。つまり、基地局装置102とアンテナスイッチ109の間が物理的に8本必要という訳ではない。
【0033】
また、アンテナスイッチ109がDAS親機103側に出力する信号が12並列である実施形態を示し、それぞれの信号を#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12と定義する。なお、この信号も#1〜#12に限られず、適宜の数定めることができる。
【0034】
図3を用いて、ダウンリンク通信におけるアンテナスイッチ109の動作例を説明する。アンテナスイッチ109は、基地局装置102の送信出力信号<1>を全てのアンテナポート#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12に接続している。このとき、分配装置108a,108b,108c,108d,108e,108fのアンテナ106a1,106a2,106b1,106b2,106c1,106c2,106d1,106d2,106e1,106e2,106f1,106f2は、それぞれ#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12に対応しており、全てのアンテナから基地局装置102の送信出力信号<1>が送信されていることになる。ブロードキャストパケットなど広い範囲に到達させるのに有効な通信を実現する。端末107aがどこにいるのか分からない場合、どのアンテナを用いて通信すればよいか絞り込むことができないため、この通信方式を活用することによって広いエリアで通信を行う。ただし、同じ信号が多重経路を経て端末107aに到達するため、マルチパスによる遅延スプレッドの広がりが生じて、通信速度を劣化させてしまう可能性がある。OFDMシンボル間の干渉が生じないように、OFDM信号のガードインターバルが設計されていればよい。もし、遅延スプレッドで通信速度が劣化する場合は、端末107aに対する最適な送信アンテナを探して、送信アンテナを1つに絞ることによって多重経路数を削減して遅延スプレッドの広がりを減少させて通信を安定にすることができる。
【0035】
図4を用いて、最適な送信アンテナを探す別の方法について説明する。アンテナスイッチ109において、分配装置108aのアンテナ106a1に割り当てた#1を基地局装置102の<1>の受信信号とし、同様に#2を<2>に、#3を<3>に、#4を<4>に割り当て、#5と#6の受信信号を最大比合成した信号を<5>の受信信号とし、同様に#7と#8を<6>に、#9と#10を<7>に、#11と#12を<8>に割り当てる。端末107aからパイロット信号を送信し、基地局装置102は、<1>〜<8>で受信した信号の受信電力を測定し、最も受信電力が高かったアンテナを候補として絞る。もし、<1>で受信した信号が最も高い受信電力であれば、#1のアンテナが最適な送信アンテナとして選ばれる。
【0036】
もし、アンテナスイッチ109において、最大比合成の機能を持たない場合には、<1>を#1、#2を<2>、#3を<3>、#4を<4>、#5を<5>、#6を<6>、#7を<7>、#8を<8>に割り当てる。端末107aからパイロット信号を送信して、基地局装置102で<1>〜<8>で受信した信号の受信電力を測定し、最も高かったアンテナを候補として受信電力とアンテナ番号を記憶する。次に、#9を<1>に、#10を<2>に、#11を<3>に、#12を<4>に割り当て、端末107aが送信したパイロット信号の受信電力を<1>から<4>で測定する。最も高い受信電力の値を、先に記憶した受信電力の値と比べることによって、最も大きい受信電力のアンテナを送信アンテナとして選択する。
【0037】
図5を用いて、最適なアンテナを選択する方法について説明する。
アンテナスイッチの接続パタン1においては、図3で説明したように、基地局装置102の1つのアンテナポート<1>の送信信号をすべてのアンテナに接続して広域に送信する。受信アンテナの設定は、図4で説明したアンテナ接続パタンとして、すべてのアンテナからの信号を受信できる状態にしておく。
【0038】
基地局装置102が定期的な報知信号または個別の制御信号を送信し、これを受信した端末107aは、パイロット信号を送信してアクセスしてくる。<1>〜<8>の中からどの受信信号が最も高い受信電力であったか調べる。
端末が送信したパイロット信号の受信電力を測定して、最も高い受信電力となるアンテナを基地局装置の送信アンテナとして特定し、受信電力が高い順にN本のアンテナを基地局装置の受信アンテナとするようにアンテナ接続パタンを決定する。以下に、送信アンテナ1本、受信アンテナ2本のSIMO(Single Input Multiple Output)通信を選択する例について説明する。
【0039】
図5の例では、端末が送信したパイロット信号を<6>のアンテナポートで受信した信号が最も高い受信電力であった場合、アンテナ接続パタンをパタン2のように設定する。具体的には、<1>の送信信号を#7と#8に接続し、#7の受信信号を<1>に、#8の受信信号を<2>に接続する。基地局装置102からの報知信号もしくは特定の制御信号によって、端末107aは、再度、パイロット信号によってアクセスしてくる。基地局装置102は、端末107aが送信したパイロット信号を受信すると、<1>と<2>の受信電力を比較する。もし、最も高い受信電力が<2>であった場合には、#8を最適な送信アンテナとして選択する。そこで、アンテナスイッチの接続パタンをパタン3に変更する。具体的には、<1>の送信信号を#8に接続し、#7と#8の受信信号を最大比合成した信号を<1>に接続する。
【0040】
もし、アンテナスイッチ109に最大比合成の機能がない場合には、#7の受信信号を<1>に接続し、#8の受信信号を<2>に接続して、基地局装置102にて最大比合成をしてもよい。このパタン3の接続パタンにて、端末と通信を継続する。
なお、定期的に広く受信する必要があるため、空いているアンテナに<3>の送信信号を割り当て、空いているアンテナの受信信号を<3>〜<8>に割り当てることによって、他のユーザをサポートすることも可能である。
【0041】
図6に、アップリンク通信におけるアンテナスイッチ109の動作例を示す。
アンテナスイッチ109で、アンテナ#1,#2,#3,#4の受信信号を基地局装置102のアンテナポート<1>に接続し、アンテナ#5,#6,#7,#8の受信信号を基地局装置102のアンテナポート<2>に接続し、アンテナ#9,#10,#11,#12の受信信号を基地局装置102のアンテナポート<3>に接続する。この構成では、基地局装置102の3つのアンテナポートを利用して全部のアンテナからの信号を受信することができるため、端末107aがどこにいるか分からない状況でもロバストな通信が可能となる。また、図4で説明した接続構成では<1>から<8>の全部のアンテナポートを用いて受信をしていたが、3つのアンテナポートで済む。アンテナスイッチ109では、アンテナ#1,#2,#3,#4からのすべての受信信号について最大比合成をする。ここでは、アンテナ#1〜#4の受信信号を最大比合成する例を示したが、アンテナスイッチ109が扱うアンテナ本数以下の任意の複数本のアンテナ信号を最大比合成し、基地局装置102のアンテナポートに接続することもできる。
【0042】
なお、アンテナ#1,#2,#3,#4のうち、有意と思われる受信信号のみ選択して最大比合成をしてもよい。例えば、アンテナ#1,#2には受信信号があるが、アンテナ#3,#4では受信信号がノイズレベルに埋もれているような場合には、アンテナ#1,#2,#3,#4の全部の受信信号を合成してしまうとノイズが加算されて信号対雑音電力比(SNR)が劣化してしまう。このため、アンテナ毎に受信電力を測定し、ノイズレベルと変わらないものについて出力しないという出力制御を設けることによって、不必要なアンテナからの受信信号を合成しなくすることができる。
【0043】
この受信電力測定と出力制御の機能は、分配装置108a,108b,108c,108d,108e,108fにあってもよい。もしくは、アンテナスイッチ109にあってもよい。最大比合成する機能は、アンテナスイッチ109に持つ。なお、図6の例では最大比合成された<1>、<2>、<3>の受信信号は、基地局装置102で<1>、<2>、<3>の受信電力をベースに品質が最も高い受信信号を選択する選択合成処理を行う。
【0044】
なお、基地局装置102で<1>、<2>、<3>の受信信号に対して最大比合成の信号処理を行ってもよい。また、アンテナスイッチ109を安く構成するために、最大比合成処理機能を持たない場合については、図6のアンテナスイッチ109の接続方法は実現できない。この場合は、最大比合成を行う処理を基地局装置102で行うため、各アンテナ1つに対して、基地局装置102のアンテナポートを1つ割り当てることになる。
【0045】
図7に本発明の実施形態におけるアンテナスイッチ109の動作例を示す。
アンテナスイッチ109の接続パタン4では、アンテナ#1に<1>の送信信号を割り当て、アンテナ#2には送信信号を割り当てず、アンテナ#3〜#12までに<2>の送信信号を割り当てる。また、アンテナ#1と#2の最大比合成した受信信号を<1>に割り当て、#3の受信信号を<2>に、#4の受信信号を<3>に、#5の受信信号を<4>に、#6の受信信号を<5>に、#7と#8の最大比合成した受信信号を<6>に、#9と#10の最大比合成した受信信号を<7>に、#11と#12の最大比合成した受信信号を<8>に割り当てる。アンテナ#1と#2を用いて、基地局装置102と端末107aがSIMO通信をしているとする。SIMO通信に使っているアンテナ以外のアンテナについては、別個の送信信号を送ることができ、また、SIMO通信している端末107a以外の端末が送信するアクセス信号を全てのアンテナで受信することが可能な接続構成となっている。
【0046】
アンテナスイッチ109の接続パタン5では、アンテナ#1と#2の割り当てはパタン4と同様であるが、アンテナ#5と#6に別のユーザが接続した例となっている。このため、アンテナ#6に<2>の送信信号を割り当て、アンテナ#5と#6の最大比合成した受信信号を<2>に割り当てている。アンテナ#3,#4,#7〜#12については、<3>の送信信号を割り当て、受信信号を<3>〜<8>のアンテナポートで受けることが可能な構成で割り当てている。
【0047】
アンテナスイッチ109の接続パタン6では、アンテナ#1と#2で通信しているユーザがSIMO通信からMIMO通信に切り替わったときの様子を表している。このとき、アンテナ#1と#2の送受信で独立した基地局装置102のアンテナポートを割り当てる必要がある。このため、アンテナ#1に<1>の送信信号を、アンテナ#2に<3>の送信信号を割り当て、アンテナ#1からの受信信号を<1>に、アンテナ#2からの受信信号を<3>に割り当てる。アンテナ#5,#6については、接続パタン5と変わらない。これによって、<1>〜<3>までのアンテナポートを通信に使用しているため、<4>〜<8>のアンテナポートによって残りのアンテナとマッピングをとる。具体的には、アンテナ#3,#4,#7〜#12については、<4>の送信信号を割り当て、受信信号を<4>〜<8>のアンテナポートで受けることが可能な構成で割り当てている。
【0048】
アンテナスイッチ109の接続パタン7では、アンテナ#5と#6で通信しているユーザがSIMO通信からMIMO通信に切り替わったときの様子を表している。このとき、アンテナ#5と#6の送受信で独立した基地局装置のアンテナポートを割り当てる必要がある。このため、アンテナ#5に<4>の送信信号を、アンテナ#6に<2>の送信信号を割り当て、アンテナ#5からの受信信号を<4>に、アンテナ#6からの受信信号を<2>に割り当てる。これによって、<1>〜<4>までのアンテナポートを通信に使用しているため、<5>〜<8>のアンテナポートによって残りのアンテナとマッピングをとる。具体的には、アンテナ#3,#4,#7〜#12については、<5>の送信信号を割り当て、受信信号を<5>〜<8>のアンテナポートで受けることが可能な構成で割り当てている。
【0049】
2.通信モードとスループット

図8に、複数ユーザがSIMO通信を行う場合の通信モードに関する説明図を示す。ここでは、図7におけるアンテナ接続パタン5を想定しており、アンテナ#1と#2を用いて端末107aがSIMO通信をしており、アンテナ#5と#6を用いて端末107bがSIMO通信している例をとりあげる。
【0050】
基地局装置がリソースを配分するスケジューラのアルゴリズムによってSIMO通信には、SU−SIMO(Single User SIMO)通信とMU−SIMO(Multi−User SIMO)通信の二つの通信モードがある。SU−SIMO通信は、ある時刻において通信している端末が1つのみ(シングルユーザ)のSIMO通信を行う通信モードである。これに対し、MU−SIMO通信は、ある時刻において複数の端末(マルチユーザ)がSIMO通信を行う通信モードを表す。SU−SIMO通信であっても、MU−SIMO通信であっても、アンテナ接続パタンはパタン5で変わらない。
【0051】
まず、(1)SU−SIMO(時分割)の例では、端末107aと端末107bが時間的に重ならないように半分の時間ずつ利用して通信を行う。この場合、端末107aのみで通信していればスループットが5Mbps出るが、利用できる時間を端末107bと分けあうことにより半分となるためデータを送付できるトータル時間が2倍となるため、スループットは半分の2.5Mbpsになる。同様に、端末107bのみで通信したら3Mbpsのスループットが出る状況で、端末107aと端末107bで半分の時分割をすれば1.5Mbpsになる。
【0052】
次に、(2)MU−SIMO(同時通信)の例では、端末107aと端末107bが同時に通信をする。相互に干渉しなければ、端末107aも端末107bも最大限のスループットを達成できるが、相互の干渉量に応じてスループットの劣化が生じる。図8の例では、相互の干渉によるスループットの劣化が、干渉のないときに比べて60%程度の速度を達成する場合の例を示しており、端末107aは3.0Mbps、端末107bは1.8Mbpsという値を示している。空間的な分割がなされている環境では、相互の干渉量が小さければ、同時に通信をした方がよい場合がある。図8の例では、(2)のMU−SIMO(同時通信)をした方がシステム全体のスループットはよくなるケースを示している。MU−SIMO通信を行う場合でも、干渉を回避するために、周波数方向のリソースブロックを半分に分けた場合は、SU−SIMO(時分割)通信と同様にスループットは半分に劣化する。また、干渉を回避せずにMU−SIMO通信を行って、相互干渉量が多ければ、システム全体のスループットを劣化させる場合がある。
【0053】
MIMO通信においても、ある時刻において通信している端末が1つのみ(シングルユーザ)であるMIMO通信のことをSU−MIMO通信と呼ぶ。また、ある時刻において複数の端末(マルチユーザ)がMIMO通信する場合をMU−MIMO通信と呼ぶ。この場合においても、上記のSU−SIMO通信とMU−MIMO通信と同様の関係がある。
【0054】
図9に、通信モードとスループットの関係に関する説明図を示す。上述のSU−SIMO,MU−SIMO,SU−MIMO,MU−MIMOで通信した場合について、端末107aのダウンリンクのスループットの例を示している。
端末107aのみでSU−SIMO通信する場合は、5Mbpsのスループットが出るとする。端末107aと端末107bが、SU−SIMO通信で時分割した場合に、端末107aのスループットは2.5Mbpsであるとする。これは、端末107aのみでSU−SIMO通信を行った場合におけるスループットの約半分に相当する。同様に、端末107aと端末107cでSU−SIMO通信を時分割通信した場合、端末107aのスループットは2.5Mbpsであるとする。これも、端末107aのみでSU−SIMO通信を行った場合におけるスループットの約半分に相当する。端末107a,107b,107cでSU−SIMO通信で時分割を行った場合は、端末107aのスループットは1.7Mbpsであるとする。これは、端末107aのみでSU−SIMO通信を行った場合におけるスループットの約1/3に相当する。端末107aと端末107bが同時にMU−SIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは3Mbpsであるとする。端末107aと端末107cが同時にMU−SIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは2.8Mbpsであるとする。端末107a,端末107b,端末107cが同時にMU−SIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは1.5Mbpsであるとする。これらの同時通信時のスループットは、端末107a,107b,107cの位置によって干渉状況が異なり、組合せによってスループットは異なる。
【0055】
同様に、端末107aのみでSU−MIMO通信を行っていた場合は、2本の送受信アンテナにより、約2倍の速度向上で9.8Mbpsのスループットであるとする。端末107aと端末107bが、SU−MIMO通信で時分割する場合には、端末107aのスループットは4.9Mbpsであるとする。これは、端末107aのみでSU−MIMO通信を行った場合におけるスループットの約半分に相当する。同様に、端末107aと端末107cでSU−MIMO通信を時分割通信すると、端末107aのスループットは4.9Mbpsであるとする。これも、端末107aのみでSU−MIMO通信を行った場合におけるスループットの約半分に相当する。端末107a,107b,107cでSU−MIMO通信で時分割を行った場合は、端末107aのスループットは3.3Mbpsであるとする。これは、端末107aのみでSU−MIMO通信を行った場合におけるスループットの約1/3に相当する。
【0056】
端末107aと端末107bが同時にMU−MIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは5.5Mbpsであるとする。端末107aと端末107cが同時にMU−MIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは5.4Mbpsであるとする。端末107a,端末107b,端末107cが同時にMU−MIMO通信を行った場合の端末107aのスループットは3.8Mbpsであるとする。これらの同時通信時のスループットは、端末107a,107b,107cの位置によって干渉状況が異なり、組合せによってスループットは異なる。
【0057】
上記のような各通信モードにおけるスループットの実績値を考慮した場合、端末107aの要求スループットが2Mbpsとすると、端末107a,107b,107cが同時に通信する場合は、MIMO通信モードを選択する必要がある。
【0058】
図10に、本発明の実施形態における端末スループットの変化と通信モード切替に関する説明図を示す。一般的に、同時通信端末数が増えると、1端末あたりのスループットは劣化する。上述のSU−SIMO通信は、同時通信端末数がN台に増えた場合、時分割で均等にスケジューリングした場合、1端末でSU−SIMO通信していた場合のスループットの1/Nになる。同時通信端末数がn台のときに、端末107aのスループットが閾値1を下回ったとして、このとき通信モードを切り替える。図10の例では、MU−SIMO(同時)通信に切り替えている。MU−SIMO(同時通信)では、端末間の相互干渉量が少ない端末の組合せをスケジューラで求めて同時通信させる。端末数が多くてスケジューリングオーバヘッドが大きい場合は、MU−MIMO(時分割)に通信モードを切り替えてもよい。
【0059】
更に、同時通信端末数がm台のとき、MU−SIMO(同時通信)で端末107aのスループットが閾値1を下回ったとして、この時点で通信モードを切り替える。候補としては、SU−MIMO(時分割)かMU−MIMO(同時通信)の通信モードが選ばれる。MU−MIMO(同時通信)では、端末とアンテナの組合せをスケジューラで求める必要がある。この例では、SU−MIMO(時分割)が選ばれたとして説明する。同時通信端末数が減少して、l台となったとき、スループットは増加しており、閾値2を超えたとする。このとき通信モードを切り替える。このとき、MU−SIMO(同時通信)が選択される。この通信モード切替は、端末107aに対してSU−MIMO(時分割)通信によって過剰にアンテナリソースを割り当てている状況を回避し、少ないアンテナを割り当てることによって、基地局装置102および端末107aの通信にかかる計算処理量を低減し、消費電力を低減する効果が得られる。
このようにして、同時通信端末数の増減に伴って適した通信モードを選択する。
【0060】
図11に、本発明の実施形態における通信モード切替の制御シーケンスの説明図を示す。まず、端末107aが基地局装置102とSU−SIMO通信を行っている状況に、端末107bが加わり、端末107aと端末107bがSU−SIMO通信(時分割)を行っているとする。このように、SU−SIMO通信(時分割)で収容する端末数が増加していくものとする。基地局装置102では、同時通信端末数が閾値m以上となっていた場合に、通信モード切替判定処理を実施し、SU−SIMO(端末時分割)、MU−SIMO(端末同時通信)、SU−MIMO(端末時分割)、MU−MIMO(端末同時通信)のいずれかを選択する。これによって、必要なアンテナ割り当てが決まり、基地局装置102はアンテナスイッチ109に対してアンテナ切替指示の制御信号を送信する。アンテナ切替指示の内容は、例えば、端末107aと端末107bでSU−MIMO(端末時分割)の通信モードを選択した場合、端末両方でMIMO通信を行うアンテナパタンとして、図7のアンテナパタン7の内容をアンテナ接続パタンとしてアンテナスイッチ109に通知すればよい。
【0061】
なお、通信モードは、これらSU−SIMO(端末時分割)、MU−SIMO(端末同時通信)、SU−MIMO(端末時分割)、MU−MIMO(端末同時通信)等に限らず、例えば、ある時刻において1つの端末のみが通信を行うシングルユーザモードかある時刻において複数の端末が同時通信を行うマルチユーザモード、及び、分散アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを端末への送受信アンテナに割り当てるか、及び、端末のどのアンテナを送受信アンテナに割り当てるか、等により定めることができる。
【0062】
また、アンテナ番号の決定については、例えば、#1、#2、#3、#4の中から決定する場合、もしも、#1、#2、#4が推定スループットを満足すれば、物理的に使うアンテナが決定される。この3つのアンテナに対して、アンテナポートを選ぶ処理では、3つのポートが必要になる。そこで、アンテナポートについては、例えば、通信で既に使っていたポート数を継続的に使うことを前提にして、ポート数を増やす必要があれば空きポートでポート番号の小さいものから選択して充足するように構成することができる。使っていたポートの数が、新たに決定した物理アンテナ数よりも大きければ、ポート番号の大きなアンテナポートを解放する。これによって、ポートと物理アンテナの接続パタン(アンテナ接続パタン)を決定する。
【0063】
アンテナスイッチ109は、アンテナ切替指示のアンテナ接続パタンに従って、アンテナ#1〜#12と、基地局装置102のアンテナポート<1>〜<8>の送受信信号の対応を設定し、基地局装置102にアンテナ切替指示応答によって設定が完了したことを通知する。
【0064】
次いで、基地局装置102は端末107aと端末107bに選択した通信モードを通信モード切替指示の制御信号によって通知する。端末107aと端末107bは、通信モード切替指示応答の制御信号によって通信モード切替の完了を基地局装置102に通知し、選択された通信モード(例えば、SU−MIMO(端末時分割)通信)で通信を行う。
【0065】
続いて、基地局装置102で同時通信端末数が閾値l以下になったことを検出すると、同様に通信モード切替判定処理を行い、それに応じたアンテナ接続パタンを決定する。基地局装置102は、アンテナスイッチ109に決定したアンテナ接続パタンをアンテナ切替指示の制御信号によって通知し、アンテナスイッチ109は指定されたアンテナ接続パタンに設定が完了したら基地局装置102にアンテナ切替指示応答の制御信号によって完了を報告する。基地局装置102は、端末107aに通信モード切替指示の制御信号によって通信モードを通知し、端末107aは通信モード切替指示応答の制御信号によって通信モードの切替が完了したことを基地局装置102に通知する。
図11の例では、端末107bが通信しなくなったため、端末107aのみのSU−SIMO通信が選ばれた例を示している。
【0066】
3.装置

図12に、本発明の実施形態における基地局装置102の構成図を示す。基地局装置102は、アンテナポート入出力インタフェース1201と、ベースバンド信号処理部1202と、制御部1210と、有線インタフェース1214とを備える。
【0067】
アンテナポート入出力インタフェース1201では、上述の<1>〜<8>の8アンテナポートの信号をアンテナスイッチ109とのインタフェースに合わせて信号変換を行う。アンテナスイッチ109からの受信信号は、シリアルパラレル変換してベースバンド信号処理部1203の信号処理部1205に渡す。ベースバンド信号処理部1203の信号処理部1205からのアンテナポート<1>〜<8>の送信信号は、アンテナポート入出力インタフェース1201で多重化され、アンテナスイッチ109に送信される。
【0068】
ベースバンド信号処理部1202は、パイロット信号生成部1203と、チャネル推定処理部1204と、信号処理部1205と、同時通信端末数計測部1206とを備える。
パイロット信号生成部1203は、端末が既知の送信信号を生成し、これによってアンテナから送信された信号と端末の間の無線伝搬チャネルを推定することができる。伝搬チャネルを推定することによって、アンテナと端末の間の受信電力を測定することができる。パイロット信号生成部1203で生成されたパイロット信号は、信号処理部1205に渡され、無線通信規格に則った符号化、変調の信号処理を施してから送信信号として送信される。
【0069】
また、端末107a,107b,107cから送信された既知のパイロット信号を受信した場合は、無線通信規格に則って復調、復号の信号処理を信号処理部1205で実施し、その際、チャネル推定処理部1204で端末からアンテナまでの無線区間のチャネル推定を行って、制御部1210がアクセスすることのできるチャネル情報(又は、CSI:Channel State Information)1209のデータベースにチャネル推定結果を記録する。ここでチャネル推定とは、送信側で既知のパターンをパイロット信号として送信し、これを受信して送受信アンテナ間の無線伝搬路において位相と振幅がどのようになったかをチャネル情報として抽出する処理を行う。
また、アンテナクラスタ情報1215をデータベースとして保持する。
【0070】
図25に、端末からのパイロット信号を利用したSIMO/MIMOアンテナ候補選択に関する説明図を示す。また、図37に、本発明の実施形態における基地局装置のアンテナクラスタ情報の説明図を示す。
【0071】
上述のアンテナクラスタ情報は、図25で説明した方法によって生成される。なお、アンテナクラスタの抽出方法については後述する。また、アンテナクラスタ情報1215は、図37に示すデータ構造を持つ。例えば、アンテナクラスタAは、アンテナ#1,#2,#3,#4のグループである。図25及び図37の例では、端末107aが送信したパイロット信号の受信電力が閾値以上のアンテナは#1,#2,#3,#4であることから、アンテナクラスタAが生成されることになる。他の端末107bに対しては、例えば、アンテナクラスタBが対応する場合は、アンテナ#2,#3,#4が有効なアンテナであることを意味している。
【0072】
信号処理部1205は、無線通信規格にのっとった信号処理を行うブロックであり、送信信号に対しては符号化、変調処理を行い、受信信号に対しては復調、復号処理を行う。また、上記のSU−SIMO通信、MU−SIMO通信、SU−MIMO通信、MU−MIMO通信を制御部1210にある通信モード切替処理部1212の判定結果に基づいて切り替えて通信を行う。このとき、アンテナポート<1>〜<8>の入出力関係は、アンテナ選択部1211と通信モード切替処理部1212で選択したアンテナ接続パタンによって決定されており、その接続パタンに従ったアンテナポートを用いてSIMO通信やMIMO通信の信号処理を行う。信号処理部1205は、アンテナ選択部1211と通信モード切替処理部1212で選択した使用するひとつ又は複数のアンテナ、アンテナ数及び通信モードに従い、各端末に割り当てるためのアンテナポートと分配装置のアンテナとの対応を表すアンテナ接続パタンを求める。また、SU−SIMO通信(時分割)やSU−MIMO通信(時分割)では、端末ごとに決められたタイムスロットで時間分割して送受信信号を処理する。MU−SIMO通信(同時通信)やMU−MIMO通信(同時通信)では、同時通信を行う端末の組合せに従って信号処理を行い、アンテナポート<1>〜<8>に信号を入出力する。また、信号処理部1205は、アンテナ接続パタンをアンテナポート入出力インタフェース1201を介して、アンテナスイッチ109に通知する。なお、各通信モードにおけるアンテナ接続パタンの求め方は、図5、図7等で示した通りであり、使用するアンテナ数と通信モードに従い、ダイナミックに又は予め定められたデータ等により適宜求めることができる。
【0073】
同時通信端末計測部1206では、同時通信をしている端末数を計測して端末リスト情報1208に計測結果を記録して、一定周期間隔で同時通信端末情報1209に同時通信端末IDと上り下りのスループット情報を記録する。
制御部1210は、アンテナ選択部1211と、通信モード切替処理部1212と、制御信号処理部1213を備える。
【0074】
アンテナ選択部1211では、通信モード切替処理部1212の依頼をトリガとして、チャネル情報1207から端末ごとに最適なアンテナの候補をアンテナクラスタとして選択して通信モード切替処理部1212に通知する。
通信モード切替処理部1212では、同時通信端末情報1209とチャネル情報1207からSU−SIMO通信、MU−SIMO通信、SU−MIMO通信、MU−MIMO通信のどの通信モードが最適かを選択する。通信モード切替処理部1212は、アンテナ選択部1211へアンテナ選択依頼を通知する。また、通信モード切替処理部1212は、各通信モードを決定する際は、アンテナ選択部1211で決定したアンテナクラスタ情報に基づいて、端末の推定スループットを計算し、推定スループットが要求スループットを満足する通信モード(使用するアンテナ及び/又はアンテナ数を含む。)を決定する。制御信号処理部1213に選択した通信モードを通知して、端末に通信モード切替指示の制御信号によって決定した通信モードを通知する。端末から通信モード切替指示応答を受信したことを制御信号処理部1213で検出すると、通信モード切替処理部1212に通知し、通信モード切替処理部1212は、信号処理部1205に選択された通信モード(使用するアンテナ及び/又はアンテナ数を含む。)を設定する。
【0075】
制御信号処理部1213は、基地局装置102が端末や他のノードと制御信号によるプロトコル処理を行うための制御信号の生成や解釈を行う。
有線インタフェース1214は、高速バックホール回線終端装置101との有線インタフェースに関する信号処理を行う。例えば、イーサ回線などを使用する場合は、イーサ信号の送受信信号処理を行う。
【0076】
図27に、本発明の実施形態における分配装置108aの構成図を示す。
分配装置108aは、1本ないし複数のアンテナ106a1,106a2と、無線部2701と外部インタフェース2702を備える。無線部2701は、共用器2702と無線送信部2703と無線受信部2704と、受信電力測定部2705a,2705bと、出力制御部2706a,2706bとを備える。
【0077】
共用器2702は、送信アンテナと受信アンテナを1本のアンテナで共用して送信と受信を同時に行うために、送信波が受信機に流入し受信を妨げることのないように送信経路と受信経路を電気的に分離する。なお、アンテナ106a2側にも共用器を設けてもよいし、アンテナ106a1又は106a2に共用器を設けず、無線送信部又は無線受信部のいずれかを接続するようにしてもよい。
【0078】
無線送信部2703は、外部インタフェース2705から出力されたディジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)し、周波数帯域の変換と電力増幅を行った後、共用器2702に出力する。
無線受信部2704は、アンテナ106a1,106a2からの受信信号をフィルタリング処理し、ベースバンド帯域のアナログ信号に変換した後、ディジタル信号に変換(A/D変換)して、外部インタフェース2705に出力する。
【0079】
受信電力測定部2705a,2705bは、図6で説明したようにノイズにうずもれて役に立たない出力を抑える場合に用いる。出力制御部2706a,2706bは、図6で説明したように受信電力測定部2705a,2706bで測定した結果が閾値以下であれば、基地局装置への出力を行わないように制御する。図27の実施形態では、受信電力測定部2705a,2705bと出力制御部2706a,2706bを記載したが、この機能がなくてもよい。
【0080】
外部インタフェース2705は、DAS子機104aとの通信インタフェースにあわせて送受信を行う。なお、DAS子機104a以外にも、直接、アンテナスイッチ109や、基地局装置102と通信を行うことも可能であり、外部インタフェース2705は対向する機器とのインタフェースに合わせて信号変換を行う。また、OFDM通信方式においては、ベースバンド送信信号はIFFT処理によって情報量が膨らむため、外部インタフェース2705でIFFT処理を行い、IFFTより前のベースバンド信号を外部インタフェース2705の切り口としてもよい。ベースバンド受信信号としては、FFTを外部インタフェース2705で行い、FFT以降のベースバンド信号処理を基地局装置102で行うことによって、分配装置108までの通信量を削減することができる。
【0081】
図28に、本発明の実施形態におけるアンテナスイッチ109の構成図を示す。
アンテナスイッチ109は、外部インタフェース2801、受信信号分離部2802、受信電力測定部2803、出力制御部2804、受信スイッチ・合成処理部2805、受信信号多重化処理部2806、基地局インタフェース2807、制御部2808、送信信号分離処理部2809、送信スイッチ部2810、送信信号多重化処理部2811とを備える。
【0082】
外部インタフェース2801は、DAS親機103とのインタフェースに合わせて信号変換を行う。受信信号分離部2802では、受信信号をシリアルパラレル変換することによって、外部に接続可能なアンテナ全部の信号に分離する。
受信電力測定部2803と出力制御部2804は、図6で説明した受信電力測定機能と出力制御機能をアンテナスイッチ内に持つ場合の実施形態であり、不要なアンテナからの信号を出力しない機能を実現する。
【0083】
受信スイッチ・合成処理部2805では、図5や図7等で説明したようにアンテナ接続パタンに従ってアンテナ#1〜#12の受信信号を基地局装置102のアンテナポート<1>〜<8>に対応させる処理を行う。同じアンテナポートにマッピングされたアンテナ間の信号は加算することで最大比合成を行う。
基地局インタフェース2807は、基地局装置102の外部インタフェースに合わせて信号変換を行う。
【0084】
制御部2808は、基地局インタフェース2807を介して基地局装置102からアンテナ接続パタンを受け取る。制御部2808は、図11に示したアンテナ切替指示の制御信号を受け取ると、アンテナ接続パタンを受信スイッチ・合成処理部2805と送信スイッチ部2810に設定し、アンテナ切替指示応答を基地局装置102に返す制御信号処理を行う。
【0085】
送信信号分離部2809は、基地局インタフェース2807からの信号をシリアルパラレル変換することで基地局装置102のアンテナポート<1>〜<8>の信号に分離する。
送信スイッチ部2810で、図5や図7等で説明したようにアンテナ接続パタンに従って基地局装置102のアンテナポート<1>〜<8>の送信信号をアンテナ#1〜#12に渡す処理を行う。
送信信号多重化処理部2811では、アンテナ#1〜#12の信号を外部インタフェース2801に渡すためにパラレルシリアル変換する処理を行う。
【0086】
図29に、本発明の実施形態における端末装置107aの構成図を示す。
端末装置107aは、アンテナ2901a,2901b、無線部2902、ベースバンド信号処理部2906、制御部2910、外部インタフェース2911を備える。
【0087】
無線部2910は、共用器2903と、無線送信部2904と、無線受信部2905とを備える。図27の分配装置で説明した共用器2702、無線送信部2703、無線受信部2704と同様の機能を持つ。
【0088】
ベースバンド信号処理部2906は、パイロット信号生成部2907とチャネル推定処理部2908と、信号処理部2909とを備える。図12で説明したパイロット信号生成部1203とチャネル推定処理部1204と、信号処理部1205と同等の機能を持つ。
【0089】
制御部2910は、制御メッセージのプロトコル処理を行う。
外部インタフェース2911は、外部接続した機器とのデータ通信を行うインタフェースを提供する。モバイルルータ等の場合は、イーサネット(登録商標)接続によってパソコン接続が可能になる。
【0090】
4.動作

4−1.同時通信端末数計測部1206
図13に、本発明の実施形態における基地局装置102の同時通信端末数計測部1206のアルゴリズム説明図を示す。同時通信端末数計測部1206は、一定周期間隔で同時通信している端末数を計測する機能を持つ。一定周期の間でカウントする端末リストを生成し、端末リストを同時通信端末情報1210に端末リストを更新する処理を行う(端末リストの詳細については図14で後述)。この処理は、同時通信端末数計測部1206が実行する。
【0091】
まず、端末リストを初期化する(Step1)。次に、同時通信端末数を0に初期化する(Step2)。周期タイマのタイマ値を設定(Step3)し、待ち状態に入る(Step4)。
待ち状態で、データ信号を受信(Step5)した場合には、データ信号のヘッダ信号に格納されている端末IDを抽出する(Step6)。
抽出した端末IDの情報が端末リストに記録されているかどうかを調べる(Step7)。
【0092】
端末IDが端末リストに記録されていなければ、新規の同時通信端末であるため、同時通信端末数を1つ増やす(Step8)。端末IDが既に端末リストに記録されていればStep9へ移行し、通信が上りか下りかを判別し、上り通信ビット数、下り通信ビット数の累計値を端末リストに更新する(Step9)。
そして、Step4の待ち状態に戻る。
【0093】
待ち状態で、周期タイマがタイムアウトした場合(Step10)、端末リストに記録された端末IDと上り通信ビット数、下り通信ビット数から、周期タイマの間隔で割り算をして上り下りのスループットを計算し、同時通信端末情報1209に記録する(Step11)。
通信モード切替処理部1212に同時通信端末情報1209の各情報を通知する(Step12)。
そして、Step1に戻る。
【0094】
なお、同時通信端末数は基地局装置102の呼処理において端末107が通信セッションを確立した端末数が最大値になる。通信セッションを確立した端末のうち、実際に通信を行っている端末の数を一定周期で数える例を図13で示しているが、通信セッション確立のプロトコル処理で同時通信端末数をカウントする実施形態もある。
【0095】
図14の(1)に、本発明の実施形態における基地局装置102の端末リスト情報1208の説明図を示す。端末リスト情報1208は、端末IDと上り通信ビット数、下り通信ビット数の要素を含む。端末リスト情報1208は、図13で説明した一定の周期ごとにリセットされ、実際に通信をしている端末のIDと上り、下りの通信ビット数を計測した値が記録される。周期タイマがタイムアウトする時点で、同時通信端末情報1209に情報がアップデートされ、端末リスト情報1208は再度初期化されて測定結果が記録される。
【0096】
図14の(2)に、本発明の実施形態における基地局装置102の同時通信端末情報1209の説明図を示す。同時通信端末情報1209は、上り通信と下り通信で、それぞれ端末IDとスループット平均値、スループット要求値、更新フラグの情報要素を持つ。
【0097】
例えば、図14の(1)の端末リスト情報1208で端末ID1001の上り通信ビット数が100kbitであるが、周期タイマの間隔が1秒であった場合、スループットは100kbpsとなる。この100kbpsのスループットを上りスループット平均値に更新する。上り更新フラグで最新のフラグを1にセットする。ここで、上り更新フラグとは、過去N回(図14の(2)の例ではN=4回)分のデータ更新状況を示している。図14の(1)の端末リスト情報1208では、端末IDが1001と1002、1005で上り下りの通信量があるため、ここの情報は更新フラグに1が設定される。前回までの更新フラグの履歴を残しており、端末IDが1003の端末は、前回の周期では上りで通信があった例を示している。更新フラグは、最上位ビットが最新を表しているものとする。例えば、更新フラグが0101の場合は、最新の更新フラグは0であり、1回前に更新したフラグは1である。
【0098】
この更新フラグが過去N回のうち、1回でもフラグが立っている端末IDについては、同時通信端末数としてカウントする。図14の(2)の例では、上り同時通信端末数は、端末IDが1001、1002、1003、1005の4台となる。下り同時通信端末数は、端末IDが1001、1002、1005の3台となる。
【0099】
4−2.通信モード切替処理部1212
図15に、本発明の実施形態における基地局装置102の通信モード切替処理部1212のアルゴリズム説明図を示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
Step1の待ち状態において、同時通信端末数計測部1206から同時通信端末情報1209の各情報の通知を受信する(Step2)。
上りスループットの平均値が、閾値1よりも小さな端末が1つでもあるかないかを調べる。(Step3)
【0100】
もし、上りスループットの平均値が閾値1より小さい端末が1つでもある場合は、Step5へ。そうでなければStep4へ進む。Step5では、上り通信のスループットを要求速度以上にすることを試みて、図30で後述する通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)選択によって最適な通信モードを選択し、Step7に進む。
【0101】
Step4では、上りスループットの平均値が、上りスループットの閾値2よりも大きい端末が1つでもあるかないかを調べる。もし、上りスループットの平均値が、閾値2より大きい端末が1つでもある場合は、Step6へ、そうでなければStep7へ進む。
Step6では、上り通信のスループットが過剰なため要求速度程度にすることを試みて、図31で後述する通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)選択によって最適な通信モードを選択し、Step7に進む。
Step7では、下りスループットの平均値が下りスループットの閾値3よりも小さい端末が1つでもあるかないかを調べる。
【0102】
もし、下りスループットの平均値が閾値3より小さい端末が1つでもある場合は、Step9へ。そうでなければ、Step8に進む。
Step9では、下り通信のスループットを要求速度以上にすることを試みて、図30で後述する通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)選択(速度Up)によって最適な通信モードを選択し、Step1に戻る。
Step8では、下りスループットの平均値が、下りスループットの閾値4よりも大きい端末が1つでもあるかどうかを調べる。
【0103】
もし、下りスループットの平均値が閾値4より大きい端末が1つでもある場合は、Step10へ、そうでなければ、Step1に戻る。
Step10では、下り通信のスループットが過剰なため要求速度程度にすることを試みて、図31で後述する通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)選択(速度Down)によって最適な通信モードを選択し、Step1に戻る。
【0104】
ここで、前述の閾値1は、スループットの要求値と設定する場合、要求値よりも低い値を設定する場合を想定しているが、要求値より高い値を設定してもよい。
同様に、前述の閾値2は、スループットの要求値と設定する場合、要求値よりも高い値を設定する場合を想定しているが、要求値よりも低い値を設定してもよい。
同様に、前述の閾値3は、スループットの要求値と設定する場合、要求値よりも低い値を設定する場合を想定しているが、要求値より高い値を設定してもよい。
同様に、前述の閾値4は、スループットの要求値と設定する場合、要求値よりも高い値を設定する場合を想定しているが、要求値よりも低い値を設定してもよい。
【0105】
図30に、本発明の実施形態における基地局装置102の通信モード切替処理部1212において、スループットが要求速度を満たしていない場合における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)の選択アルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
【0106】
このアルゴリズムでは、現在の通信モードでは要求速度を満たせなかった場合に、現在の通信モードよりもスループット向上が見込める通信モードで推定スループットを求め、推定スループットが要求速度を満たすことが可能である通信モードを選択する。
【0107】
まず、Step1で、現在の通信モードがSU−SIMO(時分割)であるかどうかを調べる。もし、通信モードがSU−SIMO(時分割)であればStep2へ、そうでなければStep5に進む。
Step2では、通信モードをMU−SIMO(同時通信)に仮設定し、図33で後述するMU−SIMO(同時通信)の選択判定処理を実施し、Step3に進む。
Step3では、Step2におけるMU−SIMO(同時通信)の判定結果が成功であれば、Step4へ、判定結果が失敗であればStep5へ進む。
【0108】
Step4では、MU−SIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step5では、現在の通信モードがMU−SIMO(同時通信)であるかどうかを調べる。もし、通信モードがMU−SIMO(同時通信)であればStep6へ、そうでなければStep9に進む。
Step6では、通信モードをSU−MIMO(時分割)に仮設定し、図34で後述するSU−MIMO(時分割)の選択判定処理を実施してStep7に進む。
Step7では、Step6におけるSU−MIMO(時分割)の判定結果が成功であれば、Step8へ、そうでなければStep9に進む。
【0109】
Step8では、SU−MIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step9では、現在の通信モードがSU−MIMO(時分割)であるかどうかを調べる。もし、通信モードがSU−MIMO(時分割)であればStep13へ、そうでなければStep10に進む。
Step10では、通信モードをMU−MIMO(同時通信)に仮設定し、図35で後述するMU−MIMO(同時通信)の選択判定処理を実施してStep11に進む。
Step11では、Step10におけるMU−MIMO(同時通信)の判定結果が成功であればStep12へ、そうでなければStep13に進む。
【0110】
Step12では、MU−MIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step13では、現在の通信モードをそのまま継続する。
通信モード切替処理部1212は、各Step4、8、12等で通信モードが選択されると、選択された通信モードと、その通信モードによるアンテナ選択依頼をアンテナ選択部1211に通知する。
【0111】
図31に、本発明の実施形態における基地局装置102の通信モード切替処理部1212において、スループットが要求速度よりも高い(又は、はるかに高い)場合において要求速度程度の通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)を選択するアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
【0112】
まず、Step1で現在の通信モードがMU−MIMO(同時通信)であるかどうかを調べる。通信モードがMU−MIMO(同時通信)である場合にはStep2へ、そうでなければStep12に進む。
【0113】
Step2では、図32で後述するSU−SIMO(時分割)の選択判定処理を実施し、Step3に進む。
Step3では、Step2のSU−SIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep4へ、そうでなければStep5へ進む。
【0114】
Step4では、SU−SIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step5では、図33で後述するMU−SIMO(同時通信)の選択判定処理を実施し、Step6へ進む。
Step6では、Step5のMU−SIMO(同時通信)の判定結果が成功であればStep7へ、そうでなければStep8へ進む。
【0115】
Step7では、MU−SIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step8では、図34で後述するSU−MIMO(時分割)の選択判定処理を実施し、Step9に進む。
Step9では、Step8でのSU−MIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep10へ、そうでなければStep11に進む。
【0116】
Step10では、SU−MIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step11では、MU−MIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step12では、現在の通信モードがSU−MIMO(時分割)であるかどうかを調べる。通信モードがSU−MIMO(時分割)である場合にはStep13へ、そうでなければStep20に進む。
【0117】
Step13では、図32で後述するSU−SIMO(時分割)の選択判定処理を実施し、Step14に進む。
Step14では、Step13のSU−SIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep15へ、そうでなければStep16へ進む。
【0118】
Step16では、図33で後述するMU−SIMO(同時通信)の選択判定処理を実施し、Step17へ進む。
Step17では、Step16のMU−SIMO(同時通信)の判定結果が成功であればStep18へ、そうでなければStep19へ進む。
【0119】
Step18では、MU−SIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step19では、SU−MIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step20では、現在の通信モードがMU−SIMO(同時通信)であるかどうかを調べる。通信モードがMU−SIMO(同時通信)である場合にはStep21へ、そうでなければStep25へ進む。
【0120】
Step21では、図32で後述するSU−SIMO(時分割)の選択判定処理を実施し、Step22に進む。
Step22では、Step21のSU−SIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep23へ、そうでなければStep24へ進む。
【0121】
Step23では、SU−SIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step24では、MU−SIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step25では、SU−SIMO(時分割)の通信モードを選択する。
通信モード切替処理部1212は、各Step4、7、10、11、15、18、19、23、24、25等で通信モードが選択されると、選択された通信モードと、その通信モードによるアンテナ選択依頼をアンテナ選択部1211に通知する。
【0122】
図32に、本発明の実施形態におけるSU−SIMO(時分割)の選択判定処理のアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
まず、Step1で、SIMOアンテナ候補を選択してStep2に進む。SIMOアンテナ候補の選び方については、図5で説明したようにして、パイロット信号の受信電力から絞り込んでいく。
【0123】
Step2では、SU−SIMO通信におけるスループットの推定値を計算し、Step3に進む。スループットの推定値の計算方法については後述する。
Step3では、計算した推定スループットが要求値以上であるかを調べる。もし、推定スループットが要求値以上であればStep4へ、そうでなければStep5に進む。
Step4では、SU−SIMO(時分割)の選択判定結果を成功と判断する。
Step5では、SU−SIMO(時分割)の選択判定結果を失敗と判断する。
【0124】
ここで、スループットの要求値は、端末が基地局と通信接続する際に、通信プロトコルによって端末が通信する呼種別を把握しているものとする。この呼種別に応じて、あらかじめ定められたスループットの要求値を基地局装置は保持しているものとする。
以下、要求値は事前に呼種別ごとに定められた値であるとする。
【0125】
図33に、本発明の実施形態におけるMU−SIMO(同時通信)の選択判定処理のアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
Step1で、SIMO通信に使うアンテナ候補を選択してStep2に進む。SIMOアンテナ候補の選び方は、図5で説明したようにして、パイロット信号の受信電力から絞り込む。
【0126】
次に、Step2では、MU−SIMO(同時通信)におけるスループットの推定値を計算し、Step2に進む。スループットの推定値の計算方法については後述する。
Step3では、計算した推定スループットが要求値以上であるかを調べる。もし、推定スループットが要求値以上であればStep4へ、そうでなければStep5に進む。
Step4では、MU−SIMO(同時通信)の選択判定結果を成功と判断する。
Step5では、MU−SIMO(同時通信)の選択判定結果を失敗と判断する。
【0127】
図34に、本発明の実施形態におけるSU−MIMO(時分割)の選択判定処理のアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
Step1で、L本のアンテナクラスタ(アンテナのグループ)を抽出して、Step2に進む。L本のアンテナクラスタの抽出方法については、後述する。
【0128】
Step2では、L本以下のアンテナM本の組合せを抽出して、Step3に進む。ここで、M本のアンテナ抽出については、最初はL本から2本の組合せを抽出する。その後、後述するStep6の判定で戻ってきた場合は、L本から別の2本の組合せを抽出する。その後、L本から3本の組合せ、L本から4本の組合せ、L本からL本の組合せというように全ての組合せについて抽出を行うものとする。
【0129】
Step3では、抽出したM本のアンテナでSU−MIMO(時分割)を行ったときの推定スループットを計算して、Step4に進む。推定スループットの計算方法については後述する。
Step4では、計算した推定スループットが要求値以上であるかどうかを調べる。もし、推定スループットが要求値以上である場合にはStep5に進み、そうでなければStep6に進む。
【0130】
Step5では、SU−MIMO(時分割)の判定処理結果を成功と判断する。ここで、抽出したM本のアンテナを記憶しておき、その後MIMO通信を行う際は、このM本のアンテナにて通信を行うものとする。
Step6では、アンテナクラスタL本のうち、全ての組合せについてM本のアンテナ候補を抽出して調べたかどうかを判定する。まだ、調べていない組合せのアンテナがある場合には、別の組合せのアンテナを選択してStep2に戻り、全てのアンテナの組合せについて調べた場合には、Step7に戻る。
Step7では、SU−MIMO(時分割)の判定処理結果を失敗と判断する。
【0131】
図36に、本発明の実施形態における基地局装置の送信アンテナ数決定に関する説明図を示す。
図34において、L本のアンテナからM本のアンテナを抽出する例を、図36を用いて説明する。図36の例では、アンテナクラスタに6本のアンテナ#1〜#6が含まれているとする。まず、最初にM=2本のアンテナの組合せ#1、#2で推定スループットを計算する。推定スループットは、閾値以下であるため、他の組合せ#1、#3など調べる。アンテナ#5と#6の組合せがM=2本で最も高い推定スループットであるが、閾値を満たしていない。このため、次に、M=3本として同様に組合せを求める。図36の例では、M=4本とした場合に、アンテナ#3、#4、#5、#6の組合せで推定スループットが閾値を超えていたとすると、この#3、#4、#5、#6のアンテナをMIMO通信のアンテナとして決定する。
【0132】
図35に、本発明の実施形態におけるMU−MIMO(同時通信)の選択判定処理のアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
Step1で、L本のアンテナクラスタ(アンテナのグループ)を抽出して、Step2に進む。L本のアンテナクラスタの抽出方法については、後述する。
【0133】
Step2では、L本以下のアンテナM本の組合せを抽出して、Step3に進む。ここで、M本のアンテナ抽出については、最初はL本から2本の組合せを抽出する。その後、後述するStep6の判定で戻ってきた場合は、L本から別の2本の組合せを抽出する。その後、L本から3本の組合せ、L本から4本の組合せ、L本からL本の組合せというように全ての組合せについて抽出を行うものとする。この組合せの抽出については、図36にて説明した方法と同様である。
【0134】
Step3では、抽出したM本のアンテナでMU−MIMO(同時通信)を行ったときの推定スループットを計算して、Step4に進む。推定スループットの計算方法については後述する。
Step4では、計算した推定スループットが要求値以上であるかどうかを調べる。もし、推定スループットが要求値以上である場合にはStep5に進み、そうでなければStep6に進む。
【0135】
Step5では、MU−MIMO(同時通信)の判定処理結果を成功と判断する。ここで、抽出したM本のアンテナを記憶しておき、その後MIMO通信を行う際は、このM本のアンテナにて通信を行うものとする。
Step6では、アンテナクラスタL本のうち、全ての組合せについてM本のアンテナ候補を抽出して調べたかどうかを判定する。まだ、調べていない組合せのアンテナがある場合には、別の組合せのアンテナを選択してStep2に戻り、全てのアンテナの組合せについて調べた場合には、Step7に戻る。
Step7では、MU−MIMO(同時通信)の判定処理結果を失敗と判断する。
【0136】
アンテナクラスタの抽出方法について、図25を用いて説明する。基地局装置102が端末107aにパイロット信号送信要求の制御メッセージを通知し、端末107aにパイロット信号を送信させる。基地局装置102は、端末107aが送信したパイロット信号の受信電力を測定し、閾値以上のアンテナのグループをアンテナクラスタとして選択する。図25の例では、アンテナ#1、#2、#3、#4のパイロット信号の受信電力が閾値以上であるため、この4本のアンテナのグループをアンテナクラスタとして定義する。受信電力が閾値以上のアンテナ本数がL本以上であれば、受信電力の高い順にL本のアンテナをアンテナクラスタとする。ここで、L本のアンテナのLは、基地局装置のMIMO信号処理で扱うことができる最大数として、システムとして、あらかじめ決められた固定値である。
【0137】
4−3.チャネル情報とスループットの推定
図18に、本発明の実施形態における基地局装置102のチャネル情報1207の説明図を示す。
上り下り別に、アンテナ#1〜#12と端末アンテナ間のチャネルインパルスレスポンス情報をデータとして持つ。既知のパイロット信号をアンテナ#1から送信し、端末107aのアンテナAで受信した信号に対してチャネル推定した結果のチャネル情報をh1aとし、端末107aのアンテナBで受信した信号に対してチャネル推定した結果のチャネル情報をh1bとする。端末107aから基地局装置102にチャネル情報をフィードバックすることによって、h1a,h1bの結果が得られる。上り、下りで周波数が異なるFDD(Frequency Division Duplex)システムでは、下りのチャネル情報を調べるために、このようにフィードバックする必要があるが、上り下り共通の周波数を用いるTDD(Time Division Duplex)システムでは、端末107aのアンテナAから送信したパイロット信号をアンテナ#1で受信し、基地局装置102でチャネル推定を行うことによって、h1aを求め、これを下りのチャネル情報に推定して活用することができる。
【0138】
このようにして得られたチャネル情報からSIMO通信、MIMO通信を行うときのスループットを推定することができる。以下では、チャネル情報を用いたスループットの推定方法について示す。
【0139】
端末107aがアンテナ#1でSIMO通信を行った場合、下りの通信容量C1_SIMOは、次の数式1で計算することができる。
C1_SIMO=log(1+γ+γ
γ=P×|h1a/σ,γ=P×|h1b/σ(数式1)
以降では、Pは基地局装置102から送信される全送信電力を表すものとする。数式1では、アンテナ#1から送信される送信電力に相当する。σは熱雑音電力を表す。
【0140】
同様に、端末107bがアンテナ#6でSIMO通信を行った場合は、数式1のh1aをh6c、h1bをh6dに置き換えることによって、下り通信容量C2_SIMOを次の数式2のように求めることができる。
C2_SIMO=log(1+γ+γ
γ=P×|h6c/σ, γ=P×|h6d/σ(数式2)

ここで、SU−SIMO(時分割)を端末107aと107bで通信した場合は、それぞれ時間を半分ずつにするため、端末107aと107bの下り通信容量C1_SIMO(時分割),C2_SIMO(時分割)は、それぞれ次の数式3、数式4になる。
C1_SU_SIMO(時分割)=C1_SIMO/2 (数式3)
C2_SU_SIMO(時分割)=C2_SIMO/2 (数式4)
【0141】
次に、端末107aと端末107bがMU−SIMO(同時通信)した場合の下り通信容量について説明する。アンテナ#1とアンテナ#6で、送信電力を半分ずつP/2で送信する。端末107aの下り通信容量C1_MU_SIMO(同時通信)は、次の数式5で求められる。
C1_MU_SIMO(同時通信)=log(1+γ1+γ2)
γ=(P/2)×|h1a/(σ+|h6a),
γ=(P/2)×|h1b/(σ+|h6b (数式5)
【0142】
同様にして、端末107bの下り通信容量C2_MU_SIMO(同時通信)は、次の数式5’で求められる。
C2_MU_SIMO(同時通信)=log(1+γ+γ
γ=(P/2)×|h6c/(σ+|h1c),
γ=(P/2)×|h6d/(σ+|h1d (数式5’)
【0143】
次に、端末107aがアンテナ#1,#2にてMIMO通信を行った場合の通信容量は数式6で求められる。ただし、送信電力を均等に配分した例となっている。
C1_MIMO=log(1+(γ/2))+log(1+(γ/2))
γ=(P/2)×λ/σ, γ=(P/2)×λ/σ(数式6)
【0144】
ここで、λとλは、時刻tにおけるチャネル行列H11(t)の固有値を表す。固有値は、行列の特異値分解として求めることができる。チャネル行列と固有値については、非特許文献2に詳しく記載されている。ここでチャネル行列H11(t)は、次の数式7で表される行列である。
【数1】

【0145】
同様に、端末107bについて、アンテナ#6,#5を用いてMIMO通信を行った場合の通信容量C2_MIMOは、次の数式8であらわされるチャネル行列H22(t)の固有値λとλを求め、数式6と同様に計算すればよい。
【数2】

なお、上記は送信アンテナ2本、受信アンテナ2本の場合についての例であるが、送信アンテナと受信アンテナが2本以上の場合の通信容量については、非特許文献3に詳しく記載されている。
【0146】
端末107aと端末107bが時分割でSU−MIMO通信した場合の容量は、次の数式9、10のようになる。
C1_SU_MIMO(時分割)=C1_MIMO/2 (数式9)
C2_SU_MIMO(時分割)=C2_MIMO/2 (数式10)
【0147】
端末107aと端末107bがMU−MIMO通信した場合の容量は、次の数式11で求めることができる。
【数3】

ここで、nは端末107aが1で、端末107bが2を示す。Qn(t)は、共分散行列を示している。H’(t)は、H(t)の複素共役転置行列である。また、Tr(Q(t))はトレースを表す。||は行列式を表している。詳しくは、非特許文献1の数式(3)に記載されている。
【0148】
4−4.アンテナ選択部1211
図26に、本発明の実施形態における基地局装置102のアンテナ選択部1211のアルゴリズムの説明図を示す。この処理は、アンテナ選択部1211が実行する。
待ち状態(Step1)から、通信モード切替処理部1212からアンテナ選択依頼の通知を受け取る(Step2)。
【0149】
図25で説明した端末が送信するパイロット信号による調査が必要かどうかを判断する(Step3)。もし、パイロット信号による調査が必要な場合は、Step4へ、そうでなければStep11に進む。
パイロット信号による調査が必要な場合、端末に対してパイロット信号を送信要求する制御メッセージを通知(Step4)する。
端末からのパイロット信号受信を待つ(Step5)。
端末からのパイロット信号を受信待ちタイマがタイムアウト(Step6)した場合は、アンテナ候補選択失敗としてStep1へ戻る。
【0150】
端末からパイロット信号を受信した場合は(Step7)、Step8に進む。
Step8では、図23等で説明した分配装置間のアンテナクラスタ情報を利用するかどうかを判断し、利用する場合はStep9へ、利用しない場合はStep10へ進む。
Step9では、端末からのパイロット信号の受信電力を測定し、最も受信電力の高いアンテナiを選択してStep12へ進む。
Step10では、端末が送信したパイロット信号の受信電力の大きい順にL本のアンテナをアンテナ候補として選択して、Step1に進む。
Step12では、Step9にて選択したアンテナiに対するアンテナクラスタをアンテナ候補として選択し、Step1へ進む。
【0151】
一方Step3で、パイロット信号による調査が必要ない場合、Step11では、SIMO通信に用いている送信アンテナiを選択して、Step12へ進む。
ここで選択されたアンテナクラスタのL本のアンテナから、図34、図35、図36で説明したように端末の要求速度を満足するM本のアンテナを通信モード切替処理部1212にて決定する。
【0152】
ここで、Step10でアンテナを選択する本数L本は、受信電力が閾値以上の本数である。
また、Step3での判断は、毎回、パイロット信号による調査をしてアンテナを選択するか、ある一定回数の間はパイロット信号の調査を不要とするなどシステムのポリシーによって異なる。また、端末の移動がなく、常に分配装置と端末とのアンテナ関係が固定の場合には、端末が送信するパイロット信号による調査を一切しない方法もある。
【0153】
基地局装置102と端末107aが1本の送信アンテナによるSIMO通信からMIMO通信に切替を行う場合には、Step3でパイロット信号の調査をしなくても、SIMO通信の1本の送信アンテナに対応するアンテナクラスタをMIMO通信に利用するアンテナ候補として選択することが可能となる。これによって、SIMO通信とMIMO通信の切替頻度が高いような環境においては、事前に分配装置間で調べておいたアンテナ間のアンテナクラスタを活用することによって端末からのパイロット信号を送信するというプロトコルオーバヘッドを低減することが可能になる。
【0154】
図26のStep3でNoとなった場合に、端末から送信するパイロット信号による調査を不要とするケースについて以下に説明する。
端末からパイロット信号を送信して基地局装置で受信した受信電力によってアンテナクラスタを生成する方法は、上りと下りが同じ周波数のシステムに適用できる。上りのパイロット信号によって下りの無線伝搬路と同じ状況であることが想定できるためである。一方で、上りと下りの周波数が異なる場合は、無線伝搬特性が異なるため、基地局装置がパイロット信号を送信することによって、下りの無線伝搬路のチャネル情報を把握してアンテナクラスタを生成する必要がある。以下に、基地局装置がパイロット信号を送信してアンテナクラスタを生成する場合について説明する。
【0155】
図20に、基地局装置が送信するパイロット信号に関する説明図を示す。パイロット信号は既知の信号パターンを送信し、MIMO通信におけるチャネル推定などの処理に用いる。プリアンブル信号とも呼ばれる。多数のアンテナを持つ分散アンテナシステムでは、#1〜#12と端末間のアンテナ候補が絞り込まれない場合には、パイロット信号を全部のアンテナから出し、端末でチャネル推定を行ってフィードバックする必要が生じる。図20の例では、スキャッタード型と呼ばれる送信方法であり、各シンボルタイミングにおいて1つのアンテナからのみパイロット信号が送信される。この送信方法だと、多数のアンテナを持つとパイロット信号を送信する時間が長くなるという課題がある。
【0156】
時空間符号化型では、各シンボルタイミングにおいてすべての送信アンテナから同時にパイロット信号を送信する。第i送信アンテナから第jシンボル目に送信するパイロット信号をCi,jとし、第i受信アンテナで第jシンボルに受信した信号をRi,jとして伝達関数をCi,jの逆行列をRi,jに作用させて求める。このため、送信アンテナ数が増えた場合に、伝達関数を求めるためにも複数のシンボル時間を必要としてオーバヘッドが大きくなる。
【0157】
図21に、本発明の実施形態における基地局のパイロット信号送信に関する説明図を示す。アンテナ#1に基地局装置102のアンテナポート<1>を接続してパイロット信号を送信する。アンテナ#2〜#8で受信した信号を基地局装置102のアンテナポート<2>〜<8>でチャネル推定処理をすることによって、分配装置108aのアンテナ#1から送信される信号とアンテナ#2〜#8間のチャネル情報を測定することができる。
【0158】
図22に、本発明の実施形態における基地局装置が送信するパイロット信号によるアンテナクラスタ形成に関する説明図を示す。分配装置108aのアンテナからパイロット信号を送信し、他の分配装置108b,108c,108d,108e,108e,108fのアンテナで受信した信号を基地局装置102に戻す。アンテナスイッチ109に図21で説明したようなアンテナ接続パタンを設定することによって実現できる。基地局装置102は、チャネル推定処理を行うことでアンテナ間のチャネル情報を収集することができる。次に、アンテナ接続パタンを切り替えて、分配装置108bのアンテナからパイロット信号を送信して、他の分配装置108a,108c,108d,108e,108e,108fのアンテナで受信した信号を基地局装置102に戻す。このようにして、全ての分配装置のアンテナ間のチャネル情報を収集する。集めたチャネル情報を用いて、受信強度の強い関係のアンテナの組合せをアンテナクラスタとして求めることができる。図22に示した処理は、データ通信のトラフィックが少ない夜間などに分配装置間で情報を収集すればよい。もしくは、設置時やレイアウト変更時に1度だけ、もしくは1週間に1度、1カ月に1度といった頻度で実行すればよい。
【0159】
図23に、本発明の実施形態における分配装置アンテナ間のチャネル情報の説明図を示す。図22で説明したシーケンスによって、パイロット信号のチャネル情報を格納している。第i番目のアンテナから送信した信号を、第j番目のアンテナで受信したチャネル情報をhi,jとする。アンテナ#iのアンテナクラスタの求め方について以下に示す。
i,jのノルムを|hi,j|を計算し、|hi,j|≧閾値を満たすjの集合がN個あるとする。ここで、ノルムを|hi,j|はアンテナi,アンテナj間の受信電力を表す。
このN個の集合のうち、大きい順にL本を抽出してアンテナクラスタとする。ここで、L本はあらかじめ定められた固定値であるとする。LがNよりも大きい場合は、N個でアンテナクラスタを形成する。
【0160】
図24に、分配装置アンテナ間のチャネル情報から生成したアンテナクラスタを利用してMIMO通信を行う動作例のシーケンス図を示す。
まず、基地局装置102と端末107a間でSU−SIMO通信をしているとする。続いて、MIMO通信に切り替える必要が生じた場合の例について説明する。
【0161】
図26で説明したStep11によって、SU−SIMO通信を行っている送信アンテナiを選択する。例えば、送信アンテナiはアンテナ#2であったとする。図23より、アンテナ#2に対応するアンテナクラスタはアンテナクラスタAであり、アンテナ#1、#2、#3、#4を抽出する。この方法によれば、分配装置間のチャネル情報収集が事前になされてアンテナクラスタ情報が既に形成されているため、通信時にパイロット信号を改めて送信させて調べる必要がなく、オーバヘッドを削減することができる。
【0162】
選択したアンテナクラスタのアンテナからパイロット信号を端末107aに送信する。端末107aは、チャネル推定結果をフィードバックしてMIMOデータ通信を行う。図36で説明したように、アンテナクラスタの複数本のアンテナの中から、端末の推定スループットが要求スループットを満たすアンテナの組合せを求めて、MIMO通信に行うアンテナを特定してMIMO通信を行う。MIMO通信に使うアンテナを切り替える度にスループットを測定して学習し、スループットの高い実績のあるアンテナの組合せを優先的に調べることによって、MIMO通信に使うアンテナを決定する。
【0163】
B.変形例
B−1.通信モード切替
(実施形態2)
本実施形態では、SIMO通信でなくSISO(Single Input Single Output)通信をする端末に対する実施形態について説明する。
上記の実施形態1の説明において、SIMO通信の代わりに通信に置き換えればよい。
このケースは、廉価版の端末でSISO通信しかサポートしていないとか、SIMO通信とSISO通信の両方サポートしている端末でも、バッテリー残量が少なくなってSIMO通信からSISO通信のみ行うような場合である。
【0164】
(実施形態3)
本実施形態では、実施形態1における図5で説明した最適な送信アンテナを探す方法の別の実施形態について説明する。
基地局装置102がすべてのアンテナにアンテナIDを付与し、1つずつのアンテナからアンテナIDをつけた制御信号を送信し、その制御信号を受信した端末107aが最も高い受信電力を持つアンテナIDを基地局装置102にフィードバックすることで基地局102が使用すべき送信アンテナを特定する。
【0165】
(実施形態4)
本実施形態では、実施形態1の図15の代わりとなる基地局102の通信モード切替処理部のアルゴリズムについて説明する。
図16に、本実施形態おける基地局装置102の通信モード切替処理部1212のアルゴリズム説明図を示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
【0166】
実施形態1における図15のStep3、Step4、Step7、Step8の条件判断の内容が異なるのみで、動作としては同じアルゴリズムになっている。
Step3では、上り同時通信端末数と閾値5の大小を比較する。もし、上り同時通信端末数が閾値5よりも大きければStep5へ、そうでなければStep4に進む。
Step4では、上り同時通信端末数と閾値6の大小を比較する。もし、上り同時通信端末数が閾値6よりも小さければStep6へ、そうでなければStep7へ進む。
Step7では、下り同時通信端末数と閾値7の大小を比較する。もし、下り同時通信端末数が閾値7よりも大きければStep9へ、そうでなければStep8に進む。
Step8では、下り同時通信端末数と閾値8の大小を比較する。もし、下り同時通信端末数が閾値8よりも小さければStep10へ、そうでなければStep1へ進む。
これら閾値5〜8は、予め適宜定めることができる。
【0167】
(実施形態5)
本実施形態では、実施形態1の図17の代わりに基地局装置102の通信モード切替処理部1212のSU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO通信を選択するアルゴリズムを説明する。
実施形態1の図17のアルゴリズムのStep10の箇所に、事前に設定しておいたシナリオの通信モード選択とする。図17のアルゴリズムのStep11〜Step13は不要となる。
これは、MU−MIMOのスループット推定の計算量が多くて計算が困難な場合や、MU−MIMOの信号処理を基地局装置102がサポートしていない場合などに有効である。
【0168】
B−2.スループット推定
(実施形態6)
本実施形態では、実施形態1の図18のチャネル情報を用いたマルチユーザMIMOのスループット推定に関する別の実施形態について説明する。

下記の計算によって全体の容量を数式12で求め、端末107aと端末107bの通信容量を数式13と数式14で近似して求めてもよい。
【数4】

【0169】
(実施形態7)
本実施形態では、実施形態1の図18のチャネル情報を用いたスループット推定に関して別の実施形態について説明する。
図19に、本実施形態におけるスループットの推定方法の説明図を示す。ここでは、下りのスループットを例に説明するが、上りのスループットも同様に推定することができる。
【0170】
まず、端末107aでSU−SIMO通信を行った場合の下りスループットの実績値を記録する。この例では5Mbpsであり、この値をXとする。
端末107aと107bでSU−SIMO(時分割)通信を行った場合は、このXを同時接続端末数の2で割った値(X/2)Mbpsが推定スループットとなる。同様に、端末107a、107b、107cの3台であれば(X/3)Mbpsが推定スループットとなる。
【0171】
MU−SIMO(同時通信)を行った場合のスループットについては、端末107aと端末107bで過去にMU−SIMO(同時通信)を実際に行った結果を記憶しておき、SU−SIMO通信時のXの値に対してどの程度の割合であったかa,bの値を記憶しておく。この記憶しておいたa,bの値を、活用して推定スループットを計算する。前回のMU−MIMOによるスループットの結果を活用して推定する。
【0172】
次に、端末107aのみでSU−MIMO通信を行った場合は、送受信アンテナ数の小さい方の数をNとして、N×X Mbpsのスループットと推定する。図19の例ではN=2、X=5で10Mbpsと推定する。
端末107aと107bでSU−MIMO(時分割)通信を行った場合は、N×Xを同時接続端末数の2で割った値(N×X/2)Mbpsが推定スループットとなる。同様に、端末107a、107b、107cの3台であれば(N×X/3)Mbpsが推定スループットとなる。
【0173】
MU−MIMO(同時通信)を行った場合のスループットについては、端末107aと端末107bで過去にMU−MIMO(同時通信)を実際に行った結果を記憶しておき、SU−MIMO通信時のN×Xの値に対してどの程度の割合であったかd,eの値を記憶しておく。この記憶しておいたd,eの値を、活用して推定スループットを計算する。
【0174】
(実施形態8)
本実施形態では、実施形態7の図19のスループット推定に関して別の実施形態について説明する。
過去に選択した各通信モードにおける過去のスループット実績値を、実施形態7の図19の表形式で保持しておき、過去に通信したスループットの値を参照することで、推定スループットとしてもよい。実績がない場合は、推定スループットが必ず要求値を満たすような大きな値としておく。これにより、実施形態1の図17で説明したアルゴリズムでは、過去に実績のない通信モードが選択されることになる。選択された通信モードにおけるスループットの実績を記憶しておき、通信モード切替の際に過去の実績値を推定スループットとして参照する。
【0175】
B−3.アンテナ選択
(実施形態9)
本実施形態では、実施形態1の図26のStep11に関して別の実施形態について説明する。
基地局装置102から端末107aにパイロット信号を送信する。パイロット信号を受信した端末は、パイロット信号の受信電力を測定する。受信電力が最も高いアンテナを基地局装置102にフィードバックする。基地局装置102は、端末が指定したアンテナiを送信アンテナiとして選択する。
【0176】
B−4.通信モード選択
(実施形態10)
本実施形態では、実施形態1の図30における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO) の選択アルゴリズム(速度UP)と、図31における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO) の選択アルゴリズム(速度Down)に関して別の実施形態について説明する。
以下に示す図17のアルゴリズムを図30、図31の代わりに適用する。
【0177】
図17に、本発明の実施形態における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)を選択するアルゴリズムを示す。この処理は、通信モード切替処理部1212が実行する。
【0178】
まず、Step1で、SU−SIMO(時分割)の判定を実施してStep2に進む。SU−SIMO(時分割)の判定は、図32にて説明したアルゴリズムによって実施する。
Step2では、SU−SIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep3へ、そうでなければStep4に進む。
Step3では、SU−SIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step4では、MU−SIMO(同時通信)の判定を実施して、Step5に進む。MU−SIMO(同時通信)の判定は、図33にて説明したアルゴリズムによって実施する。
Step5では、MU−SIMO(同時通信)の判定結果が成功であればStep6へ、そうでなければStep7に進む。
【0179】
Step6では、MU−SIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step7では、SU−MIMO(時分割)の判定を実施してStep8に進む。SU−MIMO(時分割)の判定は、図34にて説明したアルゴリズムによって実施する。
Step8では、SU−MIMO(時分割)の判定結果が成功であればStep9へ、そうでなければStep10に進む。
【0180】
Step9では、SU−MIMO(時分割)の通信モードを選択する。
Step10では、MU−MIMO(同時通信)の判定を実施してStep11に進む。MU−MIMO(同時通信)の判定は、図35にて説明したアルゴリズムによって実施する。
Step11では、MU−MIMO(同時通信)の判定結果が成功であればStep12へ、そうでなければStep13に進む。
Step12では、MU−MIMO(同時通信)の通信モードを選択する。
Step13では、SU−SIMO(時分割)の通信モードを選択する。
【0181】
(実施形態11)
実施形態10の図17のStep13の別の実施形態を説明する。
通信モードを切り替えずに、現在の通信モードを継続する。
【0182】
(実施形態12)
実施形態10の図17のStep13の別の実施形態を説明する。
基地局装置が、端末のトラフィック種別を収集し、例えばベストエフォートのユーザ端末には、SU−SIMO(時分割)を割り当て、QoS(Quality of Service)呼のユーザ端末にはMU−MIMO(同時通信)の通信モードを割り当てる。
【0183】
(実施形態13)
本実施形態では、実施形態1の図31における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)の選択アルゴリズム(速度Down)に関して別の実施形態について説明する。
実施形態10で説明した図17のアルゴリズムを適用する。
【0184】
(実施形態14)
本実施形態では、実施形態1の図30における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)の選択アルゴリズム(速度UP)の代わりにのみ、実施形態10の図17のアルゴリズムを適用する。
【0185】
(実施形態15)
本実施形態では、実施形態1の図31における通信モード(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)の選択アルゴリズム(速度Down)の代わりにのみ、実施形態10の図17のアルゴリズムを適用する。
【0186】
(実施形態16)
本実施形態では、実施形態1の図25におけるアンテナクラスタの生成方法の代わりとして、別の実施形態によるアンテナクラスタの生成方法について説明する。
基地局装置が下りのパイロット信号を送信して、端末でチャネル情報を測定し、このチャネル情報を基地局装置にフィードバックする。このチャネル情報から受信電力を求め、受信電力が閾値以上のアンテナをアンテナクラスタとする。
【0187】
B−5.分配装置
(実施形態17)
本実施形態では、実施形態1の図27の分配装置の代わりとして、別の実施形態について説明する。図38に、本実施形態における分配装置の説明図を示す。
アンテナ106a1に対して無線部3801a、アンテナ106a2に対して無線部3801bのように、アンテナ毎に独立して無線部を持つ構成である。また、無線部3801aには、スイッチ3802によって、時分割で送信と受信を切り替える。この分配装置は、TDD(Time Division Duplex)システムに対応する。その他の機能については、図27と同様の機能を持つ。
【0188】
(実施形態18)
本実施形態では、実施形態17の図38の分配装置の代わりとして、別の実施形態について説明する。図38の無線部3801aのスイッチ3802の代わりに、図27の共用器2702を用いることで、送信と受信の回り込みを防いで同時使用を可能とする。それ以外の機能は、図38と同様である。この分配装置は、FDD(Frequency Division Duplex)システムに対応する。
【0189】
(実施形態19)
本実施形態では、実施形態17の図38の分配装置の代わりとして、別の実施形態について説明する。図38の無線部3801aには、無線送信部3703aのみがあり、無線部部3801bには、無線受信部3804b、受信電力測定部3805b、出力制御部3806bのみがある構成である。この場合、アンテナ106a1は送信のみ、アンテナ106a2は受信のみと片方向のみで運用するケースである。TDDでもFDDでも対応可能な装置であるが、基地局装置にて送信のみ受信のみのアンテナとして管理する必要がある。
【0190】
B−6.要求値
(実施形態20)
本実施形態では、実施形態1の図32〜図35における要求値に関して、呼種別に依存せず、あらかじめ決められた閾値として基地局で保持している値である。
【0191】
B−7.アンテナスイッチ
(実施形態21)
本実施形態では、実施形態1の図2におけるアンテナスイッチ装置109の機能に関して、基地局装置102に有している。
【0192】
(実施形態22)
本実施形態では、実施形態1の図2におけるアンテナスイッチ装置109の機能に関して、DAS親機103に有している。
【符号の説明】
【0193】
101:高速バックホール回線終端装置
102:基地局装置
103:DAS親機
104a, 104b,104c:DAS子機
105a, 105b,105c:分岐結合装置
106a, 106b,106c,106d,106e,106f,106g,106h,106i
106a1,106a2,106b1,106b2,106c1,106c2,106d1,106d2
106e1,106e2,106f1,106f2:アンテナ
107a,107b,107c: 端末
108a,108b,108c,108d,108e,108f: 分配装置
109:アンテナスイッチ
1201:アンテナポート入出力インタフェース
1202:ベースバンド信号処理部
1203:パイロット信号生成部
1204:チャネル推定処理部
1205:信号処理部(SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMO)
1206:同時通信端末数計測部
1207:チャネル情報
1208:端末リスト情報
1209:同時通信端末情報
1210:制御部
1211:アンテナ選択部
1212:通信モード切替処理部
1213:制御信号処理部
1214:有線インタフェース
2701:無線部
2702:共用器
2703:無線送信部
2704:無線受信部
2705a,2705b:受信電力測定部
2706a,2706b:出力制御部
2707:外部インタフェース
2801:外部インタフェース
2802:受信信号分離部
2803:受信電力測定部
2804:出力制御部
2805:受信スイッチ・合成処理部
2806:受信信号多重化処理部
2807:基地局インタフェース
2808:制御部
2809:送信信号分離処理部
2810:送信スイッチ部
2811:送信信号多重化処理部
3801a,3801b:無線部
3802a,3802b:スイッチ
3803a,3803b:無線送信部
3804a,3804b:無線受信部
3805a,3805b:受信電力測定部
3806a,3806b:出力制御部
3807:外部インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、を備えた分散アンテナシステムにおいて、
ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチ
を備え、
前記基地局装置は、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集し、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択し、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択されたアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信し、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断し、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチは、
前記アンテナ接続パタンを前記基地局装置から受け、
前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項2】
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチとを備えた分散アンテナシステムにおける基地局装置であって、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集する信号処理部と、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択するアンテナ選択部と、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記アンテナ選択部が選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信する通信モード切替処理部であって、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断する、前記通信モード切替処理部と、
を備え、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
前記信号処理部は、前記通信モード切替処理部及び前記アンテナ選択部により、選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチより、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする基地局装置。

【請求項3】
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、を備えた分散アンテナシステムにおいて、複数の前記分配装置と前記基地局装置との間の接続を切り替えるためのアンテナスイッチ装置であって、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択されたアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信しているとき、
前記基地局装置から、第1の通信モードを第2の通信モードへ切り替えために、選択された第2の通信モード及び選択され所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを受け取る制御部と、
前記制御部により、上り及び下り通信を、それぞれ、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える受信スイッチ合成処理部及び送信スイッチ部と、
を備え、
ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えることで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とするアンテナスイッチ装置。

【請求項4】
複数のアンテナポートを持つ基地局装置と、複数の端末アンテナを持つ端末と、ひとつ又は複数の分散アンテナを収容して空間的に分散配置された複数の分配装置と、ひとつ又は複数の前記分散アンテナと前記基地局装置の前記複数のアンテナポートとの接続を切り替えるアンテナスイッチとを備えた分散アンテナシステムにおける分散アンテナ切替方法であって、
前記基地局装置は、
上り及び下り通信の端末スループット、同時通信端末数、各前記分散アンテナから各前記端末アンテナまでの無線伝搬チャネル情報を収集し、
複数の前記分散アンテナの中から、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタとして選択するか、もしくは、分散アンテナ間で事前にパイロット信号を送受信することでパイロット信号の受信電力の大きい順に所定数の前記分散アンテナのグループをアンテナクラスタ情報として保持し、このアンテナクラスタ情報を活用して、端末からのパイロット信号又は制御信号の受信電力の最も大きい分散アンテナに対応するアンテナクラスタを選択するか、現在の通信モードで用いている前記分散アンテナに対応するアンテナクラスタとして選択し、
ある一定時刻においてひとつの端末のみが通信を行うか複数の端末が同時に通信を行うか、及び、前記選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかにより定められ、通信速度又はスループットがそれぞれ異なる複数の通信モードのひとつで通信し、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値より下回った場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より上回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより高い第2の通信モードを選択し、一方、
上り又は下り通信の端末スループットが要求値にあらかじめ定められた一定の閾値を加えた値を上回っている場合又は同時接続端末数があらかじめ定められた閾値より下回った場合に、現在通信中の第1の通信モード以外の他の通信モードによる推定スループットを計算し、推定スループットが要求値を満足し且つ通信速度又はスループットが第1の通信モードより低い第2の通信モードを選択し、通信モードの切替えを判断し、
前記推定スループットの計算においては、選択したアンテナクラスタ及び端末アンテナのどのひとつ又は複数のアンテナを送受信アンテナに割り当てるかを定めており、定められた分散アンテナ数分、基地局装置のアンテナポートを割り当て、
選択された第2の通信モード及び選択された所定数の前記分散アンテナにおける、前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を表すアンテナ接続パタンを作成して、前記アンテナスイッチに通知し、
前記アンテナスイッチは、
前記アンテナ接続パタンを前記基地局装置から受け、
前記所定数の分散アンテナと前記複数のアンテナポートとの対応を、指定された前記アンテナ接続パタンに従って切替える
ことで、前記基地局装置と前記端末の間で通信モードを切り替えて通信を継続することを特徴とする分散アンテナ切替方法。

【請求項5】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
分配装置のアンテナと端末のアンテナ間の無線チャネル情報をベースに容量計算した結果を前記推定スループットとすることを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項6】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
前記通信モード切替処理部は、過去の通信において選択された通信モードでのスループット実績を記憶しておき、通信モードの切替の際に過去のスループット実績値を推定スループットとすることを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項7】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
前記基地局装置の1つのアンテナポートの送信信号をすべてのアンテナに接続して広域に送信し、すべてのアンテナからの信号を受信できるアンテナ接続パタンを前記アンテナスイッチに設定し、
端末が送信した信号の受信電力を測定して、最も高い受信電力となるアンテナを前記基地局装置の送信アンテナとし、受信電力が高い順に予め定められた数のアンテナを前記基地局装置の受信アンテナとしてアンテナ接続パタンに切り替えることを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項8】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
複数のアンテナの中からパイロット信号又は制御信号の受信電力の一番大きいアンテナに対する所定数のアンテナを含むアンテナクラスタを選択すること、又は、該受信電力の大きい順に所定数のアンテナを含むアンテナクラスタを選択することを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項9】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
ある一つの分配装置の一つのアンテナから送信したパイロット信号又は制御信号を、送信しているアンテナ以外のアンテナで受信するように分配装置のアンテナと前記基地局装置のアンテナポートを接続するようアンテナ接続パタンを前記アンテナスイッチに設定し、
前記基地局装置で前記パイロット信号又は制御信号のチャネル推定を行って受信電力を求め、パイロット信号又は制御信号を送信したアンテナから受信電力の大きい順にアンテナクラスタを形成する分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項10】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
前記基地局装置と端末がある一つの分配装置の1本の送信アンテナによる通信から複数の送受信アンテナを用いたMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信に切替を行う場合に、ある一つの分配装置の1本の送信アンテナに対応するアンテナクラスタをMIMO通信に利用するアンテナ候補として選択してMIMO通信する分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項11】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
通信モードとして、SISO通信(Single User Single Input Single Output)、SIMO通信(Single Input Multiple Output)、MIMO通信(Multiple Input Multiple Output)通信のいずれかと、ある時刻において1つの端末のみが通信を行うシングルユーザモード(Single User)と、ある時刻において複数の端末が同時通信を行うマルチユーザモード(Multi−User)のいずれかとの組み合わせである、SU−SISO/MU−SISO/SU−SIMO/MU−SIMO/SU−MIMO/MU−MIMOのうち複数を含むことを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項12】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
前記アンテナスイッチ装置が扱うアンテナ数以下の任意の複数本のアンテナ信号を最大比合成して、前記基地局装置のアンテナポートに接続することを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【請求項13】
請求項1に記載の分散アンテナシステム、請求項2に記載の基地局装置、又は、請求項3に記載のアンテナスイッチ装置において、
アンテナ毎に受信電力を測定し、ノイズレベルと変わらないものについて出力しない出力制限機能部を有することを特徴とする分散アンテナシステム、基地局装置、又はアンテナスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−114700(P2012−114700A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262378(P2010−262378)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】