説明

分散型エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、従来のスパッタリングITOフィルムを用いた分散型EL素子よりもフレキシビリティに優れる分散型EL素子、具体的には薄い、又は柔軟な透明プラスチックフィルムに形成された分散型EL素子及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】ベースフィルム表面上に順次形成された、少なくとも繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層とからなる分散型エレクトロルミネッセンス素子であって、前記繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層はベースフィルム表面から剥離可能であり、前記透明導電層は導電性酸化物粒子とバインダー主成分とする透明導電層形成用塗布液を該透明コーティング層の表面上に塗布して形成された層膜に対し圧縮処理を施した後硬化させたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層が形成された透明導電層付きフィルムを用いて得られる分散型エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関するものであり、特に、携帯電話等の各種デバイスのキー入力部品に組み込まれる発光素子として適用される分散型エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散型エレクトロルミネッセンス素子(以下「分散型EL素子」と略称することがある。)は、交流電圧駆動による発光素子であり、携帯電話、リモートコントローラー等の液晶ディスプレイのバックライト等に用いられていたが、近年新しい用途として各種デバイスのキー入力部品(キーパッド)に組み込まれる発光素子への適用が試みられている。
【0003】
このようなデバイスとしては、例えば、携帯電話、リモートコントローラー、PDA(Personal Digital Assistance)・ラップトップPC等の携帯情報端末等が挙げられ、発光素子は夜間など暗い場所でのキー入力操作を容易にする目的で用いられる。
従来、上記キー入力部品(キーパッド)の発光素子としては、発光ダイオード(LED)が適用されていたが、LEDは点光源でキーパッド部分の輝度が不均一で外観が悪いこと、一般に白色・青色の発光色が好まれるがLEDではそれらの色では高コストになること、分散型EL素子に比べて消費電力が大きいこと等の問題があることから、LEDに代えて分散型EL素子を適用する動きが目立っている。
【0004】
かかる分散型EL素子の製造方法としては、一般に以下の方法が広く採用されている。即ち、スパッタリング、あるいはイオンプレーティング等の物理的成膜法を用いて、インジウム錫酸化物(以下「ITO」と略称する)の透明導電層が形成されたプラスチックフィルム(以下「スパッタリングITOフィルム」と略称する)上に、蛍光体層、誘電体層、背面電極層を順次スクリーン印刷等により形成する方法である。
【0005】
ここで、上記蛍光体層、誘電体層、背面電極層の各層の塗布(印刷)形成に用いるペーストは、それぞれ蛍光体粒子、誘電体微粒子、導電性微粒子がバインダーを含む溶剤に分散させたもので、例えば市販されているペーストを用いることができる。
【0006】
また、上記スパッタリングITOフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の透明プラスチックフィルムの上に無機成分であるITO単独層を上記物理的成膜法で厚さ:20〜50nm程度となるように形成したもので、表面抵抗値:100〜300Ω/□(オーム・パー・スクエア)程度と低抵抗が得られる。
しかしながら、上記ITO層は、無機成分の薄膜であって極めて脆いため、膜にマイクロクラック(割れ)を生じやすく、それを防止するため、基材となるプラスチックフィルムは十分な強度と剛性を備える必要があり、その厚みを少なくとも50μm以上、通常は75μm以上としている。
【0007】
また、現在、上記スパッタリングITOフィルムのベースフィルムにはPETフィルムが広く用いられているが、その厚みが50μm未満の場合、フィルムのフレキシビリティ(柔軟性)が高すぎて、ハンドリングの最中にITO層に容易にクラックが生じ、膜の導電性を著しく損ねるため、例えば厚さ25μm等の薄いスパッタリングITOフィルムは実用化されていない。また、ウレタン等の柔らかいベースフィルムは、そのフィルム厚が75μm以上であっても、スパッタリングITO層を形成した場合にクラックが生じやすく実用化されていない。
【0008】
ところで、上記キーパッドに分散型EL素子を適用した場合に要求される特性としては、例えば特許文献1にあるように、前述の輝度の均一性、低消費電力に加え、キーパッドを操作した際のクリック感に優れることが重要となる。
このキーパッドに分散型EL素子を組み込むことで、このクリック感を損ねないようにするためには、分散型EL素子自体のフレキシビリティを十分に高める必要があり、つまりは素子の厚みをできるだけ薄く、又はフレキシブルなベースフィルムを用いる必要がある。
【0009】
ところが、上述のスパッタリングITOフィルムを用いて分散型EL素子を作製した場合は、ITO層のクラック防止のためベースフィルムとして少なくとも厚さ50μm以上とし、フィルムの剛性を高める必要があり、フレキシブルなベースフィルムも使用できないため、上記キーパッドに適用した場合は、キー操作のクリック感が十分に良好とはいえない問題があった。
【0010】
また、上記とは別の問題として、例えば特許文献4には、携帯電話のキー入力に際して発生した静電気によるLCD(液晶)部品等の破壊・故障が指摘されている。このため、分散型EL素子のキー入力部品においても同様の問題が生ずる場合があり、その対策としては、例えば分散型EL素子の外表面に透明導電層を形成して上記静電気を逃がす方法が挙げられるが、前述のようにキーパッド用のベースフィルムはフレキシビリティが高いため、従来のスパッタリングITOフィルムは適用できない。また、キーパッドに要求される耐久性(打点耐久性)、透明性、導電性を満足する透明導電膜を、分散型EL素子外表面に安価に形成することも容易でなかった。
【特許文献1】特開2001−273831号公報
【特許文献2】特開平4−237909号公報
【特許文献3】特開平5−036314号公報
【特許文献4】特開2002−232537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、従来のスパッタリングITOフィルムを用いた分散型EL素子よりもフレキシビリティに優れる分散型EL素子、具体的には薄い、又は柔軟な透明プラスチックフィルムに形成された分散型EL素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成するため、様々の検討を重ねた結果、ベースフィルム表面上に順次形成された少なくとも透明コーティング層、透明導電層、蛍光体層、誘電体層、背面電極層からなる分散型エレクトロルミネッセンス素子のうち、透明コーティング層を可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子で強化されたコーティング層で、かつベースフィルムから剥離可能なものとし、また、透明導電層を従来の物理的成膜法ではなく、透明導電層形成用塗布液を用いて該ベースフィルム上に塗布・形成する方法を用いることによって、該透明導電層が導電性酸化物微粒子とバインダーマトリックスを主成分としていることから、透明導電層付フィルムのハンドリング中に透明導電層に容易にクラックが生じその導電性を著しく損ねることを抑え、しかも上記透明導電層形成用塗布液の塗布により得られた塗布層を圧縮処理することにより、透明導電層中の導電性微粒子の充填密度を上昇させ、光の散乱を低下させて膜の光学特性を向上させるだけでなく、導電性をも大幅に高めて、従来のスパッタリングITOフィルムを用いた分散型EL素子よりも導電性、フレキシビリティに優れる分散型EL素子を安価に提供することができること、また、該分散型EL素子を携帯電話等のキーパッドに適用した場合は、キーパッドに特殊な構造や工夫を行わなくても良好なキー操作のクリック感を得ることが可能となることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る分散型エレクトロルミネッセンス素子はベースフィルム表面上に順次形成された、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層とからなる分散型エレクトロルミネッセンス素子であって、前記透明コーティング層は透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いベースフィルム表面上に形成された繊維および/またはフレーク状粒子で強化されたコーティング層であって且つベースフィルム表面から剥離可能であり、前記透明導電層は導電性酸化物粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を該透明コーティング層の表面上に塗布して形成された塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させたものであることを特徴とするものである。
また、本発明に係る他の分散型エレクトロルミネッセンス素子は、前記透明ベースフィルムと前記透明コーティング層の間に、更に第2の透明導電層が形成され、前記第2の透明導電層は導電性酸化物粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を該ベースフィルム表面上に塗布し硬化させて形成されたもの、或いは、前記透明導電層形成用塗布液を該ベースフィルム表面上に塗布して形成された第2の塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させたものであることを特徴とし、前記透明コーティング層の厚さが50μm以下であることを特徴とし、前記導電性酸化物微粒子は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛のいずれか一つ以上を主成分として含有していることを特徴とし、前記酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子は、インジウム錫酸化物微粒子であることを特徴とし、前記バインダーは、架橋性を有しており、前記透明導電層及び第2の透明導電層が有機溶剤耐性を有していることを特徴とし、前記圧縮処理が、金属ロールの圧延処理により行われることを特徴とし、前記ベースフィルムが前記透明コーティング層、又は、前記第2の透明導電層との界面で剥離除去されていることを特徴とし、上記記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子が、デバイスのキー入力部品に組み込まれる発光素子として適用されたことを特徴とし、前記デバイスが携帯電話、リモートコントローラー、携帯情報端末であることを特徴とするものである。
【0014】
更に、本発明に係る分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、ベースフィルム表面上に、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層を順次形成する分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いて形成された繊維および/またはフレーク状粒子で強化された前記透明コーティング層の表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用いて塗布層を形成し、次いで該透明コーティング層及び塗布層が形成された前記ベースフィルムに対し圧縮処理を施した後硬化させて透明導電層を形成することを特徴とするものである。
次に、本発明に係る他の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、ベースフィルム表面上に、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層を順次形成する分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記ベースフィルム表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用い塗布して硬化させるか、或いは塗布して形成された第2の塗布層に圧縮処理を施した後硬化させるかして第2の透明導電層を形成し、該第2の透明導電層の表面上に透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いて繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層を塗布形成し、更に該透明コーティング層の表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用いて塗布層を形成し、次いで該ベースフィルム、該第2の透明導電層、該透明コーティング層及び該塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させて透明導電層を形成することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る他の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、前記記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造工程後、更にベースフィルムを前記透明コーティング層又は前記第2の透明導電層との界面から剥離除去することを特徴とし、前記圧縮処理を金属ロールの圧延処理で行うことを特徴とし、前記圧延処理は、線圧:29.4〜784N/mm(30〜800kgf/cm)であることを特徴とし、前記圧延処理は、線圧:98〜490N/mm(100〜500kgf/cm)であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースフィルム、及びそのベースフィルム上に順次形成された透明コーティング層、透明導電層、蛍光体層、誘電体層、背面電極層を少なくとも有する分散型エレクトロルミネッセンス素子であって、透明コーティング層は可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子で強化されたコーティング層で、かつベースフィルムから剥離可能なものとし、また、透明導電層を、従来の物理的成膜法ではなく、透明導電層形成用塗布液を用いて該ベースフィルム上に塗布・形成する方法を用いることによって、該透明導電層が導電性酸化物微粒子とバインダーマトリックスを主成分としていることから、透明導電層付フィルムのハンドリング中に透明導電層に容易にクラックが生じ、その導電性を著しく損ねることを抑え、しかも上記透明導電層形成用塗布液の塗布により得られた塗布層を圧縮処理することにより、透明導電層中の導電性微粒子の充填密度を上昇させ、光の散乱を低下させて膜の光学特性を向上させるだけでなく、導電性をも大幅に高めて、従来のスパッタリングITOフィルムを用いた分散型EL素子よりも導電性、フレキシビリティに優れる分散型EL素子を安価に提供することができること、また、上記分散型EL素子を携帯電話等のキーパッドに適用した場合は、キーパッドに特殊な構造や工夫を行わなくても良好なキー操作のクリック感を得ることが可能となり、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
従来の分散型エレクトロルミネッセンス素子は、図1に示すように、透明プラスチックフィルム1上に順次形成された透明導電層2、蛍光体層3、誘電体層4、背面電極層5を少なくとも有しており、また、実際のデバイスへの適用では、図2に示すように、銀等の集電電極6や、絶縁保護層7を更に形成して用いるのが、一般的である。
【0018】
一方、本発明に係る分散型エレクトロルミネッセンス素子は、図3に示すように、ベースフィルム8上に、順次形成された、透明コーティング層9、透明導電層2、蛍光体層3、誘電体層4、背面電極層5を少なくとも有しており、また、実際のデバイスへの適用では、図4に示すように、ベースフィルムを透明コーティング層との界面で剥離除去した形で用いられる。(図4には示していないが、図2と同様に、銀等の集電電極や、絶縁保護層を更に形成して用いるのが一般的である。)
【0019】
本発明で用いるベースフィルムは、その厚さが50μm以上であることが好ましい。ベースフィルムの厚さが50μm未満であるとフィルムの剛性が低下し、上述の分散型EL素子の製造工程での取扱い、基材のそり(カール)、蛍光体層、誘電体層、背面電極層等の印刷性、等に問題を生じやすくなる。逆に150μm以上では、ベースフィルムが硬くなり扱いづらくなると同時に、コスト的にも好ましくない。
このため、双方のことを考慮すれば、ベースフィルムの厚さが75μm以上、125μm以下が最適である。
ベースフィルムには、透明性は要求されず、また、透明コーティング層との剥離性を有していれば良く、その材質は特に限定されず、各種プラスチックを用いることができる。具体的には、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)等のプラスチックを用いることができる。中でも、安価で且つ、強度に優れ、柔軟性も兼ね備えている等の観点から、PETフィルムが好ましい。
【0020】
ここで、ベースフィルムの役割としては、本発明の分散型EL素子の製造工程での取扱いを容易にする働き、蛍光体層、誘電体層、背面電極層等の積層工程における基材のそり(カール)を防止する働き、分散型EL素子の輸送・ハンドリング中に保護する働き、透明導電層、蛍光体層、誘電体層、背面電極層等の印刷を均一に行う働き(一般にスクリーン印刷では、多数の小径の穴があいた吸引ステージを用い、穴の部分を減圧にしてフィルム固定するが、基材としてのフィルムが薄いと、その穴の部分のフィルムが減圧により変形してくぼみが生じ、スクリーン印刷した膜にこのくぼみの跡が生じる。)等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いる透明コーティング層は、透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いベースフィルムの上に塗布形成するため、その厚さを自由に設定できるが、その厚さが1μm以上、50μm以下であることが好ましい。透明コーティング層の厚さが50μmを超えるとその剛性が高くなり、分散型EL素子として前述のキーパッドに組み込んだ場合に、良好なクリック感が得られにくい。
また、透明コーティング層の厚さが、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは5μm以下であると、一層良好なクリック感を得ることが可能となり、また分散型EL素子の総厚を例えば100μm以下と薄くすることができるようになるためデバイスの設計面での自由度が高まる点でも、好ましい。本発明の透明コーティング層は、可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子で強化されたコーティング層であるため、透明コーティング層の厚さを薄くしてもその強度を十分高く維持できる特徴を有している。
【0022】
透明コーティング層は最終的に分散型EL素子の最表面となるため、透明導電層の電気的に絶縁する必要があるが、その厚さが1μm未満の場合は、十分に絶縁できない可能性があり好ましくない。
更に、透明コーティング層の材質(透明樹脂)は、ベースフィルムとの剥離性を有し、かつ、その上に透明導電層が形成できれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の各種樹脂を用いることができる。具体的には、ウレタン、エポキシ、ポリエステル、フッ素系樹脂等の樹脂を用いることができる。その中でも、安価で且つ透明性、強度に優れ、柔軟性も兼ね備えている等の観点から、ウレタン系及びフッ素系樹脂が好ましい。
【0023】
透明コーティング層の強化に用いる可視光線透過性の繊維(針状、棒状、ウィスカーも含む)は、可視光線透過性で、かつ繊維の太さが2〜3μm程度以下であれば各種の無機繊維や有機繊維(プラスチック繊維)が適用可能である。例えば、無機繊維であれば、シリカ繊維、チタニア繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維等が、有機繊維ではポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等が適用できるが、これらに限定されない。
透明コーティング層の強化に用いる可視光線透過性のフレーク状粒子(板状も含む)は、可視光線透過性で、かつフレーク状粒子の厚さ2〜3μm程度以下であれば各種の無機や有機(プラスチック)のフレーク状粒子が適用可能である。例えば、無機フレーク状粒子であれば、シリカ、チタニア、アルミナ等のフレーク状粒子、焼成カオリンなどのクレイ等がある。
上記繊維やフレーク状粒子は、透明樹脂(バインダーマトリックス)に分散した状態で透明コーティング層の強化の作用を有するが、その強度向上のためには繊維やフレーク状粒子と透明樹脂間の接着強度を高める必要があるため、必要に応じ繊維やフレーク状粒子の表面に接着性向上処理(カップリング剤処理、プラズマ処理等)を施すことが好ましい。カップリング剤処理におけるカップリング剤としては、例えば、シリコン系やチタン系等の各種カップリング剤が適用できる。シリコンカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられるが、用いる透明樹脂の種類に応じて適宜選択すればよく、これらに限定されない。
【0024】
このように、本発明によれば、透明コーティング層の厚さを極めて薄く設定することができ、また、材質を適宜選定すれば、用途に応じて良好な柔軟性を付与することが可能である。
【0025】
本発明に係る分散型EL素子では、図5に示すように、ベースフィルム8と透明コーティング層9の間に、第2の透明導電層10を更に形成することもできる。(実際のデバイスへの適用では、ベースフィルムを第2の透明導電層10との界面で剥離除去した形で用いられる。)
第2の透明導電層は、静電気による各種弊害を防止する目的であるため、分散型EL素子の電極として適用される前述の透明導電層の抵抗値に比べて、遥かに高い値で良く、例えば1M(1×10)Ω/□程度以下の値とするのが好ましい。
上記第2の透明導電層は、導電性酸化物微粒子をバインダー成分を含む溶媒に分散させた透明導電層形成用塗布液を用いてベースフィルムの上に塗布し硬化させて形成されるか、或いは、前記透明導電層形成用塗布液をベースフィルム上に塗布して第2の塗布層を形成し、次いで該第2の塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させて形成されるが、分散型EL素子の輝度低下をできるだけ防止する観点から高い透過率を有することが好ましく、従って、その膜厚は3μm以下であることが好ましく、更に1μm以下が好ましい。
第2の透明導電層に用いられるバインダーの材質は、ベースフィルムとの剥離性を有し、かつ、その上に透明コーティング層が形成できれば特に限定されず、各種樹脂を用いることができる。具体的には、ウレタン、エポキシ、ポリエステル、フッ素系樹脂等の樹脂を用いることができる。その中でも、安価で且つ透明性、強度に優れ、柔軟性も兼ね備えている等の観点から、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0026】
上記透明コーティング層上への、導電性酸化物微粒子とバインダーマトリックスを主成分とする透明導電層の形成は、透明コーティング層の表面上に、導電性酸化物微粒子をバインダー成分を含む溶媒に分散させた透明導電層形成用塗布液を用いて、塗布・乾燥後した後、透明コーティング層が形成されたベースフィルムごと圧縮処理を行い、次いで、バインダー成分を硬化させることにより得られる。
尚、上記透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥して得られる、圧縮処理前の膜(塗布層)は、導電性微粒子とバインダーマトリックスの間に多数の微細な空隙(マイクロボイド)が形成された状態である。上記空隙が生じるのは、本発明の透明導電層形成用塗布液において、バインダー成分の配合量が少ないためであり(例えば、導電性微粒子/バインダー成分=90/10の場合)、透明導電層形成用塗布液を単に塗布・乾燥するだけでは、導電性微粒子の細密充填は困難で、導電性微粒子の間にかなりの空隙が形成されるが、それをバインダー成分が完全に埋めきれないことに起因している。
ここで、圧縮処理としては、例えば、透明導電層形成用塗布液が塗布・乾燥された透明コーティング層を有するベースフィルムをスチールロールにより圧延すればよい。本発明では、最終的には、極めて薄い透明コーティング層上に圧延処理された透明導電層を有する構造の分散型EL素子を得ることになるが、上記圧延処理工程では、厚いベースフィルムごと圧延処理をおこなうため、比較的高い圧延圧力を適用することが可能である。この場合のスチールロールの圧延圧力は線圧:29.4〜784N/mm(30〜800kgf/cm)が良く、98〜490N/mm(100〜500kgf/cm)がより好ましく、196〜294N/mm(200〜300kgf/cm)が更に好ましい。線圧:29.4N/mm(30kgf/cm)未満では、圧延処理による透明導電層の抵抗値改善の効果が不十分で、線圧:784N/mm(800kgf/cm)を超えると、圧延設備が大型化すると同時に、ベースフィルムや透明コーティング層が歪んでしまう場合があるからである。圧延設備の価格、圧延処理による透明導電層の特性(透過率、ヘイズ、抵抗値)のバランスを考慮して、98〜490N/mm(100〜500kgf/cm)の範囲内に適宜設定することが望ましい。
上記スチールロールの圧延処理における圧延圧力(N/mm)は、線圧をニップ幅(スチールロールでつぶされる幅)割った値である。前記ニップ幅は、スチールロールの径と線圧にもよるが、150mm程度の直径であれば、0.7〜2mm程度である。
圧延処理により、圧延処理を行わない場合に比べて透明導電膜層中にある導電性微粒子の充填密度は、線圧にもよるが、例えば45vol%以下の低い値から、50〜80vol%(好ましくは55〜80%)程度まで高めることができる。80vol%を超える充填密度は、透明導電層形成用塗布液に含まれるバインダー成分の存在、及び導電性微粒子の物理的な充填構造から考えると、達成困難と思われる。
のような圧延処理を行うと、膜中に存在する上記空隙がつぶれて消失し、透明導電層中の導電性微粒子の充填密度が上昇するため、光の散乱を低下させて膜の光学特性を向上させるだけでなく、導電性を大幅に高めることができる。
【0027】
尚、上記透明コーティング層には、透明導電層との密着力を高めるために、易接着処理、具体的には、プラズマ処理、コロナ放電処理、短波長紫外線照射処理等を予め施しておくこともできる。
【0028】
透明導電層形成用塗布液に用いられる導電性酸化物微粒子としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛のいずれか一つ以上を主成分とする導電性酸化物微粒子であって、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)微粒子、インジウム亜鉛酸化物(IZO)微粒子、インジウム−タングステン酸化物(IWO)微粒子、インジウム−チタン酸化物(ITiO)微粒子、インジウムジルコニウム酸化物微粒子、錫アンチモン酸化物(ATO)微粒子、フッ素錫酸化物(FTO)微粒子、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)微粒子、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)微粒子等が挙げられるが、透明性と導電性を具備していれば良く、これらに限定されない。
但し、中でもITOが、高い可視光線透過率と優れた導電性を両立できる点で最も高特性であり、好ましい。
【0029】
導電性酸化物微粒子の平均粒径は、1〜500nmが好ましく、5〜100nmが更に好ましい。平均粒径が1nm未満では透明導電層形成用塗布液の製造が困難となり、また得られる透明導電層の抵抗値が高くなる。一方、500nmを超えると、透明導電層形成用塗布液中で導電性酸化物微粒子が沈降し易く取扱いが容易でなくなると同時に、透明導電層において高透過率と低抵抗値を同時に達成することが困難になるからである。
また、5〜100nmが更に好ましいのは、透明導電層の特性(透過率、抵抗値)と透明導電層形成用塗布液の安定性(導電性微粒子の沈降)等をバランスよく兼ね備えることが可能となるからである。
尚、上記導電性酸化物微粒子の平均粒径は、透過電子顕微鏡(TEM)で観察された値を示している。
【0030】
透明導電層形成用塗布液のバインダー成分は、導電性酸化物微粒子同士を結合させ膜の導電性と強度を高める働きや、透明コーティング層と透明導電層の密着力を高める働き、及び、分散型EL素子の製造工程において蛍光体層、誘電体層、背面電極層等の形成に用いる各種印刷ペーストに含まれる有機溶剤による透明導電層の劣化防止のための耐溶剤性を付与する働きを有している。バインダーとしては、有機及び/又は無機バインダーを用いることが可能であり、上記役割を満たすように、透明導電層形成用塗布液を適用する透明コーティング層、透明導電層の膜形成条件等を考慮して、適宜選定することができる。
【0031】
上記有機バインダーには、アクリル樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂も適用できるが、一般的には耐溶剤性を有することが好ましく、そのためには、架橋可能な樹脂であることが必要であり、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等から選定することができる。例えば、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フッ素樹脂など、常温硬化性樹脂としては2液性のエポキシ樹脂やウレタン樹脂など、紫外線硬化性樹脂としては各種オリゴマー、モノマー、光開始剤を含有する樹脂など、電子線硬化性樹脂としては各種オリゴマー、モノマーを含有する樹脂などを挙げることができるが、これら樹脂に限定されるものではない。
【0032】
また、無機バインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等を主成分とするバインダーを挙げることができる。例えば、上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、更に加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。
【0033】
尚、脱水縮重合が進行し過ぎると、溶液粘度が上昇して最終的に固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、透明基板上に塗布可能な上限粘度以下に調整する。ただし、脱水縮重合の度合いは上記上限粘度以下のレベルであれば特に限定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると、重量平均分子量で500〜50000程度が好ましい。そして、このアルキルシリケート加水分解重合物(シリカゾル)は、透明導電層形成用塗布液の塗布・乾燥後の加熱時において脱水縮重合反応(架橋反応)がほぼ完結し、硬いシリケートバインダーマトリックス(酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックス)になる。上記脱水縮重合反応は膜の乾燥直後から始まり、時間が経過すると導電性酸化物微粒子同士が動けなくなる程強固に固めてしまうため、無機バインダーを用いた場合には、前述の圧縮処理は、透明導電層形成用塗布液の塗布・乾燥後、可能な限り速やかに行う必要がある。
【0034】
バインダーとして、有機−無機のハイブリッドバインダーを用いることもできる。例えば、前述のシリカゾルを一部有機官能基で修飾したバインダーや、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤を主成分とするバインダーが挙げられる。
【0035】
上記無機バインダーや有機−無機のハイブリッドバインダーを用いた透明導電層は、必然的に優れた耐溶剤性を有しているが、透明コーティング層との密着力や、透明導電層の柔軟性等が悪化しないように、適宜選定する必要がある。
【0036】
透明導電層形成用塗布液中の、導電性酸化物微粒子とバインダー成分の割合は、仮に導電性酸化物微粒子とバインダー成分の比重をそれぞれ7.2程度(ITOの比重)と1.2程度(通常の有機樹脂バインダーの比重)と仮定した場合、重量比で、導電性酸化物微粒子:バインダー成分=85:15〜97:3、好ましくは87:13〜95:5が好ましい。その理由は、本発明の圧延処理を行う場合、85:15よりバインダー成分が多いと透明導電層の抵抗が高くなりすぎ、逆に97:3よりバインダー成分が少ないと透明導電層の強度が低下すると同時に、透明コーティング層との十分な密着力が得られなくなるからである。
【0037】
本発明で用いる前記透明コーティング層形成用塗布液は、必要に応じ表面に接着性向上処理(カップリング剤処理、プラズマ処理等)が施された繊維および/またはフレーク状粒子を透明樹脂(透明コーティング層のバインダー成分)を含む溶剤に分散させて得ることができる。必要に応じてシリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、アニオン系・ノニオン系・カチオン系等の各種界面活性剤を分散剤として用いても良い。これら分散剤は、用いる繊維および/またはフレーク状粒子の種類や分散処理方法に応じて適宜選定することができる。分散処理としては、超音波処理、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等の汎用の方法を適用することができる。透明樹脂と、繊維および/またはフレーク状粒子の濃度は、用いる塗布方法に応じて、適宜設定すればよい。透明樹脂と繊維および/またはフレーク状粒子の配合比率は、用いる材質にも依存するが、透明樹脂と繊維および/またはフレーク状粒子の合計に対し、繊維および/またはフレーク状粒子の配合量が5〜60体積%がよく、更には10〜30体積%好ましい。5体積%未満だと繊維および/またはフレーク状粒子による強化の効果が見られず、60体積%を超えると繊維および/またはフレーク状粒子が多すぎて透明コーティング層がポーラスになり強度が低下すると同時に透明コーティング層の表面凹凸が大きくなり、その上に透明導電層を均一に形成することが困難になるからである。
【0038】
本発明で用いる透明導電層形成用塗布液の製造方法を説明する。まず、導電性酸化物微粒子を溶剤、及び必要に応じて分散剤、と混合した後、分散処理を行い導電性酸化物微粒子分散液を得る。分散剤としては、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、アニオン系・ノニオン系・カチオン系等の各種界面活性剤が挙げられる。これら分散剤は、用いる導電性酸化物微粒子の種類や分散処理方法に応じて適宜選定することができる。また、分散剤を全く用いなくても、適用する導電性酸化物微粒子と溶剤の組合せ、及び分散方法の如何によっては、良好な分散状態を得ることができる場合がある。分散剤の使用は膜の抵抗値や耐候性を悪化させる可能性があるので、分散剤を用いない透明導電層形成用塗布液が最も好ましい。分散処理としては、超音波処理、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等の汎用の方法を適用することができる。
【0039】
得られた導電性酸化物微粒子分散液にバインダー成分を添加し、更に導電性酸化物微粒子濃度、溶剤組成等の成分調整を行うことにより、透明導電層形成用塗布液が得られる。ここでは、バインダー成分を導電性酸化物微粒子の分散液に加えたが、前述の導電性酸化物微粒子の分散工程前に予め加えてもよく、特に制約はない。導電性酸化物微粒子濃度は、用いる塗布方法に応じて、適宜設定すればよい。
【0040】
透明導電層形成用塗布液に用いる溶媒としては、特に制限はなく、塗布方法、製膜条件、透明コーティング層の材質により適宜に選定することができる。例えば、水、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
次に、本発明に係る分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
先ず、樹脂バインダー(透明樹脂)と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子と溶剤を含む透明コーティング層形成用塗布液を用い、スクリーン印刷、ブレードコーティング、ワイヤーバーコーティング、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷等の方法でベースフィルムの上に塗布・乾燥・硬化して、繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層を形成する。ここで、上記透明コーティング層の形成に先立ち、必要に応じて、ベースフィルムの上に導電性酸化物微粒子をバインダー成分を含む溶媒に分散させた透明導電層形成用塗布液を用い、上記と同様の方法で塗布・乾燥して硬化させるか、或いは、塗布・乾燥して形成された第2の塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させるかして第2の透明導電層を形成しておくこともできる。前述のように第2の透明導電層の抵抗値は比較的高い値で良いため、必ずしも圧延処理を施す必要はなく、その場合は、抵抗値は悪化するものの膜強度や密着力を改善する目的で前述の導電性酸化物微粒子とバインダー成分の配合割合よりもバインダー成分の多い透明導電層形成用塗布液を用いても良い。
次に、上記透明導電層形成用塗布液を用い、上記と同様の方法で透明コーティング層の上に塗布・乾燥し塗布層を形成した後、上述の圧縮処理を施す。圧縮処理は、金属ロールの圧延処理により行われることが好ましい。その後、圧延処理された塗布層は、塗布液の種類により乾燥硬化、熱硬化、紫外線硬化等の硬化処理が施され透明導電層となる。
尚、本明細書中、「塗布層」とは、透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥させた膜、という意で用いられ、また、「透明導電層」は、透明導電層形成用塗布液を用いて最終的に得られた膜、という意で用いられている。従って、「透明導電層」は、透明導電層形成用塗布液の「塗布層」と明確に区別して用いている。
【0042】
上記透明導電層上に形成される蛍光体層、誘電体層、背面電極層は、順次スクリーン印刷等により形成することができる。蛍光体層、誘電体層、背面電極層の各層を塗布(印刷)形成するときに用いるペーストは、市販されているペーストを用いることができる。蛍光体層ペースト、誘電体層ペーストは、それぞれ蛍光体粒子、誘電体微粒子を、フッ素ゴムを主成分としたバインダーを含む溶剤に分散させたものであり、背面電極層ペーストは、カーボン微粒子等の導電性微粒子を、熱硬化樹脂バインダーを含む溶剤に分散させたものである。
【0043】
ここで、上記透明導電層上に、蛍光体層等の各層をスクリーン印刷する場合には、一般に、多数の小径の穴があいた吸引ステージを用い、穴の部分を減圧にしてフィルム固定する方法が用いられる。ベースフィルムが薄いと、その穴の部分のフィルムが減圧により変形してくぼみが生じ、スクリーン印刷した膜にこのくぼみの跡が生じる問題が発生するが、前述のように、本発明では、スクリーン印刷時には十分な強度を有するベースフィルムを用い、分散型EL素子の形成後にそれを剥離除去するため、上記問題を防止できる。尚、本発明で用いるベースフィルムは、分散型EL素子製造工程における加熱処理による収縮(寸法変化)、及びフィルムのカールを防止するため、予め分散型EL素子の製造工程の熱処理温度である130〜150℃で加熱処理(熱収縮処理)を施しておくことが好ましい。透明コーティング層形成用塗布液の透明樹脂に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いた場合には、透明コーティング層形成用塗布液をベースフィルムに塗布した後の乾燥硬化や加熱硬化において加熱処理温度を120〜150℃とすることができれば上記加熱処理(熱収縮処理)を省くことも可能である。
【0044】
上記透明導電層、蛍光体層、誘電体層、背面電極層で分散型EL素子の主要部分は構成されるが、実際の分散型EL素子においては、透明導電層の集電電極(銀ペーストで形成)、背面電極層のリード電極(銀ペーストで形成)、電極間ショート、感電等を防止するための絶縁保護コーティング(絶縁ペーストで形成)等が更に形成される。
【0045】
本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子は、繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層を用いているため、強度に優れると同時にその厚さが薄く、かつ柔軟なため、分散型EL素子としてフレキシビリティに優れており、デバイスのキー入力部品に組み込まれる発光素子として適用され、キーパッドに特殊な構造や工夫を行わなくても良好なキー操作のクリック感を得ることが可能となる。したがって、携帯電話、リモートコントローラー、携帯情報端末等のデバイスのキー入力部品に組み込まれる発光素子として適用することができる。
[実施例]
【0046】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
【実施例1】
【0047】
平均粒径0.03μmの粒状のITO微粒子(商品名:SUFP−HX、住友金属鉱山製)36gを溶剤としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)24gとシクロヘキサノン36gと混合し、分散処理を行った後、ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂バインダー3.8gと光開始剤(ダロキュアー1173)0.2gを加えて良く攪拌して、平均分散粒径130nmのITO微粒子が分散した透明導電層形成用塗布液(A液)を得た。
【0048】
シリコンカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した、長さ10〜20μmで太さ0.3〜0.6μmのチタン酸カリウム繊維[KO・6TiO](大塚化学製、ティスモN、真比重=3.5〜3.6)15gと高分子分散剤0.15gを溶剤としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)50gと混合し、分散処理を行った後、透明樹脂としてのウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(根上工業製、アートレジンH−14[開発品])33.1gと光重合開始剤(ダロキュアー1173)1.75gを加えて良く攪拌して、チタン酸カリウム繊維が透明樹脂を含む溶剤に分散した透明コーティング層形成用塗布液(B液)を得た。この透明コーティング層形成用塗布液における繊維の配合量は、透明樹脂(光重合開始剤を含む)の比重を約1.2として計算すると、12.6vol%である。
【0049】
ベースフィルムとしての易接着処理を施していないPETフィルム(帝人(株)製、厚さ100μm)上に、上記透明コーティング層形成用塗布液(B液)をワイヤーバーコーティング(線径:0.5mm)し、60℃×5分の乾燥後、紫外線硬化(高圧水銀ランプ、100mW/cm2×4秒)させて、チタン酸カリウム繊維で強化されたアクリルウレタン樹脂からなる透明コーティング層(膜厚:約12μm)を得た。この透明コーティング層が形成されたベースフィルムは、外観は白色塗膜であり、その膜特性は、可視光透過率:40.8%、ヘイズ値:90.8%であった。(可視光線の吸収は少ないが散乱が非常に大きいため、見かけ上測定される透過率は低くなる。)この透明コーティング層上に、上記透明導電層形成用塗布液(A液)をワイヤーバーコーティング(線径:0.15mm)し、60℃で1分間乾燥した後、直径100mmのハードクロムめっきしたスチールロールによる圧延処理(線圧:200kgf/cm=196N/mm、ニップ幅:0.9mm)を行い、更に高圧水銀ランプによりバインダー成分の硬化(窒素中、100mW/cm×2秒間)を行って、透明コーティング層上に緻密に充填されたITO微粒子とバインダーで構成される透明導電層(膜厚:約1.0μm)を形成し、ベースフィルム/繊維で強化された透明コーティング層/透明導電層からなる積層フィルムを得た。圧延処理後の該透明導電膜層中にある導電性微粒子の充填密度は約55vol%であった。上記積層フィルムにおいて、透明導電層を有する繊維で強化された透明コーティング層は、ベースフィルムとの界面で簡単に剥離できた。
尚、上記ベースフィルムは、後述の分散型EL素子製造工程における加熱処理による収縮(寸法変化)、及びフィルムのカールを防止するため、予め150℃×10分間加熱処理を施してから、その上に透明コーティング層を形成している。
【0050】
この透明導電層の膜特性は、可視光透過率:87.7%、ヘイズ値:1.2%、表面抵抗値:610Ω/□であった。尚、表面抵抗値は、バインダー硬化時の紫外線照射の影響を受けて、硬化直後は一時的に低下する傾向があるため、透明導電層形成の1日後に測定している。
【0051】
尚、上述の透明導電層の透過率及びヘイズ値は、透明導電層だけの値であり、それぞれ下記計算式1及び2により求められる。(ただし、上述のように、繊維で強化された透明コーティング層が形成されたベースフィルムは、可視光透過率:40.8%、ヘイズ値:90.8%と透光性はあるが透明性という点では良くないため、下記計算式で計算される値は誤差が大きくなる可能性がある。)
[計算式1]
透明導電層の透過率(%)=[(透明導電層と透明コーティング層が形成されたベースフィルムごと測定した透過率)/透明コーティング層が形成されたベースフィルムの透過率]×100
[計算式2]
透明導電層のヘイズ値(%)=(透明導電層と透明コーティング層が形成されたベースフィルムごと測定したヘイズ値)−(透明コーティング層が形成されたベースフィルムのヘイズ値)
【0052】
また、透明導電層の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘイズ値と可視光透過率は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。
【0053】
次に、上記積層フィルムの透明導電層上に、蛍光体である硫化亜鉛粒子を、フッ素ポリマーを主成分とする樹脂溶液中に分散させた蛍光体ペースト(デュポン製、7154J)を作製し、200メッシュポリエステルスクリーンを用いて4×5cmの大きさにスクリーン印刷し、120℃×30分乾燥して、蛍光体層を形成した。
【0054】
上記蛍光体層の上に、フッ素ポリマーを主成分とする樹脂溶液中にチタン酸バリウム粒子を分散させた誘電体ペースト(デュポン製、7153)を作製し、200メッシュポリエステルスクリーンを用いて4×5cmの大きさにスクリーン印刷し、乾燥(120℃×30分)し、これを2度繰り返して、誘電体層を形成した。
【0055】
上記誘電体層上に、カーボン導電ペースト(藤倉化成製、FEC−198)を200メッシュポリエステルスクリーンにより3.5×4.5cmの大きさにスクリーン印刷し、130℃×30分間乾燥し背面電極層を形成した。
【0056】
上記透明導電層、及び背面電極層の一端に、電圧印加用Agリード線を銀導電ペーストを用いて形成し、実施例1に係る分散型EL素子(ベースフィルム/繊維で強化された透明コーティング層/透明導電層/蛍光体層/誘電体層/背面電極層)を得た。尚、電極間ショート、感電等を防止するために、必要に応じて、透明導電層、背面電極層の絶縁保護コーティングとして、絶縁ペースト(藤倉化成製、XB−101G)を用いて絶縁層を形成したが、本発明の本質に係わる部分ではないので、詳細は省略する。
【0057】
上記分散型EL素子において、ベースフィルムは繊維で強化された透明コーティング層との界面で簡単に剥離できた。このベースフィルム剥離して得られた分散型EL素子の電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加したところ、分散型EL素子は均一に発光し、その輝度測定したところ、49Cd/mであった。輝度は、輝度計(トプコン社製 商品名:BM−9)で測定した。
【実施例2】
【0058】
平均粒径0.03μmの粒状のITO微粒子(商品名:SUFP−HX、住友金属鉱山製)36gを溶剤としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)24gとシクロヘキサノン36gと混合し、分散処理を行った後、PETから剥離可能な程度の密着力を有するウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂バインダー3.8gと光開始剤(ダロキュアー1173)0.2gを加えて良く攪拌して、平均分散粒径130nmのITO微粒子が分散した透明導電層形成用塗布液(C液)を得た。
ベースフィルムとしての易接着処理を施していないPETフィルム(帝人(株)製、厚さ100μm)上に透明導電層形成用塗布液(C液)をワイヤーバーコーティング(線径:0.075mm)し、60℃で1分間乾燥した後、実施例1と同様の圧延処理(線圧200kgf/cm=196N/mm、ニップ幅=0.9mm)を行い、更に、高圧水銀ランプによりバインダー成分の硬化(窒素中、100mW/cm×2秒間)を行って、ITO微粒子とバインダーで構成される第2の透明導電層(膜厚:約0.4μm)を形成した。この第2の透明導電層は、可視光透過率:95.2%、ヘイズ値:2.7%、表面抵抗値:2600Ω/□であった。この第2の透明導電層上に繊維で強化された透明コーティング層を形成した以外は実施例1と同様に行い、透明コーティング層上に緻密に充填されたITO微粒子とバインダーで構成される透明導電層(膜厚:約1.0μm)を形成し、ベースフィルム/第2の透明導電層/繊維で強化された透明コーティング層/透明導電層からなる積層フィルムを得た。圧延処理後の該透明導電膜層中にある導電性微粒子の充填密度は約54vol%であった。上記積層フィルムにおいて、第2の透明導電層と透明導電層を有する繊維で強化された透明コーティング層は、ベースフィルムと第2の透明導電層の界面で簡単に剥離できた。
尚、上記ベースフィルムは、分散型EL素子製造工程における加熱処理による収縮(寸法変化)、及びフィルムのカールを防止するため、予め150℃×10分間加熱処理を施してから、その上に第2の透明導電層を形成している。
その透明導電層は、可視光透過率:87.5%、ヘイズ値:1.5%、表面抵抗値:620Ω/□であった。この透明導電層を得た以外は、実施例1と同様に行い、実施例2に係る分散型EL素子を得た。
尚、上述の透明導電層の透過率及びヘイズ値は、透明導電層だけの値であり、それぞれ下記計算式3及び4により求められる。
[計算式3]
透明導電層の透過率(%)=[(透明導電層と透明コーティング層と第2の透明導電層が形成されたベースフィルムごとに測定した透過率)/透明コーティング層と第2の透明導電層が形成されたベースフィルムの透過率]×100
[計算式4]
透明導電層のヘイズ値(%)=(透明導電層と透明コーティング層と第2の透明導電層が形成されたベースフィルムごとに測定したヘイズ値)−(透明コーティング層と第2の透明導電層が形成されたベースフィルムのヘイズ値)
【0059】
上記分散型EL素子において、ベースフィルムは第2の透明導電層との界面で簡単に剥離できた。このベースフィルム剥離して得られた分散型EL素子の電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加したところ、分散型EL素子は均一に発光し、その輝度測定したところ、47Cd/mであった。
[比較例1]
【0060】
透明樹脂としてのウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(根上工業製、アートレジンH−14[開発品])38gと光重合開始剤(ダロキュアー1173)2gをメチルイソブチルケトン(MIBK)60gと混合し、繊維を含まない透明コーティング層形成用塗布液(D液)を得た。
【0061】
ベースフィルムとしての易接着処理を施していないPETフィルム(帝人(株)製、厚さ100μm)上に、上記透明コーティング層形成用塗布液(D液)をワイヤーバーコーティング(線径:0.5mm)し、60℃×5分の乾燥後、紫外線硬化(高圧水銀ランプ、100mW/cm2×4秒)させて、繊維を含まないアクリルウレタン樹脂からなる透明コーティング層(膜厚:約12μm)を得た。この透明コーティング層が形成されたベースフィルムは、外観は透明であり、その膜特性は、可視光透過率:90.2%、ヘイズ値:2.0%であった。
上記透明コーティング層上に透明導電層を形成した以外は、実施例1と同様に行い、透明コーティング層上に緻密に充填されたITO微粒子とバインダーで構成される透明導電層(膜厚:約1.0μm)を形成し、ベースフィルム/繊維で強化されていない透明コーティング層/透明導電層からなる積層フィルムを得た。この透明導電膜層中にある導電性微粒子の充填密度は約55vol%であった。
上記積層フィルムにおいて、透明導電層を有する繊維で強化されていない透明コーティング層は、ベースフィルムとの界面で簡単に剥離できた。
尚、上記ベースフィルムは、分散型EL素子製造工程における加熱処理による収縮(寸法変化)、及びフィルムのカールを防止するため、予め150℃×10分間加熱処理を施してから、その上に透明コーティング層を形成している。
【0062】
この透明導電層の膜特性は、可視光透過率:90.5%、ヘイズ値:2.7%、表面抵抗値:590Ω/□であった。尚、表面抵抗値は、バインダー硬化時の紫外線照射の影響を受けて、硬化直後は一時的に低下する傾向があるため、透明導電層形成の1日後に測定している。
【0063】
上記透明導電層が形成されたベースフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして行い、比較例1に係る分散型EL素子を得た。
【0064】
上記分散型EL素子において、ベースフィルムは透明コーティング層との界面で簡単に剥離できた。このベースフィルム剥離して得られた分散型EL素子の電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加したところ、分散型EL素子は均一に発光し、その輝度測定したところ、53Cd/mであった。
【0065】
『分散型EL素子の強度評価』
各実施例で透明導電層を有する繊維で強化された透明コーティング層(積層フィルムからベースフィルムを剥離除去して得られるもの)と、比較例の透明導電層を有する繊維で強化されていない透明コーティング層(積層フィルムからベースフィルムを剥離除去して得られるもの)を短冊状にして破断強度を測定したところ、各実施例の透明導電層を有する透明コーティング層は比較例の透明導電層を有する透明コーティング層の約2倍の破断強度を有していた。
また、各実施例に係る分散型EL素子(ベースフィルムを剥離したもの)と比較例に係る分散型EL素子(ベースフィルムを剥離したもの)の電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加しながら、素子に引っ張り加重を加えてその発光状態を観察したところ、比較例の素子は各実施例の素子に比べ、低い荷重印加で透明コーティング層に亀裂が生じて透明導電層の導電性が劣化し、発光状態の悪化が見られた。
【0066】
『分散型EL素子のフレキシビリティ評価』
各実施例に係る分散型EL素子(ベースフィルムを剥離したもの)と比較例に係る分散型EL素子(ベースフィルムを剥離したもの)を直径3mmの棒にその発光面がそれぞれ内側、及び外側となるように1回づつ巻きつけた後、分散型EL素子の電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加して、素子の発光状態を観察した。各実施例と比較例において、発光状態に変化は見られなかった。
【0067】
『分散型EL素子の耐溶剤性評価』
各実施例と比較例で、透明コーティング層上に透明導電層を形成した後、アセトンを浸した綿棒で透明導電層面を10往復擦って外観変化を観察したが、全く変化が見られなかった。また、この評価を行った透明導電層を用い分散型EL素子を作製し、電圧印加用リード線間に100V、400Hzの電圧を印加して、素子の発光状態を観察したが、綿棒で擦った部分を含めて発光は均一であり、アセトンによる影響は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】従来の分散型EL素子の基本的構造を示す断面図である。
【図2】従来の分散型EL素子の別な構造を示す断面図である。
【図3】本発明に係る基本的構造の分散型EL素子を示す断面図である。
【図4】本発明に係る別な構造の分散型EL素子を示す断面図である。
【図5】本発明に係る更に別な構造の分散型EL素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 透明プラスチックフィルム
2 透明導電層
3 蛍光体層
4 誘電体層
5 背面電極層
6 集電電極
7 絶縁保護層
8 ベースフィルム
9 透明コーティング層
10 第2の透明導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム表面上に順次形成された、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層とからなる分散型エレクトロルミネッセンス素子であって、前記透明コーティング層は透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いベースフィルム表面上に形成された繊維および/またはフレーク状粒子で強化されたコーティング層であって且つベースフィルム表面から剥離可能であり、前記透明導電層は導電性酸化物粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を該透明コーティング層の表面上に塗布して形成された塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させたものであることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記透明ベースフィルムと前記透明コーティング層の間に、更に第2の透明導電層が形成され、前記第2の透明導電層は導電性酸化物粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を該ベースフィルム表面上に塗布し硬化させて形成されたもの、或いは、前記透明導電層形成用塗布液を該ベースフィルム表面上に塗布して形成された第2の塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させたものであることを特徴とする請求項1に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記透明コーティング層の厚さが50μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記導電性酸化物微粒子は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛のいずれか一つ以上を主成分として含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子は、インジウム錫酸化物微粒子であることを特徴とする請求項4に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記バインダーは、架橋性を有しており、前記透明導電層及び第2の透明導電層が有機溶剤耐性を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記圧縮処理が、金属ロールの圧延処理により行われることを特徴とする請求項1または2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記ベースフィルムが前記透明コーティング層、又は、前記第2の透明導電層との界面で剥離除去されていることを特徴とする請求項1〜7に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子が、デバイスのキー入力部品に組み込まれる発光素子として適用されたことを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記デバイスが携帯電話、リモートコントローラー、携帯情報端末であることを特徴とする請求項9記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
ベースフィルム表面上に、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層を順次形成する分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いて形成された繊維および/またはフレーク状粒子で強化された前記透明コーティング層の表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用いて塗布層を形成し、次いで該透明コーティング層及び塗布層が形成された前記ベースフィルムに対し圧縮処理を施した後硬化させて透明導電層を形成することを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
ベースフィルム表面上に、少なくとも透明コーティング層と、透明導電層と、蛍光体層と、誘電体層と、背面電極層を順次形成する分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記ベースフィルム表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用い塗布して硬化させるか、或いは塗布して形成された第2の塗布層に圧縮処理を施した後硬化させるかして第2の透明導電層を形成し、該第2の透明導電層の表面上に透明樹脂と可視光線透過性の繊維および/またはフレーク状粒子を主成分とする透明コーティング層形成用塗布液を用いて繊維および/またはフレーク状粒子で強化された透明コーティング層を塗布形成し、更に該透明コーティング層の表面上に導電性酸化物微粒子とバインダーを主成分とする透明導電層形成用塗布液を用いて塗布層を形成し、次いで該ベースフィルム、該第2の透明導電層、該透明コーティング層及び該塗布層に対し圧縮処理を施した後硬化させて透明導電層を形成することを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造工程後、更にベースフィルムを前記透明コーティング層又は前記第2の透明導電層との界面から剥離除去することを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
前記圧縮処理を金属ロールの圧延処理で行うことを特徴とする請求項11又は12に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項15】
前記圧延処理は、線圧:29.4〜784N/mm(30〜800kgf/cm)であることを特徴とする請求項14に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項16】
前記圧延処理は、線圧:98〜490N/mm(100〜500kgf/cm)であることを特徴とする請求項14に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−4502(P2008−4502A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175638(P2006−175638)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】