説明

分散染料、それらの製造及びそれらの使用

本発明は、一般式(I)
【化1】


(式中、X及びR〜Rはそれぞれ、請求項1に定義される通りである)
の染料、それらの製造プロセス及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−置換フタルイミドジアゾ成分とアニリンシリーズのカップリング成分とを含む分散染料、それらの製造プロセス、及びテキスタイル材料を染色するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の分散染料は既に公知であり、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9及び特許文献10に記載されている。しかしながら、それらは、例えば、それらがある種の洗濯堅牢度に関して今日の要件を満たさないという点において幾つかの欠点を有する。
【0003】
ここで、意外にも、本明細書で以下に定義される染料は、規定された要件を満たし、そしてまた優れた濃色染着性、染色の優れた温度依存性及びまたより高いpH安定性を有することが見いだされた。
【0004】
【特許文献1】仏国特許第1,358,145号明細書
【特許文献2】米国特許第3,980,634号明細書
【特許文献3】米国特許第4,039,522号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 051 563 A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 443 984 A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0 667 376 A1号明細書
【特許文献7】国際公開第00/40656号パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/68539号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/74864号パンフレット
【特許文献10】国際公開第04/44058号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、
一般式(I)
【0006】
【化1】

(式中、
及びXは両方とも水素であるか又は両方ともシアノであり、
は、エチル、直鎖若しくは分岐の(C〜C10)アルキル又は−(CHCOORであり、
は、水素、メチル、シアノメチル、ハロメチル、エチル、シアノエチル、ハロエチル、ハロゲン、−NH−CO−R又は−NH−SO−Rであり、
は、(C〜C)アルキル又はヒドロキシル−、(C〜C)アルコキシ−、シアノ−、ハロゲン−、ROCO−、ROOC−、ビニル−若しくはフェニル−置換(C〜C)アルキルであり、
は、水素、(C〜C)アルキル又はヒドロキシル−、(C〜C)アルコキシ−、シアノ−、ハロゲン−、ROCO−、ROOC−、ビニル若しくはフェニル−置換(C〜C)アルキルであり、
は、水素、ハロゲン、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ又はハロゲン−、シアノ−若しくはフェニル−置換(C〜C)アルコキシであり、
は(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル又はハロゲン−若しくはシアノ−置換(C〜C)アルキルであり、そして
nは1、2、3、4又は5であり、
ただし、
がエチル又はn−ブチルであり、X及びXが両方ともシアノであり、そしてRが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)化合物、
がエチル又はn−ブチルであり、X及びXが両方とも水素であり、そしてRが−NH−CO−R又は−NH−SO−Rである化合物、
が−(CHCOOR(ここで、n=2であり、そしてR=Cアルキルである)であり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRの1つがCアルキルであり、そして他がROCO−置換Cアルキル(ここで、R=Cアルキルである)であり、そしてRが水素である化合物、
が分岐Cアルキルであり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRが両方ともCアルキルであり、そしてRが水素である化合物、並びに
がイソブチルであり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であるか又は−NH−SO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRが両方ともCアルキルであり、そしてRが水素である化合物
は除外されるものとする)
の染料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
直鎖(C〜C10)アルキルである場合のRは、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル又はn−デシルであってもよい。
【0008】
分岐(C〜C10)アルキルである場合のRは、例えばイソプロピル、イソブチル、第二級ブチル又は第三級ブチルであってもよい。
直鎖(C〜C10)アルキルが好ましい。
【0009】
がエチル又はn−ブチルであるとき、Rは好ましくはシアノメチル、ハロメチル、エチル、シアノエチル、ハロエチル、ハロゲン、−NH−CO−R又は−NH−SO−Rである。
【0010】
−NH−CO−Rである場合のRは具体的にはアセチルアミノ又はプロピオニルアミノであるが、−NH−SO−Rである場合のRは具体的にはメチルスルファミノ又はエチルスルファミノである。
【0011】
置換若しくは非置換の(C〜C)アルキルである場合のR又はRは、直鎖若しくは分岐であってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二級ブチル若しくは第三級ブチル、又は直鎖若しくは分岐のペンチル、ヘキシル、ヘプチル若しくはオクチルである。(C〜C)アルキルが好ましく、そしてメチル又はエチルが特に好ましい。
【0012】
同じ論理は(C〜C)アルキルである場合のRに適用され、従って好ましくはメチル又はエチルであり、そしてまた、(C〜Cアルコキシである場合のRにも適用され、従って好ましくは(C〜C)アルコキシ、より好ましくはメトキシ又はエトキシである。C〜Cアルキルである場合のR又はR上の置換基としての(C〜C)アルコキシは同様に好ましくはメトキシ又はエトキシである。
ハロゲンは好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくは塩素又は臭素である。
は好ましくは水素である。
【0013】
本発明に係る好ましい染料は、一般式(Ia)
【0014】
【化2】

(式中、
は、n−ペンチル又は−(CHCOORであり、
は、メチル、−NH−CO−メチル又は−NH−SO−メチルであり、
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルであり、
は、メチル、エチル又はブチルであり、そして
nは1、2又は3である)
で表される。
【0015】
本発明に係る好ましい染料はまた、一般式(Ib)
【0016】
【化3】

(式中、
は、エチル又は−(CHCOORであり、
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルであり、
は、メチル、エチル又はブチルであり、そして
nは1、2、3又は5である)
で表される。
【0017】
本発明に係る好ましい染料はまた、一般式(Ic)
【0018】
【化4】

(式中、
は、イソプロピル、イソブチル、第二級ブチル又は第三級ブチルであり、そして
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルである)
で表される。
一般式(I)の本発明の染料は、当業者に公知の方法を用いて得られる。
【0019】
例えば、X及びXが両方ともシアノである本発明の化合物は、一般式(II)
【0020】
【化5】

(式中、R〜Rはそれぞれ、上に定義された通りである)
の化合物をシアノ化することによって得られる。
シアノ化は好ましく、公知の方法で、例えば熱いNMP中ヨウ化カリウム及びイミダゾールの存在下にシアン化銅(I)とシアン化亜鉛(II)との混合物で達成される。
【0021】
一般式(II)の化合物は、一般式(III)
【0022】
【化6】

の化合物をジアゾ化し、そして一般式(IV)
【0023】
【化7】

(式中、R〜Rはそれぞれ、上に定義された通りである)
の化合物とカップリングさせることによって得られる。
【0024】
一般式(III)の化合物のジアゾ化は一般に公知の方法で、例えば塩酸若しくは硫酸で酸性にされた水性媒体中で例えば亜硝酸ナトリウムを使用して、又は希硫酸、リン酸中で若しくは酢酸とプロピオン酸との混合物中でニトロシル硫酸を使用して達成される。好ましい温度範囲は0℃〜15℃である。
【0025】
ジアゾ化化合物の一般式(IV)の化合物とのカップリングは一般に同様に公知の方法で、例えば酸性の、水性、水性−有機又は有機媒体中で、特に有利には10℃未満の温度で達成される。使用される酸は具体的には硫酸、酢酸又はプロピオン酸である。
【0026】
一般式(IV)の化合物は公知であり、公知の方法によって製造することができる。
【0027】
一般式(III)の化合物は、フタルイミドから出発して例えば次の通り製造することができる。
フタルイミドを、例えば有機合成(Organic Synthesis)、CV2、459ページ(第5版)に記載されているようにニトロ化し、得られた4−ニトロフタルイミドを水酸化ナトリウム水溶液で処理してそれを4−ニトロフタル酸へ変換する。無水酢酸と加熱して1分子の水を除去し、相当する酸無水物を得る。それを一般式(V)
−NH (V)
(式中、Rは上に定義された通りである)
のアミンと反応させて一般式(VI)
【0028】
【化8】

(式中、Rは上に定義された通りである)
の化合物を形成する。
【0029】
無水フタル酸と一般式(VI)のアミンとの反応は好ましくは、無水フタル酸をアミン中へ導入し、そして高温で数時間反応を進行させることによって実施される。
【0030】
次に、一般式(VI)の化合物を還元して一般式(VII)
【0031】
【化9】

(式中、Rは上に定義された通りである)
の化合物を得る。還元は、Chem.Pharm.Bull.42(9)、1994年、1817ページに記載されている方法によって有利に実施される。
最後に、一般式(VII)の化合物を氷酢酸中で臭素化して、式(III)の化合物を得る。
【0032】
一般式(III)の化合物を用いる代わりに一般式(VII)の化合物を用いて上記のジアゾ化及びカップリング反応を実施すれば、X及びXが両方とも水素である一般式(I)の本発明の染料が得られる。
【0033】
本発明に係るこれらの最終的染料は、このように、一般式(VII)(式中、Rは上に定義された通りである)の化合物をジアゾ化し、
【0034】
【化10】

そして一般式(IV)(式中、R〜Rはそれぞれ、上に定義された通りである)の化合物とカップリングさせるによって得られる。
【0035】
【化11】

【0036】
一般式(I)の本発明の染料は、疎水性材料の染色及び捺染に非常に有用であり、得られる染め物及び捺染物は、均等な色相及び高い実用堅牢度に関して注目に値する。光、乾燥ヒートセッティング及びプリーツ加工、水及び汗に対する良好な堅牢度、特に非常に良好な洗濯堅牢度、並びにまた高い還元安定性は特に言及するに値する。前述した疎水性材料は、合成又は半合成起源のものであってもよい。
【0037】
従って、本発明はまた、疎水性材料を染色する及び捺染するための一般式(I)の染料の使用、すなわち、従来方式でかかる材料を染色するか又は捺染するプロセスであって、本発明に係る一般式(I)の1つ以上の染料が着色剤として使用されるプロセスを提供する。
【0038】
有用な疎水性材料には、例えば二次(secondary)酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアミド及び、特に、高分子量ポリエステルが含まれる。高分子量ポリエステルの材料は特に、ポリエチレングリコールテレフタレートをベースとするものである。
【0039】
疎水性の合成材料は、シート又は糸状構成の形態で存在することができ、例えば、糸へ又は織られた若しくは編まれたテキスタイル材料へ加工されたものであることができる。例えばマイクロファイバーの形態でまた存在してもよい、繊維状テキスタイル材料が好ましい。
【0040】
本発明によって提供される使用に従った染色は、吸尽プロセスによって80〜約110℃で、又は染色オートクレーブ中で110〜140℃でのHTプロセスによって、そしてまた、布を染色液でパディングし、次いで約180〜230℃で固定/セットする、いわゆる熱固定プロセスによって、必要に応じてキャリアの存在下に、好ましくは水性分散系から従来方式で実施することができる。
【0041】
前述の材料の捺染は、本発明の式(I)の染料又は染料混合物を捺染糊に組み込み、そしてそれを用いて捺染された布を、必要に応じてキャリアの存在下に、HTスチーム、高圧スチーム又は乾式加熱で180〜230℃の温度で処理して染料を固定することによる本質的に知られた方法で実施することができる。
【0042】
本発明の式(I)の染料及び染料混合物は、それらが染色液、パディング液又は捺染糊に使用されるときには細分の非常に微細な状態にあるものとする。
【0043】
染料は、製造されたままの染料を液体媒体中で、好ましくは水中で分散剤と一緒にスラリー化し、そしてその混合物を剪断力の作用にかけて、最適の比表面積が達成される及び染料の沈降が最小限となるような程度に元の染料粒子を機械的に細かく砕くことによる従来方式で微細の状態へ変換される。これは、ボールミル又はサンドミルなどの、好適なミルで成し遂げられる。染料の粒度は一般に0.5〜5μmであり、好ましくは約1μmに等しい。
【0044】
製粉操作(the milling operation)に使用される分散剤は非イオン性又は陰イオン性であることができる。非イオン性分散剤には、例えば、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド)とアルキル化可能な化合物(例えば、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール又はカルボキサミド)との反応生成物が含まれる。陰イオン性分散剤は、例えばリグノスルホネート、アルキル−若しくはアルキルアリールスルホネート又はアルキルアリールポリグリコールエーテルサルフェートである。
【0045】
このようにして得られた染料調製物は、ほとんどの用途向けに流し込み可能であるべきである。従って、染料及び分散剤含有率はこれらの場合には制限される。一般に、分散系は、染料含有率を50重量パーセント以下に、そして分散剤含有率を約25重量パーセント以下に調整される。経済的理由から、染料含有率はほとんどの場合に15重量パーセント未満であることは許容されない。
【0046】
分散系はまた、さらなる助剤、例えば、酸化剤(例えば、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム)、又は殺真菌剤(例えば、ナトリウムo−フェニルフェノキシド又はナトリウムペンタクロロフェノキシド)、並びに特に、いわゆる”酸供与体”(例えばブチロラクトン、モノクロロアセトアミド、クロロ酢酸ナトリウム、ジクロロ酢酸ナトリウム、3−クロロプロピオン酸のナトリウム塩、例えばラウリル硫酸塩などのモノサルフェートエステル、そしてまた、例えばブチルグリコールサルフェートなどのエトキシル化若しくはプロポキシル化アルコールの硫酸エステル)としての役割を果たすものをさらに含有してもよい。
【0047】
このように得られる染料分散系は、染色液及び捺染糊を構成するのに非常に有利である。
粉末調合物が好ましい、ある種の使用分野がある。これらの粉末は、染料又は染料混合物、分散剤並びに他の助剤(例えば、湿潤剤、酸化剤、保存及び防塵剤、そして上述の”酸供与体”)を含む。
【0048】
染料の粉状調合物の好ましい製造方法は、例えば真空乾燥、凍結乾燥によって、ドラム乾燥機での乾燥によって、しかし好ましくは噴霧乾燥によって、上記の液体染料分散系からそれらの液体を取り去ることで構成される。
【0049】
染色液は、5:1〜50:1の液比が染色のために得られるように、必要量の上記染料調合物を染色媒体、好ましくは水で希釈することによって製造される。加えて、分散、湿潤及び固定助剤などの、さらなる染色助剤を液中に含むことが一般に慣例的である。酢酸、コハク酸、ホウ酸又はリン酸などの有機又は無機酸が、pHを4〜5の範囲に、好ましくは4.5に設定するために含められる。pH設定を緩衝すること、及び十分な量の緩衝系を加えることが有利である。酢酸/酢酸ナトリウム系は、有利な緩衝系の例である。
【0050】
染料又は染料混合物を織物捺染に使用するために、必要量の上述の染料調合物が、増粘剤、例えばアルギン酸のアルカリ金属塩など、並びに必要に応じてさらなる添加剤、例えば固定促進剤、湿潤剤及び酸化剤と一緒に従来方式で混練されて、捺染糊が生成される。
【0051】
本発明はまた、一般式(I)の本発明の染料を含む、インクジェットプロセスによるデジタル織物捺染用のインクを提供する。
【0052】
本発明のインクは好ましくは水性であり、一般式(I)の本発明の染料の1つ以上を、インクの総重量を基準として例えば0.1重量%〜50重量%の量で、好ましくは1重量%〜30重量%の量で、より好ましくは1重量%〜15重量%の量で含む。それらは具体的には0.1重量%〜20重量%の分散剤をさらに含む。好適な分散剤は当業者に公知であり、商業的に入手可能であり、そして例えばスルホン化若しくはスルホメチル化リグニン、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、置換若しくは非置換フェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリアクリレート及び相当するコポリマー、変性ポリウレタン並びにアルキレンオキシドとアルキル化可能な化合物、例えば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、カルボキサミド及び置換若しくは非置換フェノールとの反応生成物を含む。
【0053】
本発明のインクは、慣例的な添加剤、例えば、20〜50℃の温度範囲で粘度を1.5〜40.0mPasの範囲に設定するための粘度調整剤をさらに含んでもよい。好ましいインクは1.5〜20mPasの範囲の粘度を有し、特に好ましいインクは1.5〜15mPasの範囲の粘度を有する。
【0054】
有用な粘度調整剤には、レオロジー添加剤、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン及びまたそれらのコポリマー、ポリエーテルポリオール、関連増粘剤、ポリウレア、アルギン酸ナトリウム、変性ガラクトマンナン、ポリエーテルウレア、ポリウレタン並びに非イオン性セルロースエーテルが含まれる。
【0055】
さらなる添加剤として、本発明のインクは、用いられるプロセス(熱又はピエゾ技術)しだいで必要に応じて適合させられる、20〜65mN/mの範囲の表面張力を設定するための界面活性物質を含んでもよい。有用な界面活性物質には、例えば任意の種類の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、ブチルジグリコール及び1,2−ヘキサンジオールが含まれる。インクは、慣例的な添加剤、例えば真菌及び細菌増殖を防ぐための化学種を、インクの総重量を基準として0.01重量%〜1重量%の量でさらに含んでもよい。
本発明のインクは、成分を水中で混合することによって従来方式で調製することができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
a)8.0gの式(IIIa)
【0057】
【化12】

の化合物を、室温で84mlの酢酸と28mlのプロピオン酸との混合物へ導入する。0〜5℃で5分の撹拌後に、5mlの40%ニトロシル硫酸を滴加し、次いで、その混合物を当該温度で2時間撹拌する。反応混合物を0〜5℃で、4.5gのN,N−ジエチル−m−トルイジンの39mlの酢酸及び13mlのプロピオン酸溶液中に徐々に加え、2時間撹拌する。pHを酢酸ナトリウムで4.0に上げた後、314mlの水を加え、次いで、その混合物を5時間撹拌する。生じた懸濁液を吸引濾過し、水で洗浄し、乾燥させて10.9gの式(IIa)
【0058】
【化13】

の化合物を残す。
【0059】
b)丸底フラスコ中で7.0gの式(IIa)の化合物を70mlのNMPに懸濁させる。0.5gのイミダゾール、0.7gのシアン化銅(I)、1.1gのシアン化亜鉛及び1.3gのヨウ化ナトリウムを添加した後、70℃で1.5時間撹拌する。冷却後に、2.9gの塩化鉄(III)の150mlの水の溶液を滴加し、5時間撹拌する。懸濁液を吸引濾過し、希塩酸及び水で洗浄し、乾燥させて6.2gの式(Ic)
【0060】
【化14】

の本発明の染料を残し、それはポリエステルを僅かに赤みがかった青色の色合いに染色する。
上記のプロセスによって得られるさらなる本発明の染料を表1に報告する。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例30
1重量部の式(Ic)の染料を17部の水及び2部の商業的に入手可能な分散剤と共にビーズミルにかけ、その後3%分散系へ変換する。
この分散系を使用して130℃での高温吸尽プロセスによってポリエステル織布上に1%染色を生み出し、染色を亜ジチオン酸ナトリウムで還元クリア(reduction cleared)する。このように得られた染色は非常に高い洗濯堅牢度を有する。
【0064】
実施例31
ポリエステルからなる織物布を、1lの水あたり50gの8%アルギン酸ナトリウム溶液、100gの8〜12%イナゴマメ粉エーテル溶液及び5gのリン酸一ナトリウムからなる液でパディングし、次に乾燥させる。湿絞り率(the wet pickup)は70%である。このように前処理した織物を次に、上記の手順に従って調製され、そして
3.5%の式(Ia)の染料、
2.5%のディスパーバイク(Disperbyk)190分散剤、
30%の1,5−ペンタンジオール、
5%のジエチレングリコールモノメチルエーテル、
0.01%のマーガル(Mergal)K9N殺生物剤、及び
58.99%の水
を含有する水性インクでドロップ−オン−デマンド(ピエゾ)インクジェットプリントヘッドを用いて捺染する。捺染を十分に乾燥させる。固定は、175℃で7分間過熱スチームを用いて行う。捺染をその後アルカリ性還元クリアにかけ、温リンスし、次に乾燥させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】


(式中、
及びXは両方とも水素であるか又は両方ともシアノであり、
は、エチル、直鎖若しくは分岐の(C〜C10)アルキル又は−(CHCOORであり、
は、水素、メチル、シアノメチル、ハロメチル、エチル、シアノエチル、ハロエチル、ハロゲン、−NH−CO−R又は−NH−SO−Rであり、
は、(C〜C)アルキル又はヒドロキシル−、(C〜C)アルコキシ−、シアノ−、ハロゲン−、ROCO−、ROOC−、ビニル−若しくはフェニル−置換(C〜C)アルキルであり、
は、水素、(C〜C)アルキル又はヒドロキシル−、(C〜C)アルコキシ−、シアノ−、ハロゲン−、ROCO−、ROOC−、ビニル若しくはフェニル−置換(C〜C)アルキルであり、
は、水素、ハロゲン、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ又はハロゲン−、シアノ−若しくはフェニル−置換(C〜C)アルコキシであり、
は(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル又はハロゲン−若しくはシアノ−置換(C〜C)アルキルであり、そして
nは1、2、3、4又は5であり、
ただし、
がエチル又はn−ブチルであり、X及びXが両方ともシアノであり、そしてRが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)化合物、
がエチル又はn−ブチルであり、X及びXが両方とも水素であり、そしてRが−NH−CO−R又は−NH−SO−Rである化合物、
が−(CHCOOR(ここで、n=2であり、そしてR=Cアルキルである)であり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRの1つがCアルキルであり、そして他がROCO−置換Cアルキル(ここで、R=Cアルキルである)であり、そしてRが水素である化合物、
が分岐Cアルキルであり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRが両方ともCアルキルであり、そしてRが水素である化合物、並びに
がイソブチルであり、X及びXが両方とも水素であり、Rが−NH−CO−R(ここで、R=Cアルキルである)であるか又は−NH−SO−R(ここで、R=Cアルキルである)であり、R及びRが両方ともCアルキルであり、そしてRが水素である化合物は除外されるものとする)
の染料。
【請求項2】
が水素である請求項1に記載の染料。
【請求項3】
一般式(Ia)
【化2】

(式中、
は、n−ペンチル又は−(CHCOORであり、
は、メチル、−NH−CO−メチル又は−NH−SO−メチルであり、
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルであり、
は、メチル、エチル又はブチルであり、そして
nは1、2又は3である)
で表される請求項1又は2に記載の染料。
【請求項4】
一般式(Ib)
【化3】

(式中、
は、エチル又は−(CHCOORであり、
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルであり、
は、メチル、エチル又はブチルであり、そして
nは1、2、3又は5である)
で表される請求項1又は2に記載の染料。
【請求項5】
一般式(Ic)
【化4】

(式中、
は、イソプロピル、イソブチル、第二級ブチル又は第三級ブチルであり、そして
及びRは独立して、エチル、−(CHCN、−(CHOMe、−(CHOAc、又はn−ブチルである)
で表される請求項1又は2に記載の染料。
【請求項6】
一般式(II)
【化5】

(式中、R〜Rはそれぞれ、請求項1に定義される通りである)
の化合物をシアノ化する工程を含む、請求項1〜3又は5のいずれか一項に記載の一般式(I)(式中、X及びXは両方ともシアノである)の染料の製造プロセス。
【請求項7】
一般式(VII)
【化6】

(式中、Rは請求項1に定義される通りである)
の化合物をジアゾ化し、そして一般式(IV)
【化7】

(式中、R〜Rはそれぞれ、請求項1に定義される通りである)
の化合物とカップリングさせる工程を含む、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の一般式(I)(式中、X及びXは両方とも水素である)の染料の製造プロセス。
【請求項8】
疎水性材料を染色する及び捺染するための請求項1に記載の一般式(I)の染料の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の一般式(I)の染料を含む、インクジェットプロセスによるデジタル織物捺染用のインク。

【公表番号】特表2009−540077(P2009−540077A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514754(P2009−514754)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055578
【国際公開番号】WO2007/144298
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】