説明

分散液及びコーティング剤

【課題】 チタン元素を含む化合物からなる中空状ファイバを溶媒中に高度に分散させ、
沈殿を生じることなく安定な分散液及びコーティング剤を提供することを可能とする。
【解決手段】 本発明では、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバと溶媒からな
り、前記チタン元素を含む化合物の内部ないし表面にプロトンが付加され、前記溶媒にア
ミンの水溶液が含まれることを特徴とする分散液及びコーティング剤を提供する。本発明
のコーティング剤を利用すると非常に透明度の高い塗膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバが溶媒に分散されたコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外径が30nm以下のサイズの中空ファイバは、その特異な量子効果、光学異方性、電子放出能、大表面積、吸着分子のサイズ選択性等の特性から、近年、エレクトロニクス、バイオサイエンス、触媒等の各種分野から大きな注目を集めている。これらの中空ファイバの優れた特性を様々な用途に応用するためには、簡便なプロセスによる薄膜化、コーティング化が必要不可欠になる。一般に、中空ファイバの分散は、中空ファイバ同士の結合が強いために困難とされている。例えば、カーボンナノチューブを分散する方法として、イオン性液体と混合する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
一方、ワイドギャップ型半導体の中空ファイバは、透明性、紫外線レーザー発振等の特性が期待されている。ワイドギャップ半導体のうち、特に酸化チタンは高い屈折率と優れた光触媒特性を有しているため、光学薄膜や、防曇、防汚コーティング材料として注目されている。酸化チタンないしチタン酸の中空状ファイバについては、粉末状の材料については既に報告されている(たとえば、特許文献1、非特許文献2参照)。しかしながら、中空ファイバ同士の吸着力は高く、互いに絡み合っているため、溶媒に高度に分散した溶液を提供することは困難である。
【非特許文献1】T. Fukushima et al., Science, 300, 2072 (2003)
【特許文献1】特開平10-152323号公報
【非特許文献2】L. M. Peng et al., Adv. Mater. 14, 1208 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チタン元素を含む化合物からなる中空状ファイバを溶媒中に高度に分散させ、沈殿を生じることなく、更にアルカリ性、酸性、さらには中性で安定な分散液及びコーティング剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバと溶媒からなり、前記チタン元素を含む化合物の内部ないし表面にプロトンが付加され、前記溶媒にアミン水溶液が含まれることを特徴とする分散液及びコーティング剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、様々な用途に適用が可能な中空ファイバの分散液及びコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る分散液はチタン元素を含む化合物からなる中空ファイバが溶媒に分散されている。また、前記チタン元素を含む化合物の内部ないし表面にはプロトンが付加されている。無機物に高い分散性を持たせるための手段として、凝集の駆動力となる静電エネルギーを低くすることが有効である。本発明においては、中空ファイバの内部ないし表面にプロトンを付加することで、電気的中性が保たれるため高い分散性を発現することができる。プロトン付加量は赤外分光法(IR)、昇温脱離法(TDS)、CHNコーダで分析することができる。例えば、本発明に係る中空ファイバをCHNコーダで分析すると水素の濃度は3%以上となり、従来のアナターゼ型酸化チタンに含まれる水素の量(約1%)よりも高い。本発明では、水素の濃度1.5%以上でプロトンが付加されたものと見なす。前記中空ファイバにプロトンを挿入する方法としては、酸に接触する方法が最も簡便である。
【0008】
また、本発明に係る分散液の溶媒として、アミン水溶液を好適に使用することができる。アミン水溶液を使用することで、前記中空ファイバを高度に分散することができ、適量の添加で溶液pHをアルカリ性、中性、酸性に制御することができるアミン化合物であれば良い。具体的なアミンの種類としては、化学式1で表わされる化合物から選択される少なくとも一種を好適に使用することができる。
【0009】
【化1】

ここで、化学式1において、R1、R、R3及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール(アルキルおよびアリールの炭素数は1以上18以下)から選ばれる一種の官能基である。具体的には、更に、他のアミン化合物として、化学式2で表わされる化合物から選択される少なくとも一種についても好適に使用することができる。
前記化学式1に記載の化合物について、以下に具体的に述べる。化学式1に記載の化合物は四級アミンとも言われ、分散のための溶媒として単独でも、複数混合しても構わない。前記四級アミンとして、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラデシルアンモニウム、水酸化テトラドデシルアンモニウム、水酸化テトラ(テトラデシル)アンモニウム、水酸化テトラ(ヘキサデシル)アンモニウム、水酸化テトラ(オクタデシル)アンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化プロピルトリメチルアンモニウム、水酸化ブチルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化デシルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリメチルアンモニウム、水酸化プロピルトリエチルアンモニウム、水酸化ブチルトリエチルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリエチルアンモニウム、水酸化オクチルトリエチルアンモニウム、水酸化デシルトリエチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリエチルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリエチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリエチルアンモニウム、水酸化ブチルトリプロピルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリプロピルアンモニウム、水酸化オクチルトリプロピルアンモニウム、水酸化デシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ドデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化ジプロピルジメチルアンモニウム、水酸化ジブチルジメチルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクチルジメチルアンモニウム、水酸化ジデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジプロピルジエチルアンモニウム、水酸化ジブチルジエチルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジエチルアンモニウム、水酸化ジオクチルジエチルアンモニウム、水酸化ジデシルジエチルアンモニウム、水酸化ジドデシルジエチルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジブチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジオクチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジデシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジドデシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)ジプロピルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
【0010】
【化2】

ここで、化学式2において、R1、R及びR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール(アルキルおよびアリールの炭素数は1以上18以下)から選ばれる一種の官能基である。
前記化学式2に記載の化合物について、以下に具体的に述べる。化学式2に記載の化合物には一級アミン、二級アミン、三級アミンがあり、分散のための溶媒として単独でも、複数混合しても構わない。前記一級アミンとして、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプタアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
前記二級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルオクチルアミン、メチルデシルアミン、メチルドデシルアミン、メチルテトラデシルアミン、メチルヘキサデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルオクチルアミン、エチルデシルアミン、エチルドデシルアミン、エチルテトラデシルアミン、エチルヘキサデシルアミン、エチルオクタデシルアミン、プロピルブチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルオクチルアミン、プロピルデシルアミン、プロピルドデシルアミン、プロピルテトラデシルアミン、プロピルヘキサデシルアミン、プロピルオクタデシルアミン、ブチルヘキシルアミン、ブチルオクチルアミン、ブチルデシルアミン、ブチルドデシルアミン、ブチルテトラデシルアミン、ブチルヘキサデシルアミン、ブチルオクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
前記三級アミンとして、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチルデシルアミン、ジエチルドデシルアミン、ジエチルテトラデシルアミン、ジエチルヘキサデシルアミン、ジエチルオクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
【0011】
また、アミン化合物については、分子中に複数のアミン部位が存在するアミン化合物についても好適に用いることができ、化学式3で表わされる化合物から選択される少なくとも一種について好適に使用することができる。
【0012】
【化3】

ここで、化学式3において、nは1〜10の整数である。
前記化学式3に記載の化合物はジアミン類とも言われ、分散のための溶媒として単独でも、複数混合しても構わない。前記ジアミン類として、例えば、ジアミノメタン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノウンデカン、ジアミノドデカン、ジアミノトリデカン、ジアミノテトラデカン、ジアミノペンタデカン、ジアミノヘキサデカン、ジアミノヘプタデカン、ジアミノオクタデカンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
【0013】
更に、アミン部位が分子中に多数存在しうる高分子アミンについても、同様に好適に用いることができ、具体的には、ポリジアリルジメチルアミン(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン(PAA)等の高分子アミンを用いることができる。
本発明における中空ファイバ分散液においては、広いpH領域で安定な分散液を提供することができる。溶液のpHがアルカリ性であるような分散液を作製する場合、水溶液中のアミン化合物の濃度としては、0.001M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.01M以上2M以下である。ここで、0.001M未満の濃度条件では、アミン化合物の中空ファイバへの吸着が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.01M未満の場合、アミン化合物の吸着反応が遅くなる恐れがあり、2Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
前記化学式1、2、3の化合物や高分子アミンは、中空ファイバを分散させるため、単独で使用しても複数混合して使用しても構わない。
【0014】
また本発明における中空ファイバ分散液は、中空ファイバの等電点が好ましくはpH3〜6に存在することから、中性領域での分散も可能となる。光触媒材料、特に酸化チタンの中性領域での安定分散については、通常等電点がpH7付近に存在することから、非常に困難であったが、本発明における光触媒材料としての中空ファイバは、好ましくは等電点がpH3〜6の弱酸性領域に存在することから、中性領域での分散が可能となる。具体的には、高濃度の強酸中で処理して作製できる中空ファイバの分散液のpHを徐々に中性領域であるpH6〜8まで引き上げる方法により中性領域での分散液が作製できる。ここで、強酸で処理した中空ファイバを予め、遠心分離等の操作により回収し、溶媒中に再分散させたものを用いても良い。強酸で処理した中空ファイバは表面がプロトン化されているため、中性領域で分散させる方法としては、アミン化合物等の塩基性物質を適宜添加することにより、pHを引き上げる化学的方法が好適に用いられる。ここで、塩基性物質の添加について、滴下等の方法を用いる場合、液滴近傍のpHが強塩基性である場合、中空ファイバ分散液の不安定化を招き、凝集・沈澱形成が起こる可能性がある。この場合、形成した中空ファイバの沈澱を蒸留水等の中性の水で抽出処理をおこなうことで、中性領域で中空ファイバが分散した上澄み液を回収する方法が好ましく用いられる。
更に本発明における中空ファイバの分散液としては、酸性領域で分散した溶液の作製も可能である。この場合、中空ファイバの等電点が好ましくはpH5〜6であることから、溶液pHが1〜5の場合に、中空ファイバ同士の静電反発が起こることから、好適に分散可能となる。具体的な作製方法としては、前記中性分散液の作製方法と同様、高濃度の強酸中で処理して作製できる中空ファイバの分散液のpHを徐々に酸性領域であるpH1〜5まで引き上げる方法により中性領域での分散液が作製できる。ここで、強酸で処理した中空ファイバを予め、遠心分離等の操作により回収し、溶媒中に再分散させたものを用いても良い。強酸で処理した中空ファイバは表面がプロトン化されているため、酸性領域で分散させる方法としては、アミン化合物等の塩基性物質を適宜添加することにより、pHを1〜5まで引き上げる化学的方法が好適に用いられる。
【0015】
本発明に係るチタン元素を含む化合物は酸化チタン、チタン水酸化物、チタン酸塩、非晶質のいずれか一項を含んでいる。本発明に係るチタン元素を含む化合物が酸化チタンの場合、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型、TiO2(B)が好適に使用できる。本発明に係るチタン元素を含む化合物がチタン酸塩の場合、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、七チタン酸、八チタン酸等のプロトンを含む多価チタン酸や、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸セシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の多価チタン酸塩であっても構わない。特に好ましい態様においては、チタン元素を含む化合物は巻物状の層状のトリチタン酸で構成されている。前記巻物状の層状のトリチタン酸は、電荷の中性を保つため、層間にプロトンが挿入されており、溶媒中での安定性は極めて高い。
前記中空ファイバの作製方法としては、例えば、酸化チタン粒子を水酸化ナトリウム水溶液中において、水熱処理する方法が好ましく用いられる。
【0016】
本発明に係る中空ファイバのサイズは、内径が3〜8nm、外径が8〜30nm、長さが100nm〜1μmの範囲である。従来のTiO2コロイドと比較するとサイズが小さいために、量子サイズ効果が起こり、キャリアの移動度が高い。また、異方性が高いので機械的な強度が高いことと、ファイバ先端からの光放出能が期待できる。
【0017】
本発明に係る中空ファイバはプロトンを付加しているため、従来の酸化チタンよりもアニオン性を示し、等電点におけるpHは3〜6の範囲である。従来の酸化チタンコロイドの等電点でのpHは6〜7であるため、従来のTiO2に比較すると、中性領域の分散性に優れている。また、本発明の中空ファイバのより好ましい等電点でのpHは5〜6である。
【0018】
本発明の分散液及びコーティング剤の固形分の濃度は10%以下である。この範囲であれば、分散性が高く、沈殿を生じることなく、室温で長期間安定である。
【0019】
本発明の分散液を基材に塗布するためのコーティング剤として用いる場合、更にバインダー成分が含まれていてもよい。バインダーとして、例えば、シロキサン結合を有する物質を好適に使用することができる。シロキサン結合は化学的な安定性や耐候性も高い。前記シロキサン結合を有する物質としては水ガラス等のアルカリシリケート、コロイダルシリカ、アルミノシリケート化合物を使用することもできる。アルミノシリケート化合物はシリケート化合物のSiの一部をAlで置換した化合物であって、更に電荷を補償するためにH+やLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+などのアルカリ金属イオンやBe2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+などのアルカリ土類金属イオンが含有されていてもよい。前記シリケート結合を有する化合物のSiの一部をAlで置換した物や、ゼオライトなどを使用することができる。また、前記シロキサン結合を有する物質として、更に好ましい態様において、シリコーンエマルジョンを用いることができる。シリコーンエマルジョンとしては、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランの部分加水分解物、脱水宿重合物を好適に使用することができる。
【0020】
更に、本発明のコーティング剤に含まれるバインダーとして、フッ素樹脂エマルジョンを使用することができる。フッ素樹脂エマルジョンを含む塗膜は化学的安定性が高く、また、耐候性も高く、柔軟性にも優れている。前記フッ素樹脂エマルジョンとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等フルオロ基を含有するポリマーのエマルジョン等から選択される少なくとも一つが好適に利用できる。
【0021】
本発明に係る中空ファイバを光触媒等の電荷移動媒体として使用する場合、電荷分離を促進させるため、前記中空ファイバにPt, Pd, Ag, Cu, Au, Ni等の金属を担持してもよい。前記金属を担持することによって光励起した電子正孔対が効率的に分離し、光電流が増大する。また、特にAgやCuを担持した場合、抗菌性や防藻性も発揮する。
【0022】
本発明の分散液及びコーティング剤を製造する方法として、特に好ましくは、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる工程の後、アミン水溶液に分散もしくは添加させる方法が挙げられる。酸水溶液に接触させることによって中空ファイバの内部ないし表面にプロトンが付加されて安定化し、その後アミン化合物の水溶液を溶媒にすることによって高度に分散する。
中空ファイバにプロトンを付加する方法として、中空ファイバを酸水溶液と接触させる方法が好適に用いられる。ここで用いる酸の種類としては、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸などが挙げられる。プロトンの付加を効率的に促進させるため、攪拌・振蕩させてもよい。
前記酸水溶液と接触させる時の温度条件としては、0℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。ここで、0℃未満の温度条件では、溶媒である水が凍結してしまい、プロトンの付加反応が阻害される恐れがあり、また100℃以上の温度条件では、水の沸点以上になる為に、溶媒の揮発が顕著になることや中空ファイバの溶解・分解反応が促進される恐れがある。そして、10℃未満の温度では、溶液中の拡散低下により中空ファイバへのプロトン付加反応が遅くなり、50℃より高い温度では、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0023】
酸水溶液の酸濃度としては、0.1M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.2M以上5M以下である。ここで、0.1M未満の濃度条件では、プロトン量が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.2M未満の場合、プロトン付加反応が遅くなる恐れがあり、5Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0024】
前記分散液及びコーティング剤を製造する方法において、アミン水溶液に分散させる時の温度条件としては、0℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。ここで、0℃未満の温度条件では、溶媒である水が凍結してしまうので、アミンの解離が阻害されてしまい、また100℃以上の温度条件では、水の沸点以上になる為に、溶媒の揮発が顕著になることや中空ファイバの溶解・分解反応が促進される恐れがある。そして、10℃未満の温度では、溶液中の拡散低下によりアミンの解離反応が遅くなり、50℃より高い温度では、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0025】
本発明における中空ファイバ分散液においては、広いpH領域で安定な分散液を提供することができる。溶液のpHがアルカリ性であるような分散液を作製する場合、前述のとおり、水溶液中のアミン化合物の濃度としては、0.001M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.01M以上2M以下である。0.001M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.01M以上2M以下である。ここで、0.001M未満の濃度条件では、アミンの中空ファイバへの吸着が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.01M未満の場合、アミン化合物の吸着反応が遅くなる恐れがあり、2Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0026】
また本発明における中空ファイバ分散液は、中空ファイバの等電点が好ましくはpH3〜6に存在することから、中性領域での分散も可能となる。光触媒材料、特に酸化チタンの中性領域での安定分散については、通常等電点がpH7付近に存在することから、非常に困難であったが、本発明における光触媒材料としての中空ファイバは、好ましくは等電点がpH3〜6の弱酸性領域に存在することから、中性領域での分散が可能となる。具体的には、高濃度の強酸中で処理して作製できる中空ファイバの分散液のpHを徐々に中性領域であるpH6〜8まで引き上げる方法により中性領域での分散液が作製できる。ここで、強酸で処理した中空ファイバを予め、遠心分離等の操作により回収し、溶媒中に再分散させたものを用いても良い。強酸で処理した中空ファイバは表面がプロトン化されているため、中性領域で分散させる方法としては、アミン化合物等の塩基性物質を適宜添加することにより、pHを引き上げる化学的方法が好適に用いられる。ここで、塩基性物質の添加について、滴下等の方法を用いる場合、液滴近傍のpHが強塩基性である場合、中空ファイバ分散液の不安定化を招き、凝集・沈澱形成が起こる可能性がある。この場合、形成した中空ファイバの沈澱を蒸留水等の中性の水で抽出処理をおこないことで、中性領域で中空ファイバが分散した上澄み液を回収する方法が好ましく用いられる。
【0027】
更に本発明における中空ファイバの分散液としては、酸性領域で分散した分散液の作製も可能である。この場合、中空ファイバの等電点が好ましくはpH3〜6であることから、溶液pHが1〜5の場合に、中空ファイバの静電反発が起こることから、好適に分散可能となる。具体的な作製方法としては、前記中性分散液の作製方法と同様、高濃度の強酸中で処理して作製できる中空ファイバの分散液のpHを徐々に酸性領域であるpH1〜5まで引き上げる方法により中性領域での分散液が作製できる。ここで、強酸で処理した中空ファイバを予め、遠心分離等の操作により回収し、溶媒中に再分散させたものを用いても良い。強酸で処理した中空ファイバは表面がプロトン化されているため、酸性領域で分散させる方法としては、アミン化合物等の塩基性物質を適宜添加することにより、pHを1〜5まで引き上げる化学的方法が好適に用いられる。
【0028】
本発明のコーティング剤は長期間沈殿を生じることなく安定である。本発明に係る中空ファイバはワイドギャップ型半導体のため、透明性が高く、高屈折率であり、塗料、フィラー、紫外線遮蔽材料、顔料、化粧用顔料等の用途に適用することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
1.中空ファイバの作製
酸化チタン粉末(商品名P25、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径約25nm、比表面積約55m2/g)0.64gを10M水酸化ナトリウム水溶液80mlに投入し、ガラス棒にて1分間攪拌することにより、白色懸濁液を得た。この白色懸濁液を100mlフッ素樹脂製容器に入れ、さらにステンレス製容器にこのフッ素樹脂製の容器を入れた。乾燥器の中にこのステンレス容器を入れて、110℃で20時間保持した。反応終了後、室温までステンレス容器を自然放冷させ、白色沈殿物を含む溶液を回収した。洗浄工程として、この白色沈殿物を含む溶液から、上澄み液をまずスポイトにて除去した。残った白色沈殿物に0.1M塩酸水溶液100mlを少量ずつ添加した。塩酸水溶液を全量添加後、室温(20℃)で3時間静置した。静置後、上澄み液を除去した。この洗浄工程を合計3回行い、上澄み液がpH7以下であることを確認した。これらの中和操作の後、残った白色沈殿物を蒸留水で2回洗浄することにより、白色粉末を得た。この白色粉末を走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、この方法で得られる白色粉末が中空ファイバの集合体であり、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。
【0030】
2.アルカリ性分散液の作製
上記の方法で作製した白色粉末を2M硝酸水溶液64ml中に添加、室温で15時間マグネティックスターラーによって攪拌した。攪拌後、得られた半透明溶液を遠心分離機(佐久間製作所(株)製 M200−IVD)により5000rpmで30分遠心分離することで、プロトンを付加した白色ゲルを得た。さらに、この白色ゲルを四級アミンである水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(濃度0.1M)、ないし、一級アミンであるn−ブチルアミンの水溶液(濃度0.1M)に加えた。室温で24時間マグネティックスターラーによって攪拌し、半透明な分散液を得た。この分散液をCuメッシュグリッドに滴下・乾燥し、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、分散した中空ファイバであることを確認し、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液、ないし、n−ブチルアミンの水溶液に分散したアルカリ性の半透明な分散液は室温で60日経過しても沈殿を生じていなかった。
【0031】
前記プロトンを付加した白色ゲルをCHNコーダによってn=2にて水素量を評価した結果を表1に示す。この結果、従来のアナターゼ型酸化チタン(商品名:ST-01、石原産業製)よりも水素量が高く、多量のプロトンが付加されていることが示唆された。
【0032】
また、前記水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液に分散した中空ファイバのゼータ電位を測定した。前記コーティング剤0.1gを200gの10mmol/Lの塩化ナトリウム水溶液に滴下、混合した液のゼータ電位を電気泳動光散乱光度計(型名:ELS-6000、大塚電子製)によって各種pHで測定した。pHの調節は10mmol/Lの塩酸および水酸化ナトリウムを使用した。比較としてアナターゼ型の酸化チタンゾル(商品名STS-01、石原産業製)のゼータ電位も測定した。
ゼータ電位が0になるpHが等電点である。この結果、本発明の中空ファイバの等電点におけるpHは5.5となった。つまり、中性〜アルカリ性において表面が負に帯電している。比較例のアナターゼ型TiO2の等電点でのpHは6.5となり、本発明に係る中空ファイバは従来の酸化チタンよりもアニオン性を示しており、中性領域での安定性が高いことが期待される。
【0033】
3.酸性分散液の作製
2.と同様、中空ファイバにプロトンを付加した白色ゲルを作製した。さらに、蒸留水(pH=6)にこの白色ゲルに添加し、室温で1時間マグネティックスターラーによって攪拌し、さらに0.2M水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を添加することでに溶液pHを3に調節することで、白色半透明な酸性分散液を作製した。この分散液をCuメッシュグリッドに滴下・乾燥し、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、分散した中空ファイバであることを確認し、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。分散した半透明な酸性分散液は室温で60日経過しても沈殿を生じていなかった。
4.中性分散液の作製
2.と同様、中空ファイバを1M硝酸水溶液中で攪拌することで半透明分散液を調製した。この半透明溶液に1Mのアンモニア水を添加することにより、溶液pHを10とすることで白色ゲルを得た。この白色ゲルを蒸留水で3回洗浄することで、上澄み液のpHを7とした。さらに蒸留水中に中和した白色ゲルを添加し、マグネティックスターラーで3時間攪拌後、遠心分離することで、溶液pHが6.5のpH白色半透明分散液を得た。この分散液をCuメッシュグリッドに滴下・乾燥し、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、分散した中空ファイバであることを確認し、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。分散した半透明な中性分散液は室温で60日経過しても沈殿を生じていなかった。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のコーティング剤は、光学薄膜、光触媒、光半導体電極、トランジスタ、発光素子、バイオセンサ電極、化学センサ電極、充放電材料、誘電体材料、導電性材料、絶縁性材料、エレクトロクロミック素子、フォトクロミック素子、防錆材料、紫外線遮蔽材料、プロトン伝導体、水素吸蔵体等の広範な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る中空ファイバの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るアルカリ性溶液中での中空ファイバのpHとゼータ電位の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバが溶媒に分散されており、前記チタン元素
を含む化合物の内部ないし表面にプロトンが付加され、前記溶媒にアミン水溶液が含まれ
ることを特徴とする分散液。
【請求項2】
前記アミン水溶液に含まれるアミン化合物として、下記化学式1で表わされる化合物を含
むことを特徴とする請求項1記載の分散液。
【化1】

[化学式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、ア
リール(アルキルおよびアリールの炭素数は1以上18以下)から選ばれる一種の官能基
である。]
【請求項3】
前記アミン水溶液に含まれるアミン化合物として、下記化学式2で表わされる化合物を含
むことを特徴とする請求項1記載の分散液。
【化2】

[化学式2において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール
(アルキルおよびアリールの炭素数は1以上18以下)から選ばれる一種の官能基である
。]
【請求項4】
前記アミン水溶液に含まれるアミン化合物として、下記化学式3で表わされる化合物を含
むことを特徴とする請求項1記載の分散液。
【化3】

[化学式3において、nは1〜10の整数である。]
【請求項5】
前記チタン元素を含む化合物が、酸化チタン、チタン水酸化物、チタン酸塩、非晶質の酸
化チタンのいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1〜4に記載の分散液。
【請求項6】
前記チタン元素を含む化合物が、巻物状の層状のトリチタン酸であることを特徴とする請
求項1〜4に記載の分散液。
【請求項7】
前記中空ファイバの内径が3〜8nm、外径が8〜30nm、長さが100nm〜1μmであることを特徴
とする請求項1〜6に記載の分散液。
【請求項8】
前記中空ファイバの等電点におけるpHが3〜6であることを特徴とする請求項1〜7に記載
の分散液。
【請求項9】
前記コーティング剤の固形分濃度が10%以下であることを特徴とする請求項1〜8に記載
の分散液。
【請求項10】
前記コーティング剤に、更にバインダーが含まれることを特徴とする請求項1〜9に記載
の分散液。
【請求項11】
前記コーティング剤を製造する方法であって、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる
工程の後、前記アミン水溶液に分散させる工程を有することを特徴とす
る分散液の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10記載の分散液を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項13】
請求項11記載の分散液を含むことを特徴とするコーティング剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124633(P2006−124633A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67141(P2005−67141)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】