説明

分散組成物及びスキンケア用化粧料並びに分散組成物の製造方法

【課題】保存安定性に優れた分散組成物及びこれを用いたスキンケア用化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の分散組成物は、カロテノイド含有油性成分を含む分散組成物であって、カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、pH調整剤とを混合することによって得られたpH5.0〜7.5の分散組成物である。本発明のスキンケア用化粧料は、この分散組成物を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散組成物及びスキンケア用化粧料並びに分散組成物の製造方法に関し、特に、カロテノイド含有油性成分が水性組成物に分散している分散組成物及びこれを用いたスキンケア用化粧料並びにこの分散組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド類は、天然に存在する黄色から赤のテルペノイド類の色素で、植物類、藻類、及びバクテリアに見つけることができる。カロテノイド類の一種であるアスタキサンチン類(アスタキサンチンおよびそのエステル等も含む)は、自然界では動植物界に広く分布しており、主として養殖魚や養鶏の色揚げ剤として使用されている。また、アスタキチンサンは、酸化防止効果、抗炎症効果(特許文献1、特許文献2)、皮膚老化防止効果(特許文献3)、シミやしわの形成予防効果(特許文献4)などの機能を有することも知られている。このため、アスタキチンサンを食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等へ添加することが検討・実施されている。
【0003】
このようにカロテノイド類は、食品、化粧品、医薬品及びその他の加工品等に添加使用される際、多くの場合、分散性の高いエマルジョン組成物として添加されるが、天然物由来のカロテノイドは、不安定な構造であり、その上、エマルジョン粒子の粒子径が満足できる範囲内で、比較的長期にわたって高い分散安定性を維持することが容易でなかった。
これを解消するために、例えば、特許文献5及び6には、カロテノイド系色素の分散安定性を検討した技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−49091号公報
【特許文献2】特開平9−143063号公報
【特許文献3】特開平5−155736号公報
【特許文献4】特開2005−47860号公報
【特許文献5】特開平9−328419号公報
【特許文献6】特表2005−506841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術においても、カロテノイドを含む水分散物では、経時的に分散性や色味、性状が損なわれることがあり、カロテノイドを含む分散組成物の安定性を所望する期間にわたって維持することが困難であった。
本発明の目的は、カロテノイド含有油性成分を含み、保存安定性に優れた分散組成物及びこれを用いたスキンケア用化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分散組成物は、カロテノイド含有油性成分を含む分散組成物であって、カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、pH調整剤と、を混合することによって得られたpHが5〜7.5の分散組成物である。
ここで上記分散組成物中のエマルジョン粒子の平均粒子径が200nm以下であることが好ましい。
本発明のスキンケア用化粧料は、上記分散組成物を含むことを特徴とするものである。
本発明の分散組成物の製造方法は、カロテノイド含有油性成分を含む分散組成物の製造方法であって、カロテノイド含有油性成分及びリン脂質又はその誘導体と、水相とを混合して、エマルジョン粒子を有する水分散物を得ること、前記水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合して、平均粒子径200nm以下のエマルジョン粒子を有する分散組成物を得ること、分散組成物のpHをpH5〜7.5に調整すること、を含むものである。
【0007】
ここで、上記分散組成物では、前記カロテノイドが、アスタキサンチン及びそのエステルから選択された少なくとも1種であることが好ましく、また、前記カロテノイド含有油性成分が、ヘマトコッカス藻抽出物であることが好ましい。
また、上記分散組成物では、前記アスコルビン酸又はその誘導体が、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、アスコルビル−2−グルコシド、アスコルビン酸ナトリウムから選択された少なくとも1種であることが好ましい。
上記分散組成物では、上記水分散組成物が更にトコフェロールを含むものであってもよい。
上記分散組成物では、前記リン脂質又はその誘導体が、前記水分散物全体の質量に対して0.001質量%〜20質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カロテノイド含有油性成分を含み、保存安定性に優れた分散組成物及びこれを用いたスキンケア用化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の分散組成物は、カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、pH調整剤とを混合することによって得られたpHが5〜7.5の分散組成物である。
本発明では、カロテノイド含有油性成分を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、更にpHをpH5〜7.5とすることにより、カロテノイド含有油性成分の分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことができ、その結果、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物とすることができる。
【0010】
本発明にかかる水分散物は、カロテノイド含有油性成分と、リン脂質又はその誘導体とを含むエマルジョン粒子を含有する。
本発明のカロテノイド含有油性成分におけるカロテノイドとしては、植物類、藻類及びバクテリアのいずれのものも含まれる。また天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも本発明におけるカロテノイドに包含される。
【0011】
カロテノイドとしては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)並びにこれらのエステルが挙げられる。本発明では特に断らない限り、これらの化合物を含めて「カロテノイド」と称する。
カロテノイドの例としては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、δ−カロテン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、パーム油カロテン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類を挙げることができる。
【0012】
これらのカロテノイドの多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物の場合にはラセミ混合物も含む。
カロテノイドは一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
本水分散物におけるカロテノイドの含有量は、分散組成物としたときにカロテノイド含有の機能的効果を良好に発揮させる観点から比較的高濃度であり、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。
【0013】
本発明において用いられるカロテノイドとしては、分散時に用いる有機媒体を極力少なくする観点から、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチンである。
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38-165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione(C4052、分子量596.82)である。
本発明においては、特に断らない限り、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含めて「アスタキサンチン」と称する。
【0014】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0015】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.)。
【0016】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.)。
【0017】
アスタキサンチンおよび同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.)。
【0018】
前記アスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明の水分散物及び分散組成物に含まれてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとしては、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
アスタキサンチンは分子内に2個の水酸基を有するが、ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)はモノエステル体が主成分であり、オキアミ由来の色素は、ジエステル体が主成分である点で異なることが知られている。
【0019】
本発明において用いることができるアスタキサンチンは、前記抽出物、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。前記アスタキサンチンとしては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0020】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
【0022】
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチンの色素純分としての含有量は、好ましくは0.001質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01質量%〜25質量%である。
また水分散物におけるアスタキサンチン含有オイルとしての配合量は、分散物の安定性の観点から0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
【0023】
本発明におけるリン脂質とは、複合脂質の内、脂肪酸、アルコール、リン酸、窒素化合物からなるエステルで、リン酸エステル及び脂肪酸エステルを有する一群であり、グリセリンを含まないグリセロリン脂質、スフィンゴシンを含むスフィンゴリン脂質をいう。
本発明で使用するリン脂質としては、具体的にはホスファチジン酸、ビスホスファチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等を例示でき、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンも挙げることができる。これらの混合物であるレシチンや水素添加レシチンを用いることもできる。またこれらリン脂質の由来は特に限定されず、例えばダイズ油等の植物油、卵黄等の動物由来のもの等が用いられ、特に精製したものが好適である。
【0024】
また、本発明においては、グリセロリン脂質として、酵素分解した結果、1分子内に1つの脂肪酸残基を有するグリセロリン脂質、即ちリゾレシチンも含まれる。
このようなリゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA又はAによるレシチンの加水分解により得ることもできる。
このようなリゾレシチンとしては、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0025】
また更に、上記のレシチンに代表されるグリセロリン脂質としては、水素添加又はヒドロキシル化されたものも、本発明において用いることができ、例えば水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。
前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加によってレシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合がヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
【0026】
本発明においては、乳化安定性の観点から、レシチンが特に好ましい。
市販品のレシチンとしては、理研ビタミン(株)製レシオンシリーズや、レシマールELなどを挙げることができる。
【0027】
前記レシチンの純度60質量%以上のものが産業的にはレシチンとして利用されているが、本発明においては、一般に「高純度レシチン」と称されるレシチン純度80質量%以上のものが好ましく、より好ましくは90質量%以上のものである。
このレシチン純度(質量%)は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の重量を差し引くことにより求められる。高純度レシチンは、リゾレシチンに比べて親油性が高く、そのためレシチンと油性成分との相溶性が高くなり、乳化安定性を向上させ得るため好ましい。
本発明で用いるリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0028】
本発明における水分散物におけるリン脂質の含有量は、乳化安定性の観点から、水分散物に対して0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%である。
【0029】
本発明にかかる水分散物に使用することができる水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば特に限定は無いが、例えばHLBが10以上、好ましくは12以上のノニオン界面活性剤が好ましい。HLBが10未満の場合には、乳化力が不十分となることがある。また乳化安定性の観点からHLBは16以下であることが好ましい。
【0030】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスであり、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)
ここで、Mwは親水基の分子量、Moは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることができる。
【0031】
本発明で使用することのできる乳化剤は、特に制限は無いが、ノニオン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0032】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO-CV,NIKKOL DGMO-90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−50D、O−15D、B−100D、B−70D、ER−60D、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0033】
本発明に用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110などが挙げられる。
【0034】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
【0035】
これら乳化剤の添加量は、水分散物に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。0.1質量%以上の添加量とすることによって、より微細な粒子径の乳化物を得ることができると共に乳化物の安定性を充分に確保することができ、また、50質量%以下の添加量とすることによって、乳化物の泡立ちを適切な範囲に調整することができる。
【0036】
水分散物には、カロテノイド類の酸化防止の観点から油性成分として更にトコフェロールを含有することが好ましい。
使用可能なトコフェロールとしては、特に限定されず、トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群から選ばれるものである。
トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。
本水分散物におけるトコフェロールの含有量としては、特に限定されないが、カロテノイド類の酸化防止に有効な量の観点から、カロテノイド量に対して0.1〜5の比率であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.5〜2の比率である。
【0037】
本発明にかかる水分散物においては、グリセリンを含有することが、水分散物におけるエマルジョン粒子の平均粒子径をより小さくし、かつ該粒子径を小さいまま長期に亘り安定して保持できるため、好ましい。
この場合、グリセリンの含有量は、本水分散物の全質量に対して、分散安定性、防腐性の観点から10質量%〜60質量%が好ましく、好ましくは20質量%〜55質量%、さらに好ましくは30質量%〜50質量%である。
【0038】
また、本水分散物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。
使用可能な酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェノール類からなる化合物群、ラジカル補足剤、前述のトコフェロール類等を挙げることができる。
本発明で使用可能な酸化防止剤は、親水性の酸化防止剤、及び/又は、油溶性の酸化防止剤を、単独又は併用して使用することができる。
本発明における水分散物における酸化防止剤の含有量は、一般的には0.1質量%〜10質量%であり、好ましくは0.2質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜2質量%である。
なお、一般に酸化防止剤等として使用可能なアスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体は、本水分散物には含まれない。これらの化合物は、後述するように、本水分散物と混合するための水性組成物中に含まれる。
【0039】
水分散物において使用可能な酸化防止剤であるポリフェノール類からなる化合物群としては、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0040】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0041】
本発明に用いる酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名RM−21A,RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名:サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名:サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名:ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名αGルチン:林原生物化学研究所ほか)等が挙げられる。
【0042】
水分散物において使用可能なラジカル捕捉剤からなる群は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である。(出典:「油化学便覧第4版」、日本油化学会編、2001)ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明では、油脂の自動酸化反応を利用して、以下の実験条件下で、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物をラジカル捕捉剤とする。より好ましくは、5倍以上である。
油脂:オリーブ油
添加量:油脂に対し0.1質量%
試験条件:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0043】
本発明におけるラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房、1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社、1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであれば良く、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤、また、アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
以下に好ましい化合物を例示するが本発明はこれらに限定されるものではない。
前記フェノール性OHを有する化合物として、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、トコフェロール類およびビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルが挙げられる。
アミン系化合物としてフェニレンジアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0044】
また水分散物における他の油性成分として、通常、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などとして使用されている他の成分も使用することができ、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油などの油脂類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワランなどの炭化水素、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどのロウ類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル類、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどの高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、グリセリンの脂肪酸エステル類、その他、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などを挙げることができる。また、それらの混合物である各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。本発明に用いられる好ましい他の油性成分としては、ビタミンE類(上述したトコフェロールの他として、トコトリエノール等)、コエンザイムQ類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などを挙げることができる。
本発明におけるカロテノイド含有油性成分の含有量は、水分散物に対して、乳化粒子径の微細化と乳化安定性の観点から、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。
【0045】
また、本発明における水分散物には、上述した種々の油性成分及びその他の成分を溶解するために、また、水分散物におけるエマルジョン粒子の平均粒径をより微細化するために有機溶媒を添加することが好ましい。
このような有機溶媒としては水溶性であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品、化粧品等への用途を考慮したとき、エタノールが好ましい。
この有機溶媒の水分散物に対する含有量は、例えば、0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜10質量%とすることができる。
【0046】
本水分散物におけるエマルジョン粒子の粒子径は、透明性の観点から、体積平均粒子径(メジアン径)として200nm以下であり、好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下である。このような平均粒子径の粒子は、上記水分散物の成分を上述したような量比で混合することによって、容易に得ることができる。
粒子径は、添加成分の種類及び使用量、製造方法における乳化条件(せん断力・温度・圧力)や、添加剤の使用量、油相と水相比率、界面活性剤の使用量などの要因によって変動するが、本発明の粒子径であれば、実用上問題ない。
【0047】
粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。また測定温度としては、粒子径の測定に通常用いられる温度であればよいが、20℃であることが好ましい。
本発明における粒子径は、測定温度を20℃とし、前記動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した値とする。
【0048】
本発明におけるカロテノイド含有油性成分を含む水分散物は、特に限定されないが、例えば、a)水などの水性媒体に、水溶性乳化剤を溶解させて、水相を得、b)前述したカロテノイドや、トコフェロール、リン脂質、及び必要に応じてその他の油脂を混合・溶解して、油相を得、c)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行うことによって得ることができる。
【0049】
乳化分散の際、例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等の剪断作用を利用する通常の乳化装置を用いて乳化をした後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
【0050】
高圧ホモジナイザーには、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するチャンバー型高圧ホモジナイザー及び均質バルブを有する均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。これらの中では、均質バルブ型高圧ホモジナイザーは、処理液の流路の幅を容易に調節することができるので、操作時の圧力及び流量を任意に設定することができ、その操作範囲が広いため、本発明において好ましく用いることができる。また、操作の自由度は低いが、圧力を高める機構が作りやすいため、超高圧を必要とする用途にはチャンバー型高圧ホモジナイザーも好適に用いることができる。
【0051】
チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0052】
本発明において、前記高圧ホモジナイザーの圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜250MPa、更に好ましくは100〜250MPaで処理することが好ましい。また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0053】
次に、本発明における水性組成物について説明する。
本発明における水性組成物は、アスコルビン酸又はその誘導体を含むものである。
本発明では、水性組成物にアスコルビン酸又はその誘導体が含まれるので、水性組成物とカロテノイド含有油性成分を含む水分散物とを混合することによって、カロテノイドの褪色を抑制し、エマルション粒子の分散性と色味とを共に安定させることができる。また、香料を更に含む分散組成物では、香料による賦香性を良好に維持することができる。
アスコルビン酸又はその誘導体としては、水溶性アスコルビン酸又はその誘導体であることが好ましい。
このようなアスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、硫酸アスコルビル、硫酸アスコルビル2ナトリウム塩、アスコルビル−2−グルコシド等が挙げられる。また、エリソルビン酸又はその誘導体、例えばエリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウム、リン酸エリソルビン酸、硫酸エリソルビン酸なども、本発明におけるアスコルビン酸又はその誘導体に含むことができる。
これらのうち、カロテノイドの褪色防止やエマルジョン粒子の分散安定性の観点から、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、アスコルビル−2−グルコシド、アスコルビン酸ナトリウムが好ましく、リン酸アルコルビルマグネシウム及びリン酸アスコルビルナトリウムが特に好ましい。
【0054】
これらのアスコルビン酸又はその誘導体は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))等が挙げられる。
【0055】
アスコルビン酸又はその誘導体は、水性組成物としたときにカロテノイドの褪色を抑制すると共にエマルジョン粒子の分散性を維持できる量で水性組成物に存在していればよい。このため、アスコルビン酸又はその誘導体の量は、カロテノイド類の分解防止の観点から水性組成物全体の質量に対して、0.1質量%〜10質量%未満、好ましくは0.5質量%〜5質量%以下とすることができる。
【0056】
本発明にかかる水性組成物には、カロテノイド以外の上述した油性成分を含んでいてもよい。カロテノイド以外の油性成分を含有する場合、これらの油性成分は、分散組成物全体の質量に対して20質量%以下であることが好ましく、0.001質量%〜20質量%が更に好ましく、0.001質量%〜10質量%がより好ましく、0.001質量%〜5質量%以下であることが特に好ましい。分散組成物中に20質量%以下の量であれば、油相と水相の分離を抑えることが容易なため、好ましい。
【0057】
本発明にかかる水性組成物には、水性基材として、グリセリン、PG(プロピレングリコール)、BG(1,3−ブチレングリコール)、ペンチレングリコールなどのポリオール類を含むことができる。
また、粒子の安定化剤などとして、種々の水溶性高分子化合物や水分散性微粒子を含むことができる。
水溶性高分子化合物としては、広く合成高分子、天然高分子、半合成高分子のいずれも用いることができ、中でも、カロテノイド含有油性成分などを良好に安定化させることができる観点から、特に糖類、タンパク質類およびそれらの複合体が好ましい。
【0058】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デキストリン、デンプン誘導体、ガム類、ムコ多糖類、セルロース類等を含むがこれらに限定されるものではない。
これらの中で、代表的なものは、アガロース、アラビノース、アミロース、アミロペクチン、アカシアガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルキルグリコシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルドース、イヌリン、オリゴ糖、ガッティガム、カードラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ガラクトース、キサンタンガム、キシロース、キシログルカン、キチン、キトサン、グアーガム、クラスターデキストリン、β−グルカン、グルクロン酸、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グリセルアルデヒド、グルコサミン、グルコース、グルコマンナン、ケトース、コンドロイチン硫酸、サイリウムシードガム、ジェランガム、シクロデキストリン、スクロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロビオース、ソルビトール、デオキシリボース、デキストリン、転化糖、デンプン、大豆多糖類、糖アルコール、糖タンパク質、トラガントガム、トレハロース、ヒアルロン酸、フコース、フルクトース、プルラン、ペクチン、ヘパリン、ヘミセルロース、マルトース、マンニトール、マンナン、ラクトース、リボース等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの糖類の中では、粘度増加による分散安定性の観点から多糖類が好ましく、カロテノイド類の安定性の観点から、アラビアガム、プルランなどが更に好ましい。
【0059】
また、タンパク質類としては、アミノ酸がペプチド結合で重合したポリマー又はオリゴマーであればいかなる種類のものも用いることができるが、より好ましくは天然由来で且つ水溶性のものである。
タンパク質にはアミノ酸からなる単純タンパク質と、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質とがあり、いずれも用いることができる。単純タンパク質の例としては、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロイン、セリシン、ケラチン、プロタミン等が挙げられる。また複合タンパク質としては、炭水化物に結合したタンパク質である糖タンパク質、脂質に結合したタンパク質であるリポタンパク質、金属イオンに結合したタンパク質である金属タンパク質、リボ核酸に結合したタンパク質である核タンパク質、リン酸基に結合したタンパク質であるリンタンパク質等がある。
一方、一般的には、タンパク質原料から呼称される場合も多く、動物性筋肉タンパク質、乳タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質(小麦グルテン)、大豆タンパク質、酵母タンパク質、細菌タンパク質等が挙げられる。
なお、このようなタンパク質は、混合物としても使用してもよい。
これらのタンパク質類の中では、分散安定性の観点から、特にゼラチンと水溶性コラーゲンが好ましい。
【0060】
これらの安定化剤は、油性成分全体に対して任意の割合で添加することができるが、エマルションの安定化のためには、油性成分に対して0.1倍以上100倍以下が好ましく、0.5倍以上50倍以下がより好ましい。
【0061】
本発明にかかる水性組成物には、水性組成物について特に上述した成分の以外にも、水分散物に関して記述した事項のうち、水性媒体に対して添加可能な成分として挙げた化合物を同様に含有することができる。この場合には、各成分の量比は、水分散物及び水性組成物それぞれの合計量として、本発明の分散組成物全体に対して、通常用いられる量で使用できればよい。
【0062】
本発明の分散組成物は、上記水分散物と上記水性組成物とpH調整剤とを混合することによって得られたものである。
本分散組成物に含まれるエマルジョン粒子の平均粒子径は、透明性保持の観点から200nm以下のものであり、水分散物におけるエマルジョン粒子の粒子径よりも大きくてもよいが、透明性保持及び分散安定性保持の観点から、好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下とすることができる。分散組成物におけるエマルジョン粒子の測定方法は、水分散物におけるエマルジョン粒子の測定方法と同様に行うことができる。
【0063】
水分散物と水性組成物との混合は、特に限定されず、水分散物が水性組成物の一部となるように多量の水性組成物に対して少量の水分散物を添加すればよい。
水性組成物に対する水分散物の添加量としては、分散組成物の用途に依存して適宜変更することができるが、分散組成物全体の質量に対して、一般に0.01質量%〜10質量%、水分散物の着色濃度の観点から0.05質量%〜5質量%の配合量となるように水分散物を添加することが好ましく、0.1質量%〜1質量%であることが更に好ましい。
【0064】
本発明の分散組成物のpHは、pH5〜7.5であり、pH6.5〜7.5であることが好ましい。このpH範囲とすることによって、保存安定性、特に室温での保存安定性を良好なものにすることができる。
ここで本発明における室温とは、一般に、10℃〜40℃をいい、好ましくは15℃〜30℃、特に25℃をいう。
【0065】
本発明の分散組成物のpHは、pH調整剤を適宜配合することによって調整すればよい。pH調整剤としては、一般にこの用途で用いられるものであればいずれも該当し、無機酸、無機塩類又は有機酸、有機塩基を挙げることができる。無機酸としては、塩酸、リン酸、炭酸が好ましく、無機塩類としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を好ましく挙げることができる。有機酸としては、特に制限はなく、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸、L−酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、HEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperadinyl] ethansulfonic acid)及びこれらの誘導体を好ましく挙げることができ、有機塩基としては、グリシン、リジン、グアニジン、アルギニン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンを挙げることができる。また、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明におけるエマルジョン含有組成物におけるpH調整剤の含有量は、分散組成物のpHを前述した範囲にするために必要な量であればよく、分散組成物中の成分及び使用されるpH調整剤の種類によって適宜調整することができるが、一般に、分散組成物全体に対して、0.1質量%〜1.5質量%の範囲にあり、より好ましくは0.5質量%〜1.0質量%の範囲である。
【0067】
本発明の分散組成物は、香料を更に含むことができる。本発明の分散組成物には、アスコルビン酸又はその誘導体を水性組成物中に含むので、香料の賦香性を安定させ、カロテノイドからの香りを良好にマスキングすることができる。
本発明で使用可能な香料としては、動物系、植物系、鉱物系の天然香料および合成香料のいずれも使用可能であり、例えば、ローズ抽出エキス、カモミール抽出エキス、グリーンティー香料、ラベンダー油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ベルガモット油、ムスク油、イランイラン油、リモネン、リナロール、β−フェニルエチルアルコール、2,6−ノナジエナール、シトラール、シクロペンタデカノン、オイゲノール、ローズオキサイド、インドール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、オーランチオールなどを挙げることができる。これらの香料のうち、カロテノイドの香りに対するマスキング特性と賦香性の観点から、ローズ抽出エキス、カモミール抽出エキス、グリーンティー香料が特に好ましい。
これらの香料は、本発明の分散組成物中に配合してもよいが、分散安定性の観点から好ましくは水性組成物に配合することが好ましい。この場合には、水性組成物において、水分散物の添加質量に対して1質量%〜50質量%、香りの強さの観点から好ましくは5質量%〜20質量%の配合量とすることができる。
【0068】
本発明の分散組成物は、上述したように、カロテノイド含有油性成分及びリン脂質又はその誘導体と、水相とを混合して、エマルジョン粒子を有する水分散物を得ること、前記水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合すること、pHを上述した範囲に調整すること、を含む製造方法によって得ることができる。
このように水分散物を得るための混合と、得られた水分散物と上記水性組成物との混合という二段階の混合工程を経ることによって、平均粒子径200nm以下のエマルジョン粒子が分散し、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物を容易に得ることができる。
【0069】
pHの調整を目的とするpH調整剤の配合は、水分散物に対して配合することがpH調整の容易性の観点から好ましいが、最終的に水分散物のpHが上述した範囲になれば、分散組成物、水性組成物及び水分散物のいずれに対して行ってもよく、また配合回数にも特に制限はない。
【0070】
本発明のスキンケア用化粧料は、本発明の分散組成物を含むものである。
上述したように本発明の分散組成物は、アスコルビン酸又はその誘導体を特に含み、平均粒子径200nm以下のエマルジョン粒子が分散した保存安定性に優れる分散組成物であるので、この分散組成物を含むスキンケア用化粧料も同様に、良好な保存安定性を示すことができる。
本分散組成物と共に使用可能な他の成分には、特に制限はなく、通常、化粧料として配合可能な成分を種類及び配合量に制限なく、そのまま使用することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」と「%」表示してあるものは、特に断らない限り質量基準である。
【0072】
[実施例1]
(1)水分散物(i)−a、(i)−bの作製
下記表1記載の各成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水性組成物を得た。
また、下記表2記載の各成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
水相を70℃に保ったままホモジナイザー(みづほ工業(株)製真空乳化装置PVQ−1D型)で攪拌し(10000rpm)、そこへ上記油相組成物を添加して乳化物を得た。得られた乳化物を、40℃で、アルティマイザーHJP−25005(株式会社スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有水分散物(i)−aを調製した。
【0076】
油相組成物におけるレシチン90gの代わりに、純水90gを加えた以外は同様にして、アスタキサンチン類含有水分散物(i)−bを作製した。
【0077】
(2)水性組成物(ii)−a〜(ii)−gの作製
下記表3の成分を室温で混合溶解して、水性組成物(ii)−a〜(ii)−gを得た。
【0078】
【表3】

【0079】
上記水性組成物(ii)−a 900gに、1%クエン酸水溶液もしくは0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH4.5になるように調整し、総量が990gとなるように純水で重量を調整した。そこにヘマトコッカス藻抽出物の水分散物(i)−a 10gを添加し、均一に混合し、赤色透明の分散液(A−1)を得た。分散液(A−1)のpHは、水分散物(i)−aを添加する前とほぼ同じであった(pH4.5)。
また、表4に示すようにpHとなるように調整した以外は分散液(A−1)と同様にして、赤色透明の分散液(A−2)から(A−9)を得た。
更に、水性組成物(ii)−aに代えて(ii)−gを使用し、pH7.0となるように調整した以外は、分散液(A−1)と同様にして、赤色透明の分散液(H−1)を得た。
水分散物(i)−aに代えて水分散物(i)−bを使用し、pH7.0となるように調整した以外は、分散液(A−1)と同様にして、赤色透明の分散液(H−2)を得た。
【0080】
(4)物性値の測定
得られた分散液(A−1)〜(A−9)及び(H−1)〜(H−2)を以下のように経時試験を実施した。
(4−1)50℃経時
サンプルを遮光容器に充填し、蓋を閉めた後、50℃の恒温槽に入れて経時28日間保管した。
(4−2)25℃空気バブル経時
サンプルを遮光容器に充填し、25℃の恒温室にて、空気を3mmφのガラス管にて1cc/minの流量で流した。1週間ごとに重量を測定し、揮発分を純水にて補正し、28日間経時した。
(4−3)25℃窒素バブル経時
サンプルを遮光容器に充填し、25℃の恒温室にて、窒素を3mmφのガラス管にて1cc/minの流量で流した。1週間ごとに重量を測定し、揮発分を純水にて補正し、28日間経時した。
物性値の測定は、褪色レベルは478nmでの吸光度変化で判断し、性状変化は、目視(濁り、析出)及び粒子径を確認した。
結果を表4に示す。
【0081】
吸光度は、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550(島津製作所製)を使用し、478nmでの吸収スペクトルの測定を行い求めた。評価は、水性組成物と水分散物との混合直後の吸光度に対する経時後の吸光度から求められる残存率を分散液の褪色レベルとし、下記の評価基準に基づいて行った。
○:吸光度残存率85%以上(手のひらの上で変化が判別できず問題ないレベル)
△:吸光度残存率70%以上(手のひらの上で変化が判別できるが、商品価値上問題ないレベル)
×:吸光度残存率70%未満(NGレベル)
【0082】
粒子径は、動的光散乱粒径分散測定装置LB−550(株式会社堀場製作所社製)を使用して、分散液中の乳化物の粒子径を20℃にて測定した。評価は、水性組成物と水分散物との混合直後と経時後との粒子径の変化を求め、以下の評価基準に基づいて行った。
○:20nm以下
△:70nm以下
×:70nm超
【0083】
目視での性状変化は、経時後の水性組成物における性状を目視観察して、下記の評価基準によって評価した。
○:混合直後品と見た目の性状変化が認識できない。
△:液に若干濁りが感じられる。
×:激しく濁りが生じている。液が分離している。析出が起こっている。
【0084】
【表4】

【0085】
上記の結果より、本発明の実施例にかかるpH5〜7.5の分散液(A−2〜A−7)は、乳化直後の平均粒径が小さく、保存経時後でもその粒径にほとんど変化が見られなかった。強制保存経時後のエマルションの目視観察においても、褪色変化や性状変化が小さく、濁りや析出なども認めらなかった。特に25℃における保存経時では、比較例に対して褪色の程度が小さく安定性に優れており、pH6.5〜pH7.5において特に顕著であった。
【0086】
[実施例2〜6]
水性組成物(ii)−aに代えてそれぞれ、(ii)−b、(ii)−c、(ii)−d、(ii)−e、(ii)−fを用いた以外は実施例1と同様にして、分散液B−1からB−9(実施例2)、C−1からC−9(実施例3)、D−1からD−9(実施例4)、E−1からE−9(実施例5)及びF−1からF−9(実施例6)をそれぞれ調製した。これらの分散液に対して、実施例1と同様の評価を行った。実施例2〜6の結果は、それぞれ表5〜9に示す。
その結果、実施例2〜6のいずれにおいても、実施例1と同様にpH5〜pH7.5の分散液では、乳化直後の平均粒径が小さく、保存経時後でもその粒径にほとんど変化が見られなかった。強制保存経時後のエマルションの目視観察においても、褪色変化や性状変化が小さく、濁りや析出なども認めらなかった。特に25℃における保存経時では、比較例に対して褪色の程度が小さく安定性に優れており、pH6.5〜pH7.5において特に顕著であった。
【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
このように本発明によれば、経時での粒子径、色、性状変化が小さく保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた水性組成物を提供することができる。
またこの水性組成物を用いることによって、保存安定性に優れたスキンケア用化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド含有油性成分を含む分散組成物であって、
カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、
アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、
pH調整剤と、
を混合することによって得られたpHが5〜7.5の分散組成物。
【請求項2】
前記カロテノイドが、アスタキサンチン及びそのエステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載の分散組成物。
【請求項3】
前記カロテノイド含有油性成分が、ヘマトコッカス藻抽出物である請求項1又は2記載の分散組成物。
【請求項4】
前記アスコルビン酸又はその誘導体が、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、アスコルビル−2−グルコシド、アスコルビン酸ナトリウムから選択された少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の分散組成物。
【請求項5】
前記水分散物がトコフェロールを含む請求項1〜4のいずれか1項記載の分散組成物。
【請求項6】
前記リン脂質又はその誘導体が、前記水分散物全体の質量に対して0.001質量%〜20質量%である請求項1〜5のいずれか1項記載の分散組成物。
【請求項7】
前記分散組成物中のエマルジョン粒子の平均粒子径が200nm以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の分散組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の分散組成物を含むスキンケア用化粧料。
【請求項9】
カロテノイド含有油性成分を含む分散組成物の製造方法であって、
カロテノイド含有油性成分及びリン脂質又はその誘導体と、水相とを混合して、エマルジョン粒子を有する水分散物を得ること、
前記水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合して、平均粒子径200nm以下のエマルジョン粒子を有する分散組成物を得ること、
分散組成物のpHをpH5〜7.5に調整すること、
を含む分散組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−7289(P2009−7289A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169635(P2007−169635)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】