説明

分析システムおよび荷電粒子ビームデバイス

【課題】改善された検出方式を有する分析システムおよびこのシステムを備える荷電粒子ビームデバイスの提供。
【解決手段】荷電粒子のビーム(2)を分析する分析システムは、荷電粒子のビーム(2)をその粒子のエネルギーに応じて低エネルギービーム(18)と高エネルギービーム(19)に分割するためのディバイダ(16)と、高エネルギービーム(19)を検出するための前方検出器(17)と、低エネルギービーム(18)を検出するための少なくとも一つの後方検出器(15)とを有する。ディバイダは、前方検出器と少なくとも一つの後方検出器との間に配置され、そして前方検出器(17)および/または少なくとも一つの後方検出器(15)はセグメントに分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子のビームを分析するための分析システムおよび荷電粒子ビームデバイスに関する。より詳細には、本発明は、前記分析システムによって試料を検査する荷電粒子ビームデバイスに関する。また、本発明は、試料を検査する方法に関する。
【発明の分野】
【0002】
荷電粒子ビームデバイスは、1次荷電粒子ビームが試料と相互作用することによって生成された2次荷電粒子を検出することによって、その試料を検査するためにしばしば使用される。荷電粒子ビームデバイスで生成された1次荷電粒子ビームが電子ビームであれば、試料との相互作用によって、一般に、(a)2次電子、(b)反射または後方散乱電子、(c)オージェ電子、(d)透過電子、(e)X線、(f)陰極ルミネセンス放射、および/または(g)吸収(試料)電流が生成される。
【0003】
多くの用途では、試料を検査するために、2次電子、後方散乱電子およびオージェ電子だけが分析されている。2次電子は、試料原子の外側電子と主電子の非弾性衝突で生じる。その結果、電子はそれぞれの殻を離れることができるだけのエネルギーをもつ。その運動エネルギーは一般に低い。したがって、試料表面に近い電子だけが、試料から逃げ出す。これが、2次電子の分析が試料表面検査に申し分なく適している理由である。
【0004】
反射電子または後方散乱電子は、試料原子との衝突で偏向された主ビームの電子である。その電子の一般的なエネルギー範囲は、主電子の全エネルギーから2次電子エネルギーのレベルまで広がっている。また、高エネルギーを有する後方散乱電子は、表面から比較的深いところの試料を検査するために使用することができる。
【0005】
オージェ電子は、試料の材料構造の分析を容易にする、試料の材料に固有のエネルギーを有している。
【0006】
以下の議論のために、2次電子、後方散乱電子およびオージェ電子をさらに区別する必要はない。したがって、簡単にするために、これらの三つの型を「2次電子」と呼ぶ。
【0007】
試料を離れることができた2次電子は、その発生率によって、その方向によって、およびそのエネルギーによって、試料の情報を伝える。2次ビームの情報を評価するために、2次電子電流を測定する検出器が使用される。これを図1に示す。ここで、ソース5で生成された主ビーム1は試料7に向けられている。試料を離れることができた2次電子2は、その後、検出器6で検出される。
【0008】
2次電子エネルギーの測定に関して、当技術分野でいくつかの技術が知られている。一つの技術は、「Electrical testing for failure analysis:E−beam Testing」by Michel Vallet and Philippe Sardin(Microelectronic Engineering 49(1999)、p.157〜167)に述べられている。そこでは、電子源と試料の間にエネルギーフィルタ格子が配置されている。このエネルギーフィルタは、減速電界を生成するように小さな電圧のバイアスをかけられており、この減速電界のために、閾値エネルギーよりも小さなエネルギーを有するすべての2次電子は偏向されるようになる。より高いエネルギーを有する電子は、格子を通り抜けて検出器で検出されるようになる。
【0009】
しかし、M.ValletおよびP.Sardinの構成は、高域通過フィルタだけであるので制限されている。すなわち、高エネルギーを有する電子だけが格子配列を通過し、そして検出される。さらに、制動電界格子の電界は、望ましくない方法で主電子ビーム1を妨げる傾向がある。
【0010】
さらに、2次電子を測定する他の態様を強調しておかなければならない。すなわち、物体検査、例えばウェハ検査の枠組みの中で2次電子が分析される場合、処理能力は次の4つの要素に主に依存している。すなわち、欠陥サイズD、像コントラストC、ビーム電流密度Jおよび並列に動作するカラムの数N、に依存する。処理能力は像コントラストCの2乗に比例するので、像コントラストは、検査処理能力を改善するための非常に基本的な要素である。
【0011】
基本的に三つの型のコントラストがある。すなわち、一つのコントラストは2次荷電粒子エネルギーに依存し、もう一つのコントラストは1次荷電粒子の入射ビームに対する2次電子の出発角に依存し、そして第3のコントラストは2次電子の出発方位角に依存している。各型のコントラストの改善は、検査デバイスの処理能力を大きく改善する。競争力のあるコストで表面検査を可能にするために、商業用途において高処理能力は必要不可欠である。
【0012】
したがって、本発明の目的は、当技術分野で知られている不利点の少なくとも一部を克服する分析システムおよび荷電粒子ビームデバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の態様によれば、請求項1に記載の分析システム、請求項10に記載の荷電粒子ビームデバイス、請求項19に記載の多ビームデバイス、および請求項20に記載の試料を検査する方法が提供される。本発明の応用は、改善された総合的な方法で荷電粒子ビームを分析することを可能にする。
【0014】
本発明のさらに他の有利点、特徴、態様、および詳細は、従属請求項、説明および添付の図面から明らかである。
【0015】
本発明の一態様によれば、分析システムは、
・荷電粒子のビームを、その粒子のエネルギーに従って、低エネルギービームと高エネルギービームに分割するディバイダと、
・高エネルギービームを検出するための前方検出器と、
・低エネルギービームを検出するための少なくとも一つの後方検出器と、
を備え、
ディバイダは少なくとも一つの後方検出器と前方検出器の間に配置され、
少なくとも一つの後方検出器および/または前方検出器は、荷電粒子の入射ビームから粒子の空間解像度を得るためにセグメントに分割されている。
【0016】
本発明の態様によれば、少なくとも一つの後方検出器の位置は、ディバイダの上流にある。ここで、上流は、荷電粒子のビームを基準にして理解すべきである。すなわち、荷電粒子は最初に上流位置すなわち後方検出器を通り、そして後で飛行中に下流位置すなわち検出器を通る。したがって、分析される荷電粒子の観点からは、後方検出器はディバイダの前にある。本発明の一態様によれば、ディバイダはエネルギーフィルタとして作用する。
【0017】
本発明に基づく分析システムは、任意のエネルギーを有する粒子の検出および分析を可能にする。さらに、セグメント分割された検出器のために、分析システムは、出発角に依存応じて荷電粒子を区別することを可能にする。したがって、さらにエネルギー分析のために、少なくとも一つの検出器をセグメントに分割することによって、入射ビームの粒子は、検出器上の衝突位置を基準にして検出される。これによって、今度は、分析システムに入るときの移動方向に関して結果を得ることができるようになる。エネルギーおよび位置感度検出は、コントラストの向上を可能にするので、荷電粒子ビームデバイスで使用されるとき特に有効である。
【0018】
本発明は、荷電粒子のエネルギーおよび出発角についての情報を読み出すことができる分析システムおよび荷電粒子ビームデバイスを提供する。分析システムおよび/または荷電粒子デバイスの処理能力は、コントラストを高めることによって向上する。
【0019】
本発明に基づく分析システムの一実施形態では、少なくとも一つの後方検出器は、荷電粒子のビームがディバイダに向かう途中で通過することができるような態様で配置され、且つ形作られる。例えば、少なくとも一つの後方検出器は、中心部に孔を有することができる。
【0020】
一実施形態では、前方検出器および/または少なくとも一つの後方検出器は、荷電粒子の入射ビームから粒子の空間的分解能を方位角に対して得るために、方位セグメントに分割されている。他の実施形態では、前方検出器および/または後方検出器は、荷電粒子の入射ビームから粒子の空間的分解能を半径方向に対して得るために、環状に配置された同心検出セグメントに分割されている。他の実施形態では、前方検出器および/または後方検出器は、方位セグメントと同心検出セグメントの両方に分割されている。
【0021】
一般に、高帯域幅ダイオード、例えばpinダイオードが検出器として使用される。当業者には明らかことであろうが、シンチレーション検出器またはチャネル検出器のような他の検出器も利用可能である。
【0022】
2次電子の出発条件は、局所表面のトポグラフィに依存し、検出器上の2次電子到達点はまた出発速度の方位方向に依存するので、検出器表面がセグメントに分割されていると、情報を得ることができる。このことは、検出器の外側ゾーンで特に有効である。このことには、pinダイオードの場合に検出帯域幅が更に改善されるという追加の利点がある。
【0023】
本発明に基づく分析システムの代表的な実施形態では、少なくとも一つの後方検出器は、二つの後方検出器である。
【0024】
本発明の他の態様によれば、試料を検査するための荷電粒子ビームデバイスが提供され、この荷電粒子ビームデバイスは、
・試料に1次荷電粒子のビームを向けて2次荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
・本明細書で説明したような分析システムと、
を備え、荷電粒子のビームが2次荷電粒子のビームである。
【0025】
すなわち、上で詳細に説明したような分析システムが荷電粒子ビームデバイスに使用される場合、分析されるべき荷電粒子の入射ビームは、試料で生成された2次荷電粒子のビームである。したがって、荷電粒子ビームデバイスで本分析システムを使用して、試料の情報、特に試料表面の情報を読み出し、かつ評価することができる。この評価には、特に、すべてのエネルギーの粒子を検出することができること、すなわち、そのエネルギーより上または下の粒子が無視されるエネルギー閾値がないという利点がある。
【0026】
一実施形態によれば、荷電粒子ビームデバイスは、2次荷電粒子のビームを偏向させることができる曲げセクタを備えている。一般に、曲げセクタは、1次荷電粒子のビームの伝播方向に対して基本的に垂直な方向に2次荷電粒子のビームを偏向させることができる。他の実施形態では、曲げセクタは、さらにレンズユニットとして作用する。本発明の一実施形態では、曲げセクタは、2次荷電粒子のビームに対して少なくとも一つの後方検出器の上流に配置されている。すなわち、この実施形態では、曲げセクタは、試料と後方検出器の間に配置される。
【0027】
さらに他の実施形態では、本発明に従った荷電粒子デバイスは、2次荷電粒子のビームを集束するために曲げセクタ出口とディバイダの間に位置付けされた、少なくとも一つの静電型、磁気型、または静電/磁気組合せ型のレンズ組立品、例えばアインツェルレンズ(Einzellens)または浸漬レンズを備えている。一実施形態では、少なくとも一つの後方検出器はレンズユニットの中に配置され、また、少なくとも一つの後方検出器は曲げセクタの出口とレンズユニットの間に配置されている。一つの後方検出器は、曲げセクタの出口に取り付けることができる。レンズユニットの中に配置された後方検出器は、レンズユニットに取り付けることができる。曲げセクタまたはレンズユニットに取り付けることで、荷電粒子ビームデバイスの構成が簡単になる。しかし、当業者には明らかことであろうが、後方検出器は、ディバイダと曲げユニットの間の他の位置に配置することもできる。
【0028】
本発明の一実施形態では、1次荷電粒子のビームと2次荷電粒子のビームを分離するために、荷電粒子ビームデバイスは、偏向ユニット、例えば磁気型偏向器(deflector)、静電型偏向器、またはウィーンフィルタ(Wien Filter)を備える。一実施形態では、本発明に基づく荷電粒子ビームデバイスは、さらに、1次荷電粒子ビームと2次荷電粒子ビームの両方が対物レンズを通過するように配置された対物レンズを備える。対物レンズによって、特に、1次荷電粒子ビームの集束が可能になる。対物レンズは、一般に、試料の上に近づけて配置される。
【0029】
さらに他の実施形態では、荷電粒子ビームデバイスは、荷電粒子ビーム源によって生成された後で1次荷電粒子を加速するためのブースタおよび/または試料に衝突する前に1次荷電粒子を減速させるための減速器を更に備える。ブースタは、加速電界を生成するためにバイアスをかけられた格子または円筒を備えることができる。1次荷電粒子の移動時間を最小限にし、それによって荷電粒子の相互作用を最小限にするために、一般に、ブースタは、荷電粒子ビーム源の中の加速部品に付加され、ビームを一般に最高10KeVのエネルギーまで加速する。減速器は、高速移動1次荷電粒子を一般に0から3KeVのエネルギーに減速させる役目をする。減速器は、減速電界を生成するために二つの電極を備えることができる。減速器は、対物レンズユニットに一体化される。
【0030】
本発明の他の態様によれば、本明細書で説明したような2、5、10または15個の荷電粒子ビームデバイスを有する荷電多ビームデバイスが提供される。一般に、荷電粒子ビームの列が実現されるように、いくつかの荷電粒子ビームデバイスが配列される。もしくは、荷電粒子ビームのアレイが実現されるように、荷電粒子ビームデバイスが配列される。
【0031】
本発明の他の態様によれば、試料を検査する方法が提供され、この方法は、
・1次荷電粒子ビームを試料に向けて、試料で2次荷電粒子を生成するステップと、
・2次荷電粒子のビームを高エネルギー粒子のビームと低エネルギー粒子のビームに分割するステップと、
・分割されたビームの高エネルギー粒子を検出するステップと、
・分割されたビームの低エネルギー粒子を検出するステップと、
を備え、分割するステップは、高エネルギー粒子を検出する位置と低エネルギー粒子を検出する位置の間の位置で行われ、高エネルギー粒子を検出するステップおよび/または低エネルギー粒子を検出するステップは角度感度検出を含む。
【0032】
この方法によって、すべてのエネルギーの2次荷電粒子が検出され分析される試料の検査が可能になる。高エネルギー粒子および/または低エネルギー粒子の検出は、角度に感度のある方法で行われる。本方法の一実施形態では、2次荷電粒子のビームの分割は、一般に荷電粒子の入射ビームの方向に対して基本的に平行に向けられた静電界を使用して行われる。一般に、分割が行われた後で、低エネルギー粒子の移動方向は、高エネルギー粒子の移動方向に対して実質的に反対になっている。本発明の一態様によれば、本方法は、1次荷電粒子ビームと2次荷電粒子ビームを分離するステップを含む。他の実施形態では、本発明に基づく方法は、2次荷電粒子ビームの方向を1次荷電粒子ビーム伝播方向に対して、一般に70°から110°、最も一般的に80°から100°だけ変えるステップを含む。他の実施形態によれば、本方法は、分割が行われる位置にほぼ焦点があるように、2次荷電粒子のビームを集束するステップを含む。
【0033】
本発明の上で示した態様および他のより詳細な態様の幾つかを、以下に説明し、また図を参照して部分的に説明する。
【詳細な説明】
【0034】
図面についての次の説明の中で、同じ参照番号は同じ部品を指す。一般に、個々の実施形態に関する差だけを説明する。本発明にとって不可欠であるか、または本発明を理解するのに役立つ要素だけが、図面に示されていることを理解すべきである。
【0035】
本出願の保護範囲を制限するものではないが、以下においては、本発明の異なる態様が、荷電粒子としての電子に基づいて説明されている。しかし、本発明は、荷電粒子の他のソースおよび/または他の2次荷電粒子を使用して試料像を得る装置および部品にも応用することができる。
【0036】
以下において、本発明に基づく分析システム、荷電粒子ビームデバイスおよび荷電粒子マルチビームデバイスを示す。さらに、試料を検査する方法を説明する。本発明の範囲を制限することものではないが、分析システムは、荷電粒子ビームデバイスの態様において説明する。しかし、分析システムは他の用途でも使用され得ることが理解されよう。
【0037】
図2aは、本発明に基づく分析システムの実施形態を示す。荷電粒子、例えば2次電子2は、ディバイダ16に向かう途中で後方検出器15の中心部の孔を通過する。ディバイダの電位は、ディバイダの中に電位障壁(電位の山、電位の鞍部)を形成するようなものである。高エネルギー電子19は、この電位障壁に打ち勝って前方検出器17に向かって伝搬し続ける。低エネルギー粒子18は、非常に遅くて電位障壁に打ち勝つことができず、後方検出器15の方に逆戻りに加速される。前方検出器17および/または後方検出器15は、角度感度検出を可能にするようにセグメントに分割されている。
【0038】
図2bは、本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第1の実施形態を示す。1次荷電粒子のビーム1は、荷電粒子源5で生成される。1次荷電粒子は、試料7に向かう途中で偏向器13を通り、偏向される。レンズ(図示しない)によって試料に集束された後で、1次荷電粒子のビームは、試料との様々な相互作用を受け、結果として2次荷電粒子を生じる。ここで、上で説明したように、「2次荷電粒子」という用語は試料を離れるすべての粒子を意味する。偏向器13を通過した2次荷電粒子2は曲げセクタ14の方に向かって偏向される。一般に、図2aおよび図2bの実施形態に限定されないが、偏向器は、静電型、磁気型、または静電/磁気組合せ型の偏向器であることができる。例えば、図2bにおいて、偏向器は磁気型偏向器であり、主電子に加わる力と実質的に反対の力を2次電子に加える。磁気型偏向器の利点は、偏向が伝播方向に依存することである。したがって、正に帯電しているか負に帯電しているかどちらかの粒子を有する二つの反平行ビームの粒子は、反対方向にそれぞれ偏向される。1次荷電粒子の電荷の符号が2次荷電粒子の電荷の符号と異なる場合、一般に、2次荷電粒子を1次荷電粒子から分離するために、静電界を生成する静電型偏向器を使用することが有用であることがある。このようにして、また、1次荷電粒子は、2次荷電粒子と反対方向に偏向される。これを下で図6に関して示す。偏向角は、一般に、5°から15°である。図2bに示す実施形態では、偏向角は約7°である。しかし、最高で20°またはもっと大きな偏向角さえも可能である。
【0039】
一般に、本明細書で開示された実施形態と組み合わされることができる曲げセクタは、静電型、磁気型、または静電/磁気組合せ型であってよい。静電型曲げセクタに必要とされるスペースは、磁気部分を含むセクタに必要なスペースよりも小さいので、一般に静電型セクタが使用される。静電型曲げセクタは、円形に形作られた二つの電極であってもよい。図2bのセクタ14は、負に帯電された電極14aおよび正に帯電された電極14bを有し、電子ビームを曲げるように作用する。それによって、電子ビームは、一次元に集束され、かつ高エネルギーに保たれて、高速検出に影響を及ぼすことがある飛行効果の時間を無くしている。2次元の集束は、四重極要素48で行われる。それによって、セクタ14および四重極は、二重集束セクタユニットを形成する。四重極要素48は、また、本明細書で説明する他の実施形態でも使用することができる。場合によっては、一対の曲げセクタ側板を設けることができる。さらに、二重集束を得るために四重極の代わりに円筒レンズを使用することができることがある。
【0040】
図2bにおいて、2次荷電粒子のビームは、1次荷電粒子のビームに対して約90°に偏向される。しかし、30°から110°、一般に45°から95°または60°から85°の他の値も可能である。偏向に加えて、上で既に説明したように、また、ビームは一般に集束される。曲げセクタを使用することの一つの利点は、2次荷電粒子のビームが1次荷電粒子ビームの直ぐ近くから離れるように導かれることである。したがって、上に示した分析システムとしての分析ツールは、1次荷電粒子ビームの近くの限られたスペースに嵌め込む必要なしに、さらに、1次荷電粒子ビームとの望ましくない相互作用を招くことなしに、荷電粒子ビームデバイスで使用することができる。
【0041】
場合によっては追加の側板を備え得る、図2bに示す電極14aおよび14bの代わりに、図3aおよび図3bの曲げセクタは、半球状セクタ14’として示されている。半球状セクタは、ビームの2次元集束を可能にする。したがって、二重集束セクタユニット14のために、追加の集束ユニットは必要でない。電子は、高い透過性を有するディバイダ16でエネルギーに従って分割される。一般に、静電型ビーム曲げセクタは、円筒状か半球状かのどちらかであることができる。円筒型には、ビームが曲げられるときに、2次電子が一方の面で集束され他方で集束されないという欠点がある。半球状曲げセクタは、2次ビームを両方の面で集束する。円筒状セクタは、横の面で集束を実現するようにバイアスをかけられた側板と共に使用して、半球状セクタと同様な集束特性をもたらすことができる。例えば、図2bの透視図に関して、側板(図示しない)は、セクタ電極14aと14bの間のギャップの前および後ろに配置され得る。曲げセクタによる一様な集束作用には二つの目的がある。一つは、高速検出器上に小さなスポットを可能にすることであり、もう一つは、ディバイダは2次ビームのエネルギーと方向の両方に敏感であるので良好なエネルギーフィルタ処理を可能にすることである。
【0042】
ディバイダは、一般に、曲げセクタまたは、曲げセクタとディバイダとの間に置かれた追加の光学部品のほぼ焦点に配置される。
【0043】
曲げセクタ14の後で、2次荷電粒子のビームはディバイダ16に入る。ディバイダは、円筒または管として示されており、入射粒子のビームを低エネルギー2次荷電粒子のビーム18と高エネルギー2次荷電粒子のビーム19とに分ける。したがって、前方検出器から得られる像は、高域通過フィルタ処理されており、後方検出器から得られる像は、低域通過フィルタ処理された2次荷電粒子の相補的な情報を含む。高エネルギー荷電粒子19は前方検出器17に向かって動き続けるが、低エネルギー荷電粒子18は、環状の後方検出器15に向かって逆戻りして動き、その飛行方向はディバイダ16によって実質的に逆にされている。したがって、この構成では、2次荷電粒子のエネルギー感度検出を行うことができる。
【0044】
一般に、本出願で開示された実施形態に設けられたディバイダは、一般に次のように形成される。2次粒子に対する高透過性および高収集効率を実現することが、高電流密度装置にとって望ましい。したがって、電子損失を減らさなければならない。ディバイダに単一の開口を設けることで、電子ビームのほとんどすべての電子がディバイダを通過するようになる可能性が高くなる。そうでなければ、異なる開口の橋渡しをするハードウェア部品の間で損失が生じることがある。
【0045】
図に示す円筒状(または、アパーチャ状)ディバイダは、ディバイダ中のビーム経路に依存して変化する電位障壁を形成する。それによって、円形の有効域を有する円筒の場合には、依存するのは半径だけである。他の理由のために使用されることがある2次の有効域、5角形の有効域、または有効域として他の形を有する円筒の場合には、電位の形は、方位座標だけでなく軸からの距離と共に変化する。
【0046】
円筒が長ければ長いほど、閾値電位は、ディバイダに加えられた電位に近くなる。短いディバイダでは、電位障壁は、印加されたバイアスと相当に異なっていることがある。しかし、必要なスペースがこれを妥当なものにしている。その上、ディバイダ中の平均粒子速度は、長いフィルタでは減少する。したがって、高速要求条件の点から、また、長さは制限されることがある。例として、ディバイダの長さは、200μmから20mmの範囲内であってもよい。ビームを通過させる開口は、200μmから10mmの範囲内であってもよい。
【0047】
2次荷電粒子が、ディバイダ内で、ディバイダ内の位置に依存して異なるようにフィルタ処理され、または逆戻りにされることが無いようにする可能性が一般に二つある。これは、ディバイダの上流に配置され、かつディバイダ内の電位鞍部の中心に常にビームを向けるセグメント分割接地板64のような偏向ユニットによるか、または電位特性を修正するかのどちらかで行うことができる。電位を修正するために、例えば、図10に示すように、別々にバイアスをかけることができる四つの電極60から成るディバイダ16を設けることによって、追加の二極性電位を加えることができる。図10は、図2〜4および6〜8に示す断面に対して垂直なディバイダの断面を示す。
【0048】
二重集束曲げセクタユニット(図2bの14および48または図3aおよび図3bの14’)の集束は、追加の集束ユニット、例えば静電レンズで補佐することができる。静電レンズの例は、アインツェルレンズまたは浸漬レンズである。図3bにおいては、一組の集束要素およびフィルタ処理要素が示され、これらは、曲げセクタの下流に配置されて、2次電子ビームを検出器の能動領域の小さな(例えば、直径4mm)スポットに集束させ、かつ2次電子ビームのエネルギーフィルタ処理を可能にする。集束は、磁気レンズか静電レンズかのどちらかで行うことができる。静電レンズは、より小型のサイズおよび複雑さの減少をもたらす。
【0049】
図3bの実施形態では、集束レンズは、集束電極を取り囲む2次電子整列四重極62およびセグメント分割接地板64を備える静電レンズであり、それによってレンズ63を形成している。レンズ63は、浸漬レンズまたはアインツェルレンズであってもよい。試料にバイアスがかけられる場合には、板62および64は接地することができる。
【0050】
上述の実施形態の中で、四重極62および板64はレンズ63に一体化されている。一般に、本出願で示すすべての実施形態に関して、四重極および/または板はレンズから独立して設けることができる。それによって、適切な数のレンズ電極が設けられ、そして、追加して四重極62および板64の電極が設けられる。さらに、板64の代わりに、四重極を設けることが可能である。この第2の四重極は、2次電子ビームの追加の位置合わせを可能にする。
【0051】
レンズ63のような追加のレンズユニットは、本明細書で説明するすべての実施形態に応用できることを付け加える。このことは、追加の側板のあるまたは無い湾曲電極から成る曲げセクタ14を有する実施形態の場合に、特に当てはまる。
【0052】
比喩的に述べると、ディバイダと二つの検出器の組合せは、調整可能な直径を有するアパーチャ孔として作用する。ディバイダがまったくバイアスをかけられていないと、ディバイダ中のすべての荷電粒子は、前方検出器の方向に動き続ける。ディバイダのバイアスの増加につれて、より多くの荷電粒子が、ディバイダの中で、後方検出器の方に逆戻りに向きを変えるようになる。前方検出器に到達するために粒子がディバイダの電位障壁に打ち勝つことができるだけのエネルギーを、そのエネルギーを超えて、持つことができず、代わりに、すべての粒子が後方検出器に戻されるようになる最大エネルギーがある。
【0053】
本発明に基づく分析システムの一実施形態では、ディバイダは、バイアスをかけられた電極を備える。この電極は、荷電粒子ビームが通過することができるアパーチャを有する。他の実施形態では、ディバイダは、バイアスをかけられた円筒の形で実現される。一般に、バイアスをかけられた円筒は、少なくとも100μm、例えば120μm以上または150μm以上または200μm以上の長さであり、そして100μmから20mm、例えば150μmから10mmまたは0.5mmから1mmのアパーチャ直径を有する。
【0054】
ディバイダは電位障壁を形成し、それによって、荷電粒子ビームの荷電粒子は、それのエネルギーが電位障壁値よりも小さい場合、向きを変えられる。高エネルギー荷電粒子は、電位障壁に打ち勝つことができ、前方検出器に衝突するまで、動き続ける。低エネルギー荷電粒子は、電位障壁に打ち勝つことができず、ディバイダから少なくとも一つの後方検出器の方に向かって逆に加速される。
【0055】
例えば、少なくとも一つの後方検出器は、リング状で中心部に孔を有することができる。少なくとも一つの後方検出器は、また、いくつかの単一検出器で構成されることがあり、単一検出器の構成および検出器の構成の配列は、2次荷電粒子ビームの本質的な部分が曲げセクタからディバイダに伝播するのを妨げない。
【0056】
一般に、図2a、図2b、図3aおよび図3bに示すように、前方検出器、ディバイダおよび後方検出器は、一列に配列することができ、それによって、可能な限り僅かなスペースを消費するようになる。
【0057】
試料から解放された2次電子の取出しは、近接電極で制御することができる。この電極は、図3aおよび図3bにおいて電極49で示す。その後、対物レンズ(図示しない)のバイアスをかけられた部分、例えばバイアスをかけられたポールピース、またはハウジング(図示しない)のバイアスをかけられた部分、またはさらに他の加速電極(図示しない)のような加速ユニットが、高速検出の改善のために電子を加速する。この加速は、本出願で説明するすべての実施形態に含めることができ、2次粒子が所定の加速電界で加速された場合に収集効率を高めることができるという利点を有する。近接電極の電界は、像形成条件を制御するために特定の用途に応じて調整することができる。後で、一般に、荷電粒子は、加速ユニットによって例えば最高で5〜12KeVなどに加速される。
【0058】
上述の加速ユニットは、ウェハ電位に対してバイアスをかけられている。すなわち、ウェハが接地電位にあるとき加速電極にある電位へとバイアスをかけることができ、ウェハが異なる電位にバイアスをかけられているとき加速電極を接地することができ、または所望の電位差を得るように両方の部分にバイアスをかけることができる。電子の高エネルギーを維持するために、電子は、また、バイアスをかけられた管またはカラムの中を伝播すべきである。これを、図7により詳細に示す。
【0059】
図4は、本発明の他の実施形態を示す。偏向器13の代わりに、ウィーンフィルタ(Wien filter)20が使用されている。ウィーンフィルタは、1次荷電粒子1の伝播方向を変えないが2次荷電粒子2を偏向するように、調整することができる。
【0060】
曲げセクタ14を通り抜けた2次荷電粒子のビーム2は、集束用のアインツェルレンズ21を通って導かれる。ここで、アインツェルレンズは、二つの電極21aおよび21cおよび中間ユニット21bを備える。アインツェルレンズは、優れた集束特性を実現し、一般にディバイダの上流に、最も一般的にはディバイダと少なくとも一つの後方検出器のうちの少なくとも一つとの間に配置される。上で既に言及したように、アインツェルレンズの代わりに、他の型の静電型レンズ、磁気型レンズまたは静電/磁気組合せ型レンズが使用されてもよい。
【0061】
図4において、二つの後方検出器が示されている。後方検出器22は一つのグループの低エネルギー荷電粒子24を検出することができるが、後方検出器15は他のグループの低エネルギー荷電粒子25を検出することができる。すなわち、一つの後方検出器は、小さなオフビーム(off−beam)運動をする低エネルギー荷電粒子25を検出することができ、そして、一つの後方検出器は、より広いオフビーム運動を行う低エネルギー荷電粒子24を検出することができる。
【0062】
図5の(a)〜(d)において、種々の検出器の型が示されている。図5の(a)は、本発明で前方検出器として、例えば図2a、図2b、図3a、図3bまたは図4の実施形態で前方検出器17として使用することができるセグメント分割検出器26である。この検出器は、半径方向でセグメントに分割されている。すなわち、この検出器は、内側ゾーン28および外側ゾーン27を備える。したがって、この検出器は、偏向レベルに応じて荷電粒子を識別することができる。
【0063】
一般に、試料の平らな表面から十分なエネルギーを持って出る2次電子は、中心に近い内側ゾーン28の前方検出器に達する。試料の傾斜した表面から十分なエネルギーを持って出る2次粒子は、一般に、外側ゾーン27に着く。このセグメント分割によって、2次荷電粒子の出発位置の局部的な表面傾斜についての情報を与える2次荷電粒子の出発角に応じて、2次荷電粒子を検出することができるようになる。傾斜の無い表面からの信号は、光の光学明視野(BF)像に類似するものであるが、検出器の外側ゾーンに達する信号は、光の光学暗視野(DF)像に類似している。したがって、前方検出器としてセグメント分割検出器26を使用することによって、出発角に応じた2次電子の検出が可能になり、したがって出発位置の表面傾斜の定位検出が可能になる。
【0064】
図5の(b)に示すような検出器29は、本発明の後方検出器として、例えば図2a、図2b、図3a、図3bまたは図4の実施形態の後方検出器15または22として使用することができる。検出器29は、2次荷電粒子がディバイダに向かう途中で通り抜けることができるようにするために、中心部に貫通孔30を有する環状に形作られている。後方検出器は、一般に、暗視野型の像を生成する。その理由は、フィルタが大きな出発角の電子を阻止する傾向があり、そして、反射ビームの中心部分は、この実施形態でビーム通過に必要な検出器の貫通孔において失われるからである。検出器29は、低エネルギー荷電粒子を検出するために外側ゾーン31を備える。一般に、後方検出器の中心部の孔30のために、反射ビームの中心部分は失われる。
【0065】
図5の(c)には、本発明における前方検出器として、例えば図3a、図3bまたは図4の実施形態の前方検出器17として使用することができるセグメント分割検出器32が示されている。この検出器は、半径方向と円周方向の両方でセグメントに分割されている。すなわち、内側ゾーン34および四つの外側ゾーン33a〜33dを備えている。したがって、この検出器は、偏向レベルおよび偏向方向に応じて荷電粒子を識別することができる。2次荷電粒子の出発条件は局所表面トポグラフィに依存し、また、検出器上の2次荷電粒子到達点は出発速度の方位方向に依存するので、検出器表面が例えば図5の(c)に示すように四分円33a〜33dにセグメント分割されている場合、トポグラフィ情報を得ることができる。このことは、検出器の暗視野ゾーンに特に有効である。このことには、pinダイオードの場合に個々の検出器ゾーンの大きさを減少して検出帯域幅を改善するという他の利点がある。当業者には明らかなように、検出器の外側ゾーン33は、また、四つよりも多いまたは少ないゾーンに、例えば6、8、10またはもっと多くのゾーンにもセグメント分割することができる。さらに、また、検出器は、二つよりも多い半径方向のゾーン、例えば内側ゾーン、中間ゾーン、および外側ゾーンにセグメント分割し得る。一つよりも多い半径方向ゾーンの場合には、すべての半径方向ゾーンは、個々にセグメント分割してもよいし、または隣のゾーンと同様にセグメント分割してもよい。図5の(d)に示すような検出器35は、本発明の後方検出器として、例えば図3a、図3bまたは図4の実施形態の後方検出器15または22として使用することができる。検出器35は、環状に形作られ、かつ四つの外側ゾーン36a〜dにセグメント分割されている。検出器の中心部の貫通孔37は、2次荷電粒子がディバイダに向かう途中で通過することを可能にする。外側ゾーンのセグメント分割によって、偏向方向に応じた低エネルギー荷電粒子の検出が可能になる。当業者には明らかなように、検出器の外側ゾーン36は、また、四つよりも多いまたは少ないゾーンに、例えば6、8、10またはもっと多くのゾーンにもセグメント分割することができる。さらに、外側ゾーンは、その外側ゾーンの内側部分と外側部分等に更にセグメント分割し得る。
【0066】
以上をまとめると、セグメント分割検出器を使用することにはいくつかの利点がある。2次電子の出発条件は局所表面トポグラフィに依存し、検出器上の到達点は特に出発速度ベクトルの方位成分に依存するので、トポグラフィ情報を得ることができる。このことは、外側ゾーンおよび検出器にとって特に有用である。さらに、セグメント分割検出器を使用することで、各個の検出器ゾーンの大きさを減らすことができる。したがって、pinダイオードの場合には、検出帯域幅を改善することができる。
【0067】
図6は、本発明の更に他の実施形態を示す。図6において、ソース5は、荷電粒子としてのイオンから成る1次荷電粒子ビーム1を生成するイオン源(集束イオンビーム(FIB)システム)である。粒子は静電型偏向器38によって偏向され、試料との相互作用を受け、結果として2次電子を生じる。試料を離れた2次電子は、偏向器38の中で、イオンが偏向された方向と反対方向に偏向される。
【0068】
さらに、図6において、前方検出器17および二つの後方検出器15および22に電気的に接続された計算ユニット61が示されている。計算ユニットは、検出器15、17および22から信号を受け取り、その信号の同時評価を行う。それによって、一般に、それぞれの検出器からのいくつかの信号が、代数演算のための入力として使用される。一般に、計算は、複数の演算ステップを含み、さらにすべての検出器からのすべての信号を含む。例えば、信号すなわち検出器からの測定電流は、それを加算することによって、および/またはそれを減算することによって、および/または乗算することによって、一般に評価することができる。より多くの異なった型の評価を使用すると、試料についてより多くの情報を集めることができる。計算ユニットは、一般に、計算用のプロセッサ、少なくとも一つの記憶部分、キーボードおよび/またはマウスのような入力部、および出力部を備える。出力部は、一般に、ディスプレイ装置、画面、またはプリンタである。例えば、計算ユニット61は、適切なソフトウェアを備えたパーソナルコンピュータであってもよい。計算およびさらなる処理は、一般に、荷電粒子ビームデバイスが使用されているとき、作業者を必要とせず自動的に行われる。したがって、入力デバイスおよび出力デバイスのようなハードウェアデバイスは、荷電粒子ビームデバイスの設定、エラー処置などのために主に使用される。明瞭にするために計算ユニット61は図6の実施形態のみに示したが、本明細書で説明する他の実施形態でも計算ユニットを使用し得る。
【0069】
図7は、本発明の更に他の実施形態を示す。荷電粒子ビーム源5は、1次荷電粒子のビームを生成し、このビームは、その後、図7に電極として示すブースタ39によって加速される。ビームを加速することは、ビーム内の荷電粒子間相互作用を相当に減少させ、さらに漂遊フィールドに対する感度の減少をもたらすので有利である。加速後、ビームはコンデンサ40および最終アパーチャ41を通り抜ける。図4を考慮して既に説明したように、1次荷電粒子のビームはウィーンフィルタ20を通り抜ける。粒子を高エネルギーに保つために、1次荷電粒子のビームは、高電位の管44の中に入れられる。
【0070】
試料7の近くに示されている対物レンズ42がある。対物レンズは、磁気型レンズ42cを備える。さらに、対物レンズ42は、上部電極42aおよび下部電極42bを備える静電組立品を備えている。一般に、電極は、ブースタ39によって加速された1次荷電粒子を、当該1次荷電粒子に対して減速電界を生成することによって、減速させるようにバイアスをかけられる。2次電子は、静電界によって加速される。走査ユニット43は、一般に、レンズ42の中に配置されるが、レンズと試料7の間に配置することも可能である。2次電子は、ウィーンフィルタ20を通り、曲げセクタ14に向かってまっすぐに進む。曲げセクタとディバイダの間で、2次電子は、電極65で生成された減速静電界によって減速される。
【0071】
管44および曲げセクタ14は高電位を有するが、2次電子が電極14aと14bの間の湾曲ギャップに沿って導かれるように曲げセクタ14にバイアスをかけるために、曲げセクタ14は管44から分離されなければならない。図7に示す他の構成は、図4の実施形態からよく知られている。
【0072】
本発明の代表的な実施形態では、荷電粒子ビーム源5の先端部および試料7は、例えば−8KVのバイアスをかけられているが、ブースタ39および管44は接地電位になっている。したがって、管内の主電子のエネルギーは約8KeVである。この実施形態では、曲げセクタ内で2次電子が伝播する経路は、また、接地電位にある。これは、二つの電極14aおよび14bに適切にバイアスをかけることによって実現される。さらに、前方検出器17および後方検出器15は接地電位にあるが、レンズ組立品21の中にある後方検出器22はバイアスをかけられている。
【0073】
図8は、本発明に基づく多カラム荷電粒子ビームデバイスを模式的に示す。試料の同時像形成を容易にするために、それぞれディバイダ、前方検出器および後方検出器を有する3個の荷電粒子ビームデバイスが、アレイに配列されている。当業者には明らかことであろうが、2、4、5またはもっと多くの、例えば8または10個の荷電粒子ビームデバイスを、荷電粒子ビームデバイスの列またはアレイに配置することができる。試料がその上に配置されている試料テーブルは、xおよびy方向に移動可能であってもよい。代わりに、または追加して、荷電粒子ビームデバイスのアレイをxまたはy方向に可動であってもよく、これを図8に示す。このことは、単一の荷電粒子ビームデバイスを示す実施形態の場合にも当てはまる。さらに、また、一般に、荷電粒子ビームデバイスまたは荷電粒子ビームデバイスのアレイおよび/または試料テーブルは、典型的には、z方向にも可能である。上で説明した試料および荷電粒子ビームデバイスは、また、典型的にx、yおよびz方向で相対的に動くことができる。
【0074】
いくつかの荷電粒子ビームデバイスを一列に、アレイに、または他のパターンに配列するために、単一荷電粒子ビームデバイスの場合には単一荷電粒子ビームに個々に作用しているいくつかの部品を組み合わせてもよい。したがって、図9の(a)に示すように、一つの放射源アレイ51がすべての荷電粒子ビーム50を放射し、または一つの対物レンズ52がマルチビームデバイスのすべてのビームを集束する。例えば、磁気集束場が複数のポールピースに共通励起コイルによって誘起される。各ポールピースは、1次または2次荷電粒子のそれぞれのビームに近接して設けられる。制御装置(図示しない)が励起コイルを駆動し、冷却ユニット(図示しない)が励起コイルの近くにあってもよい。ポールピースが磁気集束場を電子ビーム用の開口に誘導する。この開口は、上部ポールピースおよび下部ポールピースに設けられている。開口内の集束場のために、荷電粒子ビームは集束される。その結果、荷電粒子のいくつかのビームは、ただ一つの共通励起コイルを使用することによって集束される。したがって、各ビームに対するポールピースの間の磁場は実質的に同じである。
【0075】
このようなマルチレンズシステムは、例えば、対物レンズとして使用し得る。それは、静電型、磁気型、または静電/磁気組合せ型レンズであってもよい。図9の(b)において、共通励起コイル54およびポールピース56のような個々のポールピースを有する磁気マルチビーム対物レンズ53を示す。マルチビームレンズ53は、試料が置かれている試料テーブル55の上の近くに配置される。しかし、マルチレンズシステムの応用は対物レンズに限定されない。例えば、図9の(a)に示すように、四つの荷電粒子ビームに対して共通コンデンサレンズ52が設けられてもよい。図示しないが、それにもかかわらず、共通曲げセクタおよび共通ディバイダが可能である。
【0076】
分析システムおよびデバイスは、上の実施形態で説明したように、検出部品が試料の下にある透過荷電粒子デバイス、例えば(走査型)透過電子顕微鏡にも使用することができる。それによって、検出される荷電粒子は、散乱荷電粒子である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】最先端技術の荷電粒子ビームデバイスを示す図である。
【図2a】本発明に基づく分析システムの第1の実施形態を示す図である。
【図2b】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第1の実施形態を示す模式図である。
【図3a】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第2の実施形態を示す模式図である。
【図3b】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第3の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第4の実施形態を示す模式図である。
【図5】(a)〜(d)は、前方検出器および後方検出器用に適している検出器の種々の実施形態を示す模式図である。
【図6】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第5の実施形態を示す模式図である。
【図7】本発明に基づく分析システムを有する荷電粒子ビームデバイスの第6の実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明に基づく荷電粒子多ビームデバイスの実施形態を示す模式図である。
【図9】(a)及び(b)は、本発明に基づく荷電粒子多ビームデバイスの種々の部品の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明に基づく分析システムのディバイダの実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
1…1次荷電粒子のビーム、2…2次荷電粒子のビーム、5…荷電粒子源、7…試料、13…偏向器、14…曲げセクタ、15,22…後方検出器、16…ディバイダ、17…前方検出器、18,24,25…低エネルギー2次荷電粒子のビーム、19…高エネルギー2次荷電粒子のビーム、20…ウィーンフィルタ、21…アインツェルレンズ、27,33a〜33d,36a〜36d…検出器の外側ゾーン、28,34…検出器の内側ゾーン、38…静電型偏向器、39…ブースタ、42…対物レンズ、42a…上部電極、42b…下部電極、61…計算ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のビーム(2)を低エネルギービーム(18,24,25)と高エネルギービーム(19)に分割するように構成されたディバイダ(16)と、
前記高エネルギービーム(19)を検出するための前方検出器(17)と、
前記低エネルギービーム(18,24,25)を検出するための少なくとも一つの後方検出器(15,22)と、
を備え、
前記ディバイダが前記前方検出器と前記少なくとも一つの後方検出器との間に配置され、
前記前方検出器(17)および/または前記少なくとも一つの後方検出器(15、22)がセグメントに分割されている分析システム。
【請求項2】
前記ディバイダ(16)が、前記荷電粒子ビームを通過させるための一つのアパーチャを備える、バイアスをかけられた電極を有している、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記ディバイダ(16)が、静電界を生成するように配置され、かつ形作られている、請求項1または2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの後方検出器(15,22)は、前記荷電粒子のビーム(2)が前記ディバイダ(16)に向かう途中で通過することができるように配置され、かつ形作られている、請求項1〜3の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記前方検出器および前記少なくとも一つの後方検出器からの信号データを合同評価するために、前記前方検出器および前記少なくとも一つの後方検出器に結合された計算ユニット(61)を更に備える、請求項1〜4の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記前方検出器(17)および/または前記少なくとも一つの後方検出器(15,22)が、方位セグメント(33a〜33d,36a〜36d)に分割されている、請求項1〜5の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記前方検出器および/または前記少なくとも一つの後方検出器が、前記荷電粒子の入射ビーム(2)から粒子の空間的分解能を方位角に対して得るために、方位セグメントに分割されている、請求項6に記載の分析システム。
【請求項8】
前記前方検出器(17)および/または後方検出器(15,22)が、前記荷電粒子の入射ビーム(2)から粒子の空間的分解能を半径方向に対して得るために、同心検出セグメント(27,28,33a〜33d,34)に分割されている、請求項1〜7の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項9】
前記少なくとも一つの後方検出器が、二つの後方検出器(15,22)である、請求項1〜8の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項10】
試料(7)を検査するための荷電粒子ビームデバイスであって、
前記試料(7)に1次荷電粒子のビーム(1)を向けて2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を生成するための荷電粒子ビーム源(5)と、
前記荷電粒子のビームが前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)である、請求項1〜9の何れか一項に記載の分析システムと、
を備える荷電粒子ビームデバイス。
【請求項11】
前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を偏向することが可能な曲げセクタ(14)を更に備える、請求項10に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項12】
前記曲げセクタが、前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)に対して前記少なくとも一つの後方検出器(15)の上流に配置されている、請求項10または11に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項13】
前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を集束させるためのレンズユニット(21)を更に備え、前記レンズユニットが曲げセクタ(14)とディバイダ(16)の間に位置付けされている、請求項10〜12の何れか一項に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項14】
一つの後方検出器が前記レンズユニット(21)の中に配置され、さらに一つの後方検出器が前記曲げセクタの出口と前記レンズの間に配置されている、請求項13および、請求項11または12の一項に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項15】
前記1次荷電粒子のビーム(1)と前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を分離するための偏向器(13,20,38)を更に備える、請求項10〜14の何れか一項に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項16】
前記1次荷電粒子ビームと前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子ビームの両方が通過するように配置された対物レンズ(42)を更に備える、請求項10〜15の何れか一項に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項17】
前記荷電粒子ビーム源(5)によって生成された後で前記1次荷電粒子(1)を加速するためのブースタ(39)、および/または前記試料(7)に衝突する前に前記1次荷電粒子(1)を減速させるための減速器(42a,42b)を更に備える、請求項10〜16の何れか一項に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項18】
前記ブースタ(39)が、加速電界を生成するための円筒を備え、前記減速器(42a,42b)が減速電界を生成するための二つの電極を備える、請求項17に記載の荷電粒子ビームデバイス。
【請求項19】
請求項10〜18に記載の少なくとも二つの荷電粒子ビームデバイスを備える、荷電粒子マルチビームデバイス。
【請求項20】
2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を高エネルギー粒子のビーム(19)と低エネルギー粒子のビーム(18,24,25)に分割するステップと、
前記高エネルギー粒子のビームの粒子を前方検出器で検出するステップと、
前記低エネルギー粒子のビームの粒子を後方検出器で検出するステップと、
を含み、
前記分割が、前記前方検出器と前記後方検出器の間の位置で行われ、前記高エネルギー粒子の検出および/または前記低エネルギー粒子の検出が、角度感度検出を含む、
試料(7)を検査する方法。
【請求項21】
1次荷電粒子ビーム(1)を試料に向け、それによって、2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビーム(2)を生成するステップを更に含む、請求項20に記載の試料を検査する方法。
【請求項22】
前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子の前記ビームの分割が、静電界を使用して行われる、請求項20または21に記載の試料を検査する方法。
【請求項23】
前記低エネルギー粒子ビームの進む方向が、前記高エネルギー粒子ビームの進む方向に対して実質的に反対である、請求項20〜22の何れかに記載の試料を検査する方法。
【請求項24】
前記1次荷電粒子ビーム(1)と前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子ビーム(2)を分離するステップを更に含む、請求項20〜23の何れか一項に記載の試料を検査する方法。
【請求項25】
前記1次荷電粒子ビームの伝播方向に対して前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子ビームの方向を変えるステップを更に含む、請求項20〜24の何れか一項に記載の試料を検査する方法。
【請求項26】
前記高エネルギー粒子および前記低エネルギー粒子を検出することによって得られた信号を合同評価するステップを更に含む、請求項20〜25の何れか一項に記載の試料を検査する方法。
【請求項27】
前記信号を合同評価するステップが、前記信号を加算し、および/または減算することを含む、請求項26に記載の試料を検査する方法。
【請求項28】
焦点が前記ディバイダの中に得られるように、前記2次散乱および/または後方散乱荷電粒子のビームを集束させるステップを更に有する請求項20〜27の何れか一項に記載の試料を検査する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−261111(P2006−261111A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−56845(P2006−56845)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】