分析方法

【課題】窒素原子含有量が大きい有機化合物のフラグメントイオンの炭素原子数を精度良く推定する方法。
【解決手段】第一の有機化合物を、また、第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第一の、また、第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオン及び第一のフラグメントイオンよりも質量電荷比が1小さい第二のフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程と、第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、質量分析計を用いて質量分析する際に、フラグメントイオンを同定する方法としては、種々の方法が知られている。
【0003】
非特許文献1には、タンデム質量分析計を用いて、3−エチルアスコルビン酸にプロトンが付加したイオン([M+H])よりも質量電荷比(m/z)が1大きいプリカーサーイオン([M+1+H])から生成するプロダクトイオンを質量分析し、フラグメントイオンとフラグメントイオンよりもm/zが1小さいフラグメントイオンのピークの高さの比から、フラグメントイオンの炭素原子数を推定する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、アルギニン等の窒素原子の含有量が大きい有機化合物のフラグメントイオンの炭素原子数を精度良く推定することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】質量分析総合討論会講演要旨集,2009,57th,506−507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、窒素原子の含有量が大きい有機化合物のフラグメントイオンの炭素原子数を精度良く推定することが可能な分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分析方法は、タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、タンデム質量分析計を用いて、前記第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、前記第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオン及び該第一のフラグメントイオンよりも質量電荷比が1小さい第二のフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程と、前記第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、前記第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び前記第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程を有する。
【0008】
本発明の分析方法は、タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、タンデム質量分析計を用いて、前記第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、前記第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオン及び該第一のフラグメントイオンよりも質量電荷比が1小さい第二のフラグメントイオンのピークの面積の比を求める工程と、前記第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、前記第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び前記第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの面積の比を求める工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窒素原子の含有量が大きい有機化合物のフラグメントイオンの炭素原子数を精度良く推定することが可能な分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ピンドロールの質量分析結果を示す図である。
【図2】アルギニン及びアルギニンメチルエステルの質量分析結果(その1)を示す図である。
【図3】アルギニン及びアルギニンメチルエステルの質量分析結果(その2)を示す図である。
【図4】アルギニン及びアルギニンメチルエステルの質量分析結果(その3)を示す図である。
【図5】図4(a)及び(b)における質量電荷比が60及び61のフラグメントイオンのピークを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0012】
本発明の分析方法は、タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比(m/z)が1大きい第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程を有する。これにより、第一のフラグメントイオン及び第一のフラグメントイオンよりもm/zが1小さい第二のフラグメントイオンのピークの高さの比が求められる。
【0013】
なお、第一のフラグメントイオン及び第二のフラグメントイオンのピークの高さは、タンデム質量分析計の解析ソフトを用いて測定してもよいし、定規を用いて測定してもよい。
【0014】
このとき、ピークの高さとして、複数回質量分析することにより得られるピークの高さの平均値を用いてもよい。
【0015】
タンデム質量分析計としては、特に限定されないが、四重極イオントラップ質量分析計三連四重極型質量分析計、四重極−飛行時間型ハイブリッド質量分析計等が挙げられる。
【0016】
第一の有機化合物をイオン化させる方法としては、特に限定されないが、電子イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、電界脱離(FD)法、高速原子衝突(FAB)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法等が挙げられる。
【0017】
第一の有機化合物をイオン化させたイオンとしては、特に限定されないが、分子イオン(M)、プロトンが付加したイオン([M+H])、ナトリウムイオンが付加したイオン([M+Na])、アンモニウムイオンが付加したイオン([M+NH)、ハイドライドが脱離したイオン([M−H])、電子が付加したイオン(M)、ハロゲンイオンが付加したイオン([M+X])、プロトンが脱離したイオン([M−H])等の1価のイオン;プロトンが付加したイオン([M+nH]n+)、プロトンが脱離したイオン([M−nH]n−)等の2価以上のイオン等の分子量関連イオン;分子量関連イオンのフラグメントイオン等が挙げられる。
【0018】
第一の有機化合物をイオン化させたイオンにおける分子量関連イオンのフラグメントイオンとしては、例えば、アルギニンにプロトンが付加したイオン([M+H])から水が脱離したイオン等が挙げられる。
【0019】
第一の有機化合物としては、炭素原子数を変化させることが可能であれば、特に限定されない。
【0020】
ここで、本発明の分析方法と対比するために、非特許文献1に記載された方法を用いて、化学式
【0021】
【化1】

で表される分子量が248.32のピンドロール(C1420)を分析する場合について説明する。
【0022】
図1に、高速液体クロマトグラフNANOSPACE SI−2(資生堂社製)を接続したリニアイオントラップ−フーリエ変換型ハイブリッド質量分析計LTQ−Orbitrap(サーモサイエンティフィック社製)を用いて、ピンドロールを質量分析した結果を示す。なお、(a)は、MSスペクトルであり、(b)及び(c)は、それぞれピンドロールをイオン化させたイオン及びピンドロールをイオン化させたイオンよりもm/zが1大きい第一のイオンをプリカーサーイオンとしたときのMS/MSプロダクトイオンスペクトルである。
【0023】
図1(a)から、ピンドロールをイオン化させたイオンは、ピンドロールにプロトンが付加したm/zが249のイオン([M+H])であり、第一のイオンは、ピンドロールにプロトンが付加したm/zが250のイオン([M+1+H])であることがわかる。
【0024】
図1(b)から、[M+H]のフラグメントイオンとして、m/zが116、146及び172のフラグメントイオンが存在することがわかる。
【0025】
図1(c)から、[M+1+H]のフラグメントイオンとして、m/zが117、147及び173のフラグメントイオン、これらのフラグメントイオンよりもm/zが1小さいフラグメントイオンとして、m/zが116、146及び172のフラグメントイオンが存在することがわかる。これは、[M+1+H]から中性種が脱離してフラグメントイオンが生成するが、[M+1+H]に含まれる質量数が1大きい同位体が脱離した中性種に含まれる場合とフラグメントイオンに含まれる場合があるためである。
【0026】
ここで、12Cの同位体存在度に対する13Cの同位体存在度の比が1.108/98.892、Hの同位体存在度に対するHの同位体存在度の比が0.015/99.985、14Nの同位体存在度に対する15Nの同位体存在度の比が0.365/99.635、16Oの同位体存在度に対する17Oの同位体存在度の比が0.037/99.759である。
【0027】
なお、12Cの同位体存在度に対する13Cの同位体存在度の比、Hの同位体存在度に対するHの同位体存在度の比、14Nの同位体存在度に対する15Nの同位体存在度の比及び16Oの同位体存在度に対する17Oの同位体存在度の比としては、種々のデータが存在する。
【0028】
H、15N及び17Oの同位体存在度が13Cの同位体存在度よりも十分に小さいことから、非特許文献1に記載された方法では、質量数が1大きい同位体として、13Cのみが存在すると仮定して炭素原子数が推定される。具体的には、m/zが173及び172のフラグメントイオンのピークの高さの比が約11:3であることから、m/zが172及び173のフラグメントイオンの炭素原子数が11であると推定される。
【0029】
なお、m/zが172及び173のフラグメントイオンは、[M+1+H]から2−アミノプロパン(CN)及び水(HO)が脱離して生成する化学式
【0030】
【化2】

で表されるイオン(C1110NO)である。
【0031】
このとき、m/zが173のフラグメントイオン(C1110NO)に13Cが含まれる場合と、2−アミノプロパン(CN)に13Cが含まれる場合の比は、それぞれの炭素原子数に比例するため、11:3となる。
【0032】
同様にして、m/zが147及び146のフラグメントイオンのピークの高さの比が約9:5であることから、m/zが146及び147のフラグメントイオンの炭素原子数が9であると推定される。また、m/zが117及び116のフラグメントイオンのピークの高さの比が約6:8であることから、m/zが116及び117のフラグメントイオンの炭素原子数が6であると推定される。
【0033】
しかしながら、窒素原子の含有量が大きい化合物は、フラグメントイオンのピークにおける15Nの寄与が大きくなるため、非特許文献1に記載された方法を用いると、炭素原子数を精度良く推定することができない。
【0034】
そこで、本発明の分析方法は、タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりもm/zが1大きい第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程をさらに有する。これにより、第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び第一のフラグメントイオンよりもm/zが1小さい第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの高さの比が得られる。その結果、窒素原子の含有量が大きい有機化合物のフラグメントイオンの炭素原子数を精度良く推定することができる。
【0035】
第二の有機化合物をイオン化させる方法としては、特に限定されないが、電子イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、電界脱離(FD)法、高速原子衝突(FAB)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法等が挙げられる。
【0036】
第二の有機化合物をイオン化させたイオンとしては、特に限定されないが、分子イオン(M)、プロトンが付加したイオン([M+H])、ナトリウムイオンが付加したイオン([M+Na])、アンモニウムイオンが付加したイオン([M+NH)、ハイドライドが脱離したイオン([M−H])、電子が付加したイオン(M)、ハロゲンイオンが付加したイオン([M+X])、プロトンが脱離したイオン([M−H])等の1価のイオン;プロトンが付加したイオン([M+nH]n+)、プロトンが脱離したイオン([M−nH]n−)等の2価以上のイオン等の分子量関連イオン;分子量関連イオンのフラグメントイオン等が挙げられる。
【0037】
第二の有機化合物をイオン化させたイオンにおける分子量関連イオンのフラグメントイオンとしては、例えば、アルギニンメチルエステルにプロトンが付加したイオン([M+H])から水が脱離したイオン等が挙げられる。
【0038】
第一の有機化合物の炭素原子数を変化させる方法としては、特に限定されないが、置換反応、付加反応、脱離反応、加水分解反応、縮合反応、酵素反応等の公知の反応が挙げられる。
【0039】
なお、第一の有機化合物の炭素数を変化させて第二の有機化合物を合成してもよいし、予め合成されている第二の有機化合物の市販品等を用いてもよい。
【0040】
一例として、化学式
【0041】
【化3】

で表される分子量が174.20のアルギニン(C14)を質量分析する場合について説明する。このとき、アルギニンの炭素原子数を1増加させることにより得られる化合物として、アルギニンとメタノールを脱水縮合させることにより得られるアルギニンメチルエステルを用いる。
【0042】
図2に、高速液体クロマトグラフNANOSPACE SI−2(資生堂社製)を接続したリニアイオントラップ−フーリエ変換型ハイブリッド質量分析計LTQ−Orbitrap(サーモサイエンティフィック社製)を用いて、アルギニン及びアルギニンメチルエステルを質量分析した結果(その1)を示す。なお、(a)及び(b)は、それぞれアルギニン及びアルギニンメチルエステルのMSスペクトルである。
【0043】
図2(a)から、アルギニンをイオン化させたイオンは、アルギニンにプロトンが付加したm/zが175のイオン([M+H])であることがわかる。また、アルギニンをイオン化させたイオンよりもm/zが1大きい第一のイオンは、アルギニンにプロトンが付加したm/zが176のイオン([M+1+H])であることがわかる。
【0044】
図2(b)から、アルギニンメチルエステルをイオン化させたイオンは、アルギニンメチルエステルにプロトンが付加したm/zが189のイオン([M+H])であることがわかる。また、アルギニンメチルエステルをイオン化させたイオンよりもm/zが1大きい第二のイオンは、m/zが190のイオン([M+1+H])であることがわかる。
【0045】
図3に、アルギニン及びアルギニンメチルエステルを質量分析した結果(その2)を示す。なお、(a)及び(b)は、それぞれ[M+H]及び[M+H]をプリカーサーイオンとしたときのMS/MSプロダクトイオンスペクトルである。
【0046】
図3(a)から、[M+H]のフラグメントイオンとして、m/zが60、70、112、116及び140のフラグメントイオンが存在することがわかる。
【0047】
図3(b)から、[M+H]のフラグメントイオンとして、m/zが60、70、112、130及び140のフラグメントイオンが存在することがわかる。
【0048】
このとき、アルギニンの炭素原子数を変化させても、m/zが60、70、112及び140のフラグメントイオンのm/zが変化しないことがわかる。一方、アルギニンの炭素原子数を変化させたことにより、図3(a)におけるm/zが116のフラグメントイオンが、図3(b)におけるm/zが130のフラグメントイオンに変化したことがわかる。
【0049】
図4に、アルギニン及びアルギニンメチルエステルを質量分析した結果(その3)を示す。なお、(a)及び(b)は、それぞれ[M+1+H]及び[M+1+H]をプリカーサーイオンとしたときのMS/MSプロダクトイオンスペクトルである。
【0050】
図4(a)から、[M+1+H]のフラグメントイオンとして、m/zが61、71、113、117、131及び141のフラグメントイオン、[M+1+H]のフラグメントイオンよりもm/zが1小さいフラグメントイオンとして、m/zが60、70、112、116、130及び140のフラグメントイオンが存在することがわかる。
【0051】
図4(b)から、[M+1+H]のフラグメントイオンとして、m/zが61、71、113、131及び141のフラグメントイオン、[M+1+H]のフラグメントイオンよりもm/zが1小さいフラグメントイオンとして、m/zが60、70、112、130及び140のフラグメントイオンが存在することがわかる。
【0052】
図5に、図4(a)及び(b)におけるm/zが60及び61のフラグメントイオンのピークを模式的に示す。なお、(a)は、図4(a)におけるm/zが60及び61のフラグメントイオンのピークであり、(b)は、図4(b)におけるm/zが60及び61のフラグメントイオンのピークである。このとき、(a)及び(b)は、m/zが61のフラグメントイオンのピークの高さが同一になるように調整されている。
【0053】
図5から、アルギニンメチルエステルとアルギニンの間のm/zが60のフラグメントイオンのピークの高さの差Δhが炭素原子数1に相当し、[M+1+H]及び[M+1+H]から脱離した中性種の炭素原子数が、それぞれ6及び5であると推定される。また、アルギニンメチルエステル及びアルギニンの炭素原子数が、それぞれ7及び6であることから、m/zが60及び61のフラグメントイオンの炭素原子数が1であると推定される。
【0054】
なお、m/zが60及び61のフラグメントイオンは、[M+1+H](又は[M+1+H])から中性種として、2−アミノペンタン酸(C11NO)(又は2−アミノペンタン酸メチル(C13NO))が脱離して生成する化学式
【0055】
【化4】

で表されるイオン(CH)である。
【0056】
一方、m/zが61のフラグメントイオンのピークの高さと、m/zが61のフラグメントイオンの炭素数とΔhの積、即ち、Δhとの差Δh’は、13C以外の質量数が1大きい同位体の寄与であると推定される。
【0057】
ここで、H及び17Oの同位体存在度が13C及び15Nの同位体存在度よりも十分に小さいことから、質量数が1大きい同位体として、13C及び15Nのみが存在すると仮定すると、12Cの同位体存在度に対する13Cの同位体存在度の比が1.108/98.892、14Nの同位体存在度に対する15Nの同位体存在度の比が0.365/99.635であることから、m/zが60及び61のフラグメントイオンの窒素原子数は、式
(1.108/98.892)/(0.365/99.635)×(Δh’/Δh)
から推定することができる。
【0058】
このとき、アルギニンは、Δh’がΔhと略同一である、即ち、m/zが61のフラグメントイオンのピークにおける15Nの寄与が大きいため、非特許文献1に記載された方法を用いて、m/zが60及び61のフラグメントイオンのピークの高さの比から、アルギニンの炭素原子数を推定しても、精度良く推定することができない。
【0059】
なお、上記と同様にして、図4(a)におけるm/zが70及び71のフラグメントイオン、m/zが112及び113のフラグメントイオン、m/zが116及び117のフラグメントイオン、m/zが140及び141のフラグメントイオンの炭素原子数を推定することができる。
【0060】
一方、図4(b)におけるm/zが70及び71のフラグメントイオン、m/zが112及び113のフラグメントイオン、m/zが130及び131のフラグメントイオン、m/zが140及び141のフラグメントイオンの炭素原子数を推定することができる。
【0061】
このことから、第一の有機化合物の炭素原子数を増加させる代わりに、減少させてもよいことがわかる。
【0062】
なお、第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物と第一の有機化合物の炭素原子数の差は、1以外であってもよく、通常、1〜10である。
【0063】
また、第二の有機化合物として、二種以上の有機化合物を用いてもよい。これにより、フラグメントイオンのピークの重なりを検出することができる。
【0064】
さらに、フラグメントイオンの炭素原子数を推定する際に、ピークの高さの比の代わりに、ピークの面積の比を用いてもよい。
【0065】
なお、第一の有機化合物の炭素原子数が未知である場合、質量数が1大きい同位体として、13Cのみが存在すると仮定すると、12Cの同位体存在度に対する13Cの同位体存在度の比が1.108/98.892であることから、[M+H]及び[M+1+H]のピークの高さを、それぞれh及びhとすると、第一の有機化合物の炭素原子数は、式
(h/h)/(1.108/98.892)
から推定することができる。
【0066】
以上、本発明の分析方法をLC/MS/MSに適用する場合について説明したが、本発明の分析方法は、GC/MS/MS、直接分析MS/MS、直接試料導入MS/MS、MS/MS/MS等に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、
タンデム質量分析計を用いて、前記第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、
前記第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオン及び該第一のフラグメントイオンよりも質量電荷比が1小さい第二のフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程と、
前記第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、前記第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び前記第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの高さの比を求める工程を有することを特徴とする分析方法。
【請求項2】
タンデム質量分析計を用いて、第一の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、
タンデム質量分析計を用いて、前記第一の有機化合物の炭素原子数を変化させることにより得られる第二の有機化合物をイオン化させたイオンよりも質量電荷比が1大きい第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析する工程と、
前記第一のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、第一のフラグメントイオン及び該第一のフラグメントイオンよりも質量電荷比が1小さい第二のフラグメントイオンのピークの面積の比を求める工程と、
前記第二のプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを質量分析することにより得られる、前記第一のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオン及び前記第二のフラグメントイオンに対応するフラグメントイオンのピークの面積の比を求める工程を有することを特徴とする分析方法。
【請求項3】
前記第一の有機化合物の炭素原子数を変化させて前記第二の有機化合物を合成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記タンデム質量分析計は、液体クロマトグラフと接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247258(P2012−247258A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118165(P2011−118165)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【特許番号】特許第4999994号(P4999994)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】