説明

分析装置

【課題】反応容器に達するまでの音波の拡散を低減しつつ、音波発生手段による発熱を低減させることができる分析装置を提供すること。
【解決手段】検体と試薬との混合液Sが収容される液体収容部21aを有する反応容器21を保持し、音波によって液体収容部21a内の混合液Sを攪拌して反応させる分析装置1において、音波を発生する音波発生部材24と、表面に音波発生部材24が取り付けられ、音波発生部材24の近傍に液体収容部21aの表面を向かい合わせて反応容器21を固定する反応容器固定部材22aと、恒温液Lを収容する恒温液収容槽23と、恒温液収容槽23内で恒温液Lの流れを発生させる恒温液循環部25とを有し、反応容器固定部材22aの表面のうち音波発生部材24が取り付けられる領域A、あるいは液体収容部21aの表面のうち音波発生部材24と向かい合う領域Bの少なくとも一方の領域が他方の領域に向けて突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波によって検体と試薬との混合液を攪拌して反応させる分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波によって検体と試薬との混合液を攪拌して反応させる分析装置においては、音波を発生する音波発生手段と混合液が収容される反応容器との間に恒温液を介在させて音波を混合液に伝達する分析装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、音波発生手段が反応容器と離れた位置に設けられるため、音波が反応容器に達するまでの間に拡散してしまうという問題があった。この問題を解決するために、音波発生手段が反応容器に近接して設けられた技術(例えば、特許文献2および3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3168886号公報
【特許文献2】特開2006−90791号公報
【特許文献3】特開2007−232521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2および3に記載された技術では、音波発生手段が反応容器に近接しているため、音波発生手段の発熱によって反応容器内の混合液の温度が反応に適した温度より上昇してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器に達するまでの音波の拡散を低減しつつ、音波発生手段による発熱を低減させることができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、検体と試薬との混合液が収容される液体収容部を有する反応容器を保持し、音波によって前記液体収容部内の前記混合液を攪拌して反応させる分析装置において、前記音波を発生する音波発生手段と、表面に該音波発生手段が取り付けられ、該音波発生手段の近傍に前記液体収容部の表面を向かい合わせて前記反応容器を固定する反応容器固定部材と、前記音波発生手段と前記液体収容部との間に恒温液を満たした状態で該恒温液を収容する恒温液収容部と、前記恒温液収容部内で前記恒温液の流れを発生させる液流発生手段とを有し、前記反応容器固定部材の表面のうち前記音波発生手段が取り付けられる領域、あるいは前記液体収容部の表面のうち前記音波発生手段と向かい合う領域の少なくとも一方の領域が他方の領域に向けて突出していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記反応容器固定部材は、前記液体収容部と前記音波発生手段との相対位置を固定する位置決め手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記液流発生手段は、前記恒温液収容部内で前記恒温液を循環させる液循環手段であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記恒温液収容部は、外形が円形状を有し、前記反応容器固定部材は、複数の前記反応容器を円周に沿って並べて固定し、前記反応容器固定部材を複数の前記反応容器が並んだ円周方向に沿って回転させる回転手段をさらに有し、前記液流発生手段は、前記恒温液収容部内の攪拌位置に位置する前記液体収容部の近傍の前記恒温液に前記恒温液収容部の径方向の流れを発生させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段によって発生させる音波の強度の増加に伴って前記液流発生手段による前記恒温液の流動量を増加させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波の強度は、前記検体の分析項目に応じて設定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記液流発生手段は、循環ポンプを有し、該循環ポンプによって前記流動量を変化させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、圧電体からなる基板と、該基板上に設けられ音波を発生する振動子とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、圧電体からなる基板と、該基板上に設けられ音波を発生する第一の振動子とを有し、前記液流発生手段は、前記音波発生手段の前記基板上に設けられ音波を発生する第二の振動子であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、前記第二の振動子は、近傍で前記液体収容部の表面と向かい合わない前記基板上の領域に設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る分析装置は、上記の発明において、互いに向かい合っている前記反応容器固定部材の表面と、前記液体収容部の表面との間隔であって、一方の前記領域が他方の前記領域に向けて突出している方向と平行な方向の間隔が、前記恒温液の流れ方向に沿って増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る分析装置においては、音波発生手段を液体収容部に近接させる一方、突出している部分の近傍の反応容器固定部材の表面は、向かい合う液体収容部の表面との間隔を大きくとるようにしているため、音波発生手段を液体収容部に近接させた状態であっても、音波発生手段の近傍では恒温液が流れ易くなる。従って、反応容器に達するまでの音波の拡散を低減しつつ、音波発生手段による発熱を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した反応部のA―A断面図および恒温液の流路を示す図である。
【図3】図3は、図1に示した恒温液収容槽内での恒温液の流れを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1の変形例に係る反応部の要部断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1の変形例に係る反応部の要部断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】図7は、図6に示した反応部のB―B断面図および恒温液の流路を示す図である。
【図8】図8は、図6に示した恒温液収容槽内での恒温液の流れを示す図である。
【図9】図9は、図6に示した分析装置による混合液の攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2の変形例1に係る反応部の要部断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2の変形例2に係る反応部の要部断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2の変形例3に係る反応部の要部斜視図である。
【図13】図13は、図12に示した反応部の正面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2の変形例4に係る反応部の要部断面図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態2の変形例4に係る反応部の要部断面図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態2の変形例4に係る反応部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る分析装置1の構成を模式的に示す図である。分析装置1は、反応容器21の液体収容部21aに収容された検体と試薬とを反応させて光学的に測定する測定部10と、測定部10を含む分析装置1全体の制御および測定部10における測定結果の分析を行う制御装置30とを有する。分析装置1は、測定部10および制御装置30を連携させることによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0021】
測定部10は、検体供給部11、検体分注部12、分析光学系13、洗浄部14、試薬テーブル15、試薬分注部16、および反応部20を有する。
【0022】
検体供給部11は、検体が収容される検体容器11aが保持された複数のラック11bを収納して検体分注位置に順次移送する。
【0023】
検体分注部12は、検体供給部11の検体分注位置に移送された検体容器11a内から検体を吸引し、反応部20上の検体吐き出し位置に移送された液体収容部21aに、検体を吐き出して分注を行う。
【0024】
分析光学系13は、所定の測定位置に移送された液体収容部21aに測定光を照射し、液体収容部21a内の検体と試薬との混合液を透過した光を分光し、各波長光の強度測定を行うことによって、検体と試薬との混合液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0025】
洗浄部14は、図示しないノズルによって、分析光学系13による測定が終了した液体収容部21a内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。
【0026】
試薬テーブル15は、ホイール15aを有する。ホイール15aは、複数の試薬容器15bを保持し、図示しない駆動機構によって回転することにより、試薬容器15bを周方向に沿って移送する。
【0027】
試薬分注部16は、試薬テーブル15上の所定位置に移送された試薬容器15b内の試薬を吸引し、反応部20上の所定位置に移送された液体収容部21aに、試薬を吐出して分注を行う。
【0028】
反応部20は、検体と試薬との混合液が収容される液体収容部21aを有する反応容器21を保持し、音波によって液体収容部21a内の混合液を攪拌して反応させる。図2は、図1に示した反応部のA―A断面図および恒温液の流路を示す図である。反応部20は、図2に示すように、反応容器21、反応容器保持機構22、恒温液収容槽23および恒温液循環部25を有する。
【0029】
反応容器21は、その上面が、円環を周方向に沿って分割した形状をなし、外縁付近に外周に沿って並んだ複数の液体収容部21aを有する。液体収容部21aは、側壁と底壁とによって上部に開口を形成された中空4角柱形状をなす。液体収容部21aは、分析光を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0030】
反応容器保持機構22は、図2に示すように、音波発生手段として音波を発生する音波発生部材24と、反応容器固定部材22aと、駆動機構22gを有する。反応容器固定部材22aは、複数の反応容器21を周方向に沿って並べて固定する。反応容器固定部材22aは、表面に音波発生部材24が取り付けられ、音波発生部材24の近傍に液体収容部21aの底面を向かいあわせて反応容器21を固定する。反応容器固定部材22aは、突出部22bおよび位置固定部22cを有する。
【0031】
突出部22bは、反応容器固定部材22aの表面のうち音波発生部材24が取り付けられる領域Aが液体収容部21aの表面のうち音波発生部材24と向かい合う領域Bに向けて突出している部分である。
【0032】
位置固定部22cは、位置決め手段として、液体収容部21aと、音波発生部材24との相対位置を固定する。位置固定部22cは、液体収容部21a下部の4隅を固定して支持する下部固定部22d、および反応容器21の上部をネジ等の固定部材22fによって固定するためのネジ穴等を形成された上部固定部22eを有する。反応容器21は、下部固定部22dおよび上部固定部22eによって、反応容器固定部材22aに固定配置されることにより、液体収容部21aの底面の略中心位置に音波発生部材24を位置させて反応容器固定部材22aに固定される。
【0033】
駆動機構22gは、モータMを駆動源として有し、回転手段として反応容器固定部材22aを複数の反応容器21が並んだ円周方向に沿って回転させる。反応容器保持機構22は、反応容器固定部材22aを駆動機構22gによって周方向に回転することによって、液体収容部21aを周方向に移送する。
【0034】
音波発生部材24は、例えば、図示しないスリップリングによって電力を供給されて音波を発生する。音波発生部材24は、圧電体からなる基板24aと、基板24a上に設けられて音波を発生する振動子24bとを有する。音波発生部材24は、例えば、振動子24bとして櫛型電極(IDT)を用いる表面弾性波(SAW)素子である。
【0035】
恒温液収容槽23は、恒温液収容部として音波発生部材24と液体収容部21aとの間に恒温液Lを満たした状態で恒温液Lを収容する。恒温液収容槽23は、外形が円形状を有し、円の中心から径方向に沿って切断した断面が凹状をなし、上部を図示しない円盤状の蓋によって覆われる。
【0036】
恒温液循環部25は、液循環手段として恒温液を恒温液収容槽23内で周方向に循環させる。すなわち、恒温液循環部25は、液流発生手段として恒温液収容槽23内で周方向に恒温液の流れを発生させる。恒温液循環部25は、循環流路25a、循環ポンプPおよび温度調節器Hを有する。
【0037】
循環流路25aは、パイプ等の配管で形成され、配管の両端を恒温液収容槽23に接続する恒温液の流路である。循環流路25aは、供給口25bおよび排出口25cを有する。供給口25bは、恒温液収容槽23の側壁を貫通し、恒温液収容槽23の周方向に配管の軸を向けた端部の開口である。排出口25cは、恒温液収容槽23の側壁を貫通し、恒温液収容槽23の周方向、供給口25bとは逆向きに配管の軸を向けた端部の開口である。循環ポンプPおよび温度調節器Hは、循環流路25aの途中に設けられる。温度調節器Hは、循環流路25aを通過する恒温液の温度を所定の温度に調節する。なお、恒温液収容槽23の周方向に沿って複数の供給口25bおよび排出口25cを設けてもよい。
【0038】
恒温液Lは、供給口25bから恒温液収容槽23内に周方向に向けて供給された後、槽内を周方向に流れ、排出口25cから恒温液収容槽23外部の循環流路25aへ排出され、循環流路25aを通過する際に温度を調整された後、再び供給口25bから恒温液収容槽23内に供給される。
【0039】
突出部22bに取り付けられた音波発生部材24と液体収容部21aの底面とは近接しているものの、突出部22b付近の反応容器固定部材22aの表面は、向かい合う液体収容部21aの底面との間隔を大きくとるようにしているため、恒温液が流れるだけの流路を十分に確保している。このため、図3に示すように、恒温液収容槽23内で周方向に流れる恒温液Lの流れFは、音波発生部材24の近傍においてもその流れFを維持することができる。
【0040】
制御装置30は、図1に示すように、制御部31、入力部32、表示部33および記憶部34を有する。測定部10および制御装置30内の各部は、制御部31に接続される。制御部31は、CPU等によって実現され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部31は、分析光学系13によって測定された測定結果をもとに、検体内における検出対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。
【0041】
入力部32は、キーボードやマウス等によって実現され、検体の分析項目等の分析に関する各種情報の入力が可能である。表示部33は、ディスプレイパネルやプリンタ等によって実現され、検体の分析データや警報等の各種情報を出力する。記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかわる各種プログラムをハードディスクから読み出して電気的に記憶するメモリとを有する。記憶部34は、演算処理された吸光度等を含む検体の分析データを記憶する。
【0042】
この分析装置1では、順次移送される複数の液体収容部21aに対して、試薬分注部16が、試薬容器15bから液体収容部21aに試薬を分注し、検体分注部12が、検体容器11aから液体収容部21aに所定量の検体を分注する。続いて、恒温液収容槽23内の攪拌位置で、音波発生部材24から発生させた音波によって液体収容部21a内の検体と試薬との混合液を撹拌して反応させた後、分析光学系13が、混合液の吸光度測定を行う。そして、制御部31が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部14が、分析光学系13による測定が終了した液体収容部21aの洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0043】
本実施の形態1では、液体収容部21aの底面が反応容器固定部材22aの突出部22bに取り付けられた音波発生部材24に向かい合わせて反応容器固定部材22aに固定され、突出部22b付近の反応容器固定部材22aの表面は、向かい合う液体収容部21aの底面との間隔を大きくとるようにしているため、音波発生部材24を液体収容部21aの底面に近接させた状態であっても、音波発生部材24の近傍では恒温液が流れ易くなる。このため、反応容器21に達するまでの音波の拡散を低減しつつ、音波発生部材24による発熱を低減させることができる。
【0044】
つぎに、実施の形態1の変形例について説明する。図4は、本発明の実施の形態1の変形例に係る反応部35の要部断面図である。図4に示すように、反応部35は、液体収容部35aの底面の4隅から突起した突起部35bを有する。一方、反応容器固定部材35cは、この突起部35bに係合する凹部35dを有する。突起部35bおよび凹部35dは、位置決め手段として、液体収容部35aと、音波発生部材24との相対位置を固定する。なお、図5に示すように、反応部36は、液体収容部36aの底面の4隅に凹部36bを設け、この凹部36bに係合する突起部36dを反応容器固定部材36cに設けてもよい。
【0045】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る分析装置2の構成を示す模式図である。実施の形態2の分析装置2では、液体収容部21aが攪拌位置に移送された際、恒温液収容槽41の径方向に恒温液の流れを発生させるようにしている。
【0046】
分析装置2は、検体と試薬との反応を光学的に測定する測定部70と、測定部70を含む分析装置2全体の制御および測定部70における測定結果の分析を行う制御装置60とを有する。測定部70は、反応部20に代わって反応部40を有し、制御装置60は、制御部31に代わって制御部61を有する。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0047】
反応部40は、図7に示すように、反応容器保持機構42、恒温液収容槽41および恒温液循環部50を有する。反応容器保持機構42は、駆動機構22gおよび反応容器固定部材42aを有する。反応容器固定部材42aは、恒温液Lが径方向に通過できる通過口42bを反応容器固定部材22aに形成したものである。
【0048】
恒温液収容槽41は、恒温液収容部として音波発生部材24と液体収容部21aとの間に恒温液Lを満たした状態で恒温液Lを収容する。恒温液収容槽41は、外形が円形状を有し、円の中心から径方向に沿って切断した断面が凹状をなし、上部を図示しない円盤状の蓋によって覆われる。
【0049】
恒温液循環部50は、循環流路51、循環ポンプPおよび温度調節器Hを有する。循環流路51は、パイプ等の配管で形成され、配管の端部を恒温液収容槽41に接続する恒温液の流路である。循環流路51は、第1流路52および第2流路53を有する。
【0050】
第1流路52は、第1排出側流路52a、共通流路51aおよび第1供給側流路52bが接続された流路である。第1排出側流路52aは、排出口25cから排出側切替弁54aに接続する流路である。共通流路51aは、排出側切替弁54aから供給側切替弁54bまでを接続する流路であり、流路の途中に循環ポンプPおよび温度調節器Hが設けられる。第1供給側流路52bは、供給側切替弁54bから供給口25bまでの流路である。
【0051】
第2流路53は、第2排出側流路53a、共通流路51aおよび第2供給側流路53bが接続された流路である。第2排出側流路53aは、径方向排出口52fから排出側切替弁54aに接続する流路である。第2供給側流路53bは、供給側切替弁54bから径方向供給口52gに接続する流路である。ここで、径方向供給口52gは、恒温液収容槽41の側壁を貫通し、恒温液収容槽41の径方向に配管の軸を向けた端部の開口である。また、径方向排出口52fは、恒温液収容槽41の側壁を貫通し、恒温液収容槽41の径方向に配管の軸を向け、径方向供給口52gと向かい合う端部の開口である。
【0052】
循環流路51は、排出側切替弁54aおよび供給側切替弁54bによって、第1流路52または第2流路53に流路を切り替えられる。なお、第1流路52は、実施の形態1の循環流路25aと同様の流路であり、恒温液収容槽41内での周方向に恒温液の流れを発生させる。一方、第2流路53は、図8に示すように、恒温液収容槽41の径方向に恒温液の流れFを発生させる。
【0053】
突出部22bに取り付けられた音波発生部材24と液体収容部21aの底面とは近接しているものの、突出部22b付近の反応容器固定部材22aの表面は、向かい合う液体収容部21aの底面との間隔を大きくとるようにしているため、恒温液が流れるだけの流路を十分に確保している。このため、図8に示すように、恒温液収容槽41内で径方向に流れる恒温液Lの流れFは、音波発生部材24の近傍においてもその流れFを維持することができる。
【0054】
制御部61は、図6に示すように、流路切替部61aおよび流量変更部61bを有する。流路切替部61aは、反応容器21が移送されることによって、混合液を収容した液体収容部21aが攪拌位置に移送されたか否かを判断し、液体収容部21aが攪拌位置に移送された場合、流路を第1流路52から第2流路53に切替える。また、流路切替部61aは、攪拌位置の混合液の攪拌処理が終了した場合、流路を第2流路53から第1流路52に戻す。
【0055】
流量変更部61bは、音波発生部材24によって発生させる音波の強度の増加に伴って恒温液循環部50による恒温液の流動量を増加させる。より具体的には、音波の強度の増加に伴って循環ポンプPの流量を増加させる。ここで、音波の強度は、例えば、分析項目ごとに設定される。また、音波の強度と循環ポンプPの流量とを対応させた情報は、予め記憶部34に記憶される。
【0056】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、分析装置2による混合液の攪拌処理の処理手順を説明する。図9は、図6に示した分析装置2による混合液の攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、流路切替部61aは、混合液が収容された液体収容部21aが攪拌位置に移送されたか否かを判断する(ステップS101)。液体収容部21aが攪拌位置に移送された場合(ステップS101,Yes)、流路切替部61aは、循環ポンプPを停止させる(ステップS102)。その後、流路切替部61aは、排出側切替弁54aおよび供給側切替弁54bによって、流路を第1流路52から第2流路53に切替える(ステップS103)。
【0057】
その後、流量変更部61bは、分析項目ごとに設定される音波の強度に応じた流量に循環ポンプPの流量変更する(ステップS104)。その後、流量変更部61bは、循環ポンプPを作動する(ステップS105)。その後、音波発生部材24が、音波を発生させて混合液の攪拌を開始する(ステップS106)。その後、制御部61は、混合液の攪拌を終了したか否かを判断する(ステップS107)。
【0058】
混合液の攪拌を終了した場合(ステップS107,Yes)、流路切替部61aは、循環ポンプPを停止させる(ステップS108)。その後、流路切替部61aは、排出側切替弁54aおよび供給側切替弁54bによって、流路を第2流路53から第1流路52に戻す(ステップS109)。その後、流量変更部61bは、循環ポンプPの流量を変更前に戻し(ステップS110)、循環ポンプPを作動する(ステップS111)。その後、制御部61は、全ての混合液の攪拌を終了したか否かを判断する(ステップS112)。全ての混合液の攪拌を終了した場合(ステップS112,Yes)、制御部61は、本処理を終了する。
【0059】
液体収容部21aが攪拌位置に移送されていない場合(ステップS101,No)、流路切替部61aは、ステップS101の処理を繰り返す。また、混合液の攪拌を終了していない場合(ステップS107,No)、制御部61は、ステップS107の処理を繰り返す。また、全ての混合液の攪拌を終了していない場合(ステップS112,No)、制御部61は、処理をステップS101へ移行し、上述した処理を繰り返す。
【0060】
本実施の形態2では、実施の形態1と同様の効果を奏すると共に、分析項目ごとに強度を変化させる音波の強度が大きいほど、攪拌位置に移送された液体収容部21aの下方に流す恒温液の流量を増加させるようにしているので、より厳密に音波発生部材24による発熱を低減することができる。
【0061】
なお、本実施の形態2では、恒温液循環部50が、恒温液収容槽41の径方向に恒温液の流れを発生させるものを例示したが、これに限らず、恒温液収容槽41内の攪拌位置で恒温液の流れを発生させることができればよい。例えば、径方向に対して斜め方向に恒温液の流れを発生させるようにしてもよい。
【0062】
つぎに、実施の形態2の変形例1について説明する。図10は、本発明の実施の形態2の変形例1に係る反応部80の要部断面図である。反応部80は、反応容器固定部材80aに取り付けされた音波発生部材26が発生させた音波によって、液体収容部21aの下方に恒温液の流れを発生させるようにしている。音波発生部材26は、図10に示すように、圧電体からなる基板26a上に櫛形電極からなる第一の振動子としての振動子26bおよび第二の振動子としての振動子26cが互いに間隔をあけて設けられる。振動子26bは、液体収容部21aの底面と向かい合う位置に設けられ、液体収容部21aの底面方向D1に発生させた音波によって混合液Sを攪拌する。振動子26cは、近傍で液体収容部21aの底面と向かい合わない基板26a上の領域に設けられ、液体収容部21aの底面とずれた方向D2に音波を発生させる。このため、液体収容部21aの下方から外側にずれた位置pに向けて恒温液Lの流れFが発生する。
【0063】
つぎに、実施の形態2の変形例2について説明する。図11は、本発明の実施の形態2の変形例2に係る反応部81の要部断面図である。反応部81は、反応容器21に対して恒温液をできる限り接触させないようにしたドライバス型である。反応部81は、図11に示すように、反応容器21、反応容器保持機構81a、恒温槽23aおよび恒温液循環部82を有する。反応容器保持機構81aは、音波を発生する音波発生部材24と、音波発生部材24が取り付けられ、音波発生部材24の近傍に液体収容部21aの底面を向かい合わせて反応容器21を固定する反応容器固定部材81bと、反応容器固定部材81bを周方向に回転させる図示しない駆動機構とを有する。
【0064】
反応容器固定部材81bは、音波発生部材24と液体収容部21aとの間に恒温液Lを満たした状態で恒温液Lを収容する恒温液収容部81cを有する。恒温液収容部81cは、上部をシール材81dで覆うことによって液密になっている。恒温液収容部81cは、側部におよび下部に連結部81e,81fを有する。連結部81eは、後述するジョイント部83aが連結した場合、恒温液収容部81c内への恒温液の供給を可能とする。また、連結部81fは、後述するジョイント部83bが連結した場合、恒温液収容部81c外へ恒温液の排出を可能とする。恒温槽23aは、恒温液収容槽23と同様に、外形が円形状を有し、円の中心から径方向に沿って切断した断面が凹状をなし、上部を図示しない円盤状の蓋によって覆われる。
【0065】
恒温液循環部82は、液循環手段として恒温液Lを恒温液収容部81c内で循環させる。すなわち、恒温液循環部82は、液流発生手段として恒温液収容部81c内で恒温液Lの流れFを発生させる。恒温液循環部82は、循環流路82a、循環ポンプPおよび温度調節器Hを有する。循環流路82aは、連結部81e,81fにパイプ等の配管で連結して形成される恒温液Lの流路である。循環流路82aは、ジョイント部83a,83bを有する。ジョイント部83a,83b、液体収容部21aが攪拌位置に移送されると、図示しない駆動部によって駆動され連結部81e,81fに配管を伸ばして連結する。この連結によって、恒温液収容部81c内に恒温液Lを循環する循環流路82aが形成されるので、恒温液収容部81c内に恒温液Lの流れFを発生させることが可能となる。
【0066】
つぎに、実施の形態2の変形例3について説明する。図12は、本発明の実施の形態1および2の変形例3に係る反応部84の要部斜視図である。図13は、図12に示した反応部84の正面図である。反応部84は、液体収容部85aの底面のうち音波発生部材24と向かい合う領域B1が反応容器固定部材86の表面のうち音波発生部材24が取り付けられる領域A1に向けて突出している突出部85bを有する。この場合、突出部85b付近の液体収容部85aの表面は、向かい合う反応容器固定部材86の表面との間隔を大きくとるようにしているため、恒温液が流れるだけの流路を十分に確保している。このため、音波発生部材24の近傍に恒温液が流れ易くなる。なお、反応容器固定部材86の表面のうち音波発生部材24が取り付けられる領域および液体収容部85aの表面のうち音波発生部材24と向かい合う領域の両方の領域が他方の領域に向けて突出するようにしてもよい。
【0067】
つぎに、実施の形態2の変形例4について説明する。図14は、本発明の実施の形態2の変形例4に係る反応部93の要部断面図である。図14に示すように、変形例4では、互いに向かい合っている反応容器固定部材93bの表面と、液体収容部93aの表面との間隔であって、一方の領域が他方の領域に向けて突出している方向と平行な方向の間隔が、恒温液Lの流れ方向に沿って増加するようにしている。反応部93は、図14に示すように、反応容器固定部材93bと向かい合う液体収容部93aの底面が、斜めに形成されている。また、図15に示すように、反応部94は、液体収容部94aの底面と向かい合う反応容器固定部材94bの表面が斜めに形成されてもよい。さらにまた、図16に示すように、反応部95は、液体収容部95aと反応容器固定材95bとの互いに向かい合う表面のそれぞれが斜めに形成されてもよい。なお、恒温液Lの流れが恒温液収容槽41の径方向であるものを例示したが、これに限らず、実施の形態1と同様に恒温液Lの流れが恒温液収容槽41の周方向であってもよい。
【0068】
なお、本実施の形態1,2では、反応容器21は、その上面が、円環を周方向に沿って分割した形状をなし、外縁付近に外周に沿って並んだ複数の液体収容部21aを有し、液体収容部21aが、側壁と底壁とによって上部に開口を形成された中空4角柱形状をなすものを例示したが、これに限らず、少なくとも1つの液体収容部を有して混合液を収容することができればよい。例えば、側壁と底壁とによって上部に開口を形成された中空円柱形状の反応容器を用いてもよい。
【0069】
また、本実施の形態1,2では、液体収容部21aの底面に向かい合う位置に音波発生部材24を設けるものを例示したが、これに限らず、液体収容部21aの側壁の表面に向かい合う位置に音波発生部材24を設けてもよい。
【0070】
なお、本実施の形態1,2では、音波発生部材24として表面弾性波(SAW)素子を用いるものを例示したが、これに限らず、音波発生部材24として音波を発生させるものを用いればよい。
【符号の説明】
【0071】
1,2 分析装置
10,70 測定部
11 検体供給部
11a 検体容器
11b ラック
12 検体分注部
13 分析光学系
14 洗浄部
15 試薬テーブル
16 試薬分注部
20,35,36,40,80,81,84,93,94,95 反応部
23,41 恒温液収容槽
21,85 反応容器
21a,35a,36a,85a,93a,94a,95a 液体収容部
22,42,81a 反応容器保持機構
22a,35c,36c,42a,80a 反応容器固定部材
81b,86,93b,94b,95b 反応容器固定部材
22b,85b 突出部
22c 位置固定部
22d 下部固定部
22e 上部固定部
22f 固定部材
22g 駆動機構
23a 恒温槽
24,26 音波発生部材
24a,26a 基板
24b,26b,26c 振動子
25,50,82 恒温液循環部
25a,51,82a 循環流路
25b 供給口
25c 排出口
30,60 制御装置
31,61 制御部
32 入力部
33 表示部
34 記憶部
35d,36b 凹部
35b,36d 突起部
42b 通過口
51a 共通流路
52 第1流路
52a 第1排出側流路
52b 第1供給側流路
52f 径方向排出口
52g 径方向供給口
53 第2流路
53a 第2排出側流路
53b 第2供給側流路
54a 排出側切替弁
54b 供給側切替弁
61a 流路切替部
61b 流量変更部
81c 恒温液収容部
81d シール材
81e,81f 連結部
83a,83b ジョイント部
36d 突起部
A,B 領域
D1,D2 進行方向
F 流れ
L 恒温液
S 混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との混合液が収容される液体収容部を有する反応容器を保持し、音波によって前記液体収容部内の前記混合液を攪拌して反応させる分析装置において、
前記音波を発生する音波発生手段と、
表面に該音波発生手段が取り付けられ、該音波発生手段の近傍に前記液体収容部の表面を向かい合わせて前記反応容器を固定する反応容器固定部材と、
前記音波発生手段と前記液体収容部との間に恒温液を満たした状態で該恒温液を収容する恒温液収容部と、
前記恒温液収容部内で前記恒温液の流れを発生させる液流発生手段と
を有し、
前記反応容器固定部材の表面のうち前記音波発生手段が取り付けられる領域、あるいは前記液体収容部の表面のうち前記音波発生手段と向かい合う領域の少なくとも一方の領域が他方の領域に向けて突出していることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記反応容器固定部材は、前記液体収容部と前記音波発生手段との相対位置を固定する位置決め手段を有することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記液流発生手段は、前記恒温液収容部内で前記恒温液を循環させる液循環手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記恒温液収容部は、外形が円形状を有し、
前記反応容器固定部材は、複数の前記反応容器を円周に沿って並べて固定し、
前記反応容器固定部材を複数の前記反応容器が並んだ円周方向に沿って回転させる回転手段をさらに有し、
前記液流発生手段は、前記恒温液収容部内の攪拌位置に位置する前記液体収容部の近傍の前記恒温液に前記恒温液収容部の径方向の流れを発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記音波発生手段によって発生させる音波の強度の増加に伴って前記液流発生手段による前記恒温液の流動量を増加させることを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記音波の強度は、前記検体の分析項目に応じて設定されることを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記液流発生手段は、循環ポンプを有し、該循環ポンプによって前記流動量を変化させることを特徴とする請求項5または6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記音波発生手段は、圧電体からなる基板と、該基板上に設けられ音波を発生する振動子とを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項9】
前記音波発生手段は、圧電体からなる基板と、該基板上に設けられ音波を発生する第一の振動子とを有し、
前記液流発生手段は、前記音波発生手段の前記基板上に設けられ音波を発生する第二の振動子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項10】
前記第二の振動子は、近傍で前記液体収容部の表面と向かい合わない前記基板上の領域に設けられることを特徴とする請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
互いに向かい合っている前記反応容器固定部材の表面と、前記液体収容部の表面との間隔であって、一方の前記領域が他方の前記領域に向けて突出している方向と平行な方向の間隔が、前記恒温液の流れ方向に沿って増加することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−153918(P2011−153918A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15724(P2010−15724)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】