説明

分枝状ポリ(ヒドロキシ酸)およびその製造方法

ヒドロキシ酸に相当する少なくとも80重量%の単位を含む、ヒドロキシ酸の重縮合によるポリマーの製造方法であって、それによれば3次元ポリマー網状構造の形成を生み出すことができる少なくとも1つの多官能性リアクタントがヒドロキシ酸と混合され、かつ、それによれば混合物が網状構造の形成を生み出すためにすべて好適である温度および圧力条件に、ならびに継続時間の間、さらされる方法。このような方法によって得られるポリ(ヒドロキシ酸)(PHA)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される、2009年4月2日出願の仏国特許出願第0952113号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、分枝状ポリ(ヒドロキシ酸)(PHA)、その製造方法、およびこのようなPHAをベースとする少なくとも1つの層を含むフィルムまたは中空体に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロキシ酸はポリマーを形成するために重縮合することができ、それらのうちの幾つか(グリコール酸(GA)、乳酸(LA)など)は、それらがバイオ由来であるという性質のために近年再び関心が持たれている主題であった。
【0004】
ポリグリコリド(PGA)の従来の合成は、ポリラクチドの合成と同じ基本原理を採用している。先ず、グリコール酸の重縮合が低分子量オリゴマーを得るために実施される。次に、高い温度および低い圧力で、このオリゴマーは、主として環状ジエステル、グリコリドを蒸留することを目的として解重合される。超純粋(>99.90%)グリコリドを得るために比較的多数の精製工程がそれに続き、超純粋グリコリドは次に(たとえば、カプロラクトンモノマーの重合と類似の手順に従って)開環重合にかけられる。得られるポリマーは直鎖状であり、高分子量を有する。その原価は、解重合反応およびグリコリドの精製の費用のために高い。
【0005】
実際に、この方法の第1工程は、十分に高い分子量を得ることを一般に可能にせず(これが、それらがオリゴマーとして上述された理由である)、それ故にその後の工程を用いる必要がある。(非特許文献1)は、酢酸Zn(水和または非水和、前者が好ましい)などの特定の触媒の存在下で溶融重縮合によってより高い分子量のPGAを得ることを可能にする方法を記載している。その中で報告されている分子量は比較的高いが、その中で記載された実施例を再現し、(下に記載される手順に従って)溶融粘度を測定した、本出願人は、(ほぼ1Pa・sの)非常に低い値を見いだし、得られた分子が直鎖状であるという事実に関連すると思われる、ほとんど無視できる溶融強度を観察した。
【0006】
しかし、溶融強度は、次のタイプすなわちフィルムのブロー成形、シートの押出成形または押出−ブロー成形による多層ボトルの製造の加工操作にとって不可欠である。PGAは、EVOHまたはPVDCのバリア性に匹敵するバリア性を有するので、PET/PGA/PETボトル構造におけるその使用は、たとえばビールなどの酸素に敏感である炭酸飲料を包装するために非常に有利であろう。
【0007】
それの構造を変性するために、ある種のポリエステルの重縮合媒体に多官能性試剤を加えることは文献から公知である。こうして、(非特許文献2)は、分枝PBS(ポリ(ブチレンスクシネート))を形成するためにコハク酸と1,4−ブタンジオールとの重縮合媒体におけるトリメチロールプロパン(TMP)の使用を記載している。本出願人は、PGAおよびPLAを生成するためにこの教示をGAおよびLAなどのヒドロキシ酸に適用することを試みてきたが、前述のタイプの加工操作にとって十分な溶融強度を有するポリマーを得ることに成功しなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Takahashiら、Polymer,41(2000),8725−8728:Melt/solid polycondensation of glycolic acid to obtain high molecular weight poly(glycolic acid)
【非特許文献2】Kimら、Journal of Applied Polymer Science,Vol.80,1388−1394(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、この問題を解決すること、および上記のような加工操作を特に可能にする改善された溶融強度を有する重縮合ヒドロキシ酸ポリマー(の製造方法)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、ヒドロキシ酸に相当する少なくとも80重量%の単位を含む、ヒドロキシ酸の重縮合によるポリマーの製造方法であって、それによれば3次元ポリマー網状構造の形成を生み出すことができる少なくとも1つの多官能性リアクタントがヒドロキシ酸と混合され、かつ、それによれば混合物が網状構造の形成を生み出すためにすべて好適である温度および圧力条件に、ならびに好適である継続時間の間、さらされる方法に関する。
【0011】
このようにして、重縮合中に得られるオリゴマーは、分子量を増加させ、公知の従来型直鎖状ポリグリコリド(PURAC製のPGA)と比較して新規な溶融粘度挙動を提供するという効果を有する、前記網状構造を形成するために化合させられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】E1、E2、E3、PGAおよびPETについての動的粘度の測定結果である。
【図2】E1、E4、E5、E6およびPETについての動的粘度の測定結果である。
【図3】E7/1、E7/2およびE7/3についての動的粘度の測定結果である。
【図4】E8、E9およびPGAについての動的粘度の測定結果である。
【図5】E10/1およびE10/2についての動的粘度の測定結果である。
【図6】E11/1およびE11/2についての動的粘度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、重縮合することができる、すなわち縮合(水の除去でのモノマーの連鎖付加)によって高分子を形成することができるすべてのヒドロキシ酸に適用することができる。それは、特にグリコール酸(GA)および乳酸(LA)で、良好な結果を与える。一般に、第一級アルコールを有するヒドロキシ酸が、より反応性であるので好ましい。グリコール酸(GA)が非常に特に好ましい。本方法の一変形においては、ヒドロキシ酸は、化石原材料とは対照的に、バイオ由来である、すなわち天然のおよび再生可能な原材料に由来する。バイオ由来のヒドロキシ酸の使用は、「環境にやさしい」ポリマー、すなわち再生可能な原材料から合成されたポリマーの合成を可能にする。
【0014】
本発明による方法は、最初のヒドロキシ酸に相当する少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%の単位を含有するポリマーの製造に好適である。
【0015】
本発明によれば、多官能性分子(多官能性有機化合物)が、ヒドロキシ酸にその縮合前に加えられ、これらの分子は、反応部位で構成される結節点によって互いに結合した酸のオリゴマーを一般にベースとする3次元網状構造の形成をもたらすことができる。用語「多官能性」は、これらの分子が少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、あるいは4つもの反応性基を含有することを意味すると理解される。
【0016】
3次元網状構造を生成することができるために、加えられる分子は一般に、ヒドロキシ酸の酸官能基と反応することができる官能基、ヒドロキシ酸のアルコール官能基と反応することができる官能基、および形成しつつあるオリゴマーを互いに反応させる官能基を含有する。所与の官能基は、2つあるいは3つものこれらのタイプの反応に関与してもよいこと、および、さらに、これらの官能基が1つのおよび同じリアクタント上に存在してもよい(変形1)か、または混合物として使用される異なるリアクタント上に存在してもよい(変形2)ことに留意されるべきである。
【0017】
第1変形の関連内で良好な結果を与えるリアクタントの例は、シラン官能基に加えて、ヒドロキシ酸の酸官能基とおよびヒドロキシド官能基と反応することができる少なくとも2つのその他の基か、新規の酸官能基と反応することができる新規の活性官能基を生成しながら酸またはヒドロキシドと反応することができる少なくとも1つの基(たとえばエポキシド基)かのどちらかを有する多官能性シランである。シランの利点は、それらが縮合水と反応して−Si−O−結合の網状構造を生み出すことができ、こうしてポリマーの分岐に関与できることである。良好な結果を与えるこの種のシランは、エポキシシラン、特に、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0018】
第1変形の関連内で良好な結果を与えるその他のリアクタントは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)またはエポキシ化大豆油もしくはエポキシ化アマニ油などのエポキシ化油などのポリエポキシドである。
【0019】
第2変形(活性官能基が、異なるタイプの少なくとも2つの分子上に存在する)の関連内で良好な結果を与えるリアクタントの例は、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリ酸との混合物であり、それらのうち、ポリオールのまたはポリ酸の少なくとも1つが三官能性、好ましくは四官能性である。有利には、ポリオールおよびポリ酸はそれぞれ、少なくとも三官能性、たとえば四官能性である。良好な結果を与えるアルコールは、エチレングリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールであり、良好な結果を与える酸の例は、リンゴ酸、コハク酸、トリカルバリリック酸およびベンゼンテトラカルボン酸またはブタンテトラカルボン酸である。特にGAおよびLAと、良好な結果を与える混合物は、ペンタエリスリトール(=テトラオール)とブタンテトラカルボン酸との混合物である。特にGAおよびLAと、良好な結果を与える別の混合物は、トリメチロールプロパンとトリカルバリリック酸との化学量論的混合物である。
【0020】
リアクタントの量は一般に、機能性の観点からそれらの「有効性」に合わせられ、低すぎる架橋は流動性でありすぎるポリマーをもたらし、高すぎる架橋はもはや溶融加工することができないポリマーをもたらす。実際には、良好な結果は、GAまたはLAの1モル当たり数モル%の活性官能基を使用することによってGAおよびLAで得られた。一般に、リアクタントの量は、GAまたはLAの1モル当たり約1〜100ミリモルの、ほとんどの場合2〜50ミリモルの、特に3〜35ミリモルの、たとえば約3〜12ミリモルの活性官能基の量である。選択されるリアクタントに依存して、リアクタントの量は、GAまたはLAの約0.2〜9重量%、特に0.5〜6重量%、たとえば、リアクタントの特質に依存して、約0.7%あるいは2.5%の量であってもよい。
【0021】
多官能性リアクタントは、どの公知の方法でヒドロキシ酸に加えられてもよい。ヒドロキシ酸は一般に水溶液として販売されているので、リアクタントを、場合により加熱によって、この溶液に溶解させることが一般に有利である。
【0022】
好ましくは、重縮合反応は、少なくとも一部、反応が妥当な時間で行われるほど十分に高いが、分解(および関連した着色問題)を避けるために、高すぎない温度で実施される。重縮合反応の継続時間は決定的に重要ではなく、温度に応じて、約2〜24時間、ほとんどの場合約5〜12時間である。実際には、良好な結果は、160〜240℃の温度でグリコール酸および乳酸で得られた。特に、LAについては、温度は有利には170〜230℃、好ましくは180〜210℃である。GAについては、温度は有利には200℃より上で240℃未満、特に205〜230℃であり、たとえば215または220℃付近である。このような温度は、反応中に、得られるポリマーの結晶化が多くの場合に目撃されるようにそれらの溶融/結晶化範囲内にある。重縮合反応中の温度が低すぎる場合、得られるポリマーが有する溶融粘度および溶融強度は、フィルムのブロー成形、シートの押出成形または押出−ブロー成形による多層ボトルの製造というタイプの加工操作にとって望ましいものと比べて低すぎるであろう。
【0023】
本方法の第1変形においては、いったん重縮合温度に達すると、それは重縮合工程の全体にわたってできるだけ一定に保たれ、それは単一温度平坦域に相当する。本発明によれば、「温度平坦域」という表現は、温度が少なくとも5分間実質的に一定に保たれることを意味する。
【0024】
第2変形においては、重縮合工程中の温度プロフィールは、それが2つ以上の温度平坦域を含むようなものであってもよい。好ましくは、様々な温度平坦域は160〜240℃である。特に、LAについては、様々な温度平坦域は、有利には170〜230℃、好ましくは180〜210℃の範囲内である。GAについては、様々な温度平坦域は、有利には200℃より上で240℃未満、特に205〜230℃の範囲内である。この第2変形においては、様々な平坦部間の温度差は5〜30℃で変わってもよく、特に約10〜20℃であってもよい。
【0025】
2つの先行する変形と組み合わせることができると思われる、本方法の別の変形においては、重縮合工程は、より低い温度、特に、重縮合工程中に達した最高の温度平坦域の温度より10〜70℃低い温度、たとえば約150〜190℃の、好ましくは160〜180℃の温度の平坦域がその後続いてもよいし、またはその平坦域に終わってもよい。この第3変形においては、最低温度平坦域は通常、1〜24時間、維持される。
【0026】
非常に特に好ましくは、重縮合は、オリゴマーの形成および反応水の除去に有利に働くために、ならびに温度が上昇するときにモノマーの蒸留を防ぐために、(ポリマーの溶融/結晶化温度未満の)より低い温度で開始される。手順の一方法は、得られることが望まれるポリマーの溶融温度より高い値へ温度を変化させる前に、GAについては100〜120℃の、およびLAについては50〜80℃の温度でオーブン中に、数時間、たとえば5〜100時間、特に12〜80時間反応混合物を放置することにある。オーブンは通常通風オーブンである。
【0027】
それ故に、本発明の好ましい一変形によれば、ポリマーは半結晶性ポリマーであり、重縮合は、ポリマーの溶融/結晶化温度未満の温度で数時間にわたって開始され(重縮合の段階A)、次に、前記ポリマーが結晶化するまでポリマーの溶融/結晶化温度に近い温度で続けられる(重縮合の段階B)。
【0028】
PGA(またはLAの単一異性体から得られるPLA)などの半結晶性ポリマーの場合は、これらは非常に速く、多くの場合重縮合反応が終わる前にさえも、結晶化することが観察された。この場合に、本出願人は、固体ポスト縮合(SPC)工程と言われるものを実施することが好ましいことを観察した。これは、固体を、そのガラス転移温度より上だがその溶融/結晶化温度より下の温度で、数時間または場合によっては数日間、典型的には真空下に、放置することによって行われてもよい。典型的には、このようなSPC工程は、140〜200℃の、特に150〜190℃の温度で、たとえば約170〜180℃でおよび10ミリバール未満の圧力で実施されてもよい。ヒドロキシ酸の性質、リアクタントの性質、それらの割合および継続時間、重縮合工程中の温度および圧力に応じて、SPC工程の継続時間は、数時間〜1週間、特に6〜150時間、たとえば約10〜60時間であってもよい。SPC工程中の温度が高すぎると、ポリマーの熱分解のための着色が生じる可能性もあることが留意されるべきである。他方では、継続時間が長くても、得られるポリマーに悪影響はない。
【0029】
好ましくは、重縮合の段階BおよびSPC工程は、反応水を蒸発させ、水が形成中のポリマー鎖を加水分解するのを防ぐために真空下で行われる。非常に特に好ましくは、段階Bは大気圧で開始され、真空は、ほぼ数ミリバール、特に10ミリバール未満、たとえば2〜8ミリバールの圧力が達成されるまで徐々に適用される。SPC工程は、約0.01〜10ミリバールの、特に0.05〜5ミリバールの、たとえば約0.1ミリバールの圧力で典型的には実施される。
【0030】
真空下の熱処理またはSPC工程の代わりに、得られた固体は、マイクロ波装置において、好ましくはそれらが固体の溶融をもたらすような条件下で、ポスト縮合にかけられてもよい。実際には、350Wの電力で約10〜30分の継続時間が良好な結果を与えた。
【0031】
本発明の方法においては、ミリング工程が、重縮合工程とSPC工程との間で有利には実施される。このようなミリング工程は、当業者に公知のあらゆる方法、たとえばFRITSCH製のPulverisette(登録商標)などの回転ミルでのミリングによって実施されてもよい。一変形においては、造粒工程が、SPC工程を顆粒で実施するために溶融相重縮合の終わりに実施されてもよい。この造粒は、空気流中で冷却される棒上で反応器の出口でとりわけ実施され、次に造粒機に導入されてもよい。このような造粒またはミリングは、重縮合工程によって生じる固体の表面積を増加させ、媒体中に存在する残留水のより容易な蒸発を可能にするので有利である。さらに、ミルにかけたまたは顆粒状の生成物は取り扱うのが容易である。
【0032】
本発明の方法においては、重縮合触媒が反応媒体に場合により加えられてもよい。このような触媒は、0.01〜2%の、特に約0.1〜1%の量で通常加えられる。このような重縮合触媒は当業者によく知られており、たとえば、塩化スズ(II)、オクタン酸第一スズ、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛およびメタンスルホン酸から選択されてもよく、メタンスルホン酸が好ましい。
【0033】
本発明の方法においては、酸化防止剤が反応媒体に場合により添加されてもよい。好ましくは、このような酸化防止剤は、ヒドロキシ酸重縮合工程とSPC工程との間に添加される。このような酸化防止剤は、媒体の約0.01〜1重量%、特に約0.1〜0.5重量%の量で典型的には添加される。このような酸化防止剤は当業者によく知られており、たとえば、ヒンダードフェノールおよびヒンダードホスファイトから選択されてもよい。CHEMTURAによってULTRANOX 626(登録商標)という名で販売されているビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトおよびADEKA PALMAROLEによってADK STAB PEP 36(登録商標)という名で販売されているビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが特に好ましい。
【0034】
本発明はまた、上記の方法によって得ることができるポリ(ヒドロキシ酸)(PHA)に関する。このために、それは、多官能性分子によって3次元網状構造へと架橋されたポリ(ヒドロキシ酸)鎖を含むPHAに関する。本発明のポリマーは、少なくとも80重量%のヒドロキシ酸に相当する単位、特にグリコール酸または乳酸に相当する単位から典型的には構成される。ヒドロキシ酸に相当するこれらの単位は一般に、直鎖状オリゴマー鎖の形態で存在し、前記オリゴマー鎖は、1つ以上の多官能性有機化合物によって3次元網状構造で互いに結合している。本発明のポリマーは好ましくは、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%のヒドロキシ酸に相当する単位を含む。本発明のポリマーは好ましくは、直鎖状オリゴマー鎖の形態で少なくとも95%のポリ(ヒドロキシ酸)(好ましくはグリコール酸または乳酸)、およびこれらの線状鎖を3次元網状構造で結合する1つ以上の多官能性有機化合物から構成される。本発明のポリマーは好ましくは、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%の、それぞれグリコール酸または乳酸に相当する単位を含有するポリグリコリドまたはポリラクチドである。
【0035】
上記の方法によって得ることができるPHAの構造は、使用される多官能性有機化合物の性質によって決まる。したがって、いかなる一理論にも制約されることを望むものではないが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)またはエポキシ化油などのポリエポキシドの存在下に本発明の第1変形に従って得られるPHAは、重縮合したヒドロキシ酸でできた2つの直鎖状オリゴマー鎖が1つの元のエポキシド官能基に結合しているオープン分枝状構造を示すと思われる。エポキシシランの存在下に、本発明の第1変形に従って得られるPHAは、星形構造を示すと思われる。具体的には、シラン官能基は、縮合水と反応して−Si−O−結合の網状構造を生み出しうる。重縮合したヒドロキシ酸でできた直鎖状オリゴマー鎖はそれ故、−Si−O−結合の網状構造から構成される結節点の周りに放射状に(または「星形」に)配置されるであろう。最後に、少なくとも1つが三官能性であるポリオールおよびポリ酸の存在下に本発明の第2変形に従って得られるPHAは、ループを含む構造を示すと思われ、各ループは重縮合したヒドロキシ酸と、1分子のポリオールと1分子のポリ酸とでできた少なくとも2つの直鎖状オリゴマー鎖を含み、これらの多官能性分子はループ内のオリゴマー鎖間に結合を作るとともにその他の鎖および/またはループへの分岐点に相当する、
【0036】
一般に、これらのPHAは、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)などの極めて活性な溶媒中でさえ、溶液にすることが困難であるか場合によっては不可能であるポリマーである。
【0037】
PHAは一般に、非ニュートンである溶融状態、すなわち低い速度勾配では(たとえば、ARES測定中に1〜100ラジアン/秒(rad/s)の周波数では)、それらの粘度が一定ではないが、周波数が上がると低下する溶融状態における粘弾性挙動で特徴づけられる。典型的には、240℃で、この粘度は、100ラジアン/秒でほぼ数十または場合によっては数百のPa・s、および1ラジアン/秒でほぼ数万(または場合によっては数十万)のPa・sである。通常、したがって、240℃で、100ラジアン/秒で約50〜500Pa・s、そして1ラジアン/秒で約1000〜60,000Pa・sの粘度を得ることが可能である。
【0038】
本発明は最後に、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1つの層と好ましくは組み合わせた、上記のようなヒドロキシ酸ポリマーの少なくとも1つの層を含むフィルムまたは中空体に関する。たとえば、上記のようなヒドロキシ酸ポリマーは、前記ヒドロキシ酸ポリマー、特にPGAもしくはPLAの少なくとも1つの層と、熱可塑性ポリエステル、特にPETもしくはPENの少なくとも1つの層とを含む多層容器の製造のために使用されてもよい。
【0039】
本発明は、以下の実施例によって非限定的に例示される。これらの実施例においては、動的粘度測定は、示された(温度および速度勾配の)条件下に、ARES流動計を用いて実施された。それらから生じるグラフは、周波数(ラジアン/秒単位のF)の関数としての粘度(Pa・s単位の、エータ)の変化を例示する。
【実施例】
【0040】
実施例1:本発明外の比較例
17.2gの純(99%)固体グリコール酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、前記フラスコを110℃で一晩、すなわち約15〜17時間通風オーブン中に入れた。
【0041】
翌日、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた:
大気圧で180℃(1時間)
200ミリバールで200℃(1時間)
80ミリバールで200℃(30分)
60ミリバールで200℃(1時間)
3ミリバールで200℃(2時間)。
【0042】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化し、次に190℃でおよび3ミリバール下で一晩ポスト縮合工程にかけた。
【0043】
実施例2:本発明外の比較例
この実施例の目的は、上に説明されたTakahashiの教示を再現することである。
【0044】
17.1gの純(99%)固体グリコール酸および0.1gの酢酸Zn二水和物を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し;全体アセンブリを、触媒を(混合しながら)溶融させるために通風オーブン中に入れ、110℃で一晩放置した。
【0045】
翌日、ほとんど完全に結晶化した混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で190℃(1時間)(溶融)
200ミリバールで190℃(1時間)
40ミリバールで190℃(4時間)(結晶化の開始)
3ミリバールで190℃(1時間)
完全な溶融のために20分間240℃大気圧
3ミリバールで190℃(22時間)(速い結晶化)。
【0046】
ARES測定は、不十分な溶融強度を有する非常に流動的なポリマーを示唆する、100ラジアン/秒で0.6Pa・sの、および1ラジアン/秒で3.2Pa・sの動的粘度を与えた。
【0047】
実施例3:GAにエポキシシランを添加した、本発明による試験
17.77gの純(99%)固体グリコール酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、次に7.7gの水を加え、この酸を、溶解を促すために50〜80℃で加熱することによって水に溶解させた。
【0048】
次に、0.46gのグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(すなわちGAの約2.6重量%またはGA1モル当たり8.3ミリモルのエポキシド官能基および25ミリモルの(アルコール官能基に加水分解することができる)アルコラート官能基)を加えた。すべてのものが溶解し、得られた溶液は完全に無色透明であった。
【0049】
混合物を110℃で一晩通風オーブン中に入れた。
【0050】
翌日、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で205℃(1時間)
200ミリバールで205℃(1時間)
80ミリバールで205℃(30分)
60ミリバールで205℃(1時間)
3ミリバールで205℃(2時間)。
【0051】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。次に、それを205℃でおよび3ミリバール下で一晩ポスト縮合工程にかけた。
【0052】
動的粘度測定を、実施例3(E3)からの生成物に関して、ならびにまたカウンター例1(E1)およびカウンター例2(E2)の生成物に関して、PGAの商用グレード(PURAC製のポリグリコリドPURASORB PG20)に関して、およびPETの標準グレードに関して(PETについては270℃である以外は生成物すべてについて240℃で)実施した。その結果を添付の図1に例示する。
【0053】
それにおいて、実施例3による生成物だけが非ニュートン挙動を示すことを認めることができる。
【0054】
実施例4:GAにテトラオールをおよびテトラカルボン酸を添加した、本発明による試験
17gの純(99%)固体グリコール酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、次に7.5gの水を加え、この酸を、50〜80℃で加熱することによって水に溶解させた。
【0055】
次のもの、すなわち0.087gのペンタエリスリトール(すなわちGAの0.5重量%またはGA1モル当たり11.5ミリモルのOH官能基)および0.15gのブタンテトラカルボン酸(すなわちGAの0.9重量%またはGA1モル当たり11.5ミリモルのCOOH官能基)を次に順次加えた。
【0056】
すべてのものが溶解し、得られた溶液は完全に無色透明であった。
【0057】
混合物を110℃で一晩通風オーブン中に入れた。
【0058】
翌日、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で205℃(1時間)
200ミリバールで205℃(1時間)
80ミリバールで205℃(30分)
60ミリバールで205℃(1時間)
3ミリバールで205℃(2時間)。
【0059】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。次に、それを205℃でおよび3ミリバール下で一晩ポスト縮合工程にかけた。
【0060】
実施例5:GAにBADGEを添加した、本発明による試験
17.1gの純(99%)固体グリコール酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、次に0.9gのBADGE(すなわちGAの5.2重量%またはGA1モル当たり23.5ミリモルのエポキシド官能基)を加えた。
【0061】
全体アセンブリを、溶融および混合するためにオーブン中に入れ、次に混合物を110℃で一晩通気オーブン中に放置した。
【0062】
翌日、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で215℃(1時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
3ミリバールで215℃(2時間)。
【0063】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。次に、それを180℃でおよび3ミリバール下で一晩ポスト縮合工程にかけた。
【0064】
実施例6:LAにテトラオールおよびテトラカルボン酸を添加した、本発明による試験
80%の濃度(水の4g当たり16gの乳酸)での水溶液の20gの乳酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、連続して以下のものすなわち0.136gのペンタエリスリトール(すなわちLAの0.85重量%またはLAの1モル当たり22.5ミリモルのOH官能基)および0.232gのブタンテトラカルボン酸(すなわちLAの1.45重量%またはLAの1モル当たり22.5ミリモルのCOOH官能基)を順次加えた。
【0065】
すべてのものを可溶化させ、得られた溶液を50℃で一晩(1.4gの損失)、次に75℃で一晩(2.3gの損失)、次に70℃で1週間(4.21gの損失)非通気オーブン中に入れた。
【0066】
このように処理した混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で205℃(3時間)
800ミリバールで205℃(1時間)
600ミリバールで205℃(1時間)
200ミリバールで205℃(1時間)
80ミリバールで205℃(30分)
60ミリバールで205℃(30分)
20ミリバールで205℃(30分)
8ミリバールで205℃(1時間)。
【0067】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。次に、それを160℃でおよび8ミリバール下で一晩ポスト縮合工程にかけた。
【0068】
動的粘度測定を、実施例4〜6からの生成物(曲線E4、E5およびE6)に関して、ならびにまたPETの標準グレードに関して、およびカウンター例1(E1)に関して(PETについては270℃である以外は、生成物すべてについて240℃で)実施した。その結果を添付の図2に例示する。
【0069】
それにおいて、実施例4〜6による生成物だけが非ニュートン挙動を示すことを認めることができる。
【0070】
実施例7:GAにトリオールおよび三酸を添加した、本発明による試験
765gの純(99%)固体グリコール酸を1.5リットルの反応器に導入し、それに2.31gのトリメチロールプロパン(すなわちGAの0.3重量%またはGA1モル当たり5.1ミリモルのOH官能基)および3.03gのトリカルバリリック酸(すなわちGAの0.4重量%またはGA1モル当たり5.1ミリモルのCOOH官能基)を加えた。次に、270gの水を加えた。混合物を、完全に無色透明の溶液が得られるまで、撹拌しながら、50〜80℃で加熱した。
【0071】
次に2.31gのメタンスルホン酸(すなわち0.3%)を重縮合触媒として加えた。媒体を、均質化するために撹拌し、次に混合物を、撹拌しながらおよび窒素の流れを伴って、反応器中110〜115℃で64時間加熱した。
【0072】
次に、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で215℃(1時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
30ミリバールで215℃(1時間)
8ミリバールで215℃(10分)
2.5ミリバールで215℃(2時間)
2.5ミリバールで215℃(一晩)。
【0073】
反応器を次に周囲温度に冷却した。反応器中で結晶化した生成物を、FRITSCH製のPulverisette(登録商標)ミルで約0.5mmの直径を有する顆粒の形態にミリングした。
【0074】
得られた粉末を反応器に再導入し、生成物を0.1ミリバール下で170℃で138時間固体ポスト縮合工程にかけた。
【0075】
動的粘度測定を、固体ポスト縮合工程前(E7/1)ならびに固体ポスト縮合の68時間後(E7/2)および138時間後(E7/3)の生成物に関して(245℃で)実施した。これらの測定の結果を添付の図3に例示する。
【0076】
実施例8:GAにトリオールおよび三酸を添加した、本発明による試験
20gの純(99%)固体グリコール酸を80mlのBUCHI丸底フラスコに導入し、それに0.06gのトリメチロールプロパン(すなわちGAの0.3重量%またはGA1モル当たり5.1ミリモルのOH官能基)および0.08gのトリカルバリリック酸(すなわちGAの0.4重量%またはGA1モル当たり5.1ミリモルのCOOH官能基)を加えた。次に、7.07gの水を加えた。混合物を、完全に無色透明の溶液が得られるまで、撹拌しながら、50〜80℃で加熱した。
【0077】
次に0.06gのメタンスルホン酸(すなわち0.3%)を重縮合触媒として加えた。混合物を、均質化するために撹拌した。
【0078】
混合物を次に、110℃で一晩通気オーブン中に入れた。
【0079】
翌日、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で215℃(1時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
30ミリバールで215℃(1時間)
8ミリバールで215℃(10分)
3ミリバールで230℃(2時間)
3ミリバールで170℃(1時間30分)。
【0080】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。生成物を次に2.5ミリバールで、22℃で一晩放置した。
【0081】
次に、生成物をミリングし、次に0.1ミリバール下で、170℃で72時間固体ポスト縮合工程にかけるためにBUCHI丸底フラスコに再導入した。
【0082】
動的粘度測定を、実施例8からの生成物(曲線E8)に関して、ならびにまたPGAの商用グレード(PURAC製のポリグリコリドPURASORB PG20)に関して(生成物E8については245℃で、PURAC製のPGAについては240℃で)実施した。その結果を添付の図4に例示する。
【0083】
それにおいて、実施例8による生成物だけが非ニュートン挙動を示すことを認めることができる。
【0084】
実施例9:GAにトリオールおよび三酸を添加した、本発明による試験
この試験は、加えられたトリオールおよび三酸の量が半分にされたこと、すなわち0.03gのトリメチロールプロパン(すなわちGAの0.15重量%またはGA1モル当たり2.6ミリモルのOH官能基)および0.04gのトリカルバリリック酸(すなわちGAの0.2重量%またはGA1モル当たり2.6ミリモルのCOOH官能基)であることを除いて、実施例8と同じ条件下に実施した。
【0085】
230℃および3ミリバールで2時間後に、生成物を(実施例8のように170℃および3ミリバールで1時間30分、その後22℃および2.5ミリバールで一晩ではなく)180℃および3ミリバールで一晩放置した。
【0086】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。生成物をミリングし、次に0.1ミリバール下で180℃で53時間固体ポスト縮合工程にかけるためにBUCHI丸底フラスコに再導入した。
【0087】
動的粘度測定を、実施例9からの生成物(曲線E9)に関して245℃で実施した。その結果を添付の図4に例示する。
【0088】
それにおいて、実施例9による生成物が非ニュートン挙動を示すことを認めることができる。
【0089】
実施例10:GAにエポキシシランを添加した、本発明による試験
255gの純(99%)固体グリコール酸を1.5リットルの反応器に導入した。次に、90gの水を加え、酸を、溶解を促すために、撹拌しながら、50〜80℃で加熱することによって水に溶解させた。得られた溶液は完全に無色透明であった。
【0090】
次に、3.83gのグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(すなわちGAの1.5重量%またはGA1モル当たり4.8ミリモルのエポキシド官能基および14.5ミリモルのアルコラート官能基)、次に0.77gのメタンスルホン酸(すなわち0.3%)を重縮合触媒として加え、媒体を、均質化するために撹拌した。
【0091】
混合物を、撹拌しながらおよび窒素の流れを伴って、反応器中110〜115℃で65時間加熱した。
【0092】
次に、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で215℃(1時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
30ミリバールで215℃(1時間)
8ミリバールで215℃(10分)
2.5ミリバールで215℃(2時間)
2.5ミリバールで170℃(一晩)。
【0093】
翌日、反応器を周囲温度に冷却した。反応器中で結晶化した生成物を、FRITSCH製のPulverisette(登録商標)ミルで約0.5mmの直径を有する顆粒の形態にミリングした。
【0094】
得られた粉末を反応器に再導入し、生成物を0.1ミリバール下で、170℃で66時間固体ポスト縮合工程にかけた。
【0095】
動的粘度測定を、固体ポスト縮合工程前(E10/1)および固体ポスト縮合(66時間)後(E10/2)の生成物に関して(240℃で)実施した。これらの測定の結果を添付の図5に例示する。
【0096】
実施例11:GA/LA(95/5)混合物にトリオールおよび三酸を添加した、本発明による試験
95/5GA/LA混合物に相当する、19.09gの純(99%)固体グリコール酸および水中の80%溶液としての1.25gの乳酸を、80mlのBUCHI丸底フラスコに導入した。次のものすなわち0.06gのトリメチロールプロパン(すなわちGA/LA混合物の0.3重量%またはGA/LA混合物1モル当たり5.1ミリモルのOH官能基)および0.08gのトリカルバリリック酸(すなわちGA/LA混合物の0.4重量%またはGA/LA混合物1モル当たり5.1ミリモルのCOOH官能基)、次に7gの水を加えた。混合物を、完全に無色透明の溶液が得られるまで、撹拌しながら、50〜80℃で加熱した。
【0097】
次に0.06gのメタンスルホン酸(すなわち0.3%)を重縮合触媒として加えた。混合物を、均質化するために撹拌した。
【0098】
混合物を110℃で約40時間通気オーブン中に入れた。
【0099】
次に、混合物を以下の温度および圧力プロフィールにかけた。
大気圧で210℃(1時間)
200ミリバールで210℃(1時間)
80ミリバールで210℃(30分)
60ミリバールで210℃(1時間)
30ミリバールで210℃(1時間)
8ミリバールで210℃(10分)
5ミリバールで210℃(2時間)
5ミリバールで170℃(1時間30分)
3ミリバールで160℃(一晩)。
【0100】
生成物は、BUCHI丸底フラスコ中で結晶化した。
【0101】
翌日、反応器を周囲温度に冷却した。生成物をミリングし、次に0.1ミリバール下で、160℃で114時間固体ポスト縮合工程にかけるためにBUCHI丸底フラスコに再導入した。
【0102】
動的粘度測定を、固体ポスト縮合工程のそれぞれ44時間後(E11/1)および114時間後(E11/2)の生成物に関して(220℃で)実施した。これらの測定の結果を添付の図6に例示する。
【0103】
実施例12:引張強度
試験検体の製造前に、押出機(DSM)を245℃に予熱し、(亜鈴型の)引張試験検体金型を80℃に加熱し、射出ラムを220℃に加熱した。
【0104】
CHEMTURA製の0.15%のULTRANOX 626(登録商標)安定剤を、前もって真空下で、80℃で2時間乾燥された、実施例7に従って製造された(138時間の固体ポスト縮合工程後の)20gのポリグリコリドに添加した。混合物を、押出機で約4分間20rpmの回転速度で混練した。混合物を次に、引張試験検体を形成するために射出成形した。射出成形圧力は5バールであり、保持圧力は10秒間7バールであった。試験検体を80℃で、真空下で2時間乾燥させ、水分を避けて貯蔵した。試験検体は、ほぼ5mmの幅およびほぼ2mmの厚さを有した。
【0105】
この手順を、直鎖状PGAの商用グレード(PURAC製のポリグリコリドPURASORB PG20)で繰り返した。
【0106】
これらの試験検体の引張強度は、Multisens伸縮計を備えたZWICK万能試験機(モデルZ020)を用いて測定した。この機械のジョー間の間隙は58mmであった。Multisens伸縮計のアーム間の間隙(試験中の歪みを測定することを可能にする変位センサ)は25mmであった。測定は22℃の温度で実施した。
【0107】
結果を次表に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
用語「Mod」は、0.05〜0.25%歪み間のセグメント弾性率、すなわち0.05〜0.25%歪み間の曲線の勾配を意味する。この値が高ければ高いほど、材料はより剛性である。
【0110】
用語「σRupt」は、試験検体が壊れる直前の応力(試験検体の力/試験検体の断面積)を意味する。この値が高ければ高いほど、材料はより耐破裂性である。
【0111】
用語「εRupt(伸縮)」は、試験検体が壊れるときのMultisensのアーム間の間隙(Multisensの変位(mm)/25mm×100)によって測定される%単位の歪みを意味する。この値が高ければ高いほど、材料は破裂前により変形しやすい。
【0112】
参照により本明細書に援用される特許および特許出願のいずれかの開示が、用語を不明確にする可能性がある程度に本開示と矛盾する場合、本開示が優先するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ酸に相当する少なくとも80重量%の単位を含む、ヒドロキシ酸の重縮合によるポリマーの製造方法であって、それによれば3次元ポリマー網状構造の形成を生み出すことができる少なくとも1つの多官能性リアクタントがヒドロキシ酸と混合され、かつ、それによれば前記混合物が前記網状構造の前記形成を生み出すためにすべて好適である温度および圧力条件に、ならびに好適である継続時間の間、さらされる方法。
【請求項2】
前記リアクタントが、エポキシシランおよびポリエポキシドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リアクタントが、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよびビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リアクタントが、ポリオールのおよびポリ酸の少なくとも1つが三官能性である、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリ酸との混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リアクタントが、ペンタエリスリトールとブタンテトラカルボン酸との化学量論的混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リアクタントが、トリメチロールプロパンとトリカルバリリック酸との化学量論的混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが半結晶性ポリマーであり、そして前記重縮合が前記ポリマーの溶融/結晶化温度より下の温度で数時間中に開始され(重縮合の段階A)、次に、固体を得るために前記ポリマーの結晶化までポリマーの溶融/結晶化温度に近い温度で続けられる(重縮合の段階B)、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
段階Aが大気圧で行われ、段階Bが大気圧で開始され、次に10ミリバール未満の、特に2〜8ミリバールの圧力が達成されるまで漸進的な真空下に続く、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固体が真空下に保たれ、そのガラス転移温度より上だがその溶融/結晶化温度より下の温度で数時間放置される(固体ポスト縮合(SPC)工程)、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
得られた前記固体が、溶融されるような継続時間および条件下にマイクロ波装置においてポスト縮合にかけられる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られ、かつ、多官能性分子によって3次元網状構造へ架橋されたポリ(ヒドロキシ酸)鎖を含むポリ(ヒドロキシ酸)(PHA)。
【請求項12】
直鎖状オリゴマー鎖の形態でのグリコール酸または乳酸に相当する少なくとも80重量%の単位から構成される、請求項11に記載のPHAであって、前記オリゴマー鎖が1つ以上の多官能性有機化合物によって3次元網状構造に互いに結合されているPHA。
【請求項13】
ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に不溶であることを特徴とする、請求項11または12に記載のPHA。
【請求項14】
100ラジアン/秒でほぼ数十または場合によっては数百ものPa・sおよび1ラジアン/秒でほぼ数万(または場合によっては数十万)ものPa・sの240℃での溶融粘度を好ましくは有する、溶融状態において非ニュートン粘弾挙動によって特徴づけられる、請求項11〜13のいずれか一項に記載のPHA。
【請求項15】
好ましくは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)の少なくとも1つの層と組み合わされた、請求項11〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPHAの層を含むフィルムまたは中空体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−522859(P2012−522859A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502702(P2012−502702)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054459
【国際公開番号】WO2010/112602
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】