説明

分泌性白血球プロテアーゼインヒビターに対する抗体

本発明に従って、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)に対する完全ヒトモノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントが、提供される。重鎖免疫グロブリン分子と軽鎖免疫グロブリン分子とを含むヌクレオチド配列およびこれらをコードするアミノ酸配列が、提供される。本発明は、抗体を提供する。そしてその抗原結合フラグメントは、SLPIに特異的に結合し、SLPI活性を中和するように作用し、そしてSLPI効果を調節し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年11月7日に出願された米国仮出願第60/518,275号からの優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書中に開示される発明は、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)に対する特異性をもつ抗体、およびこのような抗体の使用に関する。特に、SLPIに特異的に結合する完全なヒトモノクローナル抗体が提供される。重鎖免疫グロブリン分子および軽鎖免疫グロブリン分子、特にフレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDR)(特に、FR1〜FR4またはCDR1〜CDR3由来)にまたがる連続的な重鎖配列および軽鎖配列に対応する配列をコードするヌクレオチド配列、およびその配列を含むアミノ酸配列が提供される。このような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたはその他の細胞株もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(分泌性白血球プロテアーゼインヒビター)
分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)はまた、ヒト精液インヒビター−I(HUSI−I)(非特許文献1)および抗ロイコプロテアーゼ(ALP−1)としても知られ、kazal型セリンプロテアーゼインヒビターファミリーの12kDaのメンバーである。当初は、精液(非特許文献2)、頚管粘液(非特許文献3)、気管支分泌物(非特許文献4)および耳下腺分泌物(非特許文献5)、ならびにヒト血清(非特許文献6)に存在していることが示され、このインヒビターは、免疫反応性(非特許文献6;非特許文献4)またはアミノ酸配列分析(非特許文献7;非特許文献1)によって、抗ロイコプロテアーゼおよびその代謝産物と同一であることが示された。
【0004】
SLPIは、炎症性応答の間に好中球プロテアーゼに対して保護するように(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)、ならびに創傷治癒(非特許文献12)、細胞増殖を促進するように(非特許文献13)、HIV感染(非特許文献14)およびNF−κB活性化(非特許文献15)を阻害するように、細菌を溶解するように(非特許文献16)およびマクロファージ機能を調節するように(非特許文献17)作用する。
【0005】
SLPIは、呼吸上皮で(非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20)、そしてまた、肺、胸部、口腔咽頭、膀胱、卵巣、子宮内膜および結腸直腸を含む種々の癌で(非特許文献21)発現されることが示されている。
【0006】
SLPI発現は、腫瘍進行と関連しており(非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26)、恐らくは、SLPIプロテアーゼ阻害活性によるか(非特許文献27)、または細胞増殖の促進(非特許文献13)による。
【0007】
(抗体)
モノクローナル抗体の特異性は、それらを、正常組織を容赦しながら、疾患を根絶する希望とともに、インビボで癌を標的にするための魅力的な薬剤にした。初期にマウスモノクローナル抗体を利用したアプローチは、インビボにおける免疫原性;非効率的なエフェクター機能および短い半減期のような潜在的な有効性に対する制限に遭遇した。ヒト抗体の定常領域と組み合わせたマウスモノクローナル抗体の抗原結合性可変ドメインを利用することを求めたキメラ抗体(非特許文献28;非特許文献29);マウス抗体由来の抗原結合性相補性決定領域(CDR)をヒト免疫グロブリンにグラフト化したヒト化抗体(非特許文献30;非特許文献31;非特許文献32;非特許文献33);および抗体の単鎖scFVまたはFabフラグメントのファージディスプレイライブラリー(非特許文献34;非特許文献35;非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38)のための技術が開発された。さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子および非機能的な内因性遺伝子を有するトランスジェニック動物が、完全なヒトモノクローナル抗体の免疫化および産生のために開発された(非特許文献39;非特許文献40;非特許文献41)。
【非特許文献1】Seemuller U.ら、1986 FEBS Lett.199:43〜48
【非特許文献2】Fink E.ら、Hoppe−Seyler’s Z Physiol Chem、1971、352:1591〜1594
【非特許文献3】Wallner O.ら、Hoppe−Seyier’s Z Physiol Chem、1974、355:709〜715
【非特許文献4】Ohlsson K.ら、Hoppe−Seyler’s Z Physiol Chem、1977、358:583〜589
【非特許文献5】Ohlsson M.ら、Hoppe−Seyler’s Z Physiol Chem、1983、364:1323〜1328
【非特許文献6】Fryksmark U.ら、Hoppe−Seyler’s Z Physiol Chem、1981、362:1273〜1277
【非特許文献7】Thompson R.C.ら、Proc Natl Acad Sci USA、1986、83:6692〜6696
【非特許文献8】McElvaney NG.ら、J.Clin.Invest.1992、90:1296〜1301
【非特許文献9】Song X.ら、J.Exp Med、1999、190:535〜542
【非特許文献10】Lentsch AB.ら、Gasroenterology、1999、117:953〜961
【非特許文献11】Gipson TS.ら、J.Immuno.1999、162:3653〜362
【非特許文献12】Ashcroft GS.、Nat.Med、2000、6:1147〜1153
【非特許文献13】Zhang D.ら、J.Biol.Chem.2002、277:29999〜30009
【非特許文献14】McNeely TBら、Blood、1997、90:1141〜1149
【非特許文献15】Lentshch AB.ら、Am.J.Pathol、1999、154:239〜247
【非特許文献16】Hiemstra PS.ら、Infect.Immun.1996、64:4520〜4524
【非特許文献17】Zhang Y.ら、J.Clin.Invest.、1997、99:894〜900
【非特許文献18】Kramps JAら、Pulmonary Emphsema and Proteolysis.Taylor JC & Mittman、C.(編)Academic Press:New York、1987、325〜329頁
【非特許文献19】Frankenら、J Histochem Cytochem、1989、37:493〜498
【非特許文献20】de Water R.ら、Am Rev Resp Dis、1986、133:882〜890
【非特許文献21】Garver RI.ら、Gene Therapy、1994、1:46〜50
【非特許文献22】Hough CD.ら、Can Res.、2000、60:6281〜6287
【非特許文献23】Hough CD.ら、Cancer Res.、2001、1:3869〜3876
【非特許文献24】Shigemasa Kら、Int.J.Gynecol.Cancer、2001、11:454〜461
【非特許文献25】Ameshima S.ら、Cancer、2000、89:1448〜1456
【非特許文献26】Morita M.ら、Ad.Enzyme.Regul.、1999、39:341〜355
【非特許文献27】Devoogdt N.ら、PNAS、2003、100:5778〜5782
【非特許文献28】Boulianneら、Nature、1984、312:643〜646
【非特許文献29】Morrisonら、PNAS USA、1984、81:6851〜6855
【非特許文献30】Jonesら、Nature、1986、321:522〜525
【非特許文献31】Riechmannら、1988 Nature 332:323〜327
【非特許文献32】Verhoeyenら、Science、1988、239:1534〜1536
【非特許文献33】Vaughanら、Nature Biotechnol.、1998、16:535〜539
【非特許文献34】de Haardら、J Biol.Chem.、1999、274:18218〜18230
【非特許文献35】Knappikら、J.Mol.Biol.、2000、296:57〜86
【非特許文献36】Sheetsら、PNAS USA、1998、95:6157〜6162
【非特許文献37】Vaughanら、Nature Biotechnol、1994、14:309〜314
【非特許文献38】Griffithsら、EMBO J.、1996、13:3425〜3260
【非特許文献39】Fishwildら、Nature Biotechnol、1996、14:845〜851
【非特許文献40】Mendezら、Nature Genet.、1997、15:146〜156
【非特許文献41】Nicholsonら、J.Immunol、1999、163、6898〜6906
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
組換え技術が利用されており、そしてインビボの効目を増大する目的とともに、抗体分子に対するさらなる改良を求めて進展することが継続されている。このような技術は、例えば、分子サイズ、親和性、特異性、原子価、エフェクター機能、直接的アーミング(arming)および間接的アーミング、併用治療法、および種々のプロドラッグアプローチを最適化することを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)を特異的に結合する抗体を提供する。さらに、SLPIの活性を調節する抗体が提供される。本発明は、抗SLPIヒトモノクローナル抗体、その改変体および誘導体、ならびに、その抗原結合性フラグメントを提供する。さらに、SLPIの活性を調節する抗SLPIヒトモノクローナル抗体改変体およびその誘導体ならびにその抗原結合性フラグメントが提供される。提供されるのは、抗SLPIヒトモノクローナル抗体改変体およびその誘導体、ならびにSLPI活性を中和し得るその抗原結合性フラグメントである。
【0010】
本発明は、ヒト抗体遺伝子セグメントの好ましい体細胞組換えを提供し、SLPIに対する特異性、ならびに、これらの遺伝子セグメントを起源とする遺伝子操作された抗SLPI抗体改変体および誘導体を提供する。さらに、本発明は、SLPIに対する結合特異性をもつ複数親和性の成熟したヒト抗体を提供する。
【0011】
本発明の抗SLPIヒトモノクローナル抗体のアミノ酸配列およびこれらをコードする核酸配列が提供される。
【0012】
ヒト抗SLPI抗体を含む組成物、これを含む治療組成物、および使用の方法が提供される。
【0013】
本開示のさらなる局面は、以下の記載に一部提示され、そして以下の記載から一部自明であるか、または本発明の実施によって学ばれ得る。本発明は、添付の請求項に提示され、そして特に指摘されており、そして本開示は、いかなる方法でも請求項の範囲を制限するとして解釈されるべきではない。以下の詳細な説明は、請求項に記載されるような本発明の種々の実施形態の例示の代表を含み、これらは本発明の制限ではない。添付の図面は、この明細書の一部を構成し、そして、明細書の記載とともに、種々の実施形態を例示するためのみに供され、そして本発明を制限しない。参考文献の引用は、これらの参考文献が本発明に対する先行技術であることの容認ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本開示で用いられるとき、用語「抗体」は、免疫グロブリン、またはそのフラグメントもしくは誘導体をいい、そしてそれがインビトロまたはインビボで産生されるか否かにかかわらず、抗原結合性部位を含む任意のポリペプチドを包含する。この用語は、制限されないで、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一特異性抗体、多特異性抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、およびグラフト化抗体を含む。本開示の目的には、「インタクト抗体」におけるように、用語「インタクト」による修飾がない限り、用語「抗体」はまた、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合性機能、すなわち、SLPIを特異的に結合する能力を保持するその他の抗原結合性フラグメントのような抗体フラグメントを含む。代表的には、このようなフラグメントは、抗原結合性ドメインを含む。
【0015】
用語「抗原結合性ドメイン」、「抗原結合性フラグメント」、および「結合性フラグメント」は、抗体と抗原との間の特異的結合の原因となるアミノ酸を含む抗体分子の一部をいう。例えば、抗原が大きいとき、この抗原結合性ドメインは、抗原の一部のみに結合し得る。この抗原結合性ドメインとの特異的相互作用の原因である抗原分子の一部は、「エピトープ」または「抗原性決定基」と称される。
【0016】
抗原結合性ドメインは、代表的には、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、必ずしも両方を含まなければならない必要はない。例えば、いわゆるFd抗体フラグメントは、VHドメインのみからなるが、なおインタクト抗体のいくらかの抗原結合性機能を保持している。
【0017】
用語「レパートリー」は、発現された免疫グロブリンをコードする配列から全部または一部が由来するヌクレオチドの遺伝子的に多様なコレクションをいう。これら配列は、例えば、H鎖についてVセグメント、Dセグメント、およびJセグメント、そしてL鎖についてVセグメントおよびJセグメントのインビボ再配置により生成される。あるいは、これら配列は、再配置が生じるインビトロ刺激に応答して細胞株から生成され得る。あるいは、ヌクレオチド合成、ランダム化変異誘発、および、例えば、米国特許第5,565,332号に開示されるようなその他の方法によって、例えば、DセグメントおよびJセグメントをもつ非再配列Vセグメントを組み合わせることによって得られ得る。
【0018】
用語「特異的相互作用」および「特異的結合」は、生理学的条件下で比較的安定である複合体を形成する2つの分子をいう。特異的結合は、通常中程度〜高容量で低親和性を有する非特異的結合から区別するとき、高親和性および低〜中程度容量よって特徴付けられる。代表的には、結合は、親和性定数Kが10−1より、またはより好ましくは10−1より高いとき特異的であると考えられる。必要であれば、非特異的結合は、結合条件を変動することによって特異的結合に実質的に影響することなく低減され得る。抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を許容する時間、ブロック剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などのような適切な結合条件は、慣用の技法を用いて当業者によって最適化され得る。
【0019】
語句「実質的に示されるように」は、本発明の関係あるCDRドメイン、VHドメインまたはVLドメインが、その配列が並べられる特定の領域(例えば、CDR)と同じか、または実質的でない差異のみを有するかのいずれかであることを意味する。実質的でない差異は、特定の領域の配列における任意の5アミノ酸のうち1または2の置換のような、小数のアミノ酸変化を含む。
【0020】
用語「SLPI活性」は、SLPIにともなう1つ以上の調節活性をいう。例えば、SLPIは、エラスターゼおよびカテプシンG、トリプシンならびにキモトリプシンを含むいくつかのプロテアーゼの活性を阻害する。SLPIはまた、ヒト卵巣癌細胞株の増殖を刺激する。SLPI活性を「調節」することは、SLPIとともに観察され、しかもSLPIに起因し得るベースライン結果を変更することである。SLPIを「中和する」ことは、任意の効果、例えば、SLPIとともに観察され、そしてSLPIに起因し得る活性をなくすことである。インビトロでSLPI活性を評価するための手順は、例えば、実施例9、10、13、15、16および17に記載されている。
【0021】
用語「処置」および「治療方法」は、治療処置および予防(prophylactic)/予防的(preventative)測定の両方をいう。治療の必要な者は、特定の医療疾患をすでに有する個体、および最終的に疾患を取得し得る者(すなわち、予防手段を必要とする者)を含み得る。
【0022】
用語「有効量」は、SLPIの活性を低減し、患者における症状の回復を生じるか、または所望の生物学的結果を達成するに十分である投薬量または量をいう。
【0023】
用語「単離された」は、その天然環境から実質的に離れている分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞または組織供給源からの細胞材料またはその他のタンパク質が実質的にない。用語「単離された」はまた、単離されたタンパク質が、薬学的組成物として投与されるに十分純粋であるか、または少なくとも70〜80%純粋、より好ましくは少なくとも80〜90%(w/w)純粋であり、なおより好ましくは90〜95%純粋であり;そして最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%(w/w)純粋である調製物をいう。
【0024】
他であることが規定されない限り、本明細書に記載される発明と組み合わせて用いられる科学的および技術的用語は、当業者によって共通して理解される意味を有する。さらに、文脈によって他であることが要求されない限り、単数の用語は複数形を含み、そして複数の用語は単数形を含む。一般に、本明細書で記載される細胞培養および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチド化学またはポリヌクオチド化学およびハイブリダイゼーションと組み合わせて採用される命名、およびそれらの技法は、当該技術分野で周知および共通して用いられるものである。標準的な技法が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポーレーション、リポフェクション)について用いられる。酵素反応および精製技法は、製造業者の仕様に従って、または当該技術分野で共通して実施されるように、または本明細書中に記載されるように実施される。前述の技法および手順は、一般に、当該技術分野で周知の従来方法に従って、そして本明細書を通じて引用および論議される種々の一般的、およびより特定した参考文献に記載されるように実施される。(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.1989を参照のこと)。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医用化学および薬学的化学と組み合わせて利用される命名、ならびにこれらの実験室手順および技法は、周知であり、そして当該技術分野で共通して用いられるものである。標準的な技法が、化学的合成、化学的分析、薬学的調製物、処方物、および送達、ならびに患者の処置について用いられる。
【0025】
免疫グロブリンとしてもまた知られる抗体は、代表的には、代表的には、2つの各軽(L)鎖(約25kDa)および2つの重(H)鎖(約50〜70kDa)からなる4量体グリコシル化タンパク質である。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変ドメインを含む。このL鎖およびH鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う、それぞれ、1つ、および3つまたは4つの定常ドメインを有する。κおよびλとして分類される2つのヒトL鎖がある。H鎖は、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとしてそれぞれ規定する定常ドメインアミノ酸配列に基づき、μ、δ、γ、α、またはεとして分類される。アイソタイプは、さらに、サブクラス、例えば、IgG、IgG、IgG、IgGに分割され得る。
【0026】
免疫グロブリンは、インビボで、自然には、Bリンパ球によって産生される。B細胞の各クローンは、特有の予想される抗原結合性構造をもつ抗原レセプターを有する抗体を産生する。約10の可能性である抗原レセプターのレパートリーが、抗原刺激の前にインビボで存在する。この多様性は、体細胞組換え−異なる抗体遺伝子セグメントの連結によって産生される。免疫グロブリンH鎖、κL鎖およびλL鎖は、3つの別個の遺伝子座によってコードされ、そして各遺伝子座は、可変領域(V)、定常領域(C)および連結領域(J)をコードする少なくとも3つのタイプの遺伝子セグメントの複数コピーを有し、重鎖遺伝子はまた、多様性領域(D)を含む。利用可能な種々の遺伝子セグメント(45 重鎖V;35 κV;23 重鎖D;6 重鎖J;5 κJ)のなかからの特定のV領域、C領域およびJ領域(そして重鎖についてはD)の選択は、B細胞で示される生殖系列配列の約1011の可能な特異性を生成する。V領域、C領域およびJ領域の連結は、連結部における残基の損失または付加を生じ得る。ヒト抗体のL鎖V領域およびH鎖V領域は、相補性決定領域(CDR)としてまた知られる3つの超可変領域の足場を形成する比較的保存されたフレームワーク領域(FR)からなる。重鎖または軽鎖のいずれかのアミノ末端から、Vドメインは次の順序でFR領域およびCDR領域から形成される:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。これらのCDRは、一般に、抗原結合を担う。
【0027】
本発明は、生殖系列ヒト抗体重鎖のV、D、J組み合わせ、および軽鎖のV、J組み合わせを提供し、これは、SLPIに対する特異性をもつ、VHおよびVLドメインのFR領域およびCDR領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含む。
【0028】
抗原に曝される際に、生殖系列配列に基づく抗原結合特異性をもつようなB細胞は、活性化され、増殖し、そして分化して異なるアイソタイプの免疫グロブリンを生成し、ならびに体細胞変異および/または親和性成熟を行い、抗原に対してより高い親和性の免疫グロブリンを生成する。本発明は、SLPIに対する特異性を有する、このような親和性成熟VドメインのFR領域およびCDR領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供する。
【0029】
抗体分子の抗原結合性部分を含むFab型の抗体フラグメントは、Vドメインおよび第1の定常領域を有するH鎖の一部にジスルフィド結合によって共有結合されるL鎖からなり得る。単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)は、ポリペプチドリンカーによりL可変ドメインに連結されるH可変ドメインを有する。本発明は、SLPIに対して特異的に結合する抗体結合特異性の生殖系列または親和性成熟Vドメイン由来の配列を有するFab分子およびscFv分子のような抗体フラグメントを提供する。
【0030】
特定の実施形態では、ヒト抗SLPI抗体は、42C1,35F1、43H7および9G12であり、そして表1に示されるような本出願で識別されるこれらをコードするアミノ酸配列および核酸配列を有する。
【0031】
【表1】

SLPI結合性ヒト抗体は、Lκもしくはλ定常領域、または任意のアイソタイプH定常ドメインを含むH定常ドメインまたはL定常ドメインを含み得る。本発明の1つの実施形態では、SLPIに対する結合特異性をもつヒト抗体は、重鎖V領域VH4−31(配列番号81、82)またはVH3−33(配列番号83、84);重鎖D領域D2−2(配列番号85、86、87、88)、D3−10(配列番号89、90、91、92)、D4−17(配位列番号93、94、95、96)またはD3−16(配列番号97、98、99、100);重鎖J領域JH4b(配列番号101、102)またはJH6b(配列番号103、104);軽鎖Vκ領域L2VK3(配列番号105、106)またはA2VK2(配列番号107、108);およびJ領域JK1(配列番号109、110)のような生殖系列配列を含む(一般に、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda、Md.1987および1991を参照のこと;また、Chothia&Lesk 1987 J.Mol.Biol.196:901〜917;Chothiaら、1989 Nature 342:878〜883を参照のこと)。特定の実施形態では、SLPIに対する結合特異性をもつヒト抗体42C1は、重鎖V領域VH4−31;重鎖D領域D2−2;重鎖J領域JH4b;軽鎖Vκ領域L2VK3;およびJ領域JK1を有する。別の実施形態では、SLPIに対する結合特異性をもつヒト抗体35F1は、重鎖V領域VH4−31;重鎖D領域D3−10;重鎖J領域JH4b;軽鎖Vκ領域L2VK3;およびJ領域JK1を含む。なお別の実施形態では、SLPIに対する結合特異性をもつ本発明のヒト抗体43H7は、重鎖V領域VH3−33;重鎖D領域D4−17;重鎖J領域JH6b;軽鎖Vκ領域A2VK2;およびJ領域JK1を含む。さらに、SLPIに対する結合特異性をもつヒト抗体9G12は、重鎖V領域VH3−33;重鎖D領域D3−16;重鎖J領域JH6b;軽鎖Vκ領域A2VK2;およびJ領域JK1を含む。
【0032】
本発明の実施形態では、単離された抗体は、配列番号2、配列番号20、配列番号38、配列番号56、配列番号73、配列番号74、配列番号82および配列番号84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを有する。このようなアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号19、配列番号37、配列番号55、配列番号81および配列番号83からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。別の実施形態では、本発明は、SLPIに特異的に結合し、そして配列番号11、配列番号29、配列番号47、配列番号65、配列番号75、配列番号76、配列番号106および配列番号108からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域ポリペプチドを有する、単離された抗体を提供する。このようなアミノ酸配列は、配列番号10、配列番号28、配列番号46、および配列番号64、配列番号105および配列番号107からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。なお別の実施形態では、本発明は、SLPIに特異的に結合し、そして配列番号2、配列番号20、配列番号38、配列番号56、配列番号73、配列番号74、配列番号82および配列番号84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ポリペプチド、ならびに配列番号11、配列番号29、配列番号47、配列番号65、配列番号75、配列番号76、配列番号106および配列番号108からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域ポリペプチドを有する単離された抗体を提供する。本発明のなお別の実施形態では、抗SLPI抗体は、任意のH CDRポリペプチド配列またはL CDRポリペプチド配列、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号67、配列番号69、配列番号71および配列番号80のうちの少なくとも1つのCDRを含む。
【0033】
特定の実施形態では、生殖系列V重鎖領域VH4−31に由来する本発明のSLPI結合性ヒト抗体は、アミノ酸配列:
【0034】
【化1】

ここで:
X1はGまたはVであり;
X2はSまたはKであり;
X3はGまたはDであり;
X4はIまたはVであり;
X5はHまたはLであり;
X6はVまたはIであり;
X7はYまたはFであり;
X8はEまたはSであり;そして
X9はEまたはSである
(配列番号73)
を有する。さらに、特定の実施形態では、H鎖CDR配列は、生殖系列VH4−31CDRアミノ酸配列
【0035】
【化2】

である。親和性成熟の後、VH4−31生殖系列V領域からのSLPI結合性ヒト抗体は、FRアミノ酸配列およびCDRアミノ酸配列:配列番号21〜26、配列番号57〜63(表1を参照のこと)を有する。
【0036】
別の特定の実施形態では、生殖系列V重鎖領域VH3−33に由来する本発明のSLPI結合性ヒト抗体は、アミノ酸配列:
【0037】
【化3】

ここで:
X1はS、TまたはGであり;
X2はAまたはTであり;
X3はVまたはFであり;
X4はDまたはNであり;
X5はS、RまたはNであり;
X6はNまたはDであり;
X7はKまたはNであり;
X8はAまたはTであり;
X9はIまたはVであり;そして
X10はLまたはMである
(配列番号74)
を有する。さらに、特定の実施形態では、H鎖CDR配列は、生殖系列VH3−33CDRアミノ酸配列
【0038】
【化4】

である。親和性成熟の後、VH3−33生殖系列V領域からのSLPI結合性ヒト抗体は、FRおよびCDRアミノ酸配列:配列番号3〜9、配列番号39〜45(表1を参照のこと)を有する。
【0039】
なお別の特定の実施形態では、生殖系列V軽鎖領域L2VK3に由来する本発明のSLPI結合性ヒト抗体は、アミノ酸配列:
【0040】
【化5】

ここで:
X1はAまたはTであり;
X2はSまたはGであり;
X3はSまたはGであり;
X4はSまたはNであり;
X5はKまたはNである
(配列番号75)
を有する。さらに、特定の実施形態では、L鎖CDR配列は、生殖系列L2VK3 CDRアミノ酸配列
【0041】
【化6】

である。インビボでの親和性成熟の後、L2VK3生殖系列V領域からのSLPI結合性ヒト抗体は、FRおよびCDRアミノ酸配列:配列番号30〜36、配列番号66〜72(表1を参照のこと)を有する。
【0042】
特定の実施形態では、生殖系列V軽鎖領域A2VK2に由来する本発明のSLPI結合性ヒト抗体は、アミノ酸配列:
【0043】
【化7】

ここで:
X1はHまたはDであり;
X2はVまたはIであり;
X3はGまたはAであり;
X4はVまたはYであり;そして
X5はMまたはLである
(配列番号76)
を有する。さらに、特定の実施形態では、L鎖CDR配列は、生殖系列A2VK2アミノ酸配列
【0044】
【化8】

である。
【0045】
親和性成熟の後、A2VK2生殖系列V軽重鎖領域からのSLPI結合性ヒト抗体は、FRアミノ酸配列およびCDRアミノ酸配列:配列番号12〜18、配列番号48〜54(表1を参照のこと)を有する。
【0046】
本発明の特定の好ましい実施形態では、抗SLPI抗体は、本明細書で証明されるように、SLPIの活性を調節する。本発明のなおより好ましい実施形態では、抗SLPI抗体は、本明細書で証明されるように、SLPIの活性、例えば、エラスターゼまたはカテプシンG酵素活性のSLPI阻害を中和する。
【0047】
本発明の抗体は、好ましくはSLPIの成熟配列(配列番号112のアミノ酸25〜131)内でSLPI(配列番号112)のエピトープに結合する。本発明の抗体は、10−6〜10−11の親和性でSLPIを結合する。好ましくは、10−7以上、そしてより好ましくは10−8以上である。好ましい実施形態では、本明細書に記載される抗体は、非常に高い親和性(Kd)の親和性でSLPIに結合し、例えば、ヒト抗体は、制限されないで、10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11M、10−12M、10−13Mまたは10−14Mより小さいKdで、またはその中の任意の範囲または任意の値でSLPIを結合し得る。親和性および/または結合力の測定は、本明細書中に記載されるように、KinExA(登録商標)および/またはBIACORE(登録商標)によって測定され得る。特定の実施形態では、本発明の抗体は、50〜150pMの範囲のKdでSLPIに結合する。
【0048】
エピトープマッピングならびに二次および三次構造分析は、開示される抗体および抗原とのそれらの複合体によってとられる特定の3D構造を同定するために実施され得る(例えば、Epitope Mapping Protocols、Morris編、Humana Press、1996を参照のこと)。このような方法は、制限されないで、X線結晶学(Biochem、Exp.Biol.、11:7〜13、1974)および現在開示される抗体の仮想的表示のコンピューターモデリングを含む(Fletterickら(1986)Computer Graphics and Molecular Modeling、Current Communications in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.)。
【0049】
さらに、抗体によって認識されるタンパク質免疫原の特異的部分は、タンパク質の一部分、例えば、N末端およびC末端の半分体への抗体反応性をアッセイすることにより決定され得る。得られる反応性フラグメントは、次に、最小の反応性ペプチドが規定されるまで、抗体との免疫原のより小さな部分を連続的にアッセイして、さらに分析され得る。あるいは、エピトープである、本発明の抗SLPI抗体の結合特異性は、SLPI免疫原を還元剤の不在または存在いずれかでSDS−PAGEに供し、そして免疫ブロットにより分析することによって決定され得る。エピトープマッピングはまた、SELDIを用いて実施され得る。SELDI ProteinChip(登録商標)(LumiCyte)アレイは、タンパク質−タンパク質相互作用の部位を規定するために用いられる。SLPIタンパク質抗原またはそのフラグメントは、上記PROTEINCHIPアレイ表面上に共有結合で固定化された抗体によって特異的に捕獲され得る。結合された抗原は、レーザー誘導脱離プロセスによって検出され得、そして直接分析されてそれらの質量を決定し得る。
【0050】
本明細書中に記載される抗SLPI抗体によって認識されるエピトープは、上記PROTEINCHIPアレイを、糸状(Filamentous)ファージ(New England Biolabs)上でディスプレイされたランダムペプチド12マーのコンビナトリアルライブラリーに曝すことにより決定され得る。抗体結合ファージは、溶出され、そして次に増幅されてさらなる結合および増幅サイクルを経て、結合配列を指向してこのプールを富化する。3または4ラウンドの後、個々の結合クローンは、さらに、抗体でコーティングされたウェル上で実施されるファージELISAアッセイによって結合について試験され、そして陽性クローンの特異的DNA配列決定により特徴付けられる。
【0051】
(誘導体)
この開示はまた、SLPIに特異的な抗体を得るための方法を提供する。このような抗体中のCDRは、表1で同定されたH可変ドメインおよびL可変ドメインの特定の配列に制限されず、そしてSLPIを特異的に結合する能力を保持する、これらの配列の改変体を含み得る。このような改変体は、当該技術分野で周知の技法を用いて当業者によって表1に列挙される配列から派生され得る。例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加が、FR中、および/またはCDR中に作製され得る。FRにおける変化は、通常、抗体の安定性および免疫原性を改良するために設計される一方で、CDRにおける変化は、代表的には、その標的に対する抗体の親和性を増加するために設計される。FRの改変体はまた、天然に存在する免疫グロブリンアロタイプを含む。このような親和性を増加する変化は、CDRを改変すること、およびその標的に対する抗体の親和性を試験することを含む慣用の技法によって実験的に決定され得る。例えば、保存的アミノ酸置換が、開示されたCDRの任意の1つ内でなされ得る。種々の改変が、当該技術分野で記載された方法に従ってなされ得る(Antibody Engineering、2.sup.nd ed.、Oxford University Press、Borrebaeck編、1995)。これらは、制限されないで、配列内で機能的に等価なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換、それ故「サイレント」変化を生成することによって改変されるヌクレオチド配列を含む。例えば、非極性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に荷電する(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、およびヒスチジンを含む。負に荷電する(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸、およびグルタミン酸を含む。配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスのその他のメンバーから選択され得る(表2を参照のこと)。さらに、ポリペプチド中の任意のネイティブ残基はまた、アラニンで置換され得る(Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55〜67、1998:Adv.Biophys.35:1〜24、1998)。
【0052】
【表2】

本発明の抗体の誘導体およびアナログは、当該技術分野で周知の種々の技法によって産生され得、これには、組換え方法および合成方法を含む(Maniatis(1990)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、2.sup.nd ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.およびBodanskyら、(1995)The Practice of Peptide Synthesis、2.sup.nd ed.、Spring Verlag、Berlin、Germany)。
【0053】
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を改変する、(4)結合親和性を改変する、および(4)このようなアナログの他の物理化学的性質または機能的性質を付与または改変するようなものである。アナログは、天然に存在するペプチド配列以外の配列の種々のムテインを含み得る。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)が天然に存在する配列中に作製され得る(好ましくは分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)の外側のポリペプチドの部分中に)。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変更するべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列中で生じるヘリックスを破壊するか、または親配列を特徴付けるその他のタイプの二次構造を破壊する傾向であるべきではない)。当該技術分野で認識されたポリペプチド二次構造および三次構造の例は、当該技術分野で説明されている(例えば、Proteins、Structure and Molecular Principles、Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984))。
【0054】
1つの実施形態では、本発明のH可変ドメインのアミノ酸配列改変体であるH可変ドメインを作製する方法は、現在開示されるH可変ドメインのアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸を付加、欠失、置換または挿入する工程を包含し、必要に応じて、このように提供されたH可変ドメインを1つ以上のL可変ドメインと組み合わせ、そしてこのH可変ドメイン、もしくはH可変/L可変組み合わせ(単数または複数)をSLPIへの特異的結合について試験するか、または、そして必要に応じて、SLPI活性を調節するこのような抗原結合性ドメインの能力を試験することを含む。上記L可変ドメインは、表1と同じか、または列挙されたのと実質的に同一であるアミノ酸配列を有し得る。
【0055】
類似の方法が採用され得、そこでは、本明細書に開示されるL可変ドメインの1つ以上の配列改変体が、1つ以上のH可変ドメインと組み合わされる。
【0056】
本開示のさらなる局面は、SLPIと特異的に結合する抗原結合性フラグメントを調製する方法が提供される。この方法は:
(a)置換されるべきCDR3を含むか、またはCDR3コード領域を欠くかいずれかのH可変ドメインをコードする核酸の開始レパートリーを提供する工程;
(b)このレパートリーを、H可変CDR3について本明細書中に実質的に示されるようなアミノ酸配列をコードするドナー核酸と、このドナー核酸がレパートリー中のCDR3領域中に、H可変ドメインをコードする核酸の産物レパートリーを提供するために挿入されるように組み合わせる工程;
(c)この産物レパートリーの核酸を発現する工程;
(d)SLPIに特異的な結合性フラグメントを選択する工程;および
(e)この特異的結合性フラグンメントまたはそれをコードする核酸を回収する工程、を包含する。
【0057】
ここで再び、類似の方法が採用され得、そこでは、本発明のL可変CDR3は、置換されるべきCDR3を含むか、またはCDR3コード領域を欠くかいずれかであるL可変ドメインをコードする核酸のレパートリーと組み合わされる。ドナー核酸は、実質的に配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号77、配列番号78、配列番号79および配列番号80に提示されるようなアミノ酸配列をコードする核酸から選択され得る。
【0058】
本発明のCDR(例えば、CDR3)をコードする配列は、組換えDNA技法を用い、例えば、Marksら(Bio/Technology(1992)10:779〜783)に記載される方法を用いて、個々のCDR(例えば、CDR3)を欠く可変ドメインのレパートリー中に導入され得る。特に、可変ドメイン領域の5’末端か、またはその近傍に向かうコンセンサスプライマーが、ヒトH可変遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと組み合わせて用いられ得、CDR3を欠くH可変ドメインのレパートリーを提供する。このレパートリーは、特定の抗体のCDR3と組み合わせられ得る。類似の技法を用いて、このCDR3由来の配列は、CDR3を欠くH可変ドメインまたはL可変ドメインのレパートリーと混ぜ(シャフル)され得、そしてこのシャフルされた完全H可変ドメインまたはL可変ドメインは、同族のL可変ドメインまたはH可変ドメインと組み合わせられ、本発明のSLPI特異的抗体を作製する。このレパートリーは、次に、WO92/01047に記載されるようなファージディスプレイシステムのような適切な宿主システム中でディスプレイされ得、適切な抗原結合性フラグメントが選択され得る。
【0059】
類似のシャフリング技法またはコンビナトリアル技法が用いられ得る(例えば、Stemmer、Nature(1994)370:389〜391)。さらなる実施形態では、エラープローンPCR(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1992)89:3576〜3580)のような、1つ以上の選択されたH可変遺伝子および/またはL可変遺伝子のランダム変異誘発を用いて、本明細書に開示された配列由来の1つ以上の配列を保持する新規のH可変領域またはL可変領域を生成し得る。用いられ得る別の方法は、H可変遺伝子またはL可変遺伝子のCDRに対する部位特異的変異誘発である(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1994)91:3809〜3813;J.Mol.Biol.(1996)263:551〜567)。同様に、1つ以上、または3つすべてのCDRが、H可変ドメインまたはL可変ドメインのレパートリー中にグラフト化され得、これらは、次いで、SLPIに特異的な抗原結合性フラグメントについてスクリーニングされる。
【0060】
免疫グロブリン可変ドメインの一部は、本明細書中に実質的に示されるようなCDRの少なくとも1つ、および必要に応じて本明細書中に提示されるような介在フレームワーク領域を含む。この一部は、FR1およびFR4のいずれかまたは両方の少なくとも約50%、FR1のC末端50%およびFR4のN末端50%である50%を含み得る。可変ドメインの実質的一部のN末端またはC末端におけるさらなる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域と通常関連しないような残基であり得る。例えば、組換えDNA技法による抗体の構築は、導入されるリンカーによってコードされるN末端残基またはC末端残基の挿入を生じて、クローニング工程またはその他の操作工程を容易にし得る。その他の操作工程は、以下にさらに詳細に論議されるように、免疫グロブリン重鎖定常領域、その他の可変ドメイン(例えば、二重特異性抗体の産生において)、またはタンパク質様ラベルを含むさらなるタンパク質配列に可変ドメインを連結するための、リンカーの導入を含む。
【0061】
実施例に説明される実施形態は、H可変ドメインおよびL可変ドメインの「マッチする」ペアを含むが、当業者は、代替の実施形態が、L可変ドメインまたはH可変ドメインのいずれかからの単一のCDRのみを含む抗原結合性フラグメントを含み得ることを認識する。単鎖特異的結合ドメインのいずか1つは、例えば、SLPIに結合し得る2ドメイン特異的な抗原結合性フラグメントを形成し得る相補的ドメインをスクリーニングするために用いられ得る。このスクリーニングは、WO92/01047に開示される、いわゆる階層的二重コンビナトリアルアプローチを用いるファージディスプレイスクリーニング方法によって達成され得、そこでは、H鎖クローンまたはL鎖クローンのいずれかを含む個々のコロニーが他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全ライブラリーに感染するために用いられ、そして得られる2鎖特異的結合性ドメインが、記載のようなファージディスプレイ技法に従って選択される。
【0062】
本明細書に記載される抗SLPI抗体は、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(アルブミン、別の抗体など)、トキシン、放射線同位体、細胞傷害性薬剤または細胞増殖抑制性薬剤に連結され得る。例えば、これら抗体は、化学的架橋により、または組換え方法により連結され得る。これら抗体はまた、米国特許番号第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に提示されるような様式で、種々の非タンパク質様のポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンに連結され得る。これら抗体は、ポリマーへの共有結合によって化学的に改変され得、例えば、それらの循環半減期を増加する。それら抗体を結合する例示のポリマーおよび方法はまた、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号、および同第4,609,546号に示される。
【0063】
開示される抗体はまた、ネイティブパターンとは異なるグリコシル化パターンを有するように改変され得る。例えば、1つ以上の炭水化物成分が欠失され得、そして/または1つ以上のグリコシル化部位が当初の抗体に付加され得る。現在開示される抗体へのグリコシル化部位の付加は、当該技術分野で公知のグリコシル化部位コンセンサス配列を含むようにアミノ酸配列を改変することにより達成され得る。抗体上の炭水化物部分の数を増加する別の手段は、抗体のアミノ酸残基へのグリコシドの化学的結合または酵素的結合による(WO87/05330;CRC Crit.Rev.Biochem.、22:259〜306、1981)。抗体からの任意の炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る(Arch.Biochem.Biophys.、259:52、1987;Anal.Biochem.、118:131、1981;Meth.Enzymol.、138:350、1987)。これら抗体はまた、検出可能な、または機能的な標識でタグ化され得る。検出可能な標識は、131Iまたは99Tcのような放射能標識を含み、これらはまた、従来の化学を用いて抗体に結合され得る。検出可能な標識はまた、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのような酵素標識を含む。検出可能な標識はさらに、ビオチンのような化学的成分を含み、これは、特異的な同族の検出可能な成分、例えば、標識されたアビジンへの結合を経由して検出され得る。
【0064】
抗体の結合価は、結合部位における親和性および結合活性、保持時間に影響するように特注設計され得る(例えば、Am H.Pathol、2002 160:1597〜1608;J.Med.Chem.2002 45:2250〜2259;Br.J.Cancer 2002 86:1401〜1410;Biomol.Eng.2001 18:95〜108;Int J.Cancer 2002 100:367〜374を参照のこと)。
【0065】
複数特異性(二官能性)結合試薬は、本発明のSLPI特異的配列を基に設計され得る(Biomol.Eng.2001 18:31〜40)。例えば、2重特異的抗体または2官能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。2重特異的抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結(Clin.Exp.Immunol.1990、79:315〜321;、J.Immunol.199、2148:1547〜1553)を含む種々の方法によって産生され得る。
【0066】
このような2重特異的抗体は、周知である技法を用いて(Immunol Methods 1994、4:72〜81;WrightおよびHarris、前述;Trauneckerら、1992 Int.J.Cancer(補遣)7:51〜52)、SLPIに対する特異性および第2の分子に対する第2の特異性を含んで生成され得る。1つの実施形態では、第2の特異性は、重鎖活性化レセプターに対してなされ得、これには、制限されずに、CD16またはCD64(Deoら、1997 18:127)またはCD89(Valeriusら、1997 Blood 90:4485〜4492)が含まれる。このようにして調製された2重特異的抗体は、SLPIを発現する細胞を選択的に殺傷する。
【0067】
CDR配列が、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号77、配列番号78、配列番号79および配列番号80に提示される配列と実質的でない差異でのみ異なる抗体は、本発明の範囲内に包含される。代表的には、アミノ酸が、類似の電荷、疎水性、または立体化学的特徴を有する関連アミノ酸によって置換される。このような置換は、当該技術分野の当業者の技術内であり得る。CDRとは異なり、抗体の結合性質に不利に影響することなくFR中でより実質的な変化がなされ得る。FRへの変化は、抗原接触のためか、または結合部位を安定化するために重要である特定のフレーム残基を操作すること、定常領域のクラスまたはサブクラスを変更すること、Fcレセプター結合のようなエフェクター機能を改変し得る特定のアミノ酸残基を変更すること(米国特許第5,624,821号;同第5,648,260号;Lundら(1991)J.Immun.147:2657〜2662;Morganら(1995)Immunology 86:319〜324)、または定常領域が由来する種を変更することを含むが、これらに限定されない。
【0068】
当業者は、上記に記載された誘導体および改変物がすべて排他的でなく、しかも多くのその他の改変物が、本開示の教示を考慮して当業者に自明であろうことを認識する。
【0069】
(核酸、クローニングシステムおよび発現システム)
本開示は、開示される抗体をコードする単離された核酸をさらに提供する。この核酸は、DNAまたはRNAを含み得、そして全部または一部が合成または組換えであり得る。本明細書で提示されるときヌクレオチド配列への参照は、文脈が他であることを要求しなければ、特定された配列をもつDNA分子を包含し、そしてUがTに代わって置換される特定された配列をもつRNA分子を含む。
【0070】
本明細書で提供される核酸は、本明細書に開示される、CDR、H可変ドメイン、および/またはL可変ドメインのコード配列を含む。
【0071】
本開示はまた、本明細書に開示される、CDRをコードする核酸、H可変ドメイン、および/またはL可変ドメインの少なくとも1つを含む、プラスミド、ベクター、ファージミド、転写カセットまたは発現カセットの形態にある構築物を提供する。
【0072】
本開示は、上記のような1つ以上の構築物を含む宿主細胞をさらに提供する。
【0073】
任意のCDR(H可変ドメインまたはL可変ドメインのいずれかからのCDR1、CDR2、CDR3)、H可変またはL可変ドメインをコードする核酸、およびコードされた産物を作成する方法もまた提供される。この方法は、上記コードされた核酸からコードされた産物を発現する工程を包含する。発現は、上記核酸を含む組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成され得る。発現による産生の後、H可変ドメインまたはL可変ドメイン、または特異的結合性メンバーが、任意の適切な技法を用いて単離そして/または精製され得、次いで適切に用いられ得る。
【0074】
抗原結合性フラグメント、H可変ドメインおよび/またはL可変ドメインならびにコードする核酸分子およびベクターは、実質的に純粋または均一形態で、または核酸の形態の場合、必要な機能をもつポリペプチドをコードする配列以外の起源の核酸または遺伝子を含まないか、実質的に含まないで、それらの天然環境から単離そして/または精製され得る。
【0075】
種々の異なる宿主細胞でポリペプチドをクローニングし、かつ発現するシステムは、当該技術分野で周知であり、抗体を産生するために適切な細胞含む(Gene Expression Systems、Academic Press、Fernandezら編、1999)。簡単に述べれば、適切な宿主細胞は、細菌、植物細胞、哺乳動物細胞、および酵母ならびにバキュロウイルスシステムを含む。異種ポリペプチドの発現のために当該技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、および多くのその他を含む。一般的な細菌宿主は、E.coliである。本発明と適合する任意のタンパク質発現システムを用いて、開示される抗体を産生し得る。適切な発現システムはまた、トランスジェニック動物を含む(Gene Expression Systems、Academic Press、Fernandezら編、1999)。
【0076】
適切なベクターは、それらが、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子を含む適切な調節配列、および必要に応じてその他の配列を含むように選択または構築され得る。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、またはウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドであり得る(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2.sup.nd.ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)。核酸構築物の調製における、核酸の操作のための多くの公知の技法およびプロトコール、例えば、変異誘発、配列決定、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析は、当該技術分野で公知である(Current Protocols in Molecular Biology、2.sup.nd版、Ausubelら編、John Wiley&Sons、1992)。
【0077】
本発明はまた、本明細書に開示のような核酸を含む宿主細胞を提供する。なおさらなる局面は、このような核酸配列を宿主細胞中に導入する工程を包含する方法提供する。この導入は、任意の利用可能な技法を採用し得る。真核生物細胞には、適切な技法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポーレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、およびレトロウイルスまたはその他のウイルス、例えば、ワクシニア、または昆虫細胞には、バキュロウイルスを用いる形質導入を含み得る。細菌細胞には、適切な技法は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポーレーションおよび細菌ファージを用いるトランスフェクションを含み得る。核酸の細胞中への導入は、例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすか、または可能にすることが続き得る。
【0078】
(使用の方法)
開示される抗SLPI抗体は、エラスターゼおよびカテプシンGのような酵素のSLPI関連阻害を調節および/または中和し得る。開示される抗体は、それらの使用の方法に依存して、SLPIのアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用し得る。これら抗体は、哺乳動物における、特にヒトにおける医療障害を予防、診断、または処置するために用いられ得る。本発明の抗体はまた、SLPIまたはSLPI発現細胞を単離するために用いられ得る。さらに、これら抗体は、異常なSLPIの発現または機能に関連する障害を罹患するリスクにあるか、それを有する被験体を処置するために用いられ得る。本発明の抗体は、このような被験体においてSLPIを検出するために用いられ得る。
【0079】
本発明の抗体または抗体組成物は、治療的に有効な量で投与される。一般に、治療的に有効な量は、被験体の年齢、状態、および性別、投与の経路、ならびにこの被験体の医療状態の重篤度とともに変動し得る。抗体の治療的に有効な量は、約0.001〜約30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜約25mg/kg体重、約0.1〜約20mg/kg体重、または約1〜約10mg/kg体重の範囲である。この投薬量は、必要に応じて調節され得、処置の観察される効果に適応させる。適切な用量は、処置する医師による臨床指標に基づいて選択される。これら抗体は、ボーラス用量として与えられ得、用量後に最も長い期間の間、抗体の循環レベルを最大にする。連続的注入もまた用いられ得る。
【0080】
別の局面では、本発明の抗体は、SLPIを発現する細胞への別の治療剤または細胞傷害性剤(例えば、トキシン)の送達のための標的する因子として用いられ得る。この方法は、治療剤または細胞傷害性剤に結合された、または抗体のSLPIへの結合を可能にする条件下で、抗SLPI抗体を投与する工程を含む。
【0081】
本発明の抗体はまた、生物学的サンプル中のSLPIの存在を検出するために用いられ得る。検出されるSLPIの量は、SLPIの発現レベルと相関し得、これは、次に、当該技術分野で公知の方法を用いて疾患、腫瘍タイプ、腫瘍量、またはステージと相関される(例えば、AAPS Ligand Binding Assay Bioanalytical Focus Group(LBABFG)の勧告 Pharm Res.2003年11月;20(11):1885〜900を参照のこと)。抗体を採用する検出方法は、当該技術分野で周知であり、そして、例えば、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、ウエスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降を含む。上記抗体は、SLPIを検出するための1つ以上のこれら技法を取り込む診断キットで提供され得る。このようなキットは、その-他の構成要素、梱包物、指示書、またはタンパク質の検出を支援するためのその他の材料を含み得る。
【0082】
これら抗体が、診断目的のために意図される場合、例えば、リガンド基(例えば、ビオチン)または検出可能なマーカー基(例えば、蛍光基、放射性同位体または酵素)でこれらを改変することが所望され得る。所望であれば、本発明の抗体は、従来技法を用いて標識され得る。適切な検出可能な標識は、例えば、蛍光発色団、発色団、放射活性原子、電子密度試薬、酵素および特異的結合パートナーを有するリガンドを含む。酵素は、代表的には、それらの活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)を、比色計で定量可能な青色色素に変換するその能力によって検出され得る。検出のために、適切な結合性パートナーは、制限されないで、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、IgGおよびプロテインA、および当該技術分野で公知の多くのレセプター−リガンドカップルを含む。その他の順列および可能性は、当業者に容易に明らかであり、そして本発明の範囲内の等価物と考えられる。
【0083】
本発明の抗体は、治療薬として有効なSLPIのインヒビターを同定するためのスクリーニング方法で用いられ得る。このようなスクリーニングアッセイでは、第1の結合性混合物が、SLPIおよび本発明の抗体を組み合わせることによって形成され;そしてこの第1の結合性混合物中の結合の量(M)が測定される。第2の結合性混合物がまた、SLPI、抗体、およびスクリーニングされるべき化合物または薬剤を組み合わせることによって形成され、そしてこの第2の結合性混合物中の結合の量(M)が測定される。試験されるべき化合物は、別の抗SLPI抗体であり得る。上記第1および第2の結合性混合物中の結合の量は、次いで、例えば、M/M比を算出することにより比較される。上記化合物または薬剤は、第1の結合性混合物と比較したとき、第2の結合性混合物中の結合における減少が観察されるとき、SLPI関連応答を調節し得ると考えられる。結合性混合物の処方および最適化は、当該技術分野のレベル内にあり、このような結合混合物はまた、結合を増大または最適化するために必要な緩衝液および塩を含み得、そしてさらなるコントロールアッセイが、本発明のスクリーニングアッセイ中に含められ得る。SLPI−抗体結合を、少なくとも約10%(すなわち、M/M0<0.9)だけ、好ましくは約30%より大きく低減することが見出された化合物が、それ故、同定され、そして次に、所望であれば、以下に記載のように、その他のアッセイまたは動物モデルで障害を改善する能力についてスクリーニングされる。SLPIと抗体との間の結合の強度は、例えば、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、表面プラスモン共鳴を基礎にする技術(例えば、Biacore)を用いて検出され得、これらすべては当該技術分野で周知の技法である。
【0084】
上記化合物は、次に、実施例に記載のようにインビトロで試験され得る。
【0085】
例えば、動物試験に従って決定されたような予備的用量、およびヒト投与のための投薬量のスケーリングは、当該技術分野で受容された慣行に従って実施される。毒性および治療的効目は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。細胞培養アッセイまたは動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を処方することで用いられ得る。1つの動物モデルで達成された治療的に有効な投薬量は、当該技術分野で公知の転換係数を用いて、ヒトを含む別の動物における使用のために変換され得る(例えば、Freireichら(1966)Cancer Chemother.Reports、50(4);219〜244)。
【0086】
(薬学的組成物および投与の方法)
本開示は、抗SLPI抗体を含む組成物を提供する。このような組成物は、薬学的使用および患者への投与に適切であり得る。これらの組成物は、代表的には、本発明の1つ以上の抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。語句「薬学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的投与と適合する、任意およびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。これら組成物はまた、補助的、付加的、または増大された治療機能を提供するその他の活性化合物を含み得る。これら薬学的組成物はまた、コンテナ、パック、またはディスペンサー中に、投与のための指示書とともに含まれ得る。
【0087】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合されるように処方される。投与を達成するための方法は、当業者に公知である。この投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮的であり得る。局所的または経口的に投与され得るか、または粘膜を横切って伝達し得る組成物を得ることもまた可能であり得る。
【0088】
皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、代表的には、以下の1つ以上の成分を含む:注射用水のような滅菌希釈剤、生理食塩水溶液、不揮発性動物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸のような緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧の調節のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調節され得る。このような調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製されるアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアル中に封入され得る。
【0089】
注射のために適切な薬学的組成物は、滅菌水溶液または分散物、および滅菌注射可能な溶液または分散物の即座の調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与には、適切なキャリアは、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合で、上記組成物は、滅菌されなければならず、そして容易にシリンジで扱えるような程度まで流体であるべきである。製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、そして細菌およびカビのような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌および抗真菌薬剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロザルなどにより達成され得る。多くの場合で、組成物中に、等張剤、例えば、糖;マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合、必要な粒子サイズの維持により、および/または界面活性剤の使用により維持され得る。注射可能な組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチンを組成物中に含めることによりもたらされ得る。
【0090】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入されるか、または錠剤中に圧縮され得る。経口投与には、上記抗体は、賦形剤と組み合わせられ得、そして錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で用いられる。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材料が、上記組成物の一部として含められ得る。これら錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含み得る;微結晶セルロース、トラガントガムまたはゼラチンのようなバインダー;スターチまたはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料のような香味料。
【0091】
全身投与もまた、経粘膜手段または経皮手段によってであり得る。経粘膜または経皮投与には、透過されるべき障壁に適切な浸透剤が処方物中で用いられる。このような浸透剤は、当該技術分野で一般に知られ、例えば、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、例えば、ロゼンジ、鼻スプレー、吸入器または坐薬の使用により達成され得る。例えば、Fc部分を含む抗体の場合、組成物は、腸、口、または肺(例えば、米国特許第6,030,613号に記載されるようなFcRnレセプター−媒介経路を経由して)中の粘膜を横切って伝達し得る。経皮投与には、上記活性化合物は、当該技術分野で一般に知られるように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに処方され得る。吸入による投与には、上記抗体は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素のようなガスを含む加圧コンテナまたはディスペンサーあるいは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。
【0092】
特定の実施形態では、現在開示される抗体は、制御放出処方物のような身体からの急速な排出に対して上記化合物を保護するキャリアとともに調製され、これには、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムが含まれる。生体分解性、生体適合性ポリマーが用いられ得、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が含まれる。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。現在開示される抗体を含むリポソーム懸濁物もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして用いられ得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載のような、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0093】
投与の容易さ、および投薬量の均一性のために投薬量単位形態にある経口組成物または非経口組成物を処方することが有利であり得る。本明細書で用いられるとき、用語「投薬量単位形態」は、処置されるべき被験体のための単位の投薬量として適した物理的に別個の単位をいい;各単位は、必要な薬学的キャリアとともに所望の治療効果を生成するように算出された所定量の活性化合物を含む。
【0094】
本発明の組成物の毒性および治療的効目は、例えば、LD50(集団の50%まで致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性と治療的効果との間の用量比は治療指標であり、そしてそれは、比LD50/ED50として表され得る。大きな治療指標を示す組成物が好ましい。
【0095】
本発明で用いられる任意の組成物について、治療的に有効な用量は、最初、細胞培養アッセイから推定され得る。適切なバイオアッセイの例は、DNA複製アッセイ、試験管内腫瘍細胞感受性試験、および、例えば、実施例に記載されるようなその他のアッセイを含む。この細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける投薬量の範囲を処方する際に用いられ得る。用量は、IC50を含む循環血漿濃度範囲(すなわち、症状の最大値の半分の阻害を達成する抗体の濃度)を達成するように動物モデル中で処方され得る。血漿中の循環レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニターされ得る。この投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、またはない循環濃度の範囲内にある。この投薬量は、採用される投薬量形態、および利用される投与の経路に依存して変動し得る。
【0096】
抗体は、当該技術分野で周知である技法を利用して免疫トキシンになるように改変され得る(Vitetta 1993、Immunol Today 14:252;米国特許第5,194,594号)。細胞傷害性免疫複合体は当該技術分野で公知であり、そして治療剤として用いられている。このような免疫複合体は、例えば、メイタンシノイド(米国特許第6,441,163号)、チューブリン重合インヒビター、アウリスタチン(Mohammadら、1999 Int.J.Oncol 15(2):367〜72;Doroninaら、2003 Nature Biotechnology 21(7):778〜784)、ドラスタチン誘導体(Ogawaら、2001 Toxicol Lett.121(2):97〜106)21(3)778〜784)、Mylotarg(登録商標)(Wyeth Laboratories、Philidelphia、PA);メイタンシノイド(DM1)、タキサンまたはメルタシン(ImmunoGen Inc.)を用い得る。
【0097】
抗SLPI抗体を利用するイムノラジオ薬物は、当該技術分野で周知である技法を利用して調製され得る(Junghansら、Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686(第2版、ChafnerおよびLongo編、Lippincott Raven(1996);米国特許第4,681,581号、同第4,735,210号、同第5,101,827号、同第5,102,990号(RE 35,500)、同第5,648,471号、および同第5,697,902号)。イムノトキシンおよび放射標識された抗体分子の各々は、SLPIを発現する細胞を選択的に殺傷する。放射標識は、当該技術分野では公知であり、そして診断的または治療的放射性免疫複合体のために用いられている。放射性標識の例は、制限されずに以下を含む:放射線同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、レニウム−186、レニウム−188、サマリウム−153、銅−64、スカンジウム−47)。例えば、放射性免疫複合体で案内される臨床診断で用いられている放射性核種は、制限されないで:131I、125I、123I、99Tc、67Ga、および111Inを含む。抗体はまた、標的化免疫治療における潜在的使用のために種々の放射性核種で標識されている(Peirerszら、1987を参照のこと)。これらの放射性核種は、例えば、188Reおよび186Reならびに90Y、そしてより少ない程度で199Auおよび67Cu.I−(131)を含む(例えば、米国特許第5,460,785号を参照のこと)。放射線治療キレーターおよびキレーター結合体は当該技術分野で公知である(米国特許第4,831,175号、同第5,099,069号、同第5,246,692号、同第5,286,850号、および同第5,124,471号)。
【実施例】
【0098】
実施された実験および達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、そして本発明を制限すると解釈されるべきではない。
【0099】
(実施例1:ヒト抗体の生成)
完全なヒト抗体を生成するための好ましい方法は、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖系列形態フラグメントを含むように操作されているマウスのXenoMouse(登録商標)系統を用いる(Greenら、1994 Nature Genetics 7:13〜21;Mendezら、1997 Nature Genetics 15:146〜156;GreenおよびJakobovits、1998 J.Exp.Med.188:483〜495;米国特許第6,612,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、および同第5,939,598号)。代替のアプローチ、ミニ遺伝子座アプローチでは、異種Ig遺伝子座が、Ig遺伝子由来の断片(piece)(個々の遺伝子)を含めることにより模倣される。従って、1つ以上のV遺伝子、1つ以上のD遺伝子、1つ以上のJ遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくは、γ定常領域)が動物中への挿入のための構築物に形成される(Taylerら、1992、Chenら、1993、Tuaillonら、1993、Choiら、1993、Lonbergら(1994)、Taylorら(1994)、およびTuaillonら(1995)、Fishwildら(1996);米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5、789,650号、同第5,814,318号、同第5,877,397号、同第5,874,299号、同第6,255,458号、同第5,591,669号、同第6,023,010号、同第5,612,205号、同第5,721,367号、同第5,789,215号、同第5,643,763号、同第5,981,175号)。λκXenoMouse(登録商標)がλのV領域を利用して抗SLPI抗体を生成するために用いられ得ることが理解される。このような抗体は本発明の範囲内である。
【0100】
(実施例2:動物の免疫化および選択)
SLPIに特異的なモノクローナル抗体を、組換えヒトSLPI(R&D Systems、Minneapolis、MN、カタログ番号260−PI)を用いて表3に示されるスケジュールに従って、XenoMouse(登録商標)マウス(XenoMouse(登録商標)系列XMG2、Abgenix,Inc.Fremont、CA)を逐次的に免疫化することにより開発した。例えば、初回免疫処置は、TiterMax(登録商標)Goldと1:1(v/v)で混合された10μgの抗原を用いた。引き続く追加免疫処置は、発熱物質を含まないD−PBS中、100μgのミョウバンゲルと、そしてしばしば50%のTiterMax(登録商標)Goldと1:1(v/v)で混合された10μgの抗原でなされ、そして次に最終の追加免疫はPBS中の10μgの抗原であった。特に、各マウスは、足蹠における皮下注射によって免疫化した。動物は、0日、3日、8日、13日、17日、18日、21日、24日、および27日に免疫化した。動物を16日および23日に採血し、抗SLPI力価を決定するために血清を得た。
【0101】
【表3】

抗SLPI抗体力価は、間接的ELISAによって決定された。要約すれば、ビオチン化SLPI(0.5μg/mL)を、Sigma Streptavidin Clear Polystyrene 96ウェルELISAプレート上に30分間室温(RT)でコーティングした。次いで、これらプレートを4回手動で洗浄し、そしてペーパータオル上で軽く叩いて乾燥した。SLPI免疫化から、または未処理のXenoMouse(登録商標)動物のXenoMouse(登録商標)動物血清を、1%脱脂ミルク/PBS中、1:500の初期希釈から二連で1:2希釈で、最後のウェルはブランクとして残し、6ウェルまで滴定した。各ウェルについては50μlを用いた。これらプレートを1時間インキュベートし、次いで4回洗浄した。50μlのヤギ抗ヒトIgG Fc特異的HRP結合体化抗体(0.4μg/ml)を各ウェルに添加し、そして1時間室温でインキュベートした。これらプレートを5回蒸留水(dHO)で洗浄した。これらプレートを、TMBの添加で30分間発色させ、そしてELISAを1Mのリン酸の添加により停止した。個々のXenoMouse(登録商標)動物の特異的力価を、450nmでの吸光度から決定した(表2)。力価は、SLPIまたはストレプトアビジンいずれかへの血清の相互希釈を表し、そしてそれ故、数が高いほど、体液免疫応答が大きい。リンパ節を、免疫化されたXenoMouse(登録商標)動物からXenoMax(登録商標)抗体生成について回収し、SLPI対ストレプトアビジンに対する特異的力価は表4に示されるようであった。
【0102】
【表4】

(実施例3:XenoMax(登録商標)抗体生成)
B細胞の培養および選択
回収された動物からのB細胞を培養し、そしてSLPI特異的抗体を分泌するB細胞を以前に記載されるように単離した(Babcookら、1996 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843〜7848)。上記のように実施されたELISAは、500細胞/ウェルまたは150細胞/ウェルで培養した50のプレートからの一次SLPI特異的ウェルを識別するために用いた。表5に示されるように、55のウェル(OD≧0.3)が、バックグラウンド(0.1)を有意に超えるODを示した。
【0103】
【表5】

これらのデータは、非常に低い頻度のウェルを示し、そしてこれらウェルが、すべての細胞希釈で抗原特異性についてモノクローナルであったコーティングを示した。表6に示されるように、これら55の陽性のウェルは、SLPIへの結合について再スクリーニングされ、そして33のみのウェルが抗原特異的抗体を含むことが見出された。これら33のウェルの結合は、次いで、制限抗原分析によってランク付けられた。
【0104】
【表6−1】

【0105】
【表6−2】

(実施例4:制限抗原分析)
制限抗原分析は、B細胞培養上清液中の抗原特異的抗体を親和性ランク付けする方法である。極低濃度の抗原の存在下で、最高の親和性の抗体のみが、平衡にある任意の検出可能なレベルで抗原に結合し得る(2003年10月2日に公開された米国特許公開20030186327)。ビオチン化SLPIがストレプトアビジンプレート上に室温で30分間コーティングされ、800ng/mlから50ng/mlまで1:2で滴定した。各プレートを、0.05%アジ化ナトリウムを含む46μl/ウェルのPBS中の1%ミルク、次いで4μl/ウェルのB細胞上清液を添加する前にdHOで5回洗浄した。シェーカー上RTで22時間後、これらプレートをdHOで再び5回洗浄した。1μl/mlのヤギ抗ヒト(Fc)−HRPを、50μl/ウェルで添加した。RTで1時間後、これらプレートを再びdHOで5回洗浄し、そして50μl/ウェルのTMB基質を添加した。反応は、50μlの1Mリン酸の各ウェルへの添加により停止し、そしてこれらプレートを450nm波長で読み取った。結果は表7に示される。42C1、43H7、35F1および9G12を、さらなる評価およびクローニングのために選択した。
【0106】
【表7】

(実施例5:中和および結合阻害アッセイ)
抗体を、SLPI活性を阻害する能力についてスクリーニングした。このアッセイは、キモトリプシンへのSLPI結合および抗体の存在または不在下のキモトリプシン酵素活性について得られる阻害を評価することを含む。ビオチン化ウシキモトリプシン(5μg/ml)を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートとRTで30分間インキュベートした。各プレートを、抗SLPI抗体混合物(100mM Tris、10mM CaClおよび0.1%HSA pH7.5中に再構築されたSLPIの30μlを、試験されるモノクローナル抗体上清液の20μlと混合;最終濃度SLPI60ng/ml;RTで1時間インキュベート)の添加の前に、dHOで5回洗浄し、そしてプレートを1時間インキュベートした。プレートをdHOで5回洗浄し、次いで、50μlのポリクローナルヤギ抗SLPI(R&Dから購入)と1μg/ml/ウェルで1時間インキュベートした。洗浄後、50μlのウサギ抗ヤギHRP結合体化抗体/ウェルを添加し、そして1時間インキュベートした。洗浄後、50μlのTMB基質/ウェルを添加した。反応は、50μlの1Mリン酸/ウェルの添加により停止した。プレートを波長450nmで読み取った。結果を表8に示す。
【0107】
【表8−1】

【0108】
【表8−2】

中和は、各ウェルのODをとり、そしてそれを、添加された上清液のないコントロールウェルによって判断されるように最大の達成可能なODと比較することによって算出した。
【0109】
(実施例6:Abの単離)
SLPI特異的溶血プラークアッセイ:
ヒツジ赤血球細胞(SRBC)のビオチン化。SRBCを25%ストックとしてRPMI培地中に保存する。250μlのSRBCパック化細胞ペレットを1.0mlのストックからこれら細胞を遠心分離すること、および上清液を除去することによって調製した。この細胞ペレットを4.75mlのPBS pH8.6中で再懸濁した。別個の50mlチューブに、2.5mgのSulfo−NHSビオチンを45mlのpH8.6のPBS中に完全に溶解し、そして5mlのSRBCを添加し、そしてこのチューブをRTで1時間回転した。SRBCを3000gで5分間遠心分離し、上清液を棄て、そして細胞を3回、25mlのPBS pH7.4で洗浄し、4.75mlの免疫細胞培地(10%FCSを補填したRPMI 1640)を添加し、B−SRBCを再懸濁した(5%B−SRBCストック)。ストックは、4℃で保存した。
【0110】
B−SRBCのストレプトアビジン(SA)コーティング。1mlの5%B−SRBCからのB−SRBC細胞をペレット化し、1.0mlのPBS pH7.4中で2回洗浄し、微量遠心分離機中8000rpm(6800rcf)パルススピンで再びペレット化し、そしてpH7.4のPBSの1.0ml中で再懸濁し、5%(v/v)の最終濃度を得た。10mg/mlのストレプトアビジン(CalBiochem、San Diego、CA)ストック溶液の10μlを添加し、そしてチューブを混合し、そしてRTで20分間回転した。洗浄工程を繰り返し、そしてSA−SRBCを、1ml PBS pH7.4中に再懸濁した(5%(v/v))。
【0111】
SA−SRBCのSLPIコーティング。SA−SRBCを10μg/mlのビオチン化SLPIでコーティングし、混合し、そしてRTで20分間回転した。このSRBCは、上記のように1.0mlのpH7.4のPBSで2回洗浄した。SLPIでコーティングされたSRBCは、RPMI(+10%FCS)中に5%(v/v)の最終濃度に再懸濁した。
【0112】
免疫蛍光(IF)によるSLPI−SRBCの量の決定。10μlの5%SA−SRBCおよび10μlの5%SLPIでコーティングされたSRBCを、各々40μlのPBSを含む別個のチューブに添加した。コントロールのヤギ抗SLPI抗体を、40μg/mlのSRBCの各サンプルに添加した。これらチューブをRTで25分間回転し、そしてこれら細胞を次いで3回100μlのPBSで洗浄し、そして50μlのPBS中に再懸濁し、Alexa488(Molecular Probes、Eugene、OR)に結合体化した40μg/mLのRb抗ヤギIgG Fc抗体とインキュベートした。これらチューブをRTで25分間回転し、細胞を、100μlのPBSで洗浄し、そして10μlのPBS中に再懸濁した。10μlの染色細胞を清澄なガラス顕微鏡スライド上にスポットし、ガラスカバースリップで覆い、蛍光下で観察し、そして蛍光強度について0〜4のスケールでスコア付けした。
【0113】
ブラズマ細胞の調製。目的の免疫グロブリンを分泌するB細胞クローンを含むとして先に同定された単一のミクロ培養ウェルを、回収し、そして新鮮チューブに移した(最終容量約500〜700μl)。細胞を、1500rpm(240rcf)で2分間室温で遠心分離し、次いで、このチューブを180゜回転し、そして再び1500rpmで2分間遠心分離した。凍結媒体を流し出し、そして免疫細胞を100μlのRPMI(10%FCS)中に再懸濁し、次いで遠心分離した。RPMI(10%FCS)でのこの洗浄を繰り返し、そして細胞を60μlのRPMI(FCS)中に再懸濁し、そして使用直前まで氷上に保存した。
【0114】
プラークアッセイ。細胞の60μlサンプルを、各々60μlのSLPIでコーティングされたSRBC(5%v/vストック)、RPMI(FCS)中に調製された4×モルモット補体(Sigma、Oakville、ON)ストック、および4×増強血清ストック(RPMI(FCS)中1:900)と混合した。この混合物(3〜5μl)をシリコーンエッジ調製されたガラススライド(SigmaCoat、Sigma、Oakville、ON)上にスポットし、非希釈パラフィンオイルで被覆し、そして37℃で最低45分間インキュベートした。
【0115】
結果。SRBCのSLPIコーティングは、免疫蛍光顕微鏡法によって定性的に決定し、そしてコーティングを検出するためのコントロールのヤギ抗SLPIポリクローナル抗体で、二次検出試薬単独(0/4)に比較して非常に高い(4/4)ことが見出された。ストレプトアビジンでコーティングされたのみであった赤血球細胞に対し、コントロールのヤギ抗SLPI抗体を用いて検出される信号はなかった(0/4)。これらの赤血球細胞は、次いで、ウェル42C1、43H7、9G12および35F1から抗原特異的プラズマ細胞を識別するために用いられた。抗原特異的プラズマ細胞を救済するための顕微操作の後、可変領域遺伝子をコードする遺伝子は、単一プラズマ細胞に対するRT−PCRによって救済された。
【0116】
(実施例7:SLPI抗体の発現)
単一のプラズマ細胞の単離の後、mRNAを抽出し、そして逆転写酵素PCRを用いてcDNAを生成した。可変重鎖および可変軽鎖をコードするcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて特異的に増幅した。可変重鎖領域を、pcDNA3.1+/Hygro(Invitrogen、Burlington、ON)の多重クローニング部位中にヒトIgG2の定常領域をクローニングすることにより生成したIgG2発現ベクター中にクローン化した。可変軽鎖領域は、pcDNA3.1+/Neo(Invitrogen、Burlington、ON)の多重クローニング部位中にヒトIgKの定常領域をクローニングすることにより生成したIgK発現ベクター中にクローン化した。上記重鎖発現ベクターおよび軽鎖発現ベクターを、次いで、70%コンフルエントのヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞の60mmディシュに同時リポフェクションし、そしてトランスフェクトされた細胞を24時間インキュベートし、組換え抗体を分泌した。上清液(3mL)をHEK293細胞から回収し、そしてインタクトな抗体の分泌およびSLPIへの結合をELISAで試験した。分泌を検出するために、96ウェルプレートを2μg/mLのヤギ抗ヒトIgG H+Lで一晩コーティングした。SLPIバインダーの検出には、ストレプトアビジンプレートを、ビオチン化ヒトSLPI(0.5μg/mL)で一晩4℃でコーティングした。これらプレートをdHOで5回洗浄した。非希釈ミニリポフェクション上清液からの7ウェルについて1:2滴定された組換え抗体を添加し、インキュベートし、そしてこれらプレートをdHOで5回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的HRP結合体化抗体を1μg/mLの最終濃度で添加し、RTで1時間インキュベートし、そしてこれらプレートを、先のように洗浄した。プレートを、TMBの添加で30分間発色し、そして反応は、1Mのリン酸の添加によって停止した。各ELISAプレートを分析して、450nmで各ウェルの光学的密度を決定した。結果は表9に示される。
【0117】
【表9】

(実施例8:抗SLPI抗体の構造分析)
表9に示された抗体について可変重鎖および可変軽鎖を配列決定し、それらのDNAおよびタンパク質配列を決定した。
【0118】
【化9】

【0119】
【表10】

【0120】
【化10】

【0121】
【表11】

【0122】
【化11】

【0123】
【表12】

【0124】
【化12】

【0125】
【表13】

【0126】
【化13】

【0127】
【表14】

【0128】
【化14】

【0129】
【表15】

【0130】
【化15】

【0131】
【表16】

【0132】
【化16】

【0133】
【表17】

可変重鎖ヌクレオチド配列を分析し、VHファミリー、D領域配列およびJ領域配列を決定した。これら配列を次いで、翻訳し、一次アミノ酸配列を決定し、そして生殖系列V、DおよびJ領域配列と比較し、体細胞過剰変異を評価した。抗SLPI抗体の選択された生殖系列配列を表18に示す。
【0134】
【表18】

抗SLPI抗体重鎖V領域の一次アミノ酸配列は、上記の表10、12、14および16に示される。軽鎖V領域アミノ酸配列は、上記の表11、13、15および17に示される。
【0135】
(実施例8:抗SLPI抗体のドメイン分析)
免疫グロブリン鎖の可変(V)領域は、複数の生殖系列DNAセグメントによってコードされ、これらは、B細胞個体発生の間に、機能的可変領域(VDJまたはV)に連結される。SLPIに対する抗体応答の分子多様性および遺伝的多様性を詳細に研究した。SLPIに特異的な4つの個々の抗体の分析は、2つの生殖系列VH遺伝子、V4−31およびV3−33について優勢を示した(表18)。さらに、V4−31生殖系列遺伝子は、J4b生殖系列J領域と優先的に対になり、そしてV3−33生殖系列遺伝子は、J6b生殖系列J領域と優先的に対となった。表18に示されるように、SLPIに対する抗体は、L2V3およびA2V2軽鎖生殖系列遺伝子に対する優先度を示し、両者はJ1軽鎖生殖系列遺伝子と優先的に対となった。
【0136】
(エピトープビニングおよびBiaCore(登録商標)親和性決定)
(エピトープビニング)
本明細書に記載される特定の抗体は、米国特許出願公開第20030157730号に記載されるプロトコールに従って、「ビニングされる(binned)」。MxhIgG結合体化ビーズが、一次抗体への結合のために調製される。必要な上清液の容量は、以下の式を用いて算出される:(n+10)×50μL(ここでn=プレート上のサンプルの総数)。濃度が既知である場合、0.5μg/mLが用いられる。ビーズストックは、穏やかにボルテックスされ、次いで、上清液中に、ウェルあたり2500の各ビーズまたは0.5×105/mLの濃度に希釈され、そしてRTで一晩、または0.5μg/mLの既知濃度である場合2時間、暗所中のシェーカー上でインキュベートされる。吸引の後、50μLの各ビーズをフィルタープレートの各ウェルに添加され、次いで、100μL/ウェルの洗浄緩衝液を添加し、そして吸引することにより1回洗浄される。抗原およびコントロールを、フィルタープレートに50uL/ウェルで添加し、次いで覆い、そしてシェーカー上で1時間暗所中インキュベートさせる。洗浄ステップの後、二次未知抗体を、一次抗体について用いられるのと同じ希釈(または既知の場合同じ濃度)を用いて50μL/ウェルで添加する。次いで、プレートを暗所中、2時間、RTにおいてシェーカー上でインキュベートし、洗浄ステップが続く。次に、1:500希釈した50μL/ウェルビオチン化mxhIgGを添加し、そして暗所でRTにおいてシェーカー上で1時間の間インキュベートさせる。洗浄ステップの後、50μL/ウェルのストレプトアビジン−PEを1:1000で添加し、そしてRTにおいてシェーカー上15分間暗所中でインキュベートさせる。洗浄ステップの後、各ウェルを80μLのブロッキング緩衝液中に再懸濁し、そしてLuminexを用いて読み取る。結果は、上記モノクローナル抗体が、別個の区分(bin)に属することを示す。異なる分類からの抗体による競争結合は、類似または隣接エピトープに対する抗体特異性を支持する。非競争結合は、特有のエピトープに対する抗体特異性を支持する。
【0137】
(BiaCore(登録商標)分析を用いた抗SLPI mAb親和性の決定)
BiaCore(登録商標)分析を、SLPI抗原への抗SLPI抗体の結合親和性を決定するために使用した。この分析を、研究グレードのCM5センサチップを備えたBiaCore(登録商標)2000バイオセンサを用いて、25℃で行った。CM5 BiaCore(登録商標)チップを覆う高密度のヤギαヒト抗体表面を、慣用的なアミンカップリングを用いて調製した。抗体を含む上清を、HBS−P泳動様緩衝液(100μg/mL BSAおよび10mg/mLカルボキシメチルデキストランを含む)で約5μg/mLに希釈した。次いで、抗体を、2分間の接触時間で別個の表面に個々に捕捉し、そして抗体ベースラインの安定化のための5分間洗浄した。
【0138】
SLPI抗原を、75秒間にわたって、各表面に対して注入し、その後、3分間で解離した。二重参照結合データ(double−referenced binding data)を、シグナルをコントロールフローセルから差し引き、SLPI注入の直前に緩衝液注入のベースラインドリフトを差し引くことにより得た。各mAbについてのSLPI結合データを、各表面に捕獲されたmAbの量に対して正規化した。この正規化したドリフト補正した応答もまた、測定した。25℃での抗SLPI mAB結合のこの反応速度分析結果を、以下の表19に列挙する。
【0139】
【表19】

(実施例9:エラスターゼ阻害アッセイ)
組換えヒトSLPI(R&D Systems,Minneopaolis,MN)(ストック濃度1mg/ml:100μg/ml、10μg/ml、1μg/mlに希釈;4μl/ウェル)を、40μg/ml、10μg/ml、および2μg/mlの最終SLPI濃度になるようにモノクローナル抗体の各々と混合し、室温で5分間インキュベートした。0.6μl/ウェル(169μl緩衝液(50mM NaOAc(pH5.5)、200mM NaCl)中で50μgを再構成、最終濃度10μM)のヒトエラスターゼ(Calbiochem,La Jolla,CA)を、0μl(コントロール)または2μlの各SLPI希釈物と混合するか、またはSLPI作業用緩衝液(100μlの最終容量)中で抗体と混合した。コントロールを、ちょうど100μlの作業用緩衝液を用いて調製した。サンプルを、37℃で15分間インキュベートした。100μlのBODIPY基質を添加し、サンプルを、室温で少なくとも60分間インキュベートし(37℃で一晩のインキュベーションにより、検出可能なシグナルが強められ得る)、遮光した。次いで、そのサンプルを、CytoFluo蛍光測定器により読み取った(励起=480±25nm、発光=530±25nm)。結果を図1に示す。モノクローナル抗体35F1を、#50として参照する;モノクローナル抗体42C1を、#24として参照する;モノクローナル抗体43H7を#11として参照する;モノクローナル抗体9G12を#36として参照する。SLPI−エラスターゼ活性の用量依存性阻害を、各抗体で実証した。抗体35F1および42C1は、このアッセイにおいて最も強い中和活性を示した。
【0140】
(実施例10:カテプシンG阻害アッセイ)
100μg/ml、10μg/ml、1μg/mlに希釈した、2μlの組換えヒトSLPIを、40μg/ml、10μg/ml、2μg/mlの最終濃度になるように、モノクローナル抗体の各々に添加し、室温で5分間インキュベートした。5μlのカテプシンG(Calbiochem La Jolla,CA)(100mU カテプシンGを、100μlの緩衝液(50mM NaOAc(pH5.5)、150mM NaClを含む)中に再構成した;最終濃度1mU/μl)を、0μl(コントロールcontrol)、2μlの希釈したSLPIと混合するか、またはSLPIを、作業用緩衝液(100mM Tris−HCl、pH8.3、0.96M NaCl、1% BSA)中の抗体(最終容量98μl)と混合した。コントロールもまた、ちょうど100μl 作業用緩衝液を用いて調製した。サンプルを37℃15分間インキュベートした。2μlの基質を添加し、室温で少なくとも30分間インキュベートし、遮光した。そのサンプルを、OD 405nmで読み取った。結果を図2に示す。モノクローナル抗体35F1を#50として参照する;モノクローナル抗体42C1を#24として参照する;モノクローナル抗体43H7を、#11として参照する;モノクローナル抗体9G12を#36として参照する。SLPI−カテプシンG活性の用量依存性阻害を、抗体35F1、抗体42C1および抗体9G12を用いて実証した。抗体35F1および抗体42C1は、最高の効果を有した。
【0141】
(実施例11:ヒト腫瘍組織マイクロアレイでのIHC評価)
モノクローナル抗体35F1、42C1および9G12を、凍結および固定した陽性コントロールOVCAR−8卵巣癌腫細胞;IGROV−1異種移植片組織(Institute for Drug Developent,San Antonio,Texas);ヒト卵巣癌組織標本(NDRI);ヒト腫瘍組織マイクロアレイ(TMA,Ardais製,Lexington MA);またはBiogenix(San Ramon,CA)から入手したヒト組織アレイとの反応性について免疫組織化学(IHC)により評価した。抗体42C1は、固定OVCAR−8細胞を染色し、この抗体を、他の組織標本に対する反応性の評価のために選択した。コントロールに、アイソタイプを合わせた抗体PK16.3、および陽性コントロール卵巣癌種標本を含めた。
【0142】
組織切片(5μm)を、IGROV−1異種移植片またはヒト卵巣癌組織のいずれかから得た、ホルマリン固定してパラフィン包埋した組織サンプルから切り出した。これらの切片を、その供給源物質に依存して、2つの方法のうちの1つによって、42C1抗体で染色した。両方の場合、組織切片を、キシレンおよび勾配を緩くした一連のエタノール、最後にPBS中でインキュベートすることで再水和した。また、両方の場合において、内因性ペルオキシダーゼ活性を、メタノール中の3%過酸化水素溶液中でクエンチした。
【0143】
異種移植片組織の染色を、以下のように行った:組織切片を、ブロッキング緩衝液(PBS中、5% BSA(Sigma)、1% ヤギ血清(Jackson Immunolabs,West Grove,PA))中で1時間ブロックした。切片を、ブロッキング緩衝液中に希釈した、精製42C1抗体またはアイソタイプコントロール(IgG2;Fitzgerald Industries)とともにインキュベートした。1時間後、切片(ection)を、PBS中で、これを3回交換して、各5〜10分間洗浄した。次いで、その切片を、ブロッキング緩衝液中で希釈した1:200希釈のビオチン化ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunolabs)とともに、45分間インキュベートした。切片を洗浄し、ブロッキング緩衝液中の1:200希釈のストレプトアビジン結合体化西洋ワサビペルオキシダーゼ(Jackson Immunolabs)とともに30分間インキュベートし、次いで、前述のように洗浄した。抗体を、DAB試薬(Vector labs,CITY STATE)を用いて検出した。切片を、ヘマトキシリン(Fisher Scientific)で対比染色し、アルコールおよびキシレンに通して脱水し、パーマウント(permount)(Fisher Scientific)を用いてカバースリップをかぶせた。
【0144】
ヒト組織サンプルの染色は、一次抗体および二次抗体を、PBS中の5% BSAと1% ヤギ血清の中、約10:1の42C1またはコントロールIgG:二次ビオチン化ヤギ抗ヒト抗体のモル比で、37℃で1時間予め複合体形成させたこと以外は、本質的に同じプロトコルに従った。次いで、この複合体を、1:2000希釈のヒト血清でブロックし、再び37℃で1時間インキュベートした。上記のように、タンパク質ブロッキング工程および染色工程で処理して、上記のように完了させた組織切片に、この複合体を1時間適用した。
【0145】
Ardaisマイクロアレイ組織で得られたIHCの結果を、表20に示す。
【0146】
【表20】

0(陰性) 染色なし
1(弱い) 1+染色強度を有する特異的染色細胞が1〜100%、または2+染色強度を有する特異的染色細胞が1〜20%
2(中程度) 特異的染色細胞の21〜79%が2+染色強度、または特異的染色細胞の1〜49%が3+染色強度
3(強い):特異的染色細胞の80〜100%が2+染色強度、または特異的染色細胞の50%以上が3+染色強度
高発現および中程度の発現の頻度%=(スコア3+スコア2)/(スポット数)×100%
低発現の頻度%=スコア1/(スポット数)×100%。
【0147】
抗体42C1は、癌標本を染色し、高発現および中程度の発現の頻度は、子宮内膜癌の57.9%で観察され、卵巣癌の27.8%で観察され、肺癌の11.1%で観察され、腎臓癌の10%で観察され、乳癌の5%で観察された。正常組織標本では、高発現および中程度の発現の頻度は、膵臓の66.7%で観察され、唾液腺の50%で観察され、肺の11.1%で観察され、子宮内膜の10%で観察された。弱い染色は、結腸癌、乳癌、脳の癌、黒色腫、前立腺癌およびリンパ腫で観察された。弱い染色は、多くの正常組織および正常な適合させた組織(例えば、扁桃、リンパ節、脾臓および前立腺)で観察された。
【0148】
42C1で染色した卵巣癌組織アレイ(Biogenix)は、患者(6名の腺腫のうち3名、4名の腺癌のうち3名および10名のあまり分化していない腺癌のうち6名を含む)に由来するSLPI癌組織で陽性染色を示した。6つの正常卵巣組織サンプルのいずれも、42C1によって陽性染色されなかった。
【0149】
(実施例12:ウェスタンブロット分析)
哺乳動物腫瘍由来細胞株である、OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、HT29、IGROV−1、SK−OV−3、TK−10、A498、Caki−2、MDAMB231、786−0、U87MG、A549、SW480、SW620、MCF7、およびA2780をATCC(Manassas,VA)から入手し、無血清DMEM培地中で3日間増殖させた。培地を回収し、本発明のヒト抗SLPI抗体(5μg/ml)(42C1)およびプロテインセファロースAビーズ(Pharmacia Mississauga,Canada)とともに4時間インキュベートすることによって免疫沈降させた。ビーズを、IP緩衝液(150mM NaCl、50mM Tris(pH7.5)、1% NP−40)中で5回洗浄し、続いてウェスタンブロットローディング色素(Invitrogen Carlsbad,CA)中、95℃で変性させた。溶出させたタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ニトロセルルース膜に転写した。ブロットを、ヒト抗SLPI抗体とともに4℃で24時間インキュベートした。その膜を洗浄し、1:1000希釈のペルオキシダーゼ結合体化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immunolabs,West Grove,PA)で、室温で1時間プローブした。タンパク質を、化学発光検出により可視化した。
【0150】
免疫沈降およびウェスタンブロット分析を用いて、SLPIタンパク質発現を、卵巣癌細胞である、OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−8およびIGROV−1;腎臓癌細胞株であるCaki−2、A498、786−0;肺癌細胞株であるA549;結腸癌細胞株であるHT29、SW480、SW620;ならびに乳癌細胞株であるMCF7の馴化培地中で検出した。発現レベルは、卵巣細胞株であるOVCAR5、SKOV−3;およびTK−10(腎臓)、MDAMB231(乳房)、U87MG(神経膠芽細胞腫)およびA2780(肺)では検出できなかった(図3)。
【0151】
(実施例13.SLPI血清ELISA)
サンドイッチELISAを、42C1抗体およびヤギ抗SLPIポリクローナル抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて以下のプロトコルに従って、卵巣癌細胞から回収した馴化培地中で、および卵巣癌患者の血清中でSLPIレベルを定量するために開発した:
コーティング緩衝液(0.1M NaHCO、pH9.6)中の5μg/ml濃度の、50μlの捕捉抗体ヤギ抗SLPIポリクローナル抗体を、ELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、200μlのブロッキング緩衝液(PBS中、0.5% BSA、0.1% Tween 20、0.01% チメロサール)で、25℃で1時間処理した。PBS中0.05% Tween 20洗浄緩衝液(WB)を用いてプレートを洗浄した(3×)。卵巣癌細胞からの馴化培地または正常患者血清もしくは卵巣癌患者血清(Clinomics,Bioreclamation,Cooperative Human Tissue Network)を、ブロッキング緩衝液中で50%に希釈し、25℃で2時間、プレートの上でインキュベートした。プレートをWBで洗浄し、次いで、42C1抗体(4μg/ml)とともに25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、二次ペルオキシダーゼ結合体化ロバ抗ヒト抗体(SOURCE)とともに1時間インキュベートし、上記のように洗浄し、次いで、100μl/ウェルのTMB基質(Pharmingen)で処理した。その反応を、2M HSOで停止させ、450nmのELISAプレートリーダーを用いて分析し、550nmで補正した。SLPIの濃度を、4パラメーター曲線フィッティングプログラムを用いて、SLPI標準曲線に対する比較により計算した。
【0152】
OVCAR−3細胞、IGROV−1細胞およびSK−OV−3細胞において、分泌性SLPIレベルは、それぞれ241ng/ml/10細胞、202.8ng/ml/10細胞および1.2ng/ml/10細胞であった。これは、ウェスタンブロット分析の結果と一致する。増大したSLPIレベルがまた、正常ボランティアのもの(189.4ng/ml)と比較して、卵巣癌患者において検出された(250.1ng/ml)。
【0153】
(実施例14:SLPI発現のFACS分析)
OVCAR−4細胞株、OVCAR−5細胞株、OVCAR−8細胞株、SK−OV−3細胞株、A2780細胞株、SF294細胞株、786−0細胞株へ結合する抗SLPI抗体のFACS分析を、以下のように行った。
【0154】
懸濁した細胞を、氷冷FACS緩衝液(SOURCE)で2回洗浄し、抗体42C1(170nM/FACS緩衝液)とともに1時間インキュベートし、次いで、洗浄した。細胞を、FACS緩衝液中のペルオキシダーゼ結合体化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immunolabs)の1:500希釈液とともに30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、PBS中の1%ホルムアルデヒドで固定した。FACSCaliberTMフローサイトメーター(Becton Dickinson,Frankin Lakes,NJ)を用いて分析を行った。
【0155】
42C1抗体は、SLPI陰性細胞株786−0(Geo Mean Ratio 3)と比較して、SLPI発現卵巣癌細胞株:OVCAR−4(Geo Mean Ratio 37)、OVCAR−5(Geo Mean Ratio 10)、およびOVCAR−8(Geo Mean Ratio 35)でSLPIに結合した。
【0156】
(実施例15:卵巣癌腫細胞に対するSLPI中和抗体の効果)
卵巣癌腫細胞増殖に対するSLPIの効果、およびSLPI媒介性細胞増殖に対するSLPI中和抗体の効果を、調査した。
【0157】
OVCAR−3卵巣癌腫細胞を、96ウェル平底プレートにある10% FBS含有DMEM中に、1000細胞/ウェルにてプレートした。24時間後、1)組換えSLPI(10% FBS含有100μl DMEM培地において、0nM、42.5nM、85nM、170nM、340nMおよび680nM);2)0nM〜240nMの範囲の濃度である抗SLPI抗体;3)IgGコントロール抗体;または4)漸増濃度の42C1抗体と混合した組換えSLPI(70nM)を、上記細胞に添加した。72時間後、培地を取り除き、50μlのトリプシンを、各ウェルに添加した。一旦、細胞を完全に脱離させた後、50μlの増殖培地を添加して混合した。その後、20μlの細胞混合物を、100mm組織培養ディッシュに移した。細胞を、コロニーが形成されるまで、37℃にて7日間インキュベートした。コロニーを、クリスタルバイオレット溶液を使用して染色し、計数した。そのデータを、未処理コントロールの%として表した。
【0158】
外因性SLPIは、OVCAR−3細胞増殖を50%増加させ、最適用量は170nMであった(図4A)。外因性SLPIの非存在下では、抗体42C1は、OVCAR−3細胞増殖を用量依存性様式で減少させ、240nMにて最大の効果(60%)があった。抗体42C1は、外部から添加されたSLPIタンパク質により誘導されるOVCAR−3細胞増殖をブロックした(図4B)。さらに、240nMの抗体42C1は、SLPIタンパク質(170nM)(SLPI:抗体のモル比は約1:1)の刺激効果を完全に消失させた。
【0159】
IGROV−1癌腫細胞を、96ウェル平底プレートにおいて10% FBS含有DMEM中に1000細胞/ウェルにてプレートした。24時間後、0nM〜240nMの範囲の濃度の抗SLPI抗体、またはIgGコントロール抗体を、上記細胞に添加した。72時間後に培地を除去し、50μlのトリプシンを各ウェルに添加した。一旦、細胞が完全に脱離した後に、50μlの増殖培地を、添加して混合した。その後、20μlの細胞混合物を、100mm組織培養ディッシュに移した。細胞を、コロニーが形成されるまで、37℃にて7日間インキュベートした。コロニーを、クリスタルバイオレット溶液を使用して染色し、計数した。そのデータは、未処理コントロールの%として表した。
【0160】
抗体35F1および抗体42C1は、IGOV−1細胞の増殖を、アイソタイプが一致する抗体で処理した細胞と比較して阻害した。これらのIC50は、それぞれ、163nMおよび121nMであった。両方の抗体はまた、同様のアッセイにおいてSW480の増殖を阻害し、そのIC50は85nMであった。
【0161】
(実施例16:細胞に対するエラスターゼ活性のSLPI阻害の抗SLPI抗体による逆転)
無細胞アッセイにおいて、エラスターゼ(30nM)を、SLPI(170nM)と混合するかまたは混合せず、かつ種々の濃度の42C1と混合し、37℃にて15分間インキュベートした。その後、その基質を上記混合物に添加し、プロテアーゼ活性を、蛍光の増加によって検出した。用量170nMのSLPIは、エラスターゼ活性を70%阻害し、42C1は、SLPI媒介性阻害を用量依存性様式で逆転した(図5A)。
【0162】
SLPIがエラスターゼ活性を直接阻害したことを観察したので、本発明者らは、SLPIがエラスターゼ媒介性毒性からOVCAR−3細胞をレスキューし得るか否かを試験した。OVCAR−3細胞を、96ウェル平底プレート中に、2000細胞/ウェルにてプレートし、24時間後に、1)エラスターゼ(1% FBS含有DMEM培地100μl中にて、150nM〜7500nMの範囲の濃度);2)SLPI(0nM〜8500nMの範囲の濃度)と混合したエラスターゼ(750nM);または3)エラスターゼ(750nM)とSLPI(0nM〜8500nM)と抗SLPI抗体(0nM〜2125nMの範囲の濃度)との混合物を、上記細胞に添加した。48時間後に、Titer−BlueTM細胞生存度アッセイを、製造業者の仕様(Promega)に従って実施した。エラスターゼは、細胞生存率を用量依存性様式で減少させた(図5B)。SLPIは、上記細胞に対するこのエラスターゼ効果を逆転させた(図5C)。42C1抗体は、エラスターゼ毒性からのSLPIによる細胞のレスキュー効果を阻害した(図5C)。
【0163】
(実施例17:抗SLPI抗体のインビボ効力)
SW480結腸直腸腺癌異種移植片を、雌ヌードマウスにおける30mg〜40mgのSW480腫瘍フラグメントの皮下移植によって確立した。投与は、確立した(約114mmの)腫瘍を保有する10匹のマウスの群において、1日目に始めた。抗SLPI抗体42C1治療を、10mg/kg、3mg/kg、および1mg/kgにて静脈内投与した。この治療は、4日間毎に1回、合計4回投与(q4dx4)の間与えた。この3mg/kgの42C1レジメンをまた、毎週1回3週間(qwkx3)の間与える標準的な腹腔内イリノテカン(CPT)処置100mg/kgと合わせた。参照群には、イリノテカン単独治療を与えた。
【0164】
抗SLPI抗体治療は、10mg/kg、3mg/kg、および1mg/kgにて、それぞれ、80%の腫瘍増殖の遅延(% TGD)(ビヒクル処置マウスに対する薬物処置マウスの、終点までのメジアン時間の増加パーセントとして定義される)、33%の腫瘍増殖の遅延(% TGD)、および4%の腫瘍増殖の遅延(% TGD)を生じた。10mg/kgにて、抗体処置は、平均腫瘍体積(MTV)20mmである4匹の89日間生存マウスを生じ、2匹の長期間無腫瘍生存マウス(LTTFS)を生じた。3mg/kgでは、1匹の長期間無腫瘍生存マウス(LTTFS)が存在し、1mg/kgでは、生存マウスは存在しなかった。イリノテカン治療は、118%の腫瘍増殖の遅延(TGD)を生じ、89日間生存マウスは生じなかった。イリノテカンと3mg/kg抗体との組み合わせは、113%の腫瘍増殖の遅延(TGD)を生じ、平均腫瘍体積(MTV)が198mmである2匹の89日間生存マウスを生じ、そして1匹の部分退縮(PR)応答を生じた。すべての処置は、充分に許容された。結果が、図6において示される。
【0165】
OVCAR−3卵巣癌腫異種移植片を、雌ヌードマウスにおける30mg〜40mgのOVCAR−3腫瘍フラグメントの皮下移植によって確立した。投与は、確立した(約115mmの)腫瘍を保有する10匹のマウスの群において、1日目に始めた。抗SLPI抗体42C1治療を、10mg/kg、3mg/kg、および1mg/kgにて静脈内投与した。この治療は、4日間毎に1回、合計4回投与(q4dx4)の間与えた。この3mg/kgのMab 42C1レジメンをまた、静脈内パクリタキセル処置(15mg/kg)(2日間毎に1回、合計5回(q2dx5))と合わせた。参照群には、パクリタキセル単独治療(2日間毎に1回、合計5回(q2dx5))を与えた。コントロールマウスには、リン酸緩衝化生理食塩水(ビヒクル)を静脈内投与した。その腫瘍測定値および体重を、研究期間全体を通して毎週2回記録した。上記の10匹の動物群における腫瘍増殖についての終点体積は、1200mmである。
【0166】
結果は、Mab 42C1による処置が、ビヒクル処置のみを受けるコントロールマウスと比較した場合に、平均腫瘍体積(MTV)を減少させ、この研究期間を生き抜く動物の数を増加させ、そして長期間無腫瘍生存マウス(LTTFS)の数を増加することを、示す。
【0167】
(実施例18:SLPIに対する抗体を用いる癌の診断)
卵巣癌腫瘍を有すると疑われる被験体を、同定する。その疑わしい腫瘍由来の組織サンプルを、試験のために取り出す。その後、取り出した組織を、比色標識を有する抗SLPI抗体と接触させる。その抗SLPI抗体が、取り出された組織に対して特異的に結合するか否か、決定する。結合は、癌性組織の指標である。一方、結合しないことは、非癌性組織の指標である。患者の状態を、後の試験、カウンセリング、および/または処置を容易にするために、それに従って診断する。
【0168】
(実施例19:SLPIに対する抗体を用いる癌の処置)
SLPI活性を調節することは、癌に罹患する危険がある被験体または癌に罹患している被験体を処置するために有用である。そのような被験体は、本発明の抗SLPI抗体による処置から利益を受ける。代表的には、抗体を、外来患者の設定では、ゆっくりした静脈内(IV)注入によって約0.1mg/kg用量〜約1.0mg/kg用量にて毎週投与することによって投与する。抗体の適切な治療上有効な用量は、主治医が選択する。この用量は、およそ1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、および500μg/kg〜5mg/kgの範囲である。
【0169】
上記抗体を使用して、SLPI活性に関連する疾患を予防し、そして/またはSLPI活性に関連する疾患の重篤度および/または症状を軽減する。
【0170】
ヒトにおける抗体の臨床的効力を試験するために、癌(特に、卵巣癌腫、肺癌腫、または結腸癌腫であるが、これらに限定されない)を有する個体を同定し、その個体を無作為に処置群に分ける。処置群は、抗体処置を受けない群と、種々の用量の抗SLPI抗体で処置される群とを含む。個体を、将来追跡する。抗体処置を受ける個体は、その状態の改善を示す。
【0171】
(等価物)
上記の説明および実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態を詳述しており、本発明者らによって企図される最良の様式を記載する。しかし、上記の説明がどんなに詳細に思われ得るとしても、本発明は多くの様式で実施され得ること、そして本発明は添付の特許請求の範囲およびそのあらゆる等価物に従って解釈されるべきであることが、認識される。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、エラスターゼ阻害アッセイの結果のグラフを示し、そこでは、本発明の抗体が、用量依存様式でエラスターゼの酵素活性を阻害している。さらなる詳細について実施例9を参照のこと。
【図2】図2は、カテプシンG阻害アッセイの結果のグラフを示し、そこでは、本発明の抗体が、用量依存様式でカテプシンGの酵素活性を阻害している。さらなる詳細について実施例10を参照のこと。
【図3】図3は、種々の哺乳動物腫瘍由来細胞株由来の馴化培養培地を用いた、本発明の抗SLPI抗体の特異的反応性を示すウェスタンブロットの画像である。さらなる詳細については、実施例12を参照のこと。
【図4】図4は、卵巣癌細胞に対するSLPI中和抗体の影響を示す。(A)は、クローン原性アッセイにおける外から添加されたSLPIによりOVCAR−3細胞増殖の刺激を描写する。各プレート上のコロニーの数が計数され、そして生データは非処置サンプルに対して規準化され、そして生存%として表された。(B)は、クローン原性アッセイにおける、外から添加されたSLPIが有りまたは無しで、抗体42C1によるOVCAR−3細胞増殖の阻害を描写する。無関係のIgGおよび外からのSLPI(○);無関係のIgG(■)抗SLPI抗体おび外からのSLPI(△);抗SLPI抗体(◆)。さらなる詳細について実施例15を参照のこと。
【図5A】エラスターゼ活性のSLPI阻害。(A)エラスターゼ活性のSLPI阻害は、抗SLPI抗体42C1の添加により逆転されるが(■)、コントロール抗体ではそうではない(△)。さらなる詳細について実施例16を参照のこと。
【図5B】エラスターゼ活性のSLPI阻害。(B)OVCAR−3細胞生存に対する種々の濃度のエラスターゼの影響。さらなる詳細について実施例16を参照のこと。
【図5C】エラスターゼ活性のSLPI阻害。(C)OVCAR−3細胞のエラスターゼ阻害のSLPI逆転(◆)は、抗SLPI抗体によってブロックされる(○)。さらなる詳細について実施例16を参照のこと。
【図6】胸腺欠損マウスにおけるSW480結腸癌の生育に対する抗SLPI抗体の影響。ビヒクル(□);CPT 100mg/kg ip(△);抗SLPI Mab10mg/kg iv(▼);抗SLPI Mab3mg/kg iv(◆);抗SLPI Mab1mg/kg iv(▲);およびCPT 100mg/kgとともに抗SLPI Mab3mg/kg iv(◇)。さらなる詳細について実施例17を参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SLPIに特異的に結合する、単離されたヒト抗体。
【請求項2】
SLPIの活性を調節する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
SLPIの活性を中和する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
10−1より大きな親和性定数でSLPIに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
VH4−31、VH3−33、L2VK3、およびA2VK3を含む群より選択される領域を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
VH4−31およびL2VK3に由来する領域を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
VH3−33およびA2VK3に由来する領域を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号73、配列番号74、配列番号75、または配列番号76に示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号2、配列番号20、配列番号38、配列番号56、配列番号73、配列番号74、配列番号82、または配列番号84に示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号11、配列番号29、配列番号47、配列番号65、配列番号75、配列番号76、配列番号106、または配列番号108に示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号8、配列番号26、配列番号44、または配列番号62に示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項13】
43H7、42C1、9G12、または35F1である、請求項6に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項15】
処置方法であって、該方法は、
治療上有効な用量の請求項15に記載の薬学的組成物を投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項16】
請求項16に記載の方法であって、前記薬学的組成物は、癌の処置または予防を必要とする被験体に投与される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記被験体は、ヒトである、方法。
【請求項18】
ヒトフレームワーク領域と、SLPIに対する特異的結合のための手段と、を含む、抗体。
【請求項19】
エラスターゼ活性を阻害可能である、請求項19に記載の抗体。
【請求項20】
請求項19に記載の抗体であって、前記手段は、43H7由来のCDR、42C1由来のCDR、9G12由来のCDR、または35F1由来のCDRを含む、抗体。
【請求項21】
請求項1に記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項22】
請求項22に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項23に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
E.coli細菌、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、およびNSO細胞から選択される、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項25】
配列番号2、配列番号11、配列番号20、配列番号29、配列番号38、配列番号47、配列番号65、配列番号65、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号82、配列番号84、配列番号106、または配列番号108において示されるアミノ酸配列をコードする、請求項22に記載の核酸。
【請求項26】
配列番号1、配列番号10、配列番号19、配列番号28、配列番号37、配列番号46、配列番号55、配列番号64、配列番号81、配列番号83、配列番号105、または配列番号107からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項26に記載の核酸。
【請求項27】
SLPIに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を産生するための方法であって、該方法は、
(a)置換されるべきCDR3を含むかまたはCDR3コード領域を欠失しているかのいずれかである可変ドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供する工程;
(b)該レパートリーを、配列番号8、配列番号26、配列番号44、または配列番号62において実質的に示されるアミノ酸配列をコードするドナー核酸と、該ドナー核酸が該レパートリー中のCDR3領域中へと挿入されるように合わせて、可変ドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供する工程;
(c)該生成物レパートリーの核酸を発現させる工程;
(d)SLPIに特異的な抗原結合フラグメントを選択する工程;および
(e)該特異的抗原結合フラグメントまたは該結合フラグメントをコードする核酸を回収する工程;
を包含する、方法。
【請求項28】
請求項28に記載の方法によって産生された、抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−534307(P2007−534307A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540030(P2006−540030)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/038634
【国際公開番号】WO2005/047328
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】