説明

分注装置及び自動分析装置

【課題】シリンジポンプから気泡を容易に除去することが可能な分注装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】シリンジポンプ53に洗浄液を吸引し、吸引した洗浄液を排出させることにより、シリンジポンプと配管5bによって接続されたプローブ5aから検体,試薬を含む液体試料を分注する分注装置5は、シリンジポンプ53に超音波振動子58が設けられている。超音波振動子58は、シリンジポンプとの間の空間に充填される洗浄液を介してシリンジポンプを収容するシリンジケース57の外壁に貼付され、シリンジポンプとの間に存在する洗浄液を介してシリンジポンプに超音波振動を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分注装置は、自動分析装置において検体や試薬を分注する際に使用されている。例えば、検体を分注する分注装置は、プローブと洗浄液のタンクとの間を接続する配管にシリンジポンプを配置している。そして、分注装置は、シリンジポンプを作動させて洗浄液を充填したプローブ内に空気層を介して検体を吸引し、反応容器の位置にプローブを移動させた後、吸引した検体を反応容器に吐出し、洗浄位置へ移動させてプローブを洗浄する作動を繰り返している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−271266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置は、メンテナンスによってシリンジポンプを交換すると、シリンジポンプ内の洗浄液に気泡が混入することがある。また、自動分析装置は、例えば、週初めの朝に使用を開始する場合等、分析終了後長時間経過した後に使用を開始する場合に、洗浄液中の溶け込んでいた気体が気化しシリンジポンプ内の洗浄液に気泡が発生することがある。シリンジポンプ内の洗浄液にこのような気泡が存在すると、ピストンの作動に伴うシリンジポンプ内の圧力変化によって気泡の体積が変動し、プローブが吐出する液体の分注精度がばらつく。このため、分注装置は、シリンジポンプ内の洗浄液に生ずる気泡を除去する必要がある。
【0005】
このため、従来、自動分析装置は、分析開始前にシリンジポンプに洗浄液の吸引作動及び排出作動を複数回繰り返させることによりシリンジポンプ内の洗浄液から気泡を排出除去している。しかし、発生した気泡が小さいと、シリンジポンプから簡単に除去することができないという問題があった。特に、シリンジポンプへ洗浄液を吸引し、排出する流路切替部は、洗浄液吸引による圧力低下によって洗浄液中の気体が気化して気泡が発生し易いうえ、ピストンの頭頂部に付着した気泡は前記吸引作動と排出作動を繰り返しても除去が難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シリンジポンプから気泡を容易に除去することが可能な分注装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、シリンジポンプに洗浄液を吸引し、吸引した前記洗浄液を排出させることにより、前記シリンジポンプと配管によって接続されたプローブから検体,試薬を含む液体試料を分注する分注装置において、前記シリンジポンプに超音波振動子を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注装置の一態様は、上記の発明において、前記超音波振動子は、前記シリンジポンプとの間の空間に充填される前記洗浄液を介して前記シリンジポンプを収容するシリンジケースの外壁に貼付され、前記シリンジポンプとの間に存在する前記洗浄液を介して前記シリンジポンプに超音波振動を付与することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の分注装置の一態様は、上記の発明において、前記超音波振動子は、前記シリンジポンプの外壁に貼付されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置の一態様は、上記の発明において、前記シリンジポンプは、シリンダが金属又はガラスからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注装置の一態様は、上記の発明において、前記シリンジケースは、金属又はガラスからなることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、前記超音波振動子は、前記シリンジポンプの外壁に貼付されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分注装置は、超音波振動子がシリンジポンプに超音波振動を付与し、本発明の自動分析装置は、この分注装置を備えているので、超音波振動子が付与する超音波振動により、シリンジポンプから気泡を容易に除去することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注装置及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で使用される実施の形態1の検体分注装置の概略構成図である。図3は、図2の検体分注装置で使用するシリンジケースと、シリンジケースの外壁に設けた超音波振動子を示す斜視図である。図4は、超音波振動子の電源と共に示す図3のシリンジケースの縦断面図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注装置5、反応ホイール6、攪拌装置9、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注装置12及び試薬テーブル13が設けられている。
【0016】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注装置5は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3と反応ホイール6の近傍に配置され、検体容器4、反応容器7及び洗浄槽の間を順次移動する。これにより、検体分注装置5は、検体容器4から検体を反応容器7に分注し、分注後のプローブ5aを前記洗浄槽で洗浄した後、新たな検体容器4から新たな検体を新たな反応容器7に分注してゆく。
【0018】
このとき、検体分注装置5は、図2に示すように、検体を分注するプローブ5a、プローブ駆動部51、シリンジポンプ53(図4参照)、ポンプ駆動部54、シリンジケース57及び超音波振動子58を備えている。
【0019】
プローブ5aは、図2に示すように、配管5bを介してシリンジケース57に収容されたシリンジポンプ53に接続されると共に、配管5eを介して洗浄液Lを収容した洗浄液タンク52と接続されている。プローブ5aは、検体容器4に収容された検体を吸引し、反応容器7に吐出することによって検体を分注する。プローブ5aは、検体を分注する都度、前記洗浄槽において洗浄液によって洗浄される。ここで、配管5bには電磁弁を用いた第1切替弁5cが設けられ、配管5eにはシリンジケース57側から電磁弁を用いた第2切替弁5d及びポンプ56が設けられている。また、配管5eは、第2切替弁5dとポンプ56との間に一端がシリンジケース57の下部に接続された配管5fの他端が接続されている。
【0020】
プローブ駆動部51は、分注制御部55の制御のもとに、プローブ5aを鉛直方向に昇降し、水平方向へ回転させることによって、プローブ5aを検体容器4、反応容器7及び洗浄槽の間を順次移動させる。
【0021】
洗浄液タンク52は、脱気水,イオン交換水或いは蒸留水等の非圧縮性流体からなる洗浄液Lを収容している。洗浄液Lは、プローブ5aを洗浄する際、図2に示すように、ポンプ56によって配管5e,シリンジポンプ53及び配管5bを通ってプローブ5aへ圧送され、プローブ5aを洗浄する。このとき、第1切替弁5c,第2切替弁5dは、分注制御部55の制御の下に弁の開閉が制御される。
【0022】
シリンジポンプ53は、図3及び図4に示すように、シリンジケース57に収容されている。シリンジポンプ53は、シリンダ53aとピストン53bとを有する分注ポンプであり、配管5bによってプローブ5aに接続されている。
【0023】
ポンプ駆動部54は、シリンジポンプ53のピストンロッド53cを上下方向に往復動させる駆動手段であり、高精度な分注を実現するため、例えば、パルスモータが使用される。ポンプ駆動部54によってシリンジポンプ53を駆動すると、ピストン53bがシリンダ53aの内部を鉛直方向に摺動し、洗浄液タンク52から吸引した洗浄液Lとの間に空気層を介してプローブ5aに検体を吸引し、吸引した検体を吐出する。
【0024】
分注制御部55は、図2に示すように、プローブ駆動部51、ポンプ駆動部54、第1切替弁5c,第2切替弁5d、ポンプ56及び電源59の作動を制御する制御手段であり、CPU、RAM、ROM等を用いて構成される。
【0025】
シリンジケース57は、図3及び図4に示すように、シリンジポンプ53との間の空間に充填される洗浄液Lを介してシリンジポンプ53を収容するケースである。シリンジケース57は、シリンジポンプ53から配管5bへ洗浄液を排出する配管57aと、配管5eからシリンジポンプ53へ洗浄液を吸引する配管57bが形成された流路切替部Pが上部に形成され、配管5fによって供給される洗浄液を洗浄液タンク52に戻す配管57cが側壁上部に接続されている。また、シリンジケース57は、シール部材Sをシリンダ53aの上下外周に配置してシリンジポンプ53を収容し、下部にねじ止めする固定部材57dによってシリンジポンプ53を保持している。
【0026】
超音波振動子58は、シート状に成形され、可撓性を有する厚さ1mm以下の振動子であり、シリンジケース57の外壁に接着剤によって貼付される。超音波振動子58は、シリンダ53a内や流路切替部Pに生ずる気泡を超音波振動によって除去するものであり、これらの部位に対応したシリンジケース57外壁全周に設けることが最も望ましいが、シリンジケース57の外壁の一部に設けてもよい。超音波振動子58は、例えば、TFT株式会社(大阪)が販売している医療用超音波振動子を使用することができる。
【0027】
反応ホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の凹部6aが等間隔で設けられている。反応ホイール6は、各凹部6aの半径方向両側に測定光が通過する開口(図示せず)が形成されている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。反応ホイール6の外周近傍には、測光装置10、洗浄装置11及び攪拌装置9が配置されている。
【0028】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、測光装置10の光源10aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用され、凹部6aに配置される。
【0029】
攪拌装置9は、反応容器7に分注された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌するもので、例えば、反応容器7の側壁に取り付けられる表面弾性波素子によって液体試料を非接触で攪拌する攪拌装置や、攪拌棒によって液体試料を攪拌する攪拌装置が使用される。
【0030】
測光装置10は、図1に示すように、反応ホイール6の外周近傍に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器が反応ホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0031】
洗浄装置11は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0032】
試薬分注装置12は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0033】
試薬テーブル13は、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示する情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0034】
ここで、試薬テーブル13の外周には、図1に示すように、試薬容器14に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。
【0035】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注装置5、反応ホイール6、攪拌装置9、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注装置12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18及び表示部19等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体の記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0036】
分析部17は、制御部16を介して測光装置10に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応ホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注装置12が試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。反応容器7に検体を分注する都度、検体分注装置5は、プローブ5aを前記洗浄槽に移動し、洗浄液によってプローブ5aを洗浄する。
【0038】
そして、検体が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって攪拌装置9へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、反応ホイール6が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器7内の試薬と検体の反応液は、受光部で測光され、制御部16によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0039】
このとき、自動分析装置1は、例えば、メンテナンスによってシリンジポンプ53を交換した場合や、休み明けに使用を開始する場合等に、シリンジポンプ53内の洗浄液に気泡が発生することがある。このような場合、自動分析装置1は、分注制御部55による制御のもとに、検体分注装置5を予め設定された手順に従って駆動し、シリンジポンプ53の気泡除去操作を実行する。このときのシリンジポンプ53、第1切替弁5c、第2切替弁5d及び超音波振動子58の作動タイミングに関する図5に示すタイムチャートを参照して検体分注装置5における気泡除去操作を以下に説明する。
【0040】
先ず、検体分注装置5は、気泡除去のための分析前操作として検体分注装置5のプローブ5aをプローブ駆動部51によって前記洗浄槽へ移動させ、第2切替弁5dを閉じた状態でポンプ56を駆動し、洗浄液タンク52から吸引した洗浄液をシリンジポンプ53とシリンジケース57との間の空間に充填する。
【0041】
検体分注装置5は、この洗浄液の充填後、図5に示すように、時刻T1にポンプ駆動部54によってシリンジポンプ53の吸引作動を開始すると共に、第1切替弁5cを閉じた状態で第2切替弁5dを開弁する。これにより、検体分注装置5は、洗浄液を洗浄液タンク52からシリンジポンプ53のシリンダ53a内に吸引する。シリンジポンプ53の吸引作動は、時刻T2に停止する。
【0042】
次に、検体分注装置5は、時刻T3において、第2切替弁5dを閉弁すると共に、第1切替弁5cを開き、ポンプ駆動部54によるシリンジポンプ53の排出作動を開始する。これにより、検体分注装置5は、シリンダ53a内に吸引した洗浄液を排出し、プローブ5aから吐出させる。検体分注装置5は、この洗浄液の吐出と同期させて電源59から電力を供給して超音波振動子58を駆動する。これにより、検体分注装置5は、超音波振動子58が発する超音波振動をシリンダ53aとシリンジケース57との間の空間に充填された洗浄液を介してシリンジポンプ53に伝搬させる。
【0043】
この超音波振動により、シリンダ53aの内壁の気泡をはじめ、特に、シリンジケース57の流路切替部Pやピストン53bの頭頂部に付着した気泡が容易に剥離され、洗浄液と共にプローブ5aから吐出される。このため、検体分注装置5は、シリンジポンプ53やシリンジケース57の流路切替部Pから気泡を容易に除去することができる。そして、シリンジポンプ53の排出作動及び超音波振動子58の駆動は、時刻T4に停止し、併せて第1切替弁5cを閉弁する。
【0044】
なお、検体分注装置5は、超音波振動子58を駆動することによって超音波振動子58が発熱する。但し、分析前操作の間、ポンプ56は駆動されるので、超音波振動子58が発するはシリンジポンプ53とシリンジケース57との間に充填された洗浄液Lに吸収され、超音波振動子58が冷却されるので、検体分注装置5は、発熱による影響を回避することができる。
【0045】
以上が気泡除去操作の一周期であり、自動分析装置1は、検体分注装置5によるこの気泡除去操作を複数回実行した後、検体の分析動作を開始する。このため、自動分析装置1は、この気泡除去操作が分析開始前に自動的に実行されるように、制御部16に気泡除去操作に係るプログラムを組み込んでおく。
【0046】
ここで、検体分注装置5は、図6に示すシリンジケース57のように、超音波振動子58を流路切替部Pの外壁にも貼付してもよい。このように超音波振動子58を3箇所に分けて設けると、検体分注装置5は、それぞれの超音波振動子58がそれぞれの箇所に異なる最適の周波数の超音波を発生させるので、より効率的に気泡を除去することができる。また、検体分注装置5は、洗浄液に気泡が発生する可能性があるシリンジケース57の部分全体に超音波振動子58が発生する超音波振動を照射するので、気泡の除去性能を高めることができる。従って、超音波振動子58は、シリンダ53a内部の洗浄液Lに超音波振動を付与するように、シリンジポンプ53の流路切替部Pからピストン53bの最大ストロークに及ぶシリンジケース57の外壁に貼付することが望ましい。
【0047】
また、検体分注装置5は、図7に示すシリンジケース61のように、シール部材Sを介してシリンジポンプ53を保持するシリンジポンプ53の下部を除き、シリンジポンプ53全体を洗浄液Lに浸漬するようにしてもよい。この場合、シリンジポンプ53は、シリンダ53aの上部にシリンジケース57の流路切替部Pが一体に形成されている。
【0048】
このように構成すると、検体分注装置5は、超音波振動子58が発する超音波振動が洗浄液Lを介して気泡が発生する可能性があるシリンジケース57の部分全体に照射されるので、気泡の除去性能を高めることができる。
【0049】
また、超音波振動子58は、シート状に成形され、可撓性を有する厚さ1mm以下の振動子であるので、直径の異なるシリンジケース57であっても簡単に貼付することができ、老朽化した場合には、簡単に交換することができるという利点がある。
【0050】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の検体分注装置は、超音波振動子を貼付したシリンジケース内にシリンジポンプを収容したが、実施の形態2の検体分注装置は、シリンジポンプの外壁に超音波振動子を貼付している。図8は、超音波振動子の電源と共に示すシリンジポンプの縦断面図である。実施の形態2の検体分注装置は、シリンジケース及びシリンジケースへ洗浄液を供給し、洗浄液タンクへ戻す配管がないことを除き実施の形態1の検体分注装置と同一の構成であるので、同一の構成部分には同一の符号を使用している。
【0051】
検体分注装置5Aは、実施の形態1の自動分析装置1で使用され、図8に示すように、シリンダ53aの外壁全周に超音波振動子58を貼付している。このため、検体分注装置5Aは、超音波振動子58が発する超音波振動がシリンダ53aを介して内部の洗浄液Lに伝搬するので、シリンダ53a内の気泡、特に、シリンダ53aと配管5bや配管5eとの接続部やピストン53bの頭頂部に付着した気泡が容易に剥離され、洗浄液と共にプローブ5aから吐出される。このため、検体分注装置5Aは、シリンジポンプ53から気泡を容易に除去することができる。しかも、検体分注装置5Aは、シリンダ53aの外壁に超音波振動子58を貼付しているので、エネルギーの伝達効率がよく、シリンジケースが必要ないので、部材配置の自由度が増すという利点がある。
【0052】
なお、超音波振動子は、上述の実施の形態では、気泡除去操作に伴うシリンジポンプによる洗浄液の吐出時に駆動した。但し、超音波振動子は、シリンダ内の圧力が低下し、気泡が発生し易くなる気泡除去操作に伴うシリンジポンプによる洗浄液の吸引時に駆動してもよいし、気泡除去操作時全体に亘って駆動してもよい。また、超音波振動子は、シリンダ53a内の気泡、シリンダ53aと配管5bや配管5eとの接続部及びピストン53bの頭頂部に付着した気泡を容易に剥離することができれば、シリンダ53aの外壁の一部に超音波振動子58を貼付してもよい。
【0053】
また、上述の各実施の形態の分注装置は、検体を分注する検体分注装置の場合について説明した。しかし、本発明の分注装置は、試薬分注装置に使用すると、気泡の影響を受けることなく試薬を正確に分注することができる。
【0054】
ここで、本発明の分注装置、例えば、図2に示す検体分注装置5は、シリンジポンプ53の上下をシールするシール部材Sをシリンダ53aの外径に合わせて交換すれば、異なる径のシリンダ53aを有するシリンジポンプ53を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で使用される実施の形態1の検体分注装置の概略構成図である。
【図3】図2の検体分注装置で使用するシリンジケースと、シリンジケースの外壁に設けた超音波振動子を示す斜視図である。
【図4】超音波振動子の電源と共に示す図3のシリンジケースの縦断面図である。
【図5】気泡除去操作におけるシリンジポンプ、切替弁及び超音波振動子の作動タイミングを示す図である。
【図6】シリンジケースの第1の変形例を示す縦断面図である。
【図7】シリンジケースの第2の変形例を示す縦断面図である。
【図8】実施の形態2の検体分注装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5,5A 検体分注装置
5a プローブ
5b,5e 配管
5c,5d 切替弁
6 反応ホイール
7 反応容器
9 攪拌装置
10 測光装置
11 洗浄装置
12 試薬分注装置
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
51 プローブ駆動部
52 洗浄液タンク
53 シリンジポンプ
54 ポンプ駆動部
55 分注制御部
56 ポンプ
57 シリンジケース
58 超音波振動子
59 電源
L 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジポンプに洗浄液を吸引し、吸引した前記洗浄液を排出させることにより、前記シリンジポンプと配管によって接続されたプローブから検体,試薬を含む液体試料を分注する分注装置において、
前記シリンジポンプに超音波振動子を設けたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記超音波振動子は、前記シリンジポンプとの間の空間に充填される前記洗浄液を介して前記シリンジポンプを収容するシリンジケースの外壁に貼付され、前記シリンジポンプとの間に存在する前記洗浄液を介して前記シリンジポンプに超音波振動を付与することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記超音波振動子は、前記シリンジポンプの外壁に貼付されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記シリンジポンプは、シリンダが金属又はガラスからなることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項5】
前記シリンジケースは、金属又はガラスからなることを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項6】
検体と試薬とを攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、請求項1〜5のいずれか一つに記載の分注装置を用いて前記検体又は試薬を分注することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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