説明

分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法及び分解処理装置の反応管封止装置

【課題】
含ハロゲン化合物を分解処理する分解処理装置の反応管内で固着された固着反応処理剤を容易に除去できる分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法及び分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法を容易に行うことができる分解処理装置の反応管封止装置を提供する。
【解決手段】
反応管封止装置60は分解処理装置の反応管20に対し着脱自在に取着されて、反応管20の一端を封止する封止板62と、封止板62に設けられ、水を反応管20内に注入する注入管66と、前記封鎖手段に設けられ、水に溶けた固着反応処理剤を反応管20外部に排出する排出管68とを備える。反応管20の下端を封止板62により封止して、反応管20内に注入管66を介して水を充填すると、塩化カルシウム、臭化カルシウム等が水溶性であるため水に溶け、これらが排出管68から外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法及び分解処理装置の反応管封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層破壊低減のためにフロン類の生産・使用規制が始まる前に生産された冷蔵庫や冷房装置(エアコン)が廃棄されつつある。また、フロン類、ハロン類は、工業製品等の洗浄に多用されている。それらの含ハロゲン化合物は、高い温暖化係数を示す温室効果ガスとして、又、フロン類はさらにオゾン層破壊ガスとしても知られている。以下、フロン類、ハロン類のハロゲンを含む化合物や、ハロゲンガス等を総称して「含ハロゲン化合物」という。
【0003】
このため、使用済みの回収した廃棄含ハロゲン化合物を、効率的に分解処理する方法及び装置が要望されている。そこで、当該要望に応えるべく分解処理装置が、例えば、特許文献1、特許文献2が提案されている。
【0004】
これらの分解処理装置では、廃棄含ハロゲン化合物を分解処理する場合、酸化カルシウムを主成分とする反応処理剤(すなわち、吸着剤)と、廃棄含ハロゲン化合物を反応させて処理をする。
【特許文献1】特開2004−261726号公報
【特許文献2】特開2001−79344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成分に塩素や臭素を含んでいる含ハロゲン化合物を分解処理する場合、反応により、塩化カルシウムや臭化カルシウム等が生成するが、これらの物質は、融点が低いため、分解処理装置の反応炉(反応管)内の処理温度が高いと、吸着剤と溶融固着して反応炉(反応管)内部を詰まらせてしまう事象が生ずる。この固着物質(以下、固着物質を固着反応処理剤という)の除去を行う場合、従来は、反応炉の一端側を開口して、治具を入れて切削作業で行っているが、これらの固着反応処理剤は、非常に硬いため、切削作業が困難であり、又、治具により反応管内部を傷つける虞もあった。このため反応管内で固着した固着反応処理剤を容易に除去できる方法及び装置が要望されている。
【0006】
本発明の目的は、含ハロゲン化合物を分解処理する分解処理装置の反応管内で固着された固着反応処理剤を容易に除去できる分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法を提供することにある。
【0007】
又、本発明の他の目的は、分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法を容易に行うことができる分解処理装置の反応管封止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、反応管内にカルシウム系、及びマグネシウム系のうち、少なくともカルシウム系の吸着剤が充填されるとともに含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが導入・導出されて、前記被処理ガスが分解されながら前記吸着剤に反応吸着されて含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法において、前記反応管の重力方向側に位置する一端を封止し、前記反応管内に水を充填して、反応管内面に固着した水溶性の固着反応処理剤を溶かし、水に溶けた固着反応処理剤を排出することを特徴とする分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法を要旨とするものである。
【0009】
請求項1の発明によれば、カルシウム系、及びマグネシウム系のうち、少なくともカルシウム系の吸着剤と、含ハロゲン化合物とが反応すると、塩化カルシウムや臭化カルシウム等が生成し、反応管内で固着することがある。この固着した化合物が固着反応処理剤である。この状態で、反応管内の重力方向側に位置する一端を封止して、反応管内に水を充填すると、固着反応処理剤の中で、塩化カルシウムや臭化カルシウムは水溶性の固着反応処理剤であるため水に溶け、水に溶けた固着反応処理剤が排出される。なお、水溶性の固着反応処理剤間に存在する水に溶けにくい固着反応処理剤は、水溶性の固着反応処理剤とともに反応管から脱落し、水溶性の固着反応処理剤とともに反応管から排出される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記反応管が、前記被処理ガスを分解するための加熱部を備え、前記加熱部が設けられた部位の領域内に達するまで前記反応管内に水を充填することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、加熱部により、含ハロゲン化合物の分解反応温度以上まで昇温させると含ハロゲン化合物は分解されて、吸着剤に反応吸着される。この加熱部が設けられた反応管の部位の領域の温度が、固着反応処理剤の融点よりも下がり始めると固着反応処理剤が固着するため、この部位の領域内に達するまで水を充填することにより、同領域に固着された水溶性の固着反応処理剤が溶かされて、排出される。
【0012】
請求項3の発明は、反応管内にカルシウム系、及びマグネシウム系のうち、少なくともカルシウム系の吸着剤が充填されるとともに含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが導入・導出されて、前記被処理ガスが分解されながら前記吸着剤に反応吸着されて含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置の前記反応管に対し、着脱自在に取着されて、前記反応管の重力方向側に位置する一端を封止する封鎖手段と、前記封鎖手段に設けられ、水を前記反応管内に注入する注入手段と、前記封鎖手段に設けられ、水に溶けた固着反応処理剤を反応管外部に排出する排出手段とを備えたことを特徴とする分解処理装置の反応管封止装置を要旨とするものである。
【0013】
請求項3の発明の反応管封止装置によれば、反応管の重力方向側に位置する一端を封鎖手段にて封鎖し、注入手段にて水を反応管内に注入して充填し、反応管内に固着された水溶性の固着反応処理剤を溶かして排出手段から水に溶けた固着反応処理剤を反応管外部に排出する。又、反応管封止装置を反応管に取着け及び取り外す際、注入手段及び排出手段を同時に反応管に対して取着け及び取り外しされる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3において、前記封鎖手段には、前記注入手段にて前記反応管内に注入された水の水位を制限するオーバーフロー管が設けられていることを特徴とする。請求項4によれば、オーバーフロー管により、反応管内に注入された水の水位を制限し、反応管内の水の充填量を規定することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4において、前記反応管が、前記被処理ガスを分解するための加熱部を備え、前記封鎖手段が前記反応管に取着された際、前記オーバーフロー管が、前記反応管の前記加熱部が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されていることを特徴とする。請求項5の発明によれば、オーバーフロー管が、反応管の加熱部が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されていることにより、この部位の領域内に達するまで水を充填でき、同領域に固着された水溶性の固着反応処理剤を水に溶かして、排出できる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、含ハロゲン化合物を分解処理する分解処理装置の反応管内に固着された固着反応処理剤を容易に除去できる効果を奏する。
請求項2の発明によれば、加熱部が設けられた反応管の部位の領域に固着された水溶性の固着反応処理剤が溶かされることにより、容易に同領域の固着反応処理剤を排出することができる。
【0017】
請求項3の発明の反応管封止装置によれば、分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法を容易に実現することができる。又、請求項3の発明によれば、固着反応処理剤の除去を行う際に、封鎖手段を反応管に取付けすれば、注入手段及び排出手段を同時に反応管に対して取着けでき、容易に固着反応処理剤の除去の準備を行うことができる。又、請求項3の発明によれば、固着反応処理剤の除去を行った後は、封鎖手段を反応管から取外せば、注入手段及び排出手段も同時に反応管から取り外すことができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、オーバーフロー管により、反応管内に注入された水の水位を制限し、反応管内の水の充填量を規定することができる。
請求項5の発明によれば、オーバーフロー管が、反応管の加熱部が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されていることにより、この部位の領域内に達するまで水を充填でき、同領域に固着された水溶性の固着反応処理剤を水に溶かして、排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1及び図2を参照して説明する。図1には含ハロゲン化合物の分解処理装置の断面図を示している。まず、含ハロゲン化合物の分解処理装置の概要を説明する。
【0020】
分解処理装置10は、反応管20に、吸着剤からなる充填層22が形成されて、同充填層22に対して含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが連続的に導入・導出されて、含ハロゲン化合物が分解されながら吸着剤に主として反応吸着されて接触されることにより含ハロゲン化合物の処理が行われる。
【0021】
前記吸着剤は、カルシウム系のものが使用される。カルシウム系の吸着剤としては、石灰石やドロマイトを焼成して得られる生石灰(CaO)や軽焼ドロマイト(CaO・MgO)がある。又、カルシウム系の吸着剤としては、他に、消石灰(Ca(OH))、石灰石(炭酸カルシウム(CaCO))、けい酸カルシウム(CaSiO)等も使用可能である。又、カルシウム系の吸着剤には、軽焼ドロマイト(CaO・MgO)のように酸化マグネシウムを含んでいても良い。本実施形態では、吸着剤として、生石灰(CaO)や軽焼ドロマイト(CaO・MgO)を使用する。
【0022】
前記吸着剤の粒径は、粒子形状により異なるが、通常2〜50mm、望ましくは5〜10mmが好適である。なお、粒径が小さすぎると、充填層22(ガス拡散帯、反応帯)の空隙率が低くてガス流れが阻害され、反対に、粒径が大きすぎると、粒子内へのガス拡散が不充分である。
【0023】
又、分解処理装置10により分解処理される被処理ガスは、フロン類、ハロン類である。フロン類としては、フロン11,12,113,114,115の特定フロン類をはじめ、その他のCFC,HCFC,HFC,PFC等が挙げられる。又、ハロン類としては、ハロン1211,1301,2402の他、その他のBCFCやBFC,HBFC等が挙げられる。これらのガス濃度は、10〜100vol%が好ましく、30〜100vol%がさらに好ましい。なお、濃度が10vol%未満であると、加熱する際に多くのエネルギーを必要とするため好ましくない。
【0024】
フロン類、及びハロン類の分解処理は、好ましくは、700〜1400℃の温度下で吸着剤に接触させることによって行われる。この温度が700℃未満であると、分解処理能力が低下する。1400℃を越えると、フロン類、及びハロン類との反応性が低下するため好ましくない。
【0025】
含ハロゲン化合物と酸化カルシウムとの気固反応で生成する塩化カルシウム、臭化カルシウムの融点は、それぞれ774℃、760℃である。又、含ハロゲン化合物と酸化カルシウムとの気固反応で生ずる塩化マグネシウム、臭化マグネシウムの融点は、それぞれ714℃、711℃である。
【0026】
塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムは、酸化カルシウムと共存することにより、これらは融点以下の温度でも溶融が起こる。例えば、塩化カルシウムは、酸化カルシウムと共存するときは、700℃でも融解することが確かめられている。このため、700〜1400℃の温度下でフロン類、ハロン類を吸着剤に接触させると、融解したこれらの化合物により吸着剤が塊状となる。この塊状となった吸着剤を以下、固着反応処理剤という。
【0027】
本実施形態の反応管20は垂直立て型とされ、前記充填層22がガス拡散帯24と反応帯26が上下に形成される。反応管20の上部は、第1冷却手段28が形成され、同第1冷却手段28の上方には、投入口30を有する吸着剤供給ホッパ32が配置されている。前記第1冷却手段28は、反応管20のガス拡散帯24の対応部位に配置されている。第1冷却手段28は、本実施形態では、反応管20の一部を放熱蛇腹部で形成した空冷手段であるが、水冷手段であってもよい。又、反応管20において、第1冷却手段28の上方の位置には、被処理ガス導入口34が設けられている。
【0028】
反応管20の反応帯26対応部位には加熱部としての電熱ヒータH1、H2が設けられている。電熱ヒータH1,H2は、図示しない制御手段で出力制御可能となっている。加熱手段としては、電熱ヒータ(抵抗発熱体)に限らず、誘導加熱等の他の電気加熱手段あるいは燃焼加熱等の火力加熱手段であってもよい。電熱ヒータH1は、反応管20の外面に設けられた筒状電熱ヒータからなる。電熱ヒータH2は、反応帯26対応部位のみ加熱部とされたシーズドヒータ(電熱ヒータ)からなる。なお、電熱ヒータH1、H2を反応管20の反応帯26の内外に設けるのは、反応帯26の横断面内外の温度差を小さくするためである。ここで、反応管20の外部に設けられる加熱手段のみ、又は反応管20の内部に設けられる加熱手段のみ設けられていてもよく、或いは、反応管20の内部に設けられる加熱手段が複数設けられていてもよい。
【0029】
反応帯26に対応する反応管20の下部は下方に延びる導管36として設けられている。すなわち、反応管20は導管36を含む趣旨であり、導管36を除外した反応管の部位を以下、反応管本体20Aという。
【0030】
導管36の外周には、筒状の覆い管38が配置されている。導管36は、反応管本体20Aの下端の外向きフランジ20fに取付された上部導管36aと、上部導管36aの下部フランジ36cに対して図示しないボルトにより着脱自在に取着された下部導管36bとからなる。覆い管38と導管36との間には、空隙38aが設けられていて、導管36の下部開口から排出されるガスを案内して、覆い管38に設けられた被処理ガス導出口40から排出する。被処理ガス導出口40には、図示しないが、例えば、集塵槽等の所要の後処理設備に接続されている。そして、覆い管38の外周には第2冷却手段としての水冷ジャケット42が設けられている。
【0031】
ここで、覆い管38は、反応管本体20Aのフランジ20fに対して、図2(a)に示すようにボルト20bにて着脱自在に取着され、反応管20から取り外し可能にされている。
【0032】
そして、被処理ガス導入口34と被処理ガス導出口40との一方側又は双方側には、ガス流れを吸引により発生させるために、差圧発生手段として図示しないブロアが設けられている。差圧発生手段は、通常、加圧輸送機となる送風機(ファン、ブロア)又は減圧輸送機となる圧縮機(コンプレッサ)を、適宜、要求処理量、反応管20の吸着剤の充填密度に対応させて適宜選定すればよい。
【0033】
又、導管36は、反応管20の下部の充填層22を下方に配置された吸着剤排出機構44に導く。
吸着剤排出機構44は、例えば強制排出手段としてスクリューコンベヤ46から構成され、強制排出手段の吸着剤流入口側と、反応管20の下端側(吸着剤流出口)との間には、吸着剤が移動する前記覆い管38が配置されている。
【0034】
覆い管38及び導管36は、水冷ジャケット42により反応管20の下端側から流出(流下)してきた吸着剤を冷却する作用を奏して吸着剤冷却帯48を形成する。なお、吸着剤冷却帯48を介さずにスクリューコンベヤ46等の強制排出手段に吸着剤を直接流入させると、強制排出手段として特別な耐熱仕様のものを使用する必要がある。
【0035】
なお、この吸着剤冷却帯48は、スクリューコンベヤ46等の強制排出手段と協働して、強制排出手段の出口50を介しての被処理ガス導出口40との間のガス流れを絞る作用も奏する。被処理ガス導出口40と強制排出手段の出口50との間に、流体流れの圧損を発生させる吸着剤充填部が形成されるためである。この作用により、被処理ガス導入口34から被処理ガス導出口40への被処理ガスの流れが円滑となる。
【0036】
強制排出手段としては、図例のスクリューコンベヤ46の代わりに、ベルトコンベヤ、エプロンコンベヤ、バケットコンベヤ等でもよいが、スクリューコンベヤ46の方が他のコンベヤに比して、吸着剤を密状態で搬送可能なため外気封鎖性を確保し易い。
【0037】
次に、含ハロゲン化合物の分解処理装置10の分解処理について説明する。
まず、スクリューコンベヤ46を停止させた状態で、吸着剤供給ホッパ32内に投入口30から、覆い管38の下部内及び反応管20内を吸着剤にて充填し、さらに、吸着剤供給ホッパ32が略一杯になるまで吸着剤を投入する。
【0038】
次に、電熱ヒータH1,H2をオン(ON)として、反応帯26の内部雰囲気温度を、含ハロゲン化合物の分解反応温度以上となるまで昇温させ維持する。ここで、分解反応温度の設定温度は、分解反応、すなわち、効率の見地から、通常、700℃以上とする。そして、上限は、熱効率及び化学平衡の見地から、約1400℃以下、望ましくは800℃以下とする。
【0039】
ここで、当該設定温度は、反応帯26の略中央部位置、例えば、図1のE点におけるものとする。
そして、通常、第1冷却手段28を備えたガス拡散帯24は、分解反応温度未満である。ここで、ガス拡散帯24は、通常、分解反応温度より格段に低い温度、高くて200℃以下、通常100℃以下の温度雰囲気になっている(例えば、図1のB点)。これは、ガス拡散帯24を形成する吸着剤の充填層22の熱伝導率が非常に低く、反応帯26の温度影響を受け難いためである。
【0040】
この状態で、図示しないブロアを運転させると、含ハロゲン化合物は、被処理ガス導入口34から反応管20の充填層22内へ吸引導入される。すると、被処理ガス導入口34から吸引導入された被処理ガスは、ガス拡散帯24で拡散されながら反応帯26ヘ輸送(搬送)される。このとき、ガス拡散帯24における吸着剤の雰囲気温度は、被処理ガスの分解反応温度未満である。このため、被処理ガスは、吸着剤の充填隙間で拡散されながら反応帯26に移動する。
【0041】
反応帯26に到達した被処理ガスは、反応帯26で、分解後、吸着剤に反応吸着されてハロゲン成分が除去された排ガスとして被処理ガス導出口40から排出される。
なお、ガス拡散帯24の反応帯26との境界部には、温度傾斜ゾーン(例えば、100℃以上600℃未満)である移行帯(中間帯)が存在する。
【0042】
そして、スクリューコンベヤ46を駆動させると、反応管20内の吸着剤は重力により、下方へ徐々に移動する。導管36内の吸着剤は移動により放熱冷却される。そして、吸着反応が済んだ使用済み吸着剤は、導管36、覆い管38内で水冷ジャケット42でさらに強制冷却されて、スクリューコンベヤ46の入口に到達し、さらに、コンベヤの出口50から図示しない回収コンテナ内に落下排出される。
【0043】
なお、このとき、反応管20内の充填層22は流動状態になるが、吸着剤の表面に融点の低い吸着反応生成物層が発生して吸着剤相互が融着し、反応管20の内面に付着する等により一部が反応管20内に固着反応処理剤として留まる。
【0044】
さて上記のようにして、反応管20内に留まった固着反応処理剤を除去する方法を下記に説明する。なお、電熱ヒータH1,H2はオフとされ、反応管本体20A内の吸着剤は常温になっているものとし、反応管20内で流動可能な吸着剤はスクリューコンベヤ46で外部に排出されているものとする。
【0045】
まず、反応管20のフランジ20fから、ボルト20bを緩めて覆い管38を取り外すとともに、上部導管36aから図示しないボルトを取り外して下部導管36bを取り外す。
【0046】
そして、図2(a)に示すように、下部フランジ36cに対して、反応管封止装置60をボルト60aにて着脱自在に締付けて取付する。下部フランジ36cが設けられた上部導管36aの下端は、反応管20における重力方向側に位置する一端に相当する。なお、図2(a)は、反応管20から導管36及び覆い管38を取り去った後に反応管封止装置60を取付した状態を示し、説明の便宜上、電熱ヒータH1,H2が省略されて図示されている。
【0047】
図2(a)、(b)に示すように反応管封止装置60は、前記下部フランジ36cに対してボルト60aにて着脱自在に取着される円板状の封止板62と、封止板62に貼着されたゴム等からなり、下部フランジ36cに水密状に密着するシール板64と、封止板62に対して取着された注入管66、排出管68、オーバーフロー管70を備えている。ここで、注入管66は、注入手段に相当し、排出管68は排出手段に相当する。
【0048】
封止板62は、封鎖手段に相当する。注入管66、排出管68、及びオーバーフロー管70の外部には、それぞれ手動開閉弁66a,68a,70aが設けられている。注入管66の内端は、図2(a)に示すように反応管封止装置60が上部導管36aに取付けされた際、上部導管36a内に位置する。又、オーバーフロー管70の上端は、図2(a)に示すように上方に延出されて、図1に示すように反応管本体20A内の電熱ヒータH2下部が位置する領域内に配置される。このオーバーフロー管70において、シール板64から突出する位置からオーバーフロー管70の上端が位置するところまでが、反応管20の水浸領域Rとなる。この水浸領域Rは、加熱部としての電熱ヒータH1,H2が設けられた反応管20の部位の領域内に対応する。
【0049】
上記のように反応管封止装置60が下部フランジ36cに取付された後、排出管68の手動開閉弁68aを閉弁状態に、かつオーバーフロー管70の手動開閉弁70aを開弁状態にして、手動開閉弁66aを開弁操作して注入管66から反応管20内に水を注入する。そして、オーバーフロー管70からオーバーフローした水が流れたとき、手動開閉弁66aを閉弁操作する。このとき反応管20の水浸領域Rが水に浸された状態となっている。
【0050】
この水浸領域Rでは、固着反応処理剤において、水溶性の塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、及び臭化マグネシウムは水に溶ける。なお、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、及び臭化マグネシウムの水に対する溶解度は、それぞれ、74.5g/100g(20℃)、140g/100g(25℃)、64.5g/100g(20℃)、102.5g/100g(25℃)であり、大変に溶けやすい。このため、水に対しては難溶性であるフッ化マグネシウムやフッ化カルシウムが水溶性の固着反応処理剤間に介在する場合、水溶性の固着反応処理剤が溶けて支持するものがなくなるため、難溶性であるフッ化マグネシウムやフッ化カルシウムは自重により沈下する。水溶性の固着反応処理剤が溶けた後は、排出管68の手動開閉弁70aを開弁して、溶けた固着反応処理剤や、沈下した難溶性の固着反応処理剤を反応管20から排出する。なお、一度の浸水処理のみで十分に除去できない場合には、前述と同様にして手動開閉弁66aを開弁することにより注水して浸水処理を行った後、排水する。
【0051】
上記のように固着反応処理剤の除去が終了後には、反応管封止装置60を取り外して、再び、下部導管36b及び覆い管38をそれぞれ上部導管36a、反応管本体20Aに取付けする。
【0052】
さて、本実施形態では下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法は、反応管20内の上部導管36aの下端を封止して、反応管20内に水を充填すると、固着反応処理剤の中で、塩化カルシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウムは水溶性の固着反応処理剤であるため水に溶け、水に溶けた固着反応処理剤が排出される。このとき、水溶性の固着反応処理剤間に存在する水に溶けにくい難溶性であるフッ化マグネシウムやフッ化カルシウム(固着反応処理剤)は、水溶性の固着反応処理剤とともに反応管20から脱落し、水溶性の固着反応処理剤とともに反応管から排出できる。
【0053】
(2) 本実施形態では、反応管20が、被処理ガスを分解するための加熱部として、電熱ヒータH1,H2を備え、電熱ヒータH1,H2が設けられた部位の領域内に達するまで反応管20内に水を充填(すなわち浸漬)する。
【0054】
この結果、電熱ヒータH1,H2により、含ハロゲン化合物の分解反応温度以上まで昇温させると含ハロゲン化合物は分解されて、吸着剤に反応吸着される。この電熱ヒータH1,H2が設けられた反応管20の部位の領域に固着反応処理剤が固着するため、この部位の領域内に達するまで水を充填することにより、同領域に固着された水溶性の固着反応処理剤が水に溶かされて、排出できる。
【0055】
(3) 本実施形態では、反応管封止装置60は、分解処理装置10の反応管20に対し着脱自在に取着されて反応管20の重力方向側に位置する一端を封止する封止板62と、封止板62に設けられ、水を反応管20内に注入する注入管66と、前記封鎖手段に設けられ、水に溶けた固着反応処理剤を反応管20外部に排出する排出管68とを備える。
【0056】
この結果、反応管20の重力方向側に位置する一端を、封止板62が封鎖し、注入管66にて水を反応管20内に注入して充填し、反応管20内に固着された水溶性の固着反応処理剤を溶かして排出管68から水に溶けた固着反応処理剤を反応管20外部に排出できる。又、反応管封止装置60を反応管20に対して取着け及び取り外す際、注入管66及び排出管68を同時に反応管20に対して取着け及び取り外しすることができ、固着反応処理剤の除去作業を簡便に行うことができる。
【0057】
(4) 本実施形態では、反応管封止装置60の封止板62には、注入管66にて反応管封止装置60内に注入された水の水位を制限するオーバーフロー管70が設けられている。この結果、オーバーフロー管70により、反応管20内に注入された水の水位を制限し、反応管20内の水の充填量を規定することができる。
【0058】
(5) 本実施形態では、反応管封止装置60は、反応管20が、被処理ガスを分解するための電熱ヒータH1,H2(加熱部)を備え、封止板62が反応管20に取着された際、オーバーフロー管70が、反応管20の電熱ヒータH1,H2が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されている。この結果、オーバーフロー管70が、反応管20の電熱ヒータH1,H2が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されていることにより、この部位の領域内に達するまで水を充填(浸水)でき、同領域に固着された水溶性の固着反応処理剤を水に溶かして、排出できる。
【0059】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記実施形態では反応管20を垂直立て型としたが、傾斜立て型であっても、吸着剤を自重落下可能な傾斜角度なら、上記垂直立て型と同様な作用効果を期待できる。
【0060】
○ 前記実施形態において、反応管20内の吸着剤の充填層22を固定層として、バッチ的に所定量のガスを処理後、処理ガス導入を止めて、スクリューコンベヤ46を駆動させて、反応管20内の吸着剤の充填層22を、吸着剤供給ホッパ32から未使用の吸着剤を流下させた未使用吸着剤に入れ替えてもよい。このように使用される反応管20においても、反応管封止装置60を使用することにより、水溶性の固着反応処理剤を除去するとともに、水溶性の固着反応処理剤に固着された非水溶性の固着反応処理剤も固着相手がなくなるため同時に除去することが可能である。
【0061】
○ 前記実施形態において、反応管封止装置60の手動開閉弁66a,68a,70aを、制御装置で開閉制御を行う自動開閉弁に変更してもよい。
○ 前記実施形態では、吸着剤をカルシウム系とマグネシウム系の両方でもよいとしたが、カルシウム系の吸着剤でのみ被処理ガスを分解処理する分解処理装置10に対し、固着反応処理剤の除去を前記実施形態と同様に行ってもよい。
【0062】
○ 前記実施形態の反応管封止装置60では、オーバーフロー管70を設けたが、省略してもよい。この場合には、予め反応管20内に入れる注水量を計測しておき、その分量分だけ、注水すればよい。
【0063】
○ 反応管20の下部フランジ36cに対する反応管封止装置60の取付け及び取り外しは、ボルト60aに限定されるものではなく、例えば、下部フランジ36cと封止板62とを重ね合わせた状態でクランプするクランプ部材で取付け及び取り外しできるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】含ハロゲン化合物の分解処理装置の断面図。
【図2】(a)は反応管封止装置を反応管に取付した使用状態の断面図、(b)は反応管封止装置の平面図。
【符号の説明】
【0065】
10…分解処理装置、20…反応管、20A…反応管本体、20f…フランジ、
22…充填層、24…ガス拡散帯、26…反応帯、28…第1冷却手段、
30…投入口、32…吸着剤供給ホッパ、34…被処理ガス導入口、
36…導管、36a…上部導管、36b…下部導管、
36c…下部フランジ、38…覆い管、40…被処理ガス導出口、
42…水冷ジャケット、44…吸着剤排出機構、
46…スクリューコンベヤ、48…吸着剤冷却帯、50…出口、
60…反応管封止装置、60a…ボルト、62…封止板、64…シール板、
66…注入管、66a…手動開閉弁、68…排出管、68a…手動開閉弁、
70…オーバーフロー管、70a…手動開閉弁、
H1…電熱ヒータ、H2…電熱ヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管内にカルシウム系、及びマグネシウム系のうち、少なくともカルシウム系の吸着剤が充填されるとともに含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが導入・導出されて、前記被処理ガスが分解されながら前記吸着剤に反応吸着されて含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法において、
前記反応管の重力方向側に位置する一端を封止し、前記反応管内に水を充填して、反応管内面に固着した水溶性の固着反応処理剤を溶かし、水に溶けた固着反応処理剤を排出することを特徴とする分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法。
【請求項2】
前記反応管が、前記被処理ガスを分解するための加熱部を備え、
前記加熱部が設けられた部位の領域内に達するまで前記反応管内に水を充填することを特徴とする請求項1に記載の分解処理装置における固着反応処理剤の除去方法。
【請求項3】
反応管内にカルシウム系、及びマグネシウム系のうち、少なくともカルシウム系の吸着剤が充填されるとともに含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが導入・導出されて、前記被処理ガスが分解されながら前記吸着剤に反応吸着されて含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置の前記反応管に対し、着脱自在に取着されて、前記反応管の重力方向側に位置する一端を封止する封鎖手段と、
前記封鎖手段に設けられ、水を前記反応管内に注入する注入手段と、
前記封鎖手段に設けられ、水に溶けた固着反応処理剤を反応管外部に排出する排出手段とを備えたことを特徴とする分解処理装置の反応管封止装置。
【請求項4】
前記封鎖手段には、前記注入手段にて前記反応管内に注入された水の水位を制限するオーバーフロー管が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の分解処理装置の反応管封止装置。
【請求項5】
前記反応管が、前記被処理ガスを分解するための加熱部を備え、
前記封鎖手段が前記反応管に取着された際、前記オーバーフロー管が、前記反応管の前記加熱部が設けられた部位の領域内に達する長さに形成されていることを特徴とする請求項4に記載の分解処理装置の反応管封止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−136775(P2009−136775A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316019(P2007−316019)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(507401498)中京フロン 株式会社 (3)
【Fターム(参考)】