説明

分解可能な口腔フィルム

口腔中で分解可能で、活性剤を送達する水溶性フィルムが提供される。この分解可能なフィルムは、少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび活性剤を含む。分解可能な口腔フィルムを調製するための方法および口腔粘膜を通して吸収するために活性剤の有効用量を口腔内に投与するための分解可能なフィルムの使用方法もまた提供される。ある実施形態によれば、分解可能なフィルムは、少なくとも1つの水溶性ポリマーとニコチン活性物質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤の口腔への送達および放出のための分解可能な口腔フィルムに関する。ある実施形態によれば、本発明は口腔への伝達および放出のための、ニコチン活性物質を含む低速分解口腔フィルムに関する。低速分解口腔フィルムは、口腔粘膜を通してのニコチン活性物質の吸収を最大化し、ニコチンに関する欲求を軽減する。
【背景技術】
【0002】
シガレット、シガーおよびパイプタバコなどのタバコ製品の喫煙は、喫煙者に対して深刻な健康上のリスクをもたらす。さらに、かみたばこ(短いおよび幅広の葉たばこの両方)および嗅ぎたばこなど、煙の出ないタバコ製品の使用もまた使用者に深刻な健康上のリスクをもたらす可能性がある。
【0003】
タバコ製品の使用に関連する深刻な健康上のリスクは、十分に文書化され広く公表されているが、多くの常用者はタバコ製品の使用を止めることができない。タバコ製品の使用を止めることができないのは、使用者がタバコ製品に存在するニコチンに対する依存性を生じたという事実に主に帰することができる。ニコチン依存性は、ニコチンに対する欲求として現れる。したがって、ニコチン中毒の喫煙者は、絶えずタバコ製品を使用して血液中のニコチン量を満たし、これによってニコチン欲求を満足させなければならない。
【0004】
タバコ製品の使用を成功裏に止めるために、ニコチン中毒喫煙者は、ニコチンの欲求を克服し、これによってタバコ製品を使用する欲望を減少しなければならない。タバコ常用者がタバコ製品の使用を止めるのを支援するために、あるニコチン補充療法が開発された。これらニコチン補充療法は、常用者がタバコ製品の使用を止めたときに失われる血液中のニコチンの一部を一時的に補充することを試みるものである。
【0005】
ニコチン補充療法が開発され、さまざまな製品形態において提供されている。かかるニコチン補充製品には、例えばニコチン含有ガム、ニコチン含有吸入、ニコチン含有経皮パッチ、ニコチン含有ロゼンジおよびニコチン含有ロリポップが含まれる。ニコチン含有のガム、ロゼンジおよびパッチは、商業的にかなり成功している。
【0006】
市販されているニコチン含有ガム製品の1つは、NICORETTEの商標名の下で入手できる。ニコチン含有ガムは、一般的に噛むことのできるガムの個別の一片として供給される。使用者は、ニコチン含有ガムの個別の一片をパッケージから取り除き、これを口腔の中に入れる。使用者がガムを噛んでいる間に、ニコチンがガムから放出され、口腔粘膜によって吸収される。しかし、ニコチン含有ガムは、血液中のニコチンを定常的な水準に維持するために、規則正しい間隔で使用しなければならない。
【0007】
ニコチン含有ガムは、タバコ製品の禁煙または節煙を試みている喫煙者が経験する急性の欲求を緩和するのに使用することができる。例えば、個人が急性のニコチン欲求に対応するために、ガムの単一片を自己投与することができる。ニコチンガムのかかる使用は、一般的にニコチン欲求を妨げるように血中ニコチン水準を増加させる結果をもたらす。喫煙者は、血液中の定常的なニコチン水準を維持するために、ニコチン含有ガムを繰り返し自己投与しなければならない。
【0008】
市販されているニコチン含有経皮パッチには、例えば、NICODERM、NICOTROLおよびHABITROLが含まれる。ニコチン経皮パッチは、一般的に、接着剤を保護するために剥離ライナーで覆われた付着性裏張りを有するパッチとして供給される。パッチの使用者は、パッチから剥離ライナーを取り外して付着性裏張りを露出させる。次いで付着性裏張りを、使用者の皮膚の上の適切な位置に適用し、これによりパッチを使用者に付着させる。時間の経過と共にパッチからニコチンが放出され、皮膚を通して血液中に拡散する。ニコチン含有経皮パッチは、パッチが貼られている間、使用者に実質的に連続的なニコチンの投入を提供することによって、時間の経過と共に比較的定常的な血液中の濃度を維持するのに有用である。
【0009】
ニコチン含有ロゼンジは、急性ニコチン欲求からの緩和を提供するために、ニコチン含有ガムと類似の方法で使用することができる。市販されているニコチン含有ロゼンジには、例えば、COMMITS、STOPPERS、NIQUITINおよびNICOTINELLSの商標の下で販売されているロゼンジが含まれる。ニコチン含有ガムと同様に、喫煙者は、タバコ製品の使用を選択する代わりに、ニコチン欲求を緩和するためにニコチン含有ロゼンジを自己投与することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
市販されているニコチン補充製品は、定常的および急性的両方のタバコ欲求のある水準の緩和を提供するが、より効果的な欲求緩和を提供して、喫煙者がタバコ製品の使用を止めることを支援する絶えざる必要性が依然として存在する。
【0011】
薬理学的にまたは美容的に活性な薬剤を口腔経由で送達するためのフィルムが開発された。このフィルムは、一般的に口腔中で分解して、フィルムに組み込まれている活性剤を放出する水溶性フィルムを含む。ニコチンが水溶性フィルムに組み込まれ、フィルムの分解時にニコチンを口腔中に放出する。従来技術は、急性ニコチン欲求を緩和するために、口腔中で急速な分解または溶解を達成する水溶性薄フィルムの開発に焦点を当てていた。これら急速に分解するフィルムに関して、研究はニコチン活性物質の体内吸収を、口腔フィルム薬用量単位中に初期に存在するニコチン活性物質の総量の単に25%と予測している。ニコチン活性物質の口腔粘膜を通してのこの低い吸収水準は、口腔フィルムの急速な分解に直接帰することができ、この急速な分解は粘膜浸透のための十分な時間を与えていない。したがって、口腔フィルムに存在するニコチン活性物質の大部分は、単純に飲み込まれてしまう。
【0012】
しかし、従来技術のニコチン含有口腔フィルムは、口腔粘膜を通してのニコチン活性物質の吸収を最大化することに関連する問題に取り組んでいない。したがって、口腔粘膜を通してニコチン活性物質の吸収を最大化する速度で分解し、これによってタバコの使用中止に関連するニコチン欲求を、十分な量低減または除去するニコチン活性物質の用量を使用者に有効的に送達する、低速分解口腔フィルムの必要性が当該技術において残存している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
要旨
活性剤を口腔中に送達し放出する口腔フィルムが提供される。この口腔フィルムの組成は、フィルムからの活性剤の遅れたまたは低速の分解および放出を有する粘膜接着性フィルムを提供する。口腔条件の範囲内でのフィルムの分解速度およびフィルムからの活性剤の放出により口腔粘膜を通しての活性剤の吸収を最大化する。
【0014】
ある実施形態によれば、前記口腔フィルムは、乾燥フィルムに対して少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%および活性剤を含む。
【0015】
別の実施形態によれば、口腔フィルムは、ポリアルキレンオキシドおよびセルロースポリマーの混合物(ここで、前記フィルムに存在する前記ポリアルキレンオキシドの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である。)および活性剤を含む。
【0016】
さらなる実施形態によれば、口腔フィルムは少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーと活性剤を含み、ここで、前記口腔フィルムは、人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後で、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している。
【0017】
少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーと活性剤から、低速分解口腔フィルムを調製する方法が提供される。
【0018】
ある実施形態によれば、低速分解口腔フィルムの調製方法は、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマー、活性剤および溶媒を一緒に混合して混合物を形成するステップと、この混合物からフィルム(前記フィルムは、乾燥フィルムの総重量に対して、前記少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%を含む。)を形成するステップとを含む。
【0019】
他の実施形態によれば、低速分解口腔フィルムの調製方法は、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマー、少なくとも1つのセルロースポリマーおよび活性剤を一緒にして混合物を形成するステップと、この混合物からフィルム(前記乾燥フィルム中に存在する前記ポリアルキレンオキシドポリマーの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である。)を形成するステップとを含む。
【0020】
さらなる実施形態によれば、低速分解口腔フィルムの調製方法は、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーと活性剤を一緒に混合して混合物を形成するステップと、この混合物からフィルム(前記口腔フィルムは、人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後で、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している。)を形成するステップとを含む。
【0021】
活性剤の有効量を口腔に投与するために、低速分解口腔フィルムを使用する方法がさらに提供される。
【0022】
ある実施形態によれば、活性剤の投与の方法は、乾燥フィルムの重量に対して、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%および活性剤を含む低速分解口腔フィルムを提供するステップと、前記フィルムを口腔内に導入するステップとを含む。
【0023】
他の実施形態によれば、活性剤の投与の方法は、ポリアルキレンオキシドとセルロースポリマーの混合物(ここで、前記乾燥フィルムに存在する前記ポリアルキレンオキシドの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である。)および活性剤を含む低速分解フィルムを提供するステップと、前記フィルムを口腔内に導入するステップとを含む。
【0024】
さらなる実施形態によれば、活性剤を投与する方法は、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーおよび活性剤を含む低速分解口腔フィルム(ここで、前記口腔フィルムは人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している。)を提供するステップと、前記フィルムを口腔内に導入するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
詳細な説明
本発明は、美容的に活性な薬剤または薬理学的に活性な薬剤を口腔に送達し放出して口腔粘膜を通して吸収する低速分解薄フィルムに関する。ある実施形態によれば、活性剤の送達および放出のための口腔フィルム組成物は、個体の口腔への送達および放出のためのニコチン活性物質を含み、これによりニコチン活性物質は口腔粘膜を通して吸収され、個体の全身循環に直接入る。
【0026】
投薬形態は、単層または多層の粘膜付着フィルムとすることができ、粘膜付着フィルムは少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーおよび活性剤の有効量を含む。粘膜付着フィルムは、口腔に適用した場合、分解して活性剤を放出し、これは次いで口腔粘膜を通って吸収され、全身循環に直接達する。
【0027】
ある実施形態によれば、口腔フィルムは、乾燥フィルムの総重量に対して、1つまたは複数の水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも約45重量%を含む。分解可能な薄フィルムは、水溶性フィルム形成ポリマーと相容性のある薬理学的活性剤を含む。この口腔フィルムに組み込まれた活性剤は、フィルムの分解時に放出されて口腔粘膜を通って吸収され得る。分解可能な口腔フィルムの組成物は、口腔フィルムが口腔において30秒超で15分以上ほどの分解時間を有するものである。「分解時間」とは、一体の口腔フィルムが、唾液、水または類似の溶媒と接触した後崩壊してもはや一体の単位とは認められなくなるまでの時間である。一体の薬用量単位は、人工のヒトの唾液溶液に曝した後少なくとも15分間、部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している。
【0028】
口腔フィルムは、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーを含む。本発明において使用するのに適した水溶性フィルム形成ポリマーには、これだけには限らないが、セルロース、セルロース誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレングリコール、合成または天然ゴム、アクリル酸ポリマー、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸ポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリアクリルアミド、カラギーナン、プルナン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール−ポリビニルアルコールコポリマー、アルギン酸の塩、カルボキシビニルポリマーおよびこれらの混合物が含まれる。
【0029】
次に限定されないが、適切なセルロース誘導体には、例えばメチルセルロースおよびエチルセルロースなどのアルキルセルロース、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの置換されたアルキルセルロース、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロースなどの置換されたアルキルセルロースの塩およびこれらの混合物が含まれる。
【0030】
次に限定されないが、適切なゴムには、キサンタンガム、トラガカントガム、グアガム、アカシアゴム、アラビアゴムおよびこれらの混合物が含まれる。
【0031】
低速分解口腔フィルムは、水溶性フィルム形成ポリマーとして、ポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を含むことができる。フィルム形成ポリマーのポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルメチルセルロースは、乾燥ポリマーにおいて、乾燥口腔フィルムの総重量に対して、45重量%超の量で存在することができる。
【0032】
ある実施形態によれば、フィルム形成ポリマーのポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、乾燥口腔フィルムの総重量に対して、45重量%超から約90重量%までの量で乾燥フィルムにおいて存在することができる。他の実施形態によれば、フィルム形成ポリマーのポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、乾燥口腔フィルムの総重量に対して、45重量%超から約75重量%までの量で乾燥フィルムにおいて存在することができる。さらなる実施形態によれば、フィルム形成ポリマーのポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、乾燥口腔フィルムの総重量に対して、45重量%超から約50重量%までの量で乾燥フィルムにおいて存在することができる。
【0033】
ある実施形態によれば、分解可能な口腔フィルムは、ポリアルキレンオキシド、セルロースポリマーおよび活性剤のブレンドまたは混合物を含む。乾燥フィルムにおいてポリアルキレンオキシドのセルロースポリマーに対する比率は、約1:2から約1:5とすることができる。
【0034】
ある例示的実施形態によれば、分解可能な口腔フィルムは、ポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を含む。次に限定されないが、口腔フィルムにおいて使用するための適切なポリエチレンオキシドポリマーは、The Dow Chemical会社から、POLYOXの商標の下で市販されている。POLYOXポリエチレンオキシドポリマーは、非イオン性のフィルム形成水溶性ポリマーであり、これは光沢付け、押し出し、射出成形または注型することができる。POLYOXポリエチレンオキシドポリマーの分子量は、約100,000から約8,000,000まで変動する。次に限定されないが、口腔フィルムにおいて使用することができる特に適切なPOLYOXポリマーは、POLYOX N−80である。POLYOX N−80は、おおよそ200,000の分子量と(25℃における5%水溶液において)約65から約115mPa/sの粘度を有する。
【0035】
次に限定されないが、口腔フィルムにおいて使用するのに適切なヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマーは、The Dow Chemical会社から、METHOCELの商標の下で市販されている。口腔フィルムにおいて使用することができる特に適したMETHOCELポリマーは、METHOCEL E50である。METHOCEL E50は、おおよそ30,000の分子量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0036】
本発明の特別な実施形態は、分解可能な口腔フィルムが、乾燥フィルムの総重量に対して、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%と活性剤を含み、ここで、前記分解可能な口腔フィルムは、ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレンオキシド、およびセルロースポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を含むことを特徴とする。
【0037】
口腔フィルムは、さまざまな活性剤の口腔への送達および放出に使用される。「活性剤」という用語には、口腔に送達することができる美容的または薬理学的活性剤が含まれる。適切な活性剤の限定されない例には、トゥースホワイトニング物質、息清浄剤、虫歯予防化合物、結石予防化合物、抗狭心症剤、抗不安症剤、抗酸化剤、抗けいれん剤、抗糖尿病剤、抗下痢剤、抗てんかん剤、抗炎症剤、抗精神障害剤、抗発熱剤、鎮痙剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、局部麻酔剤、抗菌化合物、殺菌剤、血管収縮剤、収斂剤、化学療法剤、抗生物質、歯の発生剤、抗真菌剤、血管拡張剤、抗高血圧剤、抗偏頭痛剤、抗不整脈剤、抗ぜんそく剤、抗うつ剤、心臓病剤、カルシウム拮抗剤、中枢神経系活性物質、風邪治療剤、せき治療剤、充血除去剤、利尿薬、ニコチン、ワクチン、ペプチドまたはプロドラッグ、ホルモン、プロトンポンプ阻害剤、H2レセプター拮抗剤、ビタミンおよび他の食餌および栄養サプリメントが含まれる。上記活性剤の一覧は、口腔フィルムに組み込むことができる活性剤の種類を説明するためだけに提供されたものである。しかし、他のどの適合性のある美容的または薬理学的活性剤あるいは薬剤の組合せも、低速分解口腔フィルムに含むことができることに留意されたい。
【0038】
上記の活性剤の一覧は、美容的または薬理学的活性剤をヒトに送達するための口腔フィルムの調製に関連して記述した。しかし、美容的または薬理学的な動物用活性剤を、ヒト以外の動物に送達するために、低速分解口腔フィルムに組み込むことも本発明の範囲内である。
【0039】
ある実施形態によれば、口腔フィルムは、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーと活性剤としてのニコチン活性物質を含む。「ニコチン活性物質」という用語は、遊離ニコチン塩基、ニコチン誘導体、ニコチン塩、ニコチン誘導体の塩、ニコチン複合体ならびにこれらの組合せおよび混合物を指す。当該技術においてさまざまなニコチン活性物質が知られており、市販されている。
【0040】
ニコチン塩には、ニコチンと任意の酸の相互作用によって生成された、例えば、塩酸塩、二塩酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、酸性酒石酸塩、塩化亜鉛、サリチル酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、フマール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、オレイン酸塩およびソルビン酸塩など、生理学的に許容されるどの塩も含まれる。特に有用なニコチン塩には、次に限らないが、ニコチンモノ酒石酸塩、酒石酸水素ニコチン、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、ニコチン硫酸塩、ニコチン塩化亜鉛一水和物、ニコチンサリチル酸塩およびこれらの混合物が含まれる。
【0041】
適切なニコチン複合体には、次に限らないが、ニコチンオイル、シクロデキストリンと複合したニコチン、ポリマー樹脂と複合したニコチン、およびこれらの組合せまたは混合物が含まれる。
【0042】
低速分解口腔フィルムは、少なくとも1つのニコチン活性物質を、ニコチン欲求を低減または緩和するのに十分な量含む。「少なくとも1つのニコチン活性物質」という語句は、口腔フィルムが1つのニコチン活性物質、または2つ以上のニコチン活性物質の混合物を含むことを指す。ある実施形態において、口腔フィルムに含まれるニコチン活性物質の量は、薬用量単位当たり約0.25mgから約10mgである。
【0043】
ある実施形態によれば、口腔フィルムに含まれるニコチン活性物質の量は、薬用量単位当たり約0.25mgから約6mgである。別の実施形態によれば、口腔フィルムに含まれるニコチン活性物質の量は、薬用量単位当たり約0.25mgから約4mgである。さらなる実施形態によれば、口腔フィルムに含まれるニコチン活性物質の量は、薬用量単位当たり約1mgから約3mgである。
【0044】
分解可能な口腔フィルムは、味覚改良剤、生体接着剤、緩衝剤、着色剤、安定剤、不活性充填剤、乳化剤、透過向上剤、pH調節剤、可塑剤および保存剤の1つまたは複数の場合により使用される成分を含むことができる。
【0045】
次に限定されないが、分解可能な口腔フィルムにおいて使用するための適切な味覚改良剤には、香味剤、甘味剤、味覚マスキング剤およびこれらの混合物が含まれる。適切な味覚改良剤には、次に限らないが、エッセンシャルオイルまたは水可溶性のメントールの抽出物、ウィンターグリーン、ペパーミント、スイートミント、スペアミント、バニリン、チェリー、バタースコッチ、チョコレート、シナモン、クローブ、レモン、オレンジ、ラズベリー、ローズ、スパイス、バイオレット、薬草、フルーツ、ストロベリー、グレープ、パイナップル、ピーチ、キウイー、パパイヤ、マンゴー、ココナッツ、リンゴ、コーヒー、プラム、スイカ、ナッツ、緑茶、グレープフルーツ、バナナ、バター、カモミール、砂糖、デキストロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、スクラロース、キシリトール、マリトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメートナトリウム、アセスルファムKおよび蜂蜜が含まれる。
【0046】
次に限定されないが、分解可能な口腔フィルムにおいて使用するための適切な着色剤には、顔料、染料、食物および薬品への適用に適した、例えば、FD&C着色剤などの天然食物の色、およびこれらの混合物が含まれる。
【0047】
次に限定されないが、口腔薄フィルムにおいて使用するための適切な安定剤にはキレート剤が含まれる。キレート剤は、分解可能な口腔フィルムの酸化を防止するために使用される。特に有用なキレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)である。固体の薬剤調製に組み込むことのできるどのキレート剤も、口腔フィルムにおいて使用することができる。
【0048】
口腔フィルム組成物は、1つまたは複数の水溶性不活性充填剤を場合により含むことができる。次に限定されないが、分解可能な口腔フィルムに使用するための適切な水溶性不活性充填剤には、マンニトール、キシリトール、グルコース、フラクトース、スクロース、スクラロース、ラクトース、トレハロース、マルトデキストリン、デキストラン、デキストリン、改質澱粉、デキストロース、ソルビトール、デキストレートおよびこれらの混合物が含まれる。
【0049】
次に限定されないが、分解可能な口腔フィルムに使用するための適切な乳化剤には、可溶化剤、湿潤剤、および放出改質剤が含まれる。次に限らないが、適切な乳化剤には、キャスターオイル誘導体、セチルアルコール、エタノール、硬化植物油、ポリビニルアルコール、シメチコン、ソルビタンエステル、グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステアレート、ポロキサマー、ポリソルベートおよびこれらの混合物が含まれる。
【0050】
口腔フィルム組成物は、少なくとも1つの可塑剤を場合により含むことができる。フィルム組成物に含むことができる適切な可塑剤には、次に限らないが、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール、トリアセチン、脱アセチル化モノグリセリド、ジエチル塩、トリエチルシトレート、ジブチルセバケート、ポリエチレングリコールなどおよびこれらの混合物が含まれる。
【0051】
口腔フィルムは、1つまたは複数の「透過向上剤」を場合により含むこともできる。「透過向上剤」は、活性剤の粘膜表面を通しての吸収を促進する天然または合成の化合物である。「1つまたは複数」という語句は、単一の透過向上剤または2つ以上の透過向上剤の組合せもしくは混合物が、口腔フィルムに含まれることもあることを意味することを意図する。
【0052】
口腔フィルム組成物は、1つまたは複数の保存剤もまた含むこともできる。適切な保存剤には、次に限らないが、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、トコフェロール誘導体、クエン酸、パラベン、パラベンの誘導体、ソルビン酸、ソルビン酸の塩、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸の塩、酢酸、酢酸の塩およびこれらの混合物が含まれる。
【0053】
分解可能な口腔フィルムを調製する方法が説明される。ある実施形態によれば、分解可能な口腔フィルムを調製するための方法は、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマー、活性剤、相容性の溶媒、および場合により上記の場合により使用される成分のいずれかの1つまたは複数を一緒に混合して、均質な混合物を形成することを含む。フィルムを、水溶性フィルム形成ポリマー、活性剤および場合により使用される成分の混合物から形成し、乾燥フィルムの総重量に対して、前記水溶性ポリマーの少なくとも45重量%を含む分解可能な口腔フィルムを提供する。
【0054】
他の実施形態によれば、分解可能な口腔フィルムを調製するための方法は、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマー、少なくとも1つのセルロースポリマー、活性剤、相容性の溶媒および場合により上記の場合により使用される成分のいずれかの1つまたは複数を一緒に混合して、均質な混合物を形成することを含む。この混合物からフィルムを形成する。水溶性ポリマーを一緒にして、乾燥フィルム中の前記ポリアルキレンオキシドポリマーのセルロースポリマーに対する約1:2から約1:5の比率を提供する。
【0055】
フィルム成分の均質な混合物を脱ガスし、注型用基板上に予め定められた厚さで均一に被覆し、次いで乾燥する。別な方法として、均質な混合物を押し出して注型用基板上にフィルムを形成することもできる。注型または押出しから調製した乾燥フィルムをさまざまな寸法に切り出して、個別の薬用量単位を作製する。乾燥フィルムは、例えば、ダイス切断、ナイフ切断または機械切断など、任意の既知の切断方法で切断することができる。
【0056】
個体の口腔に活性剤の有効用量を投与するために、分解可能なフィルムを使用する方法も提供される。例示的実施形態によれば、この方法はニコチンの有効用量を、タバコ製品の使用の停止を望んでいる個体の口腔に投与するための分解可能なフィルムの使用を含んでいる。
【0057】
薄フィルム投薬形態は口腔に適用され、個体が口を閉じると直ちに、頬、口蓋または舌などの粘膜表面に付着する。このフィルムは分解してニコチン活性物質を放出し、これは口腔粘膜を通して吸収される。ニコチン活性物質は、例えば舌下腺または頬粘膜によって吸収されることができる。口腔フィルムは、口腔粘膜に対して高い粘膜付着性と遅い分解速度を有する。この高い粘膜付着性と遅い分解速度のために、ニコチン活性物質は実質的に口腔内の付着点において吸収される。ニコチン活性物質が口腔粘膜を通して吸収されるため、飲み込まれるニコチン活性物質の量が最小化される。薄フィルムからのニコチンの放出は、噛んだり吸引したりするようなフィルムの咀嚼無しで起こる。ニコチン含有錠剤、カプセルまたはロゼンジの場合に起こるかもしれない、個体が全体の投薬形態を詰まらせたり誤って飲み込んだりするリスクは実質的に無い。
【0058】
口腔フィルムおよび調製方法をさらに例示するために、以下の実施例を示す。しかし、以下の実施例は、いかなる方法でも本発明を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0059】
実施例1
単層の分解可能な口腔フィルムは、注型溶液を調製し、薄フィルムを注型溶液から注型することによって作製した。口腔フィルムは、POLYOX N80およびMETHOCEL E50の混合物を1:4の比率で含んでいた。
【0060】
注型溶液の調製
脱イオン水451gをステンレス製ポットに入れて、ホットプレート上で混合しながら80℃に加熱した。水溶液に、FD&C blue着色剤0.03g、POLYOX N80 23.55gおよびMETHOCEL E50 47.14gを加え、高混合速度で混合した。ステンレス製ポットを、ホットプレートから取り除いて水浴に移して冷却した。混合物が冷えたならばステンレス製ポットを水浴から取り除き、氷浴に入れて混合した。ステンレス製ポットを氷浴から取り除いて、メントール溶液(エタノール中のメントール10.56g)、グリセリン7.54g、スクラロース1.95g、ペパーミント風味49.53gおよびエチルアルコールを混合しながら加えた。ニコチン溶液を、酒石酸水素ニコチン4.01gを脱イオン水20mlに加えることによって調製した。酒石酸水素ニコチン溶液を薄フィルム注型溶液に加えた。
【0061】
薄フィルムの注型
注型溶液を、塩化ポリビニルの注型ライナー上に被覆し、約70℃の温度において約4分間乾燥した。得られた分解可能な薄フィルムは、484mm中に1mgのニコチンを含んでいた。以下の表は、乾燥フィルム中の各成分の重量%を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例2
単層の分解可能な口腔フィルムを、注型溶液を調製し、薄フィルムを注型溶液から注型することによって作製した。口腔フィルムは、POLYOX N80とMETHOCEL E50の混合物を1:3の比率で含んでいた。
【0064】
注型溶液の調製
脱イオン水300gをステンレス製ポットに入れて、ホットプレート上で混合しながら80℃に加熱した。水溶液に、FD&C blue着色剤0.02g、POLYOX N80 11.77gおよびMETHOCEL E50 35.30gを加え、高混合速度で混合した。ステンレス製ポットを、ホットプレートから取り除いて水浴に移して冷却した。混合物が冷えたならばステンレス製ポットを水浴から取り除き、氷浴に入れて混合した。ステンレス製ポットを氷浴から取り除いて、メントール溶液(エタノール中のメントール7g)、グリセリン5g、スクラロース1.3g、ペパーミント風味33g、およびエチルアルコールを混合しながら加えた。ニコチン溶液を、酒石酸水素ニコチン6.63gを脱イオン水30mlに加えることによって調製した。酒石酸水素ニコチン溶液を薄フィルム注型溶液に加えた。
【0065】
薄フィルムの注型
注型溶液を、シリコン処理した注型ライナー上に被覆湿潤厚さ0.62mmで被覆し、約70℃の温度において約4分間乾燥した。得られた分解可能な薄フィルムは、484mm中に1mgのニコチンを含んでいた。以下の表は、乾燥フィルム中の各成分の重量%を示す。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例3
単層の分解可能な口腔フィルムを、注型溶液を調製し、薄フィルムを注型溶液から注型することによって作製した。口腔フィルムは、POLYOX N80とMETHOCEL E50の混合物を1:4の比率で含んでいた。
【0068】
注型溶液の調製
脱イオン水300gをステンレス製ポットに入れて、ホットプレート上で混合しながら80℃に加熱した。水溶液に、FD&C blue着色剤0.02g、POLYOX N80 9.41gおよびMETHOCEL E50 37.65gを加え、高混合速度で混合した。ステンレス製ポットを、ホットプレートから取り除いて水浴に移して冷却した。混合物が冷えたならばステンレス製ポットを水浴から取り除き、氷浴に入れて混合した。ステンレス製ポットを氷浴から取り除いて、メントール溶液(エタノール中のメントール7g)、グリセリン5g、スクラロース1.3g、ペパーミント風味33g、およびエチルアルコールを混合しながら加えた。ニコチン溶液を、酒石酸水素ニコチン6.63gを脱イオン水30mlに加えることによって調製した。酒石酸水素ニコチン溶液を薄フィルム注型溶液に加えた。
【0069】
薄フィルムの注型
注型溶液を、シリコン処理した注型ライナー上に被覆湿潤厚さ0.62mmで被覆し、約70℃の温度において約4分間乾燥した。得られた分解可能な薄フィルムは、484mm中に1mgのニコチンを含んでいた。以下の表は、乾燥フィルム中の各成分の重量%を示す。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例4
単層の分解可能な口腔フィルムを、注型溶液を調製し、薄フィルムを注型溶液から注型することによって作製した。口腔フィルムは、POLYOX N80とMETHOCEL E50の混合物を1:5の比率で含んでいた。
【0072】
注型溶液の調製
脱イオン水300gをステンレス製ポットに入れて、ホットプレート上で混合しながら80℃に加熱した。水溶液に、FD&C blue着色剤0.02g、POLYOX N80 7.84gおよびMETHOCEL E50 39.22gを加え、高混合速度で混合した。ステンレス製ポットを、ホットプレートから取り除いて水浴に移して冷却した。混合物が冷えたならばステンレス製ポットを水浴から取り除き、氷浴に入れて混合した。ステンレス製ポットを氷浴から取り除いて、メントール溶液(エタノール中のメントール7g)、グリセリン5g、スクラロース1.3g、ペパーミント風味33g、およびエチルアルコールを混合しながら加えた。ニコチン溶液を、酒石酸水素ニコチン6.63gを脱イオン水30mlに加えることによって調製した。酒石酸水素ニコチン溶液を薄フィルム注型溶液に加えた。
【0073】
薄フィルムの注型
注型溶液を、シリコン処理した注型ライナー上に被覆湿潤厚さ0.585mmで被覆し、約70℃の温度において約4分間乾燥した。フィルムの乾燥被覆重量は0.956gであった。得られた分解可能な薄フィルムは、484mm中に1mgのニコチンを含んでいた。以下の表は、乾燥フィルム中の各成分の重量%を示す。
【0074】
【表4】

【0075】
実施例5
単層の分解可能な口腔フィルムを、注型溶液を調製し、薄フィルムを注型溶液から注型することによって作製した。口腔フィルムは、POLYOX N80とMETHOCEL E50の混合物を1:2の比率で含んでいた。
【0076】
注型溶液の調製
脱イオン水458gをステンレス製ポットに入れて、ホットプレート上で混合しながら80℃に加熱した。水溶液に、FD&C blue着色剤0.03g、POLYOX N80 23.58gおよびMETHOCEL E50 47.12gを加え、高混合速度で混合した。ステンレス製ポットを、ホットプレートから取り除いて水浴に移して冷却した。混合物が冷えたならばステンレス製ポットを水浴から取り除き、氷浴に入れて混合した。ステンレス製ポットを氷浴から取り除いて、メントール溶液(エタノール中のメントール10.57g)、グリセリン7.52g、スクラロース1.95g、ペパーミント風味49.51g、およびエチルアルコールを混合しながら加えた。ニコチン溶液を、酒石酸水素ニコチン9.94gを脱イオン水30mlに加えることによって調製した。酒石酸水素ニコチン溶液を薄フィルム注型溶液に加えた。
【0077】
薄フィルムの注型
注型溶液を、シリコン処理した注型ライナー上に被覆湿潤厚さ0.70mmで被覆し、約70℃の温度において約4分間乾燥した。フィルムの乾燥被覆重量は1.034gであった。得られた分解可能な薄フィルムは、600mm中に1mgのニコチンを含んでいた。以下の表は、乾燥フィルム中の各成分の重量%を示す。
【0078】
【表5】

【0079】
実施例6−8
インビトロ薬物放出
口腔フィルムの1.54cm寸法サンプルを、テフロン(登録商標)フィルターを支持体としてフランツセル上に置いた。人工のヒトの唾液溶液を、水中におけるKPO 0.19g/L、NaHPO 2.38g/LおよびNaCl 8g/Lから調製した。HEPES 25mMでpH7.4に緩衝化し、37℃に維持した人工唾液溶液約8mlを、試験フランツセルに導入した。
【0080】
実験は、人工唾液を口腔フィルムと接触させることで開始した。人工唾液溶液1mlのサンプルを、15分間にわたって30秒毎に採取した。取り除いた人工唾液の容積(1ml)は、各サンプル採取後に新しい人工唾液溶液で補充した。口腔フィルムによるニコチン放出量を、採取したサンプルのHPLC分析で測定した。処方毎に合計で3回の測定を行った。インビトロ薬物放出実験の結果を図1に示す。
【0081】
実施例8
インビトロ頬粘膜透過
インビトロ頬粘膜透過研究を、ブタの頬粘膜組織を使用してフランツセル中で35℃において実施した。新鮮なブタの頬粘膜組織を入手し、−80℃で冷凍した。使用する直前に、ブタの頬粘膜組織を厚さ0.8mmにデルマトームした。
【0082】
HEPES 25mMでpH7.4に緩衝化した人工唾液溶液約8mlを、フランツセルに加えた。口腔フィルムの試験サンプルをフランツセル中に置いた。ブタの頬粘膜組織をフランツセル中に入れ、口腔フィルムと接触させた。実験は、人工唾液溶液が口腔フィルムと接触したときに開始した。3分後、人工唾液溶液を取り除き、フランツセルを蒸留水で洗浄した。新鮮な人工唾液溶液0.75mlとリン酸塩緩衝化サリン(PBS)の約8mlをフランツセルに加えた。溶液のサンプルを、さまざまな時間間隔、すなわち、0、0.5、1、2、3および4時間の間隔でフランツセルから抜き取った。取り除いた溶液容積(1m)は、各抜取り後に同量の新鮮な溶液で補充した。3分後に放出されたニコチン量および粘膜を透過したニコチン量を、採取したサンプルのHPLCによって測定した。インビトロ頬透過実験の結果を図2に示す。
【0083】
実施例9
追加の薄フィルム原型を、固定量のMethocel(商標)E50およびHPMCのE5級を含む処方(A)、(B)および(C)から調製し、例えばキサンタンガムなどのゴムのインビトロ分解時間への影響を評価した。
【0084】
【表6】

【0085】
インビトロ分解時間。3つの処方全てが、ヒトの唾液と接触したとき、数秒以内でバイオ付着性ゲルに変化した。(A)は数秒で分解し、(B)は4分で分解し、(C)は8分で分解した。したがって、キサンタンガムの添加は、分解までの時間を長くすることが見出された。(B)がニコチン活性物質を口腔に送達するために好ましい処方である。
【0086】
実施例10
本発明による薄フィルム原型は、フィルム形成ポリマーとしてのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアラビアゴムを含んで調製することもできる。例えば、アラビアゴムは、上の処方(A)、(B)および(C)においてキサンタンガムと置換することができ、類似の分解可能な特性を提供する。
【0087】
分解可能な口腔フィルムは、ニコチン補充療法として有用である。口腔フィルムは、例えば、シガレット、シガー、パイプタバコの喫煙の停止、煙の出ないかみたばこの使用停止など、タバコの使用を低減または停止する手段として有用である。口腔フィルムは、あらゆる計画されたタバコ低減プログラムにおけるタバコと並列して使用することができる。それ故に、本発明は、かかる低減を必要とする人への本発明の経口的に溶解するフィルムの1つまたは複数を経口的に投与することを含む、タバコの使用を低減する方法にも関連している。一般的に、分解可能な口腔フィルムは、ニコチン欲求を防止または低減することを必要としている個体に、任意の推奨されたまたは容認された限度以内で、投与することができる。経口的に溶解するフィルムは、通常、ニコチン活性物質が主として口内で経頬的に送達されるように投与される。
【0088】
本発明は、上で幾つかの例示的実施形態に関連して説明したが、本発明と同じ機能を実施するために、本発明から逸脱することなく、他の類似の実施形態を使用することができまたは説明した実施形態に修正および追加を行うこともできることが理解される。さらに、開示した全ての実施形態は必ずしも選択的ではなく、本発明のさまざまな実施形態は組み合わせて所望の特性を提供することができる。変形形態は、当業者によって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく得ることができる。したがって、本発明はいかなる単一の例示的実施形態にも限定されるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲の詳述に従った幅と範囲において解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】従来技術のフィルムからのニコチン放出と比較した、3つの異なる口腔フィルムからのインビトロニコチン放出結果を示すグラフである。
【図2】インビトロ粘膜透過試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥フィルムの総重量に対して、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%、および
活性剤
を含み、
人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している、
口腔粘膜に対する高い粘膜付着性および遅い分解速度を有する分解可能な口腔フィルム。
【請求項2】
乾燥フィルムの総重量に対して、前記少なくとも1つの水溶性ポリマーの約45から約90重量%を含む、請求項1に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項3】
2つの異なる水溶性フィルム形成ポリマーの混合物を含む、請求項1に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項4】
ポリアルキレンオキシドおよびセルロースポリマーの混合物を含む、請求項3に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシドであり、前記セルロースポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項4に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項6】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:2から約1:5である、請求項5に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項7】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:2である、請求項6に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項8】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:3である、請求項6に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項9】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:4である、請求項6に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項10】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:5である、請求項6に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項11】
ゴムを追加的に含む、請求項1に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項12】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびキサンタンガムを含む、請求項2に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項13】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアラビアゴムを含む、請求項2に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項14】
前記活性剤がニコチン活性物質である、請求項5に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項15】
前記ニコチン活性物質が、遊離ニコチン塩基、ニコチン誘導体、ニコチン複合体、ニコチン塩またはこれらの混合物を含む、請求項11に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項16】
前記ニコチン活性物質が酒石酸水素ニコチンである、請求項12に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項17】
ポリアルキレンオキシドとセルロースポリマーの混合物(ここで、前記フィルムに存在する前記ポリアルキレンオキシドの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である)、および
ニコチン活性物質
を含む、ニコチンの送達のための分解可能な口腔フィルム。
【請求項18】
前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシドであり、前記セルロースポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項17に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項19】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:2である、請求項18に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項20】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:3である、請求項18に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項21】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:4である、請求項18に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項22】
フィルム中のポリエチレンオキシドのヒドロキシプロピルメチルセルロースに対する前記比率が約1:5である、請求項18に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項23】
前記ニコチン活性物質が、遊離ニコチン塩基、ニコチン誘導体、ニコチン複合体、ニコチン塩またはこれらの混合物を含む、請求項17に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項24】
前記ニコチン活性物質が酒石酸水素ニコチンである、請求項23に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項25】
人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している、請求項17に記載の分解可能な口腔フィルム。
【請求項26】
ニコチン送達のための分解可能な口腔フィルムであり、
ポリアルキレンオキシドとセルロースポリマーの混合物(ここで、前記フィルムに存在する前記ポリアルキレンオキシドの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である)、および
酒石酸水素ニコチンを含み、
ここで、前記フィルムが、人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している
フィルム。
【請求項27】
少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーと活性剤を一緒に混合して混合物を形成するステップと、および
前記混合物からフィルム(前記フィルムは、乾燥フィルムの総重量に対して、前記水溶性ポリマーの少なくとも45重量%を含む。)を形成するステップと
を含む、分解可能な口腔フィルムを調製するための方法。
【請求項28】
少なくとも1つのポリアルキレンオキシドポリマー、少なくとも1つのセルロースポリマーおよび活性剤を一緒に混合して混合物を形成するステップと(ここで、前記フィルム中に存在する前記ポリアルキレンオキシドポリマーの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である。)、および
前記混合物からフィルムを形成するステップと
を含む、分解可能な口腔フィルムを調製するための方法。
【請求項29】
乾燥フィルムの総重量に対して、少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーの少なくとも45重量%および活性剤を含む分解可能な口腔フィルムを提供するステップと、および
前記フィルムを口腔内に導入するステップと
を含む、活性剤を投与する方法。
【請求項30】
ポリアルキレンオキシドおよびセルロースポリマーの混合物(ここで、前記フィルム中に存在する前記ポリアルキレンオキシドの前記セルロースポリマーに対する比率は約1:2から約1:5である。)および活性剤を含む分解可能なフィルムを提供するステップと、および
前記フィルムを口腔内に導入するステップと
を含む、活性剤を投与する方法。
【請求項31】
少なくとも1つの水溶性フィルム形成ポリマーを含む、分解可能な口腔フィルムを提供するステップと(ここで、前記口腔フィルムは人工のヒトの唾液溶液にインビトロで少なくとも15分間曝した後、少なくとも部分的な一体性と活性剤放出能力を維持している。)、および
前記フィルムを口腔内に導入するステップと
を含む、活性剤を投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−527488(P2009−527488A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555480(P2008−555480)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/062176
【国際公開番号】WO2007/095600
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】