分配器
【課題】各配給口における対象液状物の定量分配を図り、マイクロディバイスのナンバリング・アップを実現できる分配器を提案する。
【解決手段】流体物を供給する単一の供給口Nと、この単一の供給口Nにつながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口2とを備えた分配器において、前記供給口Nを起点にしてそこから各分岐配給口2が配設された底部に向けて周長Lを拡張させた円錐型環状空間Mを設ける。
【解決手段】流体物を供給する単一の供給口Nと、この単一の供給口Nにつながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口2とを備えた分配器において、前記供給口Nを起点にしてそこから各分岐配給口2が配設された底部に向けて周長Lを拡張させた円錐型環状空間Mを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ化学プロセスやマイクロ分析に使用されるマイクロリアクターやマイクロTAS(Micro Total Analysis Systems)(以下、マイクロリアクターやマイクロTASを総称してマイクロディバイスという)の技術分野で実用的かつ効率的なプロセスを構成するのに不可欠な分配器に関するものであり、複数のマイクロディバイスに対象流体物を同時に、均一に分配、供給しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ化学プロセスやマイク化学分析で使用されるマイクロディバイスは、『実用化、量産化の際、必要な機能が確認されたプロトタイプリアクターをそのまま並列に必要数並べてナンバリング・アップしオンデマインドな生産量に対応することが可能である』というところに大きな特徴を有しており、最近では実用プロセスにおけるナンバリング・アップシステムの開発の必要性が高まりつつある(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】京都大学教授 吉田 潤一 著「マイクロリアクターテクノロジ」(有)ブッカーズ社、2005年7月13日発行、p.34〜37
【0003】
とくに、この種の分野で取り扱われる対象流体物は極微小流量であり、該対象流体物を均等に複数のマイクロディバイスへ分配、供給することが求められ、従来の分配、供給技術としては、供給源から各供給先(マイクロリアクター等)に至るまでの流通路の長さを全て均一に設計したトーナメント方式(図11参照)や連絡通路を形成した仕切板を複数枚重ね合わせた積層方式(図12参照)、単一の流通路に供給先を直接連結した直結方式(図13(a)(b)参照)あるいは単一の供給口から漸次流通路を拡長させたスカート方式(図14参照)等の採用が試みられていた。
【0004】
ところで、上記のトーナメント方式は、流通路の分岐部で流れの慣性の影響を受けるため、分岐後の流量にばらつきが生じる不具合があること、また、分岐後の直線部を長くすることにより整流効果を得ることができるものの、その構造を確保するために流通路を長くすると圧力損失の発生が避けられないばかりか、分配器を設置する過大なスペースが必要となり実用的でない。
【0005】
また、積層方式については、マイクロディバイスに直接分岐流通路を設けることができ、しかも部品数も少なくてすむことから経済的な設計が可能であり現在比較的多用されているが、この積層方式は、流通路の奥に行くにしたがい流通路の抵抗による圧力損失が生じ、その結果として各マイクロディバイスへの供給量の変化が避けられない。
【0006】
さらに、直結方式では、上記の積層方式と同様、流通路の長さの違いによる影響を受けて均一な分配、供給が困難であり、スカート方式にあっては、供給口から分配先までの長さが相違することから均一な分配、供給が困難であって、何れの方式においても未だ有効な手段にはなり得ないのが現状であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記のような従来の不具合を解消し対象流体物を各ディバイスに均一に分配、供給できる新規な新規な分配器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体物を供給する単一の供給口と、この単一の供給口につながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口とを備えた分配器において、
前記流通路は、供給口を起点にしてそこから各分岐配給口が配設された底部へ向けて周長を拡張させた円錐型環状空間からなる、ことを特徴とする分配器である。
【0009】
上記の分配器を構成するに当たっては、頂点と底部とをつなぐ円錐型の輪郭形状を形成する外部壁を備えたコアと、このコアの頂点に対面させて供給口を形成する貫通孔を有し、該コアの外部壁に沿う内部壁を有するコアケースとの組合せにて円錐型環状空間を区画形成するのがよい。
【0010】
また、円錐型環状空間は、コアの外部壁における拡張角度をθ1とし、コアケースの内部壁における拡張角度をθ2とした場合に、θ2<θ1の条件を満足するのが好ましい。
【0011】
さらに、円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口に至るまでの間で同一の断面積を有するものとすることができるが、供給口から分岐配給口へ向けて漸次減少する断面積を有するものを適用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
分配器がもつ流通路は、円錐型形状をなす三次元的な環状空間であって、流体の流れ特性に影響する要素(供給口から配給口に至るまでの距離、流通路の断面形状、流れの慣性(方向)等)が該環状空間の周り、長さ方向の何れにおいてもほぼ同一になるので、各分岐配給口における対象流体物の流量は均一化(定量分配)される。
【0013】
圧力損失が少なく、構造の簡素化が可能であり、メンテナンスを含め取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう分配器の実施の形態を断面について示した図であり、図2は分配器の分解状態を示した外観斜視図である。
【0015】
図1、2における番号1はコアである。このコア1は頂点Pと底部h(図1参照)とをつなぎ円錐型の輪郭形状を形成する外部壁1aが備えられており、底部hの縁部には該コア1を取り囲む環状の溝部1bが設けられている。
【0016】
2は溝部1bの底壁に設けられた分岐配給口である。この分岐配給口2はコア1の周りに沿って複数個設けられおり、その下端はマイクロディバイスにつながっている。
【0017】
また、3はコア1に組み合わさるコアケースである。コアケース3にはコア1に組み合わさった状態でコア1の頂点Pに対面して供給口Nを形成する貫通孔3aと、コア1の外部壁1aに近接配置される内部壁3bが設けられており、図3に示すように内部壁3bとコア1の外部壁1aにより、供給口Nを起点に溝部1b(底部縁部)に向けて周長Lが拡張する円錐型環状空間Mを区画形成する。この円錐型環状空間Mは分配器の流通路を構成するものであって供給口Nから各分岐配給口2へと向けて対象流体物を流す。
【0018】
さらに、4はコア1を保持するホルダー、5はコアケース3を保持するホルダー、6は液状物を分配器に供給する供給ジョイント、7は分配器の各分岐配給口2につながり、分配された液状物をマイクロディバイスに配給する分岐ジョイントである。ホルダー4とホルダー5とは図示はしないが、ボルトの如き締結手段にて相互に連結される。
【0019】
上記の構成になる分配器は、供給口Nから分岐配給口2に至るまでの長さW(図3参照)についても、その周りにおいて全て同じであって(三次元的な流通路となる)、対象流体物は図4に示すような流れを呈することとなり各分岐配給口2において定量分配が可能となる。
【0020】
分配器の流通路を形成する円錐型環状空間Mは、開孔あるいは細溝によって貫通路を形成しこれを円錐型状に複数本配列することによって構成することも可能で、この場合、流通路はその周りにおいては断続的な壁が形成されるが、対象流体物の定量分配が可能となる。また、円錐型環状空間Mの周長Lはマイクロディバイスの形式や設置状況等に応じて長さWの範囲で適宜短縮することもできる。
【0021】
コア1の外部壁1aにおける拡張角度(円錐角度)をθ1とし、コアケース3の内部壁3bにおける拡張角度をθ2とした場合(図1参照)に、θ2<θ1とする。その理由は、このような条件に設定すると、供給口Nから分岐配給口2へ至る流路断面積を均等又は漸減させることができ、対象流体物(供給流体)に流路断面積変化による圧力上昇(圧力低下を防止する)を起こさせ少なくとも溝部1bで均一な圧力とすることができるからである。
【0022】
円錐型環状空間Mは、コア1の外部壁1aにおける拡張角度θ1及びコアケース3の内部壁3bにおける拡張角度θ2の組み合わせにより供給口Nから分岐配給口2に至るまで同一の断面積となるように設定してもよいが、溝部1bで均一な流量と圧力を与えるためは、該円錐型環状空間Mの断面積は、供給口Nから分岐配給口2へ向けて漸次に減少させるのが有効であり、この点に関しては対象流体物の特性や流れ条件(圧力、流量等)により任意に変更できる。
【0023】
円錐型環状空間Mの最終部あるいは溝部1bからマイクロディバイスに至るまでの通路には図5に示すように、断面積を部分的に急速に小さくした領域(チョーク孔)を設けて絞り効果を与えることも可能であり、これにより円錐型環状空間Mの各部、溝部1bにおける圧力の均一化が可能となる。
【0024】
また、絞り効果をより一層向上させるために、円錐型環状空間Mの最終部あるいは溝部1bからマイクロディバイスに至るまでの通路に、図6に示すように、セラミック、ガラス、ステンレス鋼等の球体や粉体を充填してもよい。
【0025】
分配器の配置姿勢は、予圧状態で対象流体物を送給することができるように供給口Nを下にし、分岐配給口2を上にした配置姿勢とするのが望ましい。
【0026】
図7にマイクロディバイスのナンバリング・アップの構成例を示す。
【実施例】
【0027】
上掲図1に示した構造になる分配器(θ1:105°、θ2:96°、溝部寸法:幅3mm、深さ2mm、チョーク孔:直径1.5mm、分岐配給口:10個とした分水嶺型分配器)の下流にナノ粒子調整用のマイクロリアターを設置して、1ライン当たりの設定流量:0.7ml/min、ライン圧力:0.7MPa(7kgf/cm2)、ライン温度:室温の条件で対象流体物(超純水)を供給しその際の流出量について調査(2ライン接続(対角に接続)、5ライン接続(1ラインおきに接続)、10ライン接続)した。その結果を表1〜3に示す。なお、この調査では、図8〜10に示す形式の分配器についての調査(条件同一)も併せて行った。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
図8に示した分配器は、圧力に関するパスカルの法則に従えば流入した反応流体は各分岐配給口で等圧となるが、実際には分岐路内の流路抵抗により供給口に近い分岐配給口ほど流量が多く、供給口から離れるほど流量が少なくなった。また、図9に示した分配器については、供給口に近い分岐配給口では流量が多く、両端に近づくほど流量が少なくなり、図8に示した分配器と同様の傾向が見られた。
【0032】
図10に示した分配器は充填材を配置した構造のものであって、この場合、流量のばらつきは幾分緩和されたものの、流量に対する依存性が大きく、分岐配給口の下流に圧力損失(流路抵抗)の大きなマイクロリアクターを設置した場合には改善効果は現れなかった(マイクロディバイスでの圧力損失が大きいほど分岐配給口での流量差は小さくなるが、分記配給口の多くなる場合に圧力損失が格段に大きくなるため実用には供し得ない。)。
【0033】
これに対して、本発明にしたがう分配器は、2ライン接続の場合では流量の標準偏差(SD)が0.069、5ライン接続の場合では0.18、10ライン接続の場合にでは0.19であり、流量のばらつきが極めて小さく、定量分配が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
マイクロディバイスのナンバリング・アップを実現し得る定量分配の可能な分配器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にしたがう分配器の実施の形態を示した図であり、(a)は断面図であり(b)は底面図である。
【図2】図1に示した分配器の分解斜視図である。
【図3】図1に示した分配器の流通路を模式的に示した図である。
【図4】図1に示した分配器の対象流体物の流れ方を示した図である。
【図5】本発明にしたがう他の分配器の要部(円錐型環状空間の最終部、溝部からマイクロディバイスに至るまでの通路)を拡大して示した図である
【図6】本発明にしたがう他の分配器の要部(円錐型環状空間の最終部、溝部からマイクロディバイスに至るまでの通路)を拡大して示した図である
【図7】マイクロディバイスのナンバリング・アップの構成例を示した図である。
【図8】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図9】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図10】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図11】トーナメント方式の分配器を示した図である。
【図12】積層方式の分配器を示した図である。
【図13】(a)(b)は直結方式の分配器を示した図である。
【図14】スカート方式の分配器を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コア
1a 外部壁
1b 溝部
2 分岐配給口
3 コアケース
3a 貫通孔
4 ホルダー
5 ホルダー
6 供給ジョイント
7 分岐ジョイント
P 頂点
M 円錐型環状空間
N 供給口
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ化学プロセスやマイクロ分析に使用されるマイクロリアクターやマイクロTAS(Micro Total Analysis Systems)(以下、マイクロリアクターやマイクロTASを総称してマイクロディバイスという)の技術分野で実用的かつ効率的なプロセスを構成するのに不可欠な分配器に関するものであり、複数のマイクロディバイスに対象流体物を同時に、均一に分配、供給しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ化学プロセスやマイク化学分析で使用されるマイクロディバイスは、『実用化、量産化の際、必要な機能が確認されたプロトタイプリアクターをそのまま並列に必要数並べてナンバリング・アップしオンデマインドな生産量に対応することが可能である』というところに大きな特徴を有しており、最近では実用プロセスにおけるナンバリング・アップシステムの開発の必要性が高まりつつある(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】京都大学教授 吉田 潤一 著「マイクロリアクターテクノロジ」(有)ブッカーズ社、2005年7月13日発行、p.34〜37
【0003】
とくに、この種の分野で取り扱われる対象流体物は極微小流量であり、該対象流体物を均等に複数のマイクロディバイスへ分配、供給することが求められ、従来の分配、供給技術としては、供給源から各供給先(マイクロリアクター等)に至るまでの流通路の長さを全て均一に設計したトーナメント方式(図11参照)や連絡通路を形成した仕切板を複数枚重ね合わせた積層方式(図12参照)、単一の流通路に供給先を直接連結した直結方式(図13(a)(b)参照)あるいは単一の供給口から漸次流通路を拡長させたスカート方式(図14参照)等の採用が試みられていた。
【0004】
ところで、上記のトーナメント方式は、流通路の分岐部で流れの慣性の影響を受けるため、分岐後の流量にばらつきが生じる不具合があること、また、分岐後の直線部を長くすることにより整流効果を得ることができるものの、その構造を確保するために流通路を長くすると圧力損失の発生が避けられないばかりか、分配器を設置する過大なスペースが必要となり実用的でない。
【0005】
また、積層方式については、マイクロディバイスに直接分岐流通路を設けることができ、しかも部品数も少なくてすむことから経済的な設計が可能であり現在比較的多用されているが、この積層方式は、流通路の奥に行くにしたがい流通路の抵抗による圧力損失が生じ、その結果として各マイクロディバイスへの供給量の変化が避けられない。
【0006】
さらに、直結方式では、上記の積層方式と同様、流通路の長さの違いによる影響を受けて均一な分配、供給が困難であり、スカート方式にあっては、供給口から分配先までの長さが相違することから均一な分配、供給が困難であって、何れの方式においても未だ有効な手段にはなり得ないのが現状であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記のような従来の不具合を解消し対象流体物を各ディバイスに均一に分配、供給できる新規な新規な分配器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体物を供給する単一の供給口と、この単一の供給口につながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口とを備えた分配器において、
前記流通路は、供給口を起点にしてそこから各分岐配給口が配設された底部へ向けて周長を拡張させた円錐型環状空間からなる、ことを特徴とする分配器である。
【0009】
上記の分配器を構成するに当たっては、頂点と底部とをつなぐ円錐型の輪郭形状を形成する外部壁を備えたコアと、このコアの頂点に対面させて供給口を形成する貫通孔を有し、該コアの外部壁に沿う内部壁を有するコアケースとの組合せにて円錐型環状空間を区画形成するのがよい。
【0010】
また、円錐型環状空間は、コアの外部壁における拡張角度をθ1とし、コアケースの内部壁における拡張角度をθ2とした場合に、θ2<θ1の条件を満足するのが好ましい。
【0011】
さらに、円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口に至るまでの間で同一の断面積を有するものとすることができるが、供給口から分岐配給口へ向けて漸次減少する断面積を有するものを適用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
分配器がもつ流通路は、円錐型形状をなす三次元的な環状空間であって、流体の流れ特性に影響する要素(供給口から配給口に至るまでの距離、流通路の断面形状、流れの慣性(方向)等)が該環状空間の周り、長さ方向の何れにおいてもほぼ同一になるので、各分岐配給口における対象流体物の流量は均一化(定量分配)される。
【0013】
圧力損失が少なく、構造の簡素化が可能であり、メンテナンスを含め取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう分配器の実施の形態を断面について示した図であり、図2は分配器の分解状態を示した外観斜視図である。
【0015】
図1、2における番号1はコアである。このコア1は頂点Pと底部h(図1参照)とをつなぎ円錐型の輪郭形状を形成する外部壁1aが備えられており、底部hの縁部には該コア1を取り囲む環状の溝部1bが設けられている。
【0016】
2は溝部1bの底壁に設けられた分岐配給口である。この分岐配給口2はコア1の周りに沿って複数個設けられおり、その下端はマイクロディバイスにつながっている。
【0017】
また、3はコア1に組み合わさるコアケースである。コアケース3にはコア1に組み合わさった状態でコア1の頂点Pに対面して供給口Nを形成する貫通孔3aと、コア1の外部壁1aに近接配置される内部壁3bが設けられており、図3に示すように内部壁3bとコア1の外部壁1aにより、供給口Nを起点に溝部1b(底部縁部)に向けて周長Lが拡張する円錐型環状空間Mを区画形成する。この円錐型環状空間Mは分配器の流通路を構成するものであって供給口Nから各分岐配給口2へと向けて対象流体物を流す。
【0018】
さらに、4はコア1を保持するホルダー、5はコアケース3を保持するホルダー、6は液状物を分配器に供給する供給ジョイント、7は分配器の各分岐配給口2につながり、分配された液状物をマイクロディバイスに配給する分岐ジョイントである。ホルダー4とホルダー5とは図示はしないが、ボルトの如き締結手段にて相互に連結される。
【0019】
上記の構成になる分配器は、供給口Nから分岐配給口2に至るまでの長さW(図3参照)についても、その周りにおいて全て同じであって(三次元的な流通路となる)、対象流体物は図4に示すような流れを呈することとなり各分岐配給口2において定量分配が可能となる。
【0020】
分配器の流通路を形成する円錐型環状空間Mは、開孔あるいは細溝によって貫通路を形成しこれを円錐型状に複数本配列することによって構成することも可能で、この場合、流通路はその周りにおいては断続的な壁が形成されるが、対象流体物の定量分配が可能となる。また、円錐型環状空間Mの周長Lはマイクロディバイスの形式や設置状況等に応じて長さWの範囲で適宜短縮することもできる。
【0021】
コア1の外部壁1aにおける拡張角度(円錐角度)をθ1とし、コアケース3の内部壁3bにおける拡張角度をθ2とした場合(図1参照)に、θ2<θ1とする。その理由は、このような条件に設定すると、供給口Nから分岐配給口2へ至る流路断面積を均等又は漸減させることができ、対象流体物(供給流体)に流路断面積変化による圧力上昇(圧力低下を防止する)を起こさせ少なくとも溝部1bで均一な圧力とすることができるからである。
【0022】
円錐型環状空間Mは、コア1の外部壁1aにおける拡張角度θ1及びコアケース3の内部壁3bにおける拡張角度θ2の組み合わせにより供給口Nから分岐配給口2に至るまで同一の断面積となるように設定してもよいが、溝部1bで均一な流量と圧力を与えるためは、該円錐型環状空間Mの断面積は、供給口Nから分岐配給口2へ向けて漸次に減少させるのが有効であり、この点に関しては対象流体物の特性や流れ条件(圧力、流量等)により任意に変更できる。
【0023】
円錐型環状空間Mの最終部あるいは溝部1bからマイクロディバイスに至るまでの通路には図5に示すように、断面積を部分的に急速に小さくした領域(チョーク孔)を設けて絞り効果を与えることも可能であり、これにより円錐型環状空間Mの各部、溝部1bにおける圧力の均一化が可能となる。
【0024】
また、絞り効果をより一層向上させるために、円錐型環状空間Mの最終部あるいは溝部1bからマイクロディバイスに至るまでの通路に、図6に示すように、セラミック、ガラス、ステンレス鋼等の球体や粉体を充填してもよい。
【0025】
分配器の配置姿勢は、予圧状態で対象流体物を送給することができるように供給口Nを下にし、分岐配給口2を上にした配置姿勢とするのが望ましい。
【0026】
図7にマイクロディバイスのナンバリング・アップの構成例を示す。
【実施例】
【0027】
上掲図1に示した構造になる分配器(θ1:105°、θ2:96°、溝部寸法:幅3mm、深さ2mm、チョーク孔:直径1.5mm、分岐配給口:10個とした分水嶺型分配器)の下流にナノ粒子調整用のマイクロリアターを設置して、1ライン当たりの設定流量:0.7ml/min、ライン圧力:0.7MPa(7kgf/cm2)、ライン温度:室温の条件で対象流体物(超純水)を供給しその際の流出量について調査(2ライン接続(対角に接続)、5ライン接続(1ラインおきに接続)、10ライン接続)した。その結果を表1〜3に示す。なお、この調査では、図8〜10に示す形式の分配器についての調査(条件同一)も併せて行った。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
図8に示した分配器は、圧力に関するパスカルの法則に従えば流入した反応流体は各分岐配給口で等圧となるが、実際には分岐路内の流路抵抗により供給口に近い分岐配給口ほど流量が多く、供給口から離れるほど流量が少なくなった。また、図9に示した分配器については、供給口に近い分岐配給口では流量が多く、両端に近づくほど流量が少なくなり、図8に示した分配器と同様の傾向が見られた。
【0032】
図10に示した分配器は充填材を配置した構造のものであって、この場合、流量のばらつきは幾分緩和されたものの、流量に対する依存性が大きく、分岐配給口の下流に圧力損失(流路抵抗)の大きなマイクロリアクターを設置した場合には改善効果は現れなかった(マイクロディバイスでの圧力損失が大きいほど分岐配給口での流量差は小さくなるが、分記配給口の多くなる場合に圧力損失が格段に大きくなるため実用には供し得ない。)。
【0033】
これに対して、本発明にしたがう分配器は、2ライン接続の場合では流量の標準偏差(SD)が0.069、5ライン接続の場合では0.18、10ライン接続の場合にでは0.19であり、流量のばらつきが極めて小さく、定量分配が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
マイクロディバイスのナンバリング・アップを実現し得る定量分配の可能な分配器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にしたがう分配器の実施の形態を示した図であり、(a)は断面図であり(b)は底面図である。
【図2】図1に示した分配器の分解斜視図である。
【図3】図1に示した分配器の流通路を模式的に示した図である。
【図4】図1に示した分配器の対象流体物の流れ方を示した図である。
【図5】本発明にしたがう他の分配器の要部(円錐型環状空間の最終部、溝部からマイクロディバイスに至るまでの通路)を拡大して示した図である
【図6】本発明にしたがう他の分配器の要部(円錐型環状空間の最終部、溝部からマイクロディバイスに至るまでの通路)を拡大して示した図である
【図7】マイクロディバイスのナンバリング・アップの構成例を示した図である。
【図8】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図9】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図10】従来型の分配器の構成を模式的に示した図である。
【図11】トーナメント方式の分配器を示した図である。
【図12】積層方式の分配器を示した図である。
【図13】(a)(b)は直結方式の分配器を示した図である。
【図14】スカート方式の分配器を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コア
1a 外部壁
1b 溝部
2 分岐配給口
3 コアケース
3a 貫通孔
4 ホルダー
5 ホルダー
6 供給ジョイント
7 分岐ジョイント
P 頂点
M 円錐型環状空間
N 供給口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体物を供給する単一の供給口と、この単一の供給口につながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口とを備えた分配器において、
前記流通路は、前記供給口を起点にしてそこから各分岐配給口が配設された底部に向けて周長を拡張させた円錐型環状空間からなる、ことを特徴とする分配器。
【請求項2】
前記円錐型環状空間は、頂点から底部にわたって円錐型の輪郭形状を形成する外部壁を備えたコアと、このコアの頂点に対面させて供給口を形成する貫通孔を有し、該コアの外部壁に沿う内部壁をもったコアケースとの組合せにて区画形成されたものである請求項1記載の分配器。
【請求項3】
コアの外部壁における拡張角度をθ1とし、コアケースの内部壁における拡張角度をθ2とした場合に、θ2<θ1の条件を満足する請求項2記載の分配器。
【請求項4】
前記円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口に至るまで同一の断面積になる請求項1〜3の何れかに記載の分配器。
【請求項5】
前記円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口へ向けて漸次に減少する断面積を有する請求項1〜3の何れかに記載の分配器。
【請求項1】
流体物を供給する単一の供給口と、この単一の供給口につながる流通路を有し該流通路を経た流体物を分岐させて個別にそれぞれ配給する複数の分岐配給口とを備えた分配器において、
前記流通路は、前記供給口を起点にしてそこから各分岐配給口が配設された底部に向けて周長を拡張させた円錐型環状空間からなる、ことを特徴とする分配器。
【請求項2】
前記円錐型環状空間は、頂点から底部にわたって円錐型の輪郭形状を形成する外部壁を備えたコアと、このコアの頂点に対面させて供給口を形成する貫通孔を有し、該コアの外部壁に沿う内部壁をもったコアケースとの組合せにて区画形成されたものである請求項1記載の分配器。
【請求項3】
コアの外部壁における拡張角度をθ1とし、コアケースの内部壁における拡張角度をθ2とした場合に、θ2<θ1の条件を満足する請求項2記載の分配器。
【請求項4】
前記円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口に至るまで同一の断面積になる請求項1〜3の何れかに記載の分配器。
【請求項5】
前記円錐型環状空間は、供給口から分岐配給口へ向けて漸次に減少する断面積を有する請求項1〜3の何れかに記載の分配器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−224326(P2008−224326A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60711(P2007−60711)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月16日 http://www.optic.or.jp/micro−reactor/index.html を通じて発表
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月16日 http://www.optic.or.jp/micro−reactor/index.html を通じて発表
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】
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