説明

分離機

【課題】スクリーンの変形等を防止して長寿命化を図る分離機を提供する。
【解決手段】スリット4を配したスクリーン1を内側に固定するバスケットと、バスケットと同心状でスクリーン1の内部に位置するスクレーパ3とを備え、バスケットとスクレーパ3とを速度を変えて回転させ、スクリーン1の内側に導入したスラリをスクレーパ3の羽根13により掻き取ってスラリーの固形物を脱水するように構成した分離機であって、
スクレーパ3の羽根13は、先端に、スクリーン1の内面に対面するように形成された平坦部14を備えると共に、平坦部14から羽根13の回転方向の後側に向い且つスクリーン1の面から離間するように形成された逃がし部15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物を含むスラリを分離脱水する分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に分離機は、図3に示す如く円筒フレームAの上部に、上側ケーシングBと下側ケーシングCとからなる円錐カバーDを設置しており、上側ケーシングBの頂部にはスラリを導入する導入口Eが備えられていると共に、上側ケーシングBと下側ケーシングCの間の側部には、スラリから分離脱水した分離液を排出する排出口Fが備えられている。又、円筒フレームA内には変速機等の駆動手段Gが配置されている。更に上側ケーシングBと下側ケーシングCとの間には、図4〜図7に示す如くスクリーン1を内側に固定したバスケット2と、バスケット2の内部に位置するスクレーパ3とが同心状に設置されている。
【0003】
スクリーン1は、0.1mm以上0.9mm以下の薄い板厚で截頭円錐の形状を有し、周面全体には多数のスリット4が配置されている。又、スクリーン1の下方の開口部には環状の補強部5(図4参照)が備えられている。
【0004】
バスケット2は、スクリーン1を内側に固定し得るように截頭円錐の形状を有し、周面全体には、内部から外方へ貫通する環状の隙間6が複数形成されていると共に、バスケット2の外周面には、軸方向で斜面に沿う補強リブ7が複数本設置されている。又、バスケット2の上方の開口部及び下方の開口部には、環状の補強部8,9が備えられている。更にバスケット2は、円筒フレームA内の駆動手段Gに接続されてスクリーン1と共に回転するようになっている。
【0005】
スクレーパ3は、截頭円錐形のロータ10に螺旋状の羽根11を設け、羽根11は、スクリーン1側の先端に、羽根11の回転方向の幅と同じ距離を有する平坦部12を備えている。又、スクレーパ3は、円筒フレームA内の駆動手段Gに接続され、スクリーン1に対して0.5mm以上3mm以下の一定間隔の隙間を保ちながらスクリーン1と速度を変えて回転するようになっている。
【0006】
固形物Sを含むスラリを分離脱水する際には、スラリを上側ケーシングBの導入口Eからスクリーン1とスクレーパ3の間に導入し、スクリーン1とスクレーパ3でスラリを分離脱水している。この時、スラリは、スクリーン1の内側に薄膜となって分散し、図8に示す如くスラリ中の固形物Sは、スクレーパ3の回転により羽根11で掻き取られて分離脱水されている。又、分離脱水した分離液はスクリーン1外へ押し出され、排出口Fから排出されている。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3754706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、スラリー中の固形物Sをスクレーパ3の羽根11で掻き取る際には、図9に示す如く羽根11の平坦部12とスクリーン1の内周面との間に固形物Sを噛み込み、更にスクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転するため、薄い板厚のスクリーン1に変形や割れを生じ、スクリーン1の寿命が短くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、スクリーンの変形等を防止して長寿命化を図る分離機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の分離機は、スリットを配したスクリーンを内側に固定するバスケットと、該バスケットと同心状でスクリーンの内部に配置されるスクレーパとを備え、前記バスケットとスクレーパを速度を変えて回転させ、スクリーンの内側に導入したスラリをスクレーパの羽根により掻き取ってスラリーの固形物を脱水するように構成された分離機であって、
前記スクレーパの羽根は、先端に、スクリーンの内面に対面するように形成された平坦部を備えると共に、該平坦部から羽根の回転方向の後側に向い且つスクリーンの面から離間するように形成された逃がし部を備えたものである。
【0012】
又、本発明の分離機において、羽根の逃がし部は、直線状の斜面により構成されることが好ましい。
【0013】
更に、本発明の分離機において、羽根の逃がし部は、円弧状の斜面により構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分離機によれば、スクレーパの羽根は、先端に、スクリーンの内面に対面するように形成された平坦部を備えると共に、該平坦部から羽根の回転方向の後側に向い且つスクリーンの面から離間するように形成された逃がし部を備えるので、羽根の平坦部とスクリーンの内周面との間に固形物を噛み込んだ場合であっても、平坦部及び逃がし部の構成により固形物を羽根の平坦部とスクリーンの間から直ちに離脱させ、スクレーパが固形物を噛み込んだ状態で回転することを無くし、薄い板厚のスクリーンの変形や割れを防止して長寿命化を図ることができる。又、スクレーパの羽根は平坦部を備えるので、スラリの脱水処理を行うことができると共に、スクレーパの羽根の耐久性を維持することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の分離機であってスクレーパの羽根の一例の形状を示す概念図である。
【図2】本発明の分離機であってスクレーパの羽根の他例の形状を示す概念図である。
【図3】分離機中にバスケット等を配置した状態を示す概念図である。
【図4】バスケット、スクリーン、スクレーパを示す全体概念図である。
【図5】バスケット、スクリーン、スクレーパの一部を示す概略断面図である。
【図6】バスケットのリブの位置でバスケット、スクリーン、スクレーパの一部を示す概略断面図である。
【図7】図5のVII方向矢視図である。
【図8】スクレーパの羽根でスラリの固形物を掻き取る状態を示す概念図である。
【図9】スラリの固形物を噛み込んでスクリーンが変形した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0017】
図1は本発明を実施する形態の一例である。
【0018】
実施の形態例の分離機は、上側ケーシングB(図3参照)と下側ケーシングC(図3参照)との間に、スクリーン1を内側に固定するバスケット2(図4参照)と、バスケット2と同心状でスクリーン1の内部に位置するスクレーパ3とを備えており、スクリーン1及びバスケット2は、従来例と同様に構成されている。
【0019】
スクレーパ3は、截頭円錐形のロータに螺旋状の羽根13を設け、羽根13は、スクリーン1側の先端に、スクリーン1の内面と対面するように形成された直線状の平坦部14を備えていると共に、平坦部14から羽根13の回転方向の後側に向い且つスクリーン1の面から離間するように形成された逃がし部15を備えている。
【0020】
羽根13の平坦部14は、回転方向前寄りの側面部16の先端から回転方向後側へ向かって、羽根13の回転方向の幅L0より短い距離L1で構成されており、具体的には羽根13の回転方向の幅に対して20%以上40%以下の距離を有し、更に具体的には羽根13の回転方向の幅5mmに対して1mm以上2mm以下の距離を有している。
【0021】
羽根13の逃がし部15は、平坦部14の後端から回転方向後寄りの側面部17へ延在する直線状の面によって構成されており、直線状の面の角度は、平坦部14の直線に対して30°以上60°以下、好ましくは45°になっている。ここで図2に示す如く羽根13の逃がし部15aは、平坦部14の後端から回転方向後寄りの側面部17へ延在する円弧状の面によって構成されても良い。
【0022】
又、スクレーパ3は、従来例と同様に円筒フレームA(図3参照)内の駆動手段Gに接続され、スクリーン1に対して0.5mm以上3mm以下の一定間隔の隙間を保ちながらスクリーン1と速度を変えて回転するように回転するようになっている。
【0023】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0024】
固形物Sを含むスラリを分離脱水する際には、スラリを上側ケーシングBの導入口Eからスクリーン1とスクレーパ3の間に導入し、スクリーン1とスクレーパ3でスラリを分離脱水し、更に分離液をスクリーン1外へ押し出して排出口Fから排出する。
【0025】
この時、スラリは、スクリーン1の内側に薄膜となって分散し、スラリ中の固形物Sは、スクレーパ3の回転により羽根13で掻き取られて分離脱水されている。又、スラリの固形物Sを羽根13の平坦部14とスクリーン1の内周面との間に噛み込んだ場合であっても、従来例に比べて噛み込み面積の小さい平坦部14、及び、平坦部14の噛み込みの隙間を回転方向後側で広げる逃がし部15よって、固形物Sを、羽根13の平坦部14とスクリーン1の内周面の間から直ちに離脱させ、スクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転することを無くしている。
【0026】
而して、このように実施の形態例によれば、スクレーパ3の羽根13は、先端に、スクリーン1の内面に対面するように形成された平坦部14を備えると共に、平坦部14から羽根13の回転方向の後側に向い且つスクリーン1の面から離間するように形成された逃がし部15を備えるので、羽根13の平坦部14とスクリーン1の内周面との間に固形物Sを噛み込んだ場合であっても、平坦部14及び逃がし部15の構成により、スラリの固形物Sを羽根13の平坦部14とスクリーン1の間から直ちに離脱させ、スクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転することを無くし、薄い板厚のスクリーン1の変形や割れを防止して長寿命化を図ることができる。又、スクレーパ3の羽根13は平坦部14を備えるので、スラリの脱水処理を行うことができると共に、スクレーパ3の羽根13の耐久性を維持することができる。
【0027】
更に、羽根13の平坦部14が、羽根13の回転方向の幅に対して20%以上40%以下の距離、具体的には羽根13の回転方向の幅5mmに対して1mm以上2mm以下の距離を有する場合には、スクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転することを好適に無くすと共に、スラリの脱水処理を適切に行うことができる。ここで羽根13の平坦部14が、羽根13の回転方向の幅に対して40%より大きい場合には、羽根13の平坦部14とスクリーン1の内周面との間に固形物Sを噛み込んだ状態を容易に解消することがでないと共に、クレーパの羽根13の平坦部14が、羽根13の回転方向の幅に対して20%より小さい場合には、羽根13の平坦部14でスラリの脱水処理を適切に行うことができないという問題がある。
【0028】
実施の形態例において、羽根13の逃がし部15は、直線状の斜面により構成されると、スラリの固形物Sを適切に回転方向後方へ逃がし得るので、スクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転することを無くし、薄い板厚のスクリーン1の変形や割れを防止して長寿命化を図ることができる。又、直線状の斜面を備えるので、加工を容易にすると共にスクレーパ3の羽根13の耐久性を維持することができる。更に、羽根13の逃がし部15における直線状の面の角度を、平坦部14の直線に対して30°以上60°以下にすると、スラリの固形物Sを容易に回転方向後方へ逃がすことができると共に羽根13の耐久性を維持することができる。又、羽根13の逃がし部15における直線状の面の角度を、平坦部14の直線に対して45°にすると、スラリの固形物Sを一層容易に回転方向後方へ容易に逃がすことができると共に羽根13の耐久性を一層維持することができる。ここで羽根13の逃がし部15における直線状の面の角度を、平坦部14の直線に対して30°より小さくすると、スラリの固形物Sを回転方向後方へ逃がすことが困難になると共に、羽根13の逃がし部15における直線状の面の角度を、平坦部14の直線に対して60°より大きくすると、羽根13の耐久性が低下するという問題がある。
【0029】
実施の形態例において、羽根13の逃がし部15aは、円弧状の斜面により構成されると、スラリの固形物Sを容易に回転方向後方へ逃がし得るので、スクレーパ3が固形物Sを噛み込んだ状態で回転することを無くし、薄い板厚のスクリーン1の変形や割れを防止して長寿命化を図ることができる。又、円弧状の斜面を備えるので、スクレーパ3の羽根13の耐久性を維持することができる。
【0030】
尚、本発明の分離機は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、羽根の逃がし部は他の形状でも良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 スクリーン
2 バスケット
3 スクレーパ
13 羽根
14 平坦部
15 逃がし部
15a 逃がし部
S 固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを配したスクリーンを内側に固定するバスケットと、該バスケットと同心状でスクリーンの内部に位置するスクレーパとを備え、前記バスケットとスクレーパを速度を変えて回転させ、スクリーンの内側に導入したスラリをスクレーパの羽根により掻き取ってスラリーの固形物を脱水するように構成した分離機であって、
前記スクレーパの羽根は、先端に、スクリーンの内面に対面するように形成された平坦部を備えると共に、該平坦部から羽根の回転方向の後側に向い且つスクリーンの面から離間するように形成された逃がし部を備えたことを特徴とする分離機。
【請求項2】
羽根の逃がし部は、直線状の斜面により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の分離機。
【請求項3】
羽根の逃がし部は、円弧状の斜面により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−67732(P2011−67732A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219171(P2009−219171)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】