説明

分離装置

【課題】
本発明は、ペレットと微粉及び水分の混合状態から微粉や水分を分離することにあり、とりわけ水分や静電気により樹脂ペレットに付着している切り粉を効率よく分離、除去する分離装置を提供することである。
【解決手段】
撹拌槽と、
該撹拌槽内に配置される回転軸と、
該回転軸に接続され、内部が中空構造であり、被撹拌物と接する部分に該中空構造に通じた複数の孔を有する撹拌羽根と、
該撹拌羽根に接続された吸引ホースからなり、
該撹拌羽根の孔は該撹拌羽根の中空構造を介して該吸引ホースへと通じており、
該回転軸を介して該撹拌羽根を回転させ、被撹拌物を撹拌させながら、該吸引ホースより陰圧をかけ、被撹拌物から孔を通過する通過物と孔を通過しない不通過物とを分離することを特徴とする分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレットと切り粉などの微粉からなる混合物から、効率よく微粉を除去する分離装置に関する。またストランドをコールドカット後、ペレットに付着した水分を除去する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料や添加剤を含有した熱可塑性樹脂ペレット(マスターバッチやカラーペレットなど)は、一般的に押出機にて溶融押出を行い、押し出されたストランドを水槽などに通して冷却し、冷却後にペレタイザーを用いて必要なサイズにカッティングしてペレット化する、という工程を経て製造されている。このペレット製品は成形材料として供されている。
【0003】
しかしペレタイザーでストランドをカットする際、切り粉と呼ばれる微粉が発生し、ペレット製品に混じり込むという問題が発生した。また、水槽を通過したストランドをペレタイザーでカットしてペレットを得るため、カットされたペレットには水分が多く付着していた。ペレット製品に微粉や水分が多く混入すると、ペレット製品をその後の成形加工に供した際に多くのトラブルを発生させる要因となるため、ペレット製品から微粉や水分を除去することは熱可塑性樹脂ペレットを製造する際の大きな課題であった。
【0004】
ペレット製品に混入した微粉の除去方法としては、振動ふるいによる方法やサイクロンによる方法が挙げられる。しかし、振動ふるいによる方法では、ペレットに静電気が帯電していたり、水分が付着しているために、ペレット製品からうまく微粉を除去できないという問題点があった。
【0005】
特許文献1では、サイクロンの原理を用いてペレット製品から微粉を除去する例を開示している。しかしサイクロンを用いると、ペレットが容器の内壁や他のペレットと衝突して、ペレット割れを起こし、ペレット製品の品質を低下させる恐れがあった。
【0006】
また、上記の方法ではペレット製品に混入した水分はうまく除去できなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002―192017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ペレットと微粉及び水分の混合状態から微粉や水分を分離することにあり、とりわけ水分や静電気により樹脂ペレットに付着している切り粉を効率よく分離、除去する分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
すなわち本発明は、内部が中空構造で撹拌羽根の表面に孔を有する撹拌羽根を回転させて被撹拌物を撹拌しながら、撹拌羽根の中空構造部から陰圧をかけることで、撹拌羽根にある孔を通過できるものと通過できないものとを分離することをその要旨とする。
【0010】
請求項1記載の発明は、
撹拌槽と、
該撹拌槽内に配置される回転軸と、
該回転軸に接続され、内部が中空構造であり、被撹拌物と接する部分に該中空構造に通じた複数の孔を有する撹拌羽根と、
該撹拌羽根に接続された吸引ホースからなり、
該撹拌羽根の孔は該撹拌羽根の中空構造を介して該吸引ホースへと通じており、
該回転軸を介して該撹拌羽根を回転させ、被撹拌物を撹拌させながら、該吸引ホースより陰圧をかけ、被撹拌物から孔を通過する通過物と孔を通過しない不通過物とを分離することを特徴とする分離装置である。
【0011】
撹拌槽内には、撹拌槽内を撹拌するための回転軸と、回転軸に付属した撹拌羽根が配される。撹拌羽根は中空構造をしている。また撹拌羽根の被撹拌物と接する部分には複数の孔がある。撹拌羽根は吸引ホースに接続されていて、撹拌羽根の孔より、撹拌羽根の中空構造部を経て、吸引ホースに至る部分は通じている。被撹拌物は回転軸の回転により、撹拌羽根を介して撹拌される。それと共に、吸引ホースからは陰圧がかけられており、被撹拌物は撹拌されながら、撹拌羽根の孔を通過するもの(通過物)は吸引ホースへと吸引され、撹拌羽根の孔を通過しないもの(不通過物)はそのまま撹拌槽内に残る。結果的に撹拌羽根の孔を通過するもの(通過物)と、撹拌羽根の孔を通過しないもの(不通過物)とを分離することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、
前記被撹拌物がペレットと微粉からなるペレット・微粉混合物であり、
該ペレット・微粉混合物が前記撹拌槽内で前記撹拌羽根により撹拌されながら、
微粉を該撹拌槽から該撹拌羽根の孔および該撹拌羽根の中空構造を通して吸引ホースへと吸入することで、
撹拌槽内に残ったペレットと吸引ホースへ運搬された微粉とを分離することを特徴とする請求項1記載の分離装置である。
【0013】
請求項3記載の発明は、
前記被撹拌物がペレットと液体からなるペレット・液体混合物であり、
該ペレット・液体混合物が前記撹拌槽内で前記撹拌羽根により撹拌されながら、
液体を該撹拌槽から該撹拌羽根の孔および該撹拌羽根の中空構造を通して吸引ホースへと吸入することで、
撹拌槽内に残ったペレットと吸引ホースへ運搬された液体とを分離することを特徴とする請求項1または請求項2いずれか記載の分離装置である。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記撹拌羽根の孔の短径が前記不通過物の短径よりも大きい請求項1から請求項3いずれか記載の分離装置である。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記撹拌羽根の孔が着脱可能なプレート上に配置され、該プレートが不通過物のサイズによって交換可能である請求項1から請求項4いずれか記載の分離装置である。
【0016】
なお、以上述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明による分離装置を用いることにより、微粉が混じったペレット製品を撹拌しながら均質に微粉を吸引でき、効率的に微粉とペレットを分離することができる。
【0018】
本発明による分離装置を用いることにより、水分が付着したペレット製品を撹拌しながら均質に水分を吸引でき、効率的に水分とペレットを分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明の分離装置の斜視図である。図2は本発明の分離装置の断面図である。
【0021】
本発明の分離装置は、被撹拌物を収納する撹拌槽1と、その撹拌槽底部のほぼ中心に位置する回転軸2、回転軸2の下に位置するモーター3、回転軸2に被せられるカバー4、回転軸2の上端部に位置する撹拌羽根5、撹拌羽根5の上部に接続される吸引ホース6、吸引ホースに接続される固定金具7からなる。
【0022】
撹拌槽1は、その内側に被撹拌物が収納できればどのような形状でもよいが、もっとも良い形状は円筒形である。また撹拌槽1の底部中心部分は、下から回転軸2によって貫かれており、回転軸2は回転動力を供するモーター3に接続されている。また回転軸2に撹拌槽内の被撹拌物が絡まないように、回転軸2にはカバー4が被されている。カバー4は撹拌槽の底部との間で隙間がないように設置する。カバー4は撹拌槽の底部と一体構造になっていてもよい。
【0023】
撹拌槽及び撹拌羽根の材質はアルミニウムやステンレスなどの金属で作製されるのがよいが、被撹拌物が付着しにくい材料であればどのような材料を用いてもよい。
【0024】
さらに回転軸2はその上部で撹拌羽根5と接続され、モーター3の回転は回転軸2を介して撹拌羽根5に伝達され、撹拌羽根5は回転する。撹拌羽根5の内部は中空構造であり、その中空構造は撹拌羽根5の上部で接続される吸引ホース6に通じている。吸引ホース6と撹拌羽根5の間には固定金具7があり、撹拌羽根5の回転運動が吸引ホース6に伝達しないように吸引ホースを固定している。吸引ホース6から撹拌羽根5の中空部分は陰圧がかけられ、撹拌槽内の切り粉や水分等を吸引して、吸引ホースの方向へ送られる。
【0025】
図3および図4は、本発明の分離装置の撹拌羽根の側面図である。図4は図3を右側面から見た図である。
【0026】
撹拌羽根5は、吸引ホース6及び回転軸2に接続される接続部8、接続部8から枝別れした腕部9、腕部9の先端に羽根部10がある。さらに羽根部10の表面は、複数の孔11を有している。
【0027】
撹拌羽根5を構成する接続部8、腕部9、羽根部10はいずれも中空構造をしている。さらに羽根部10の表面にある孔11は、ペレットを通さず、微粉や水分などの粒径の小さいもののみを通す程度の大きさである。孔11から羽根部10、腕部9、接続部8へと中空構造は通じており、孔11より吸い上げられた微粉や水分などは、羽根部10、腕部9、接続部8の内側を通って、さらに吸引ホース6へと抜けるように構成されている。なお接続部8の中空部分は、回転軸2とは通じていない。
【0028】
本実施形態では、撹拌羽根は接続部、腕部、羽根部で構成されているが、被撹拌物を効率よく撹拌でき、また被撹拌物が撹拌槽と撹拌羽根との間でブリッジを起こさない形状であり、本発明の構成要件を満たしていればどのような形状でもよい。
【0029】
図5は、本発明の分離装置の羽根部を拡大した図である。
【0030】
羽根部10にある孔11の短径は、ペレット12の短径よりも小さくなくてはならない。孔径12がペレット12の短径より小さくないとペレットが吸引されてしまい撹拌槽内に留まることができない。切り粉の形状はかけら状・フィルム状・ひげ状など様々であるため、羽根部10にある孔11があまり小さすぎても、切り粉が孔の上でブリッジを起こしたり、水分などによって羽根部表面に付着してしまう恐れがある。
【0031】
このため孔の長径はある程度長いほうがよい。長径は孔の短径に対して2倍以上あることが望ましい。しかし具体的な孔のサイズはどのようなサイズの被撹拌物の分離を行うかにより異なり、例えば長径と短径がそれぞれ3mmのペレットから切り粉や水分を分離する場合には孔のサイズは短径2mm×長径20mm程度が最も好ましい。
【0032】
また孔を着脱可能なプレート上に配置すれば、被撹拌物のサイズに応じてプレートを交換することができ、実用上便利であり好適である。
【0033】
図6は、本発明の分離装置を稼働した際の回転軸付近の内部を示した断面図である。
【0034】
図6のように、羽根部10の孔11より吸引された微粉や水分などは、図中の矢印bのように撹拌羽根の中空部分を通って、吸引ホース6の方向に吸引される。吸引ホースの先にはトラップが設置され、微粉や水分などが回収される。なおモーターによる回転aは、固定金具7よりも上部には伝わらないように、固定金具7が配されている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による分離装置を用いて微粉や水分などが混じったペレット製品から微粉や水分などを取り除くことにより、ペレット製品が成形に供された際に成形不良や異物混入の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の分離装置の斜視図である。
【図2】本発明の分離装置の断面図である。
【図3】本発明の分離装置の撹拌羽根の斜視図である。
【図4】本発明の分離装置の撹拌羽根の斜視図である。
【図5】本発明の分離装置の羽根部を拡大した図である。
【図6】本発明の分離装置を稼働した際の回転軸付近の内部を示した断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 撹拌槽
2 回転軸
3 モーター
4 カバー
5 撹拌羽根
6 吸引ホース
7 固定金具
8 接続部
9 腕部
10 羽根部
11 孔
12 ペレット
a 回転
b 吸引

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽と、
該撹拌槽内に配置される回転軸と、
該回転軸に接続され、内部が中空構造であり、被撹拌物と接する部分に該中空構造に通じた複数の孔を有する撹拌羽根と、
該撹拌羽根に接続された吸引ホースからなり、
該撹拌羽根の孔は該撹拌羽根の中空構造を介して該吸引ホースへと通じており、
該回転軸を介して該撹拌羽根を回転させ、被撹拌物を撹拌させながら、該吸引ホースより陰圧をかけ、被撹拌物から孔を通過する通過物と孔を通過しない不通過物とを分離することを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記被撹拌物がペレットと微粉からなるペレット・微粉混合物であり、
該ペレット・微粉混合物が前記撹拌槽内で前記撹拌羽根により撹拌されながら、
微粉を該撹拌槽から該撹拌羽根の孔および該撹拌羽根の中空構造を通して吸引ホースへと吸入することで、
撹拌槽内に残ったペレットと吸引ホースへ運搬された微粉とを分離することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記被撹拌物がペレットと液体からなるペレット・液体混合物であり、
該ペレット・液体混合物が前記撹拌槽内で前記撹拌羽根により撹拌されながら、
液体を該撹拌槽から該撹拌羽根の孔および該撹拌羽根の中空構造を通して吸引ホースへと吸入することで、
撹拌槽内に残ったペレットと吸引ホースへ運搬された液体とを分離することを特徴とする請求項1または請求項2いずれか記載の分離装置。
【請求項4】
前記撹拌羽根の孔の短径が前記不通過物の短径よりも大きい請求項1から請求項3いずれか記載の分離装置。
【請求項5】
前記撹拌羽根の孔が着脱可能なプレート上に配置され、該プレートが不通過物のサイズによって交換可能である請求項1から請求項4いずれか記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−56350(P2009−56350A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223723(P2007−223723)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】