切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法
【課題】切削抵抗が小さく、耐欠損性に優れた切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法を提供する。
【解決手段】切削インサート1は、上面2と下面3との間に位置し且つ上面2まで延びる上凹部7aを有する側面4と、上面2と側面4との交線部に位置し且つ上凹部7aにより分断されてなる複数の分断上切刃51a〜51dと、を備える。複数の分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、第1端部及び第2端部を有し、且つ第1端部から第2端部に向かって下面3に近づくように傾斜する。複数の分断上切刃51a〜51dは、互いに隣接する第1分断上切刃及び第2分断上切刃を有する。第2分断上切刃の第1端部は、側面視において、第1分断上切刃の延長線と、第2分断上切刃の第1端部を通り且つ切削インサート1の中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する。
【解決手段】切削インサート1は、上面2と下面3との間に位置し且つ上面2まで延びる上凹部7aを有する側面4と、上面2と側面4との交線部に位置し且つ上凹部7aにより分断されてなる複数の分断上切刃51a〜51dと、を備える。複数の分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、第1端部及び第2端部を有し、且つ第1端部から第2端部に向かって下面3に近づくように傾斜する。複数の分断上切刃51a〜51dは、互いに隣接する第1分断上切刃及び第2分断上切刃を有する。第2分断上切刃の第1端部は、側面視において、第1分断上切刃の延長線と、第2分断上切刃の第1端部を通り且つ切削インサート1の中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削インサート(以下、「インサート」と言うことがある。)において、特許文献1の図4などに、主エッジ46を傾斜させた切削インサート20が開示されている。このように、主エッジ46を傾斜させる事は、切削抵抗を低減する観点から好ましい。
しかしながら、主エッジ46を傾斜させる程、切削インサート20の厚み(第1の端面28と第2の端面30との間の距離)は減少していくため、耐欠損性の観点で劣るという課題が生じる。
そのため、切削抵抗が小さく、且つ耐欠損性に優れた、切削インサートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−544872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題の一つは、切削抵抗が小さく、耐欠損性に優れた切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る切削インサートは、上面と、下面と、前記上面と前記下面との間に位置し且つ厚み方向に沿って前記上面まで延びる少なくとも1つの上凹部を有する側面と、前記上面と前記側面との交線部に位置し且つ前記少なくとも1つの上凹部により分断されてなる複数の分断上切刃と、を備えている。前記複数の分断上切刃のそれぞれは、一端に位置する第1端部と、他端に位置する第2端部と、を有するとともに、側面視において、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記下面に近づくように傾斜している。前記複数の分断上切刃は、第1分断上切刃と、該第1分断上切刃の前記第2端部に前記少なくとも1つの上凹部の1つを介して隣接する第2分断上切刃と、を有している。そして、前記第2分断上切刃の前記第1端部は、側面視において、前記第1分断上切刃を前記第2分断上切刃側に延長した延長線と、前記第2分断上切刃の前記第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する。
【0006】
本発明の実施形態に係る切削工具は、前記切削インサートと、前記切削インサートが装着されるホルダと、を備えている。
本発明の他の実施形態に係る切削工具は、複数の前記切削インサートと、これら複数の切削インサートが装着されるホルダと、を備えている。前記複数の切削インサートのうち2つの切削インサートは、互いの前記上面と前記下面とを反対向きにし、前記ホルダの同一円周に沿って見た時に、一方の切削インサートの前記少なくとも1つの下凹部が、他方の切削インサートの前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置するような状態で、前記ホルダに装着される。
【0007】
本発明の実施形態に係る被削材の切削方法は、前記切削工具を前記ホルダの中心軸を中心に回転させる工程と、回転している前記切削工具の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つ又は前記複数の分断下切刃の少なくとも1つを、被削材の表面に接触させる工程と、前記被削材から前記切削工具を離隔する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係るインサートによれば、上凹部を有し、且つ、該上凹部によって分断された複数の分断上切刃が第1端部から第2端部に向かって下面に近づくように傾斜していることから、従来の長手方向にわたって直線状に傾斜した一つの切刃を有するインサートと比較して、同等以上の低い切削抵抗を実現する事ができる。また、側面視において、第2分断上切刃の第1端部は、第1分断上切刃を第2分断上切刃側に延長した延長線と、第2分断上切刃の第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置するため、上述のように傾斜した複数の分断上切刃を有するインサートにおいて、その上面から下面までの厚みを比較的大きく確保する事ができ、優れた耐欠損性を発揮する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る切削インサートを示す全体斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す切削インサートの上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図4】(a)は、図1に示す切削インサートの反転後を示す図であり、(b)は、その反転前を示す図である。
【図5】図2(a)のA−A線断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る切削工具を示す全体斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は、図6に示す切削工具の外周先端部付近を示す部分拡大側面図である。
【図8】図7(b)に示す切削工具の切削インサートの一部を示す部分拡大図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る被削材の切削方法を示す工程図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図11】(a)及び(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る切削インサートの側面付近を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<切削インサート>
以下、本発明に係る切削インサートの一実施形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。本実施形態の切削インサート1は、図1及び図2に示すように、大略、上面2と、下面3と、上面2及び下面3に接続される側面4と、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9(取付穴)と、上面2と側面4との交線部に位置する上切刃5と、下面3と側面4との交線部に位置する下切刃6と、を備えている。また、側面4は、厚み方向に沿って上面2まで延び且つ上切刃5を複数の分断上切刃51a〜51dに分断する少なくとも1つの上凹部7aと、厚み方向に沿って下面3まで延び且つ下切刃6を複数の分断下切刃61a〜61cに分断する少なくとも1つの下凹部7bと、幅方向に沿って連続する肉厚部8(側面強化部)と、を有している。なお、側面4の厚み方向とはインサート1の中心軸A1に平行な方向をいい、側面4の幅方向とは厚み方向に垂直な方向をいう。また、側面4の幅方向に沿って連続するとは、側面視において、上切刃5及び下切刃6に沿って延びる方向に連続していれば足りる。
【0011】
なお、インサート1は、略多角形板状の本体部を有している。この本体部は、すくい面として機能する上面2と、着座面として機能する下面3と、逃げ面として機能する側面4と、を有している。また、図2に示すように、このインサート1は、上面2及び下面3の両面をそれぞれすくい面として使用可能な両面使いのインサートである。従って、下切刃6を用いる場合には、下面3をすくい面、上面2を着座面として使用する。すなわち、本実施形態のインサート1は、上下両面に位置する上切刃5及び下切刃6を用いて切削可能な両面使いのインサートである。以下、インサート1を構成する各部位について、詳細に説明する。
【0012】
本体部は、略多角形の形状であれば特に限定されるものではなく、上面視において、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の当業者が通常インサートに使用する形状であればよい。本実施形態においては、5つの長辺を有する略五角形の形状が用いられている。すなわち、インサート1は片面5コーナー使いのインサートである。なお、本体部の形状は、全ての辺を切刃として使用する観点から、例えば正方形、正五角形等のように各辺の長さが等しいことが好ましい。また、本体部の形状が正五角形の場合には、切刃長さを確保しつつ、切刃を多く設けることができるとともに、ホルダに対する当接面として複数の側面を使用することができる。
【0013】
上面2及び下面3には、上切刃5及び下切刃6から内方に向かって厚みが順次薄くなるすくい面が形成されている。また、上面2の略中央部には、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9が形成されている。貫通孔9の中心軸は、本体部の中心軸A1と同じ位置にある。この貫通孔9は、インサート1を後述するホルダ91に固定する目的で形成されている。すなわち、この貫通孔9に取付ねじ92(固定部材)を挿入してさらにホルダ91にねじ込むことによって、インサート1をホルダ91に固定することができる。
【0014】
上面2、下面3及び側面4は、例えば窒化チタン(TiN)により被覆してもよい。これにより、インサート1の硬度、滑り特性及び耐熱性を向上させることができる。また、上面2及び下面3は、それぞれの色を互いに異ならせるのが好ましい。例えば本体部が銀色を示す超硬合金である場合には、上面2及び下面3のいずれか一方を、金色を示す窒化チタン(TiN)により被覆するのが好ましい。ネガティブ形のインサートにおいては、上面及び下面は、いずれもすくい面として機能するため、インサートの取付け間違いを生じる場合がある。上面及び下面のいずれか一方をTiNで被覆すると、TiNで被覆した面と被覆していない面とが異なる色となる。それゆえ、それぞれの面を明確に区別できるようになり、インサートを装着する際の誤認を抑制することができる。また、上面2及び下面3のいずれかの被覆対象面は、その全面を被覆する必要はなく、例えば被覆対象面の一部(例えば切刃以外の部分)にTiNを被覆することによっても同様の効果を得ることができる。なお、上述の被覆に用いる材料としては、上面2及び下面3の色の相違を認識する事ができれば、TiNに限定されるものではない。例えば本体部が超硬合金である場合に、明るい赤褐色を示す炭窒化チタン(TiCN)、暗い赤褐色を示す窒化チタンアルミ(TiAlN)等を採用することもできる。
【0015】
側面4は、前記した通り、上面2と下面3とに接続されている。インサートの肉厚の減少による耐欠損性の低下を抑制する点から、側面4に逃げ角を設けないことが好ましい。すなわち、側面4を上面2及び下面3に形成される平坦な着座面に対して垂直となるように配置することが好ましい。本実施形態においては、上面2及び下面3の中央部には平坦な着座面が設けられており、側面4はこれらの着座面に対して垂直に配置されている。従って、インサート1は、側面と、上面又は下面との間に逃げ角を有するインサートと比較して、インサートの肉厚を確保する事ができるため、耐欠損性に優れている。
【0016】
また、側面4は、上面2の略五角形の各辺にそれぞれ接続された複数の分割側面41を有し、上凹部7aは、複数の分割側面41のそれぞれに少なくとも1つ位置している。そして、各分割側面41に、上凹部7aの少なくとも1つ、及び、該上凹部7aにより分断されてなる複数の分断上切刃51a〜51dが形成されている。それ故、上述の通り、本実施形態のインサート1は、五角形の全ての辺を使用可能な片面5コーナー使いのインサートであって、両面では計10コーナーを切削に使用する事ができる。ここで分割側面とは、上面2の各辺に接続される個々の側面4を意味する。側面4の構成の詳細については後述する。
【0017】
上切刃5は、主切刃部51と、この主切刃部51に連続して形成される副切刃部52と、を有している。この上切刃5と同様に、下切刃6も、主切刃部61及び副切刃部62を有している。主切刃部61及び副切刃部62の構成は、主切刃部51及び副切刃部52と同様である。従って、以下の説明では、主切刃部51及び副切刃部52について説明する。
【0018】
主切刃部51は、ホルダ91の外周側に配置され、切削作用において切屑生成に主な役割を果たす切刃である。主切刃部51は、側面4に並設された複数の上凹部7aにより分断されてなる分断上切刃51a〜51d(分割主切刃)を有している。副切刃部52は、ホルダ91の正面側(先端側)に配置され、被削材の仕上げ面精度を向上させるさらい刃としての目的で形成される。副切刃部52は、本体部の角部に形成され、通常、直線状である。主切刃部51と副切刃部52との間には、丸みを帯びたコーナー切刃を有する場合がある。主切刃部51は、側面視において、主切刃部61と平行であってもよい。これと同様に、副切刃部52も、側面視において、副切刃部62と平行であってもよい。
【0019】
主切刃部51は、図2(b)に示すように、矢印Bに示す長手方向一方に向かって下面3に近づくように傾斜している。具体的には、分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、一端に位置する第1端部511と、他端に位置する第2端部512と、を有している。分断上切刃のそれぞれにおいて、一端とは副切刃部52側に位置する端部のことをいい、他端とは一端と反対に位置する端部のことをいう。また、分断上切刃のそれぞれにおいて、第1端部511は、第2端部512よりも上方に位置している。分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、側面視において、第1端部511から第2端部512に向かって下面3に近づくように傾斜している。このような傾斜主切刃は、ホルダ91の中心軸A2に対してすくい角を設けた状態でインサート1をホルダ91に装着して使用することにより、切削抵抗の低減に寄与することができる。
【0020】
ここで、分断上切刃51a〜51dのうち、分断上切刃51bを第1分断上切刃51b(隣接分割主切刃)、分断上切刃51cを第2分断上切刃51cとしたとき、図3に示すように、第2分断上切刃51cは、第1分断上切刃51bの第2端部512bに上凹部7aの1つを介して隣接している。そして、第2分断上切刃51cの第1端部511cは、下記(I)及び(II)の要件を満たしている。
【0021】
(I)第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bを第2分断上切刃51c側に延長した延長線X1(長手方向延長線)と、第2分断上切刃51cの第1端部511cを通り且つ中心軸A1に平行な線との交点P1よりも上方に位置する。
【0022】
(II)第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bの第2端部512bと同じ位置か、又は第2端部512bよりも下方に位置する。あるいは、第1端部511cと第2端部512bとを結ぶ直線X2(第3直線)が、着座面(水平面)に対して平行であるか、又は直線X2と水平面とのなす角度が、第1分断上切刃51bと水平面とのなす角度よりも小さい。本実施形態では、第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bの第2端部512bと同じ位置にある。また、直線X2が、着座面(水平面)に対して平行である。
【0023】
第2分断上切刃51cの第1端部511cが、(I)の要件を満たすと、従来の長手方向にわたって直線状に傾斜した切刃を有するインサートに比べて、インサートの厚み(上面2と下面3と間の距離)を確保することができ、それゆえ優れた耐欠損性を示すことができる。また、第2分断上切刃51cの第1端部511cが、(II)の要件を満たすと、複数の分断切刃(第1分断上切刃51b及び第2分断上切刃51c)が同時に被削材に接触することによる切削抵抗の増加を抑制することができる。そして、(I)及び(II)の要件を満たすと、インサート1は、低抵抗性でありながら、優れた耐欠損性を示すようになる。
【0024】
一方、側面4には、前記した通り、上凹部7a、下凹部7b及び肉厚部8が形成されている。上凹部7aは、側面4の表面から凹み、下面3から上面2に向かう厚み方向に沿って延び、上切刃5、具体的には主切刃部51を分断するように形成されている。下凹部7bは、側面4の表面から凹み、上面2から下面3に向かう厚み方向に沿って延び、下切刃6、具体的には主切刃部61を分断するように形成されている。これにより、主切刃部51又は主切刃部61によって生成する切屑は、幅方向に小さく分断されるため、切削時の切削抵抗を低減させることができる。その結果、加工中におけるびびり振動及び切刃の欠損を低減し、優れた仕上げ面精度を得ることができるとともに、工具寿命を長くすることができる。このような主切刃部51及び主切刃部61を有するインサート1は、重切削加工する場合に特に好適である。
【0025】
上凹部7a及び下凹部7bは、上切刃5及び下切刃6を分断するように形成されていればよく、その他の構成については特に制限されない。例えば、上面2から下面3を貫通するように形成されていてもよいし、あるいは厚み方向(上面か下面に向かう方向)に端部を設けるように形成されていてもよい。本実施形態においては、上凹部7aが上面2から側面4に達するように形成されている。また、下凹部7bが下面3から側面4に達するように形成されている。
【0026】
特に、上面2から側面4に達する上凹部7a及び下面3から側面4に達する下凹部7bを有する構成において、それぞれの凹部の端部が、上面2と下面3との中間部よりその凹部によって分断された切刃側に配置されることが好ましい。
【0027】
すなわち、上凹部7a及び下凹部7bは、いずれも略一定の幅を有する溝状であり、且つ厚み方向に直線状である。複数の上凹部7aと、複数の下凹部7bとは、側面視において、互いに離隔している。これにより、側面4における上凹部7aと下凹部7bとの間に幅方向に沿って連続する肉厚部8が形成されるので、優れた耐欠損性を得ることができる。
【0028】
また、図2(b)に示すように、上凹部7aのそれぞれは、側面4に位置する下端部7a1を有している。下凹部7bのそれぞれは、側面4に位置する上端部7b1を有している。そして、側面視において、下端部7a1は、上端部7b1よりも上面2側に位置している。これにより、側面4における上凹部7aと下凹部7bとの間に、厚み方向に比較的長い肉厚部8が形成されるので、より優れた耐欠損性を得ることができる。
【0029】
上凹部7a及び下凹部7bは、インサート1を切削工具に装着する角度に応じて適宜形成される。例えば本実施形態のようにすくい面を有する場合は、このすくい面から側面4に向かって水平方向に上凹部7a及び下凹部7bを設けてもよいし、あるいは上凹部7a及び下凹部7bの底部が側面4に向かうに従って、下面3又は上面2に近づくように傾斜してもよい。上凹部7a及び下凹部7bの厚み方向における長さは、インサート1を装着した切削工具の送り量に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
上凹部7a及び下凹部7bの数は、使用する被削材の種類に応じて適宜設定すればよい。上凹部7a及び下凹部7bの数が多いほど、切削抵抗及びびびり振動は低減されるが、切削面積は小さくなる。上凹部7a及び下凹部7bの数は、少なくとも1つであればよく、インサート1の強度を低下させず、且つ切削抵抗を低減する点から、1つの側面に対して、通常2〜6個程度、好ましくは2〜4個の範囲で形成される。なお、上凹部7a及び下凹部7bは、切削時の各切刃の摩耗量を均一にする観点から、各側面に対して同数形成されることが好ましい。
【0031】
上凹部7a及び下凹部7bは、各切刃に応じて異なるように配置されていてもよい。例えば、1つのインサートにおいて、凹部が所定の位置に形成された一の切刃に対して、一の切刃の凹部の位置に分断切刃が形成され、且つ一の切刃の分断切刃の位置に凹部が形成されるような他の切刃を有することが好ましい。この場合、これらの切刃をホルダの回転方向に沿って交互に設けることによって、凹部による削り残し部を相互に補完することができる。
【0032】
具体的に説明すると、図2(b)及び図4(a)に示すように、少なくとも1つの下凹部7bは、上面視において、側面4の対角線の交点P2を通り且つ中心軸A1に垂直な基準線Lを軸にして反転させたとき、図4(b)に示す反転前の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つと重なる。より具体的には、少なくとも1つの下凹部7bと、該下凹部7bと隣接する一方の分断下切刃との交差部と、少なくとも1つの下凹部7bと、該下凹部7bと隣接する他方の分断下切刃との交差部とを結ぶ直線の全長が、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つと重なる。これにより、被削材のうち分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cで削り残した部位を相互に補完しあう事ができるため、1種類のインサート1のみで削り残しのない切削が可能となる。特に、インサート1によれば、一のインサートの上面と他のインサートの下面とを交互に配置する事によって、1種類のインサート1のみで削り残しのない切削が可能となる。
【0033】
また、インサート1は、少なくとも1つの下凹部7bが、上面視において、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の少なくとも1つの上凹部7aと交互に且つ隙間を介して位置する構成を有する。すなわち、少なくとも1つの下凹部7bが、上面視において、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の少なくとも1つの上凹部7aと重ならないように配置されている。このような構成によっても、図4(b)に示す反転前のインサート1と、図4(a)に示す反転後のインサート1(以下、「反転インサート1’」と言う。)とを、ホルダ91の同一円周上に沿って配置すれば、インサート1の上凹部7aで生成する帯状の削り残し部を、反転インサート1’の下切刃6で切削することができる。
【0034】
上凹部7a及び下凹部7bは、上面視において、本体部の厚み方向に垂直に延びる中心軸A1を基準に回転対称となるように各側面4に配置されることが好ましい。具体的には、各側面4に形成される上凹部7a及び下凹部7bの配置が、側面視において同じ配置になるように配置される。これにより、インサート1と、その反転インサート1’との切刃の寿命のばらつきが少なくなり、切削工具に用いる全てのインサートの交換のタイミングをほぼ同時期とすることができる。
【0035】
肉厚部8は、側面4において、インサート1の肉厚、すなわちインサート1の中心軸A1を含み且つ上切刃5に平行な断面から側面4までの距離を確保する役割を有する。肉厚部8を有することで、上面から下面まで貫通する溝部を形成する場合に生じる従来の課題、すなわちインサートの耐欠損性の低下を抑制することができる。また、インサート1は、前記した通り、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9を有している。この貫通孔9は、インサート1の肉厚減少の原因となり得るが、このようなインサートにおいても、肉厚部8を備える事によって、耐欠損性の低下を効果的に抑制する事ができる。本実施形態においては、上凹部7a及び下凹部7bを除く側面4の平坦な面全体が肉厚部8に相当する。なお、肉厚部8は、側面4の幅方向の長さが、隣接する2つの上凹部7aの距離、あるいは隣接する2つの下凹部7bの距離、よりも大きい事が好ましい。肉厚部8がこのような長さに渡って連続する事によって、上述のような効果を十分に発揮する事が可能となる。
【0036】
肉厚部8は、上述のように、側面4の幅方向に連続しており、側面4の幅方向に直線状に形成される面を含んでいることがさらに好ましい。図2(b)に示すように、本実施形態においては、肉厚部8が、上凹部7aと下凹部7bとの間に直線状(帯状)の平面部8a(平坦面)を含んで形成されている。
【0037】
また、上切刃5は、直線部(主切刃部51及び副切刃部52)を有している。直線部は、平面部8aの厚み方向に沿う延長線上に位置している。そして、中心軸A1を含み且つ直線部に平行な断面と、平面部8aとは、互いに平行である。これにより、インサート1の肉厚が減少することによる耐欠損性の低下を抑制することができる。
【0038】
肉厚部8は、より優れた耐欠損性を得る点から、各側面4に位置する肉厚部8が互いに連続して形成されていることが好ましい。
【0039】
肉厚部8は、図5に示すように、肉厚部8を通り中心軸A1に垂直な第1直線L1のうち、肉厚部8と中心軸A1との間の距離をD1、上切刃5を通り中心軸A1に垂直な第2直線L2のうち、上切刃5と中心軸A1との間の距離をD2としたとき、D1及びD2が、D1=D2の関係を有するのが好ましい。第1直線L1及び第2直線L2は、互いに平行である。肉厚部8が、この関係を満たす事によって、耐欠損性に優れたインサート1とする事ができる。なお、肉厚部8は、上切刃5よりも外方に向かって張り出していてもよい。すなわち、D1>D2の関係を有していてもよい。この場合、インサート1の耐欠損性をさらに向上させる事が可能となる。
【0040】
肉厚部8は、1つの側面4に対して、以下の割合で形成されるのが好ましい。すなわち、肉厚部8は、上凹部7a、下凹部7b及び肉厚部8が形成されていない状態の1つの側面4全体に対して、60%以上、好ましくは60〜80%の割合で形成されるのが好ましい。これにより、インサート1の肉厚を確保することができる。
【0041】
<切削工具>
次に、本発明に係る切削工具の一実施形態について、図6〜図8を参照して詳細に説明する。図6及び図7(a)に示すように、本実施形態の切削工具90は、複数のインサート1と、これら複数のインサート1が装着されるホルダ91と、を備えている。
【0042】
ホルダ10の外周先端部には、複数のインサートポケット93が形成されている。各インサートポケット93内の外周位置にインサート1が取り付けられる。具体的には、インサート1は、矢印Cに示す回転方向に上面(すくい面)2を向けて最外周に主切刃部51が位置するように装着される。切削工具90は、ホルダ91を矢印C方向に回転させることによって主切刃部51により切削が行われる。
【0043】
切削工具90は、図7(b)に示すように、インサート1を装着した状態で、正のアキシャルレーキ角を持つように、ホルダ91にインサート1が装着される。具体的には、インサート1の副切刃部52が、ホルダ91の中心軸A2に対して垂直となるように装着される。
【0044】
さらに、インサート1は、複数の分断切刃が同時に被削材に接触しないようにホルダ91に装着されることが好ましい。すなわち、インサート1は、図8に示すように、第2分断上切刃51cの第1端部511cと、第1分断上切刃51bの第2端部512bとを結ぶ直線X2(第3直線)が、側面透視において、すなわち側面4から透視した時に、ホルダ91の中心軸A2に対して平行か、又は正方向に傾斜した状態でホルダ91に装着されるのが好ましい。
【0045】
ここで、正方向に傾斜した状態とは、第2端部512bが第1端部511cよりも矢印Cに示す回転方向前方に位置するように傾斜する状態のことをいう。従って、インサート1が前記した状態でホルダ91に装着されると、第1端部511cが第2端部512bと同時に被削材に当接するか、又は第1端部511cが第2端部512bよりも遅れて被削材に当接するようになるため、切削抵抗の低減が可能となる。本実施形態では、インサート1は、直線X2が、側面透視において、すなわち側面4から透視した時に、ホルダ91の中心軸A2に対して平行な状態でホルダ91に装着されている。
【0046】
切削工具90は、図6及び図7(a)に示すように、ホルダ91の同一円周上に沿って主切刃部の配置が異なるインサート1を装着してなる。複数のインサート1のうち2つのインサート1,1は、互いの上面2と下面3とが反対に位置する状態でホルダ91に装着される。すなわち、ホルダ91の同一円周上に沿って上面2を回転方向に向けたインサート1と、下面3を回転方向に向けた反転インサート1’とを交互に配置する。次いで、インサート1及び反転インサート1’の各々の貫通孔9に、取付ねじ92(固定部材)を挿入してホルダ91にねじ込むことによって、インサート1及び反転インサート1’をホルダ91にそれぞれ固定する。これにより、インサート1の上凹部7aで生成する帯状の削り残し部を反転インサート1’の下切刃6(主切刃部61)で切削することができ、削り残し部を生じずに切削加工することができる。同一円周上に沿って配置できるインサートの数は、インサート1とその反転インサート1’とが少なくとも1つずつであればよい。インサートの数は、通常、2の倍数となることが好ましい。
【0047】
<被削材の切削方法(被削加工物の製造方法)>
次に、本発明に係る被削材の切削方法の一実施形態について、図9を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる被削材の切削方法は、以下の(i)〜(iii)の工程を備える。
(i)図9(a)に示すように、切削工具90をホルダ91の中心軸A2を中心に矢印C方向に回転させ、矢印D方向に動かし、被削材100に切削工具90を近づける工程。
(ii)図9(b)に示すように、回転している切削工具90の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つ、及び複数の分断下切刃61a〜61cの少なくとも1つを、被削材100の表面に接触させ、切削工具90を矢印E方向に動かし、被削材100を切削する工程。
(iii)図9(c)に示すように、切削工具90を矢印F方向に動かし、被削材100から切削工具90を離隔する工程。
【0048】
本実施形態では、インサート1を装着した切削工具90を用いて被削材100を切削するので、(ii)の工程では、切削時の切削抵抗を低減することができ、加工中におけるびびり振動を低減することができる。さらに1種類のインサートで削り残し部を生じずに加工することができる。
【0049】
なお、(i)の工程では、切削工具90及び被削材100のいずれかを回転させればよい。切削工具90と被削材100とは相対的に近づけばよく、例えば被削材100を切削工具90に近づけてもよい。これと同様に、(iii)の工程では、被削材100と切削工具90とは相対的に遠ざかればよく、例えば被削材100を切削工具90から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、切削工具90を回転させた状態を保持して、被削材100の異なる箇所に切削工具90の分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cを接触させる工程を繰り返せばよい。使用している分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cが摩耗した際には、インサート1及び反転インサート1’を中心軸A1に対して90度回転させ、未使用の分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cを用いればよい。
【0050】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0051】
例えば、前記した一実施形態に係るインサートでは、複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、側面視において、中心軸A1に垂直な平面を基準にした各分断上切刃(直線)の傾斜角度は、側面の第1分断上切刃側から第2分断上切刃側の方向に向かって一定である。これに代えて、各分断上切刃(直線)の傾斜角度を、例えば図10に示すような角度に形成してもよい。すなわち、図10(a)に示すように、この実施形態に係る第1分断上切刃51b1及び第2分断上切刃51c1は、それぞれ直線である。そして、側面視において、すなわち側面4から透視した時に、中心軸A1に垂直な平面X3を基準にした第1分断上切刃51b1の傾斜角度をα1、直線X3を基準にした第2分断上切刃51c1の傾斜角度をβ1としたとき、α1及びβ1は、矢印Gに示す側面4の第1分断上切刃51b1側から第2分断上切刃51c1側の方向に向かって小さくなるように形成されている。つまり、α1及びβ1は、α1>β1の関係を有している。これにより、第2分断上切刃51c1のβ1を小さくする分に応じてインサートの肉厚を確保することができるので、より優れた耐欠損性を示すことができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0052】
また、図10(b)に示すように、この実施形態に係る第1分断上切刃51b2及び第2分断上切刃51c2は、それぞれ直線である。そして、側面視において、平面X3を基準にした第1分断上切刃51b2の傾斜角度をα2、直線X3を基準にした第2分断上切刃51c2の傾斜角度をβ2としたとき、α2及びβ2は、矢印Gに示す方向に向かって大きくなるように形成されている。つまり、α2及びβ2は、α2<β2の関係を有している。これにより、ホルダ91に装着した際のアキシャルレーキ角が大きくなるので、切削抵抗を小さくすることができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0053】
また、前記した一実施形態に係るインサートでは、複数の分断上切刃はそれぞれ直線である。これに代えて、複数の分断上切刃の少なくとも1つを、例えば図11に示すような形状に形成してもよい。すなわち、図11(a)に示すように、この実施形態に係るインサートは、第1分断上切刃51b3及び第2分断上切刃51c3を有している。これら第1分断上切刃51b3及び第2分断上切刃51c3のうち、第2分断上切刃51c3は、上方に凸の曲線である。ここで、切削時において負荷を最も受けるのは、分断上切刃の先端側である。従って、分断上切刃を上方に凸の曲線にすると、分断上切刃の先端におけるインサートの厚みを増やすことができるので、耐欠損性を向上させることができる。本実施形態では、第2分断上切刃51c3の耐欠損性を向上させることができる。なお、複数の分断上切刃の全てを上方に凸の曲線にしてもよく、それによって耐欠損性をより向上させる事ができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0054】
また、図11(b)に示すように、この実施形態に係るインサートは、第1分断上切刃51b4及び第2分断上切刃51c4を有している。これら第1分断上切刃51b4及び第2分断上切刃51c4のうち、第2分断上切刃51c4は、下方に凸の曲線である。これにより、ホルダ91に装着した際のアキシャルレーキ角が大きくなるので、切削抵抗を小さくすることができるとともに、切屑排出性を向上させることができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。なお、複数の分断上切刃の全てを下方に凸の曲線にしてもよく、それによって切削抵抗をより小さくすることができるとともに、切屑排出性をより向上させることができる。
【0055】
一方、前記した一実施形態に係るインサートでは、側面視において、上凹部の下端部が、下凹部の上端部よりも上面側に位置している。これに代えて、側面視において、上凹部の下端部が、下凹部の上端部よりも下面側に位置するような構成にしてもよい。すなわち、図12に示すように、この実施形態に係るインサートでは、上凹部71aのそれぞれが側面4に位置する下端部7a2を有し、下凹部71bのそれぞれが側面4に位置する上端部7b2を有している。そして、側面視において、下端部7a2は上端部7b2よりも下面3側に位置している。これにより、本実施形態に係る肉厚部81は、側面4の幅方向の一端部から他端部まで波状に延びる曲線領域を有するようになる。この実施形態に係るインサートにおいても、側面4の幅方向に沿って肉厚部8が連続することから、前記した一実施形態に係るインサートと同様の効果を奏することができる。特に、上凹部71a及び下凹部71bの長さをより長くできることから、切屑排出性をさらに向上させる事が可能となる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【符号の説明】
【0056】
1 切削インサート
2 上面
3 下面
4 側面
41 分割側面
5 上切刃
51、61 主切刃部
52、62 副切刃部
51a〜51d 分断上切刃
511 第1端部
512 第2端部
6 下切刃
61a〜61c 分断下切刃
7a 上凹部
7b 下凹部
8 肉厚部
9 貫通孔
90 切削工具
91 ホルダ
92 取付ねじ
93 インサートポケット
100 被削材
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削インサート(以下、「インサート」と言うことがある。)において、特許文献1の図4などに、主エッジ46を傾斜させた切削インサート20が開示されている。このように、主エッジ46を傾斜させる事は、切削抵抗を低減する観点から好ましい。
しかしながら、主エッジ46を傾斜させる程、切削インサート20の厚み(第1の端面28と第2の端面30との間の距離)は減少していくため、耐欠損性の観点で劣るという課題が生じる。
そのため、切削抵抗が小さく、且つ耐欠損性に優れた、切削インサートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−544872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題の一つは、切削抵抗が小さく、耐欠損性に優れた切削インサート及び切削工具、並びにそれを用いた被削材の切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る切削インサートは、上面と、下面と、前記上面と前記下面との間に位置し且つ厚み方向に沿って前記上面まで延びる少なくとも1つの上凹部を有する側面と、前記上面と前記側面との交線部に位置し且つ前記少なくとも1つの上凹部により分断されてなる複数の分断上切刃と、を備えている。前記複数の分断上切刃のそれぞれは、一端に位置する第1端部と、他端に位置する第2端部と、を有するとともに、側面視において、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記下面に近づくように傾斜している。前記複数の分断上切刃は、第1分断上切刃と、該第1分断上切刃の前記第2端部に前記少なくとも1つの上凹部の1つを介して隣接する第2分断上切刃と、を有している。そして、前記第2分断上切刃の前記第1端部は、側面視において、前記第1分断上切刃を前記第2分断上切刃側に延長した延長線と、前記第2分断上切刃の前記第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する。
【0006】
本発明の実施形態に係る切削工具は、前記切削インサートと、前記切削インサートが装着されるホルダと、を備えている。
本発明の他の実施形態に係る切削工具は、複数の前記切削インサートと、これら複数の切削インサートが装着されるホルダと、を備えている。前記複数の切削インサートのうち2つの切削インサートは、互いの前記上面と前記下面とを反対向きにし、前記ホルダの同一円周に沿って見た時に、一方の切削インサートの前記少なくとも1つの下凹部が、他方の切削インサートの前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置するような状態で、前記ホルダに装着される。
【0007】
本発明の実施形態に係る被削材の切削方法は、前記切削工具を前記ホルダの中心軸を中心に回転させる工程と、回転している前記切削工具の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つ又は前記複数の分断下切刃の少なくとも1つを、被削材の表面に接触させる工程と、前記被削材から前記切削工具を離隔する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係るインサートによれば、上凹部を有し、且つ、該上凹部によって分断された複数の分断上切刃が第1端部から第2端部に向かって下面に近づくように傾斜していることから、従来の長手方向にわたって直線状に傾斜した一つの切刃を有するインサートと比較して、同等以上の低い切削抵抗を実現する事ができる。また、側面視において、第2分断上切刃の第1端部は、第1分断上切刃を第2分断上切刃側に延長した延長線と、第2分断上切刃の第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置するため、上述のように傾斜した複数の分断上切刃を有するインサートにおいて、その上面から下面までの厚みを比較的大きく確保する事ができ、優れた耐欠損性を発揮する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る切削インサートを示す全体斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す切削インサートの上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図4】(a)は、図1に示す切削インサートの反転後を示す図であり、(b)は、その反転前を示す図である。
【図5】図2(a)のA−A線断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る切削工具を示す全体斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は、図6に示す切削工具の外周先端部付近を示す部分拡大側面図である。
【図8】図7(b)に示す切削工具の切削インサートの一部を示す部分拡大図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る被削材の切削方法を示す工程図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図11】(a)及び(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る切削インサートの第1分断上切刃及び第2分断上切刃を示す概略説明図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る切削インサートの側面付近を示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<切削インサート>
以下、本発明に係る切削インサートの一実施形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。本実施形態の切削インサート1は、図1及び図2に示すように、大略、上面2と、下面3と、上面2及び下面3に接続される側面4と、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9(取付穴)と、上面2と側面4との交線部に位置する上切刃5と、下面3と側面4との交線部に位置する下切刃6と、を備えている。また、側面4は、厚み方向に沿って上面2まで延び且つ上切刃5を複数の分断上切刃51a〜51dに分断する少なくとも1つの上凹部7aと、厚み方向に沿って下面3まで延び且つ下切刃6を複数の分断下切刃61a〜61cに分断する少なくとも1つの下凹部7bと、幅方向に沿って連続する肉厚部8(側面強化部)と、を有している。なお、側面4の厚み方向とはインサート1の中心軸A1に平行な方向をいい、側面4の幅方向とは厚み方向に垂直な方向をいう。また、側面4の幅方向に沿って連続するとは、側面視において、上切刃5及び下切刃6に沿って延びる方向に連続していれば足りる。
【0011】
なお、インサート1は、略多角形板状の本体部を有している。この本体部は、すくい面として機能する上面2と、着座面として機能する下面3と、逃げ面として機能する側面4と、を有している。また、図2に示すように、このインサート1は、上面2及び下面3の両面をそれぞれすくい面として使用可能な両面使いのインサートである。従って、下切刃6を用いる場合には、下面3をすくい面、上面2を着座面として使用する。すなわち、本実施形態のインサート1は、上下両面に位置する上切刃5及び下切刃6を用いて切削可能な両面使いのインサートである。以下、インサート1を構成する各部位について、詳細に説明する。
【0012】
本体部は、略多角形の形状であれば特に限定されるものではなく、上面視において、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の当業者が通常インサートに使用する形状であればよい。本実施形態においては、5つの長辺を有する略五角形の形状が用いられている。すなわち、インサート1は片面5コーナー使いのインサートである。なお、本体部の形状は、全ての辺を切刃として使用する観点から、例えば正方形、正五角形等のように各辺の長さが等しいことが好ましい。また、本体部の形状が正五角形の場合には、切刃長さを確保しつつ、切刃を多く設けることができるとともに、ホルダに対する当接面として複数の側面を使用することができる。
【0013】
上面2及び下面3には、上切刃5及び下切刃6から内方に向かって厚みが順次薄くなるすくい面が形成されている。また、上面2の略中央部には、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9が形成されている。貫通孔9の中心軸は、本体部の中心軸A1と同じ位置にある。この貫通孔9は、インサート1を後述するホルダ91に固定する目的で形成されている。すなわち、この貫通孔9に取付ねじ92(固定部材)を挿入してさらにホルダ91にねじ込むことによって、インサート1をホルダ91に固定することができる。
【0014】
上面2、下面3及び側面4は、例えば窒化チタン(TiN)により被覆してもよい。これにより、インサート1の硬度、滑り特性及び耐熱性を向上させることができる。また、上面2及び下面3は、それぞれの色を互いに異ならせるのが好ましい。例えば本体部が銀色を示す超硬合金である場合には、上面2及び下面3のいずれか一方を、金色を示す窒化チタン(TiN)により被覆するのが好ましい。ネガティブ形のインサートにおいては、上面及び下面は、いずれもすくい面として機能するため、インサートの取付け間違いを生じる場合がある。上面及び下面のいずれか一方をTiNで被覆すると、TiNで被覆した面と被覆していない面とが異なる色となる。それゆえ、それぞれの面を明確に区別できるようになり、インサートを装着する際の誤認を抑制することができる。また、上面2及び下面3のいずれかの被覆対象面は、その全面を被覆する必要はなく、例えば被覆対象面の一部(例えば切刃以外の部分)にTiNを被覆することによっても同様の効果を得ることができる。なお、上述の被覆に用いる材料としては、上面2及び下面3の色の相違を認識する事ができれば、TiNに限定されるものではない。例えば本体部が超硬合金である場合に、明るい赤褐色を示す炭窒化チタン(TiCN)、暗い赤褐色を示す窒化チタンアルミ(TiAlN)等を採用することもできる。
【0015】
側面4は、前記した通り、上面2と下面3とに接続されている。インサートの肉厚の減少による耐欠損性の低下を抑制する点から、側面4に逃げ角を設けないことが好ましい。すなわち、側面4を上面2及び下面3に形成される平坦な着座面に対して垂直となるように配置することが好ましい。本実施形態においては、上面2及び下面3の中央部には平坦な着座面が設けられており、側面4はこれらの着座面に対して垂直に配置されている。従って、インサート1は、側面と、上面又は下面との間に逃げ角を有するインサートと比較して、インサートの肉厚を確保する事ができるため、耐欠損性に優れている。
【0016】
また、側面4は、上面2の略五角形の各辺にそれぞれ接続された複数の分割側面41を有し、上凹部7aは、複数の分割側面41のそれぞれに少なくとも1つ位置している。そして、各分割側面41に、上凹部7aの少なくとも1つ、及び、該上凹部7aにより分断されてなる複数の分断上切刃51a〜51dが形成されている。それ故、上述の通り、本実施形態のインサート1は、五角形の全ての辺を使用可能な片面5コーナー使いのインサートであって、両面では計10コーナーを切削に使用する事ができる。ここで分割側面とは、上面2の各辺に接続される個々の側面4を意味する。側面4の構成の詳細については後述する。
【0017】
上切刃5は、主切刃部51と、この主切刃部51に連続して形成される副切刃部52と、を有している。この上切刃5と同様に、下切刃6も、主切刃部61及び副切刃部62を有している。主切刃部61及び副切刃部62の構成は、主切刃部51及び副切刃部52と同様である。従って、以下の説明では、主切刃部51及び副切刃部52について説明する。
【0018】
主切刃部51は、ホルダ91の外周側に配置され、切削作用において切屑生成に主な役割を果たす切刃である。主切刃部51は、側面4に並設された複数の上凹部7aにより分断されてなる分断上切刃51a〜51d(分割主切刃)を有している。副切刃部52は、ホルダ91の正面側(先端側)に配置され、被削材の仕上げ面精度を向上させるさらい刃としての目的で形成される。副切刃部52は、本体部の角部に形成され、通常、直線状である。主切刃部51と副切刃部52との間には、丸みを帯びたコーナー切刃を有する場合がある。主切刃部51は、側面視において、主切刃部61と平行であってもよい。これと同様に、副切刃部52も、側面視において、副切刃部62と平行であってもよい。
【0019】
主切刃部51は、図2(b)に示すように、矢印Bに示す長手方向一方に向かって下面3に近づくように傾斜している。具体的には、分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、一端に位置する第1端部511と、他端に位置する第2端部512と、を有している。分断上切刃のそれぞれにおいて、一端とは副切刃部52側に位置する端部のことをいい、他端とは一端と反対に位置する端部のことをいう。また、分断上切刃のそれぞれにおいて、第1端部511は、第2端部512よりも上方に位置している。分断上切刃51a〜51dのそれぞれは、側面視において、第1端部511から第2端部512に向かって下面3に近づくように傾斜している。このような傾斜主切刃は、ホルダ91の中心軸A2に対してすくい角を設けた状態でインサート1をホルダ91に装着して使用することにより、切削抵抗の低減に寄与することができる。
【0020】
ここで、分断上切刃51a〜51dのうち、分断上切刃51bを第1分断上切刃51b(隣接分割主切刃)、分断上切刃51cを第2分断上切刃51cとしたとき、図3に示すように、第2分断上切刃51cは、第1分断上切刃51bの第2端部512bに上凹部7aの1つを介して隣接している。そして、第2分断上切刃51cの第1端部511cは、下記(I)及び(II)の要件を満たしている。
【0021】
(I)第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bを第2分断上切刃51c側に延長した延長線X1(長手方向延長線)と、第2分断上切刃51cの第1端部511cを通り且つ中心軸A1に平行な線との交点P1よりも上方に位置する。
【0022】
(II)第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bの第2端部512bと同じ位置か、又は第2端部512bよりも下方に位置する。あるいは、第1端部511cと第2端部512bとを結ぶ直線X2(第3直線)が、着座面(水平面)に対して平行であるか、又は直線X2と水平面とのなす角度が、第1分断上切刃51bと水平面とのなす角度よりも小さい。本実施形態では、第2分断上切刃51cの第1端部511cは、側面視において、第1分断上切刃51bの第2端部512bと同じ位置にある。また、直線X2が、着座面(水平面)に対して平行である。
【0023】
第2分断上切刃51cの第1端部511cが、(I)の要件を満たすと、従来の長手方向にわたって直線状に傾斜した切刃を有するインサートに比べて、インサートの厚み(上面2と下面3と間の距離)を確保することができ、それゆえ優れた耐欠損性を示すことができる。また、第2分断上切刃51cの第1端部511cが、(II)の要件を満たすと、複数の分断切刃(第1分断上切刃51b及び第2分断上切刃51c)が同時に被削材に接触することによる切削抵抗の増加を抑制することができる。そして、(I)及び(II)の要件を満たすと、インサート1は、低抵抗性でありながら、優れた耐欠損性を示すようになる。
【0024】
一方、側面4には、前記した通り、上凹部7a、下凹部7b及び肉厚部8が形成されている。上凹部7aは、側面4の表面から凹み、下面3から上面2に向かう厚み方向に沿って延び、上切刃5、具体的には主切刃部51を分断するように形成されている。下凹部7bは、側面4の表面から凹み、上面2から下面3に向かう厚み方向に沿って延び、下切刃6、具体的には主切刃部61を分断するように形成されている。これにより、主切刃部51又は主切刃部61によって生成する切屑は、幅方向に小さく分断されるため、切削時の切削抵抗を低減させることができる。その結果、加工中におけるびびり振動及び切刃の欠損を低減し、優れた仕上げ面精度を得ることができるとともに、工具寿命を長くすることができる。このような主切刃部51及び主切刃部61を有するインサート1は、重切削加工する場合に特に好適である。
【0025】
上凹部7a及び下凹部7bは、上切刃5及び下切刃6を分断するように形成されていればよく、その他の構成については特に制限されない。例えば、上面2から下面3を貫通するように形成されていてもよいし、あるいは厚み方向(上面か下面に向かう方向)に端部を設けるように形成されていてもよい。本実施形態においては、上凹部7aが上面2から側面4に達するように形成されている。また、下凹部7bが下面3から側面4に達するように形成されている。
【0026】
特に、上面2から側面4に達する上凹部7a及び下面3から側面4に達する下凹部7bを有する構成において、それぞれの凹部の端部が、上面2と下面3との中間部よりその凹部によって分断された切刃側に配置されることが好ましい。
【0027】
すなわち、上凹部7a及び下凹部7bは、いずれも略一定の幅を有する溝状であり、且つ厚み方向に直線状である。複数の上凹部7aと、複数の下凹部7bとは、側面視において、互いに離隔している。これにより、側面4における上凹部7aと下凹部7bとの間に幅方向に沿って連続する肉厚部8が形成されるので、優れた耐欠損性を得ることができる。
【0028】
また、図2(b)に示すように、上凹部7aのそれぞれは、側面4に位置する下端部7a1を有している。下凹部7bのそれぞれは、側面4に位置する上端部7b1を有している。そして、側面視において、下端部7a1は、上端部7b1よりも上面2側に位置している。これにより、側面4における上凹部7aと下凹部7bとの間に、厚み方向に比較的長い肉厚部8が形成されるので、より優れた耐欠損性を得ることができる。
【0029】
上凹部7a及び下凹部7bは、インサート1を切削工具に装着する角度に応じて適宜形成される。例えば本実施形態のようにすくい面を有する場合は、このすくい面から側面4に向かって水平方向に上凹部7a及び下凹部7bを設けてもよいし、あるいは上凹部7a及び下凹部7bの底部が側面4に向かうに従って、下面3又は上面2に近づくように傾斜してもよい。上凹部7a及び下凹部7bの厚み方向における長さは、インサート1を装着した切削工具の送り量に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
上凹部7a及び下凹部7bの数は、使用する被削材の種類に応じて適宜設定すればよい。上凹部7a及び下凹部7bの数が多いほど、切削抵抗及びびびり振動は低減されるが、切削面積は小さくなる。上凹部7a及び下凹部7bの数は、少なくとも1つであればよく、インサート1の強度を低下させず、且つ切削抵抗を低減する点から、1つの側面に対して、通常2〜6個程度、好ましくは2〜4個の範囲で形成される。なお、上凹部7a及び下凹部7bは、切削時の各切刃の摩耗量を均一にする観点から、各側面に対して同数形成されることが好ましい。
【0031】
上凹部7a及び下凹部7bは、各切刃に応じて異なるように配置されていてもよい。例えば、1つのインサートにおいて、凹部が所定の位置に形成された一の切刃に対して、一の切刃の凹部の位置に分断切刃が形成され、且つ一の切刃の分断切刃の位置に凹部が形成されるような他の切刃を有することが好ましい。この場合、これらの切刃をホルダの回転方向に沿って交互に設けることによって、凹部による削り残し部を相互に補完することができる。
【0032】
具体的に説明すると、図2(b)及び図4(a)に示すように、少なくとも1つの下凹部7bは、上面視において、側面4の対角線の交点P2を通り且つ中心軸A1に垂直な基準線Lを軸にして反転させたとき、図4(b)に示す反転前の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つと重なる。より具体的には、少なくとも1つの下凹部7bと、該下凹部7bと隣接する一方の分断下切刃との交差部と、少なくとも1つの下凹部7bと、該下凹部7bと隣接する他方の分断下切刃との交差部とを結ぶ直線の全長が、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つと重なる。これにより、被削材のうち分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cで削り残した部位を相互に補完しあう事ができるため、1種類のインサート1のみで削り残しのない切削が可能となる。特に、インサート1によれば、一のインサートの上面と他のインサートの下面とを交互に配置する事によって、1種類のインサート1のみで削り残しのない切削が可能となる。
【0033】
また、インサート1は、少なくとも1つの下凹部7bが、上面視において、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の少なくとも1つの上凹部7aと交互に且つ隙間を介して位置する構成を有する。すなわち、少なくとも1つの下凹部7bが、上面視において、基準線Lを軸にして反転させたとき、反転前の少なくとも1つの上凹部7aと重ならないように配置されている。このような構成によっても、図4(b)に示す反転前のインサート1と、図4(a)に示す反転後のインサート1(以下、「反転インサート1’」と言う。)とを、ホルダ91の同一円周上に沿って配置すれば、インサート1の上凹部7aで生成する帯状の削り残し部を、反転インサート1’の下切刃6で切削することができる。
【0034】
上凹部7a及び下凹部7bは、上面視において、本体部の厚み方向に垂直に延びる中心軸A1を基準に回転対称となるように各側面4に配置されることが好ましい。具体的には、各側面4に形成される上凹部7a及び下凹部7bの配置が、側面視において同じ配置になるように配置される。これにより、インサート1と、その反転インサート1’との切刃の寿命のばらつきが少なくなり、切削工具に用いる全てのインサートの交換のタイミングをほぼ同時期とすることができる。
【0035】
肉厚部8は、側面4において、インサート1の肉厚、すなわちインサート1の中心軸A1を含み且つ上切刃5に平行な断面から側面4までの距離を確保する役割を有する。肉厚部8を有することで、上面から下面まで貫通する溝部を形成する場合に生じる従来の課題、すなわちインサートの耐欠損性の低下を抑制することができる。また、インサート1は、前記した通り、上面2から下面3まで貫通する貫通孔9を有している。この貫通孔9は、インサート1の肉厚減少の原因となり得るが、このようなインサートにおいても、肉厚部8を備える事によって、耐欠損性の低下を効果的に抑制する事ができる。本実施形態においては、上凹部7a及び下凹部7bを除く側面4の平坦な面全体が肉厚部8に相当する。なお、肉厚部8は、側面4の幅方向の長さが、隣接する2つの上凹部7aの距離、あるいは隣接する2つの下凹部7bの距離、よりも大きい事が好ましい。肉厚部8がこのような長さに渡って連続する事によって、上述のような効果を十分に発揮する事が可能となる。
【0036】
肉厚部8は、上述のように、側面4の幅方向に連続しており、側面4の幅方向に直線状に形成される面を含んでいることがさらに好ましい。図2(b)に示すように、本実施形態においては、肉厚部8が、上凹部7aと下凹部7bとの間に直線状(帯状)の平面部8a(平坦面)を含んで形成されている。
【0037】
また、上切刃5は、直線部(主切刃部51及び副切刃部52)を有している。直線部は、平面部8aの厚み方向に沿う延長線上に位置している。そして、中心軸A1を含み且つ直線部に平行な断面と、平面部8aとは、互いに平行である。これにより、インサート1の肉厚が減少することによる耐欠損性の低下を抑制することができる。
【0038】
肉厚部8は、より優れた耐欠損性を得る点から、各側面4に位置する肉厚部8が互いに連続して形成されていることが好ましい。
【0039】
肉厚部8は、図5に示すように、肉厚部8を通り中心軸A1に垂直な第1直線L1のうち、肉厚部8と中心軸A1との間の距離をD1、上切刃5を通り中心軸A1に垂直な第2直線L2のうち、上切刃5と中心軸A1との間の距離をD2としたとき、D1及びD2が、D1=D2の関係を有するのが好ましい。第1直線L1及び第2直線L2は、互いに平行である。肉厚部8が、この関係を満たす事によって、耐欠損性に優れたインサート1とする事ができる。なお、肉厚部8は、上切刃5よりも外方に向かって張り出していてもよい。すなわち、D1>D2の関係を有していてもよい。この場合、インサート1の耐欠損性をさらに向上させる事が可能となる。
【0040】
肉厚部8は、1つの側面4に対して、以下の割合で形成されるのが好ましい。すなわち、肉厚部8は、上凹部7a、下凹部7b及び肉厚部8が形成されていない状態の1つの側面4全体に対して、60%以上、好ましくは60〜80%の割合で形成されるのが好ましい。これにより、インサート1の肉厚を確保することができる。
【0041】
<切削工具>
次に、本発明に係る切削工具の一実施形態について、図6〜図8を参照して詳細に説明する。図6及び図7(a)に示すように、本実施形態の切削工具90は、複数のインサート1と、これら複数のインサート1が装着されるホルダ91と、を備えている。
【0042】
ホルダ10の外周先端部には、複数のインサートポケット93が形成されている。各インサートポケット93内の外周位置にインサート1が取り付けられる。具体的には、インサート1は、矢印Cに示す回転方向に上面(すくい面)2を向けて最外周に主切刃部51が位置するように装着される。切削工具90は、ホルダ91を矢印C方向に回転させることによって主切刃部51により切削が行われる。
【0043】
切削工具90は、図7(b)に示すように、インサート1を装着した状態で、正のアキシャルレーキ角を持つように、ホルダ91にインサート1が装着される。具体的には、インサート1の副切刃部52が、ホルダ91の中心軸A2に対して垂直となるように装着される。
【0044】
さらに、インサート1は、複数の分断切刃が同時に被削材に接触しないようにホルダ91に装着されることが好ましい。すなわち、インサート1は、図8に示すように、第2分断上切刃51cの第1端部511cと、第1分断上切刃51bの第2端部512bとを結ぶ直線X2(第3直線)が、側面透視において、すなわち側面4から透視した時に、ホルダ91の中心軸A2に対して平行か、又は正方向に傾斜した状態でホルダ91に装着されるのが好ましい。
【0045】
ここで、正方向に傾斜した状態とは、第2端部512bが第1端部511cよりも矢印Cに示す回転方向前方に位置するように傾斜する状態のことをいう。従って、インサート1が前記した状態でホルダ91に装着されると、第1端部511cが第2端部512bと同時に被削材に当接するか、又は第1端部511cが第2端部512bよりも遅れて被削材に当接するようになるため、切削抵抗の低減が可能となる。本実施形態では、インサート1は、直線X2が、側面透視において、すなわち側面4から透視した時に、ホルダ91の中心軸A2に対して平行な状態でホルダ91に装着されている。
【0046】
切削工具90は、図6及び図7(a)に示すように、ホルダ91の同一円周上に沿って主切刃部の配置が異なるインサート1を装着してなる。複数のインサート1のうち2つのインサート1,1は、互いの上面2と下面3とが反対に位置する状態でホルダ91に装着される。すなわち、ホルダ91の同一円周上に沿って上面2を回転方向に向けたインサート1と、下面3を回転方向に向けた反転インサート1’とを交互に配置する。次いで、インサート1及び反転インサート1’の各々の貫通孔9に、取付ねじ92(固定部材)を挿入してホルダ91にねじ込むことによって、インサート1及び反転インサート1’をホルダ91にそれぞれ固定する。これにより、インサート1の上凹部7aで生成する帯状の削り残し部を反転インサート1’の下切刃6(主切刃部61)で切削することができ、削り残し部を生じずに切削加工することができる。同一円周上に沿って配置できるインサートの数は、インサート1とその反転インサート1’とが少なくとも1つずつであればよい。インサートの数は、通常、2の倍数となることが好ましい。
【0047】
<被削材の切削方法(被削加工物の製造方法)>
次に、本発明に係る被削材の切削方法の一実施形態について、図9を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる被削材の切削方法は、以下の(i)〜(iii)の工程を備える。
(i)図9(a)に示すように、切削工具90をホルダ91の中心軸A2を中心に矢印C方向に回転させ、矢印D方向に動かし、被削材100に切削工具90を近づける工程。
(ii)図9(b)に示すように、回転している切削工具90の複数の分断上切刃51a〜51dの少なくとも1つ、及び複数の分断下切刃61a〜61cの少なくとも1つを、被削材100の表面に接触させ、切削工具90を矢印E方向に動かし、被削材100を切削する工程。
(iii)図9(c)に示すように、切削工具90を矢印F方向に動かし、被削材100から切削工具90を離隔する工程。
【0048】
本実施形態では、インサート1を装着した切削工具90を用いて被削材100を切削するので、(ii)の工程では、切削時の切削抵抗を低減することができ、加工中におけるびびり振動を低減することができる。さらに1種類のインサートで削り残し部を生じずに加工することができる。
【0049】
なお、(i)の工程では、切削工具90及び被削材100のいずれかを回転させればよい。切削工具90と被削材100とは相対的に近づけばよく、例えば被削材100を切削工具90に近づけてもよい。これと同様に、(iii)の工程では、被削材100と切削工具90とは相対的に遠ざかればよく、例えば被削材100を切削工具90から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、切削工具90を回転させた状態を保持して、被削材100の異なる箇所に切削工具90の分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cを接触させる工程を繰り返せばよい。使用している分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cが摩耗した際には、インサート1及び反転インサート1’を中心軸A1に対して90度回転させ、未使用の分断上切刃51a〜51d及び分断下切刃61a〜61cを用いればよい。
【0050】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0051】
例えば、前記した一実施形態に係るインサートでは、複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、側面視において、中心軸A1に垂直な平面を基準にした各分断上切刃(直線)の傾斜角度は、側面の第1分断上切刃側から第2分断上切刃側の方向に向かって一定である。これに代えて、各分断上切刃(直線)の傾斜角度を、例えば図10に示すような角度に形成してもよい。すなわち、図10(a)に示すように、この実施形態に係る第1分断上切刃51b1及び第2分断上切刃51c1は、それぞれ直線である。そして、側面視において、すなわち側面4から透視した時に、中心軸A1に垂直な平面X3を基準にした第1分断上切刃51b1の傾斜角度をα1、直線X3を基準にした第2分断上切刃51c1の傾斜角度をβ1としたとき、α1及びβ1は、矢印Gに示す側面4の第1分断上切刃51b1側から第2分断上切刃51c1側の方向に向かって小さくなるように形成されている。つまり、α1及びβ1は、α1>β1の関係を有している。これにより、第2分断上切刃51c1のβ1を小さくする分に応じてインサートの肉厚を確保することができるので、より優れた耐欠損性を示すことができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0052】
また、図10(b)に示すように、この実施形態に係る第1分断上切刃51b2及び第2分断上切刃51c2は、それぞれ直線である。そして、側面視において、平面X3を基準にした第1分断上切刃51b2の傾斜角度をα2、直線X3を基準にした第2分断上切刃51c2の傾斜角度をβ2としたとき、α2及びβ2は、矢印Gに示す方向に向かって大きくなるように形成されている。つまり、α2及びβ2は、α2<β2の関係を有している。これにより、ホルダ91に装着した際のアキシャルレーキ角が大きくなるので、切削抵抗を小さくすることができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0053】
また、前記した一実施形態に係るインサートでは、複数の分断上切刃はそれぞれ直線である。これに代えて、複数の分断上切刃の少なくとも1つを、例えば図11に示すような形状に形成してもよい。すなわち、図11(a)に示すように、この実施形態に係るインサートは、第1分断上切刃51b3及び第2分断上切刃51c3を有している。これら第1分断上切刃51b3及び第2分断上切刃51c3のうち、第2分断上切刃51c3は、上方に凸の曲線である。ここで、切削時において負荷を最も受けるのは、分断上切刃の先端側である。従って、分断上切刃を上方に凸の曲線にすると、分断上切刃の先端におけるインサートの厚みを増やすことができるので、耐欠損性を向上させることができる。本実施形態では、第2分断上切刃51c3の耐欠損性を向上させることができる。なお、複数の分断上切刃の全てを上方に凸の曲線にしてもよく、それによって耐欠損性をより向上させる事ができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【0054】
また、図11(b)に示すように、この実施形態に係るインサートは、第1分断上切刃51b4及び第2分断上切刃51c4を有している。これら第1分断上切刃51b4及び第2分断上切刃51c4のうち、第2分断上切刃51c4は、下方に凸の曲線である。これにより、ホルダ91に装着した際のアキシャルレーキ角が大きくなるので、切削抵抗を小さくすることができるとともに、切屑排出性を向上させることができる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。なお、複数の分断上切刃の全てを下方に凸の曲線にしてもよく、それによって切削抵抗をより小さくすることができるとともに、切屑排出性をより向上させることができる。
【0055】
一方、前記した一実施形態に係るインサートでは、側面視において、上凹部の下端部が、下凹部の上端部よりも上面側に位置している。これに代えて、側面視において、上凹部の下端部が、下凹部の上端部よりも下面側に位置するような構成にしてもよい。すなわち、図12に示すように、この実施形態に係るインサートでは、上凹部71aのそれぞれが側面4に位置する下端部7a2を有し、下凹部71bのそれぞれが側面4に位置する上端部7b2を有している。そして、側面視において、下端部7a2は上端部7b2よりも下面3側に位置している。これにより、本実施形態に係る肉厚部81は、側面4の幅方向の一端部から他端部まで波状に延びる曲線領域を有するようになる。この実施形態に係るインサートにおいても、側面4の幅方向に沿って肉厚部8が連続することから、前記した一実施形態に係るインサートと同様の効果を奏することができる。特に、上凹部71a及び下凹部71bの長さをより長くできることから、切屑排出性をさらに向上させる事が可能となる。なお、その他の構成は、前記した一実施形態に係るインサートと同様である。
【符号の説明】
【0056】
1 切削インサート
2 上面
3 下面
4 側面
41 分割側面
5 上切刃
51、61 主切刃部
52、62 副切刃部
51a〜51d 分断上切刃
511 第1端部
512 第2端部
6 下切刃
61a〜61c 分断下切刃
7a 上凹部
7b 下凹部
8 肉厚部
9 貫通孔
90 切削工具
91 ホルダ
92 取付ねじ
93 インサートポケット
100 被削材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、
下面と、
前記上面と前記下面との間に位置し、厚み方向に沿って前記上面まで延びる少なくとも1つの上凹部を有する、側面と、
前記上面と前記側面との交線部に位置し、前記少なくとも1つの上凹部により分断されてなる、複数の分断上切刃と、を備える切削インサートであって、
前記複数の分断上切刃のそれぞれは、
一端に位置する第1端部と、他端に位置する第2端部と、を有するとともに、
側面視において、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記下面に近づくように傾斜し、
前記複数の分断上切刃は、
第1分断上切刃と、該第1分断上切刃の前記第2端部に前記少なくとも1つの上凹部の1つを介して隣接する第2分断上切刃と、を有し、
前記第2分断上切刃の前記第1端部は、側面視において、
前記第1分断上切刃を前記第2分断上切刃側に延長した延長線と、前記第2分断上切刃の前記第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する、切削インサート。
【請求項2】
前記複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、
側面視において、前記複数の分断上切刃は、前記中心軸の垂線を基準にした前記各直線の傾斜角度が、前記第1分断上切刃側から前記第2分断上切刃側の方向に向かうにつれて順に小さくなる関係を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、
側面視において、前記複数の分断上切刃は、前記中心軸の垂線を基準にした前記各直線の傾斜角度が、前記第1分断上切刃側から前記第2分断上切刃側の方向に向かうにつれて順に大きくなる関係を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項4】
側面視において、前記複数の分断上切刃の少なくとも1つは、上方に凸の曲線である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項5】
側面視において、前記複数の分断上切刃の少なくとも1つは、下方に凸の曲線である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記側面は、厚み方向に沿って前記下面まで延びる少なくとも1つの下凹部をさらに有し、
前記下面と前記側面との交線部に位置し且つ前記少なくとも1つの下凹部により分断されてなる複数の分断下切刃と、をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項7】
前記側面は、
前記側面の幅方向に沿って連続する肉厚部をさらに有し、
前記少なくとも1つの上凹部と前記少なくとも1つの下凹部とは、前記側面の幅方向に沿って連続する肉厚部を介して、互いに離隔しており、
前記肉厚部を通り前記中心軸に垂直な第1直線のうち、前記肉厚部と前記中心軸との間の距離をD1、
前記複数の分断上切刃の少なくとも1つを通り前記中心軸に垂直で且つ前記第1直線に平行な第2直線のうち、前記複数の分断上切刃の前記少なくとも1つと前記中心軸との間の距離をD2としたとき、
前記D1及び前記D2が、D1≧D2の関係を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項8】
前記複数の分断上切刃は直線部を有し、
前記肉厚部は平面部を有し、
前記直線部は前記平面部の厚み方向に沿う延長線上に位置し、
前記中心軸を含み且つ前記直線部に平行な断面と前記平面部とは、互いに平行である、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの上凹部は、前記側面に位置する下端部を有し、
前記少なくとも1つの下凹部は、前記側面に位置する上端部を有し、
側面視において、前記下端部は前記上端部よりも前記上面側に位置し、前記肉厚部は前記上端部と前記下端部との間に位置する、請求項7又は8に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの上凹部は、前記側面に位置する下端部を有し、
前記少なくとも1つの下凹部は、前記側面に位置する上端部を有し、
側面視において、前記下端部は前記上端部よりも前記下面側に位置する、請求項7又は8に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの下凹部は、上面視において、前記側面の対角線の交点を通り且つ前記中心軸に垂直な基準線を軸にして反転させたとき、前記反転前の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つと重なる、請求項6〜10のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項12】
前記少なくとも1つの下凹部は、上面視において、前記基準線を軸にして反転させたとき、前記反転前の前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置する、請求項6〜11のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項13】
前記上面の色と前記下面の色とが、互いに異なる、請求項6〜12のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項14】
前記上面は略多角形であり、
前記側面は、前記上面の前記略多角形の各辺にそれぞれ接続された、複数の分割側面を有し、
前記少なくとも1つの上凹部は複数の上凹部を有し、
前記複数の分割側面のそれぞれに、前記複数の上凹部の少なくとも1つ、及び、前記複数の上凹部の前記少なくとも1つにより分断されてなる前記複数の分断上切刃、が位置している、請求項1〜13のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の切削インサートと、
前記切削インサートが装着されるホルダと、を備える、切削工具。
【請求項16】
前記切削インサートは、前記上面から前記下面まで貫通する貫通孔をさらに備え、前記貫通孔に挿入される固定部材を用いてホルダに装着される、請求項15に記載の切削工具。
【請求項17】
前記切削インサートは、前記第2分断上切刃の前記第1端部と前記第1分断上切刃の前記第2端部とを結ぶ第3直線が、前記側面から透視したときに、前記ホルダの中心軸に対して平行か、又は正方向に傾斜した状態で前記ホルダに装着される、請求項15又は16に記載の切削工具。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の複数の切削インサートと、
前記複数の切削インサートが装着されるホルダと、を備え、
前記複数の切削インサートのうち2つの切削インサートは、互いの前記上面と前記下面とを反対向きにし、前記ホルダの同一円周に沿って見た時に、一方の切削インサートの前記少なくとも1つの下凹部が、他方の切削インサートの前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置するような状態で、前記ホルダに装着される、切削工具。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載の切削工具を前記ホルダの中心軸を中心に回転させる工程と、
回転している前記切削工具の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つ又は前記複数の分断下切刃の少なくとも1つを、被削材の表面に接触させる工程と、
前記被削材から前記切削工具を離隔する工程と、を備える、被削材の切削方法。
【請求項1】
上面と、
下面と、
前記上面と前記下面との間に位置し、厚み方向に沿って前記上面まで延びる少なくとも1つの上凹部を有する、側面と、
前記上面と前記側面との交線部に位置し、前記少なくとも1つの上凹部により分断されてなる、複数の分断上切刃と、を備える切削インサートであって、
前記複数の分断上切刃のそれぞれは、
一端に位置する第1端部と、他端に位置する第2端部と、を有するとともに、
側面視において、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記下面に近づくように傾斜し、
前記複数の分断上切刃は、
第1分断上切刃と、該第1分断上切刃の前記第2端部に前記少なくとも1つの上凹部の1つを介して隣接する第2分断上切刃と、を有し、
前記第2分断上切刃の前記第1端部は、側面視において、
前記第1分断上切刃を前記第2分断上切刃側に延長した延長線と、前記第2分断上切刃の前記第1端部を通り且つ切削インサートの中心軸に平行な線との交点よりも上方に位置する、切削インサート。
【請求項2】
前記複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、
側面視において、前記複数の分断上切刃は、前記中心軸の垂線を基準にした前記各直線の傾斜角度が、前記第1分断上切刃側から前記第2分断上切刃側の方向に向かうにつれて順に小さくなる関係を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記複数の分断上切刃はそれぞれ直線であり、
側面視において、前記複数の分断上切刃は、前記中心軸の垂線を基準にした前記各直線の傾斜角度が、前記第1分断上切刃側から前記第2分断上切刃側の方向に向かうにつれて順に大きくなる関係を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項4】
側面視において、前記複数の分断上切刃の少なくとも1つは、上方に凸の曲線である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項5】
側面視において、前記複数の分断上切刃の少なくとも1つは、下方に凸の曲線である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記側面は、厚み方向に沿って前記下面まで延びる少なくとも1つの下凹部をさらに有し、
前記下面と前記側面との交線部に位置し且つ前記少なくとも1つの下凹部により分断されてなる複数の分断下切刃と、をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項7】
前記側面は、
前記側面の幅方向に沿って連続する肉厚部をさらに有し、
前記少なくとも1つの上凹部と前記少なくとも1つの下凹部とは、前記側面の幅方向に沿って連続する肉厚部を介して、互いに離隔しており、
前記肉厚部を通り前記中心軸に垂直な第1直線のうち、前記肉厚部と前記中心軸との間の距離をD1、
前記複数の分断上切刃の少なくとも1つを通り前記中心軸に垂直で且つ前記第1直線に平行な第2直線のうち、前記複数の分断上切刃の前記少なくとも1つと前記中心軸との間の距離をD2としたとき、
前記D1及び前記D2が、D1≧D2の関係を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項8】
前記複数の分断上切刃は直線部を有し、
前記肉厚部は平面部を有し、
前記直線部は前記平面部の厚み方向に沿う延長線上に位置し、
前記中心軸を含み且つ前記直線部に平行な断面と前記平面部とは、互いに平行である、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの上凹部は、前記側面に位置する下端部を有し、
前記少なくとも1つの下凹部は、前記側面に位置する上端部を有し、
側面視において、前記下端部は前記上端部よりも前記上面側に位置し、前記肉厚部は前記上端部と前記下端部との間に位置する、請求項7又は8に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの上凹部は、前記側面に位置する下端部を有し、
前記少なくとも1つの下凹部は、前記側面に位置する上端部を有し、
側面視において、前記下端部は前記上端部よりも前記下面側に位置する、請求項7又は8に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの下凹部は、上面視において、前記側面の対角線の交点を通り且つ前記中心軸に垂直な基準線を軸にして反転させたとき、前記反転前の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つと重なる、請求項6〜10のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項12】
前記少なくとも1つの下凹部は、上面視において、前記基準線を軸にして反転させたとき、前記反転前の前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置する、請求項6〜11のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項13】
前記上面の色と前記下面の色とが、互いに異なる、請求項6〜12のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項14】
前記上面は略多角形であり、
前記側面は、前記上面の前記略多角形の各辺にそれぞれ接続された、複数の分割側面を有し、
前記少なくとも1つの上凹部は複数の上凹部を有し、
前記複数の分割側面のそれぞれに、前記複数の上凹部の少なくとも1つ、及び、前記複数の上凹部の前記少なくとも1つにより分断されてなる前記複数の分断上切刃、が位置している、請求項1〜13のいずれかに記載の切削インサート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の切削インサートと、
前記切削インサートが装着されるホルダと、を備える、切削工具。
【請求項16】
前記切削インサートは、前記上面から前記下面まで貫通する貫通孔をさらに備え、前記貫通孔に挿入される固定部材を用いてホルダに装着される、請求項15に記載の切削工具。
【請求項17】
前記切削インサートは、前記第2分断上切刃の前記第1端部と前記第1分断上切刃の前記第2端部とを結ぶ第3直線が、前記側面から透視したときに、前記ホルダの中心軸に対して平行か、又は正方向に傾斜した状態で前記ホルダに装着される、請求項15又は16に記載の切削工具。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の複数の切削インサートと、
前記複数の切削インサートが装着されるホルダと、を備え、
前記複数の切削インサートのうち2つの切削インサートは、互いの前記上面と前記下面とを反対向きにし、前記ホルダの同一円周に沿って見た時に、一方の切削インサートの前記少なくとも1つの下凹部が、他方の切削インサートの前記少なくとも1つの上凹部と交互に且つ隙間を介して位置するような状態で、前記ホルダに装着される、切削工具。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載の切削工具を前記ホルダの中心軸を中心に回転させる工程と、
回転している前記切削工具の前記複数の分断上切刃の少なくとも1つ又は前記複数の分断下切刃の少なくとも1つを、被削材の表面に接触させる工程と、
前記被削材から前記切削工具を離隔する工程と、を備える、被削材の切削方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−25407(P2011−25407A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226883(P2010−226883)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2010−525087(P2010−525087)の分割
【原出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2010−525087(P2010−525087)の分割
【原出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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