説明

切削工具再研磨装置

【課題】切削工具1個当たりの研磨加工に要する時間が短く安定したムラの無い研磨加工が可能であり製造コストの低い切削工具再研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明の切削工具再研磨装置100は、割出し回転テーブル1と、該割出し回転テーブル1上に設置される複数の切削工具9を前記割出し回転テーブル1に固定支持する複数の固定支持手段3と、前記切削工具に研磨液8を投射する投射ノズル2と、を備え、前記切削工具9に前記研磨液8を投射して所定数の前記切削工具9を再研磨する工程を反復させて、複数の前記切削工具9を再研磨することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具再研磨装置に関し、特にスローアウェイチップ再研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交換可能型切削工具であるスローアウェイチップでは、切れ味が落ちる度に再研磨して複数回使用されるのが常である。スローアウェイチップとしては、例えば特許文献1にも示されているように、すくい面9aを備える面で三角形状(例えば一辺Dが12mm)をしており、厚さ(逃げ面9b方向)3〜5mm程度のものが使用されている(図5参照)。そして、再研磨は、三角形先端の3箇所のすくい面9aを対象として行われる。
【0003】
従来は、例えば特許文献2に記載のような方法で再研磨を行っていた。すなわち、スローアウェイチップを研磨用保持具に装着し、スローアウェイチップを自転させながら研磨ブラシを公転させてホーニング研磨加工を行う。この方法により複数のスローアウェイチップを同時研磨する場合には、同数の研磨用保持具が必要となる。この研磨用保持具は外形が大きく製造コストも高い。
【0004】
そして、スローアウェイチップを自転させながら研磨を行うので、研磨加工に要する時間も長くなる。さらに、研磨ブラシを用いてホーニング研磨加工を行うため、長期の使用による研磨ブラシの変形磨耗等により研磨にムラが生じやすい。これを防ぐには、研磨ブラシの定期的交換が必要となる。
【0005】
【特許文献1】実公昭57−50164号公報
【特許文献2】特開平9−239646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削工具1個当たりの研磨加工に要する時間が短く安定したムラの無い研磨加工が可能であり製造コストの低い切削工具再研磨装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の切削工具再研磨装置を提供する。
請求項1に記載の発明によれば、本発明の切削工具再研磨装置(100)は、割出し回転テーブル(1)と、該割出し回転テーブル(1)上に設置される複数の切削工具(9)を前記割出し回転テーブル(1)に固定支持する複数の固定支持手段(3)と、前記切削工具に研磨液(8)を投射する投射ノズル(2)と、を備え、前記切削工具(9)に前記研磨液(8)を投射して所定数の前記切削工具(9)を再研磨する工程を反復させて、複数の前記切削工具(9)を再研磨することを特徴とする。
【0008】
切削工具に研磨液(8)を投射して所定数の切削工具(9)の複数箇所を同時に再研磨するため、切削工具(9)を自転させる必要は無く、研磨の質も一定で高品質のものが短時間で得られる。そして、所定数の切削工具(9)を再研磨する工程を反復させて、複数の切削工具(9)を再研磨するため、切削工具再研磨装置(100)の製造コストを低く抑えることが可能となり、研磨の質も一定となる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、本発明の切削工具再研磨装置(100)は、前記切削工具(9)は多角形の形状をしており、前記切削工具(9)の再研磨箇所(9a)は前記多角形の頂点近傍であり、前記固定支持手段(3)がその上部に多角錐(3a)を備え、
該多角錐の各側面が前記切削工具(9)の前記再研磨箇所(9a)の各々に研磨液(8)を案内するように前記多角錐(3a)が、前記切削工具(9)の再研磨箇所(9a)に対して位置付けられるように、前記固定支持手段(3)が前記回転テーブル(1)に固定されることを特徴とする。
【0010】
この構造により、研磨液(8)は、投射が始まると、固定支持手段(3)の多角錐(3a)の側面(3a)に案内されて、均等に分流してこれを駆け下り、切削工具(9)の複数の再研磨箇所(9a)に均等に衝突する。これにより、切削工具(9)が有する複数の再研磨箇所(9a)が同時に均等に再研磨されることが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、本発明の切削工具再研磨装置(100)は、前記回転テーブル(1)には、前記切削工具(9)の外形を転写した凹部が形成されており、該凹部に前記切削工具(9)が収納設置され、前記固定支持手段(3)は、上部に前記多角錐(3a)が形成され下部に円柱(3b)が形成され、該円柱(3b)には軸方向に沿って平面部(3c)が形成され、前記回転テーブル(1)にはさらに溝が形成されており、該溝の内側面が前記平面部(3c)に当接して、前記固定支持手段(3)の周方向(F)位置が決まることを特徴とする。
【0012】
この構造により、切削工具(9)と多角錐(3a)との相対的位置を決めることが可能となり、取付け取外しの容易な切削工具(9)の固定支持手段(3)が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る切削工具再研磨装置の側面図である。図2は、本発明に係る切削工具再研磨装置の上面図であり、本発明に係る切削工具再研磨装置を図1のA方向より視た図である。図5(a)は再研磨の対象となるスローアウェイチップの平面図であり、図5(b)はスローアウェイチップの側面図である。
【0014】
(第1実施形態)
図1、図2に示すように、本発明の第1実施形態の切削工具再研磨装置100は、切削工具であるスローアウェイチップ9を再研磨する装置である。図5に示すように、スローアウェイチップ9は、三角形の外形を有する板状物体である。その三角形の一辺Dは例えば12mmであり、その板厚は例えば5mmである。スローアウェイチップ9の三角形の中心には円形の孔9cが形成されている。孔9cは精密に加工されて所定寸法の直径を有している。スローアウェイチップ9は、三角形の各頂点にすくい面9aを備え、すくい面9aに対して略直角方向に逃げ面9bを備える。すくい面9aはその外周部に切れ刃を形成しており、再研磨は三角形先端の3箇所のすくい面9aを対象にして行う。
【0015】
切削工具再研磨装置100は、スローアウェイチップ9のすくい面9aに研磨液8を投射して複数(例えば16個)のスローアウェイチップ9を再研磨する工程を、シーケンス制御によりチップ9につき1個毎に連続して実行する。
【0016】
研磨液8としては、例えば焼成シリカやコロイダルシリカ(研磨砥粒)、アミン(加工促進材)および有機高分子などを混合したものが採用される。コロイダルシリカは、珪酸微粒子が凝集しないで一次粒子のまま水中に分散した透明もしくは不透明の乳白色のコロイド液の形で提供される。この研磨液8を、投射ノズル2を介してチップ9のすくい面9aに向けて高速で投射し、研磨液8がすくい面9aに衝突することにより、すくい面9aが研磨砥粒により再研磨される。この研磨液8を投射する時間は、スローアウェイチップ1個当たり例えば15秒である。
【0017】
切削工具再研磨装置100は、割出し回転テーブル1を備える。割出し回転テーブル1上には、スローアウェイチップ9の外形を陰陽反転させて概略的に転写した凹部1aが例えば周方向等間隔に割出されて16個形成されており、凹部1aにチップ9が挿入(収納)される。これにより、挿入されたチップ9は、凹部1aの側壁に阻まれるので、その周方向(図2、図4においてF方向)に回動することは無くなる。チップ9は、回転テーブル1の凹部1aに挿入された後、固定ピン3により支持されながら回転テーブル1に固定される。
【0018】
回転テーブル1の下には、回転軸7を介してモーターMが設置されている。モーターMの下には、台座4を介してジャッキ5が設置されている。モーターMは、一つのスローアウェイチップ9の再研磨が完了する毎に、所定の割出し角度例えば22.5°(360°/16個)、回転軸7を介して回転テーブル1を回転させる。モーターMは、制御用サーボモーターであり、ステッピングモーターを採用しても良い。また、ジャッキ5は回転テーブル1の地上からの高さ位置を調整するためのものである。各種操作は、ダイアル6を使用して行う。
【0019】
回転テーブル1の上には、研磨液8を投射するための投射ノズル2が設置されている。投射ノズル2のスローアウェイチップ9に対する距離は調節可能になっている。そして、図1に示すように、投射ノズル2と固定ピン3との距離Lは、例えば30mmに調節されている。
【0020】
図3、図4にチップ9の固定支持手段である固定ピン3を示す。図3は、固定ピン3の側面図である。図4は固定ピン3の上面図であり、図3においてB方向から視た図である。図3、図4ともに、スローアウェイチップ9が模式的に仮想線で表されている。そして、図3、図4における固定ピン3とチップ9との相対的位置関係は、両者が回転テーブル1に取付けられている状態のものである。固定ピン3は、図3に示すように、上部に三角錐3aが形成され下部に円柱3bが形成されている。三角錐3aにおける底面に対する側面の傾斜角Cは、例えば30°である。円柱3bには軸方向に沿って平面部3cが軸を基準として対称に2面形成されている。
【0021】
チップ9が回転テーブル1の凹部1aに挿入された後、固定ピン3は、チップ9の孔9cをガイドにしながら、円柱3bを摺動させて回転テーブル1に差し込まれる。一方、回転テーブル1には、固定ピン3を固定させるための溝(図示せず)が形成されている。固定ピン3が回転テーブル1に差し込まれると、該固定用溝の内側面が固定ピン3の平面部3cに当接する。固定ピン3の平面部3cにより形成される二面幅と、回転テーブル1の溝幅は精密な寸法で仕上がっており、嵌め合いが可能となっている。これにより、固定ピン3を回転テーブル1に差し込むと、チップ9が回転テーブル1に固定支持されると同時に、固定ピン3の周方向位置が決まる。
【0022】
図4に示すように、固定ピン3の上部に形成された三角錐3aは、図4に示すように、その底面の有する三つの頂点3aaが、スローアウェイチップ9の三角形の頂点9dと約120度の角度を成している。すなわち、回転テーブル1の凹部1aと固定用溝は、この120度の角度を達成可能なように形成されることとなる。
【0023】
次に、切削工具再研磨装置100の作動方法を説明する。
まず、スローアウェイチップ9を16個分、回転テーブル1の凹部1aに挿入する。次に、固定ピン3を16個分、チップ9の孔9cをガイドにして固定用溝に差し込む。これにより、チップ9が回転テーブル1に固定されることとなる。
【0024】
そして、投射ノズル2の直下にチップ9の中心が位置するように、回転テーブル1を回転させて、この位置を加工開始地点に設定し初期化をする。次に、投射ノズル2の直下にセットされた1個のチップ9に対する研磨液8の投射を開始する。投射時間は例えば15秒である。投射が始まると、図4に示すように、研磨液8は、固定ピン3の三角錐3aの三つの側面3aに案内されて、均等に分流してこれを駆け下り、チップ9の三つの頂点9d(すくい面9a)に均等に衝突する。これにより、チップ9が有する三つのすくい面9aが同時に均等に再研磨されることが可能となる。投射が終わると1個のチップ9の再研磨が完了する。
【0025】
1個のチップ9の再研磨が完了すると、回転テーブル1を、E方向(図2参照)に所定の割出し角度例えば22.5°(360°/16個)回転させる。すると、今度は再研磨が完了したチップ9に隣接する別のチップ9が投射ノズル2の直下に位置するようになる。別のチップ9に対して、同様な方法で研磨液8を投射させて再研磨を実行する。後はこの繰り返しであり、16回、このような工程を反復させて連続的に実行すると、回転テーブル1に設置された16個のチップ9は、再研磨が完了する。
【0026】
なお、再研磨完了後に、回転テーブル1の下側に顔を覗かせている固定ピン3の下部3b(図1参照)を押すと、固定ピン3が回転テーブル1から離れ、チップ9を取外すことが可能となる。
【0027】
(他の実施形態)
第1実施形態では、三角形のスローアウェイチップについて説明したが、四角形、五角形、その他の多角形でも同様であり、この場合はそれぞれ固定ピンの頭部を四角錐、五角錐、その他の多角錐にすれば、チップが有する複数のすくい面が同時に均等に再研磨されることが可能となる。
また、投射ノズルを1個ではなく、2個、3個その他の多数個設置すれば再研磨が短時間で済むことはいうまでも無い。
【0028】
以上のように、切削工具1個当たりの研磨加工に要する時間が短く安定したムラの無い研磨加工が可能であり製造コストの低い切削工具再研磨装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る切削工具再研磨装置の側面図である。
【図2】本発明に係る切削工具再研磨装置の上面図である。
【図3】本発明に係る固定支持手段の側面図である。
【図4】本発明に係る固定支持手段の上面図である。
【図5】(a)は切削工具の平面図であり、(b)は切削工具の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
100 切削工具再研磨装置
1 回転テーブル
2 投射ノズル
3 固定ピン(固定支持手段)
8 研磨液
9 スローアウェイチップ(切削工具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
割出し回転テーブル(1)と、
該割出し回転テーブル(1)上に設置される複数の切削工具(9)を前記割出し回転テーブル(1)に固定支持する複数の固定支持手段(3)と、
前記切削工具に研磨液(8)を投射する投射ノズル(2)と、を備え、
前記切削工具(9)に前記研磨液(8)を投射して所定数の前記切削工具(9)を再研磨する工程を反復させて、複数の前記切削工具(9)を再研磨することを特徴とする切削工具再研磨装置(100)。
【請求項2】
前記切削工具(9)は多角形の形状をしており、前記切削工具(9)の再研磨箇所(9a)は前記多角形の頂点近傍であり、前記固定支持手段(3)がその上部に多角錐(3a)を備え、
該多角錐の各側面が前記切削工具(9)の前記再研磨箇所(9a)の各々に研磨液(8)を案内するように前記多角錐(3a)が、前記切削工具(9)の再研磨箇所(9a)に対して位置付けられるように、前記固定支持手段(3)が前記回転テーブル(1)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の切削工具再研磨装置(100)。
【請求項3】
前記回転テーブル(1)には、前記切削工具(9)の外形を転写した凹部が形成されており、該凹部に前記切削工具(9)が収納設置され、
前記固定支持手段(3)は、上部に前記多角錐(3a)が形成され下部に円柱(3b)が形成され、該円柱(3b)には軸方向に沿って平面部(3c)が形成され、
前記回転テーブル(1)にはさらに溝が形成されており、該溝の内側面が前記平面部(3c)に当接して、前記固定支持手段(3)の周方向(F)位置が決まることを特徴とする請求項2に記載の切削工具再研磨装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149241(P2010−149241A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330942(P2008−330942)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】