説明

切削工具異常検出方法

【課題】切削エネルギーを求めることにより、刃具の切削状態を検知し、事前に設定したしきい値と比較することで、刃具の異常検出する。
【解決手段】切削エネルギーを求めることにより、刃具4の切削状態を知ることができる。そして基準切削エネルギーで正規化してやることで、刃具の取り付け方やワークの材質による切削エネルギーのばらつきを抑えることができ、正規化された切削エネルギーと事前に設定したしきい値を比較することで、刃具の異常検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削加工において、切削工具の欠けや切削工具の摩耗等による加工不良品の流出を防止ならびに、切削工具の交換時期を適正に判断する為の切削工具異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具によりワークの切削加工を行う加工機械では、切削工具の摩耗による加工精度の低下を防止するために、実際に切削加工を行ったワークの測定データを基に切削工具の寿命を設定し、加工精度が安定域であるうちに切削工具の交換を行うことで切削工具並びに加工精度の管理を行っている。
【0003】
しかし、切削工具の交換時期の前に、切削工具の欠けや何らかの要因による切削工具の摩耗の増加等の問題により、ワークの加工精度が規定値から外れてしまうことがある。その場合、後の部品は全て不良品を生産することになってしまう為に切削工具の欠けや摩耗等による異常の発生を検出し、異常が発生したことを警報する様々な装置ならびに検出方法が考案されている。
【0004】
特開2006−130604号公報や特開2006−258748号公報等に代表される検出方法として、切削加工中の切削音を採取して周波数分析を行い、時間周波数領域における音信号の強弱や周波数帯域を検出して切削工具などに異常が無いかを診断する方式のものが知られているが、これらの方法は音を検出して診断を行う方式であるため、切削工具の取付方や、素材の違いにより発生する様々な切削音の中から対象とする切削音の周波数を特定しなければならず、周波数の特定に多くの工数を必要とする問題や切削工具以外の周辺装置の発する音も拾ってしまう為、診断の精度が低くならざるを得ないと言う問題を有しており、より検出精度の高い検出方法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−130604号公報
【0006】
【特許文献2】特開2006−258748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、切削加工以外の外的要因の影響を受ける事無く切削工具の異常を高精度に検出することを可能とした切削工具の異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークを刃具で切削するときに生じる振動をセンサで検出を行う。該センサにおいて検出した信号はアンプにおいて増幅を行う。増幅された該信号は、演算装置でデジタル化され、デジタル化された振動波形が得られる。
【0009】
振動波形には、負の成分が含まれているので、負の成分の符号を変えて、正の成分とし、面積を計算して切削エネルギーを求める。
また不要なノイズ成分が含まれるので、平滑化によりノイズ成分の除去を行い、そして平滑化された振動波形から面積を求める。
【0010】
切削エネルギーは、刃具の取り付け方やワークの材質によっても得られる値が異なる。そのため、そのまま得られた切削エネルギーを比較しても正常な判定はできない。そこで、ワーク1個目から数個目までの切削エネルギーを合計して、合計切削エネルギーを求める。そして、合計したワーク個数で割ってやり、平均切削エネルギーを基準切削エネルギーとしてやる。そして、この基準切削エネルギーを用いて、切削毎に得られる切削エネルギーを基準切削エネルギーで割ってやることで、正規化される。これにより、刃具の取り付け方やワークの材質による切削エネルギーのばらつきを抑えることができる。
【0011】
次に正規化された各切削エネルギーを事前に設定したしきい値と比較する。正規化された切削エネルギーがしきい値以内であれば、正常な切削状態であると判定し、しきい値を越えたならば、異常切削と判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切削エネルギーを求めることにより、刃具の切削状態を知ることができる。そして基準切削エネルギーで正規化してやることで、刃具の取り付け方やワークの材質による切削エネルギーのばらつきを抑えることができ、正規化された切削エネルギーと事前に設定したしきい値を比較することで、刃具の異常検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、刃具の異常を検出するための構成である。センサ1は、刃具4の固定台に取り付けられており、信号を伝達するための電線でアンプ2と接続されている。アンプ2は、センサ1によって発生した微弱な電気信号を増幅するためのものである。アンプ2によって増幅された電気信号は、演算装置3に伝達される。演算装置3には、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器が装備されており、AD変換器によりアンプ2からのアナログ信号をデジタル信号に変換して、演算装置3が演算しやすい信号の形態にしてやる。
【0014】
次に本発明の動作を説明する。刃具4がワーク5を切削することで生じる切削振動をセンサ1で電気信号として変換する。次にセンサ1で発生した電気信号は微弱であるため、アンプ2で増幅してやり、演算装置3に信号を送る。演算装置3は、AD変換によって演算が容易なデジタル信号に変換して、振動波形を取り込む。図2(a)は、演算装置3内部に取り込まれた振動波形である。次に図2(a)から面積を求めるために負の成分を正に反転してやる。すると図2(b)が得られる。次に図2(b)からノイズ成分を除去して、平滑化してやることで、図2(c)が得られる。そして図2(c)より面積を求めることで、切削エネルギーが求められる。次に初期の切削データ数個分より、基準切削エネルギーを求める。この基準切削エネルギーを用いて、切削毎の切削エネルギーを正規化してやる。図3か正規化された切削エネルギーを切削毎にプロットしたものである。ここで、事前に設定したしきい値と比較して、プロットがしきい値の範囲内であれば正常切削であり、しきい値の範囲外であれば、切削異常と判定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の刃具の異常を検出するための構成を説明する説明図
【図2】演算装置3に取り込まれた波形および演算装置3によって処理された波形を示す図
【図3】正規化された切削エネルギーを切削毎にプロットした図
【符号の説明】
【0016】
1 センサ
2 アンプ
3 演算装置
4 刃具
5 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工において、加工中に生じる加工負荷の振動波形をエネルギーとして変換し、基準切削エネルギーと各切削時の切削エネルギーを比較することで、切削異常を検出することを特徴とする異常検出方法。
【請求項2】
切削エネルギーとして、振動波形の面積を計算し、その面積の差または比によって切削異常を検出することを特徴とする請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
初期の切削波形から基準となる切削エネルギーを算出し、算出した基準切削エネルギーと切削毎に算出される切削エネルギーとの差または比によって切削異常を検出する請求項1に記載の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−105082(P2010−105082A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277506(P2008−277506)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(591113024)株式会社近藤製作所 (33)
【Fターム(参考)】