説明

切削装置および切削機

【課題】地中連続壁工法の壁面の凹部等を、手作業を必要とせず、作業時間を短縮ができ、作業性良好に切削できる切削装置を実現すること。
【解決手段】屈伸ブーム82の先端に、横軸83により上下方向回動自在に軸支せしめた第1のブラケット2と、第1のブラケット2に縦軸50により左右方向回動自在に軸支せしめた第2のブラケット3と、第2のブラケット3にその先端から前側かつ下向きに先の曲がった鉤状に突出し、基端から突出端42にかけて所定の横幅に形成され、かつ上記基端から突出端42へかけて漸次、厚さ寸法を薄くして突出端縁が先細り状で、突出端42の湾曲内周面43側に着脱可能の硬質のケレン刃4aを備えたケレン部材4とからなる切削装置1を構成し、ケレン部材4により地中連続壁工法の壁面等に付着している土等の異物を取り除くようになした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁工法の壁面等に付着している土等の異物を取り除く切削装置およびこの切削装置を搭載した切削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中連続壁工法、特にSMW工法では、地中に埋め込まれたH鋼まわりの壁面沿いを切削する作業には、俯仰ブームと屈伸ブームとからなる俯仰屈伸ブームを備えたクローラ等の自走式車両の上記俯仰屈伸ブームの先端に装備する回転切削ドラム式の切削装置が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8はこの種の切削装置の従来の代表例を示し、従来の切削装置7は、上記屈伸ブーム82の前端に横軸83により上下方向回動自在に軸支された第1のブラケット71と、第1のブラケット71に縦軸72により左右方向回動自在に軸支された第2のブラケット73が設けられ、第2のブラケット73の先端に、外周に複数のビット75を有する回転切削ドラム74が回転可能に軸支されている。図の76は第1のブラケット71に対して第2のブラケット73を左右方向に回動せしめる伸縮自在の油圧シリンダである。
【0004】
回転切削ドラム74は油圧モーター77により回転し、上記壁面沿いを切削する。尚、下記特許文献1の装置では、回転切削ドラム74の側面沿いに、ドラム74の切削面側に突出してドラム74による切削深さのレベルを規制するレベルゲージ78が設けられ、これにより、切削する壁面に予め切削基準面を形成しておき、該基準面に上記レベルゲージ78の先端が突き当たった状態で切削深さが規制され、壁面Wを均一に切削すようにしている。
【0005】
また、地中連続壁工法の地中に埋め込まれた金属板からなるシートパイル等で構築され、凸部と凹部とが横方向に連続する断面波形状をなす壁面沿いを切削する作業では、従来、俯仰屈伸ブームの先端にバッケトが装備されたバックホー等の土木重機を用いて切削することが行われている。
【特許文献1】特許第2876308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に上記バックホーのバッケトでは横幅がシートパイルPからなる壁面の凹部の横幅よりも大きいので、上記バックホーのバッケトで壁面の凹部内を切削することが困難である。また上記回転ドアラム式の切削装置7でもその横幅が凹部よりも大きいので切削作業が困難である。従って、壁面の凹部内を切削するには、作業員が長尺棒状の柄の先端にケレン刃を設けたケレン道具を用いて手作業で切削することが行われており、手作業では、作業時間および作業手間が大きくかかり、作業員の疲労が大きく、更に、作業員は上記バックホーや上記切削装置7を備えたクローラ等の土木重機の付近での作業となり危険が大きいといった問題点があった。
【0007】
また、従来では、図9に示すように、バックホーの屈伸ブーム82に装備されたバケット9の先端縁に上記壁面Wの凹部の形状に合うように金属板からなる先端具91を着脱可能に取付けて凹部内を切削することが考えられるが、バケット9は屈伸ブーム82に対して上下方向に回動可能であるが、左右方向に向きを変えることができず、凹部内を大まかに切削することはできるが、凹部のコーナー部付近等の細かい部分の切削が困難で切削残しが生じ、最終的に作業員が手作業で仕上げなければならない。また先端具91の着脱作業に手間がかかる。
【0008】
そこで本発明は、地中連続壁工法の壁面の凹部等を切削する場合に、手作業を必要とせず作業時間の大幅な短縮ができ、かつ作業性良好に切削作業ができる切削装置および切削機を実現することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、俯仰ブームと、その先端に設けた屈伸ブームとからなる俯仰屈伸ブームの上記屈伸ブームの先端に付設する切削装置であって、屈伸ブームの先端に、横軸により基端を上下方向回動自在に軸支せしめた第1のブラケットと、該第1のブラケットの先端に縦軸により基端を左右方向回動自在に軸支せしめた第2のブラケットとを備え、該第2のブラケットには、その先端から前側かつ下向きに先の曲がった鉤状に突出し、第2のブラケット側の基端から突出端にかけて所定の横幅に形成され、かつ上記基端から突出端へかけて漸次、厚さ寸法を薄くして突出端縁が先細り状で、突出端には湾曲内周面側に着脱可能の硬質のケレン刃を備えたケレン部材を設ける。これによれば、第1および第2のブラケットにより上下かつ左右方向に回動可能な装置の先端に鉤状のケレン部材を設定したので、ケレン部材により地中連続壁工法の壁面等に付着している土等の異物を好適に取り除くことができ、従来のように作業員が手作業せずにすむ。
【0010】
請求項2の発明では、上記ケレン部材には湾曲形状の外周部に、ケレン部材の突出端縁から所定の間隔をおいて、上記外周部の横幅方向に沿って設けられ、外周方向へなだらかな断面ほぼ山形に突出して、上記壁面等の土等の異物を取り除くケレン作業時に上記壁面等に当接可能な突起を設ける。これによれば、ケレン部材の突出端を下方かつ手前に回動させながら土等の異物をかき落とすときに、ケレン部材の突起が壁面に当接し、壁面に対する摺動抵抗を小さくできるのでケレン作業を容易にできる。
【0011】
請求項3の発明では、上記ケレン部材の横幅を、上記壁面等の縦方向に延びる凹部および凸部を構成する金属板からなるシートパイルの上記凹部の横幅に合わせて、上記ケレン部材の突出端を上記凹部に挿入可能に設ける。これによれば、壁面の凹部内に付着している土等の異物を好適に取り除くことができる。
【0012】
請求項4の発明では、上記ケレン部材を、上記凹部の横幅の異なる形状の複数種類の各シートパイルに合わせ、横幅の異なるものを複数種類設ける。各ケレン部材を上記第2のブラケットに着脱可能に設ける。これによれば、作業現場の壁面を構成するシートパイルに合わせケレン部材を選択でき、好適なケレン作業ができる。
【0013】
請求項5の発明では、上記ケレン刃を、その横幅を上記ケレン部材の本体の突出端の横幅よりも幅広とし、かつケレン刃の突出端縁を上記本体の突出端縁の長さ寸法よりも長くし、上記本体よりも張り出すケレン刃の左右の側端縁および上記突出端縁を先細り状に形成する。これによれば、ケレン刃により壁面の凹部内に付着している土等の異物を好適に取り除くことができる。
【0014】
請求項6の発明では、上記ケレン刃を、上記凹部の横幅の異なる形状の複数種類の各シートパイルに合わせ、横幅の異なるものを複数種類設け、各ケレン刃を上記ケレン部材の突出端に着脱可能に設ける。これによれば、作業現場の壁面をなすシートパイルに合わせケレン刃を選択でき、好適なケレン作業ができる。
【0015】
請求項7の発明では、上記第2のブラケットを第1のブラケットに対して所定の回動位置に保持せしめる回動保持機構により回動させるように構成する。上記回動保持機構として、上記縦軸の外周に設けられて縦軸と一体に回動可能なギヤと、該ギヤに噛合せしめたラックロッドと、該ラックロッドを駆動して上記ギヤを一方の回動方向へ回動せしめる第1のアクチュエ−タと、これとは逆に上記ラックロッドを駆動して上記ギヤを他方の回動方向へ回動せしめる第2のアクチュエ−タとを備えた機構を用いる。これによれば、回動保持機構によりケレン部材の所定位置への回動および回動位置の保持が好適にできる。特に、ケレン部材にこれを回動させようとする外力が作用しても不要な回動を防止できる。
【0016】
請求項8の発明は、俯仰ブームと屈伸ブームとからなる俯仰屈伸ブームを備えたクローラ等の自走式車両の上記屈伸ブームに、上記切削装置を付設した切削機である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に基づいて本発明の切削装置を説明する。切削装置1は第1のブラケット2、第2のブラケット3および第2のブラケット3に設けたケレン部材4を備えている。第1のブラケット2は基端側に左右一対の軸受け片21が形成してあり、両軸受け片21にはそれぞれ二つの軸受け22,23が設けてある。第1のブラケット2の先端側には軸受け部24が形成してあり、これに回動保持機構5の縦軸50を設けて第2のブラケット3を左右方向に回動自在に軸支してある。
【0018】
第2のブラケット3は先端側に平坦な四角形状の厚肉金属板からなる座板31が設けてあり、座板31の背面には上下に軸受け片32a,32bが設けてある。第2のブラケット3は、上側の軸受け片32aに上記回動保持機構5を取付け、その縦軸50を第1のブラケット2の軸受け部24に嵌入せしめるとともに、縦軸50の下端部に第2のブラケット3の下側の軸受け片32bが支持してある。
【0019】
第2のブラケット3には座板31を介して前方へ突出するようにケレン部材4が取付けてある。ケレン部材4は横方向の断面形状がほぼロ字状をなす中空構造で、第2のブラケット3の座板31に重ね合わせた根元のベース板41から前側かつ下向きに先の曲がった鉤状に形成してある。
【0020】
ケレン部材4の横幅は、ベース板41から突出端42にかけて若干先細りとしてあり、突出端42が地中連続壁工法の壁面WをなすシートパイルP(図4)の凹部内へ挿入可能な所定の横幅に形成してあり、約200mmに設置してある。またケレン部材4の厚みは、ベース板41から突出端42へかけて漸次、厚みを薄くして突出端42の端縁を鋭利な形状に形成してある。
【0021】
ケレン部材4には、突出端42の湾曲形状の内周面43側にこれを覆うように硬質の厚肉鋼板からなるケレン刃4aを重ね合わせて固着してある。ケレン刃4aはその横幅が、ケレン部材4本体の突出端42の横幅よりも幅広くしてあり、約250mmに設置してある。ケレン部材4本体の突出端42よりも張り出すケレン刃4aの左右両側縁は、漸次肉厚を薄くした先細り状に形成してある。またケレン刃4aの突出端縁42aは、ケレン部材4本体の突出端42の端縁よりも30mm程度長くしてあり、突出端縁42aは漸次肉厚を薄くした先細り状に形成してある。ケレン刃4aは複数のボルト部材bにより締結固定して、着脱可能に設けてある。
【0022】
ケレン部材4の湾曲形状の外周面44には、突出端42の端縁から根元方向へ所定の間隔をおいた位置に、外周面44から外周方向へなだらかな断面ほぼ山形または半円弧状に突出する複数の突起45が設けてある。各突起45a,45b,45cは外周面44の横幅方向に沿って設けてあり、外周面44から頂部までの突出量は20〜30mm程度に設定してある。
【0023】
ケレン部材4は、ベース板を第2のブラケット3の背面を座板31び表面に重ね合わせて、この状態で両板材31,41の周縁部を多数のボルト部材bで締結してある。尚、ケレン部材4はボルト部材bで締結することで着脱可能としてある。
【0024】
図2(A)、(B)は回動保持機構5の一部断面とした側面図および平面図を示す。回動保持機構5は、縦軸50と、その上端外周に固着して縦軸50と一体に回動可能なギヤ51と、ギヤ51に噛合してギヤ51を回動せしめる第1および第2のラックロッド53A,53Bと、各ラックロッド53A,53Bを駆動せしめる第1のアクチュエータ54A,54Bおよび第2のアクチュエータ55A,55Bを備えている。
【0025】
上記ギヤ51は本体ケース59内の中央に設けてあり、本体ケース59の下面中央から下方へ縦軸50が突設してある。また本体ケース59内には、ギヤ51の前後位置に平行に上記第1のラックロッド53A(図2(B)の上側)および第2のラックロッド53B(図2(B)の下側)が横方向に移動可能に内設してあり、各ラックロッド53A,53Bは互いにギヤ51に噛合してある。第1および第2のラックロッド53A,53Bは矢印R、S方向に移動することでギヤ51を矢印X方向(反時計方向)へ回動させ、反矢印R、S方向に移動することでギヤ51を矢印Y方向(時計方向)回動させる。
【0026】
第1のアクチュエータ54A,54Bおよび第2のアクチュエータ55A,55Bは、油圧シリンダ装置で同一構造を有する。第1のアクチュエータ54A,54Bは第1および第2のラックロッド53A,53Bを矢印R方向、S方向に移動させるもので、第1のラックロッド53Aの一方の端部に対応する位置(図2(B)の右側)と、第2のラックロッド53Bの他方の端部に対応する位置(図2(B)の左側)に設置してある。各アクチュエータ54A,54Bはそれぞれ円筒形のシリンダ部541を備えており、各シリンダ部541内には、本体ケース59から突出する各ラックロッド53A,53Bの端末に連結したピストン542が移動可能に挿入してある。またシリンダ部541の端末は閉じてあり、該閉鎖端末にはシリンダ部541へ油圧オイルを出し入れ可能な出入口543が設けてある。
【0027】
第2の各アクチュエータ55A,55Bは、第1のラックロッド53Aの他方の端部(図2(B)の左側)と、第2のラックロッド53Bの一方の端部(図2(B)の右側)に設けてあり、各ラックロッド53A,53Bの端末に連結したピストン552がシリンダ部551内に移動可能に挿入してある。
【0028】
回動保持機構5は、第1の両アクチュエータ54A,54Bを駆動することによりピストン542が押されて第1および第2の各ラックロッド53A,53Bを矢印R、S方向へ移動させる。このとき、第2の両アクチュエータ55A,55Bは油圧オイルの出入口553を開放しておき、油圧オイルが抜けるようにしておく。両ラックロッド53A,53Bの矢印R、S方向への移動により、ギヤ51と一体に縦軸50が矢印X方向へ回動する。逆に、第2の両アクチュエータ55A,55Bを駆動させ、両ラックロッド53A,53Bを反矢印R、S方向への移動させることにより、ギヤ51と縦軸50が矢印Y方向へ回動する。
【0029】
また回動保持機構5は、非作動時に第1および第2の各アクチュエータ54A,54B,55A,55Bの各出入口543,553が閉鎖され油圧が抜けないので、各ラックロッド53A,53Bは両側から保持され移動せず、ギヤ51および縦軸50は所定の回動位置に保持される。
【0030】
切削装置1は、回動保持機構5の本体ケース59側を第2のブラケット3に固定し、縦軸50が第1のブラケット2に固定してあり、回動保持機構5作動時には、第1のブラケット2に固定された縦軸50が回動するのではなく、第2のブラケット3と一体に本体ケース59側が回動する。切削装置1の左右の回動範囲は左右方向に約60度ずつ回動可能にとしてある。
【0031】
上記切削装置1は、図3に示すように、クローラ等の自走式車両6のターンテーブル61に基端を軸支した俯仰ブーム81と、俯仰ブーム81の先端に軸支した屈伸ブーム82で構成した俯仰屈伸ブーム8の屈伸ブーム82の先端に取付けられる。屈伸ブーム82の先端に横架した横軸83を切削装置1の第1のブラケット2の軸受け22で受けて、屈伸ブーム82の先端に上下方向に回動自在に連結される。また第1のブラケット2の軸受け23は屈伸ブーム82のシリンダ装置84の先端に連結される。シリンダ装置84の伸縮作動により切削装置1は屈伸ブーム82の先端で上下方向に回動する。
【0032】
従って、切削装置1は、屈伸ブーム82の先端において、シリンダ装置84による第1のブラケット2の上下回動にともなう横軸83を中心とする上下回動、および回動保持機構5による第2のブラケット3の左右回動にともなう縦軸50を中心とする左右揺動を、単独で行ったり、あるいは適宜組み合わせて行うことによって様々な壁面に適合することができる。
【0033】
図4、図5に基づいて切削装置1による地中連続壁工法の壁面Wの切削ケレン作業(以下、単にケレン作業という)について説明する。壁面Wは、断面ほぼハット形で縦方向に延びる金属板からなる複数のシートパイルPを互い違いに並設して凹部W1および凸部W2とが横方向に連続する断面波形状に構成されている。壁面Wは、凸部W2とほぼ面一となるように、バックホーのバケット等で切削し、その後、凹部W1内を本実施形態の切削装置1でケレン作業する。
【0034】
切削装置1は、ケレン部材4の突出端42を前方へ向け、この状態で突出端42を凹部W1内へ差し入れる。そして、差し入れつつ、突出端42を下方かつ手前側(自走車両側)へ移動させるように切削装置1全体を下向きに回動させて、突出端42の内周面43側に設けたケレン刃4aで凹部W1内の土C等をかき落とす。このかき落とし作業を凹部W1の上端側から下端側へ順次繰り返し行う。
【0035】
かき落とし作業時、ケレン部材4の外周面44に設けた断面山形または半円弧状の突起45が凹部W1の底面に接触し摺動することとなる。この場合、突起45は上記底面に対して線接触となり、摺動抵抗が小さいので、切削装置1の下向きの回動動作を円滑に行うことができる。また外周面44には突出端42側から根元のベース板41側にかけて複数の突起45を設けたので、切削装置1の回動が進むにつれ上記底面に接触摺動する突起45が順次変わっていき、外周面44本体が底面に接触することがない。
【0036】
また図6に示すように、一般に壁面Wの凹部W1は両側の側面が底面に対して開き傾斜状をなす。これに対して、切削装置1は屈伸ブーム82に対してケレン部4を第2のブラケット3から左右方向に回動可能に設けてあるので、ケレン部4を左右方向に回動させ、ケレン刃4aの側縁を凹部W1の側面の傾斜角に合わせることで、上記側面に沿って容易にケレン作業ができる。
【0037】
また、ケレン部材4は回動保持機構5により左右方向に回動させ、かつ任意の回動位置で保持させるようにしたので、回動保持機構5の回動位置での保持力が高く、上述のようにケレン部材4を斜めに向け凹部W1の側面等をケレンする際、ケレン部材4にはこれを左右に回動させようとする外力がかかるが回動保持機構5の保持力によりケレン部材4の不要な回動を防止できる。
【0038】
更に図7に示すように、ケレン部材4を左右方向に回動させることで、自走式車両およびその屈伸ブーム82を必ずしもケレン作業する壁面Wの凹部W1の正面位置に正対させなくても、屈伸ブーム82を左右方向に斜めに向け、ケレン部材4を凹部W1に正対させケレン作業できるので、自走式車両を移動させることなく複数の凹部W1を続けてケレン作業することができる。
【0039】
本実施形態によれば、切削装置1のケレン部材4により、壁面Wの凹部W1内をくまなくケレン作業することができ、コーナー部等の細部の作業仕上げができるので、従来のように作業員の手作業が不要となり、作業時間の短縮および作業手間の軽減が図れる。
【0040】
壁面Wを構成するシートパイルPは、横幅の異なるタイプが複数種類存在し、各工事現場によって凹部W1の横幅が異なる場合がある。そこで、切削装置1はケレン部材4を第2のブラケットに対して着脱可能に設けてあるので、横幅の異なる各種類のシートパイルPに合わせて、横幅の異なる複数種類のケレン部材を準備しておけば、各工事現場に合わせてケレン部材を選択できる。更に、ケレン部材4に対してケレン刃4aを着脱可能に設けたので、各種類シートパイルPに合わせて、横幅の異なる複数種類のケレン部材を準備しておけば、各工事現場に合わせてケレン刃を選択できる。またケレン刃4aが傷んだときにはこれのみを交換でき、ケレン部材4本体が傷み難いので経済的である。ケレン刃4aはケレン部材4の突出端42に取付ける際、分割構造としてもよい。例えば、突出端42の左右側縁の一方に沿う部位と、他方に沿う部位、および突出端42の突出端縁に沿う部位の3分割とすればケレン部材4への着脱作業が容易となる。
【0041】
尚、上述の実施形態はすべての点で例示であって本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は上述の実施形態を様々に変形、変更したものも含まれる。例えば、上述の実施形態では、ケレン部材4を回動保持機構5により左右方向に回動させるようにしたが、これに限らず、従来の切削装置のように伸縮式の油圧シリンダを用いてもよい。しかしながら、上記油圧シリンダより上述の回動保持機構5の方が、ケレン部材に作用する外力により回動位置が変わらないので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の切削装置を示すもので、図1(A)はその平面図、図1(B)はその側面図である。
【図2】本発明の切削装置に用いる回動保持機構を示すもので、図2(A)はその一部断面とした側面図、図2(A)はその一部断面とした平面図である。
【図3】本発明の切削装置を搭載した切削機の側面図である。
【図4】上記切削装置を用いて壁面の凹部を切削する作業過程を示す平面図である。
【図5】上記切削装置を用いて壁面の凹部を切削する作業過程を示す側面図である。
【図6】上記切削装置により壁面の凹部を側面を切削する作業過程を示す平面図である。
【図7】上記切削装置により壁面の他の凹部を切削する作業過程を示す平面図である。
【図8】従来の切削装置を示す平面図である。
【図9】従来のバックホー等のバケットの先端にアタッチメントを設けて切削作業を行う作業過程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 切削装置
2 第1のブラケット
3 第2のブラケット
4 ケレン部材
4a ケレン刃
42 突出端
43 内周面
44 外周面
45a,45b,45c 突起
5 回動保持機構
50 縦軸
51 ギヤ
53A,53B ラック
54A,54B 第1のアクチュエータ
55A,55B 第2のアクチュエータ
6 自走式車両
61 ターンテーブル
8 俯仰屈伸ブーム
81 俯仰ブーム
82 屈伸ブーム
83 横軸
P シートパイル
W 壁面
W1 凹部
W2 凸部
C 土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
俯仰ブームと、その先端に設けた屈伸ブームとからなる俯仰屈伸ブームの上記屈伸ブームの先端に付設する切削装置であって、
屈伸ブームの先端に、横軸により基端を上下方向回動自在に軸支せしめた第1のブラケットと、該第1のブラケットの先端に縦軸により基端を左右方向回動自在に軸支せしめた第2のブラケットとを備え、
該第2のブラケットには、その先端から前側かつ下向きに先の曲がった鉤状に突出し、第2のブラケット側の基端から突出端にかけて所定の横幅に形成され、かつ上記基端から突出端へかけて漸次、厚さ寸法を薄くして突出端縁が先細り状で、突出端には湾曲内周面側に着脱可能の硬質のケレン刃を備え、地中連続壁工法の壁面等に付着している土等の異物を取り除くケレン部材を設けたことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
上記ケレン部材には湾曲形状の外周部に、ケレン部材の突出端縁から所定の間隔をおいて、上記外周部の横幅方向に沿って設けられ、外周方向へなだらかな断面ほぼ山形に突出して、上記壁面等の土等の異物を取り除くケレン作業時に上記壁面等に当接可能な突起を設けた請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
上記ケレン部材の横幅を、上記壁面等の縦方向に延びる凹部および凸部を構成する金属板からなるシートパイルの上記凹部の横幅に合わせて、上記ケレン部材の突出端を上記凹部に挿入可能に設けた請求項1または2に記載の切削装置。
【請求項4】
上記ケレン部材を、上記凹部の横幅の異なる形状の複数種類の各シートパイルに合わせ、横幅の異なるものを複数種類設け、
各ケレン部材を上記第2のブラケットに着脱可能に設けた請求項1ないし3のいずれかに記載の切削装置。
【請求項5】
上記ケレン刃を、その横幅を上記ケレン部材の本体の突出端の横幅よりも幅広とし、かつケレン刃の突出端縁を上記本体の突出端縁の長さ寸法よりも長くし、上記本体よりも張り出すケレン刃の左右の側端縁および上記突出端縁を先細り状に形成した請求項1または2のいずれかに記載の切削装置。
【請求項6】
上記ケレン刃を、上記凹部の横幅の異なる形状の複数種類の各シートパイルに合わせ、横幅の異なるものを複数種類設け、
各ケレン刃を上記ケレン部材の突出端に着脱可能に設けた請求項5に記載の切削装置。
【請求項7】
上記第2のブラケットを第1のブラケットに対して所定の回動位置に保持せしめる回動保持機構により回動させるようになし、
上記回動保持機構として、上記縦軸の外周に設けられて縦軸と一体に回動可能なギヤと、該ギヤに噛合せしめたラックロッドと、該ラックロッドを駆動して上記ギヤを一方の回動方向へ回動せしめる第1のアクチュエ−タと、これとは逆に上記ラックロッドを駆動して上記ギヤを他方の回動方向へ回動せしめる第2のアクチュエ−タとを備えた機構を用いた請求項1ないし3のいずれかに記載の切削装置。
【請求項8】
俯仰ブームと、その先端に設けた屈伸ブームとからなる俯仰屈伸ブームの上記俯仰ブームの基端をクローラ等の自走式車両のターンテーブルに支持せしめ、上記屈伸ブームの先端に、第1のブラケットの基端を上下方向回動自在に軸支し、 第1のブラケットの先端に第2のブラケットの基端を左右方向回動自在に軸支し、該第2のブラケットに、前側かつ下向きに先の曲がった鉤状に突出し、鋭利な端縁を有する突出端で掘削現場の壁面等に付着している土等の異物を取り除くケレン部材を設けてなることを特徴とする切削機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−95380(P2008−95380A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278207(P2006−278207)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506194162)有限会社ホクト (1)
【Fターム(参考)】