説明

切削装置

【課題】固定ネジの弛みによる切削液ノズルとワークとの接触を防止することができると共に、高精度な高さ調整を行うことができる切削装置を提供すること。
【解決手段】切削ブレード41の一部を露出させて囲むブレードカバー43と、切削ブレード41を挟んで対向する対向噴射ノズル47を支持する後方ノズル支持ブロック48とを備え、後方ノズル支持ブロック48をブレードカバー43に回転可能に支持された送りネジ67に螺合させることで、後方ノズル支持ブロック48を鉛直方向に移動可能にブレードカバー43に連結し、固定ネジ82の締め付けにより後方ノズル支持ブロック48をブレードカバー43に対して固定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関し、特に、切削ブレードによって半導体ウェーハを分割予定ラインに沿って切削する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状の半導体ウェーハの表面に格子状に分割予定ラインが形成され、分割予定ラインにより区画された領域にIC、LSI等の回路が形成される。そして、半導体ウェーハは、切削装置により分割予定ラインに沿って切削され、個々の半導体チップに分割される。このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用される。
【0003】
一般に、このような半導体ウェーハを分割する切削装置においては、半導体ウェーハの加工部分に向けて切削液を噴射しながら切削が行われる(例えば、特許文献1参照)。この切削装置は、切削ブレードの外周を覆うブレードカバーに、切削液を噴射する複数のノズルを固定ネジでネジ止めして構成される。切削装置は、切削ブレードを高速回転させると同時に、複数のノズルから切削液を半導体ウェーハの加工部分や切削ブレードに噴射し、切削屑の洗浄や加工部分の冷却および潤滑等を行っている。そして、切削装置は、切削ブレードを半導体ウェーハに一定量切り込ませた状態で、分割予定ラインに沿って切削送りすることにより半導体ウェーハを切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−25209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の切削装置においては、複数のノズルによって半導体ウェーハの加工部分を狙いやすいように、半導体ウェーハの上面から数ミリ程度の間隔を空けて複数のノズルをブレードカバーに固定している。したがって、複数のノズルをブレードカバーに固定する固定ネジが、切削加工中の振動等により弛んでしまうと、複数のノズルが落下又は傾いて半導体ウェーハに接触してしまうという問題があった。また、上記の切削装置においては、作業者の感覚によって、複数のノズルの高さ調整が行われていたため、高精度な高さ調整を行うことが困難となっていた。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、固定ネジの弛みによる切削液ノズルとワークとの接触を防止することができると共に、高精度な高さ調整を行うことができる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切削装置は、ワークを保持する水平な保持面を有する保持テーブルと、前記保持テーブルに保持されたワークを切削加工する切削ブレードと前記切削ブレードに切削液を供給する切削液供給部と前記切削ブレードの一部を露出させて囲むブレードカバーと前記切削ブレードを回転可能に支持するスピンドルとを含む切削加工ユニットと、を有する切削装置であって、前記切削液供給部は、前記切削ブレードの表裏面に沿う様に水平方向に延在する切削液ノズルと、前記切削液ノズルに連結し、鉛直方向に貫通した第一のネジ穴及び水平方向に延びる第二のネジ穴が形成されたノズル支持ブロックと、を有し、前記ブレードカバーは、ブレードカバー本体と、前記第二のネジ穴に対応して水平方向に貫通する貫通孔が形成され、前記ブレードカバー本体に連結し前記ノズル支持ブロックを鉛直方向に摺動可能に保持する保持ブロックとを有し、前記ノズル支持ブロック及び前記保持ブロックには、前記第一のネジ穴に螺合貫通して鉛直方向を回転軸として回転可能に配置され、鉛直方向を回転軸として回転させることによって前記ノズル支持ブロックを鉛直方向に摺動させる貫通ネジと、前記貫通孔を貫通して前記第二のネジ穴に螺合挿入させることによって前記ノズル支持ブロックを前記保持ブロックに固定する固定ネジとが設けられたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、貫通ネジの鉛直軸回りの回転により保持ブロックに対するノズル支持ブロックの鉛直方向の高さ調整が行われ、固定ネジにより保持ブロックに対してノズル支持ブロックが固定される。よって、切削加工中の振動等により固定ネジが弛んだ場合であっても、ノズル支持ブロックに貫通ネジが螺合しているため、ノズル支持ブロックの落下や傾きが抑制され、ノズル支持ブロックに連結された切削液ノズルとワークとの接触が防止される。また、貫通ネジの回転により、ワークに対する切削液ノズルの高さ位置が微調整されるため、調整精度を高めることができると共に、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定ネジの弛みによる切削液ノズルとワークとの接触を防止することができると共に、高精度な高さ調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る切削装置の実施の形態を示す図であり、切削装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る切削装置の実施の形態を示す図であり、ブレードユニットの斜視図である。
【図3】本発明に係る切削装置の実施の形態を示す図であり、対向噴射ノズルの高さ調整機構の斜視図である。
【図4】本発明に係る切削装置の実施の形態を示す図であり、対向噴射ノズルの高さ調整の説明図である。
【図5】本発明に係る切削装置の実施の形態を示す図であり、半導体ウェーハの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。最初に、本発明の実施の形態に係る切削装置について説明する前に、切削対象となる半導体ウェーハについて簡単に説明する。図5は、環状フレームに支持された半導体ウェーハの斜視図である。
【0012】
図5に示すように、半導体ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された分割予定ライン91によって複数の領域に区画されている。この区画された領域には、IC、LSI等のデバイス92が形成されている。また、半導体ウェーハWは、貼着テープ93を介して環状フレーム94に支持され、切削装置1に搬入および搬出される。
【0013】
なお、本実施の形態においては、ワークとしてシリコンウェーハ、ガリウムヒソ等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。半導体ウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイヤ(Al2O3)系の無機材料基板、各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をワークとしてもよい。
【0014】
次に、図1および図2を参照して、本発明の実施の形態に係る切削装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る切削装置の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るブレードユニットの斜視図である。
【0015】
図1に示すように、切削装置1は、切削ブレード41を有する一対のブレードユニット(切削加工ユニット)6と半導体ウェーハWを保持した保持テーブル3とを相対移動させて半導体ウェーハWを切削するように構成されている。切削装置1は、基台2を有しており、基台2上には保持テーブル3をX軸方向に移動させる保持テーブル移動機構4が設けられている。また、基台2上には、保持テーブル移動機構4を跨ぐように立設した門型の柱部5が設けられ、柱部5には、保持テーブル3の上方において一対のブレードユニット6をY軸方向に移動させるブレードユニット移動機構7が設けられている。
【0016】
保持テーブル移動機構4は、基台2上に配置され、X軸方向に延在する一対のガイドレール11と、一対のガイドレール11にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル12とを有している。X軸テーブル12の上部には、保持テーブル3が設けられている。X軸テーブル12の背面側には、図示しないナット部が形成され、ナット部にボールネジ13が螺合されている。そして、ボールネジ13の一端部には、駆動モータ14が連結され、この駆動モータ14によりボールネジ13が回転駆動される。
【0017】
保持テーブル3は、X軸テーブル12の上面に固定されたZ軸回りに回転可能なθテーブル16と、θテーブル16の上面に固定されたテーブル支持部17とを有している。また、テーブル支持部17の上部には、半導体ウェーハWを吸着保持するワーク保持部21が支持されている。ワーク保持部21は、所定の厚みを有する円盤状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧により貼着テープ93を介して半導体ウェーハWを吸着する面であり、テーブル支持部17の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0018】
ワーク保持部21の周囲には、テーブル支持部17の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部24が設けられている。この4つのクランプ部24は、エアーアクチュエータにより駆動し、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム94を挟持固定する。
【0019】
ブレードユニット移動機構7は、柱部5の前面に配置され、Y軸方向に延在する一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31にスライド可能に設置されたモータ駆動の一対のY軸テーブル32とを有している。また、ブレードユニット移動機構7は、各Y軸テーブル32の前面のそれぞれに配置され、Z軸方向に延在する一対のガイドレール33と、各一対のガイドレール33のそれぞれにスライド可能に配置されたモータ駆動のZ軸テーブル34とを有している。各Z軸テーブル34には、それぞれブレードユニット6が延設されている。
【0020】
また、各Y軸テーブル32、各Z軸テーブル34の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ36、37が螺合されている。そして、Y軸テーブル32用のボールネジ36、Z軸テーブル用のボールネジ37の一端部には、それぞれ駆動モータ38、39が連結され、これら駆動モータ38、39によりボールネジ36、37が回転駆動される。
【0021】
図2に示すように、ブレードユニット6は、矢印R方向に回転する円板状の切削ブレード41と、切削ブレード41に連結されたスピンドル42と、切削ブレード41の外周の略上半部を覆うブレードカバー43とを有している。ブレードカバー43には、切削方向における前方に一対の周辺噴射ノズル45を支持する前方ノズル支持ブロック46が設けられ、切削方向における後方に一対の対向噴射ノズル(切削液ノズル)47を支持する後方ノズル支持ブロック(ノズル支持ブロック)48が設けられている。ブレードユニット6においては、一対の対向噴射ノズル47と後方ノズル支持ブロック48とを含んで、切削ブレード41に切削液を供給する切削液供給部が構成される。
【0022】
前方ノズル支持ブロック46の上部には、切削液の供給源に接続される連結部51、52が設けられている。一方の連結部51は、前方ノズル支持ブロック46内の流路を介して前方噴射ノズル44(図4参照)に接続され、他方の連結部52は、前方ノズル支持ブロック46内の流路を介して一対の周辺噴射ノズル45に接続されている。前方噴射ノズル44は、切削ブレード41の前方に位置しており、前方から噴射した切削液を切削ブレード41に巻き込ませて切削部分の冷却および洗浄を行う。一対の周辺噴射ノズル45は、前方噴射ノズル44のさらに前方に位置し、切削中のラインの周辺に向けて切削液を噴射してライン周辺の洗浄を行う。
【0023】
後方ノズル支持ブロック48の上部には、切削液の供給源に接続される一対の連結部53、54が設けられている。一対の連結部53、54は、それぞれ後方ノズル支持ブロック48内の流路を介して一対の対向噴射ノズル47に接続されている。一対の対向噴射ノズル47は、後方ノズル支持ブロック48から下方に延び、途中部分で湾曲して先端側が水平方向に延在している。また、一対の対向噴射ノズル47は、先端側が切削ブレード41の下部を挟むように対向され、半導体ウェーハWの切削部分に向けて切削液を噴射して切削部分の冷却および洗浄等を行う。
【0024】
このように構成されたブレードユニット6は、スピンドル42により切削ブレード41を高速回転させ、各ノズルから切削部分や切削ブレード41に切削液を噴射して切削加工を行う。このとき、一対の対向噴射ノズル47は、半導体ウェーハWの表面から数ミリ離れた高さから切削液を噴射しており、半導体ウェーハWの加工部分を側方から狙い易い位置に高さ調整されている。
【0025】
ここで、図3を参照して、対向噴射ノズルの高さ調整機構について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る対向噴射ノズルの高さ調整機構の斜視図である。なお、図3においては、(a)が高さ調整機構の分解斜視図、(b)が高さ調整機構の組立後の斜視図である。
【0026】
図3(a)に示すように、ブレードカバー43は、ブレードカバー本体57と、ブレードカバー本体57の後部に設けられ、後方ノズル支持ブロック48を鉛直方向に摺動可能に保持する保持ブロック58とを含んで構成される。保持ブロック58は、ブレードカバー本体57の後面における幅方向の両端側において、後方ノズル支持ブロック48を鉛直方向にガイドする一対のガイド部61、62を有している。一対のガイド部61、62の下端部は、後方ノズル支持ブロック48の摺動範囲の下限を規定する下側規制部63に連なり、下側規制部63を介して接続されている。一対のガイド部61、62の上端部は、後方ノズル支持ブロック48の摺動範囲の上限を規定する上側規制部64がネジ止めされ、上側規制部64を介して接続されている。
【0027】
このように、保持ブロック58は、一対のガイド部61、62の対向面、下側規制部63の上面、上側規制部64の下面により、後方ノズル支持ブロック48の摺動空間65を形成している。摺動空間65には、後方ノズル支持ブロック48を鉛直方向に摺動させる送りネジ(貫通ネジ)67が配置される。送りネジ67は、後方ノズル支持ブロック48に螺合されるネジ部68と、ネジ部68の上方に連なる軸部69とを有し、回転によって後方ノズル支持ブロック48を鉛直方向に送り出し可能に構成されている。
【0028】
また、送りネジ67は、ネジ部68の下端が下側規制部63に形成された凹部71の底面に当接され、軸部69が上側規制部64に形成された支持孔72に挿通されることで、保持ブロック58に回転可能に支持される。軸部69の上端面には、マイナスドライバ等の工具が差し込まれる工具差し込み溝73が形成されており、工具差し込み溝73を介して送りネジ67が回転されることで、後方ノズル支持ブロック48の鉛直方向の高さ調整が行われる。
【0029】
また、上側規制部64には、支持孔72を挟んで、一対の挿通孔75が形成されている。上側規制部64は、一対のガイド部61、62の上面に形成されたネジ穴77に、一対の挿通孔75を介して一対の固定ネジ78を締め付けることで、一対のガイド部61、62に固定される。一対のガイド部61、62のうち片側のガイド部62には、側方から摺動空間に向けて貫通し、鉛直方向に延在する長孔(貫通孔)81が形成されている。長孔81には、一対の固定ネジ82が挿通され、一対の固定ネジ82により後方ノズル支持ブロック48が保持ブロック58に固定される。
【0030】
後方ノズル支持ブロック48には、保持ブロック58の摺動空間65を摺動する摺動部83が設けられている。摺動部83には、鉛直方向に貫通し、送りネジ67のネジ部68に螺合貫通されるネジ穴(第一のネジ穴)85と、保持ブロック58の長孔81に対応し、一対の固定ネジ82に側方から螺合されるネジ穴(第二のネジ穴)86とが形成されている。後方ノズル支持ブロック48は、ネジ穴85に送りネジ67が螺合されることで、送りネジ67の回転を直線移動に変換し、高さ調整を可能としている。また、後方ノズル支持ブロック48は、高さ調整後にネジ穴86に一対の固定ネジ82が締め付けられることで、所望の高さに固定される。
【0031】
このブレードカバー43に対する後方ノズル支持ブロック48の取り付け時には、送りネジ67が摺動部83のネジ穴85に螺合貫通された後、摺動部83が摺動空間65に配置される。このとき、摺動部83が一対のガイド部61、62の対向面にガイドされ、送りネジ67の下端が下側規制部63の凹部71に支持される。次に、上側規制部64の支持孔72に送りネジ67の軸部69を差し込ませるようにして、上側規制部64が一対のガイド部61、62の上面に載置される。
【0032】
次に、一対の固定ネジ78が上側規制部64の挿通孔75を介して一対のガイド部61、62のネジ穴77に締め付けられ、上側規制部64が一対のガイド部61、62に固定される。これにより、ブレードカバー43に対して後方ノズル支持ブロック48が連結される。次に、送りネジ67によって一対の対向噴射ノズル47の高さ位置が調整され、位置調整後に一対の固定ネジ82がガイド部62の長孔81を介して摺動部83の一対のネジ穴86に締め付けられる。このようにして、図3(b)に示すように、ブレードカバー43に後方ノズル支持ブロック48が取り付けられる。
【0033】
図4を参照して、対向噴射ノズルの高さ調整について説明する。図4は、本実施の形態に係る対向噴射ノズルの高さ調整の説明図である。なお、図4においては、(a)が対向噴射ノズルを下げた状態、(b)が対向噴射ノズルを上げた状態をそれぞれ示している。
【0034】
対向噴射ノズル47の高さ調整は、保持ブロック58と後方ノズル支持ブロック48とを固定した一対の固定ネジ82を弛め、工具により送りネジ67を回転させることで行われる。この場合、図4(a)に示すように、送りネジ67が一方向に回転されると、摺動部83が下方に送り出され、対向噴射ノズル47が下動される。一方、図4(b)に示すように、送りネジ67が他方向に回転されると、摺動部83が上方に送り出され、対向噴射ノズル47が上動される。そして、対向噴射ノズル47が所望の位置に調整されると、一対の固定ネジ82により保持ブロック58と後方ノズル支持ブロック48とが固定される。
【0035】
このように、送りネジ67の回転量によって対向噴射ノズル47の高さ位置が調整されるため、作業者の感覚によって対向噴射ノズル47の高さ位置が調整される構成と比較して、調整精度を高めることができると共に、調整作業が行いやすい。また、切削加工中の振動等によって一対の固定ネジ82が弛んでも、後方ノズル支持ブロック48に送りネジ67が螺合しているため、対向噴射ノズル47が落下することがない。したがって、固定ネジ82の弛みによる対向噴射ノズル47と半導体ウェーハWとの接触を防止することが可能となる。また、摺動部83は、送りネジ67に沿って鉛直方向に直動する構成であるため、対向噴射ノズル47が水平方向に対して傾くことがない。よって、対向噴射ノズル47の傾きによる対向噴射ノズル47と半導体ウェーハWとの接触を防止することが可能となる。
【0036】
ここで、切削装置1による切削加工の動作について説明する。切削装置1が稼働されると、保持テーブル3に半導体ウェーハWが載置される。次に、保持テーブル3が半導体ウェーハWを保持した状態で、一対のブレードユニット6に臨む加工位置に移動される。そして、一対のブレードユニット6の切削ブレード41が半導体ウェーハWのX軸方向の分割予定ライン91に位置合わせされ、一対のブレードユニット6が下降されることで高速回転した切削ブレード41により半導体ウェーハWが切り込まれる。
【0037】
切削ブレード41により半導体ウェーハWが切り込まれると、保持テーブル3がX軸方向に切削送りされ、半導体ウェーハWの2本の分割予定ライン91が同時に加工される。続いて、一対のブレードユニット6がY軸方向に数ピッチ分だけ移動され、一対のブレードユニット6の切削ブレード41が隣接する分割予定ライン91に位置合わせされる。そして、保持テーブル3がX軸方向に切削送りされ、半導体ウェーハWの2本の分割予定ライン91が同時に加工される。この動作が繰り返されて半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン91が加工される。
【0038】
次に、保持テーブル3上の半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン91が加工されると、θテーブル16が90度回転され、半導体ウェーハWのY軸方向の分割予定ライン91の加工が開始される。保持テーブル3上の半導体ウェーハWの全ての分割予定ライン91が加工されると、半導体ウェーハWが保持テーブル3から搬出される。そして、保持テーブル3には、新たな半導体ウェーハWが載置され、同様の動作が繰り返される。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係る切削装置1は、送りネジ67の鉛直軸回りの回転により保持ブロック58に対する後方ノズル支持ブロック48の鉛直方向の高さ調整が行われ、固定ネジ78により保持ブロック58に対して後方ノズル支持ブロック48が固定される。よって、切削加工中の振動等により固定ネジ78が弛んだ場合であっても、後方ノズル支持ブロック48に送りネジ67が螺合しているため、後方ノズル支持ブロック48の落下や傾きが抑制され、後方ノズル支持ブロック48に連結された対向噴射ノズル47と半導体ウェーハWとの接触が防止される。また、送りネジ67の回転により、半導体ウェーハWに対する対向噴射ノズル47の高さ位置が調整されるため、調整精度を高めることができると共に、作業性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記した実施の形態においては、工具を用いて送りネジが回転される構成としたが、この構成に限定されるものではない。送りネジは、駆動モータ等の駆動源を含む駆動機構により動的に回転される構成としてもよい。
【0041】
また、上記した実施の形態においては、後方ノズル支持ブロックは、送りネジの回転によって摺動される摺動部を介してブレードカバーに連結される構成としたが、この構成に限定されるものではない。後方ノズル支持ブロックは、送りネジに螺合するナット部を介してブレードカバーに連結される構成であれば、どのような構成でもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態においては、後方ノズル支持ブロックを一対の固定ネジによりブレードカバーに固定する構成としたが、この構成に限定されるものではない。後方ノズル支持ブロックとブレードカバーとを所望の位置関係で固定可能な構成であれば、どのような構成でもよい。
【0043】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、固定ネジの弛みによる切削液ノズルとワークとの接触を防止することができるという効果を有し、特に、切削ブレードによって半導体ウェーハを分割予定ラインに沿って切削する切削装置に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 切削装置
3 保持テーブル
4 保持テーブル移動機構
6 ブレードユニット(切削加工ユニット)
7 ブレードユニット移動機構
21 ワーク保持部
41 切削ブレード
42 スピンドル
43 ブレードカバー
44 前方噴射ノズル
45 周辺噴射ノズル
46 前方ノズル支持ブロック
47 対向噴射ノズル(切削液ノズル、切削液供給部)
48 後方ノズル支持ブロック(ノズル支持ブロック、切削液供給部)
57 ブレードカバー本体
58 保持ブロック
61、62 ガイド部
63 下側規制部
64 上側規制部
65 摺動空間
67 送りネジ(貫通ネジ)
81 長孔(貫通孔)
82 固定ネジ
83 摺動部
85 ネジ穴(第一のネジ穴)
86 ネジ穴(第二のネジ穴)
W 半導体ウェーハ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する水平な保持面を有する保持テーブルと、前記保持テーブルに保持されたワークを切削加工する切削ブレードと前記切削ブレードに切削液を供給する切削液供給部と前記切削ブレードの一部を露出させて囲むブレードカバーと前記切削ブレードを回転可能に支持するスピンドルとを含む切削加工ユニットと、を有する切削装置であって、
前記切削液供給部は、
前記切削ブレードの表裏面に沿う様に水平方向に延在する切削液ノズルと、
前記切削液ノズルに連結し、鉛直方向に貫通した第一のネジ穴及び水平方向に延びる第二のネジ穴が形成されたノズル支持ブロックと、を有し、
前記ブレードカバーは、
ブレードカバー本体と、前記第二のネジ穴に対応して水平方向に貫通する貫通孔が形成され、前記ブレードカバー本体に連結し前記ノズル支持ブロックを鉛直方向に摺動可能に保持する保持ブロックとを有し、
前記ノズル支持ブロック及び前記保持ブロックには、
前記第一のネジ穴に螺合貫通して鉛直方向を回転軸として回転可能に配置され、鉛直方向を回転軸として回転させることによって前記ノズル支持ブロックを鉛直方向に摺動させる貫通ネジと、
前記貫通孔を貫通して前記第二のネジ穴に螺合挿入させることによって前記ノズル支持ブロックを前記保持ブロックに固定する固定ネジとが設けられたことを特徴とする切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−114220(P2011−114220A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270227(P2009−270227)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】