説明

切削装置

【課題】フラットドレスにおける作業の簡素化、生産性の向上を図る切削装置を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル10と、スピンドル22aに装着された切削ブレード21aを有する切削手段20a,20bと、スピンドル22aをY軸方向に移動させるY軸移動手段30a,30bと、スピンドル22aをZ軸方向に移動させるZ軸移動手段40a,40bとを備える切削装置1であって、チャックテーブル10に隣接し、かつY軸移動手段30a,30bによる切削ブレード21aの移動経路上に配設されたドレス手段50a,50bをさらに備え、ドレス手段50a,50bは、研磨面がZ軸方向のうち離間方向に向かって配設されるドレッサーボードと、ドレッサーボードを保持し、中心軸線を中心に回転可能な保持手段とを有し、保持手段により保持されているドレッサーボードの研磨面の高さH1は、チャックテーブル10の表面の高さH2と同一または低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが複数形成されたウエーハについては、製造工程中における割れや、発塵防止のために、その外周に面取り加工が施されている。そのため、ウエーハを薄く研削すると、外周の面取り部分がナイフエッジ状(ひさし状)に形成されてしまう。外周の面取り部分がナイフエッジ状となると、外周から欠けが生じてウエーハが損傷してしまうという問題が生じる虞があった。そこで、予め外周の面取り部分を切削ブレードにより周方向に切削して、Z軸方向に外周の一部を除去した後、ウエーハの裏面の研削する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、切削ブレードによりウエーハの外周を周方向に切削すると、切削ブレードの先端のうち切削に寄与している部分は消耗し、その他の部分は消耗が進まず偏摩耗が発生する。偏摩耗が発生すると、精度の良い切削が行えなくなるので、偏摩耗が進む前に定期的に切削ブレードの先端をドレッサーボードによりフラットに整形するフラットドレスが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−173961号公報
【特許文献2】特開2010−588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフラットドレスでは、チャックテーブルに保持されている被加工物を取り外し、チャックテーブルにドレッサーボードを載置し保持させる、すなわち載せ替えを行うこととなり、作業が煩雑となるという問題がある。また、フラットドレスを行った後、チャックテーブルに保持されているドレッサーボードを取り外し、再度チャックテーブルに被加工物を載置し保持しなければならず、フラットドレスを行うために被加工物の切削加工を中断する時間が長くなり、生産性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フラットドレスにおける作業の簡素化あるいは生産性の向上の少なくともいずれかを図ることができる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る切削装置は、水平面である表面に被加工物を保持するチャックテーブルと、回転可能なスピンドルおよび該スピンドルに装着された切削ブレードを有する切削手段と、該スピンドルを該スピンドルの回転軸線と平行な方向であるY軸方向に移動させるY軸移動手段と、該スピンドルをチャックテーブルに接近および離間する方向であるZ軸方向に移動させるZ軸移動手段とを備える切削装置であって、該チャックテーブルに隣接し、かつY軸移動手段による該切削ブレードの移動経路上に配設されたドレス手段をさらに備え、該ドレス手段は、水平面である研磨面がZ軸方向のうち離間方向に向かって配設されるドレッサーボードと、該ドレッサーボードを保持し、中心軸線を中心に回転可能な保持手段とを有し、該保持手段により保持されているドレッサーボードの研磨面の高さは、該チャックテーブルの表面の高さと同一または低いことを特徴とする。
【0008】
また、上記切削装置において、該ドレス手段により該切削ブレードをドレスする場合は、該切削ブレードをY軸方向において該ドレッサーボードと対向する所定切り込み位置に移動させ、該所定切り込み位置から回転する該切削ブレードを該Y軸移動手段により該研磨面と接触する方向に移動させ、該切削ブレードと該研磨面とが非接触となった後、Z軸方向において該移動経路上に該研磨面のうち切削痕を除く領域が対向するように、該保持手段を回転させることが好ましい。
【0009】
また、上記切削装置において、該ドレス手段は、該回転軸線上に該中心軸線が位置するように配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルとは別に回転可能なドレッサーボードを配設し、Y軸移動手段及びZ軸移動手段により、切削ブレードをドレッサーボードに対して移動させ、フラットドレスを行う。従って、フラットドレスを行うために被加工物をチャックテーブルから取り外すことがないので、作業の簡素化を図ることができる。また、切削ブレードにより被加工物の切削加工を行っていない時間を利用してフラットドレスを行うことができるので、切削加工を中断する時間を短くすることができ、生産性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、切削手段およびドレス手段を示す図である。
【図3】図3は、切削手段およびドレス手段の位置関係を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係る切削装置によるフラットドレスのフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す図である。図2は、切削手段およびドレス手段を示す図である。図3は、切削手段およびドレス手段の位置関係を示す図である。なお、図3は、切削手段とドレス手段をZ軸方向から見た図であり、切削手段を模式的に図示してある。
【0014】
本実施形態に係る切削装置は、切削ブレードを有する切削手段と被加工物を保持したチャックテーブルとを相対移動させることで、被加工物を切削加工するものである。図1に示すように、切削装置1は、2スピンドルのダイサ、いわゆるツインダイサであり、チャックテーブル10と、2つの切削手段20a、20bと、2つのY軸移動手段30a,30bと、2つのZ軸移動手段40a,40bと、2つのドレス手段50a、50bと、制御手段90とを含んで構成されている。なお、本実施形態に係る切削装置1は、さらに図示しないX軸移動手段と、カセットエレベータ60、仮置き手段70と、洗浄・乾燥手段80とを含んで構成されている。切削装置1は、装置本体2上に門型の柱部3が設けられている。
【0015】
チャックテーブル10は、水平面である表面に被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、本実施形態では、被加工物Wを被加工物Wの裏面から吸引することで保持するものである。チャックテーブル10の表面を構成する部分は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。なお、チャックテーブル10の周囲には、一対のクランプ部11が設けられている。クランプ部11は、エアーアクチュエータにより駆動し、被加工物Wの周囲のフレームFを挟時する。
【0016】
ここで、被加工物Wは、切削装置1により加工される加工対象であり、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とするウエーハである。被加工物Wは、デバイスが複数形成されているデバイス側の表面と反対側の裏面がダイシングテープTに貼着され、被加工物Wに貼着されたダイシングテープTがフレームFに貼着されることで、フレームFに固定される。
【0017】
X軸移動手段は、切削ブレード21に対して保持された被加工物WをX軸方向に相対移動させるものである。X軸移動手段は、装置本体2に柱部3が跨るように設けられており、X軸ボールねじと、X軸パルスモータと、一対のX軸ガイドレールとを含んで構成されている。X軸ボールねじは、X軸方向に配設されており、テーブル移動基台4の下部に設けられた図示しないナットと螺合しており、一端にX軸パルスモータが連結されている。一対のX軸ガイドレールは、X軸ボールねじと平行に形成され、テーブル移動基台4がスライド可能に載置されている。X軸移動手段は、X軸パルスモータにより発生した回転力によりX軸ボールねじを回転駆動させることで、テーブル移動基台4(チャックテーブル10)を一対のX軸ガイドレールによりガイドしつつ装置本体2に対してX軸方向に移動させる。
【0018】
ここで、テーブル移動基台4は、装置本体2においてテーブル移動基台4の中心軸線を中心に回転自在に支持されている。テーブル移動基台4は、装置本体2に収納されている図示しない基台駆動源に連結されている。テーブル移動基台4は、基台駆動源により発生した回転力により任意の角度、例えば90度回転や連続回転することができ、チャックテーブル10を切削ブレード21a、21bに対してテーブル移動基台4の中心軸線を中心に任意の角度回転や連続回転などの回転駆動させることができる。
【0019】
切削手段20a、20bは、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削ブレード21a、21bにより切削するものである。切削手段20aは、支持部5aに支持されており、Y軸移動手段30a、Z軸移動手段40a、ブレード移動基台6aを介して柱部3の一方に設けられている。切削手段20bは、支持部5bに支持されており、Y軸移動手段30b、Z軸移動手段40b、ブレード移動基台6bを介して柱部3の他方に設けられている。2つの切削手段20a,20bは、チャックテーブル10を挟んで対向して設けられている。切削ブレード21a、21bは、図2に示すように、略リング形状を有する極薄の切削砥石であり、スピンドル22a,22bにそれぞれ着脱自在に装着される。スピンドル22a、22bは、円筒形状のハウジング23a、23bにそれぞれ回転可能に支持され、ハウジング23a、23bにそれぞれ収納されている図示しないブレード駆動源にそれぞれ連結されている。切削ブレード21a、21bは、ブレード駆動源により発生した回転力により回転駆動する。なお、切削手段20a、20bは、図3に示すように、スピンドル22a、22bは、スピンドル22a、22bの回転軸線AとY軸方向とが平行となるように設けられている。
【0020】
Y軸移動手段30a,30bは、図1に示すように、チャックテーブル10に保持された被加工物Wおよびガイド手段50a,50bに対して切削ブレード21a,21bをY軸方向にそれぞれ相対移動させるものである。Y軸移動手段30a,30bは、柱部3にそれぞれ設けられており、Y軸ボールねじ31a,31bと、Y軸パルスモータ32a,32bと、一対のY軸ガイドレール33とを含んでそれぞれ構成されている。Y軸ボールねじ31a,31bは、Y軸方向に配設されており、ブレード移動基台6a,6bの内部に設けられた図示しないナットとそれぞれ螺合しており、一端にY軸パルスモータ32a,32bがそれぞれ連結されている。一対のY軸ガイドレール33は、Y軸ボールねじ31a,31bと平行に形成され、ブレード移動基台6a,6bがスライド可能にそれぞれ載置されている。Y軸移動手段30a,30bは、Y軸パルスモータ32a,32bにより発生した回転力によりY軸ボールねじ31a,31bを回転駆動させることで、ブレード移動基台6a,6bを一対のY軸ガイドレール33によりガイドしつつ装置本体2に対してY軸方向にそれぞれ移動させる。
【0021】
Z軸移動手段40a,40bは、チャックテーブル10に保持された被加工物Wおよびガイド手段50a,50bに対して切削ブレード21a,21bをZ軸方向、すなわちスピンドル22a,22bがチャックテーブル10に接近および離間する方向にそれぞれ相対移動させるものである。Z軸移動手段40a,40bは、ブレード移動基台6a,6bにそれぞれ設けられており、Z軸ボールねじ41a,41bと、Z軸パルスモータ42a,42bと、一対のZ軸ガイドレール43a,43bとを含んでそれぞれ構成されている。Z軸ボールねじ41a,41bは、Z軸方向に配設されており、支持部5a,5bの内部に設けられた図示しないナットとそれぞれ螺合しており、一端にZ軸パルスモータ42a,42bがそれぞれ連結されている。一対のZ軸ガイドレール43a,43bは、Z軸ボールねじ41a,41bと平行に形成され、支持部5a,5bがスライド可能にそれぞれ載置されている。Z軸移動手段40a,40bは、Z軸パルスモータ42a,42bにより発生した回転力によりZ軸ボールねじ41a,41bを回転駆動させることで、支持部5a,5bを一対のZ軸ガイドレール43a,43bによりガイドしつつ装置本体2に対してZ軸方向にそれぞれ移動させる。
【0022】
ドレス手段50a,50bは、切削手段20a,20bに対応してチャックテーブル10に隣接、本実施形態では、チャックテーブル10を挟んでY軸方向において対向するようにそれぞれ装置本体2に配設されている。ドレス手段50a,50bは、図2に示すように、ドレッサーボード51a,51bと、保持手段52a,52bとを含んでそれぞれ構成されている。
【0023】
ドレッサーボード51a,51bは、水平面である研磨面53a,53bが形成されている。研磨面53a,53bはリング状、本実施形態では研磨面53a,53bを含むドレッサーボード51a,51b自体がリング状に形成され、中央部に開口部54a,54bが形成されている。ドレッサーボード51a,51bは、砥粒径が切削ブレード21a,21bの砥粒径よりも小さいホワイトアランダム、グリーンカーボン等の砥粒が樹脂等で結合された結合材料により形成されている。
【0024】
保持手段52a,52bは、研磨面53a,53bが保持手段52a,52bと対向する側とは反対側に配設されるように、ドレッサーボード51a,51bをそれぞれ保持するものである。保持手段52a,52bは、研磨面53a,53bと反対側の裏面から吸引することで、ドレッサーボード51a,51bを保持する。保持手段52a,52bの表面(ドレッサーボード51a,51bと対向する面)を構成する部分は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。また、保持手段52a,52bは、図3に示すように、装置本体2においてZ軸と平行な中心軸線Bを中心に回転可能にそれぞれ支持されている。保持手段52a,52bは、装置本体2に収納されている図示しないドレス駆動源に連結されている。保持手段段52a,52bは、ドレス駆動源により発生した回転力により任意の角度に回転することができ(同図に示すS)、ドレッサーボード51a,51bを切削ブレード21a、21bに対して中心軸線Bを中心に任意の回転角度に回転駆動させることができる。
【0025】
ここで、ドレス手段50a,50bは、保持手段52a,52bにより保持されている状態における研磨面53a,53bの装置本体2からの高さH1がチャックテーブル10の表面の装置本体2からの高さH2と同一または低くなるように配設されている。つまり、切削ブレード21a,21bがチャックテーブル10の表面と非接触の状態で、切削手段20a,20bをY軸方向に移動しても、切削ブレード21a,21bが保持手段52a,52bにより保持されている状態における研磨面53a,53bと接触することはない。従って、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの切削加工を行うために、切削手段20a,20bがY軸方向に移動しても、ドレス手段50a,50bが干渉することはない。これにより、ドレス手段50a,50bをチャックテーブル10の近傍に配設することができるので、チャックテーブル10からドレス手段50a,50bまでのY軸方向における移動量を少なくすることができ、切削加工後フラットドレスを行い再び切削加工に移行するために要する時間(以下、単に「ドレス時間」と称する)を短縮することができる。
【0026】
また、ドレス手段50a,50bは、切削ブレード21a,21bがY軸移動手段30a,30bによって移動する経路であるブレード移動経路上に配設されている。本実施形態では、ドレス手段50a,50bは、スピンドル22a,22bの回転軸線A上に中心軸線Bが位置するように、すなわちドレッサーボード51a,51bの径方向とY軸方向が平行となるように配設されている。従って、切削手段20a,20bをドレス手段50a,50bに対してZ軸方向のうち、接近する方向に移動させると、切削ブレード21a,21bの外周のうち、Z軸方向と平行で、回転軸線A上を通る直線と交差する点を基準として、切削ブレード21a,21bがドレッサーボード51a,51bに接触する。
【0027】
カセットエレベータ60は、被加工物Wを1枚ずつ収納する収納部がZ軸方向に複数形成されており、一度に複数の被加工物Wを収納するものである。カセットエレベータ60は、装置本体2の内部に形成された空間部をZ軸方向において昇降自在に構成されている。仮置き手段70は、一対のレール71を有し、一対のレール71上に加工前後の被加工物Wを一時的に載置するものである。洗浄・乾燥手段80は、スピンナテーブル81を有し、加工後の被加工物Wが載置され、保持される。スピンナテーブル81は、装置本体2に収納されているスピンナテーブル駆動源と連結されている。洗浄・乾燥手段80は、スピンナテーブル81に被加工物Wが保持されると、スピンナテーブル駆動源が発生する回転力により、被加工物Wを回転させ、図示しない洗浄液噴射装置から被加工物Wに対して洗浄液を噴射することで洗浄し、洗浄後の被加工物Wに対して図示しない気体噴射装置から気体を噴射することで乾燥させる。
【0028】
制御手段90は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段90は、被加工物Wに対する加工動作を切削装置1に行わせるものである。また、制御手段90は、ドレス手段50a,50bによる切削手段20a,20bに対するフラットドレスを制御するものである。なお、制御手段90は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る切削装置1の加工動作について説明する。まず、オペレータが加工内容情報を登録し、加工動作の開始指示があった場合に、加工動作を開始する。加工動作において、被加工物Wは、図示しない搬出入手段によりカセットエレベータ60から仮置き手段70まで搬出され、仮置き手段70の一対のレール71上に載置された後、図示しない搬送手段によりチャックテーブル10まで搬送され、チャックテーブル10に保持される。被加工物Wを保持したチャックテーブル10は、加工開始位置までX軸方向に移動し、被加工物Wの外周を周方向に切削し、被加工物Wの外周の一部を除去する加工(以下、単に「除去加工」と称する)や、あるいは被加工物を分割予定ラインに沿って切削し後述する複数のデバイスをそれぞれ小片化するための分割加工などが行われる。除去加工の場合は、切削ブレード21a,21bのうち、一方または両方の切削ブレード21a,21bを被加工物Wの外周に位置させるとともに、その位置で被加工物Wを回転させることで、一方の切削ブレードにより被加工物Wの外周の一部をZ軸方向において切削し、除去する。分割加工の場合は、分割予定ラインに沿って、切削ブレード21a,21bのうち、一方または両方の切削ブレード21a,21bと被加工物Wとの相対位置を変化させながら、一方または両方の切削ブレード21a,21bにより被加工物Wを切削し、各デバイスをダイス状にダイシングテープTを残して分割する。加工が行われた被加工物Wは、図示しない搬送手段によりチャックテーブル10から洗浄・乾燥手段80まで搬送され、洗浄・乾燥手段80により洗浄・乾燥された後、図示しない搬送手段により仮置き手段70まで搬送され、搬出入手段により仮置き手段70からカセットエレベータ60に搬入される。なお、上記切削装置1による被加工物Wに対する切削加工は、2つの切削手段20a、20bを有しているので、1枚または複数枚ごとに切削手段20a、20bを交互、をあるいは一方の切削ブレードが摩耗(偏摩耗も含まれる)の限界に達してから他方の切削ブレードに交換しても良い。
【0030】
次に、本実施形態に係る切削装置1のフラットドレスについて説明する。図4は、実施形態に係る切削装置によるフラットドレスのフローを示す図である。なお、切削手段20a、20bに対するフラットドレスは同じであるので、ここでは、切削手段20aに対してフラットドレスを行う場合について説明する。切削ブレード21aに対するフラットドレスは、回転する切削ブレード21aとドレス手段50aとを相対移動させることで行われる。
【0031】
まず、制御手段90は、切削手段20aに対するフラットドレスを行う必要があるか否かを判断する(ステップST1)。ここでは、切削ブレード21aに対する偏摩耗が進行し、切削ブレード21aに対してドレス手段50aによりフラットドレスを行う必要があるか否かを判断する。なお、フラットドレスが必要であるか否かは、切削手段20aにより除去加工を行った被加工物Wに対する加工距離や摩耗量に基づいて判断することが好ましい。加工距離や摩耗量は、除去加工を行った被加工物Wの枚数、被加工物Wの直径、被加工物Wに対する被加工物Wに対する分割予定ラインの数や距離、切削ブレード21aの切り込み量、切削ブレード21aの硬度などの少なくとも1つに基づいて判断することが好ましい。
【0032】
次に、制御手段90は、切削手段20aに対するフラットドレスを行う必要があると判断する(ステップST1肯定)と、切削手段20aにより切削加工中である否かを判断する(ステップST2)。なお、切削手段20aに対するフラットドレスを行う必要がないと判断する(ステップST1否定)と、フラットドレスを行う必要があると判断されるまで、ステップST1を繰り返す。
【0033】
次に、制御手段90は、切削手段20aにより切削加工中でないと判断する(ステップST2否定)、切削手段20aに対するフラットドレスを実行する(ステップST3)。ここでは、フラットドレスが必要な切削手段20aが現時点で切削加工中でない、例えば切削装置1による被加工物Wの加工動作中である場合では、切削手段20bによる切削加工中であって、切削手段20aは切削加工中でない状態、あるいは切削装置1による被加工物Wの加工動作が行われていない状態に、フラットドレスを実行する。
【0034】
切削手段20aに対するフラットドレスでは、まず、制御手段90は、切削加工を行っておらず待機位置に位置する切削ブレード21aを、Z軸移動手段40aにより所定切り込み位置まで移動させる。ここで、所定切り込み位置は、切削ブレード21aをY軸方向においてドレッサーボード51aと対向する、すなわちZ軸方向において切削ブレード21aがドレッサーボード51aに接触することができる位置である。また、所定切り込み位置は、ドレッサーボード51aに対する切削ブレード21aの切り込み量であり、切削ブレード21aの偏摩耗度合い、切削ブレード21aに対するフラットドレスの回数、すなわち切削ブレード21aの研磨面53aに対する接触回数(例えば1回の接触でフラットドレスを行う場合は多くなり、複数回の接触を繰り返すことでフラットドレスを行う場合は少なくなる)など決定される。
【0035】
次に、制御手段90は、回転する切削ブレード21aを所定切り込み位置からY軸移動手段によりY軸方向、ここでは研磨面53aと接触する方向に移動させる。切削ブレード21aは、回転しながらY軸方向に移動することで、研磨面53aと接触し、先端がドレッサーボード51aによりフラットに整形されていく。なお、制御手段90は、切削ブレード21aと研磨面53aとが非接触となるまで、回転する切削ブレード21aをY軸方向に移動させる。つまり、制御手段90は、少なくとも回転する切削ブレード21aを研磨面53aの一端から他端まで移動させる。ここで、研磨面53aの一端から他端とは、ドレッサーボード51aの外周から径方向に対向する外周(図3に示すC1からC2あるいはC2からC1)、ドレッサーボード51aの外周から径方向に対向する開口部54a(図3に示すC1からD1あるいはC2からD2)、ドレッサーボード51aの開口部54aから径方向に対向する外周(図3に示すD1からC1あるいはD2からC2)が含まれる。従って、所定切り込み位置では、切削ブレード21aはZ軸方向視(図3の鉛直方向視)において、ドレッサーボード51aの外周近傍あるいはドレッサーボード51aの開口部54aに位置する、また、切削ブレード21aは、フラットドレスを行うために、少なくともドレッサーボード51aの直径分あるいは半径分、Y軸方向に移動することとなる。なお、制御手段90は、所定切り込み位置から切削ブレード21aをY軸方向に移動させている間、切削ブレード21aを回転させるが、回転開始は、切削ブレード21aが所定切り込み位置に移動する前、あるいは移動した後のいずれでも良い。例えば、切削手段21aによる切削加工後、待機位置に移動した切削ブレード21aの回転を停止させず、そのまま所定切り込み位置に移動させても良い。
【0036】
次に、制御手段90は、切削ブレード21aと研磨面53aとが非接触となった後、保持手段52aを回転させる。ここで、回転する切削ブレード21aを接触する研磨面53aに対してY軸方向に移動させると、研磨面53aに直線状の切削痕が形成される。研磨面53aのうち、切削痕が形成された領域(以下、単に「切削痕領域」と称する)は、切削痕が形成されていない領域(以下、単に「非切削痕領域」と称する)に対して切削ブレード21aに対する切削性能が低下するため、再びフラットドレスに用いることは好ましくない。従って、制御手段90は、再度切削ブレード21aが研磨面53aと接触する場合において、切削ブレード21aを非切削痕領域で接触させるため、Z軸方向(図3を鉛直下方から見た場合)においてブレード移動経路上に非切削痕領域が対向するように、保持手段52aを回転させる。なお、回転角度は、所定値でも良いが、切削痕の幅(切削痕が形成される方向と水平面において直交する方向における長さ)が所定切り込み位置に応じて変化するものであることから、所定切り込み位置に応じて回転角度を決定しても良い。また、非切削痕領域には、一部切削痕領域が含まれていても良い。例えば、Z軸方向(図3を鉛直下方から見た場合)においてブレード移動経路上のうち、開口部54a側で切削痕領域が含まれていても良い。この場合は、ドレッサーボード51aの回転角度を小さくすることができ、Z軸方向(図3を鉛直下方から見た場合)においてブレード移動経路上に切削痕領域を一部に含まない場合と比較して、ドレッサーボード51aを繰り返しフラットドレスに用いることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る切削装置1は、ドレッサーボード51a,51bをチャックテーブル10とは別に回転可能に配設し、切削ブレード21a、21bをドレッサーボード51a、51bに対して相対移動させることで、切削ブレード21a、21bのフラットドレスを行う。従って、フラットドレスを行うために被加工物Wをチャックテーブルから取り外し、ドレスボードをチャックテーブルに保持させてフラットドレスを行う場合と比較して、オペレータあるいは搬送手段がフラットドレスを行うための作業がなくなるため、フラットドレスの作業の簡素化を図ることができる。
【0038】
また、切削ブレード21a、21bにより被加工物Wの切削加工を行っていない時間を利用してフラットドレスを行うことができる。例えば、上記切削装置1では、切削ブレード21a、21bのうち、一方が切削加工を行っている場合は、他方の切削加工を行っていない切削ブレードに対してフラットドレスを行うことができる。また、切削ブレードが1つしかない切削装置では、加工後の被加工物Wをチャックテーブル10から取り外し、新たな被加工物Wを保持し、切削加工ができる状態となるまでの間に切削ブレードに対してフラットドレスを行うことができる。従って、被加工物Wの切削加工を中断せずに、あるいは中断するとしても、中断する時間を短くすることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0039】
また、ドレッサーボード51a,51bの研磨面53a,53bをリング状とし、中心軸線Bを中心に回転可能としたので、切削ブレード21a,21bをY軸方向に移動させることで研磨面53a,53bに切削痕が形成されても、ドレッサーボード51a,51bを回転させることで、再び切削ブレード21a,21bをY軸方向に移動させる際に、切削ブレード21a,21bが非切削痕領域と接触することができる。従って、ドレッサーボード51a,51bを回転させることで、繰り返しフラットドレスに用いることができるので、生産性を向上することができる。研磨面が円盤状では、フラットドレスを繰り返し行うために中心軸線を中心に回転させても、中心軸線上の研磨面を切削ブレードが何度も通過することとなり、また切削ブレードを研磨面と非接触とさせるために、切削ブレードを直径分移動させることとなる。しかしながら、研磨面53a,53bがリング状であると、切削ブレード21a,21bをドレッサーボード51a,51bに対して半径分移動させることで、切削ブレード21a,21bを研磨面53a,53bと非接触とすることができ、切削ブレード21a,21bを直径分移動させてフラットドレスを行う必要がない。また、切削ブレード21a,21bを直径分移動させても、中心軸線B上に開口部54a,54bが形成されているので、研磨面53a,53bを切削ブレード21a,21bが何度も通過することがなくなる。従って、ドレッサーボード51a,51bの耐久性を向上することができる。さらに、切削加工中に、切削手段20a,20bと被加工物Wとの相対移動を行うための移動手段を用いることなく、Z軸方向(図3を鉛直下方から見た場合)においてブレード移動経路上に非切削痕領域を位置させることができる。従って、被加工物Wの切削加工を中断させることがないので、生産性の向上を図ることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、ドレッサーボード51a、51bは、研磨面53a、53bが形成されたリング状の1つの部材として構成されているが本発明はこれに限定されるものではなく、研磨面53a、53bを含むドレス層とドレス層が形成されたベース層とを積層することで構成されていても良い、この場合、ドレス層のみがリング形状に構成されていても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20a、20b 切削手段
30a、30b Y軸移動手段
40a、40b Z軸移動手段
50a、50b ドレス手段
51a、51b ドレッサーボード
52a、52b 保持手段
53a、53b 研磨面
54a、54b 開口部
60 カセットエレベータ
70 仮置き手段
80 洗浄・乾燥手段
90 制御手段
A 回転軸線
B 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面である表面に被加工物を保持するチャックテーブルと、回転可能なスピンドルおよび該スピンドルに装着された切削ブレードを有する切削手段と、該スピンドルを該スピンドルの回転軸線と平行な方向であるY軸方向に移動させるY軸移動手段と、該スピンドルをチャックテーブルに接近および離間する方向であるZ軸方向に移動させるZ軸移動手段とを備える切削装置であって、
該チャックテーブルに隣接し、かつY軸移動手段による該切削ブレードの移動経路上に配設されたドレス手段をさらに備え、
該ドレス手段は、水平面である研磨面がZ軸方向のうち離間方向に向かって配設されるドレッサーボードと、該ドレッサーボードを保持し、中心軸線を中心に回転可能な保持手段とを有し、
該保持手段により保持されているドレッサーボードの研磨面の高さは、該チャックテーブルの表面の高さと同一または低いことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該ドレス手段により該切削ブレードをドレスする場合は、該切削ブレードをY軸方向において該ドレッサーボードと対向する所定切り込み位置に移動させ、該所定切り込み位置から回転する該切削ブレードを該Y軸移動手段により該研磨面と接触する方向に移動させ、該切削ブレードと該研磨面とが非接触となった後、Z軸方向において該移動経路上に該研磨面のうち切削痕を除く領域が対向するように、該保持手段を回転させることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該ドレス手段は、該回転軸線上に該中心軸線が位置するように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82021(P2013−82021A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222276(P2011−222276)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】