説明

切断刃の再生方法と再生設備

【課題】 エッジ部が摩耗した切断刃を、安定した品質で再生することが効率良くできる切断刃の再生方法を提供すること。
【解決手段】 固定部から外向きに突出する刃先部を備え、この刃先部は回転方向に尖った先端エッジ部を有し、この刃先部を含む側面外形端にサイドエッジ部を有する切断刃を再生するために、補修可能な前記切断刃のエッジ部に所定の面取りを行う面取り工程S5と、この面取りを行った切断刃を所定温度に予熱処理する予熱工程S6と、この予熱処理した切断刃の面取りを行っているエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に自動肉盛り溶接する肉盛り溶接工程S9と、この肉盛り溶接した切断刃を所定温度で後熱処理する後熱工程S12と、この後熱処理した切断刃の前記肉盛り溶接部分を所定のエッジ部に再生加工する加工工程S13,S14とを順次行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断式破砕機等に用いられる切断刃を再生する方法と、その再生設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、木片、紙、金属、ゴム、繊維、及び皮革等の固形状の被破砕物を剪断破砕する剪断式破砕機が知られている。例えば、この種の剪断式破砕機として、本出願人が先に出願した剪断式破砕機がある(特許文献1参照)。
【0003】
図18の剪断式破砕機を示す平面図と、図19の図18に示すXIX−XIX断面図とに示すように、この剪断式破砕機100は、回転軸101,102の軸方向に、複数の回転刃103がスペーサ104を挟んで交互に設けられている。スペーサ104は、回転刃103を軸方向に位置決めして固定しており、上記回転刃103の基部を軸方向に位置決めできる外径で形成されている。
【0004】
これらの回転刃103は、回転軸101,102に固定される刃台部106と、この刃台部106の周囲を取り囲むように固定される分割式の切断刃105とを有しており、対向して回転方向Rに回転する回転刃103の側面間には、例えば、0.5mm〜1mm程度の軸方向隙間を設けた状態で互いの切断刃105が噛合うようにラップした状態で配設されている。この回転刃103の外周に設けられた上記切断刃105は、被破砕物120を引き込むとともに対向する回転刃103との間の剪断作用によって被破砕物120を破砕する。
【0005】
また、上記切断刃105の取付面には係合段部107が設けられており、刃台部106に設けられた係合突起108と係合して破砕反力を受けるようになっている。この分割式の切断刃105は、外向きに突出する刃先部の回転方向に尖った先端エッジ部109と、側面外形に沿ったサイドエッジ部110(側縁)とを具備しており、剪断破砕によって早期摩耗するこれらのエッジ部109,110を具備した切断刃105を分割式とすることにより、磨耗しても切断刃105のみを交換できるようにしている。以下の説明では、この分割式切断刃105を主に説明する。
【0006】
ところで、この種の剪断式破砕機における切断刃105は、先端エッジ部109で被破砕物の引き込み及び破砕を行い、この先端エッジ部109及びサイドエッジ部110で剪断破砕を行うため、上記先端エッジ部109及びサイドエッジ部110に早期摩耗を生じる。
【0007】
この早期摩耗としては、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110がラウンド状になる摩耗であり、この摩耗を生じると破砕性能が低下して破砕効率が落ちてしまう。また、被破砕物によっては上記エッジ部109,110に欠損等を生じることがあり、この欠損を生じても、破砕性能が低下して破砕効率が落ちてしまう。そのため、このような摩耗・欠損(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、これら「摩耗」と「欠損」とを総称して「磨損」という)が発生した場合には、一般的に、その都度新しい切断刃105に交換している。
【0008】
しかしながら、このような切断刃105は、1台の破砕機で複数枚が使用されており、特に上記したような分割式の切断刃105を採用している破砕機では、例えば1台で数十個の切断刃105が使用されており、交換のために多くの費用を要する。
【0009】
しかも、このような切断刃105は、耐摩耗性を高めるために全体が合金工具鋼のような高価な材料で製造されており、上記したように多くの切断刃105が使用されている剪断式破砕機の場合には、その切断刃105の全てを新品に交換しようとすると多大な費用を要する。また、資源の有効活用にならない。
【0010】
そこで、この種の従来技術として、本出願人は、例えば、基材部分(中心台金部)は廉価な炭素鋼等で形成し、刃先部の先端エッジ部等の表面部を耐摩耗性・衝撃性等に優れた特殊粉末合金層で形成して刃先部の寿命を延ばすようにした発明を先に出願した(特許文献2参照)。しかし、この発明のように切断刃105の一部を特殊粉末合金層で形成するには、製造設備や加工作業等に費用を要する場合があり、実現化は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−323232号公報
【特許文献2】特許第2851000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記したように、磨損した切断刃105の全てを新品に交換するには多大な費用を要するため、上記磨損を生じた切断刃105のエッジ部に硬化肉盛溶接材を肉盛り溶接し、その肉盛り溶接した部分をエッジ部109,110に再生加工して切断刃105自体を再利用しようとする考えがある。
【0013】
しかし、このような再生は、作業者の熟練度によって肉盛り溶接の品質や状態が異なり、仕上がりに差が生じて安定した品質を保つのは難しい。しかも、多数の切断刃105を再生するには非常に多くの時間を要するため、実現化は難しい。
【0014】
一方、仮に、切断刃105のエッジ部を自動機械で再生する場合、切断刃105のエッジ部形状が、外向きに突出する刃先部の回転方向に尖った先端エッジ部109と、この先端エッジ部109に連続するような曲面形状のサイドエッジ部110で形成されているため、そのようなエッジ部の一部が磨損しているような場合等に、その部分で自動機械による自動肉盛り溶接が停止してしまうトラブル(以下、「チョコ停」という)が発生し、自動肉盛り溶接の再開のために再起動などの処置によって現状復帰させるまで設備が停止して生産効率を落としてしまう。しかし、切断刃105の再生において、この「チョコ停」を防止するための有効な対策はない。
【0015】
そこで、本発明は、エッジ部が摩耗した切断刃を、安定した品質で再生することが効率良くできる切断刃の再生方法と再生設備とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る切断刃の再生方法は、固定部から外向きに突出する刃先部を備え、該刃先部は回転方向に尖った先端エッジ部を有し、該刃先部を含む側面外形端にサイドエッジ部を有する切断刃の再生方法であって、補修可能な前記切断刃のエッジ部に所定の面取りを行う面取り工程と、該面取りを行った切断刃を所定温度に予熱処理する予熱工程と、該予熱処理した切断刃の面取りを行っているエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に自動肉盛り溶接する肉盛り溶接工程と、該肉盛り溶接した切断刃を所定温度で後熱処理する後熱工程と、該後熱処理した切断刃の前記肉盛り溶接部分を所定のエッジ部に再生加工する加工工程とを順次行うことを特徴とする。これにより、補修可能な切断刃のエッジ部に面取りをした後、予熱処理して自動肉盛り溶接で硬化肉盛溶接材料の肉盛り溶接を行い、後熱処理した後に肉盛り溶接部分を所定のエッジ部に再生加工して切断刃を再生させることができる。しかも、自動肉盛り溶接を行うことにより、再生したエッジ部の品質が安定した切断刃とすることができる。
【0017】
また、前記面取り工程の前又は後に切断刃の摩耗状態に応じて補修可能か否かを判定する判定工程を行い、該判定工程で切断刃の摩耗状態から肉盛り溶接前に手修正が必要と判断した切断刃に対して前記予熱工程後に手修正を行うようにしてもよい。このようにすれば、予め自動肉盛り溶接に適さない摩耗状態の部分があることを溶接前に確認し、そのような部分があれば自動肉盛り溶接前に手修正して自動肉盛り溶接の安定化を図ることができる。
【0018】
また、前記肉盛り溶接工程後に、該肉盛り溶接の肉盛り状態の適否を検査する検査工程を行い、該検査工程で不適切と判断した肉盛り部分に適正な肉盛り溶接を行う修正工程を行うようにしてもよい。このようにすれば、欠損箇所等に十分な肉盛りができていない場合でも、検査によって肉盛り量を確認して切断刃が予熱された状態で修正することができる。
【0019】
さらに、前記肉盛り溶接工程を、前記切断刃の外向きに突出する刃先部の回転方向に尖った先端エッジ部の下面にタブを当てて該先端エッジ部の肉盛り溶接を行った後、前記サイドエッジ部に肉盛り溶接を行うようにしてもよい。このようにすれば、先端エッジ部の尖った部分の肉盛り溶接の下面をタブで平面に仕上げることができ、その後のサイドエッジ部の溶接によってもタブを当てた部分の平面を保つことができるので、肉盛り溶接後の加工を簡略化することができる。
【0020】
さらに、前記予熱工程と、肉盛り溶接工程と、後熱工程との間における切断刃の移動をロボットで行うようにしてもよい。このようにすれば、エッジ部が複雑な形状の切断刃であっても、自動溶接前の予熱処理から自動溶接後の後熱処理までの切断刃の移動を迅速に安定して行うことができる。
【0021】
また、前記ロボットによる切断刃の移動を、該切断刃の前記肉盛り溶接時における溶接姿勢が、下向きで且つ前上がりとなるように該切断刃を変位させるようにしてもよい。このようにすれば、切断刃の肉盛り溶接時には、硬化肉盛溶接材料の肉盛りが安定するように下向き前上がりの溶接姿勢で安定して行うことができる。
【0022】
一方、本発明に係る切断刃の再生設備は、固定部から外向きに突出する刃先部を備え、該刃先部は回転方向に尖った先端エッジ部を有し、該刃先部を含む側面外形端にサイドエッジ部を有する切断刃の再生設備であって、補修可能な前記切断刃を搬入出させる搬入出機と、該搬入出機で搬入した切断刃を移動させるハンドリングロボットと、前記切断刃を所定温度に予熱処理する予熱機と、該予熱機で予熱した切断刃を保持し、該切断刃を所定の溶接姿勢に変位させる多軸保持機と、該多軸保持機で変位させる切断刃の姿勢に応じて該切断刃のエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に自動肉盛り溶接する自動溶接機と、該自動溶接機で肉盛り溶接した切断刃を所定温度で後熱処理する後熱機と、前記切断刃を、前記予熱機に搬送して予熱処理し、該予熱処理後に前記多軸保持機に搬送して保持し、該多軸保持機で姿勢変位させながらエッジ部に前記自動溶接機で肉盛り溶接し、該肉盛り溶接後に前記後熱機に搬送して後熱処理する制御装置とを有していることを特徴とする。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「連続的に自動肉盛り溶接する」ことは、エッジ部の一端から他端まで連続的に溶接することをいう。これにより、補修可能な切断刃は、ハンドリングロボットによって予熱機に移動されて予熱処理された後に多軸保持機で保持され、この多軸保持機で姿勢制御されながら自動溶接機によって硬化肉盛溶接材料がエッジ部に溶接され、後熱機で後熱処理されるので、後熱処理された切断刃の肉盛り溶接部を所定のエッジ部に再生加工すれば切断刃を再生することができる。しかも、自動肉盛り溶接を行うことにより、品質の安定したエッジ部の再生ができる。
【0023】
また、前記ハンドリングロボットは、前記自動溶接機によるエッジ部の肉盛り溶接時に、反自動溶接機側にフッラックスタブを当てて保持する機能を具備していてもよい。このようにすれば、エッジ部の反自動溶接機側がタブで平面となった肉盛り溶接ができるので、肉盛り溶接後の加工を簡略化することができる。
【0024】
さらに、前記多軸保持機は、前記肉盛り溶接時に、溶接姿勢が下向き溶接で、且つ前上がりの溶接姿勢となるように前記切断刃を変位させる機能を具備していてもよい。このようにすれば、切断刃の肉盛り溶接時に、硬化肉盛溶接材料の肉盛り溶接が安定して行えるように下向き前上がりの姿勢で安定して行うことができる。
【0025】
また、前記自動溶接機は、前記多軸保持機による切断刃の変位と協動して、下向きで且つ前上がりの溶接姿勢となるように該自動溶接機が具備した溶接トーチを変位させる機能を有していてもよい。このようにすれば、より安定して切断刃の肉盛り溶接を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エッジ部が摩耗した切断刃を効率良く再生することができるとともに、再生した切断刃の品質を安定させることが可能となる。また、これにより、剪断式破砕機における切断刃のランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る再生設備を示す平面図である。
【図2】図1に示す再生設備のハンドリングロボットの図面であり、(a) は側面図、(b) は(a) に示すII矢視図である。
【図3】図1に示す再生設備の多軸保持機を示す図面であり、(a) は平面図、(b) は側面図である。
【図4】図1に示す再生設備の自動溶接機を示す側面図である。
【図5】図1に示す再生設備による切断刃の再生方法の概略を示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートの予熱処理時に予熱機へ切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。
【図7】図5に示すフローチャートの予熱処理後の切断刃を多軸保持機に保持した状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示すフローチャートの肉盛り溶接時における切断刃の先端エッジ部を溶接する状態を示す図面であり、(a) は斜視図、(b) は側面図である。
【図9】(a) 〜(c) は、図8に示す先端エッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。
【図10】図5に示すフローチャートの肉盛り溶接時における切断刃のサイドエッジ部を溶接する状態を示す斜視図である。
【図11】(a),(b) は、図10に示すサイドエッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。
【図12】図11に示すサイドエッジ部とは異なるサイドエッジ部を溶接する状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示すサイドエッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。
【図14】図13に示すサイドエッジ部の溶接後にスラグ除去する状態を示す斜視図である。
【図15】(a) は、図5に示すフローチャートの肉盛り溶接後の検査の状態を示す斜視図であり、(b) は手修正の状態を示す斜視図である。
【図16】図5に示すフローチャートの後熱処理時に後熱機へ切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。
【図17】(a) は図16に示す後熱処理を行った後の切断刃を配設した回転刃を示す側面図であり、(b) は他の切断刃を示す側面図である。
【図18】従来の剪断式破砕機を示す平面図である。
【図19】図18に示すXIX−XIX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る再生設備を示す平面図であり、主要部を示している。なお、この実施の形態の図面では、後述する切断刃3の粗加工と仕上加工とに要する構成は省略し、切断刃3に肉盛り溶接を行う構成のみを説明する。
【0029】
図示するように、この実施の形態の再生設備1の肉盛り溶接を行う構成は、所定範囲で区切られた仕切り壁2内に設けられており、この仕切り壁2内に切断刃3を搬入出させる搬入出機15と、仕切り壁2内で切断刃3を所定位置に移動させるハンドリングロボット20と、切断刃3を所定温度まで予熱する予熱機60と、予熱した切断刃3を所定の溶接姿勢に保つ多軸保持機40と、この多軸保持機40で保持した切断刃3に対して硬化肉盛溶接材を自動肉盛り溶接する自動溶接機50(溶接ロボット)と、肉盛り溶接を行った切断刃3に対して徐冷等の後熱処理を行う後熱機70とを備えている。上記搬入出機15には、切断刃3を載置する載置部16が設けられ、この載置部16が搬送部17によって仕切り壁2の内外に移動させられるようになっている。
【0030】
また、上記ハンドリングロボット20の作業範囲W20内には、複数の切断刃3を所定番地に待機させる待機部4と、溶接時に使用するタブ5を載置するタブ台6と、スラグ除去用のブラシ7と、上記自動溶接機50の溶接トーチ55の清掃等を行う溶接トーチ調整機56とが備えられている。上記切断刃3は、待機部4の所定番地に配置され、切断刃3の種類や予熱時間等が後述する制御装置80に入力される。この時、後述する「手修正が必要な切断刃」をどの番地に待機させているか等の情報も制御装置80に入力される。また、タブ5も、タブ台6の所定位置に配置される。
【0031】
さらに、上記仕切り壁2の外部には、上記所定番地に配置された切断刃3の座標、タブ5の配置座標、その他の各機器の配置座標に基いてハンドリングロボット20、多軸保持機40、自動溶接機50等の動作を制御する制御装置80が備えられている。また、上記予熱機60と後熱機70との温度制御等を行う予熱・後熱機制御装置81と、仕切り壁2の外部の搬入出機15上に形成された判定部82において切断刃3の修正等を行う手修正溶接機83も備えられている。
【0032】
上記ハンドリングロボット20は、待機部4に配置した切断刃3を予熱機60へ移動、予熱機60から多軸保持機40へ移動、多軸保持機40から後熱機70へ移動、予熱機60及び後熱機70と搬入出機15との間での移動等、切断刃3を作業範囲W20内で移動させる。また、タブ台6上のタブ5、ブラシ7を保持し、多軸保持機40に保持された切断刃3に接するように移動させる。
【0033】
上記予熱機60は、切断刃3を肉盛り溶接に適した温度まで予熱できる機能を有している。
【0034】
上記多軸保持機40は、切断刃3を保持し、肉盛り溶接の位置に応じて切断刃3の姿勢を変更できる機能を有している。
【0035】
上記自動溶接機50は多軸の自動溶接ロボットであり、作業範囲W50内で溶接トーチ55の位置を変更できるようになっており、上記溶接トーチ調整機56は、この溶接トーチ55の先端のワイヤ長調整、トーチのスパッタ除去、トーチ内部の清掃等を行う機能を有している。
【0036】
上記後熱機70は、上記ハンドリングロボット20で開閉口71から入れた切断刃3を所定温度で徐冷等の後熱処理を行う機能を有している。この後熱機70は、開閉口71の外部で載置台72に切断刃3を載置して入れ、後熱処理した切断刃3は反開閉口側へ順に出すようにしてもよい。
【0037】
図2は、図1に示す再生設備のハンドリングロボットの図面であり、(a) は側面図、(b) は(a) に示すII矢視図である。図3は、図1に示す再生設備の多軸保持機を示す図面であり、(a) は平面図、(b) は側面図である。
【0038】
図2(a) に示すように、上記ハンドリングロボット20としては多関節ロボットが採用されており、床に固定される基台21と、下部アーム22、上部アーム23、及び手首24を有している。下部アーム22は、下端部が鉛直な第1軸J1まわりに旋回可能に基台21に設けられるとともに、水平な第2軸J2まわりに前後に角変位可能に基台21に設けられている。下部アーム22の上端部には上部アーム23の基端部が、水平な第3軸J3まわりに上下に角変位可能に設けられている。上部アーム23の先端部に取付けられる手首24は、上部アーム23の軸線に平行な第4軸J4まわりに角変位可能に設けられるとともに、上部アーム23の軸線に直交する第5軸J5まわりで角変位可能となっている。この手首24に取付けられる把持部25は、第5軸J5に直交する第6軸J6まわりで角変位可能となっている。
【0039】
また、この把持部25には、予熱して高温となった切断刃3(図1)を可動片26aで把持できる第1把持部26と、図2(b) に示すように、この第1把持部26と直交する方向に移動する可動片27aを有する第2把持部27とを備えている。
【0040】
上記多関節型ロボット20の各軸J1〜J6に対する各構成の駆動は、それぞれ図示しないサーボモータによって行われ、これらのサーボモータによって、ロボット20の姿勢が制御され、上記把持部25が上記作業範囲W20(図1)内で移動させられる。また、把持部25の第1把持部26と第2把持部27とは、液圧シリンダ26b,27bによって開閉される。
【0041】
図3(a),(b) に示すように、上記多軸保持機40(ポジショナー)は、基礎上に固定される基台41と、傾倒部42、回転部43、及び保持部44を有している。傾倒部42は、水平な第7軸J7まわりに傾倒可能に基台41に設けられている。回転部43は、傾倒部42上で第7軸J7と直交する第8軸J8まわりで回転可能なように設けられている。保持部44は、回転部43上の所定位置に切断刃3(図7)を保持するように、位置保持部材44aと固定部材45とを有している。固定部材45は可動体であり、位置保持部材44aとの間で切断刃3を保持する。これにより、保持部44に保持された切断刃3は、回転部43の回転と傾倒部42の傾倒とによって姿勢制御される。
【0042】
図4に示すように、上記自動溶接機50は多関節ロボットであり、床に固定される基台51、下部アーム52、上部アーム53、及び手首54を有している。下部アーム52は、下端部が鉛直な第9軸J9まわりで旋回可能なように基台51に設けられるとともに、水平な第10軸J10まわりに前後に角変位可能に基台51に設けられている。下部アーム52の上端部には上部アーム53の基端部が、水平な第11軸J11まわりで上下に角変位可能なように設けられている。上部アーム53の先端部に設けられる手首54は、上部アーム53の軸線と平行な第12軸J12まわりで回転可能なように設けられるとともに、上部アーム53の軸線に直交する第13軸J13まわりで角変位可能となっている。この手首54に取付けられる溶接トーチ55は、手首54の制御によって角変位可能となっている。
【0043】
この手首54に設けられた溶接トーチ55は、上記下部アーム52、上部アーム53、及び手首54を図示しないサーボモータで駆動することによって姿勢制御される。この溶接トーチ55の姿勢制御は、上記多軸保持機40による切断刃3の姿勢制御とともに行われる。この溶接トーチ55は、上記作業範囲W50内で移動可能となっている。
【0044】
図5は、図1に示す再生設備による切断刃の再生方法の概略を示すフローチャートである。このフローチャートと上述した図1とに基いて、上記再生設備1による切断刃3の再生方法の概略を以下に説明する。
【0045】
<判定>
まず、摩耗した切断刃3が入庫されると、その切断刃3の摩耗状態から、補修可能か否かの判定が行われる(S1)。この判定で、補修不可能と判定されると、再生されることなく処分される(S2)。また、補修可能と判定された切断刃3でも、手修正が必要か否かの判断が行われ(S3)、手修正が必要な場合は制御装置80に手修正が必要であることが入力されて記憶される(S4)。この手修正が必要か否かの判断は、上記「チョコ停」を生じるような磨損があるか否かで判断される。
【0046】
<必要加工>
上記判定で補修可能と判定されると、後述する先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに必要な面取り・開先加工が行われる(S5)。この面取り・開先加工は、磨耗したエッジ部31,32の均一化、アーク長を一定に保つことによる溶接の安定化、溶融金属の品質一定化、硬度の一定化、等のために行われる。また、この面取り・開先加工としては、肉盛り溶接の肉盛り量、硬化肉盛溶接材料の種類等に応じた面取り・開先加工が行われる。
【0047】
<予熱処理>
予熱処理としては、切断刃3の材質、大きさ等に応じて肉盛り溶接に適した温度に予熱できる予熱機60において所定時間予熱される(S6)。
【0048】
<手修正>
上記予熱処理によって所定温度まで予熱された切断刃3で、上記手修正が必要と判定されている切断刃3は(S7)、上記搬入出機15により判定部82まで移送されて作業者Mによる手修正が行われる(S8)。この手修正は、次の自動溶接機50による自動溶接に問題を生じないようにする肉盛り溶接がエッジ部31,32に行われる。
【0049】
<肉盛り溶接>
上記手修正が不要な切断刃3及び手修正を行った切断刃3は、上記自動溶接機50によってエッジ部31,32に後述するように肉盛り溶接30が行われる(S9)。この肉盛り溶接30としては、アーク溶接により、上記面取りを行ったエッジ部31,32に行われる。この肉盛り溶接時には、予め制御装置80に入力されている切断刃3の溶接位置と、多軸保持機40の座標、自動溶接機50の溶接トーチ55先端の座標等によって最適な位置となるように各軸J1〜J13を制御しながらエッジ部31,32の一端部から他端部まで連続的に行われる。
【0050】
<点検>
上記肉盛り溶接30を行った後、その肉盛り溶接30によって盛られた肉に不足部分等を生じていないかが作業者によって点検される(S10)。この点検時に肉盛り不足の部分がある場合には、手修正によって補修されて必要な量の硬化肉盛溶接材料が肉盛りされる(S11)。
【0051】
<後熱処理>
上記したように先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30が行われた切断刃3は、その後、所定温度で徐冷等の後熱処理が行われる(S12)。この後熱処理により、摩耗した切断刃3のエッジ部31,32への硬化肉盛溶接材の肉盛り溶接30が完了する。
【0052】
<粗加工>
上記肉盛り溶接30が行われた切断刃3は、まず、縦型ミーリングマシン等により、肉盛りされたサイドエッジ部32と先端エッジ部31の背面の余肉が粗加工によって除去される(S13)。
【0053】
<仕上加工>
次に、ロータリ研磨機等により、両側面の研磨と、先端エッジ部31の研磨等が行われ、切断刃3の先端エッジ部31とサイドエッジ部32とが再生加工されて所定のエッジに仕上げられる(S14)。
【0054】
なお、これら<粗加工><仕上加工>の機械加工は、例えば、工具マガジンに格納した複数の切削工具を自動的に交換する自動工具交換機能を有し、目的に合わせてコンピュータ数値制御(CNC)の指令によって工具を自動的に交換して、異種の機械加工を1台で行うことができる工作機械(マシニングセンタ)で行うようにしてもよい。
【0055】
以下、図6〜図16に基いて、上記図5のフローチャートに示す主要な工程を詳細に説明する。なお、以下の説明でも分割式切断刃3を例にし、上述した図面中で説明した構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0056】
図6は、図5に示すフローチャートの予熱処理時に予熱機へ切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。図7は、図5に示すフローチャートの予熱処理後の切断刃を多軸保持機に保持した状態を示す斜視図である。
【0057】
図6に示すように、予熱機60は、切断刃3を載置する支持台61と、この支持台61と一体的に開閉する蓋体62が水平方向にスライドするようになっており、図示するように、支持台61に切断刃3を載置した状態で蓋体62を閉じれば、切断刃3が予熱機60内に格納される。この予熱機60の支持台61への切断刃3の載置は、上記待機部4の所定番地に配置された切断刃3をハンドリングロボット20が把持して移動させることにより行われる。この予熱機60により、切断刃3の材質や大きさ等に応じて肉盛り溶接に適した温度(例えば、150〜500℃程度)まで予熱される。
【0058】
図7に示すように、上記予熱機60による予熱処理が完了した切断刃3は、上記ハンドリングロボット20によって多軸保持機40へ移動させられ、多軸保持機40の保持部44に保持される。この切断刃3の保持は、保持部44の位置保持部材44aに当接するようにハンドリングロボット20で移動させられた切断刃3が、固定部材45で位置保持部材44aとに挟まれて保持される。
【0059】
また、上記図5に示す手修正が必要か否かの判断(S3)で手修正が必要と判断された切断刃3は、この多軸保持機40に保持される前に上記搬入出機15で判定部82まで移動させられて手修正が行われる(図1)。
【0060】
図8は、図5に示すフローチャートの肉盛り溶接時における切断刃の先端エッジ部を溶接する状態を示す図面であり、(a) は斜視図、(b) は側面図である。図9(a) 〜(c) は、図8に示す先端エッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。図10は、同肉盛り溶接時における切断刃のサイドエッジ部を溶接する状態を示す斜視図であり、図11(a),(b) は、図10に示すサイドエッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。図12は、図11に示すサイドエッジ部とは異なるサイドエッジ部を溶接する状態を示す斜視図であり、図13は、図12に示すサイドエッジ部の溶接時における手順を示す斜視図である。なお、上記図9、図11、図13では、説明上、切断刃3を水平にした状態にし、切断刃3の各角位置(端部位置)に記号(A) 〜(F) を付し、作業順に(1) 〜(9) を付して説明する。
【0061】
図8(a) に示すように、多軸保持機40に保持された切断刃3のエッジ部31,32への肉盛り溶接は、まず先端エッジ部31に行われる。この先端エッジ部31は、回転方向前側に尖っているので、上記ハンドリングロボット20によって反溶接機側(下面側)にタブ5を当てた状態で、上側から自動溶接機50の溶接トーチ55によって肉盛り溶接が行われる。つまり、図8(b) に示すように、タブ5を先端エッジ部31の下面に沿うように反溶接トーチ側(反溶接機側)に当て、溶接トーチ55によって上側から溶接することにより、肉盛り溶接の肉が反溶接トーチ側に盛られるのを防止して、溶接後の先端エッジ部31への再生加工が容易に行えるようにしている。このタブ5(当て板)は、耐火性のセラミック製ブロックや銅などの金属製ブロックが用いられる。
【0062】
また、この溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を保ちながら行われる。この溶接姿勢は、上記多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0063】
図9(a) 〜(c) に示すように、上記先端エッジ部31への肉盛り溶接の詳細は、(a) のように、まず先端エッジ部31の厚み方向両端部(A),(B) 位置に溶接トーチ55でアークスポット溶接33,34を順に行う[(1),(2)] 。そして、(b) に示すように、その先端エッジ部31のアークスポット溶接33,34間に肉盛り溶接30が連続的に行われる[(3)]。この肉盛り溶接30は、先にアークスポット溶接33を行った(A) 位置から(B) 位置に向けて行われ、アークスポット溶接33,34による効果的な溶接だれ防止を図っている。また、(c) に示すように、この例では、2層の肉盛り溶接30を行うようにしている。この先端エッジ部31への肉盛り溶接30は、最も磨耗しやすいので2層以上が好ましい。
【0064】
次に、図10に示すように、切断刃3のサイドエッジ部32に肉盛り溶接がされる。この肉盛り溶接も、溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を制御しながら行われる。この溶接姿勢も、上記多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0065】
図11(a) ,(b) に示すように、このサイドエッジ部32への肉盛り溶接30は、(a) に示すように、切断刃3の反回転方向端部における鋭角部の厚み方向両端部(C),(D) 位置に、アークスポット溶接35,36を順に行い[(4),(5)]、(b) に示すように、そのアークスポット溶接35,36を行った端部(C),(D) 位置から上記先端エッジ部31の(A),(B) 位置に向けて肉盛り溶接30が連続的に行われる[(6),(7)]。この肉盛り溶接30も、先に行った上記アークスポット溶接35の(C) 位置から先端エッジ部31の(A) 位置に向けて行われ、アークスポット溶接35,36による効果的な溶接だれ防止を図っている。
【0066】
次に、図12に示すように、先端エッジ部31を挟んだ他方のサイドエッジ部32に肉盛り溶接がされる。この肉盛り溶接も、溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を制御しながら行われる。この溶接姿勢も、上記多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0067】
図13に示すように、このサイドエッジ部32への肉盛り溶接30は、サイドエッジ部32の周方向端部(E),(F) 位置から上記先端エッジ部31の(A),(B) 位置に向けて肉盛り溶接30が連続的に行われる[(8),(9)]。この周方向端部(E),(F) 位置は、端部の角が鋭角ではないため、上記したようなアークスポット溶接35,36を行うことなく肉盛り溶接30が行われる。
【0068】
図14は、図13に示すサイドエッジ部の溶接後にスラグ除去する状態を示す斜視図である。上記したようにして、切断刃3の先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30(図13)が完了すると、その肉盛り溶接30のスラグを除去するためにハンドリングロボット20が第1把持部26でブラシ7を把持し、サイドエッジ部32に沿ってブラシ7を移動させることによってスラグが除去される。
【0069】
また、このようにスラグ除去する時間を利用し、自動溶接機50の溶接トーチ55は、次の溶接に備えて、図1に示す溶接トーチ調整機56によってワイヤーの調整、トーチのスパッタ除去、トーチ内部の清掃、ワイヤー長の調整等が行われる。
【0070】
なお、サイドエッジ部32に複数層の肉盛り溶接30をする場合、奇数層と偶数層とで溶接の進行方向を逆にすることにより、溶接ビード終端における凹みを分散させるようにすればよい。
【0071】
図15(a) は、図5に示すフローチャートの肉盛り溶接後の検査の状態を示す斜視図であり、(b) は手修正の状態を示す斜視図である。図示するように、上記自動溶接機50による肉盛り溶接30が完了すると、その切断刃3は搬入出機15によって一旦判定部82に搬出され、作業者Mによる目視の検査が行われる(図1)。この検査は、図15(a) に示すように、肉盛り溶接30の盛り量等が検査治具84によって検査される。この検査で肉盛り量に不足がある場合、図15(b) に示すように、作業者Mが手修正溶接機83(図1)の溶接トーチ83aによって手作業で肉盛り溶接を行って修正する。
【0072】
図16は、図5に示すフローチャートの後熱処理時に後熱機へ切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。上記したような検査が行われた切断刃3は、再び搬入出機15によって仕切り壁2の内部に搬入され(図1)、ハンドリングロボット20によって後熱機70の載置台72に載置され、開閉口71から後熱機70内に入れられる。この切断刃3は、後熱機70内で所定時間の後熱処理が行われる。
【0073】
この後熱機70によって後熱処理された切断刃3は、上記ハンドリングロボット20によって上述した待機部4の所定番地に戻される(図1)。この後熱処理された切断刃3は、図示しない加工機によって、上記粗加工と仕上加工とが行われて、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32が再生された切断刃3となる。
【0074】
以上のような図8〜図16に示す切断刃の再生方法は、切断刃3に手修正が必要な物が含まれるような場合の説明であり、手修正を行うことによって自動溶接機50が自動溶接中に上記した「チョコ停」を生じるのを防止する必要が無いような切断刃3のみの場合には、上記手修正に関する工程を省くようにすればよい。
【0075】
図17(a) は、図16に示す切断刃を配設した回転刃を示す側面図であり、(b) は他の切断刃を示す側面図である。
【0076】
図17(a) に示すように、上記再生した分割式の切断刃3によれば、刃台部106(図19と同一構成)の周囲に取付けた状態で先端エッジ部31とサイドエッジ部32の全周方向に硬化肉盛溶接材料を肉盛り溶接した回転刃10として再生することができるので、新品に交換する場合に比べて費用を抑えて切断刃3に要するランニングコストを下げた剪断式破砕設備の運用が可能となる。しかも、回転方向Rに向けて回転する回転刃10のエッジ部全周が硬化肉盛溶接材料となり、エッジ部の硬度が高い回転刃10を形成することができる。
【0077】
また、図17(b) に示すように、上記実施の形態では分割式切断刃3を例に説明しているが、一体式切断刃11においても同様に再生することができる。この上記切断刃3と刃台部106とが一体形成された一体式切断刃11の場合、上述した多軸保持機40が一体式切断刃11を保持して姿勢制御できる構成に変更され、先端エッジ部31の端部から次の先端エッジ部31の端部までのサイドエッジ部32が、連続的に自動肉盛り溶接される。そして、この先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30を行った一体式切断刃11によれば、最も仕事をする先端エッジ部31とサイドエッジ部32とが硬度の高い硬化肉盛溶接材料となった一体式切断刃11として再生することができるので、新品に交換する場合に比べて費用を抑えて一体式切断刃11に要するランニングコストを下げた剪断式破砕設備の運用が可能となる。このように、本発明は分割式切断刃3に限定されるものではなく、一体式切断刃11にも適用できる。
【0078】
なお、上記実施の形態の再生設備1では、再生する切断刃3に肉盛り溶接30を行う構成を主に説明したが、入庫された切断刃3のエッジ部31,32に対する面取り加工を行う装置、及び肉盛り溶接30を行った切断刃3にエッジ部31,32を再生加工する装置(上記縦型ミーリングマシン、ロータリ研磨機等)を含めて連続的に作業が行えるように各機械を配置して再生設備を構成するのが好ましく、上記実施の形態の機械配置は一例であり、各機器の配置は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
さらに、上述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る切断刃の再生方法は、剪断式破砕機に使用される切断刃を再生して再利用する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 再生設備
3 切断刃
5 タブ
10 回転刃
11 一体式切断刃
15 搬入出機
16 載置部
17 搬送部
20 ハンドリングロボット
25 把持部
26 第1把持部
27 第2把持部
30 肉盛り溶接
31 先端エッジ部
32 サイドエッジ部
40 多軸保持機
42 傾倒部
43 回転部
44 保持部
45 固定部材
50 自動溶接機
55 溶接トーチ
60 予熱機
70 後熱機
80 制御装置
82 判定部
83 手修正溶接機
84 検査治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部から外向きに突出する刃先部を備え、該刃先部は回転方向に尖った先端エッジ部を有し、該刃先部を含む側面外形端にサイドエッジ部を有する切断刃の再生方法であって、
補修可能な前記切断刃のエッジ部に所定の面取りを行う面取り工程と、
該面取りを行った切断刃を所定温度に予熱処理する予熱工程と、
該予熱処理した切断刃の面取りを行っているエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に自動肉盛り溶接する肉盛り溶接工程と、
該肉盛り溶接した切断刃を所定温度で後熱処理する後熱工程と、
該後熱処理した切断刃の前記肉盛り溶接部分を所定のエッジ部に再生加工する加工工程とを順次行うことを特徴とする切断刃の再生方法。
【請求項2】
前記面取り工程の前又は後に切断刃の摩耗状態に応じて補修可能か否かを判定する判定工程を行い、該判定工程で切断刃の摩耗状態から肉盛り溶接前に手修正が必要と判断した切断刃に対して前記予熱工程後に手修正を行うようにした請求項1に記載の切断刃の再生方法。
【請求項3】
前記肉盛り溶接工程後に、該肉盛り溶接の肉盛り状態の適否を検査する検査工程を行い、該検査工程で不適切と判断した肉盛り部分に適正な肉盛り溶接を行う修正工程を行うようにした請求項1又は2に記載の切断刃の再生方法。
【請求項4】
前記肉盛り溶接工程を、前記切断刃の外向きに突出する刃先部の回転方向に尖った先端エッジ部の下面にタブを当てて該先端エッジ部の肉盛り溶接を行った後、前記サイドエッジ部に肉盛り溶接を行うようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の切断刃の再生方法。
【請求項5】
前記予熱工程と、肉盛り溶接工程と、後熱工程との間における切断刃の移動をロボットで行うようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の切断刃の再生方法。
【請求項6】
前記ロボットによる切断刃の移動を、該切断刃の前記肉盛り溶接時における溶接姿勢が、下向きで且つ前上がりとなるように該切断刃を変位させるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の切断刃の再生方法。
【請求項7】
固定部から外向きに突出する刃先部を備え、該刃先部は回転方向に尖った先端エッジ部を有し、該刃先部を含む側面外形端にサイドエッジ部を有する切断刃の再生設備であって、
補修可能な前記切断刃を搬入出させる搬入出機と、
該搬入出機で搬入した切断刃を移動させるハンドリングロボットと、
前記切断刃を所定温度に予熱処理する予熱機と、
該予熱機で予熱した切断刃を保持し、該切断刃を所定の溶接姿勢に変位させる多軸保持機と、
該多軸保持機で変位させる切断刃の姿勢に応じて該切断刃のエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に自動肉盛り溶接する自動溶接機と、
該自動溶接機で肉盛り溶接した切断刃を所定温度で後熱処理する後熱機と、
前記切断刃を、前記予熱機に搬送して予熱処理し、該予熱処理後に前記多軸保持機に搬送して保持し、該多軸保持機で姿勢変位させながらエッジ部に前記自動溶接機で肉盛り溶接し、該肉盛り溶接後に前記後熱機に搬送して後熱処理する制御装置とを有していることを特徴とする切断刃の再生設備。
【請求項8】
前記ハンドリングロボットは、前記自動溶接機によるエッジ部の肉盛り溶接時に、反自動溶接機側にフッラックスタブを当てて保持する機能を具備している請求項7に記載の切断刃の再生設備。
【請求項9】
前記多軸保持機は、前記肉盛り溶接時に、溶接姿勢が下向き溶接で、且つ前上がりの溶接姿勢となるように前記切断刃を変位させる機能を具備している請求項7又は8に記載の切断刃の再生設備。
【請求項10】
前記自動溶接機は、前記多軸保持機による切断刃の変位と協動して、下向きで且つ前上がりの溶接姿勢となるように該自動溶接機が具備した溶接トーチを変位させる機能を有している請求項9に記載の切断刃の再生設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−260000(P2010−260000A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112630(P2009−112630)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(390015967)株式会社キンキ (29)
【Fターム(参考)】