切断型ActRIIB−Fc融合タンパク質
一部の特定の態様では、本発明は、組織、例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪、褐色脂肪および/またはニューロン組織の成長を調節(促進または阻害)するため、ならびに、代謝障害、例えば、糖尿病および肥満、ならびに前述の任意の組織と関連している障害を処置するための、ActRIIB由来ポリペプチドを含む組成物を提供する。一部の特定の態様では、本発明により、新規なActRIIBポリペプチド、特に、アミノ末端およびカルボキシ末端の切断型ならびに配列改変型を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年6月12日に出願された米国仮出願番号61/268,420、2009年11月3日に出願された米国仮出願番号61/280,543の利益を主張する。これらの出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トランスホーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーには、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有しているさまざまな増殖因子が含まれる。このようなタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物のどちらにおいても、多くのさまざまな細胞型に対して生物学的効果を奏することがわかっている。該スーパーファミリーの構成員は、胚の発生中、パターン形成および組織の特定に重要な機能を果しており、さまざまな分化プロセス(例えば、脂肪生成、筋肉形成、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生、および上皮細胞の分化)に影響を及ぼし得る。該ファミリーは、アクチビンおよびインヒビン、TGF−β、成長分化因子(GDF)および骨形成因子(BMP)と種々に称されるタンパク質に代表される。該ファミリーの他の構成員も知られている(NodalおよびLeftyなど)。TGF−βファミリーの構成員の活性を操作することにより、多くの場合で、生物体に有意な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、飼育種PiedmonteseおよびBelgian Blueの牛は、GDF8(ミオスタチンとも称される)遺伝子に、顕著な筋肉量の増加を引き起こす機能喪失変異を有する(非特許文献1)。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増大および報告によると並外れた強度と関連している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Grobetら,Nat Genet.1997,17(1):71−4
【非特許文献2】Schuelkeら,N Engl J Med 2004,350:2682−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筋肉、骨、脂肪、軟骨および他の組織の変化は、適切なTGF−βファミリー構成員によって媒介されるシグナル伝達をアゴナイズすること、または該シグナル伝達に拮抗作用をもたらすことにより得られ得る。したがって、TGF−βスーパーファミリーの構成員によるシグナル伝達の強力な調節因子としての機能を果す薬剤の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
一部の特定の態様では、本開示により、新規なActRIIBポリペプチド、特に、アミノ末端およびカルボキシ末端の切断型ならびに配列改変型を提供する。一実施形態において、ヒトActRIIB(配列番号1)のアミノ酸25〜131を含むポリペプチドまたはそのバリアントを記載する。かかるポリペプチドが、さまざまな障害の処置において驚くべき有効性を有するが、特に、肥満、インスリン抵抗性および他の代謝障害と関連している障害の処置において驚くべき有効性を有することを示す。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、患者が、さまざまな望ましい効果、例えば、除脂肪体重(lean body mass)の増加、白色脂肪量の減少、褐色脂肪量の増加、血清トリグリセリドの減少、血清インスリンレベルの低下または血清遊離脂肪酸レベルの低下などを有するように使用され得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、さまざまな障害または病状、例えば、筋肉および神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および筋萎縮)、脂肪組織障害(例えば、肥満、脂肪肝疾患)、代謝障害(例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム(metabolic syndrome))、神経変性障害、ならびに高齢(サルコペニア)、前立腺癌治療(例えば、アンドロゲン除去療法)、さまざまな癌と関連している悪液質と関連している筋消耗の処置に使用され得る。ActRIIBポリペプチドの例としては、配列番号8に示し、本明細書においてActRIIB(25−131)−hFcと記載するヒトActRIIB−Fc融合タンパク質が挙げられる。
【0006】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBに由来する新規なポリペプチド(ActRIIBポリペプチドと称する)を提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8の配列からなるアミノ酸配列または配列番号8と1個以下、2個以下、3個以下、4個以下もしくは5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むポリペプチド;哺乳動物細胞における配列番号4の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド;哺乳動物細胞における配列番号6の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチドからなる群より選択され得る。本明細書において開示するポリペプチドは、ActRIIBに由来する部分と1つ以上の異種部分とを含み得、該ActRIIBに由来する部分は、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と1個以下、2個以下、3個以下、4個以下もしくは5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むものであり得る。該異種部分は、免疫グロブリンの定常ドメイン、免疫グロブリンのFcドメインまたは、特に、ヒトIgG1のFcドメイン(用語「ヒトIgG1は、ヒトにおける使用と適合性であるかかるFcのバリアントを含むと理解されたい)を含むものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列を含むActRIIBに由来する部分を含むものであり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、アミノ末端が配列ETRを有するようなものであってもよい。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、マウスにおいて統計学的に有意な除脂肪体重の増加を引き起こすものであり得る。除脂肪組織量の増加の平均は、少なくとも1、2、3、4もしくは5グラムまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な脂肪量の減少を引き起こすものであり得る。脂肪量の減少の平均は、5、7、10、15グラムまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清トリグリセリドレベルの減少を引き起こすものであり得る。血清トリグリセリドの減少の平均は、少なくとも50、75、100、125もしくは150mg/dlまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清遊離脂肪酸レベルの減少を引き起こすものであり得る。遊離脂肪酸の減少の平均は、少なくとも500、750、1000マイクロモル/dlまたはそれ以上の遊離脂肪酸であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清インスリンレベルの減少を引き起こすものであり得る。血清インスリンの減少の平均は、少なくとも0.5、1、1.5、2ng/mlまたはそれ以上のインスリンであり得る。本明細書で用いる場合、用語「統計学的に有意な」は、一般的に、>0.05の(or)p値をいうが、異なる型の統計学的検定について他の有意性の測定値が認識され得よう。かかる場合、用語「統計学的に有意な」には、データの有意性の評価に最も広く使用されている式が使用されるのがよい。ActRIIBポリペプチドは、少なくとも1つのN結合糖を含むものであってもよく、2つ、3つ、またはそれ以上のN結合糖を含むものであってもよい。また、かかるポリペプチドはO結合糖を含むものであってもよい。ActRIIBポリペプチドは、該タンパク質が患者への使用に適した様式でグリコシル化される、さまざまな細胞株、例えば、操作された昆虫細胞または酵母細胞、ならびに哺乳動物細胞(COS細胞、CHO細胞、HEK細胞およびNSO細胞など)において産生させ得る。ActRIIBポリペプチドは、共有結合性または非共有結合性の二量体(例えば、ホモ二量体)を形成するものであり得る。一般的に、Fc融合タンパク質は、共有結合されたホモ二量体を形成する傾向にある。前述の任意のポリペプチドが医薬調製物に組み込まれ得る。
【0007】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、ActRIIBリガンド(GDF8、GDF11、アクチビン、BMP7、GDF3またはnodalなど)に結合するものである。任意選択で、ActRIIBポリペプチドはActRIIBリガンドに、10マイクロモル未満または1マイクロモル、100、10、1もしくは0.1ナノモル未満のKdで結合するものである。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、そのアミノ酸配列(例えば、リガンド結合ドメイン)内に、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の改変を含むものであり得る。該アミノ酸配列内の改変は、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞もしくは他の真核生物細胞において産生させた場合、該ポリペプチドのグリコシル化を改変するもの、または該ポリペプチドのタンパク質分解性切断を改変するものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、ドメインの1つとしてActRIIB(例えば、ActRIIBまたはそのバリアントのリガンド結合ドメイン)に由来するアミノ酸配列と、望ましい特性(例えば、改善された薬物動態、より容易な精製、特定の組織に対する標的化など)をもたらす1つ以上のさらなるドメインを有する融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織内での局在もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質多量体化、および/または精製の1つ以上を向上させるものであり得る。ActRIIB融合タンパク質は、免疫グロブリンのFcドメイン(野生型もしくは変異型)または血清アルブミンを含むものであり得る。一部の特定の実施形態では、ActRIIB−Fc融合体は、Fcドメインと細胞外ActRIIBドメインの間に配置された相対的に非構造的リンカーを含む。この非構造的リンカーは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端のほぼ15個のアミノ酸の非構造的領域に対応するものであり得る(「テイル」)か、または相対的に二次構造を含まない5および15、20、30、50個もしくはそれ以上のアミノ酸の人工配列であり得る。リンカーは、グリシン残基とプロリン残基を多く含むものであり得、例えば、トレオニン/セリンとグリシンの反復配列(例えば、TG4またはSG4リピート)を含むものであり得る。配列番号8のポリペプチドの状況では、短いフレキシブルリンカー(1、2、3、4または5個のグリシン残基など、任意選択で、1個以上の小さい残基(アラニン、トレオニンまたはセリンなど)を有する)を使用することが好都合なようである。融合タンパク質は、精製用部分配列(エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合体など)を含むものであり得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドには、グリコシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部位にコンジュゲートされたアミノ酸、および有機系誘導体化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択される1個以上の修飾アミノ酸残基が含まれる。
【0008】
一部の特定の態様では、ActRIIBポリペプチドは医薬調製物として製剤化され得る。医薬調製物は、好ましくはパイロジェンフリーである(治療的使用のための製剤の品質を規制する規準に必要とされる程度にパイロジェンフリーであることを意味する)。また、医薬調製物に、1種類以上のさらなる化合物(ActRIIBに関連する障害を処置するために使用される化合物など)を含めてもよい。
【0009】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸を提供する。かかる核酸は、配列番号4の73〜396の核酸配列または配列番号4のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むものであり得る。該核酸は、配列番号4の配列を含むものであってもよい。かかる核酸は、配列番号6の73〜396の核酸配列または配列番号6のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むものであり得る。該核酸は、配列番号6の配列を含むものであってもよい。一部の特定の態様では、ActRIIBタンパク質を、患者(獣医学上の患者の可能性を含む)において好ましくない免疫応答の尤度が減弱されるようにActRIIBタンパク質の天然のグリコシル化を好適に媒介する哺乳動物細胞株において発現させ得る。ヒトおよびCHO細胞株が成功裡に使用されており、他の一般的な哺乳動物系発現ベクターも有用であることが予測される。したがって、本開示により、本明細書において開示する任意の核酸を含む培養細胞を提供する。かかる細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、NSO細胞、HEK細胞およびCOS細胞であり得る。対象の患者の種に応じて他の細胞も選択され得る。他の細胞は、本明細書において開示している。培養細胞は、研究室または他の人為的条件(例えば、凍結もしくは培地中)で維持された細胞であって、生きている生物体の一部でない細胞を意味すると理解されたい。
【0010】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBポリペプチドの作製方法を提供する。かかる方法は、本明細書において開示する任意の核酸(例えば、配列番号4または6、およびこれらにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸)を、適当な細胞(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞など)において発現させることを含むものであり得る。かかる方法は、a)細胞を、ActRIIBポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること、ここで、前記細胞は、ActRIIB発現構築物で形質転換されている;およびb)そのようにして発現させたActRIIBポリペプチドを回収することを含むものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、細胞培養物からタンパク質を得るためのよく知られた任意の手法ならびに本明細書に記載された手法を用いて、粗製画分、一部精製画分または高度に精製された画分として回収され得る。
【0011】
一部の特定の態様では、本開示により、筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0012】
一部の特定の態様では、本開示により、除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を、それを必要とする被験体において行なう方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0013】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のための方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0014】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の望ましくない体重増加と関連している障害の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0015】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の代謝障害の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。処置に適格の患者は、以下の特徴:高い血清トリグリセリドレベル;高い遊離脂肪酸レベル;または高い血清インスリンレベルの1つ以上を有する患者であり得る。代謝障害の例としては、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性および肥満が挙げられる。
【0016】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体の処置方法に使用され得る。かかる障害としては、筋萎縮、筋ジストロフィ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに筋消耗障害(例えば、悪液質、食欲不振、DMD症候群、BMD症候群、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィ、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性ミオパチー)が挙げられる。該方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0017】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のため、ならびに望ましくない体重増加と関連している障害(肥満、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、心血管疾患、癌、高血圧、変形性関節症、脳卒中、呼吸器系の問題、および胆嚢の疾患など)の処置のための方法に使用され得る。このような方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0018】
一部の特定の具体的な態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、GDF8の異常な活性と関連している障害の処置方法に使用され得る。かかる障害としては、代謝障害、例えば、2型糖尿病、グルコース寛容減損、メタボリックシンドローム(例えば、X症候群)、および外傷(例えば、火傷または窒素量不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;脂肪組織障害(例えば、肥満);筋ジストロフィ(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィ);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;脆弱;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;サルコペニア、悪液質および他の筋消耗症候群;骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;オステオペニア;変形性関節症;骨粗鬆症関連骨折;長期グルココルチコイド療法、早発性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振による低骨量が挙げられる。該方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0019】
一部の特定の態様では、本開示により、組織(骨、軟骨、筋肉および脂肪など)の成長を刺激する薬剤の同定方法を提供する。該方法は、a)ActRIIBポリペプチドと競合的にActRIIBポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定すること;およびb)組織成長に対する該薬剤の効果を評価することを含む。
【0020】
一部の特定の態様では、本開示により、細胞内でActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビン、GDF3、BMP7、およびNodal)の活性に拮抗作用をもたらすための方法を提供する。該方法は、細胞をActRIIBポリペプチドと接触させることを含む。任意選択で、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの活性は、例えば、細胞増殖をモニタリングすることにより、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によってモニタリングされる。該方法の細胞としては、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞および筋肉細胞が挙げられる。
【0021】
一部の特定の態様では、本開示により、本明細書に記載の障害または病状の処置のための医薬を作製するためのActRIIBポリペプチドの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、完全長のプロセッシングされていないActRIIB(25−131)−hFcのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。TPAリーダー(残基1〜22)と二重切断型ActRIIB細胞外ドメイン(残基24〜131,配列番号1の天然配列に基づいた番号付けを使用)に、各々、下線を付している。ハイライトは、配列決定により成熟融合タンパク質のN末端アミノ酸であることが示されたグルタミン酸であり、これは、配列番号1に基づくと25位に存在する。
【図2−1】図2は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号4)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号5))。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付している。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図2−2】図2は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号4)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号5))。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付している。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図3−1】図3は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードする別の択一的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号6)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号7))。この配列により、初期の形質転換体において、より高いタンパク質発現レベルがもたらされ、細胞株の発達がより急速なプロセスとなる。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付し、ECD(図2参照)の野生型ヌクレオチド配列における置換にハイライトしている。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図3−2】図3は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードする別の択一的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号6)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号7))。この配列により、初期の形質転換体において、より高いタンパク質発現レベルがもたらされ、細胞株の発達がより急速なプロセスとなる。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付し、ECD(図2参照)の野生型ヌクレオチド配列における置換にハイライトしている。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図4】図4は、マウスでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)±SEMである。**,TBSに対してP<0.01(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、除脂肪組織量が明らかに用量依存的に増加した。
【図5】図5は、マウスでの胸筋筋肉量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)±SEMである。*,P<0.05;**,P<0.01(TBSに対して)(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、胸筋筋肉量が明らかに用量依存的に増加した。
【図6】図6は、マウスでの握力に対するActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)である。**,TBSに対してP<0.01(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、握力が用量依存的に増大した。
【図7】図7は、アンドロゲン除去のマウスモデルでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。精巣摘除(ORX)または偽手術マウスのデータは、平均(n=10/群)±SDである。***,TBS対照に対してP<0.001。ActRIIB(25−131)−hFcにより、除脂肪組織量が、その完全長対応物ActRIIB(20−134)−mFcと同程度に有効に増加した。
【図8】図8は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=9〜10/群)である。***,TBS対照に対してP<0.001。ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌摂取マウスにおいて、除脂肪組織量が有効に増加した。
【図9】図9は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、脂肪量に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=9〜10/群)±SDである。*,P<0.05;***,<0.001(TBS対照に対してP)。ビヒクルと比べると、12週間のActRIIB(25−131)−hFc処置により、高脂肪食餌摂取マウスにおいて、脂肪量がおよそ半分減少した。
【図10】図10は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清トリグリセリド濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりトリグリセリド濃度が50%より大きく低下し、それによりトリグリセリドが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図11】図11は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清遊離脂肪酸(FFA)濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりFFA濃度がほぼ55%低下し、それによりFFAが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図12】図12は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清高密度リポタンパク質(HDL)濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりHDL濃度がほぼ50%低下し、それによりHDLが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図13】図13は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清低密度リポタンパク質(LDL)濃度を示す。データは平均±SEMである。*,P<0.05。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりLDL濃度が40%より大きく低下した。
【図14】図14は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清インスリン濃度を示す。データは平均±SEMである。**,P<0.01。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりインスリン濃度が60%より大きく低下し、それによりインスリンが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図15】図15は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清アディポネクチン濃度を示す。ELISA測定により、すべての主要オリゴマーアイソフォーム(全アディポネクチン)が検出され、データは平均±SEMである。**,P<0.01;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcにより、アディポネクチン濃度が75%より大きく増大し、さらには、アディポネクチンを、標準食餌対照で観察されたレベルより上まで有意に追加刺激した。
【図16】図16は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置により精巣上体白色脂肪組織内で誘導された熱産生的組織学的変化を示す。顕微鏡画像はすべて、同じ倍率で示している。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色は、ActRIIB(25−131)−hFcが、脂質滴の大きさを縮小させ、褐色脂肪に特徴的な多房性脂肪細胞集団(矢印)を誘導する能力を示す。隣接していないセクションの免疫染色では、多房性脂肪細胞および単房性脂肪細胞の両方において、UCP1(緑色蛍光)の広範な細胞質内誘導が示されている。
【図17】図17は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、精巣上体白色脂肪内におけるUCP1 mRNAレベルに対する60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(単位:相対単位(RU))で得られたデータは平均±SEMである;n=6〜7/群;*,p<0.05。ActRIIB(25−131)−hFcにより、この褐色脂肪の選択的マーカーをコードするmRNAの60倍の増加が引き起こされ、したがって、この白色脂肪貯蔵部内における熱産生能の上方調節が示された。
【図18】図18は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの精巣上体白色脂肪内におけるアディポネクチンのmRNAレベルを示す。RT−PCRデータ(単位:相対単位(RU))は平均±SEMである;n=7/群;*,p<0.05。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcにより、アディポネクチンのmRNAレベルが60%より大きく増加し、したがって、このようなマウスにおいて、循環アディポネクチンの高濃度に寄与していた。
【図19】図19は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、脂肪肝沈着(肝臓脂肪症)に対する60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。Oil Red Oで染色した肝臓切片(すべて同じ倍率で表示)では、高脂肪食餌条件下において顕著な脂質の沈着が示されるが、対照条件下では示されない。矢印は、多くの密集した脂質滴のいくつかを示す。脂質滴は明赤色に染色されているが、白黒画像では識別が困難である。ActRIIB(25−131)−hFcにより、かかる脂質滴の形成が阻害され、肝臓組織の外観が標準食餌摂取マウスのものまで大きく回復した。
【図20】図20は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、腹部脂肪の分布に対する35日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。内臓脂肪貯蔵部および皮下脂肪貯蔵部を、脊髄分節T13〜L5を含めたマイクロ−コンピュータ断層撮影(マイクロCT)によってインビボで検出し、識別した。N=4/群;スケールバー=5mm。高脂肪食餌摂取対照と比べ、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、内臓脂肪貯蔵部と腹部皮下脂肪貯蔵部の両方の容量が低減された。
【図21】図21は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、内臓脂肪の容量(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=4/群;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−mFcにより、内臓脂肪の容量がビヒクルと比べて60%より大きく低減された。
【図22】図22は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、腹部皮下脂肪の容量(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=4/群;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−mFcにより、皮下脂肪の容量がビヒクルと比べてほぼ60%低減された。
【図23】図23は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の関数としての肩甲骨間褐色脂肪貯蔵部の左右の対の写真を示す。高脂肪食餌では、該貯蔵部の大きさが増大し、色が薄くなったが、ActRIIB(25−131)−mFcにより、これらの変化が大きく逆転された。
【図24】図24は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、肩甲骨間褐色脂肪量に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、左側の貯蔵部と右側の貯蔵部を合わせたものの平均±SEMである;***,p<0.001。ActRIIB(25−131)−mFcにより、この褐色脂肪貯蔵部の量に対する高脂肪食餌の効果が逆転された。
【図25】図25は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、肩甲骨間褐色脂肪の密度(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データ(平均±SEM)を、骨塩分ヒドロキシアパタイト(HA)は正の値、および水分の値はゼロに基づいた標準化した単位で示す;したがって、脂肪の値は負であり、白色脂肪の値は典型的には−120に近い。**,p<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcにより、この褐色脂肪貯蔵部の密度に対する高脂肪食餌の効果が完全に逆転された。
【図26】図26は、除脂肪組織量(加齢のマウスモデルにおいて、核磁気共鳴(NMR)解析により多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、10〜15匹のマウス/群/時間点の平均である;***,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.001。7週間の投与後、ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウスの除脂肪組織量は、ベースラインからほぼ20%増加し、対照的に、ビヒクル処置対照では、値は本質的に変化しなかった。
【図27】図27は、加齢のマウスモデルにおける、前肢握力(多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、13〜15匹のマウス/群/時間点の平均である;**,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcで処置したマウスでは、試験中、全体的に握力の増大傾向が示され、対照的に、ビヒクル対照では、同期間中、握力の低下が観察された。
【図28】図28は、骨塩量(bone mineral density)(加齢のマウスモデルにおいて、デュアルエネルギーx線吸収測定法(DEXA)によって測定)に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;*,P<0.05。ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス(n=10)の骨塩量は、ビヒクル処置対照(n=14)と比べて有意に増加した。
【図29】図29は、総体脂肪量(加齢のマウスモデルにおいてNMR解析によって多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、10〜15匹のマウス/群/時間点の平均である。***,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.001。7週間の投与後、ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス脂肪量では、ベースラインからビヒクル処置対照の大きさの2倍より大きい割合の減少が示された。
【図30】図30は、加齢のマウスモデルにおける血清インスリン濃度に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;*,P<0.05。ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス(n=10)のインスリン濃度は、ビヒクル処置対照(n=14)と比べて40%より大きく低下した。
【図31】図31は、循環グリケート付加(glycated)ヘモグロビン(A1C)濃度に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=5〜6/群;**,P<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcにより、広く認められた平均血糖濃度の指標であるグリケート付加ヘモグロビンの濃度が、長期間にわたって有意に低下した。
【図32】図32は、癌性悪液質のマウスモデルにおける、除脂肪組織量(NMR解析により測定)に対する5週間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;***,P<0.001。腫瘍移植マウスでは、ビヒクル処置(n=7)は、7%の除脂肪組織量の減少と関連していたが、ActRIIB(25−131)−hFc処置(n=12)では、ベースラインから27%の除脂肪組織量の増加が引き起こされた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
1.概要
一部の特定の態様において、本開示はActRIIBポリペプチドに関する。本明細書で用いる場合、用語「ActRIIB」は、任意の種に由来するアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質およびActRIIB関連タンパク質の一ファミリーをいう。ActRIIBファミリーの構成員は、一般的に、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および推定セリン/トレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインで構成されたすべての膜貫通タンパク質である。
【0024】
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリー構成員、ならびに有用な活性を保持しているその任意のバリアント(例えば、変異型、断片、融合体、およびペプチド模倣物形態)の天然に存在する任意のポリペプチドを含むポリペプチドをいうために用いる。例えば、ActRIIBポリペプチドとしては、ActRIIBポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一の配列、好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれ以上の同一性の配列を有する任意の既知のActRIIBの配列に由来するポリペプチドが挙げられる。
【0025】
ヒトActRIIB前駆体は、以下のアミノ酸配列(シグナルペプチドに下線を付し、細胞外ドメインを太字で示し、潜在的N結合型グリコシル化部位を四角で囲んでいる)(配列番号1)(NM_001106,512 aa)を有する。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBタンパク質、ならびに有用な活性を保持しているその任意のバリアント(例えば、変異型、断片およびペプチド模倣物の形態)の天然に存在する任意の細胞外ドメインを含むものであり得る。例えば、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインはリガンドに結合し、一般的に可溶性である。シグナル配列は、ActRIIBの天然シグナル配列であっても、別のタンパク質由来のシグナル配列(組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)のシグナル配列またはミツバチのメラチン(melatin)(HBM)のシグナル配列など)であってもよい。
【0028】
一部において、本開示により、ActRIIBに由来する部分が配列番号1のアミノ酸25〜131に由来するものであるような切断型の新規なActRIIBポリペプチドを提供する。本明細書において示すように、この型のポリペプチドは、Fc構築物であるActRIIB(25−131)−hFcとして投与すると、除脂肪体重(主に筋肉)の形成および脂肪量の減少が促進されるとともに、代謝パラメータ(血清トリグリセリド、血清遊離脂肪酸および血清インスリンレベルなど)に対して顕著な望ましい効果も得られる。注目すべきことに、ActRIIB(25−131)−hFcはこのような代謝パラメータに対して、関連タンパク質ActRIIB(20−134)よりもずっと大きな効果を有する。このようなデータを以下の実施例に示す。
【0029】
TGF−βシグナルは、I型およびII型のセリン/トレオニンキナーゼ受容体のヘテロメリック複合体によって媒介され、該受容体は、リガンドに刺激されると下流のSmadタンパク質をリン酸化して活性化する(Massague,2000,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169−178)。このI型およびII型の受容体は、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および推定セリン/トレオニン特異性を有する細胞質ドメインで構成されたすべての膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に必須であり;II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後、安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化がもたらされる。
【0030】
関連している2種類のII型受容体ActRIIAおよびActRIIBが、アクチビンのII型受容体として同定されている(MathewsおよびVale,1991,Cell 65:973−982;Attisanoら,1992,Cell 68:97−108)。アクチビンの他に、ActRIIAおよびActRIIBは、他のいくつかのTGF−βファミリータンパク質(例えば、BMP7、Nodal、GDF8およびGDF11)と生化学的に相互作用し得る(Yamashitaら,1995,J.Cell Biol.130:217−226;LeeおよびMcPherron,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.98:9306−9311;YeoおよびWhitman,2001,Mol.Cell 7:949−957;Ohら,2002,Genes Dev.16:2749−54)。
【0031】
一部の特定の実施形態において、本発明は、主題のActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)でのActRIIB受容体のリガンド(ActRIIBリガンドとも称する)の拮抗に関する。したがって、本発明の組成物および方法は、1種類以上のActRIIB受容体のリガンドの異常な活性と関連している障害の処置に有用である。例示的なActRIIB受容体のリガンドとしては、一部のTGF−βファミリー構成員、例えば、アクチビン、Nodal、GDF3、GDF8、GDF11、およびBMP7が挙げられる。
【0032】
アクチビンは、二量体ポリペプチド増殖因子であり、TGF−βスーパーファミリーに属する。アクチビンには3種類あり(A、BおよびAB)、これらは、密接に関連している2つのβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体である(βAβA、βBβB、およびβAβB)。TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは特殊であり、卵巣および胎盤の細胞においてホルモン産生を刺激し、ニューロン細胞の生存を支持し、細胞型に応じて細胞周期の進行にプラスまたはマイナスの影響を及ぼし、また、少なくとも両生類の胚において中胚葉の分化を誘導し得る多機能性の因子である(DePaoloら,1991,Proc SocEp Biol Med.198:500−512;Dysonら,1997,Curr Biol.7:81−84;Woodruff,1998,Biochem Pharmacol.55:953−963)。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることがわかった(Murataら,1988,PNAS,85:2434)。これにより、アクチビンAが、骨髄における赤血球生成の自然な調節因子としての機能を果すことが示唆された。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連ヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出時、アクチビンはFSHの分泌と合成を促進させるが、インヒビンはFSHの分泌と合成を抑制する。アクチビンの生体活性を調節し得る、および/またはアクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、ホリスタチン(FS)、ホリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α2−マクログロブリン、ケルベロス(Cerberus)、およびエンドグリン(これらについては後述する)が挙げられる。
【0033】
骨形成(“bone morphogenetic”)タンパク質7(BMP7)は、骨形成(“osteogenic”)タンパク質−1(OP−1)とも称され、軟骨および骨の形成を誘導することがよく知られている。また、BMP7は広範囲の生理学的プロセスを調節する。注目すべきことに、最近、BMP7は、褐色脂肪細胞分化の重要な促進因子であることが確認された(Tsengら,2008,Nature 454:1000−1004)。この研究では、BMP7の遺伝子除去により、マウス胚において褐色脂肪の欠乏およびUCP1のほぼ完全な非存在がもたらされた。さらに、アデノウイルスの投与によるマウスでのBMP7発現の上方調節により、褐色脂肪量およびエネルギー消費量が増加した。アクチビンと同様、BMP7は、II型受容体であるActRIIAとActRIIBに結合する。しかしながら、BMP7とアクチビンは、相違するI型受容体をヘテロメリック受容体複合体に漸増させる。観察された主なBMP7 I型受容体はALK2であったが、アクチビンはALK4に排他的に結合した(ActRIIB)。BMP7とアクチビンは、相違する生物学的応答を誘起し、異なるSmad経路を活性化した(Macias−Silvaら,1998,J Biol Chem.273:25628−36)。
【0034】
細胞成長分化因子−3(GDF3)(Vg1関連2としても知られている)は、胚の発生に重要な役割を果たしており、また、成人期の脂肪生成に関与している。簡単には、白色脂肪組織におけるGDF3の発現はボディマスまたは肥満と相関しており(Weisbergら,2003,J Clin Invest 112:1796−1808)、GDF3のアデノウイルス媒介性過剰発現により、高脂肪食餌条件下の野生型マウスで観察される脂肪過多症の増大が過大になる(Wangら,2004,Biochem Biophys Res Commun 321:1024−1031)。重要なことに、GDF3の遺伝子が除去されたマウスは健常であり、標準食餌で維持した場合、本質的に正常であるが、高脂肪食餌で維持した場合、肥満から保護され、基礎代謝率の増大を示す(Shenら,2009,Mol Endocrinol 23:113−123)。総合すると、このような所見は、具体的に食餌誘導性肥満における、より一般的には脂肪過多症の調節におけるGDF3の関与を示す。
【0035】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびにその後の初期胚形成における軸構造(心臓および胃など)の組織化において機能を有する。発生中の脊椎動物の胚の背側組織は、主に脊索および脊索前板の軸構造に寄与しているとともに、周囲細胞を漸増させて胚の非軸構造を形成することが示されている。Nodalは、I型およびII型の両方の受容体ならびにSmadタンパク質として知られている細胞内エフェクターを介してシグナル伝達するようである。最近の研究により、ActRIIAとActRIIBがNodalのII型受容体としての機能を果しているという概念が裏付けられている(Sakumaら,Genes Cells.2002,7:401−12)。Nodalリガンドは、その補因子(例えば、cripto)と相互作用して、Smad2をリン酸化するアクチビン受容体I型およびII型を活性化させることが提案された。Nodalタンパク質は、脊椎動物の初期胚に重要な多くの事象、例えば、中胚葉形成、前部のパターン形成、および左右軸の特定に関与している。実験による証拠により、アクチビンおよびTGF−βに特異的に応答することが以前に示されたルシフェラーゼレポーターであるpAR3−Luxが、Nodalシグナル伝達により活性化されることが示されている。しかしながら、Nodalは、骨形成タンパク質に特異的に応答するレポーターであるpTlx2−Luxを誘導することができない。最近の結果により、Nodalシグナル伝達が、両方のアクチビン−TGF−β経路Smad、Smad2とSmad3によって媒介されるという直接的な生化学的証拠が示されている。さらなる証拠により、細胞外criptoタンパク質がNodalシグナル伝達に必要とされ、これにより、アクチビンまたはTGF−βシグナル伝達と相違することが示されている。
【0036】
成長分化因子−8(GDF8)はミオスタチンとしても知られている。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体の骨格筋において高度に発現されている。トランスジェニックマウスにおけるGDF8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥厚および過形成を特徴とする(McPherronら,Nature,1997,387:83−90)。同様に、骨格筋量の増加が畜牛(Ashmoreら,1974,Growth,38:501−507;SwatlandおよびKieffer,J.Anim.Sci.,1994,38:752−757;McPherronおよびLee,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1997,94:12457−12461;ならびにKambadurら,Genome Res.,1997,7:910−915)、および特筆すべきことにヒト(Schuelkeら,N Engl J Med 2004;350:2682−8)のGDF8の天然変異で明白である。また、研究により、ヒトのHIV感染と関連する筋消耗にはGDF8タンパク質発現の増大が随伴することも示されている(Gonzalez−Cadavidら,PNAS,1998,95:14938−43)。また、GDF8により、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成が調節され、筋芽細胞の増殖が調節され得る(WO00/43781)。GDF8プロペプチドは、非共有結合により成熟GDF8ドメイン二量体に結合し、その生物学的活性を不活化し得る(Miyazonoら(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415;Wakefieldら(1988)J.Biol.Chem.,263;7646−7654;およびBrownら(1990)Growth Factors,3:35−43)。GDF8または構造的に関連しているタンパク質に結合し、その生物学的活性を阻害する他のタンパク質としては、ホリスタチン、および潜在的にホリスタチン関連タンパク質が挙げられる(Gamerら(1999)Dev.Biol.,208:222−232)。
【0037】
成長分化因子−11(GDF11)は、BMP11としても知られており、分泌型タンパク質である(McPherronら,1999,Nat.Genet.22:260−264)。GDF11は、マウスでの発生中、尾芽、肢芽、上顎弓および顎弓、ならびに後根神経節において発現される(Nakashimaら,1999,Mech.Dev.80:185−189)。GDF11は、中胚葉組織と神経組織の両方のパターン形成に特殊な役割を果している(Gamerら,1999,Dev Biol.,208:222−32)。GDF11は、発生中の幼鳥の肢部における軟骨形成および筋肉形成の負の調節因子であることが示された(Gamerら,2001、Dev Biol.229:407−20)。また、筋肉におけるGDF11の発現は、筋成長の調節においてGDF8と同様の役割を示す。さらに、脳におけるGDF11の発現は、GDF11が神経系の機能に関する活性も有しているかもしれないことを示す。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮において神経発生を阻害することがわかった(Wuら,2003,Neuron.37:197−207)。したがって、GDF11は、筋肉疾患および神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)などの疾患の処置においてインビトロおよびインビボでの適用用途を有し得る。
【0038】
一部の特定の態様では、本発明は、ActRIIB活性と関連している任意のプロセスにおいてActRIIBリガンド一般のシグナル伝達に対して拮抗作用をもたらすための特定のActRIIBポリペプチドの使用に関する。任意選択で、本発明のActRIIBポリペプチドは、1種類以上のActRIIB受容体のリガンド(アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11およびBMP7など)に対して拮抗作用をもたらすものであり得、したがって、さらなる障害の処置に有用であり得る。
【0039】
したがって、本発明では、ActRIIBまたはActRIIBリガンドの異常な活性と関連している疾患または病状の処置または予防におけるActRIIBポリペプチドの使用が想定される。ActRIIBまたはActRIIBリガンドは、多くの重要な生物学的プロセスの調節に関与している。このようなプロセスにおける枢要な機能のため、これらは治療的介入の望ましい標的であり得る。例えば、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)は、ヒトまたは動物の障害または病状を処置するために使用され得る。かかる障害または病状の例としては、限定されないが、代謝障害、例えば、2型糖尿病、グルコース寛容減損、メタボリックシンドローム(例えば、X症候群)、および外傷(例えば、火傷または窒素量不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;脂肪組織障害(例えば、肥満);筋肉および神経筋の障害、例えば、筋ジストロフィ(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィ);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;脆弱;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;およびサルコペニア、悪液質および他の筋消耗症候群が挙げられる。他の例としては、骨粗鬆症(特に、高齢者および/または閉経後の女性における);グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;オステオペニア;変形性関節症;ならびに骨粗鬆症関連骨折が挙げられる。またさらなる例としては、長期グルココルチコイド療法、早発性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振による低骨量が挙げられる。これらの障害および病状を以下の「例示的な治療的使用」で論考する。記載のように、本明細書において開示する切断型ActRIIBポリペプチドは、代謝パラメータに対して特に有益な効果を有するようである。
【0040】
本明細書で用いる用語は、一般的に、本発明の状況および各用語が使用されている場合の具体的な状況において、当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法ならびにこれらをどのようにして作製および使用するかの説明において、実施者にさらなる手引きを示すため、一部の特定の用語を以下または本明細書の別の箇所において論考する。用語の任意の使用の範囲または意味は、該用語が使用されている具体的な状況から明らかとなろう。
【0041】
「約」および「およそ」は、一般的に、測定された量に対する、測定の性質または精度を考慮して許容され得る誤差の度合を意味するものとする。典型的には、例示的な誤差の度合は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0042】
あるいはまた、具体的には生物学的系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味することがあり得る。本明細書において示す数量は、特に記載のない限り概算であり、用語「約」または「およそ」が明示されていない場合でも暗示されたものであり得ることを意味する。
【0043】
本発明の方法に、配列を互いに(例えば、野生型配列を1つ以上の変異型(配列バリアント)と)比較する工程を含めてもよい。かかる比較は、典型的には、例えば、当該技術分野でよく知られた配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(2〜3例を挙げると、例えば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を用いたポリマー配列のアラインメントを含む。当業者には、かかるアラインメントにおいて、変異に残基の挿入または欠失が含まれる場合、該挿入または欠失残基を含まないポリマー配列の配列アラインメントに「ギャップ」(典型的には、ダッシュまたは「A」で示す)が導入されることが容易に認識され得よう。
【0044】
「相同な」は、そのあらゆる文法形態およびスペル上の語尾変化形において、「共通の進化上の起源」を有する2つのタンパク質(例えば、同じ種の生物体のスーパーファミリーに由来するタンパク質、ならびに異なる種の生物体に由来する相同タンパク質)間の関係をいう。かかるタンパク質(およびそのコード核酸)は、配列類似性(同一性パーセントに換算、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在のいずれか)によって反映される配列相同性を有する。
【0045】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法形態において、核酸間またはアミノ酸配列間(共通の進化上の起源を共有するものであっても、そうでなくてもよい)の同一性または対応性の度合をいう。
【0046】
しかしながら、一般的な用法および本明細書において、用語「相同な」は、「高度に」などの副詞で修飾されている場合、配列類似性を示していることがあり得、共通の進化上の起源に関している場合、またはそうでない場合があり得る。
【0047】
2.ActRIIBポリペプチド
一部の特定の態様において、本発明は、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)、特に、配列番号1のアミノ酸25〜131を含むポリペプチドによって例示される切断型形態のもの、ならびにそのバリアントに関する。任意選択で、その断片、機能性バリアントおよび修飾型形態は、その対応する野生型ActRIIBポリペプチドのものと類似した、または同じ生物学的活性を有するものである。例えば、本発明のActRIIBバリアントは、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)に結合して、その機能を阻害するものであり得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドは、骨、軟骨、筋肉もしくは脂肪などの組織の成長、または代謝パラメータ(トリグリセリド、遊離脂肪酸もしくはインスリンなど)を調節するものである。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号1)、ならびにFc融合タンパク質(例えば、配列番号3および8)が挙げられる。このようなポリペプチドの異型は以下の手引きに従って調製され得る。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、天然リーダー配列が使用されているかどうかに関係なく、配列番号1の配列に基づいている。
【0048】
本開示により、ActRIIBの機能的に活性な部分およびバリアントが同定される。本出願には、Hildenら(Blood.1994 Apr 15;83(8):2163−70)に開示された(配列番号1のアミノ酸64に対応する位置にアラニン(A64)を有する)配列を有するFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的低い親和性を有することを確認した。対照的に、64位にアルギニン(R64)を有する同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して低ナノモル〜高ピコモルの範囲の親和性を有する。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIBの野生型参照配列として使用する。
【0049】
Attisanoら(Cell.1992 Jan 10;68(1):97−108)により、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、アクチビンに対する受容体の親和性が低下することが示された。P129およびP130の変異ではリガンド結合は実質的に低減されない。
【0050】
ActRIIBリガンド結合ポケットは、残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101によって規定される。これらの位置では同類変異が許容されることが予測されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82AおよびL79位における変異と同様、十分に許容される。R40は、ツメガエルではKであり、この位置において塩基性アミノ酸が許容されることを示す。Q53は、ウシActRIIBではRおよびツメガエルActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHなどのアミノ酸が、この位置において許容される。したがって、ActRIIBタンパク質は、アミノ酸25〜131を含み、リガンド結合ポケットに1、2、5、10または15個以下の同類アミノ酸変更、およびリガンド結合ポケットの40、53、55、74、79および/または82位にゼロ、1個またはそれ以上の非同類改変を含むものであり得る。かかるタンパク質は、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と80%、90%、95%または99%より高い配列同一性を保持したものであり得る。結合ポケット外部位(ここでは、変動性が特に十分に許容され得る)としては、細胞外ドメイン(上記)のアミノ末端およびカルボキシ末端、ならびに42〜46および65〜73位が挙げられる。65位におけるアスパラギンからアラニンへの改変(N65A)により、実際に、A64バックグラウンドでのリガンド結合が改善され、したがって、R64バックグラウンドでのリガンド結合に対して有害な効果はないことが予測される。この変更により、おそらくA64バックグラウンドでのN65のグリコシル化が解消され、これにより、この領域における有意な変更は許容されるであろうことが示される。R64A変更はあまり許容されないが、R64Kは十分に許容され、したがって、別の塩基性残基(Hなど)が64位において許容され得る。
【0051】
ActRIIBは、ほぼすべての脊椎動物間で十分に保存されており、長鎖の細胞外ドメインは完全に保存されている。また、ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物生物体に由来するActRIIB配列の比較により、改変されてもよい残基における洞察が得られる。したがって、活性なヒトActRIIBは、別の脊椎動物ActRIIBの配列の対応する位置に1つ以上のアミノ酸が含むものあるいは、ヒトまたは他の脊椎動物配列のものと類似した残基を含むものであり得る。以下の例は、活性なActRIIBバリアントを規定するためのこのアプローチの例示である。L46はツメガエルActRIIBではバリンであり、そのため、この位置は改変されてもよく、任意選択で、別の疎水性残基(V、IもしくはFなど)または非極性残基(Aなど)に改変されてもよい。E52はツメガエルではKであり、この部位が、多種多様な変更(例えば、極性残基(E、D、K、R、H、S、T、P、G、Y、およびおそらくAなど)に許容性であり得ることを示す。T93はツメガエルではKであり、広範な構造異型がこの位置において許容されることを示し、極性残基(S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなど)が有利である。F108はツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性基(I、VもしくはLなど)が許容されるはずである。E111はツメガエルではKであり、残基の変更が、この位置において許容されることを示す(例えば、D、R、KおよびH、ならびにQおよびN)。R112はツメガエルではKであり、塩基性残基がこの位置において許容されることを示す(例えば、RおよびH)。119位のAは、相対的にあまり保存されておらず、齧歯類ではP、ツメガエルではVのようである。したがって、本質的に任意のアミノ酸が、この位置において許容されるはずである。
【0052】
さらなるN結合型グリコシル化部位(N−X−S/T)をActRIIBポリペプチドに付加してもよく、ActRIIB(R64)−Fc形態と比べてActRIIB−Fc融合タンパク質の血清半減期が増大され得る。NX(T/S)配列の例は42〜44(NQS)および65〜67(NSS)にみられるが、後者は、64位のRで効率的にグリコシル化されないことがあり得る。N−X−S/T配列は、一般的に、リガンド結合ポケット外の位置に導入され得る。非内因性N−X−S/T配列の導入に特に好適な部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134が挙げられる。また、N−X−S/T配列を、ActRIIB配列とFcまたは他の融合成分との間のリンカーに導入してもよい。かかる部位は、既に存在しているSもしくはTに対して正しい位置にNを導入することにより、または既に存在しているNに対応する位置にSもしくはTを導入することにより、最小限の労力で導入され得る。したがって、N結合型グリコシル化部位がもたらされ得る望ましい改変は:A24N、R64N、S67N(場合によっては、N65A改変との組合せで)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化によってもたらされる保護のため、グリコシル化されると予測される任意のSが、免疫原性部位を生じることなくTに改変され得る。同様に、グリコシル化されると予測される任意のTがSに改変され得る。したがって、改変S67TおよびS44Tが想定される。同様に、A24NバリアントではS26T改変が使用され得る。したがって、ActRIIBバリアントは、1つ以上のさらなる非内因性N結合型グリコシル化コンセンサス配列を含むものであり得る。
【0053】
記載のバリエーションは種々の様式で組み合わされ得る。さらに、ActRIIBには、保存が多くの場合で有益なアミノ酸位置がある。このような位置としては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、特にトリプトファン)、37位(酸性、特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。保存が望ましいであろう他の位置は以下のもの:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または電荷を有するもの、特にE、D、RまたはK)である。
【0054】
一部の特定の実施形態において、本発明では、治療有効性または安定性(例えば、エキソビボ貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)の向上などの目的のために、ActRIIBポリペプチドの構造を修飾することによる機能性バリアントの作製が想定される。また、修飾型ActRIIBポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失または付加によっても作製され得る。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの、アスパルテートのグルタメートでの、トレオニンのセリンでの孤立型置換、またはアミノ酸の構造的に関連しているアミノ酸での同様の置換(例えば、同類変異)は、得られる分子の生物学的活性に対して大きな効果を有しないと予測することは妥当である。同類置換は、側鎖が関連しているアミノ酸ファミリー内で起こるものである。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列の変更によって機能性ホモログがもたらされるかどうかは、バリアントActRIIBポリペプチドが、細胞内で野生型ActRIIBポリペプチドと類似した様式で応答をもたらす能力、または1種類以上のリガンド(アクチビン、GDF−11もしくはミオスタチンなど)に野生型と類似した様式で結合する能力を評価することにより容易に判定され得る。
【0055】
一部の特定の特別な実施形態において、本発明では、ActRIIBポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称する)において、バリアント(または変異型)ActRIIBポリペプチドが、改変されたリガンド結合活性(例えば、結合親和性または結合特異性)を有するような変異を行なうことが想定される。一部の特定の場合において、かかるバリアントActRIIBポリペプチドは、特定のリガンドに対して改変された(高い、または低減された)結合親和性を有する。他の場合において、バリアントActRIIBポリペプチドは、そのリガンドに対して改変された結合特異性を有する。
【0056】
一部の特定の実施形態において、本発明では、該ポリペプチドのグリコシル化が改変されるようなActRIIBポリペプチドの特定の変異が想定される。かかる変異は、1つ以上のグリコシル化部位(O結合型またはN結合型グリコシル化部位など)が導入または除去されるように選択され得る。アスパラギン結合型グリコシル化認識部位は、一般的に、トリペプチド配列アスパラギン−X−トレオニン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、該配列は、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識される。また、該改変は、野生型ActRIIBポリペプチドの配列(のO結合型グリコシル化部位)への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換によっても行なわれ得る。グリコシル化認識部位の1番目または3番目のアミノ酸位置の一方もしくは両方でのさまざまなアミノ酸置換または欠失(および/または2番目の位置でのアミノ酸欠失)により、該修飾トリペプチド配列において非グリコシル化がもたらされる。ActRIIBポリペプチド上の糖質部位の数を増やす別の手段は、ActRIIBポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによるものである。使用されるカップリング様式に応じて、糖鎖(1つまたは複数)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(システインのものなど);(d)遊離ヒドロキシル基(セリン、トレオニンもしくはヒドロキシルプロリンのものなど);(e)芳香族残基(フェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンのものなど);または(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。このような方法は、WO 87/05330(1987年9月11日公開)ならびにAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ActRIIBポリペプチド上に存在する1つ以上の糖質部位の除去は、化学的および/または酵素的に行なわれ得る。化学的脱グリコシル化は、例えば、ActRIIBポリペプチドを化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物に曝露することを伴うものであり得る。この処理により、連結糖鎖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除き、ほとんどまたは全部の糖鎖の切断がもたらされるが、該アミノ酸配列はインタクトなままである。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.118:131にさらに記載されている。ActRIIBポリペプチド上の糖質部位の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.138:350に記載のさまざまなエンド−およびエキソ−グリコシダーゼの使用によって行なわれ得る。哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞ではすべて、異なるグリコシル化パターン(これは、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る)が導入され得るため、ActRIIBポリペプチドの配列は、使用される発現系の型に応じて、適宜、調整され得る。一般に、ヒトにおける使用のためのActRIIBタンパク質は、適正なグリコシル化が得られる哺乳動物細胞株(HEK293またはCHO細胞株など)で発現させるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であると予測される。
【0057】
本開示では、さらに、バリアント、特に、ActRIIBポリペプチドのコンビナトリアルバリアントの組(任意選択で、切断型バリアントを含む)の作製方法が想定され;コンビナトリアル変異型のプールは、機能性バリアント配列の同定に特に有用である。かかるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、改変された特性(改変された薬物動態、または改変されたリガンド結合など)を有するActRIIBポリペプチドバリアントを作製するためであり得る。さまざまなスクリーニングアッセイを以下に示すが、かかるアッセイはバリアントを評価するために使用され得る。例えば、ActRIIBポリペプチドバリアントは、ActRIIBポリペプチドに結合し、ActRIIBリガンドがActRIIBポリペプチドに結合するのを妨げる能力に関してスクリーニングされ得る。
【0058】
また、ActRIIBポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、細胞系またはインビボでのアッセイでも試験され得る。例えば、骨芽細胞または前駆体での骨生成に関与している遺伝子の発現に対するActRIIBポリペプチドバリアントの効果が評価され得る。これは、必要に応じて、1種類以上の組換えActRIIBリガンドタンパク質(例えば、BMP7)の存在下で行なわれ得、細胞は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはそのバリアント、ならびに任意選択でActRIIBリガンドが産生されるようにトランスフェクトされ得る。同様に、ActRIIBポリペプチドがマウスまたは他の動物に投与され得、1つ以上の骨特性(密度または容量など)が評価され得る。また、骨折の治癒速度を評価してもよい。同様に、ActRIIBポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、筋肉細胞、脂肪細胞およびニューロン細胞において、これらの細胞の増殖に対する任意の効果について、例えば、後述するアッセイによって試験され得る。かかるアッセイは、当該技術分野でよく知られており、常套的である。かかる細胞株では、下流のシグナル伝達に対する効果をモニタリングするため、SMAD応答性レポーター遺伝子が使用され得る。
【0059】
天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて選択的な効力を有するコンビナトリアルに誘導されたバリアントが作製され得る。かかるバリアントタンパク質は、組換えDNA構築物から発現させる場合、遺伝子療法プロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発により、対応する野生型ActRIIBポリペプチドと劇的に異なる細胞内半減期を有するバリアントを生成させることができる。例えば、改変型タンパク質は、タンパク質分解または天然ActRIIBポリペプチドの崩壊あるいは不活化がもたらされる他のプロセスに対して、より安定にされたもの、または安定性が低減されたもののいずれかであり得る。かかるバリアントおよびこれをコードしている遺伝子は、ActRIIBポリペプチドの半減期を調節することにより、ActRIIBポリペプチドレベルを改変するために用いることができる。例えば、短い半減期では、より一過性の生物学的効果がもたらされ得、誘導発現系の一部である場合は、細胞内の組換えActRIIBポリペプチドレベルのより厳格な制御が可能となり得る。
【0060】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドに天然に存在している任意の修飾に加えて、さらに翻訳後修飾を含むものであってもよい。かかる修飾としては、限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられる。その結果、修飾型ActRIIBポリペプチドは、非アミノ酸要素(ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸基など)を含有するものであり得る。ActRIIBポリペプチドの機能性に対するかかる非アミノ酸要素の効果は、他のActRIIBポリペプチドバリアントについて本明細書に記載のようにして試験され得る。ActRIIBポリペプチドが、該ActRIIBポリペプチドの発生期の形態の切断によって細胞内で産生される場合、翻訳後プロセッシングは、該タンパク質の正しいフォールディングおよび/または機能にも重要であり得る。種々の細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、かかる翻訳後活性に対して特定の細胞機構および特徴的機構を有し、ActRIIBポリペプチドの正しい修飾およびプロセッシングが確実になるように選択され得る。
【0061】
一部の特定の態様において、ActRIIBポリペプチドの機能性バリアントまたは修飾型形態として、ActRIIBポリペプチドの少なくとも一部分と1つ以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が挙げられる。かかる融合ドメインのよく知られた例としては、限定されないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖の定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられる。融合ドメインは、所望の特性が付与されるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的には、アフィニティクロマトグラフィー用の該当するマトリックス(グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−またはコバルト−結合樹脂など)が使用される。かかるマトリックスの多くは、「キット」形態(Pharmacia GST精製系およびQIAexpressTM系(Qiagen)など)((HIS6)融合パートナーとともに使用され得る)で入手可能である。別の一例として、融合ドメインは、ActRIIBポリペプチドの検出が容易になるように選択され得る。かかる検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)ならびに「エピトープタグ」(これは、通常、特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である)が挙げられる。特異的モノクローナル抗体が容易に利用可能なよく知られたエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。一部の場合では、融合ドメインは第Xa因子またはトロンビンなどに対するプロテアーゼ切断部位を有し、該部位により、該当するプロテアーゼが該融合タンパク質を一部消化し、それにより組換えタンパク質を遊離させることが可能になる。遊離されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって融合ドメインから単離され得る。一部の特定の好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドを、ActRIIBポリペプチドをインビボで安定化させるドメイン(「安定化剤」ドメイン)に融合させる。「安定化させる」は、これが、崩壊の低減、腎臓によるクリアランスの低減、または他の薬物動態学的効果のいずれのためであるかに関係なく、血清半減期が増大する任意のことを意図する。免疫グロブリンのFc部分との融合体では、広範囲のタンパク質に望ましい薬物動態学的特性が付与されることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合体でも望ましい特性が付与され得る。選択され得る他の型の融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能性ドメイン(さらなる生物学的機能(筋成長のさらなる刺激など)を付与するもの)が挙げられる。
【0062】
具体的な一例として、本発明は、Fcドメイン(例えば、配列番号9)に融合させた細胞外(例えば、GDF8結合)ドメインを含む、GDF8アンタゴニストとしての融合タンパク質を提供する。
【0063】
【化3】
任意選択で、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434などの残基に1つ以上の変異を有する。一部の特定の場合において、このような変異の1つ以上(例えば、Asp−265変異)を有する変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてFcγ受容体に対する結合能力が低下している。他の場合において、このような変異の1つ以上(例えば、Asn−434変異)を有する変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてMHCクラスI関連Fc−受容体(FcRN)に対する結合能力が増大している。
【0064】
融合タンパク質の種々のエレメントは、所望の機能性と整合する任意の様式で配列され得ることは理解されよう。例えば、ActRIIBポリペプチドを異種ドメインのC末端側に配置してもよく、あるいはまた、異種ドメインをActRIIBポリペプチドのC末端側に配置してもよい。ActRIIBポリペプチドドメインと異種ドメインは融合タンパク質内で隣接している必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列を、どちらかのドメインのC末端側もしくはN末端側、または両ドメイン間に含めてもよい。
【0065】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを安定化させることができる1つ以上の修飾を含むものである。例えば、かかる修飾により、ActRIIBポリペプチドのインビトロ半減期が向上する、ActRIIBポリペプチドの循環半減期が向上する、またはActRIIBポリペプチドのタンパク質分解が低減される。かかる安定化修飾としては、限定されないが、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチドと安定化剤ドメインを含む融合タンパク質など)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドへのグリコシル化部位の付加など)、および糖質部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドからの糖質部位の除去など)が挙げられる。融合タンパク質の場合、ActRIIBポリペプチドを、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化剤ドメインに融合させる。本明細書で用いる場合、用語「安定化剤ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)をいうだけでなく、非タンパク質系修飾(糖質部位など)、または非タンパク質系ポリマー(ポリエチレングリコールなど)も包含する。
【0066】
一部の特定の実施形態において、本発明では、他のタンパク質から単離された、あるいは他のタンパク質を実質的に含まない、ActRIIBポリペプチドの単離形態および/または精製形態を利用可能にする。
【0067】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチド(非修飾型または修飾型)は、当該技術分野で知られたさまざまな手法によって作製され得る。例えば、かかるActRIIBポリペプチドは、標準的なタンパク質化学反応手法、例えば、Bodansky,M.Principles of Peptide Synthesis,Springer Verlag,Berlin(1993)およびGrant G.A.(編),Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman and Company,New York(1992)に記載のものを用いて合成され得る。また、自動化ペプチド合成装置が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいはまた、ActRIIBポリペプチド、その断片またはバリアントを、当該技術分野でよく知られた種々の発現系(例えば、大腸菌、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)(以下も参照のこと)を用いて組換え産生させてもよい。さらなる実施形態では、例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対形成塩基性アミノ酸変換酵素(PACE))を使用することにより、天然に存在する、または組換え産生させた完全長ActRIIBポリペプチドを消化させることによって、修飾型または非修飾型のActRIIBポリペプチドが作製され得る。タンパク質分解性切断部位の同定には、コンピュータ解析(市販のソフトウェアを使用(例えば、MacVector,Omega,PCGene,Molecular Simulation,Inc.))が使用され得る。あるいはまた、かかるActRIIBポリペプチドを、天然に存在する、または組換え産生させた完全長ActRIIBポリペプチドから、例えば、当該技術分野で知られた標準的な手法で、例えば、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)によって作製してもよい。
【0068】
3.ActRIIBポリペプチドをコードする核酸
一部の特定の態様において、本発明は、本明細書において開示する任意のActRIIBポリペプチドをコードする単離されたおよび/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号4は、ActRIIB(25−131)−hFc前駆体ポリペプチドをコードしているが、配列番号6は、同じタンパク質をコードしているが、別の択一的な配列を有し、配列番号4および6の各々のヌクレオチド73〜396は、コードタンパク質のActRIIB由来部分をコードしている。主題の核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。かかる核酸はDNA分子であってもRNA分子であってもよい。このような核酸は、例えば、ActRIIBポリペプチドの作製方法に使用され得る。
【0069】
例えば、以下の配列は、天然に存在するヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号2)をコードしている(NM_001106のヌクレオチド5〜1543,1539bp)。
【0070】
【化4】
以下の配列は、ヒト可溶性(細胞外)ActRIIBポリペプチド(配列番号10)をコードしている(348bp)。
【0071】
【化5】
一部の特定の態様では、ActRIIBポリペプチドをコードする主題の核酸は配列番号4または6のバリアントである核酸を含むことがさらに理解されよう。バリアントヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失によって異なる配列(対立遺伝子バリアントなど)を包含し;したがって、配列番号4または6で指定されるコード配列のヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0072】
一部の特定の実施形態において、本発明は、配列番号4または6、特に、そのActRIIBに由来する部分(ヌクレオチド73〜396)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である単離された核酸配列または組換え核酸配列を提供する。当業者には、配列番号4または6に相補的な核酸配列および配列番号4のバリアントもまた本発明の範囲に含まれることが認識されよう。さらなる実施形態において、本発明の核酸配列は、単離型、組換え型および/または異種ヌクレオチド配列との融合型、またはDNAライブラリー内のものであり得る。
【0073】
また、他の実施形態では、本発明の核酸は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号4もしくは6で指定されるヌクレオチド配列、配列番号4もしくは6の相補体またはその断片(例えば、ヌクレオチド73〜396)にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むものである。上記に論考したように、当業者には、DNAのハイブリダイゼーションが促進される適切なストリンジェンシー条件は異なり得ることが容易に理解されよう。当業者には、DNAのハイブリダイゼーションが促進される適切なストリンジェンシー条件は異なり得ることが容易に理解されよう。例えば、ハイブリダイゼーションが6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃で行なわれた後、2.0×SSCで50℃での洗浄が行なわれ得る。例えば、洗浄工程での塩濃度は、約2.0×SSCで50℃での低ストリンジェンシーから約0.2×SSCで50℃での高ストリンジェンシーまでで選択され得る。また、洗浄工程での温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上げられ得る。温度と塩の両方を変更してもよく、その他の可変量を変更しながら、温度または塩濃度を一定に維持してもよい。一実施形態において、本発明は、6×SSCで室温の低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイズの後、2×SSCで室温で洗浄される核酸を提供する。
【0074】
遺伝子コードの縮重のため配列番号4または6に示した核酸と異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲に含まれる。例えば、いくつかのアミノ酸は1つより多くの三文字表記で指定される。同じアミノ酸を指定するコドンまたは同義語(例えば,CAUとCACはヒスチジンの同義語)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異をもたらすものであり得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中に、主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらさないDNA配列多型が存在することが予測される。当業者には、天然の対立遺伝子変異のため、所与の種の個体の中に、特定のタンパク質をコードする核酸の1つ以上のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)におけるこのような変異が存在し得ることが認識されよう。任意のかかるすべてのヌクレオチド変異および生じるアミノ酸多型は本発明の範囲に含まれる。
【0075】
一部の特定の実施形態において、本発明の組換え核酸は、発現構築物内で1つ以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節ヌクレオチド配列は、一般的に、発現に使用される宿主細胞に適切なものである。さまざまな宿主細胞に対する数多くの型の適切な発現ベクターおよび適当な調節配列が、当該技術分野で知られている。典型的には、前記1つ以上の調節ヌクレオチド配列としては、限定されないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が挙げられ得る。当該技術分野で知られた構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが本発明によって想定される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または1つより多くのプロモーターエレメントを合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、細胞内にエピソーム(プラスミドなど)で存在させてもよく、発現構築物を染色体に挿入してもよい。好ましい実施形態では、発現ベクターに、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能なマーカー遺伝子を含める。選択可能なマーカー遺伝子は当該技術分野でよく知られており、使用される宿主細胞によって異なる。
【0076】
本発明の一部の特定の態様において、主題の核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードし、かつ少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにて提供される。調節配列は当該技術分野で認知されており、ActRIIBポリペプチドの発現が指令されるように選択される。したがって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントを包含する。例示的な調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。例えば、作動可能に連結させるとDNA配列の発現を制御する多種多様な任意の発現制御配列が、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためのこのようなベクターに使用され得る。かかる有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの極初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、T7プロモーター(その発現はT7 RNAポリメラーゼによって指令される)、ファージλの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、Fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドリン(polyhedron)プロモーター、ならびに原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはそのウイルスでの遺伝子発現を制御することがわかっている他の配列、ならびにその種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換させる宿主細胞の選択および/または発現が所望されるタンパク質の型などの要素に依存し得ることを理解されたい。さらに、ベクターのコピー数、該コピー数の制御能およびベクターにコードされた任意の他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現も考慮すべきである。
【0077】
本発明の組換え核酸は、クローニングした遺伝子またはその一部分を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫もしくは哺乳動物系)またはその両方のいずれかでの発現に適したベクター内にライゲートすることにより作製され得る。組換えActRIIBポリペプチドを産生させるための発現媒体としては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターとしては、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミド(原核生物細胞(大腸菌など)での発現用)の型のプラスミドが挙げられる。
【0078】
一部の哺乳動物発現ベクターは、細菌内でのベクターの伝播を助長するための原核生物系配列と、真核生物細胞において発現される1つ以上の真核生物系転写単位の両方を含むものである。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来ベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物系発現ベクターの一例である。一部のこのようなベクターは、原核生物細胞と真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性による選択を助長するため、細菌プラスミド(pBR322など)に由来する配列で修飾される。あるいはまた、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン‐バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体を、真核生物細胞におけるタンパク質の一過性発現に使用してもよい。他のウイルス(例えば、レトロウイルス)発現系の例は、以下の遺伝子療法の送達系の説明において知得され得る。プラスミドの調製および宿主生物体の形質転換に使用される種々の方法は、当該技術分野でよく知られている。原核生物細胞と真核生物細胞の両方に対する他の好適な発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版, Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)第16章および第17章を参照のこと。一部の場合では、バキュロウイルス発現系の使用によって組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合があり得る。かかるバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、ならびにpBlueBac由来ベクター(β−gal含有pBlueBac IIIなど)が挙げられる。
【0079】
好ましい実施形態では、CHO細胞での主題のActRIIBポリペプチドの産生のためのベクター、例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc.)が設計される。自明のように、主題の遺伝子構築物は、培養にて増殖させた細胞において主題のActRIIBポリペプチドの発現を引き起こし、例えば、精製対象のタンパク質(例えば、融合タンパク質またはバリアントタンパク質)を産生させるために使用され得る。
【0080】
また、本発明は、1種類以上の主題のActRIIBポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号4または6)を含む組換え遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本発明のActRIIBポリペプチドは、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いて)、酵母、または哺乳動物細胞において発現させ得る。他の好適な宿主細胞は当業者にわかる。
【0081】
したがって、本発明は、さらに、主題のActRIIBポリペプチドの作製方法に関する。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、ActRIIBポリペプチドの発現が起こることを可能にする適切な条件下で培養され得る。ActRIIBポリペプチドが分泌され、細胞とActRIIBポリペプチドを含有する培地との混合物から単離され得る。あるいはまた、ActRIIBポリペプチドを細胞質内または膜画分内に保持させ、該細胞を収集し、溶解させ、該タンパク質を単離してもよい。細胞培養物には、宿主細胞、培地および他の副生成物が含まれる。細胞培養に好適な培地は当該技術分野でよく知られている。主題のActRIIBポリペプチドは細胞培養培地、宿主細胞または両方から、タンパク質精製のための当該技術分野で知られた手法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびイムノアフィニティ精製(ActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を使用)を用いて単離され得る。好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。
【0082】
別の実施形態では、精製用リーダー配列(ポリ−(His)/組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端のエンテロキナーゼ切断部位配列など)をコードする融合遺伝子により、Ni2+メタルレジンを用いたアフィニティクロマトグラフィーによる発現融合タンパク質の精製を可能にすることができる。次いで、精製用リーダー配列を、続いてエンテロキナーゼでの処理によって除去すると、精製ActRIIBポリペプチドが得られ得る(例えば、Hochuliら,(1987)J.Chromatography 411:177;およびJanknechtら,PNAS USA 88:8972を参照のこと)。
【0083】
融合遺伝子を作製するための手法はよく知られている。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の接合は、慣用的な手法に従って、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端(stagger−ended)、適切な末端を得るための制限酵素消化、付着末端のフィルイン(適宜)、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、ならびに酵素的ライゲーションを用いて行なわれる。別の実施形態では、該融合遺伝子は、自動化DNA合成装置などの慣用的な手法によって合成され得る。あるいはまた、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続する遺伝子断片間に相補的な突出端を生成させるアンカープライマーを用いて行なわれ得、その後、これをアニーリングするとキメラ遺伝子配列が作製され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。
【0084】
5.例示的な治療的使用
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンド(例えば、GDF8)の異常な活性と関連している疾患または病状の処置または予防に使用され得る。このような疾患、障害または病状を、本明細書において、一般的に「ActRIIBに関連する病状」と称する。一部の特定の実施形態において、本発明は、処置または予防を必要とする個体に治療有効量の上記のActRIIBポリペプチドを投与することによる、該個体の処置または予防方法を提供する。このような方法は、特に、動物、より特別にはヒトの治療的および予防的処置を目的としたものである。
【0085】
本明細書で用いる場合、障害または病状を「予防する」治療薬は、統計学的標本において、非処置対照試料と比べて処置試料で障害または病状の発生が低減されるか、あるいは非処置対照試料と比べて障害または病状の1つ以上の症状の発現が遅延されるか、またはその重症度が低減される化合物をいう。用語「処置する」は、本明細書で用いる場合、
名称を記載した病状の予防またはいったん確立された該病状の改善もしくは解消を包含する。
【0086】
ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体は、組織成長ならびに発生初期のプロセス(種々の構造の正しい形成など)、または1種類以上の発生後の能力(例えば、性的発育、下垂体ホルモンの生成、および骨や軟骨の構築)に必須の役割を果している。したがって、ActRIIBに関連する病状としては、異常な組織成長および発達不全が挙げられる。また、ActRIIBに関連する病状としては、限定されないが、細胞の増殖および分化の障害(炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染性疾患、および腫瘍など)が挙げられる。
【0087】
例示的な処置対象の病状としては、神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィおよび筋萎縮)、鬱血性閉塞性肺疾患(およびCOPDと関連している筋消耗)、筋消耗症候群、サルコペニア、悪液質、脂肪組織障害(例えば、肥満)、2型糖尿病、ならびに骨変性性疾患(例えば、骨粗鬆症)が挙げられる。他の例示的な病状としては、筋変性性のおよび神経筋の障害、組織修復(例えば、創傷治癒)、神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、免疫学的障害(例えば、リンパ球の異常な増殖もしくは機能に関連している障害)、ならびに肥満または脂肪細胞の異常な増殖に関連している障害が挙げられる。
【0088】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)は、筋ジストロフィの処置の一部として使用される。用語「筋ジストロフィ」は、骨格筋ならびに場合によっては心臓および呼吸筋の緩徐な弱体化および衰退を特徴とする一群の変性性筋疾患をいう。筋ジストロフィは、筋肉の微視的変化から始まる進行性の筋消耗および衰弱を特徴とする遺伝性障害である。経時的に筋肉が衰退するにつれて、人間の筋力は低下する。主題のActRIIBポリペプチドを含むレジメンで処置され得る例示的な筋ジストロフィとしては:デュシェーヌ筋ジストロフィ(DMD)、ベッカー筋ジストロフィ(BMD)、エメリー‐ドライフス筋ジストロフィ(EDMD)、肢帯筋ジストロフィ(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィ(FSHまたはFSHD)(ランドジー‐デジェリーヌとしても知られている)、筋緊張性ジストロフィ(MMD)(シュタイネルト病としても知られている)、眼咽頭筋ジストロフィ(OPMD)、遠位筋ジストロフィ(DD)、先天性筋ジストロフィ(CMD)が挙げられる。
【0089】
デュシェーヌ筋ジストロフィ(DMD)は、最初に、フランスの神経学者Guillaume Benjamin Amand Duchenneにより、1860年代に報告された。ベッカー筋ジストロフィ(BMD)はドイツの医師Peter Emil Beckerにちなんだ名称であり、彼が最初にこのDMD異型を1950代に報告した。DMDは、最もよくみられる男性の遺伝性疾患の1つであり、少年3,500人に1人が罹患している。DMDは、X染色体の短腕に存在するジストロフィン遺伝子が破壊された場合に起こる。男性にはX染色体が1コピーしかないため、ジストロフィン遺伝子は1コピーしかない。ジストロフィンタンパク質がないと、筋肉は、収縮と弛緩のサイクル中に容易に損傷される。疾患初期では、筋肉は再生によって補われるが、後になると、筋肉前駆細胞が進行中の損傷に追いつけず、健常な筋肉が非機能性の線維脂肪組織で置き換えられる。
【0090】
BMDは、ジストロフィン遺伝子の異なる変異に起因している。BMD患者は、いくらかのジストロフィンを有するが、量が不十分であるか、質が不十分であるかのいずれかである。ジストロフィンがいくらかあると、BMDの人の筋肉は、DMDの人と同程度に悪いか、または同程度に急速な変性から保護される。
【0091】
例えば、最近の研究により、GDF8(ActRIIBリガンド)の機能をインビボでブロックまたは解消させると、DMD患者およびBMD患者において、少なくとも一部の特定の症状が有効に処置され得ることが示されている。したがって、主題のActRIIBポリペプチドは、GDF8インヒビター(アンタゴニスト)としての機能を果し、DMD患者およびBMD患者において、GDF8および/またはActRIIBの機能をインビボでブロックする別の択一的な手段を構成する可能性がある。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質によって筋ジストロフィのマウスモデルにおいて筋肉量が増加することが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0092】
同様に、主題のActRIIBポリペプチドにより、筋成長が必要とされる他の疾患状態において筋肉量を増加させるための有効な手段が提供される。例えば、ALS(ルー・ゲーリグ病とも称される)(運動ニューロン疾患)は、慢性で不治の制止不能なCNS障害であり、脳を骨格筋に連結させるCNSの構成要素である運動ニューロンが障害される。ALSでは、運動ニューロンが衰退しており、最終的には死滅し、人間の脳は、依然として正常に十分機能して警告を発するが、動けという指令は決して筋肉に届かない。ALSになった人はほとんどが40歳〜70歳の間である。弱体化する最初の運動ニューロンは腕または脚に至るものである。ALSの人は、歩行に問題が起こることがあり得、ものを落としたり、転んだり、発話が不明瞭であったり、制御不能に笑ったり泣いたりすることがあり得る。最終的に、四肢の筋肉が不使用のため萎縮し始める。この筋肉の衰弱は消耗性となり、車椅子が必要になったり、ベッドから起き上がって何かをすることができなくなる。ほとんどのALS患者は、疾患発症から3〜5年で、呼吸不全または人工呼吸器関連の合併症(肺炎など)で死亡する。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質によりALSのマウスモデルの外観、筋肉量および寿命が改善されることが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0093】
また、ActRIIBポリペプチド誘導性の筋肉量の増加により、筋消耗疾患に苦しんでいる人も恩恵を被り得る。Gonzalez−Cadavidら(上掲)により、GDF8発現はヒトの無脂肪体重と逆比例的に相関していること、およびGDF8遺伝子の発現の増大はAIDS消耗症候群の人の体重減少と関連していることが報告された。AIDS患者においてGDF8の機能を阻害することにより、AIDSの少なくとも一部の特定の症状が、完全に解消されないまでも軽減され得、したがって、AIDS患者の生活の質が有意に改善され得る。
【0094】
GDF8(ActRIIBリガンド)機能の低下は、栄養摂取の減損のない脂肪量の減少とも関連しているため(Zimmersら,上掲;McPherronおよびLee,上掲)、主題のActRIIBポリペプチドは、さらに、肥満およびII型糖尿病の進展を低速化または予防するための治療用薬剤として使用され得る。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質により肥満マウスの代謝状態が改善されることが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0095】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、メタボリックシンドローム(X症候群およびインスリン抵抗性症候群としても知られている)の処置の一部として使用される。メタボリックシンドロームは、心血管疾患およびII型真性糖尿病を進展させるリスクを増大させる障害およびリスクファクターの組合せである。患者のほとんどは高齢、肥満であり、座っていることが多く、ある程度のインスリン抵抗性を有する。中心性(腹部または内臓)脂肪過多症は、該シンドロームの大きな特徴である。
【0096】
関連する実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物は、II型真性糖尿病(非インスリン依存性真性糖尿病または成人発症糖尿病としても知られている)の処置の一部として使用され得る。II型真性糖尿病は、インスリン抵抗性および相対的にインスリン欠乏症の状況における高い血糖を特徴とする。糖尿病における複雑で多因子性の代謝変化は、多くの場合、多くの器官に、最も重要なのは心血管系に損傷および機能障害をもたらす。II型真性糖尿病は、多くの場合、肥満(腹部または内臓の脂肪過多症)、高血圧、高いコレステロール、およびメタボリックシンドロームと関連している。II型真性糖尿病重要なリスクファクターとしては、加齢、高脂肪食餌、および座っていることが多い生活様式が挙げられる。
【0097】
他の関連する実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物は、脂肪性沈着物(多くの場合、斑と称される)の蓄積のため動脈壁が肥厚した慢性の炎症状態であるアテローム性動脈硬化の処置の一部として使用され得る。アテローム性動脈硬化のリスクファクターとしては、加齢、真性糖尿病、異常リポ蛋白血症、肥満(腹部または内臓の脂肪過多症)、および座っていることが多い生活様式が挙げられる。
【0098】
また、ActRIIBポリペプチドは、メタボリックシンドロームと関連している傾向にあるリポジストロフィ系障害にも使用され得る。重度のインスリン抵抗性は、リポジストロフィの遺伝性形態と後天性形態のどちらにおいても生じる可能性がある(例えば、後者の場合、抗レトロウイルス療法で処置された患者におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連リポジストロフィ)。
【0099】
癌性食欲不振−悪液質症候群は、とりわけ、最も消耗性の生死にかかわる癌の態様である。癌性食欲不振−悪液質症候群における進行性の体重減少は、多くの型の癌の共通の特徴であり、良好でない生活の質および化学療法に対する良好でない応答の一因となるだけでなく、体重減少のない同等の腫瘍を有する患者でみられるものより短い生存期間の一因にもなる。食欲不振、脂肪および筋肉組織の衰弱、心理的苦悩、および生活の質の低下と関連して、悪液質は、癌と宿主間の複雑な相互作用によって生じる。これは、癌患者の最も一般的な死亡原因の1つであり、死亡時に80%において存在する。これは、タンパク質、糖質および脂肪の代謝に影響する複雑な代謝カオスの例である。腫瘍では、直接的異常と間接的異常の両方が生じ、食欲不振および体重減少がもたらされる。現在、この過程を制御または逆転させる処置はない。癌性食欲不振−悪液質症候群は、サイトカイン生成、脂質代謝性因子およびタンパク質分解誘導因子の放出、ならびに中間代謝の改変に影響を及ぼす。食欲不振はよくみられるが、食物摂取の減少単独では、癌患者でみられる身体組成の変化が説明され得ず、栄養摂取の増加では、消耗症候群は逆転され得ない。病前体重の5パーセントより大きい非自発的体重減少が6ヶ月以内に起こった場合、癌の患者において悪液質が疑われるべきである。
【0100】
成体マウスにおけるGDF8の全身性過剰発現により、ヒト悪液質症候群でみられるものと同様の顕著な筋肉量および脂肪量の減少が誘導されることがわかったため(Zimmersら,上掲)、医薬組成物としての主題のActRIIBポリペプチドは、筋成長が所望される悪液質症候群の症状を予防、処置または軽減するために有益に使用され得る。
【0101】
他の実施形態では、本発明は、骨および/または軟骨の形成の誘導方法、骨量減少の予防方法、骨鉱化の増大方法、あるいは骨の無機質脱落の予防方法を提供する。例えば、主題のActRIIBポリペプチドおよび本発明において同定される化合物は、ヒトおよび他の動物における骨粗鬆症の処置ならびに骨折および軟骨欠損の治癒に適用用途を有する。ActRIIBポリペプチドは、骨粗鬆症の進展に対する保護手段として、無症状低骨密度と診断された患者に有用であり得る。
【0102】
具体的な一実施形態において、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物の骨折および軟骨欠損の治癒に医療的有用性がみられることがあり得る。また、主題の方法および組成物は、閉鎖骨折ならびに開放骨折の低減に、また、人工関節の固定の改善にも予防的用途を有する場合がある得る。骨形成剤によって誘導されるデノボ骨形成は、先天性の外傷誘導性または腫瘍学的切除誘導性の頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、また、美容整形手術にも有用である。さらに、本発明の方法および組成物は、歯周病の処置、および他の歯の修復プロセスに使用され得る。一部の特定の場合では、主題のActRIIBポリペプチドにより、骨形成細胞の誘引、骨形成細胞の増殖の刺激、または骨形成細胞の前駆細胞の分化の誘導のための環境が提供され得る。また、本発明のActRIIBポリペプチドは、骨粗鬆症の処置にも有用であり得る。さらに、ActRIIBポリペプチドは、軟骨欠損の修復および変形性関節症の予防/逆転に使用され得る。
【0103】
別の具体的な実施形態において、本発明は、骨折ならびに軟骨および/または骨の欠損に関連する他の病状あるいは歯周病を修復するための治療方法および組成物を提供する。本発明は、さらに、創傷治癒および組織修復のための治療方法および組成物を提供する。創傷の型としては、限定されないが、火傷、切開および潰瘍が挙げられる。例えば、PCT公開公報番号WO84/01106を参照のこと。かかる組成物は、治療有効量の少なくとも1種類の本発明のActRIIBポリペプチドを、薬学的に許容され得るビヒクル、担体またはマトリックスと混合された状態で含むものである。
【0104】
別の具体的な実施形態において、本発明の方法および組成物は、骨量減少が引き起こされる病状(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、甲状腺中毒症、慢性の下痢状態もしくは吸収不良、尿細管性アシドーシス、慢性腎不全または神経性食欲不振など)に適用され得る。多くの人は、女性であること、体重が少ないこと、および主に座っていることが多い生活様式は、骨粗鬆症(骨塩量が減少し、骨折リスクがもたらされる)のリスクファクターであることを知っている。しかしながら、骨粗鬆症は、一部の特定の投薬物の長期使用にも起因することがあり得る。薬物または別の疾病状態に起因する骨粗鬆症は、続発性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られている病状では、体内で生成された過剰な量のコルチゾールにより骨粗鬆症および骨折がもたらされる。続発性骨粗鬆症と関連する最も一般的な投薬物は、コルチコステロイド(副腎から天然に生成されるホルモンであるコルチゾールと同様の作用をする類型の薬物)である。骨格の発達には十分なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺によって生成される)が必要であるが、過剰の甲状腺ホルモンにより経時的に骨量が減少することがあり得る。アルミニウムを含有する制酸薬は、腎臓に問題を有する人、特に透析を受けている人が高用量で摂取すると、骨量減少をもたらすことがあり得る。続発性骨粗鬆症が引き起こされ得る他の投薬物としては、フェニトイン(Dilantin)およびバルビツレート(発作を予防するために使用される);メトトレキサート(Rheumatrex,Immunex,Folex PFS)(一部の形態の関節炎、癌および免疫障害のための薬物);シクロスポリン(Sandimmune,Neoral)(一部の自己免疫疾患を処置するため、および臓器移植患者において免疫機構を抑制するために使用される薬物);黄体化ホルモン放出ホルモン作動薬(Lupron,Zoladex)(前立腺癌および子宮内膜症を処置するために使用される);ヘパリン(Calciparine,Liquaemin)(抗凝固性投薬物);ならびにコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)(高コレステロールを処置するために使用される)が挙げられる。歯肉疾患では、身体が口内の有害な細菌の防御を強制されるため、骨量減少が引き起こされる。該細菌は歯肉線縁下で毒素および酵素を生成し、慢性感染症を引き起こす。
【0105】
他の実施形態では、本発明は、動物の体脂肪含量を調節するため、および関連する病状、特に、関連する健康障害状態を処置または予防するための組成物および方法を提供する。本発明によれば、体重の調節(コントロール)とは、体重の増加もしくは減少、体重増加速度の増大もしくは低減、または体重減少速度の増大もしくは低減をいうことがあり得、また、能動的維持、または体重を有意に変化させないこと(例えば、調節(コントロール)しなければ体重が増加もしくは減少し得る外的もしくは内的影響に対して)を包含する。本発明の一実施形態は、体重の調節を必要とする動物(例えば、ヒト)にActRIIBポリペプチドを投与することによる体重の調節に関する。
【0106】
具体的な一実施形態において、本発明は、動物の脂肪量の低減および/または脂肪量の増加の低減のための方法および化合物、より詳しくは、肥満のリスクのある、または肥満に苦しんでいる患者の肥満を処置または改善するための方法および化合物に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、体重増加または体重維持ができない動物(例えば、消耗症候群の動物)を処置するための方法および化合物に関する。かかる方法は、体重および/または身体量の増加、あるいは体重および/または身体量の減少の低減、あるいは望ましくない低い(例えば、非健常)体重および/または身体量と関連しているか、またはそれらによって引き起こされる病状の改善に有効である。
【0107】
7.医薬組成物
一部の特定の実施形態において、本発明の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、薬学的に許容され得る担体とともに製剤化される。例えば、ActRIIBポリペプチドは、単独で、または医薬製剤(治療用組成物)の一成分として投与され得る。主題の化合物は、ヒト用または獣医学的医療における使用のための任意の簡便な様式での投与のために製剤化され得る。
【0108】
一部の特定の実施形態において、本発明の治療方法は、該組成物を、埋入物またはデバイスとして、経表面的、全身または局所に投与することを含むものである。投与する際、本発明における使用のための治療用組成物は、もちろん、パイロジェンフリーの生理学的に許容され得る形態である。さらに、該組成物は、望ましくは、標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪またはニューロン)、例えば、組織損傷を有する部位への送達のために粘性形態でカプセル封入または注射され得る。経表面投与は、創傷治癒および組織修復に好適であり得る。本発明の方法では、ActRIIBポリペプチド以外の任意選択で上記の組成物に同様に含められ得る治療上有用な薬剤が、択一的または付加的に、主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)と同時または逐次に投与され得る。
【0109】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の治療用化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を標的組織部位に送達して組織の発達のための構造を提供し、かつ最適には体内に再吸収され得るマトリックスを含むものであり得る。例えば、マトリックスは、ActRIIBポリペプチドの低速放出をもたらすものであり得る。かかるマトリックスは、現在、他の埋入型医療用適用物に使用されている材料で形成されたものであり得る。
【0110】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、表面的外観および界面特性に基づく。主題の組成物の具体的な適用により適切な製剤が規定される。該組成物用の潜在的マトリックスは、生分解性の化学的に規定される硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の潜在的材料は、生分解性の生物学的に十分規定される骨または皮膚コラーゲンなどである。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分で構成されたものである。他の潜在的マトリックスは、非生分解性の化学的に規定される焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネートなど、または他のセラミックスである。マトリックスは、上記の任意の型の材料の組合せ(ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンとリン酸三カルシウムなど)で構成されたものであってもよい。バイオセラミックスは、組成を改変してもよく(例えば、リン酸アルミン酸カルシウムに)、孔径、粒径、粒子形状および生分解性が改変されるように加工処理してもよい。
【0111】
一部の特定の実施形態では、本発明の方法は、経口用に、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(フレーバー基剤、通常、スクロースおよびアカシアもしくはトラガカントが使用される)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型の液状乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(不活性な基剤(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなど)が使用される)として、および/またはマウスウォッシュなどとして投与され得、各々には所定量の薬剤が活性成分として含有される。また、薬剤は、ボーラス、舐剤またはペースト剤としても投与され得る。
【0112】
経口投与のための固形投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)では、本発明の1種類以上の治療用化合物が、1種類以上の薬学的に許容され得る担体と、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下:(1)充填剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸など);(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなど;(3)保湿剤(グリセロールなど);(4)崩壊剤(アガー−アガー、炭酸カルシウム、イモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一部の特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなど);(5)溶解遅延剤(パラフィンなど);(6)吸収促進剤(第4級アンモニウム化合物など);(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8)吸収剤(カオリンおよびベントナイトクレイなど);(9)滑沢剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびその混合物;ならびに(10)着色剤のいずれかと混合され得る。また、カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物に緩衝剤を含めてもよい。また、同様の型の固形組成物が、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用され得る(例えば、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤が使用される)。
【0113】
経口投与のための液状投薬形態としては、薬学的に許容され得る乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加え、液状投薬形態には、当該技術分野で一般的に使用されている不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物が含まれ得る。不活性な希釈剤の他に、経口組成物にはまた、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、着色剤、香料剤、ならびに保存剤を含めてもよい。
【0114】
懸濁剤には、活性化合物に加えて懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガー−アガーおよびトラガカント、ならびにその混合物が含まれ得る。
【0115】
本明細書において開示する一部の特定の組成物は、皮膚または粘膜のいずれかに経表面投与され得る。経表面用製剤には、さらに、皮膚または角質層浸透向上剤として有効であることが知られた多種多様な薬剤の1種類以上が含まれ得る。このようなものの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。製剤を化粧料として許容され得るものにするためのさらなる薬剤をさらに含めてもよい。このようなものの例は、脂肪、ワックス、油類、染料、香料、保存料、安定化剤、および表面活性剤である。また、角質溶解剤(当該技術分野で知られているものなど)を含めてもよい。例はサリチル酸およびイオウである。
【0116】
経表面または経皮投与のための投薬形態としては、粉末剤、スプレー剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、貼付剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件で、薬学的に許容され得る担体と、および必要とされ得る任意の保存料、バッファーまたは噴射剤と混合され得る。軟膏、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤には、本発明の主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)に加えて、動物性および植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛などの賦形剤、またはその混合物が含まれ得る。
【0117】
粉末剤およびスプレー剤には、主題の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末などの賦形剤、またはこのような物質の混合物が含まれ得る。スプレー剤には、通常の噴射剤(クロロフルオロ炭化水素など)ならびに揮発性の非置換型炭化水素(ブタンおよびプロパンなど)がさらに含まれ得る。
【0118】
一部の特定の実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物には、1種類以上のActRIIBポリペプチドが、1種類以上の薬学的に許容され得る滅菌された等張性の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョンと組み合わせて、または滅菌された粉末(これは、使用直前に、滅菌された注射用の液剤または分散剤に再構成され得る)と組み合わせて含まれ得、また、酸化防止剤、バッファー、静菌薬、製剤を対象レシピエントの血液と等張性にする溶質または懸濁化剤もしくは増粘剤が含有されていてもよい。本発明の医薬組成物に使用され得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なその混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびに注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。適正な流動性は、例えば、コーティング物質(レクチンなど)の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0119】
また、本発明の組成物に、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散化剤などの佐剤を含めてもよい。微生物の作用の抑制は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保され得る。また、等張剤(例えば、糖類、塩化ナトリウムなど)を該組成物に含めることが望ましい場合があり得る。また、注射用医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)を含めることによってもたらされ得る。
【0120】
投薬レジメンは、担当医師により、本発明の主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)の作用が改良される種々の要素を考慮して決定されることは理解されよう。該種々の要素は処置対象の疾患に依存する。
【0121】
また、一部の特定の実施形態では、本発明は、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドまたは他の化合物をインビボで生成させるための遺伝子療法を提供する。かかる治療法では、上記の障害を有する細胞または組織内へのActRIIBポリヌクレオチド配列の導入によって治療効果が得られ得る。ActRIIBポリヌクレオチド配列の送達は、組換え発現ベクター(キメラウイルスなど)またはコロイド状分散系を用いて行なわれ得る。ActRIIBポリヌクレオチド配列の治療用送達に好ましいのは、標的化対象リポソームの使用である。
【0122】
本明細書において教示する遺伝子療法に利用することができる種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアまたは、好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリレトロウイルス派生体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、限定されないが:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。いくつかのさらなるレトロウイルスベクターには、多数の遺伝子を組み込むことができる。このようなベクターはすべて、形質導入細胞が同定および作製され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を伝達し得るものであるか、または該ベクターに該遺伝子が組み込まれ得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を結合することにより、標的特異的とすることができる。好ましい標的化は、抗体を使用することにより行なわれる。当業者には、ActRIIBポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム内に挿入され得るか、またはウイルスエンベロープに結合され得ることが認識されよう。好ましい一実施形態では、ベクターは骨、軟骨、筋肉またはニューロン細胞/組織に標的化される。
【0123】
あるいはまた、組織培養細胞を、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドで、慣用的なリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトしてもよい。次いで、この細胞を、対象遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトする。得られた細胞は、該レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
【0124】
ActRIIBポリヌクレオチドの別の標的化対象送達系はコロイド状分散系である。コロイド状分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質系の系(例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソーム)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド状の系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達媒体として有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが水性の内部に封入され、生物学的に活性な形態で細胞に送達され得る(例えば、Fraleyら,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981参照)。リポソーム媒体を用いた効率的な遺伝子導入のための方法は当該技術分野で知られており、例えば、Manninoら,Biotechniques,6:682,1988を参照のこと。リポソームの組成は、通常、リン脂質の組合せであり、通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わされる。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0125】
リポソームの生成に有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。また、リポソームの標的化は、例えば、器官特異性、細胞特異性および小器官特異性に基づいたものも可能であり、当該技術分野で知られている。
【実施例】
【0126】
実施例
本発明を一般的に説明したが、本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。この実施例は、一部の特定の実施形態および本発明の実施形態の例示の目的で含めたものにすぎず、本発明を限定することを意図しない。
【0127】
実施例1.別の択一的なヌクレオチド配列を有するActRIIB(25−131)−hFcの作製
ActRIIB(25−131)−hFcを作製するため、N末端とC末端が切断されたヒトActRIIB細胞外ドメイン(天然タンパク質の残基25〜131)を、N末端でTPAリーダー配列(天然ActRIIBリーダーの代わり)と、およびC末端でヒトFcドメインと最小限のリンカー(3つのグリシン残基)(図1)を介して融合させた。この融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を図2に示す。本出願人らは、コドンを修飾し、最初の形質転換体の発現レベルにおいて相当な改善をもたらすActRIIB(25−131)−hFcタンパク質コードバリアント核酸を見い出した(図3)。
【0128】
成熟タンパク質は以下のようなアミノ酸配列を有する(N末端は、N末端配列決定法によって確認)(配列番号8)。
【0129】
【化6】
アミノ酸1〜107はActRIIBに由来している。
【0130】
発現された分子を、一連のカラムクロマトグラフィー工程(例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィーの3種類以上を任意の順で含むもの)を用いて精製した。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換を用いて終了され得る。
【0131】
実施例2.ActRIIB(25−131)−hFcによる高親和性リガンド結合
ActRIIB(25−131)−hFcおよびその完全長対応物ActRIIB(20−134)−hFcに対するいくつかのリガンドの親和性を、BiacoreTM機器を用いてインビトロで評価した。結果を以下の表にまとめる。複合体の非常に急速な会合と解離のため(これは、konおよびkoffの正確な測定を妨げる)、Kd値は、定常状態の親和性フィットによって得た。ActRIIB(25−131)−hFcは、アクチビンA、アクチビンBおよびGDF11に高い親和性で結合した。興味深いことに、ActRIIB(25−131)−hFcは、ActRIIB(20−134)−hFcよりもGDF3に対して高い親和性を示すようである(データ示さず)。
【0132】
【表1】
実施例3.ActRIIB(25−131)−hFcはインビボで筋肉量および筋力を増大させる
本出願人らは、ActRIIB(25−131)−hFcが筋肉量および筋力を増大させる能力をマウスにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)を、ビヒクル(Tris緩衝生理食塩水)または5つの用量のうちの1つの用量のActRIIB(25−131)−hFcで週2回、皮下処置した。ActRIIB(25−131)−hFcでの4週間の処置により、明白な用量依存性の除脂肪組織量の増加がもたらされた(図4)(全身の核磁気共鳴(NMR)スキャンによって測定)。筋肉量の増加は、試験終了時、特定の筋肉、例えば、胸筋(図5)、大腿直筋および腓腹筋について確認した。重要なことに、筋肉量の増大には、ビヒクルと比べて筋力の増大(握力によって評価)が付随した(図6)。このような結果は、ActRIIB(25−131)−hFcがインビボで筋肉量と筋力の両方を増大させるという有力な証拠を示す。
【0133】
実施例4.ActRIIB(25−131)−hFcはアンドロゲン除去のマウスモデルにおいて筋量減少を抑制する
本出願人らは、ActRIIB(25−131)−hFcが筋量減少を抑制する能力を、アンドロゲン除去(男性の進行前立腺癌の標準的な治療的介入)のマウスモデルにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)に精巣摘除(ORX)または偽手術を施し、TBSビヒクル、ActRIIB(25−131)−hFc(10mg/kg)、またはその完全長マウス対応物ActRIIB(20−134)−mFc(10mg/kg)で週2回、皮下処置した。除脂肪組織量を全身のNMRスキャンによって測定した。いずれかのActRIIB−Fc形態で4週間処置したORXマウスでは、ベースラインからの除脂肪組織量の増加が示され、これは、同期間でORX対照において減少が観察されたことと比べると高度に有意であった(図7)。偽処置対照と比べて同様に高度に有意な増加が、生殖腺非処置条件下でも、両方のActRIIB−Fc形態で観察された(図7)。このような結果は、このアンドロゲン除去モデルにおいて、ActRIIB(25−131)−hFcが、その完全長対応物ActRIIB(20−134)−mFcと同程度に有効に除脂肪組織量を増加させ(筋量減少を抑制し)得ることを示す。
【0134】
実施例5.ActRIIB(25−131)−hFcは食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて身体組成を改善する
本出願人らはまた、ActRIIB(25−131)−hFcが筋肉量を増大させ、脂肪量を低減させる能力を、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)に標準飼料食餌または高脂肪食餌のいずれかを摂取させ、TBSビヒクルまたはActRIIB(25−131)−hFc(10mg/kg)で週2回、腹腔内処置した。除脂肪組織量および脂肪量を全身のNMRスキャンによって測定した。高脂肪食餌下のマウスをActRIIB(25−131)−hFcで4週間処置すると、25%より多くの除脂肪組織量の増加がもたらされたのに対し、ビヒクル処置では2%の増加であった(図8)。ビヒクルと比べたとき同様の結果が、ActRIIB(25−131)−hFcを用いた対照食餌下のマウスでも得られた(図8)。さらに、処置の継続により脂肪過多症が改善されることがわかった。ビヒクルと比べると、12週間のActRIIB(25−131)−hFc処置により、高脂肪食餌下のマウスならびに対照食餌下のマウスにおいて、脂肪量がおよそ半分減少した(図9)。
【0135】
総合すると、このようなデータは、ActRIIB(25−131)−hFcが、アンドロゲン除去および高脂肪摂取などのさまざまな条件下において、インビボで身体組成を改善するために使用され得ることを示す。
【0136】
実施例6:ActRIIB(25−131)−hFcは、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて血清脂質、インスリンおよびアディポネクチンを正常化する
本出願人らは、臨床的に重要な脂質、インスリン、アディポネクチンの血清濃度および他の代謝エンドポイントに対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を、雄の高脂肪食餌摂取マウスにおいて調べた。10週齢のC57BL/6マウスの体重をマッチングさせ、ActRIIB(25−131)−hFc(n=10)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=7)で週2回、10mg/kgで60日間皮下処置した。この期間中、マウスに、4.5%の脂肪を含む標準飼料ではなく58%の脂肪を含む食餌を無制限に摂取させた。
【0137】
ActRIIB(25−131)−hFc処置により、一群の注目に値する代謝上の効果がもたらされた。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによって、病的に高いトリグリセリド、遊離脂肪酸、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL)の血清濃度が低下し(図10〜13)、ほとんどの場合で、これらのパラメータは、標準食餌摂取マウスで観察されるレベルまで正常化された。重要なことに、ActRIIB(25−131)−hFc処置によって、高脂肪−食餌マウスにおいてインスリン濃度も正常化され(図14)、アディポネクチンの濃度が、標準食餌摂取マウスでの濃度よりもさらに上まで有意に増大した(図15)。循環アディポネクチンレベルは脂肪量/肥満と逆比例的に変動することがわかっているため、アディポネクチンは身体組成の枢要なバイオマーカーであり、また、アディポネクチンは標的組織においてインスリン感受性を向上させる。また、ActRIIB(25−131)−hFcにより、脂肪細胞の状態の別の主要な指標であるレプチンの血清濃度もほぼ50%低下した(P<0.05)。最後に、前述の効果には、有益な身体組成の変化(核磁気共鳴(NMR)によってベースライン時および48日目に測定)が付随した。高脂肪食餌条件下では、ビヒクル処置対照の総脂肪量は、この48日間で3倍になり、ActRIIB(25−131)−hFc処置によってこの増加がほぼ40%削減された。48日目までに、総脂肪量は、ActRIIB−Fc処置マウスでは体重の27%であったのに対し、対照マウスでは39%であり、一方、除脂肪組織量は、ActRIIB(25−131)−hFc処置マウスでは体重の59%であったのに対し、対照マウスでは55%であった。したがって、最終結果は、高脂肪食餌条件下における身体組成がより健常になった。
【0138】
前述の血清パラメータについて、ActRIIB(25−131)−hFcでは、一貫して、この同じ試験で同様に評価したActRIIB(20−134)−hFcよりも好成績であった。このように、ActRIIB(25−131)−hFcでは同じ用量のActRIIB(20−134)−hFcと比べて、トリグリセリドレベルはほぼ6倍大きく、FFAレベルはほぼ2倍大きく、HDLレベルはほぼ4倍大きく、インスリンレベルは2倍超大きく、アディポネクチンレベルはほぼ1.5倍大きく改善された。
【0139】
実施例7:ActRIIB(25−131)−hFcは、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて白色脂肪内での熱産生性を誘導する
上記の試験(実施例6)において、本出願人らはまた、白色脂肪組織の熱産生性に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果も調べた。高脂肪食餌条件下では、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、白色脂肪組織において、熱産生能と整合する組織学的変化および遺伝子発現プロフィールが誘発された。図16に示すように、精巣上体白色脂肪の組織学的検査により、ActRIIB(25−131)−hFcによって脂質滴の大きさが低減され、多房性脂肪細胞集団(褐色脂肪の顕著な特徴)の形成が引き起こされることが示された。さらに、この組織の免疫組織化学的解析により、ActRIIB(25−131)−hFc処置の結果、多房性脂肪細胞と単房性脂肪細胞の両方において、UCP1の広範な細胞質内誘導が示された(図16)。
【0140】
このような組織学的変化には、精巣上体白色脂肪における熱産生および代謝の枢要な調節遺伝子の発現の有意な変化(定量的RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)によって測定)が随伴した。高脂肪食餌下のマウスでは、ActRIIB(25−131)−hFc処置によりUCP1 mRNAレベルがビヒクルと比べて60倍より大きく増大し(図17)、これは、このマウス系統が他のマウス系統と比べて、枢要な白色脂肪貯蔵部において重度に鈍化されたUCP1および褐色脂肪細胞の誘導を示すため(Guerraら,1998,J Clin Invest 102:412−420;Xueら,2007,J Lipid Res 48:41−51)、特別に印象的な変化である。また、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、サーチュインSIRT−1(サイレント情報調節因子2,ホモログ1)をコードするmRNAのレベルが増大した。サーチュインSIRT−1は、高脂肪食餌によって誘導される代謝性損傷を防御するエネルギー感受性のマスター調節因子(デアセチラーゼ)であり(Pflugerら,2008,Proc Natl Acad Sci USA 105:9793−9798)、脂肪酸代謝の重要な制御因子であるとされている(Rodgersら,2008,FEBS Lett 582:46−53)。特筆すべきことに、褐色脂肪組織におけるミトコンドリアバイオジェネシスおよび熱産生能に必要な多くの遺伝子の発現をさらに制御している十分文献に示されたSIRT−1の標的である(Uldryら,2006,Cell Metab、3:333−341)PGC−1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベータ−1α)をコードするmRNAのレベルもまた、ActRIIB(25−131)−hFc処置により増大した。注目すべきことに、白色脂肪細胞でのPGC−1αの強制発現により、褐色脂肪細胞におけるものと非常によく似た遺伝子発現(UCP1など)の熱産生的プログラムが誘導されることが示された(Hansenら,2006,Biochem J 398:153−168)。本発明の試験では、ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌条件下において、白色脂肪組織におけるPGC−1α遺伝子の発現が標準食餌摂取マウスにおけるものと識別できないレベルまで回復された。
【0141】
処置関連のさらなる変化は、白色脂肪組織における発現プロフィールの改変と有益なホルモン上および代謝上の効果との間に顕著な関連性を構成するものである。したがって、精巣上体白色脂肪において、SIRT−1の標的であり、かつアディポネクチン発現の枢要な誘導因子でもある転写因子である(Qiaoら,2006,J Biol Chem 281:39915−39924)Foxo−1(フォークヘッドボックス含有タンパク質Oサブファミリー−1)をコードするmRNAのレベルがActRIIB(25−131)−hFcにより増大した。Foxo−1 mRNAの誘導と整合して、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、白色脂肪におけるアディポネクチンのmRNAレベルが上昇し(図18)、これは、この動物におけるアディポネクチンの循環レベルの増大(図15,実施例6)、標的組織におけるインスリン感受性の向上、およびインスリン濃度の正常化(図14,実施例6)を説明するのに役立つ。要約すると、高脂肪食餌条件下において、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、1)白色脂肪組織において熱産生能と整合する組織学的変化および遺伝子発現プロフィール、ならびに2)広範なホルモンパラメータおよび代謝パラメータの有益な変化がもたらされた。
【0142】
実施例8:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける肝臓および筋肉に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、広くはメタボリックシンドロームの肝臓症状であると考えられており、かつ多くの場合で有害な効果を伴う肝臓内の脂肪蓄積(脂肪症)を特徴とする一連の増加しつつある一般的な肝臓障害である。あるサブセットのNAFLD患者は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と称される炎症性の病状が発症している患者であり、非アルコール性脂肪性肝炎は、さらに肝線維症、肝硬変および肝細胞癌腫に進行することがあり得る(Perlemuterら,2007,Nat Clin Pract Endocrinol Metab 3:458−469)。上記の試験(実施例6〜7)において、本出願人らは、高脂肪食餌と関連する肝臓脂肪症がActRIIB(25−131)−hFcにより抑止され得るかどうかを調べた。試験終了時、高脂肪食餌摂取マウスの肝臓組織には、Oil Red Oでの染色によって評価した際、多数の密集した脂質滴が示されたが、標準食餌摂取マウスでは肝臓内脂質沈着物の形跡は示されなかった(図19)。ActRIIB(25−131)−hFcで処置すると、肝臓内脂質の沈着がほぼ完全に逆転され、高脂肪食餌にもかかわらず肝臓組織の外観が正常化した。したがって、ActRIIB(25−131)−hFcは、高脂肪食餌によって引き起こされる肝臓脂肪症の有効な抑制因子であった。
【0143】
また、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、この食餌誘導性肥満モデルにおいて筋肉量が増加し、他のモデルにおける所見(実施例3〜5)と整合した。具体的には、ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌対照と比べて胸筋量は70%より多く(P<0.001)、腓腹筋量はほぼ40%(P<0.001)、大腿直筋量は25%より多く(P<0.001)増加した。これらの筋肉量の変化には、筋肉遺伝子発現の変化(腓腹筋組織においてRT−PCRによって測定)が随伴した。高脂肪食餌対照と比較すると、ActRIIB(25−131)−hFcにより、腓腹筋において、PGC−1α mRNAレベルおよびFoxo−1 mRNAレベルは、各々およそ50%(P<0.05)増加した。
【0144】
実施例9:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける内臓白色脂肪に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
内臓脂肪の蓄積は、皮下脂肪とは反対に、心血管疾患ならびに肥満関連障害(真性糖尿病、高脂血症、高血圧、およびメタボリックシンドロームなど)の発症に重要な役割を果している(Matsuzawaら,2006,FEBS Lett 580:2917−2921)。その位置のため、内臓(または腹腔内)脂肪は、肝門脈循環によって肝臓に容易に到達し、肝臓で代謝に影響を及ぼし、インスリン抵抗性を促進させ、脂肪症を引き起こし得る。したがって、上記のもの(実施例6〜8)と同様の試験において、本出願人らは、高脂肪食餌条件下において、内臓脂肪量と腹部皮下脂肪量(対比)に対する切断型バリアントActRIIB(25−131)−mFcの効果を調べた。9週齢のC57BL/6マウスを、ActRIIB(25−131)−mFc(n=20)(10mg/kg,s.c.)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=10)で週2回60日間処置した。投与開始前の7日間、マウスに、4.5%の脂肪を含む標準飼料ではなく58%の脂肪を含む食餌を無制限に摂取させた。また、標準飼料食餌に維持したさらなるマウス群(n=10)は、TBSビヒクルで処置し、食餌対照として追跡した。総体脂肪(核磁気共鳴(NMR)解析によって測定)に対するパーセンテージが群平均(すべてのマウスをNMR解析に供した)に最も近かったサブセットのマウス(n=4/群)について、脂肪体積をマイクロCTによって測定した。
【0145】
内臓脂肪および腹部皮下脂肪はどちらも、食餌およびActRIIB(25−131)−mFc処置により大きさが著しく変化した。試験中の途中まで(35日間)で得られたマイクロCT画像を3次元に再構成すると、内臓脂肪貯蔵部および皮下脂肪貯蔵部はともに、高脂肪食餌の結果、拡張したこと、ならびにActRIIB(25−131)−mFcにより、これらの増加が大きく逆転されたことが示される(図20)。試験終了時(60日間)に定量的に解析すると、ActRIIB(25−131)−mFcの効果は、高脂肪食餌単独と比べて、内臓脂肪(図21)と腹部皮下脂肪(図22)の両方で高度に有意であった。
【0146】
実施例10:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける褐色脂肪の特性に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
実施例9に記載の試験において、本出願人らはまた、高脂肪食餌条件下において、肩甲骨内褐色脂肪貯蔵部の特性に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果を調べた。標準食餌と比較すると、高脂肪食餌では、褐色脂肪組織の肩甲骨間貯蔵部にいくつかの変化がもたらされ、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、このような各変化は、完全に逆転されるか、または大きく逆転されるのいずれかとなった。具体的には、高脂肪食餌により肩甲骨間貯蔵部の顕著な拡大が引き起こされるとともに、赤からピンク色に色が薄くなった(図23)。この食餌誘導性拡大は、褐色脂肪貯蔵部の量の倍加(図24)および密度の低下(図25)を反映していた。総体脂肪(核磁気共鳴(NMR)解析によって測定)に対するパーセンテージが群平均(すべてのマウスをNMR解析に供した)に最も近かったサブセットのマウス(n=4/群)について、貯蔵部密度をマイクロ−コンピュータ断層撮影(マイクロCT)によってインサイチュで測定した。ActRIIB(25−131)−mFc処置により、褐色脂肪の量(図24)および密度(図25)の食餌誘導性変化は完全に逆転されるとともに、該貯蔵部の大きさと色の食餌誘導性変化が大きく逆転された(図23)。このような結果は、高脂肪食餌条件下において、ActRIIB(25−131)−mFcが、おそらく健常な褐色脂肪機能と相関している特性を大きく、または完全に回復させ、したがって、褐色脂肪の質を改善する(褐色脂肪貯蔵部の全体的な大きさが減少するため)ことを示す。
【0147】
実施例11:加齢のマウスモデルにおける筋肉、骨、脂肪および代謝ホルモンに対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
身体組成は、加齢に伴って予測可能な様式で変化する。正常な加齢依存性の筋肉量および筋力の低下(サルコペニアとして知られている)は、30歳くらいから始まり、60歳を過ぎると加速する(Stenholmら,2008,Curr Opin Clin Nutr Metab Care 11:693−700)。骨量および骨の強度も加齢とともに同様の低下を示し、高齢者では、骨粗鬆症のリスクの増大がもたらされる。総体脂肪量は、加齢とともに70歳くらいまで増加し、次いで、絶対量の点では減少するが、全体重量に対する割合はほぼ一定のままである(Cartwrightら,2007,Exp Gerontol 42:463−471)。他のモデルで観察され、また本明細書において記載した有効性に基づき、本出願人らは、筋肉、骨、脂肪およびインスリンレベルに対するActRIIB(25−131)−mFcの効果を、加齢のマウスモデルにおいて調べた。19ヶ月齢の雄C57BL/6マウスに、標準飼料食餌を無制限に摂取させ、ActRIIB(25−131)−mFc(n=16)(10mg/kg,s.c.)またはTBSビヒクル(n=15)で週2回8週間処置した。参照枠として、このマウス系統のメジアン推定寿命は、標準食餌条件下においておよそ27ヶ月であることが以前にわかっていた(Turturroら,2002,J Gerontol A Biol Sci Med Sci 57:B379−389)。
【0148】
ActRIIB(25−131)−mFc処置により、これらの高齢マウスにおいて、一連の注目に値する身体組成の変化および代謝ホルモン効果が生じた。全身NMR解析によって測定すると、除脂肪組織量は、対照マウスでは、試験期間中にわたって本質的に変化しなかったが、ActRIIB(24−131)−mFc処置マウスでは、7週間までにベースラインよりほぼ20%上まで進行的に増加した(図26)。この全身性効果と整合して、ActRIIB(25−131)−mFcにより、個々の筋肉群の量も、8週間目においてビヒクル処置対照と比べて有意に増加した(胸筋(55%増加)、大腿直筋(40%)、三頭筋(40%)、および腓腹筋(28%)など)。重要なことに、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、神経筋機能が改善された(確立されたプロトコル(http://jaxservices.jax.org/phenotyping/gripstrength_protocol.html)に従い、前肢握力試験によって測定)(図27)。
【0149】
いくつかの骨関連パラメータが、高齢マウスにおいてActRIIB(25−131)−mFc処置により改善された。ベースラインおよび8週目の時点でDEXA解析により測定すると、ActRIIB(25−131)−mFcにより全身の骨塩量が試験期間中にわたって増加したが、対照では本質的に変化しなかった(図28)。また、近位頚骨のマイクロCT解析により、8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置によって近位頚骨の骨容量分率が、対照と比べて倍加する(P<0.01)ことが示された。
【0150】
ActRIIB(25−131)−mFcにより、高齢マウスにおいて脂肪に対して大きな効果が奏された。多数の時間点でNMR解析により測定すると、ビヒクル処置対照では、試験期間中にわたって総体脂肪量の進行性の減少がみとめられ(図29)、これは、かなり高齢のヒトでの所見と整合する。ActRIIB(25−131)−mFc処置によりこの変化が加速され、対照で観察されたものの2倍の大きさの減少が誘起された(それぞれ、−44%に対して−19%)(図29)。終了時点までに、ActRIIB(25−131)−mFcにより、精巣上体、鼡径部および腹膜後の個々の白色脂肪の貯蔵部の量が、48〜54%の範囲の量、有意に減少した。興味深いことに、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、肩甲骨間褐色脂肪貯蔵部量もまた、ほぼ45%減少し(P<0.05)、食餌性肥満のマウスモデルのこの組織で得られた結果(実施例10)と類似していた。最後に、各群の代表的なサブセットのマウス(n=4)においてマイクロCT解析によって測定すると、ActRIIB(25−131)−mFcにより、腹部脂肪の内臓脂肪分の容量は65%(P<0.01)および腹部脂肪の皮下脂肪分の容量は49%(P<0.01)減少した。したがって、この加齢モデルにおいて、ActRIIB(25−131)−mFcにより重要な内臓脂肪区画が強く標的化された。
【0151】
また、ActRIIB(25−131)−mFcにより、高齢マウスにおいて、重要な代謝ホルモンの有益な変化ももたらされた。ActRIIB(25−131)−mFcでの8週間の処置により、循環アディポネクチン濃度がほぼ倍加し(P<0.001)、循環インスリン濃度が40%より大きく低下した(図30)。高い空腹時インスリン濃度(高インスリン血症)は、インスリン抵抗性の広く認められた代用尺度であり(Weyerら,2000,Diabetes 49:2094−2101)、アディポネクチン濃度の増大は、本発明の試験において、おそらく、インスリン感受性の改善に寄与している。グリケート付加ヘモグロビン(A1C)濃度は、この試験においてActRIIB(25−131)−mFcによって有意に低下し(図31)、それにより、この加齢モデルでのActRIIB(25−131)−mFc処置においてグルコース調節が改善されるさらなる証拠が得られた。
【0152】
実施例12:癌性悪液質のマウスモデルにおける除脂肪組織に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果
悪液質は、筋肉および脂肪組織の減少に起因する望ましくない体重減少である。多くの腫瘍は、食欲減退および重度の筋量減少を伴い、悪液質を示す患者は非悪液質患者よりも予後が不良である。結腸癌細胞株CT26ではマウスにおいて著しい悪液質が誘導されるため、このマウスモデルにおいて、ActRIIB(25−131)−hFcを、異種移植片誘導性悪液質に対する潜在的効果について試験した。8週齢のBALB/cマウスに106個のColon−26腺癌腫(CT26)細胞/マウスを皮下注射した。腫瘍移植の2週間後、ActRIIB(25−131)−hFc(n=15)(10mg/kg,s.c.)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=13)での週2回の処置を開始した。さらなるBALB/cマウス群にはCT26細胞を受容させなかったが、上記のActRIIB(25−131)−hFcまたはビヒクルで処置した。ActRIIB(25−131)−hFcでの処置により、有意な体重の増加がもたらされ、これは試験中を通して維持された。腫瘍移植から5週間後、ビヒクル処置マウスでは、ベースラインから7%の除脂肪組織量の減少が示された(NMR解析によって測定)が、ActRIIB(25−131)−hFcで処置したマウスでは、ベースラインから27%の除脂肪量の増加が示された(図32)。脂肪量は群間で有意に異ならなかった。このような結果は、ActRIIB(25−131)−hFcは、腫瘍を有するマウスにおいて悪液質を軽減することができ、癌患者の悪液質を処置するための有効な治療剤となり得ることを示す。
【0153】
総合すると、このようなデータは、ActRIIB(25−131)−hFc融合タンパク質が、食餌誘導性肥満と関連している多くの病的代謝変化を逆転させ、それにより高カロリー摂取によって増悪する代謝性の病状を処置するために、TGF−ファミリーリガンドによるシグナル伝達のアンタゴニストとして使用され得ることを示す。さらに、ActRIIB(25−131)−hFcは、加齢または癌性悪液質と関連している病的代謝変化を処置するために使用され得る。
【0154】
引用による組み込み
本明細書において挙げた刊行物および特許はすべて、引用によりその全体が、あたかも個々の各刊行物または特許が具体的に個々に示されて引用により組み込まれているかのごとく、本明細書に組み込まれる。
【0155】
主題の具体的な実施形態を論考したが、上記の明細は例示であって限定的でない。当業者には、本明細書および以下の特許請求の範囲を考察すると多くの変形例が自明となろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、その均等物の全範囲および本明細書とともに、かかる変形例とともに参照することによって決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年6月12日に出願された米国仮出願番号61/268,420、2009年11月3日に出願された米国仮出願番号61/280,543の利益を主張する。これらの出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トランスホーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーには、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有しているさまざまな増殖因子が含まれる。このようなタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物のどちらにおいても、多くのさまざまな細胞型に対して生物学的効果を奏することがわかっている。該スーパーファミリーの構成員は、胚の発生中、パターン形成および組織の特定に重要な機能を果しており、さまざまな分化プロセス(例えば、脂肪生成、筋肉形成、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生、および上皮細胞の分化)に影響を及ぼし得る。該ファミリーは、アクチビンおよびインヒビン、TGF−β、成長分化因子(GDF)および骨形成因子(BMP)と種々に称されるタンパク質に代表される。該ファミリーの他の構成員も知られている(NodalおよびLeftyなど)。TGF−βファミリーの構成員の活性を操作することにより、多くの場合で、生物体に有意な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、飼育種PiedmonteseおよびBelgian Blueの牛は、GDF8(ミオスタチンとも称される)遺伝子に、顕著な筋肉量の増加を引き起こす機能喪失変異を有する(非特許文献1)。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増大および報告によると並外れた強度と関連している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Grobetら,Nat Genet.1997,17(1):71−4
【非特許文献2】Schuelkeら,N Engl J Med 2004,350:2682−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筋肉、骨、脂肪、軟骨および他の組織の変化は、適切なTGF−βファミリー構成員によって媒介されるシグナル伝達をアゴナイズすること、または該シグナル伝達に拮抗作用をもたらすことにより得られ得る。したがって、TGF−βスーパーファミリーの構成員によるシグナル伝達の強力な調節因子としての機能を果す薬剤の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
一部の特定の態様では、本開示により、新規なActRIIBポリペプチド、特に、アミノ末端およびカルボキシ末端の切断型ならびに配列改変型を提供する。一実施形態において、ヒトActRIIB(配列番号1)のアミノ酸25〜131を含むポリペプチドまたはそのバリアントを記載する。かかるポリペプチドが、さまざまな障害の処置において驚くべき有効性を有するが、特に、肥満、インスリン抵抗性および他の代謝障害と関連している障害の処置において驚くべき有効性を有することを示す。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、患者が、さまざまな望ましい効果、例えば、除脂肪体重(lean body mass)の増加、白色脂肪量の減少、褐色脂肪量の増加、血清トリグリセリドの減少、血清インスリンレベルの低下または血清遊離脂肪酸レベルの低下などを有するように使用され得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、さまざまな障害または病状、例えば、筋肉および神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および筋萎縮)、脂肪組織障害(例えば、肥満、脂肪肝疾患)、代謝障害(例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム(metabolic syndrome))、神経変性障害、ならびに高齢(サルコペニア)、前立腺癌治療(例えば、アンドロゲン除去療法)、さまざまな癌と関連している悪液質と関連している筋消耗の処置に使用され得る。ActRIIBポリペプチドの例としては、配列番号8に示し、本明細書においてActRIIB(25−131)−hFcと記載するヒトActRIIB−Fc融合タンパク質が挙げられる。
【0006】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBに由来する新規なポリペプチド(ActRIIBポリペプチドと称する)を提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8の配列からなるアミノ酸配列または配列番号8と1個以下、2個以下、3個以下、4個以下もしくは5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むポリペプチド;哺乳動物細胞における配列番号4の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド;哺乳動物細胞における配列番号6の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチドからなる群より選択され得る。本明細書において開示するポリペプチドは、ActRIIBに由来する部分と1つ以上の異種部分とを含み得、該ActRIIBに由来する部分は、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と1個以下、2個以下、3個以下、4個以下もしくは5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むものであり得る。該異種部分は、免疫グロブリンの定常ドメイン、免疫グロブリンのFcドメインまたは、特に、ヒトIgG1のFcドメイン(用語「ヒトIgG1は、ヒトにおける使用と適合性であるかかるFcのバリアントを含むと理解されたい)を含むものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列を含むActRIIBに由来する部分を含むものであり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、アミノ末端が配列ETRを有するようなものであってもよい。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、マウスにおいて統計学的に有意な除脂肪体重の増加を引き起こすものであり得る。除脂肪組織量の増加の平均は、少なくとも1、2、3、4もしくは5グラムまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な脂肪量の減少を引き起こすものであり得る。脂肪量の減少の平均は、5、7、10、15グラムまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清トリグリセリドレベルの減少を引き起こすものであり得る。血清トリグリセリドの減少の平均は、少なくとも50、75、100、125もしくは150mg/dlまたはそれ以上であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清遊離脂肪酸レベルの減少を引き起こすものであり得る。遊離脂肪酸の減少の平均は、少なくとも500、750、1000マイクロモル/dlまたはそれ以上の遊離脂肪酸であり得る。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清インスリンレベルの減少を引き起こすものであり得る。血清インスリンの減少の平均は、少なくとも0.5、1、1.5、2ng/mlまたはそれ以上のインスリンであり得る。本明細書で用いる場合、用語「統計学的に有意な」は、一般的に、>0.05の(or)p値をいうが、異なる型の統計学的検定について他の有意性の測定値が認識され得よう。かかる場合、用語「統計学的に有意な」には、データの有意性の評価に最も広く使用されている式が使用されるのがよい。ActRIIBポリペプチドは、少なくとも1つのN結合糖を含むものであってもよく、2つ、3つ、またはそれ以上のN結合糖を含むものであってもよい。また、かかるポリペプチドはO結合糖を含むものであってもよい。ActRIIBポリペプチドは、該タンパク質が患者への使用に適した様式でグリコシル化される、さまざまな細胞株、例えば、操作された昆虫細胞または酵母細胞、ならびに哺乳動物細胞(COS細胞、CHO細胞、HEK細胞およびNSO細胞など)において産生させ得る。ActRIIBポリペプチドは、共有結合性または非共有結合性の二量体(例えば、ホモ二量体)を形成するものであり得る。一般的に、Fc融合タンパク質は、共有結合されたホモ二量体を形成する傾向にある。前述の任意のポリペプチドが医薬調製物に組み込まれ得る。
【0007】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、ActRIIBリガンド(GDF8、GDF11、アクチビン、BMP7、GDF3またはnodalなど)に結合するものである。任意選択で、ActRIIBポリペプチドはActRIIBリガンドに、10マイクロモル未満または1マイクロモル、100、10、1もしくは0.1ナノモル未満のKdで結合するものである。本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、そのアミノ酸配列(例えば、リガンド結合ドメイン)内に、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の改変を含むものであり得る。該アミノ酸配列内の改変は、天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞もしくは他の真核生物細胞において産生させた場合、該ポリペプチドのグリコシル化を改変するもの、または該ポリペプチドのタンパク質分解性切断を改変するものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、ドメインの1つとしてActRIIB(例えば、ActRIIBまたはそのバリアントのリガンド結合ドメイン)に由来するアミノ酸配列と、望ましい特性(例えば、改善された薬物動態、より容易な精製、特定の組織に対する標的化など)をもたらす1つ以上のさらなるドメインを有する融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織内での局在もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質多量体化、および/または精製の1つ以上を向上させるものであり得る。ActRIIB融合タンパク質は、免疫グロブリンのFcドメイン(野生型もしくは変異型)または血清アルブミンを含むものであり得る。一部の特定の実施形態では、ActRIIB−Fc融合体は、Fcドメインと細胞外ActRIIBドメインの間に配置された相対的に非構造的リンカーを含む。この非構造的リンカーは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端のほぼ15個のアミノ酸の非構造的領域に対応するものであり得る(「テイル」)か、または相対的に二次構造を含まない5および15、20、30、50個もしくはそれ以上のアミノ酸の人工配列であり得る。リンカーは、グリシン残基とプロリン残基を多く含むものであり得、例えば、トレオニン/セリンとグリシンの反復配列(例えば、TG4またはSG4リピート)を含むものであり得る。配列番号8のポリペプチドの状況では、短いフレキシブルリンカー(1、2、3、4または5個のグリシン残基など、任意選択で、1個以上の小さい残基(アラニン、トレオニンまたはセリンなど)を有する)を使用することが好都合なようである。融合タンパク質は、精製用部分配列(エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合体など)を含むものであり得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドには、グリコシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部位にコンジュゲートされたアミノ酸、および有機系誘導体化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択される1個以上の修飾アミノ酸残基が含まれる。
【0008】
一部の特定の態様では、ActRIIBポリペプチドは医薬調製物として製剤化され得る。医薬調製物は、好ましくはパイロジェンフリーである(治療的使用のための製剤の品質を規制する規準に必要とされる程度にパイロジェンフリーであることを意味する)。また、医薬調製物に、1種類以上のさらなる化合物(ActRIIBに関連する障害を処置するために使用される化合物など)を含めてもよい。
【0009】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸を提供する。かかる核酸は、配列番号4の73〜396の核酸配列または配列番号4のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むものであり得る。該核酸は、配列番号4の配列を含むものであってもよい。かかる核酸は、配列番号6の73〜396の核酸配列または配列番号6のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むものであり得る。該核酸は、配列番号6の配列を含むものであってもよい。一部の特定の態様では、ActRIIBタンパク質を、患者(獣医学上の患者の可能性を含む)において好ましくない免疫応答の尤度が減弱されるようにActRIIBタンパク質の天然のグリコシル化を好適に媒介する哺乳動物細胞株において発現させ得る。ヒトおよびCHO細胞株が成功裡に使用されており、他の一般的な哺乳動物系発現ベクターも有用であることが予測される。したがって、本開示により、本明細書において開示する任意の核酸を含む培養細胞を提供する。かかる細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、NSO細胞、HEK細胞およびCOS細胞であり得る。対象の患者の種に応じて他の細胞も選択され得る。他の細胞は、本明細書において開示している。培養細胞は、研究室または他の人為的条件(例えば、凍結もしくは培地中)で維持された細胞であって、生きている生物体の一部でない細胞を意味すると理解されたい。
【0010】
一部の特定の態様では、本開示により、ActRIIBポリペプチドの作製方法を提供する。かかる方法は、本明細書において開示する任意の核酸(例えば、配列番号4または6、およびこれらにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸)を、適当な細胞(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞など)において発現させることを含むものであり得る。かかる方法は、a)細胞を、ActRIIBポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること、ここで、前記細胞は、ActRIIB発現構築物で形質転換されている;およびb)そのようにして発現させたActRIIBポリペプチドを回収することを含むものであり得る。ActRIIBポリペプチドは、細胞培養物からタンパク質を得るためのよく知られた任意の手法ならびに本明細書に記載された手法を用いて、粗製画分、一部精製画分または高度に精製された画分として回収され得る。
【0011】
一部の特定の態様では、本開示により、筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0012】
一部の特定の態様では、本開示により、除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を、それを必要とする被験体において行なう方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0013】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のための方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0014】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の望ましくない体重増加と関連している障害の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。
【0015】
一部の特定の態様では、本開示により、被験体の代謝障害の処置方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、有効量の前述の任意のActRIIBポリペプチドまたはその医薬調製物を投与することを含むものであり得る。処置に適格の患者は、以下の特徴:高い血清トリグリセリドレベル;高い遊離脂肪酸レベル;または高い血清インスリンレベルの1つ以上を有する患者であり得る。代謝障害の例としては、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性および肥満が挙げられる。
【0016】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体の処置方法に使用され得る。かかる障害としては、筋萎縮、筋ジストロフィ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに筋消耗障害(例えば、悪液質、食欲不振、DMD症候群、BMD症候群、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィ、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性ミオパチー)が挙げられる。該方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0017】
一部の特定の態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のため、ならびに望ましくない体重増加と関連している障害(肥満、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、心血管疾患、癌、高血圧、変形性関節症、脳卒中、呼吸器系の問題、および胆嚢の疾患など)の処置のための方法に使用され得る。このような方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0018】
一部の特定の具体的な態様では、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドは、GDF8の異常な活性と関連している障害の処置方法に使用され得る。かかる障害としては、代謝障害、例えば、2型糖尿病、グルコース寛容減損、メタボリックシンドローム(例えば、X症候群)、および外傷(例えば、火傷または窒素量不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;脂肪組織障害(例えば、肥満);筋ジストロフィ(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィ);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;脆弱;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;サルコペニア、悪液質および他の筋消耗症候群;骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;オステオペニア;変形性関節症;骨粗鬆症関連骨折;長期グルココルチコイド療法、早発性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振による低骨量が挙げられる。該方法は、有効量のActRIIBポリペプチドを、それを必要とする被験体に投与することを含むものであり得る。
【0019】
一部の特定の態様では、本開示により、組織(骨、軟骨、筋肉および脂肪など)の成長を刺激する薬剤の同定方法を提供する。該方法は、a)ActRIIBポリペプチドと競合的にActRIIBポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定すること;およびb)組織成長に対する該薬剤の効果を評価することを含む。
【0020】
一部の特定の態様では、本開示により、細胞内でActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビン、GDF3、BMP7、およびNodal)の活性に拮抗作用をもたらすための方法を提供する。該方法は、細胞をActRIIBポリペプチドと接触させることを含む。任意選択で、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBリガンドの活性は、例えば、細胞増殖をモニタリングすることにより、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によってモニタリングされる。該方法の細胞としては、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞および筋肉細胞が挙げられる。
【0021】
一部の特定の態様では、本開示により、本明細書に記載の障害または病状の処置のための医薬を作製するためのActRIIBポリペプチドの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、完全長のプロセッシングされていないActRIIB(25−131)−hFcのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。TPAリーダー(残基1〜22)と二重切断型ActRIIB細胞外ドメイン(残基24〜131,配列番号1の天然配列に基づいた番号付けを使用)に、各々、下線を付している。ハイライトは、配列決定により成熟融合タンパク質のN末端アミノ酸であることが示されたグルタミン酸であり、これは、配列番号1に基づくと25位に存在する。
【図2−1】図2は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号4)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号5))。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付している。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図2−2】図2は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号4)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号5))。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付している。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図3−1】図3は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードする別の択一的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号6)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号7))。この配列により、初期の形質転換体において、より高いタンパク質発現レベルがもたらされ、細胞株の発達がより急速なプロセスとなる。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付し、ECD(図2参照)の野生型ヌクレオチド配列における置換にハイライトしている。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図3−2】図3は、ActRIIB(25−131)−hFcをコードする別の択一的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖を上部に示し(配列番号6)、相補体を下部に3’から5’に示す(配列番号7))。この配列により、初期の形質転換体において、より高いタンパク質発現レベルがもたらされ、細胞株の発達がより急速なプロセスとなる。TPAリーダー(ヌクレオチド1〜66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73〜396)をコードしている配列に下線を付し、ECD(図2参照)の野生型ヌクレオチド配列における置換にハイライトしている。また、ActRIIB(25〜131)に対応するアミノ酸配列も示す。
【図4】図4は、マウスでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)±SEMである。**,TBSに対してP<0.01(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、除脂肪組織量が明らかに用量依存的に増加した。
【図5】図5は、マウスでの胸筋筋肉量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)±SEMである。*,P<0.05;**,P<0.01(TBSに対して)(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、胸筋筋肉量が明らかに用量依存的に増加した。
【図6】図6は、マウスでの握力に対するActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=10/群)である。**,TBSに対してP<0.01(対応なしt−検定による)。ActRIIB(25−131)−hFc処置により、握力が用量依存的に増大した。
【図7】図7は、アンドロゲン除去のマウスモデルでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcでの4週間処置の効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。精巣摘除(ORX)または偽手術マウスのデータは、平均(n=10/群)±SDである。***,TBS対照に対してP<0.001。ActRIIB(25−131)−hFcにより、除脂肪組織量が、その完全長対応物ActRIIB(20−134)−mFcと同程度に有効に増加した。
【図8】図8は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの除脂肪組織量に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=9〜10/群)である。***,TBS対照に対してP<0.001。ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌摂取マウスにおいて、除脂肪組織量が有効に増加した。
【図9】図9は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、脂肪量に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を示す。ビヒクルはTris緩衝生理食塩水(TBS)とした。データは平均(n=9〜10/群)±SDである。*,P<0.05;***,<0.001(TBS対照に対してP)。ビヒクルと比べると、12週間のActRIIB(25−131)−hFc処置により、高脂肪食餌摂取マウスにおいて、脂肪量がおよそ半分減少した。
【図10】図10は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清トリグリセリド濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりトリグリセリド濃度が50%より大きく低下し、それによりトリグリセリドが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図11】図11は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清遊離脂肪酸(FFA)濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりFFA濃度がほぼ55%低下し、それによりFFAが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図12】図12は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清高密度リポタンパク質(HDL)濃度を示す。データは平均±SEMである。***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりHDL濃度がほぼ50%低下し、それによりHDLが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図13】図13は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清低密度リポタンパク質(LDL)濃度を示す。データは平均±SEMである。*,P<0.05。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりLDL濃度が40%より大きく低下した。
【図14】図14は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清インスリン濃度を示す。データは平均±SEMである。**,P<0.01。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによりインスリン濃度が60%より大きく低下し、それによりインスリンが、標準食餌対照で観察されたレベルまで標準化された。
【図15】図15は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの血清アディポネクチン濃度を示す。ELISA測定により、すべての主要オリゴマーアイソフォーム(全アディポネクチン)が検出され、データは平均±SEMである。**,P<0.01;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcにより、アディポネクチン濃度が75%より大きく増大し、さらには、アディポネクチンを、標準食餌対照で観察されたレベルより上まで有意に追加刺激した。
【図16】図16は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置により精巣上体白色脂肪組織内で誘導された熱産生的組織学的変化を示す。顕微鏡画像はすべて、同じ倍率で示している。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色は、ActRIIB(25−131)−hFcが、脂質滴の大きさを縮小させ、褐色脂肪に特徴的な多房性脂肪細胞集団(矢印)を誘導する能力を示す。隣接していないセクションの免疫染色では、多房性脂肪細胞および単房性脂肪細胞の両方において、UCP1(緑色蛍光)の広範な細胞質内誘導が示されている。
【図17】図17は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、精巣上体白色脂肪内におけるUCP1 mRNAレベルに対する60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(単位:相対単位(RU))で得られたデータは平均±SEMである;n=6〜7/群;*,p<0.05。ActRIIB(25−131)−hFcにより、この褐色脂肪の選択的マーカーをコードするmRNAの60倍の増加が引き起こされ、したがって、この白色脂肪貯蔵部内における熱産生能の上方調節が示された。
【図18】図18は、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の関数としての、マウスの精巣上体白色脂肪内におけるアディポネクチンのmRNAレベルを示す。RT−PCRデータ(単位:相対単位(RU))は平均±SEMである;n=7/群;*,p<0.05。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcにより、アディポネクチンのmRNAレベルが60%より大きく増加し、したがって、このようなマウスにおいて、循環アディポネクチンの高濃度に寄与していた。
【図19】図19は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、脂肪肝沈着(肝臓脂肪症)に対する60日間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。Oil Red Oで染色した肝臓切片(すべて同じ倍率で表示)では、高脂肪食餌条件下において顕著な脂質の沈着が示されるが、対照条件下では示されない。矢印は、多くの密集した脂質滴のいくつかを示す。脂質滴は明赤色に染色されているが、白黒画像では識別が困難である。ActRIIB(25−131)−hFcにより、かかる脂質滴の形成が阻害され、肝臓組織の外観が標準食餌摂取マウスのものまで大きく回復した。
【図20】図20は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、腹部脂肪の分布に対する35日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。内臓脂肪貯蔵部および皮下脂肪貯蔵部を、脊髄分節T13〜L5を含めたマイクロ−コンピュータ断層撮影(マイクロCT)によってインビボで検出し、識別した。N=4/群;スケールバー=5mm。高脂肪食餌摂取対照と比べ、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、内臓脂肪貯蔵部と腹部皮下脂肪貯蔵部の両方の容量が低減された。
【図21】図21は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、内臓脂肪の容量(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=4/群;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−mFcにより、内臓脂肪の容量がビヒクルと比べて60%より大きく低減された。
【図22】図22は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、腹部皮下脂肪の容量(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=4/群;***,P<0.001。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−mFcにより、皮下脂肪の容量がビヒクルと比べてほぼ60%低減された。
【図23】図23は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、食餌および60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の関数としての肩甲骨間褐色脂肪貯蔵部の左右の対の写真を示す。高脂肪食餌では、該貯蔵部の大きさが増大し、色が薄くなったが、ActRIIB(25−131)−mFcにより、これらの変化が大きく逆転された。
【図24】図24は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、肩甲骨間褐色脂肪量に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、左側の貯蔵部と右側の貯蔵部を合わせたものの平均±SEMである;***,p<0.001。ActRIIB(25−131)−mFcにより、この褐色脂肪貯蔵部の量に対する高脂肪食餌の効果が逆転された。
【図25】図25は、食餌誘導性肥満のマウスモデルでの、肩甲骨間褐色脂肪の密度(マイクロCTで測定)に対する60日間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データ(平均±SEM)を、骨塩分ヒドロキシアパタイト(HA)は正の値、および水分の値はゼロに基づいた標準化した単位で示す;したがって、脂肪の値は負であり、白色脂肪の値は典型的には−120に近い。**,p<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcにより、この褐色脂肪貯蔵部の密度に対する高脂肪食餌の効果が完全に逆転された。
【図26】図26は、除脂肪組織量(加齢のマウスモデルにおいて、核磁気共鳴(NMR)解析により多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、10〜15匹のマウス/群/時間点の平均である;***,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.001。7週間の投与後、ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウスの除脂肪組織量は、ベースラインからほぼ20%増加し、対照的に、ビヒクル処置対照では、値は本質的に変化しなかった。
【図27】図27は、加齢のマウスモデルにおける、前肢握力(多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、13〜15匹のマウス/群/時間点の平均である;**,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcで処置したマウスでは、試験中、全体的に握力の増大傾向が示され、対照的に、ビヒクル対照では、同期間中、握力の低下が観察された。
【図28】図28は、骨塩量(bone mineral density)(加齢のマウスモデルにおいて、デュアルエネルギーx線吸収測定法(DEXA)によって測定)に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;*,P<0.05。ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス(n=10)の骨塩量は、ビヒクル処置対照(n=14)と比べて有意に増加した。
【図29】図29は、総体脂肪量(加齢のマウスモデルにおいてNMR解析によって多数の時間点で測定)に対するActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは、10〜15匹のマウス/群/時間点の平均である。***,同じ時間点でのビヒクルに対してP<0.001。7週間の投与後、ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス脂肪量では、ベースラインからビヒクル処置対照の大きさの2倍より大きい割合の減少が示された。
【図30】図30は、加齢のマウスモデルにおける血清インスリン濃度に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;*,P<0.05。ActRIIB(25−131)−mFcで処置した高齢マウス(n=10)のインスリン濃度は、ビヒクル処置対照(n=14)と比べて40%より大きく低下した。
【図31】図31は、循環グリケート付加(glycated)ヘモグロビン(A1C)濃度に対する8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;n=5〜6/群;**,P<0.01。ActRIIB(25−131)−mFcにより、広く認められた平均血糖濃度の指標であるグリケート付加ヘモグロビンの濃度が、長期間にわたって有意に低下した。
【図32】図32は、癌性悪液質のマウスモデルにおける、除脂肪組織量(NMR解析により測定)に対する5週間のActRIIB(25−131)−hFc処置の効果を示す。データは平均±SEMである;***,P<0.001。腫瘍移植マウスでは、ビヒクル処置(n=7)は、7%の除脂肪組織量の減少と関連していたが、ActRIIB(25−131)−hFc処置(n=12)では、ベースラインから27%の除脂肪組織量の増加が引き起こされた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
1.概要
一部の特定の態様において、本開示はActRIIBポリペプチドに関する。本明細書で用いる場合、用語「ActRIIB」は、任意の種に由来するアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質およびActRIIB関連タンパク質の一ファミリーをいう。ActRIIBファミリーの構成員は、一般的に、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および推定セリン/トレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインで構成されたすべての膜貫通タンパク質である。
【0024】
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリー構成員、ならびに有用な活性を保持しているその任意のバリアント(例えば、変異型、断片、融合体、およびペプチド模倣物形態)の天然に存在する任意のポリペプチドを含むポリペプチドをいうために用いる。例えば、ActRIIBポリペプチドとしては、ActRIIBポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一の配列、好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれ以上の同一性の配列を有する任意の既知のActRIIBの配列に由来するポリペプチドが挙げられる。
【0025】
ヒトActRIIB前駆体は、以下のアミノ酸配列(シグナルペプチドに下線を付し、細胞外ドメインを太字で示し、潜在的N結合型グリコシル化部位を四角で囲んでいる)(配列番号1)(NM_001106,512 aa)を有する。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBタンパク質、ならびに有用な活性を保持しているその任意のバリアント(例えば、変異型、断片およびペプチド模倣物の形態)の天然に存在する任意の細胞外ドメインを含むものであり得る。例えば、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインはリガンドに結合し、一般的に可溶性である。シグナル配列は、ActRIIBの天然シグナル配列であっても、別のタンパク質由来のシグナル配列(組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)のシグナル配列またはミツバチのメラチン(melatin)(HBM)のシグナル配列など)であってもよい。
【0028】
一部において、本開示により、ActRIIBに由来する部分が配列番号1のアミノ酸25〜131に由来するものであるような切断型の新規なActRIIBポリペプチドを提供する。本明細書において示すように、この型のポリペプチドは、Fc構築物であるActRIIB(25−131)−hFcとして投与すると、除脂肪体重(主に筋肉)の形成および脂肪量の減少が促進されるとともに、代謝パラメータ(血清トリグリセリド、血清遊離脂肪酸および血清インスリンレベルなど)に対して顕著な望ましい効果も得られる。注目すべきことに、ActRIIB(25−131)−hFcはこのような代謝パラメータに対して、関連タンパク質ActRIIB(20−134)よりもずっと大きな効果を有する。このようなデータを以下の実施例に示す。
【0029】
TGF−βシグナルは、I型およびII型のセリン/トレオニンキナーゼ受容体のヘテロメリック複合体によって媒介され、該受容体は、リガンドに刺激されると下流のSmadタンパク質をリン酸化して活性化する(Massague,2000,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169−178)。このI型およびII型の受容体は、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および推定セリン/トレオニン特異性を有する細胞質ドメインで構成されたすべての膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に必須であり;II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後、安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化がもたらされる。
【0030】
関連している2種類のII型受容体ActRIIAおよびActRIIBが、アクチビンのII型受容体として同定されている(MathewsおよびVale,1991,Cell 65:973−982;Attisanoら,1992,Cell 68:97−108)。アクチビンの他に、ActRIIAおよびActRIIBは、他のいくつかのTGF−βファミリータンパク質(例えば、BMP7、Nodal、GDF8およびGDF11)と生化学的に相互作用し得る(Yamashitaら,1995,J.Cell Biol.130:217−226;LeeおよびMcPherron,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.98:9306−9311;YeoおよびWhitman,2001,Mol.Cell 7:949−957;Ohら,2002,Genes Dev.16:2749−54)。
【0031】
一部の特定の実施形態において、本発明は、主題のActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)でのActRIIB受容体のリガンド(ActRIIBリガンドとも称する)の拮抗に関する。したがって、本発明の組成物および方法は、1種類以上のActRIIB受容体のリガンドの異常な活性と関連している障害の処置に有用である。例示的なActRIIB受容体のリガンドとしては、一部のTGF−βファミリー構成員、例えば、アクチビン、Nodal、GDF3、GDF8、GDF11、およびBMP7が挙げられる。
【0032】
アクチビンは、二量体ポリペプチド増殖因子であり、TGF−βスーパーファミリーに属する。アクチビンには3種類あり(A、BおよびAB)、これらは、密接に関連している2つのβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体である(βAβA、βBβB、およびβAβB)。TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは特殊であり、卵巣および胎盤の細胞においてホルモン産生を刺激し、ニューロン細胞の生存を支持し、細胞型に応じて細胞周期の進行にプラスまたはマイナスの影響を及ぼし、また、少なくとも両生類の胚において中胚葉の分化を誘導し得る多機能性の因子である(DePaoloら,1991,Proc SocEp Biol Med.198:500−512;Dysonら,1997,Curr Biol.7:81−84;Woodruff,1998,Biochem Pharmacol.55:953−963)。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることがわかった(Murataら,1988,PNAS,85:2434)。これにより、アクチビンAが、骨髄における赤血球生成の自然な調節因子としての機能を果すことが示唆された。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連ヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出時、アクチビンはFSHの分泌と合成を促進させるが、インヒビンはFSHの分泌と合成を抑制する。アクチビンの生体活性を調節し得る、および/またはアクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、ホリスタチン(FS)、ホリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α2−マクログロブリン、ケルベロス(Cerberus)、およびエンドグリン(これらについては後述する)が挙げられる。
【0033】
骨形成(“bone morphogenetic”)タンパク質7(BMP7)は、骨形成(“osteogenic”)タンパク質−1(OP−1)とも称され、軟骨および骨の形成を誘導することがよく知られている。また、BMP7は広範囲の生理学的プロセスを調節する。注目すべきことに、最近、BMP7は、褐色脂肪細胞分化の重要な促進因子であることが確認された(Tsengら,2008,Nature 454:1000−1004)。この研究では、BMP7の遺伝子除去により、マウス胚において褐色脂肪の欠乏およびUCP1のほぼ完全な非存在がもたらされた。さらに、アデノウイルスの投与によるマウスでのBMP7発現の上方調節により、褐色脂肪量およびエネルギー消費量が増加した。アクチビンと同様、BMP7は、II型受容体であるActRIIAとActRIIBに結合する。しかしながら、BMP7とアクチビンは、相違するI型受容体をヘテロメリック受容体複合体に漸増させる。観察された主なBMP7 I型受容体はALK2であったが、アクチビンはALK4に排他的に結合した(ActRIIB)。BMP7とアクチビンは、相違する生物学的応答を誘起し、異なるSmad経路を活性化した(Macias−Silvaら,1998,J Biol Chem.273:25628−36)。
【0034】
細胞成長分化因子−3(GDF3)(Vg1関連2としても知られている)は、胚の発生に重要な役割を果たしており、また、成人期の脂肪生成に関与している。簡単には、白色脂肪組織におけるGDF3の発現はボディマスまたは肥満と相関しており(Weisbergら,2003,J Clin Invest 112:1796−1808)、GDF3のアデノウイルス媒介性過剰発現により、高脂肪食餌条件下の野生型マウスで観察される脂肪過多症の増大が過大になる(Wangら,2004,Biochem Biophys Res Commun 321:1024−1031)。重要なことに、GDF3の遺伝子が除去されたマウスは健常であり、標準食餌で維持した場合、本質的に正常であるが、高脂肪食餌で維持した場合、肥満から保護され、基礎代謝率の増大を示す(Shenら,2009,Mol Endocrinol 23:113−123)。総合すると、このような所見は、具体的に食餌誘導性肥満における、より一般的には脂肪過多症の調節におけるGDF3の関与を示す。
【0035】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびにその後の初期胚形成における軸構造(心臓および胃など)の組織化において機能を有する。発生中の脊椎動物の胚の背側組織は、主に脊索および脊索前板の軸構造に寄与しているとともに、周囲細胞を漸増させて胚の非軸構造を形成することが示されている。Nodalは、I型およびII型の両方の受容体ならびにSmadタンパク質として知られている細胞内エフェクターを介してシグナル伝達するようである。最近の研究により、ActRIIAとActRIIBがNodalのII型受容体としての機能を果しているという概念が裏付けられている(Sakumaら,Genes Cells.2002,7:401−12)。Nodalリガンドは、その補因子(例えば、cripto)と相互作用して、Smad2をリン酸化するアクチビン受容体I型およびII型を活性化させることが提案された。Nodalタンパク質は、脊椎動物の初期胚に重要な多くの事象、例えば、中胚葉形成、前部のパターン形成、および左右軸の特定に関与している。実験による証拠により、アクチビンおよびTGF−βに特異的に応答することが以前に示されたルシフェラーゼレポーターであるpAR3−Luxが、Nodalシグナル伝達により活性化されることが示されている。しかしながら、Nodalは、骨形成タンパク質に特異的に応答するレポーターであるpTlx2−Luxを誘導することができない。最近の結果により、Nodalシグナル伝達が、両方のアクチビン−TGF−β経路Smad、Smad2とSmad3によって媒介されるという直接的な生化学的証拠が示されている。さらなる証拠により、細胞外criptoタンパク質がNodalシグナル伝達に必要とされ、これにより、アクチビンまたはTGF−βシグナル伝達と相違することが示されている。
【0036】
成長分化因子−8(GDF8)はミオスタチンとしても知られている。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体の骨格筋において高度に発現されている。トランスジェニックマウスにおけるGDF8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥厚および過形成を特徴とする(McPherronら,Nature,1997,387:83−90)。同様に、骨格筋量の増加が畜牛(Ashmoreら,1974,Growth,38:501−507;SwatlandおよびKieffer,J.Anim.Sci.,1994,38:752−757;McPherronおよびLee,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1997,94:12457−12461;ならびにKambadurら,Genome Res.,1997,7:910−915)、および特筆すべきことにヒト(Schuelkeら,N Engl J Med 2004;350:2682−8)のGDF8の天然変異で明白である。また、研究により、ヒトのHIV感染と関連する筋消耗にはGDF8タンパク質発現の増大が随伴することも示されている(Gonzalez−Cadavidら,PNAS,1998,95:14938−43)。また、GDF8により、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成が調節され、筋芽細胞の増殖が調節され得る(WO00/43781)。GDF8プロペプチドは、非共有結合により成熟GDF8ドメイン二量体に結合し、その生物学的活性を不活化し得る(Miyazonoら(1988)J.Biol.Chem.,263:6407−6415;Wakefieldら(1988)J.Biol.Chem.,263;7646−7654;およびBrownら(1990)Growth Factors,3:35−43)。GDF8または構造的に関連しているタンパク質に結合し、その生物学的活性を阻害する他のタンパク質としては、ホリスタチン、および潜在的にホリスタチン関連タンパク質が挙げられる(Gamerら(1999)Dev.Biol.,208:222−232)。
【0037】
成長分化因子−11(GDF11)は、BMP11としても知られており、分泌型タンパク質である(McPherronら,1999,Nat.Genet.22:260−264)。GDF11は、マウスでの発生中、尾芽、肢芽、上顎弓および顎弓、ならびに後根神経節において発現される(Nakashimaら,1999,Mech.Dev.80:185−189)。GDF11は、中胚葉組織と神経組織の両方のパターン形成に特殊な役割を果している(Gamerら,1999,Dev Biol.,208:222−32)。GDF11は、発生中の幼鳥の肢部における軟骨形成および筋肉形成の負の調節因子であることが示された(Gamerら,2001、Dev Biol.229:407−20)。また、筋肉におけるGDF11の発現は、筋成長の調節においてGDF8と同様の役割を示す。さらに、脳におけるGDF11の発現は、GDF11が神経系の機能に関する活性も有しているかもしれないことを示す。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮において神経発生を阻害することがわかった(Wuら,2003,Neuron.37:197−207)。したがって、GDF11は、筋肉疾患および神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)などの疾患の処置においてインビトロおよびインビボでの適用用途を有し得る。
【0038】
一部の特定の態様では、本発明は、ActRIIB活性と関連している任意のプロセスにおいてActRIIBリガンド一般のシグナル伝達に対して拮抗作用をもたらすための特定のActRIIBポリペプチドの使用に関する。任意選択で、本発明のActRIIBポリペプチドは、1種類以上のActRIIB受容体のリガンド(アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11およびBMP7など)に対して拮抗作用をもたらすものであり得、したがって、さらなる障害の処置に有用であり得る。
【0039】
したがって、本発明では、ActRIIBまたはActRIIBリガンドの異常な活性と関連している疾患または病状の処置または予防におけるActRIIBポリペプチドの使用が想定される。ActRIIBまたはActRIIBリガンドは、多くの重要な生物学的プロセスの調節に関与している。このようなプロセスにおける枢要な機能のため、これらは治療的介入の望ましい標的であり得る。例えば、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)は、ヒトまたは動物の障害または病状を処置するために使用され得る。かかる障害または病状の例としては、限定されないが、代謝障害、例えば、2型糖尿病、グルコース寛容減損、メタボリックシンドローム(例えば、X症候群)、および外傷(例えば、火傷または窒素量不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;脂肪組織障害(例えば、肥満);筋肉および神経筋の障害、例えば、筋ジストロフィ(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィ);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;脆弱;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;およびサルコペニア、悪液質および他の筋消耗症候群が挙げられる。他の例としては、骨粗鬆症(特に、高齢者および/または閉経後の女性における);グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;オステオペニア;変形性関節症;ならびに骨粗鬆症関連骨折が挙げられる。またさらなる例としては、長期グルココルチコイド療法、早発性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養失調、および神経性食欲不振による低骨量が挙げられる。これらの障害および病状を以下の「例示的な治療的使用」で論考する。記載のように、本明細書において開示する切断型ActRIIBポリペプチドは、代謝パラメータに対して特に有益な効果を有するようである。
【0040】
本明細書で用いる用語は、一般的に、本発明の状況および各用語が使用されている場合の具体的な状況において、当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法ならびにこれらをどのようにして作製および使用するかの説明において、実施者にさらなる手引きを示すため、一部の特定の用語を以下または本明細書の別の箇所において論考する。用語の任意の使用の範囲または意味は、該用語が使用されている具体的な状況から明らかとなろう。
【0041】
「約」および「およそ」は、一般的に、測定された量に対する、測定の性質または精度を考慮して許容され得る誤差の度合を意味するものとする。典型的には、例示的な誤差の度合は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0042】
あるいはまた、具体的には生物学的系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味することがあり得る。本明細書において示す数量は、特に記載のない限り概算であり、用語「約」または「およそ」が明示されていない場合でも暗示されたものであり得ることを意味する。
【0043】
本発明の方法に、配列を互いに(例えば、野生型配列を1つ以上の変異型(配列バリアント)と)比較する工程を含めてもよい。かかる比較は、典型的には、例えば、当該技術分野でよく知られた配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(2〜3例を挙げると、例えば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を用いたポリマー配列のアラインメントを含む。当業者には、かかるアラインメントにおいて、変異に残基の挿入または欠失が含まれる場合、該挿入または欠失残基を含まないポリマー配列の配列アラインメントに「ギャップ」(典型的には、ダッシュまたは「A」で示す)が導入されることが容易に認識され得よう。
【0044】
「相同な」は、そのあらゆる文法形態およびスペル上の語尾変化形において、「共通の進化上の起源」を有する2つのタンパク質(例えば、同じ種の生物体のスーパーファミリーに由来するタンパク質、ならびに異なる種の生物体に由来する相同タンパク質)間の関係をいう。かかるタンパク質(およびそのコード核酸)は、配列類似性(同一性パーセントに換算、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在のいずれか)によって反映される配列相同性を有する。
【0045】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法形態において、核酸間またはアミノ酸配列間(共通の進化上の起源を共有するものであっても、そうでなくてもよい)の同一性または対応性の度合をいう。
【0046】
しかしながら、一般的な用法および本明細書において、用語「相同な」は、「高度に」などの副詞で修飾されている場合、配列類似性を示していることがあり得、共通の進化上の起源に関している場合、またはそうでない場合があり得る。
【0047】
2.ActRIIBポリペプチド
一部の特定の態様において、本発明は、ActRIIBポリペプチド(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)、特に、配列番号1のアミノ酸25〜131を含むポリペプチドによって例示される切断型形態のもの、ならびにそのバリアントに関する。任意選択で、その断片、機能性バリアントおよび修飾型形態は、その対応する野生型ActRIIBポリペプチドのものと類似した、または同じ生物学的活性を有するものである。例えば、本発明のActRIIBバリアントは、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)に結合して、その機能を阻害するものであり得る。任意選択で、ActRIIBポリペプチドは、骨、軟骨、筋肉もしくは脂肪などの組織の成長、または代謝パラメータ(トリグリセリド、遊離脂肪酸もしくはインスリンなど)を調節するものである。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号1)、ならびにFc融合タンパク質(例えば、配列番号3および8)が挙げられる。このようなポリペプチドの異型は以下の手引きに従って調製され得る。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、天然リーダー配列が使用されているかどうかに関係なく、配列番号1の配列に基づいている。
【0048】
本開示により、ActRIIBの機能的に活性な部分およびバリアントが同定される。本出願には、Hildenら(Blood.1994 Apr 15;83(8):2163−70)に開示された(配列番号1のアミノ酸64に対応する位置にアラニン(A64)を有する)配列を有するFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的低い親和性を有することを確認した。対照的に、64位にアルギニン(R64)を有する同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して低ナノモル〜高ピコモルの範囲の親和性を有する。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIBの野生型参照配列として使用する。
【0049】
Attisanoら(Cell.1992 Jan 10;68(1):97−108)により、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、アクチビンに対する受容体の親和性が低下することが示された。P129およびP130の変異ではリガンド結合は実質的に低減されない。
【0050】
ActRIIBリガンド結合ポケットは、残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101によって規定される。これらの位置では同類変異が許容されることが予測されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82AおよびL79位における変異と同様、十分に許容される。R40は、ツメガエルではKであり、この位置において塩基性アミノ酸が許容されることを示す。Q53は、ウシActRIIBではRおよびツメガエルActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHなどのアミノ酸が、この位置において許容される。したがって、ActRIIBタンパク質は、アミノ酸25〜131を含み、リガンド結合ポケットに1、2、5、10または15個以下の同類アミノ酸変更、およびリガンド結合ポケットの40、53、55、74、79および/または82位にゼロ、1個またはそれ以上の非同類改変を含むものであり得る。かかるタンパク質は、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と80%、90%、95%または99%より高い配列同一性を保持したものであり得る。結合ポケット外部位(ここでは、変動性が特に十分に許容され得る)としては、細胞外ドメイン(上記)のアミノ末端およびカルボキシ末端、ならびに42〜46および65〜73位が挙げられる。65位におけるアスパラギンからアラニンへの改変(N65A)により、実際に、A64バックグラウンドでのリガンド結合が改善され、したがって、R64バックグラウンドでのリガンド結合に対して有害な効果はないことが予測される。この変更により、おそらくA64バックグラウンドでのN65のグリコシル化が解消され、これにより、この領域における有意な変更は許容されるであろうことが示される。R64A変更はあまり許容されないが、R64Kは十分に許容され、したがって、別の塩基性残基(Hなど)が64位において許容され得る。
【0051】
ActRIIBは、ほぼすべての脊椎動物間で十分に保存されており、長鎖の細胞外ドメインは完全に保存されている。また、ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物生物体に由来するActRIIB配列の比較により、改変されてもよい残基における洞察が得られる。したがって、活性なヒトActRIIBは、別の脊椎動物ActRIIBの配列の対応する位置に1つ以上のアミノ酸が含むものあるいは、ヒトまたは他の脊椎動物配列のものと類似した残基を含むものであり得る。以下の例は、活性なActRIIBバリアントを規定するためのこのアプローチの例示である。L46はツメガエルActRIIBではバリンであり、そのため、この位置は改変されてもよく、任意選択で、別の疎水性残基(V、IもしくはFなど)または非極性残基(Aなど)に改変されてもよい。E52はツメガエルではKであり、この部位が、多種多様な変更(例えば、極性残基(E、D、K、R、H、S、T、P、G、Y、およびおそらくAなど)に許容性であり得ることを示す。T93はツメガエルではKであり、広範な構造異型がこの位置において許容されることを示し、極性残基(S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなど)が有利である。F108はツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性基(I、VもしくはLなど)が許容されるはずである。E111はツメガエルではKであり、残基の変更が、この位置において許容されることを示す(例えば、D、R、KおよびH、ならびにQおよびN)。R112はツメガエルではKであり、塩基性残基がこの位置において許容されることを示す(例えば、RおよびH)。119位のAは、相対的にあまり保存されておらず、齧歯類ではP、ツメガエルではVのようである。したがって、本質的に任意のアミノ酸が、この位置において許容されるはずである。
【0052】
さらなるN結合型グリコシル化部位(N−X−S/T)をActRIIBポリペプチドに付加してもよく、ActRIIB(R64)−Fc形態と比べてActRIIB−Fc融合タンパク質の血清半減期が増大され得る。NX(T/S)配列の例は42〜44(NQS)および65〜67(NSS)にみられるが、後者は、64位のRで効率的にグリコシル化されないことがあり得る。N−X−S/T配列は、一般的に、リガンド結合ポケット外の位置に導入され得る。非内因性N−X−S/T配列の導入に特に好適な部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134が挙げられる。また、N−X−S/T配列を、ActRIIB配列とFcまたは他の融合成分との間のリンカーに導入してもよい。かかる部位は、既に存在しているSもしくはTに対して正しい位置にNを導入することにより、または既に存在しているNに対応する位置にSもしくはTを導入することにより、最小限の労力で導入され得る。したがって、N結合型グリコシル化部位がもたらされ得る望ましい改変は:A24N、R64N、S67N(場合によっては、N65A改変との組合せで)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化によってもたらされる保護のため、グリコシル化されると予測される任意のSが、免疫原性部位を生じることなくTに改変され得る。同様に、グリコシル化されると予測される任意のTがSに改変され得る。したがって、改変S67TおよびS44Tが想定される。同様に、A24NバリアントではS26T改変が使用され得る。したがって、ActRIIBバリアントは、1つ以上のさらなる非内因性N結合型グリコシル化コンセンサス配列を含むものであり得る。
【0053】
記載のバリエーションは種々の様式で組み合わされ得る。さらに、ActRIIBには、保存が多くの場合で有益なアミノ酸位置がある。このような位置としては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、特にトリプトファン)、37位(酸性、特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。保存が望ましいであろう他の位置は以下のもの:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または電荷を有するもの、特にE、D、RまたはK)である。
【0054】
一部の特定の実施形態において、本発明では、治療有効性または安定性(例えば、エキソビボ貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)の向上などの目的のために、ActRIIBポリペプチドの構造を修飾することによる機能性バリアントの作製が想定される。また、修飾型ActRIIBポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失または付加によっても作製され得る。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの、アスパルテートのグルタメートでの、トレオニンのセリンでの孤立型置換、またはアミノ酸の構造的に関連しているアミノ酸での同様の置換(例えば、同類変異)は、得られる分子の生物学的活性に対して大きな効果を有しないと予測することは妥当である。同類置換は、側鎖が関連しているアミノ酸ファミリー内で起こるものである。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列の変更によって機能性ホモログがもたらされるかどうかは、バリアントActRIIBポリペプチドが、細胞内で野生型ActRIIBポリペプチドと類似した様式で応答をもたらす能力、または1種類以上のリガンド(アクチビン、GDF−11もしくはミオスタチンなど)に野生型と類似した様式で結合する能力を評価することにより容易に判定され得る。
【0055】
一部の特定の特別な実施形態において、本発明では、ActRIIBポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称する)において、バリアント(または変異型)ActRIIBポリペプチドが、改変されたリガンド結合活性(例えば、結合親和性または結合特異性)を有するような変異を行なうことが想定される。一部の特定の場合において、かかるバリアントActRIIBポリペプチドは、特定のリガンドに対して改変された(高い、または低減された)結合親和性を有する。他の場合において、バリアントActRIIBポリペプチドは、そのリガンドに対して改変された結合特異性を有する。
【0056】
一部の特定の実施形態において、本発明では、該ポリペプチドのグリコシル化が改変されるようなActRIIBポリペプチドの特定の変異が想定される。かかる変異は、1つ以上のグリコシル化部位(O結合型またはN結合型グリコシル化部位など)が導入または除去されるように選択され得る。アスパラギン結合型グリコシル化認識部位は、一般的に、トリペプチド配列アスパラギン−X−トレオニン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、該配列は、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識される。また、該改変は、野生型ActRIIBポリペプチドの配列(のO結合型グリコシル化部位)への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換によっても行なわれ得る。グリコシル化認識部位の1番目または3番目のアミノ酸位置の一方もしくは両方でのさまざまなアミノ酸置換または欠失(および/または2番目の位置でのアミノ酸欠失)により、該修飾トリペプチド配列において非グリコシル化がもたらされる。ActRIIBポリペプチド上の糖質部位の数を増やす別の手段は、ActRIIBポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによるものである。使用されるカップリング様式に応じて、糖鎖(1つまたは複数)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(システインのものなど);(d)遊離ヒドロキシル基(セリン、トレオニンもしくはヒドロキシルプロリンのものなど);(e)芳香族残基(フェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンのものなど);または(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。このような方法は、WO 87/05330(1987年9月11日公開)ならびにAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ActRIIBポリペプチド上に存在する1つ以上の糖質部位の除去は、化学的および/または酵素的に行なわれ得る。化学的脱グリコシル化は、例えば、ActRIIBポリペプチドを化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物に曝露することを伴うものであり得る。この処理により、連結糖鎖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除き、ほとんどまたは全部の糖鎖の切断がもたらされるが、該アミノ酸配列はインタクトなままである。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.118:131にさらに記載されている。ActRIIBポリペプチド上の糖質部位の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.138:350に記載のさまざまなエンド−およびエキソ−グリコシダーゼの使用によって行なわれ得る。哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞ではすべて、異なるグリコシル化パターン(これは、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る)が導入され得るため、ActRIIBポリペプチドの配列は、使用される発現系の型に応じて、適宜、調整され得る。一般に、ヒトにおける使用のためのActRIIBタンパク質は、適正なグリコシル化が得られる哺乳動物細胞株(HEK293またはCHO細胞株など)で発現させるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であると予測される。
【0057】
本開示では、さらに、バリアント、特に、ActRIIBポリペプチドのコンビナトリアルバリアントの組(任意選択で、切断型バリアントを含む)の作製方法が想定され;コンビナトリアル変異型のプールは、機能性バリアント配列の同定に特に有用である。かかるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、改変された特性(改変された薬物動態、または改変されたリガンド結合など)を有するActRIIBポリペプチドバリアントを作製するためであり得る。さまざまなスクリーニングアッセイを以下に示すが、かかるアッセイはバリアントを評価するために使用され得る。例えば、ActRIIBポリペプチドバリアントは、ActRIIBポリペプチドに結合し、ActRIIBリガンドがActRIIBポリペプチドに結合するのを妨げる能力に関してスクリーニングされ得る。
【0058】
また、ActRIIBポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、細胞系またはインビボでのアッセイでも試験され得る。例えば、骨芽細胞または前駆体での骨生成に関与している遺伝子の発現に対するActRIIBポリペプチドバリアントの効果が評価され得る。これは、必要に応じて、1種類以上の組換えActRIIBリガンドタンパク質(例えば、BMP7)の存在下で行なわれ得、細胞は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはそのバリアント、ならびに任意選択でActRIIBリガンドが産生されるようにトランスフェクトされ得る。同様に、ActRIIBポリペプチドがマウスまたは他の動物に投与され得、1つ以上の骨特性(密度または容量など)が評価され得る。また、骨折の治癒速度を評価してもよい。同様に、ActRIIBポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、筋肉細胞、脂肪細胞およびニューロン細胞において、これらの細胞の増殖に対する任意の効果について、例えば、後述するアッセイによって試験され得る。かかるアッセイは、当該技術分野でよく知られており、常套的である。かかる細胞株では、下流のシグナル伝達に対する効果をモニタリングするため、SMAD応答性レポーター遺伝子が使用され得る。
【0059】
天然に存在するActRIIBポリペプチドと比べて選択的な効力を有するコンビナトリアルに誘導されたバリアントが作製され得る。かかるバリアントタンパク質は、組換えDNA構築物から発現させる場合、遺伝子療法プロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発により、対応する野生型ActRIIBポリペプチドと劇的に異なる細胞内半減期を有するバリアントを生成させることができる。例えば、改変型タンパク質は、タンパク質分解または天然ActRIIBポリペプチドの崩壊あるいは不活化がもたらされる他のプロセスに対して、より安定にされたもの、または安定性が低減されたもののいずれかであり得る。かかるバリアントおよびこれをコードしている遺伝子は、ActRIIBポリペプチドの半減期を調節することにより、ActRIIBポリペプチドレベルを改変するために用いることができる。例えば、短い半減期では、より一過性の生物学的効果がもたらされ得、誘導発現系の一部である場合は、細胞内の組換えActRIIBポリペプチドレベルのより厳格な制御が可能となり得る。
【0060】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドに天然に存在している任意の修飾に加えて、さらに翻訳後修飾を含むものであってもよい。かかる修飾としては、限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられる。その結果、修飾型ActRIIBポリペプチドは、非アミノ酸要素(ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸基など)を含有するものであり得る。ActRIIBポリペプチドの機能性に対するかかる非アミノ酸要素の効果は、他のActRIIBポリペプチドバリアントについて本明細書に記載のようにして試験され得る。ActRIIBポリペプチドが、該ActRIIBポリペプチドの発生期の形態の切断によって細胞内で産生される場合、翻訳後プロセッシングは、該タンパク質の正しいフォールディングおよび/または機能にも重要であり得る。種々の細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、かかる翻訳後活性に対して特定の細胞機構および特徴的機構を有し、ActRIIBポリペプチドの正しい修飾およびプロセッシングが確実になるように選択され得る。
【0061】
一部の特定の態様において、ActRIIBポリペプチドの機能性バリアントまたは修飾型形態として、ActRIIBポリペプチドの少なくとも一部分と1つ以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が挙げられる。かかる融合ドメインのよく知られた例としては、限定されないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖の定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられる。融合ドメインは、所望の特性が付与されるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的には、アフィニティクロマトグラフィー用の該当するマトリックス(グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−またはコバルト−結合樹脂など)が使用される。かかるマトリックスの多くは、「キット」形態(Pharmacia GST精製系およびQIAexpressTM系(Qiagen)など)((HIS6)融合パートナーとともに使用され得る)で入手可能である。別の一例として、融合ドメインは、ActRIIBポリペプチドの検出が容易になるように選択され得る。かかる検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)ならびに「エピトープタグ」(これは、通常、特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である)が挙げられる。特異的モノクローナル抗体が容易に利用可能なよく知られたエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。一部の場合では、融合ドメインは第Xa因子またはトロンビンなどに対するプロテアーゼ切断部位を有し、該部位により、該当するプロテアーゼが該融合タンパク質を一部消化し、それにより組換えタンパク質を遊離させることが可能になる。遊離されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって融合ドメインから単離され得る。一部の特定の好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドを、ActRIIBポリペプチドをインビボで安定化させるドメイン(「安定化剤」ドメイン)に融合させる。「安定化させる」は、これが、崩壊の低減、腎臓によるクリアランスの低減、または他の薬物動態学的効果のいずれのためであるかに関係なく、血清半減期が増大する任意のことを意図する。免疫グロブリンのFc部分との融合体では、広範囲のタンパク質に望ましい薬物動態学的特性が付与されることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合体でも望ましい特性が付与され得る。選択され得る他の型の融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能性ドメイン(さらなる生物学的機能(筋成長のさらなる刺激など)を付与するもの)が挙げられる。
【0062】
具体的な一例として、本発明は、Fcドメイン(例えば、配列番号9)に融合させた細胞外(例えば、GDF8結合)ドメインを含む、GDF8アンタゴニストとしての融合タンパク質を提供する。
【0063】
【化3】
任意選択で、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434などの残基に1つ以上の変異を有する。一部の特定の場合において、このような変異の1つ以上(例えば、Asp−265変異)を有する変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてFcγ受容体に対する結合能力が低下している。他の場合において、このような変異の1つ以上(例えば、Asn−434変異)を有する変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてMHCクラスI関連Fc−受容体(FcRN)に対する結合能力が増大している。
【0064】
融合タンパク質の種々のエレメントは、所望の機能性と整合する任意の様式で配列され得ることは理解されよう。例えば、ActRIIBポリペプチドを異種ドメインのC末端側に配置してもよく、あるいはまた、異種ドメインをActRIIBポリペプチドのC末端側に配置してもよい。ActRIIBポリペプチドドメインと異種ドメインは融合タンパク質内で隣接している必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列を、どちらかのドメインのC末端側もしくはN末端側、または両ドメイン間に含めてもよい。
【0065】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを安定化させることができる1つ以上の修飾を含むものである。例えば、かかる修飾により、ActRIIBポリペプチドのインビトロ半減期が向上する、ActRIIBポリペプチドの循環半減期が向上する、またはActRIIBポリペプチドのタンパク質分解が低減される。かかる安定化修飾としては、限定されないが、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチドと安定化剤ドメインを含む融合タンパク質など)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドへのグリコシル化部位の付加など)、および糖質部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドからの糖質部位の除去など)が挙げられる。融合タンパク質の場合、ActRIIBポリペプチドを、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化剤ドメインに融合させる。本明細書で用いる場合、用語「安定化剤ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)をいうだけでなく、非タンパク質系修飾(糖質部位など)、または非タンパク質系ポリマー(ポリエチレングリコールなど)も包含する。
【0066】
一部の特定の実施形態において、本発明では、他のタンパク質から単離された、あるいは他のタンパク質を実質的に含まない、ActRIIBポリペプチドの単離形態および/または精製形態を利用可能にする。
【0067】
一部の特定の実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチド(非修飾型または修飾型)は、当該技術分野で知られたさまざまな手法によって作製され得る。例えば、かかるActRIIBポリペプチドは、標準的なタンパク質化学反応手法、例えば、Bodansky,M.Principles of Peptide Synthesis,Springer Verlag,Berlin(1993)およびGrant G.A.(編),Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman and Company,New York(1992)に記載のものを用いて合成され得る。また、自動化ペプチド合成装置が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいはまた、ActRIIBポリペプチド、その断片またはバリアントを、当該技術分野でよく知られた種々の発現系(例えば、大腸菌、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)(以下も参照のこと)を用いて組換え産生させてもよい。さらなる実施形態では、例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対形成塩基性アミノ酸変換酵素(PACE))を使用することにより、天然に存在する、または組換え産生させた完全長ActRIIBポリペプチドを消化させることによって、修飾型または非修飾型のActRIIBポリペプチドが作製され得る。タンパク質分解性切断部位の同定には、コンピュータ解析(市販のソフトウェアを使用(例えば、MacVector,Omega,PCGene,Molecular Simulation,Inc.))が使用され得る。あるいはまた、かかるActRIIBポリペプチドを、天然に存在する、または組換え産生させた完全長ActRIIBポリペプチドから、例えば、当該技術分野で知られた標準的な手法で、例えば、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)によって作製してもよい。
【0068】
3.ActRIIBポリペプチドをコードする核酸
一部の特定の態様において、本発明は、本明細書において開示する任意のActRIIBポリペプチドをコードする単離されたおよび/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号4は、ActRIIB(25−131)−hFc前駆体ポリペプチドをコードしているが、配列番号6は、同じタンパク質をコードしているが、別の択一的な配列を有し、配列番号4および6の各々のヌクレオチド73〜396は、コードタンパク質のActRIIB由来部分をコードしている。主題の核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。かかる核酸はDNA分子であってもRNA分子であってもよい。このような核酸は、例えば、ActRIIBポリペプチドの作製方法に使用され得る。
【0069】
例えば、以下の配列は、天然に存在するヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号2)をコードしている(NM_001106のヌクレオチド5〜1543,1539bp)。
【0070】
【化4】
以下の配列は、ヒト可溶性(細胞外)ActRIIBポリペプチド(配列番号10)をコードしている(348bp)。
【0071】
【化5】
一部の特定の態様では、ActRIIBポリペプチドをコードする主題の核酸は配列番号4または6のバリアントである核酸を含むことがさらに理解されよう。バリアントヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失によって異なる配列(対立遺伝子バリアントなど)を包含し;したがって、配列番号4または6で指定されるコード配列のヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0072】
一部の特定の実施形態において、本発明は、配列番号4または6、特に、そのActRIIBに由来する部分(ヌクレオチド73〜396)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である単離された核酸配列または組換え核酸配列を提供する。当業者には、配列番号4または6に相補的な核酸配列および配列番号4のバリアントもまた本発明の範囲に含まれることが認識されよう。さらなる実施形態において、本発明の核酸配列は、単離型、組換え型および/または異種ヌクレオチド配列との融合型、またはDNAライブラリー内のものであり得る。
【0073】
また、他の実施形態では、本発明の核酸は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号4もしくは6で指定されるヌクレオチド配列、配列番号4もしくは6の相補体またはその断片(例えば、ヌクレオチド73〜396)にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むものである。上記に論考したように、当業者には、DNAのハイブリダイゼーションが促進される適切なストリンジェンシー条件は異なり得ることが容易に理解されよう。当業者には、DNAのハイブリダイゼーションが促進される適切なストリンジェンシー条件は異なり得ることが容易に理解されよう。例えば、ハイブリダイゼーションが6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃で行なわれた後、2.0×SSCで50℃での洗浄が行なわれ得る。例えば、洗浄工程での塩濃度は、約2.0×SSCで50℃での低ストリンジェンシーから約0.2×SSCで50℃での高ストリンジェンシーまでで選択され得る。また、洗浄工程での温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上げられ得る。温度と塩の両方を変更してもよく、その他の可変量を変更しながら、温度または塩濃度を一定に維持してもよい。一実施形態において、本発明は、6×SSCで室温の低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイズの後、2×SSCで室温で洗浄される核酸を提供する。
【0074】
遺伝子コードの縮重のため配列番号4または6に示した核酸と異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲に含まれる。例えば、いくつかのアミノ酸は1つより多くの三文字表記で指定される。同じアミノ酸を指定するコドンまたは同義語(例えば,CAUとCACはヒスチジンの同義語)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異をもたらすものであり得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中に、主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらさないDNA配列多型が存在することが予測される。当業者には、天然の対立遺伝子変異のため、所与の種の個体の中に、特定のタンパク質をコードする核酸の1つ以上のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)におけるこのような変異が存在し得ることが認識されよう。任意のかかるすべてのヌクレオチド変異および生じるアミノ酸多型は本発明の範囲に含まれる。
【0075】
一部の特定の実施形態において、本発明の組換え核酸は、発現構築物内で1つ以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節ヌクレオチド配列は、一般的に、発現に使用される宿主細胞に適切なものである。さまざまな宿主細胞に対する数多くの型の適切な発現ベクターおよび適当な調節配列が、当該技術分野で知られている。典型的には、前記1つ以上の調節ヌクレオチド配列としては、限定されないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が挙げられ得る。当該技術分野で知られた構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが本発明によって想定される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または1つより多くのプロモーターエレメントを合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、細胞内にエピソーム(プラスミドなど)で存在させてもよく、発現構築物を染色体に挿入してもよい。好ましい実施形態では、発現ベクターに、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能なマーカー遺伝子を含める。選択可能なマーカー遺伝子は当該技術分野でよく知られており、使用される宿主細胞によって異なる。
【0076】
本発明の一部の特定の態様において、主題の核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードし、かつ少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにて提供される。調節配列は当該技術分野で認知されており、ActRIIBポリペプチドの発現が指令されるように選択される。したがって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントを包含する。例示的な調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。例えば、作動可能に連結させるとDNA配列の発現を制御する多種多様な任意の発現制御配列が、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためのこのようなベクターに使用され得る。かかる有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの極初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、T7プロモーター(その発現はT7 RNAポリメラーゼによって指令される)、ファージλの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、Fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドリン(polyhedron)プロモーター、ならびに原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはそのウイルスでの遺伝子発現を制御することがわかっている他の配列、ならびにその種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換させる宿主細胞の選択および/または発現が所望されるタンパク質の型などの要素に依存し得ることを理解されたい。さらに、ベクターのコピー数、該コピー数の制御能およびベクターにコードされた任意の他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現も考慮すべきである。
【0077】
本発明の組換え核酸は、クローニングした遺伝子またはその一部分を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫もしくは哺乳動物系)またはその両方のいずれかでの発現に適したベクター内にライゲートすることにより作製され得る。組換えActRIIBポリペプチドを産生させるための発現媒体としては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターとしては、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミド(原核生物細胞(大腸菌など)での発現用)の型のプラスミドが挙げられる。
【0078】
一部の哺乳動物発現ベクターは、細菌内でのベクターの伝播を助長するための原核生物系配列と、真核生物細胞において発現される1つ以上の真核生物系転写単位の両方を含むものである。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来ベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物系発現ベクターの一例である。一部のこのようなベクターは、原核生物細胞と真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性による選択を助長するため、細菌プラスミド(pBR322など)に由来する配列で修飾される。あるいはまた、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン‐バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体を、真核生物細胞におけるタンパク質の一過性発現に使用してもよい。他のウイルス(例えば、レトロウイルス)発現系の例は、以下の遺伝子療法の送達系の説明において知得され得る。プラスミドの調製および宿主生物体の形質転換に使用される種々の方法は、当該技術分野でよく知られている。原核生物細胞と真核生物細胞の両方に対する他の好適な発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版, Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)第16章および第17章を参照のこと。一部の場合では、バキュロウイルス発現系の使用によって組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合があり得る。かかるバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、ならびにpBlueBac由来ベクター(β−gal含有pBlueBac IIIなど)が挙げられる。
【0079】
好ましい実施形態では、CHO細胞での主題のActRIIBポリペプチドの産生のためのベクター、例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc.)が設計される。自明のように、主題の遺伝子構築物は、培養にて増殖させた細胞において主題のActRIIBポリペプチドの発現を引き起こし、例えば、精製対象のタンパク質(例えば、融合タンパク質またはバリアントタンパク質)を産生させるために使用され得る。
【0080】
また、本発明は、1種類以上の主題のActRIIBポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号4または6)を含む組換え遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本発明のActRIIBポリペプチドは、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いて)、酵母、または哺乳動物細胞において発現させ得る。他の好適な宿主細胞は当業者にわかる。
【0081】
したがって、本発明は、さらに、主題のActRIIBポリペプチドの作製方法に関する。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、ActRIIBポリペプチドの発現が起こることを可能にする適切な条件下で培養され得る。ActRIIBポリペプチドが分泌され、細胞とActRIIBポリペプチドを含有する培地との混合物から単離され得る。あるいはまた、ActRIIBポリペプチドを細胞質内または膜画分内に保持させ、該細胞を収集し、溶解させ、該タンパク質を単離してもよい。細胞培養物には、宿主細胞、培地および他の副生成物が含まれる。細胞培養に好適な培地は当該技術分野でよく知られている。主題のActRIIBポリペプチドは細胞培養培地、宿主細胞または両方から、タンパク質精製のための当該技術分野で知られた手法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびイムノアフィニティ精製(ActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を使用)を用いて単離され得る。好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。
【0082】
別の実施形態では、精製用リーダー配列(ポリ−(His)/組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端のエンテロキナーゼ切断部位配列など)をコードする融合遺伝子により、Ni2+メタルレジンを用いたアフィニティクロマトグラフィーによる発現融合タンパク質の精製を可能にすることができる。次いで、精製用リーダー配列を、続いてエンテロキナーゼでの処理によって除去すると、精製ActRIIBポリペプチドが得られ得る(例えば、Hochuliら,(1987)J.Chromatography 411:177;およびJanknechtら,PNAS USA 88:8972を参照のこと)。
【0083】
融合遺伝子を作製するための手法はよく知られている。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の接合は、慣用的な手法に従って、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端(stagger−ended)、適切な末端を得るための制限酵素消化、付着末端のフィルイン(適宜)、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、ならびに酵素的ライゲーションを用いて行なわれる。別の実施形態では、該融合遺伝子は、自動化DNA合成装置などの慣用的な手法によって合成され得る。あるいはまた、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続する遺伝子断片間に相補的な突出端を生成させるアンカープライマーを用いて行なわれ得、その後、これをアニーリングするとキメラ遺伝子配列が作製され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。
【0084】
5.例示的な治療的使用
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、ActRIIBポリペプチドおよび/またはActRIIBリガンド(例えば、GDF8)の異常な活性と関連している疾患または病状の処置または予防に使用され得る。このような疾患、障害または病状を、本明細書において、一般的に「ActRIIBに関連する病状」と称する。一部の特定の実施形態において、本発明は、処置または予防を必要とする個体に治療有効量の上記のActRIIBポリペプチドを投与することによる、該個体の処置または予防方法を提供する。このような方法は、特に、動物、より特別にはヒトの治療的および予防的処置を目的としたものである。
【0085】
本明細書で用いる場合、障害または病状を「予防する」治療薬は、統計学的標本において、非処置対照試料と比べて処置試料で障害または病状の発生が低減されるか、あるいは非処置対照試料と比べて障害または病状の1つ以上の症状の発現が遅延されるか、またはその重症度が低減される化合物をいう。用語「処置する」は、本明細書で用いる場合、
名称を記載した病状の予防またはいったん確立された該病状の改善もしくは解消を包含する。
【0086】
ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体は、組織成長ならびに発生初期のプロセス(種々の構造の正しい形成など)、または1種類以上の発生後の能力(例えば、性的発育、下垂体ホルモンの生成、および骨や軟骨の構築)に必須の役割を果している。したがって、ActRIIBに関連する病状としては、異常な組織成長および発達不全が挙げられる。また、ActRIIBに関連する病状としては、限定されないが、細胞の増殖および分化の障害(炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染性疾患、および腫瘍など)が挙げられる。
【0087】
例示的な処置対象の病状としては、神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィおよび筋萎縮)、鬱血性閉塞性肺疾患(およびCOPDと関連している筋消耗)、筋消耗症候群、サルコペニア、悪液質、脂肪組織障害(例えば、肥満)、2型糖尿病、ならびに骨変性性疾患(例えば、骨粗鬆症)が挙げられる。他の例示的な病状としては、筋変性性のおよび神経筋の障害、組織修復(例えば、創傷治癒)、神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、免疫学的障害(例えば、リンパ球の異常な増殖もしくは機能に関連している障害)、ならびに肥満または脂肪細胞の異常な増殖に関連している障害が挙げられる。
【0088】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIB−Fcポリペプチド)は、筋ジストロフィの処置の一部として使用される。用語「筋ジストロフィ」は、骨格筋ならびに場合によっては心臓および呼吸筋の緩徐な弱体化および衰退を特徴とする一群の変性性筋疾患をいう。筋ジストロフィは、筋肉の微視的変化から始まる進行性の筋消耗および衰弱を特徴とする遺伝性障害である。経時的に筋肉が衰退するにつれて、人間の筋力は低下する。主題のActRIIBポリペプチドを含むレジメンで処置され得る例示的な筋ジストロフィとしては:デュシェーヌ筋ジストロフィ(DMD)、ベッカー筋ジストロフィ(BMD)、エメリー‐ドライフス筋ジストロフィ(EDMD)、肢帯筋ジストロフィ(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィ(FSHまたはFSHD)(ランドジー‐デジェリーヌとしても知られている)、筋緊張性ジストロフィ(MMD)(シュタイネルト病としても知られている)、眼咽頭筋ジストロフィ(OPMD)、遠位筋ジストロフィ(DD)、先天性筋ジストロフィ(CMD)が挙げられる。
【0089】
デュシェーヌ筋ジストロフィ(DMD)は、最初に、フランスの神経学者Guillaume Benjamin Amand Duchenneにより、1860年代に報告された。ベッカー筋ジストロフィ(BMD)はドイツの医師Peter Emil Beckerにちなんだ名称であり、彼が最初にこのDMD異型を1950代に報告した。DMDは、最もよくみられる男性の遺伝性疾患の1つであり、少年3,500人に1人が罹患している。DMDは、X染色体の短腕に存在するジストロフィン遺伝子が破壊された場合に起こる。男性にはX染色体が1コピーしかないため、ジストロフィン遺伝子は1コピーしかない。ジストロフィンタンパク質がないと、筋肉は、収縮と弛緩のサイクル中に容易に損傷される。疾患初期では、筋肉は再生によって補われるが、後になると、筋肉前駆細胞が進行中の損傷に追いつけず、健常な筋肉が非機能性の線維脂肪組織で置き換えられる。
【0090】
BMDは、ジストロフィン遺伝子の異なる変異に起因している。BMD患者は、いくらかのジストロフィンを有するが、量が不十分であるか、質が不十分であるかのいずれかである。ジストロフィンがいくらかあると、BMDの人の筋肉は、DMDの人と同程度に悪いか、または同程度に急速な変性から保護される。
【0091】
例えば、最近の研究により、GDF8(ActRIIBリガンド)の機能をインビボでブロックまたは解消させると、DMD患者およびBMD患者において、少なくとも一部の特定の症状が有効に処置され得ることが示されている。したがって、主題のActRIIBポリペプチドは、GDF8インヒビター(アンタゴニスト)としての機能を果し、DMD患者およびBMD患者において、GDF8および/またはActRIIBの機能をインビボでブロックする別の択一的な手段を構成する可能性がある。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質によって筋ジストロフィのマウスモデルにおいて筋肉量が増加することが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0092】
同様に、主題のActRIIBポリペプチドにより、筋成長が必要とされる他の疾患状態において筋肉量を増加させるための有効な手段が提供される。例えば、ALS(ルー・ゲーリグ病とも称される)(運動ニューロン疾患)は、慢性で不治の制止不能なCNS障害であり、脳を骨格筋に連結させるCNSの構成要素である運動ニューロンが障害される。ALSでは、運動ニューロンが衰退しており、最終的には死滅し、人間の脳は、依然として正常に十分機能して警告を発するが、動けという指令は決して筋肉に届かない。ALSになった人はほとんどが40歳〜70歳の間である。弱体化する最初の運動ニューロンは腕または脚に至るものである。ALSの人は、歩行に問題が起こることがあり得、ものを落としたり、転んだり、発話が不明瞭であったり、制御不能に笑ったり泣いたりすることがあり得る。最終的に、四肢の筋肉が不使用のため萎縮し始める。この筋肉の衰弱は消耗性となり、車椅子が必要になったり、ベッドから起き上がって何かをすることができなくなる。ほとんどのALS患者は、疾患発症から3〜5年で、呼吸不全または人工呼吸器関連の合併症(肺炎など)で死亡する。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質によりALSのマウスモデルの外観、筋肉量および寿命が改善されることが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0093】
また、ActRIIBポリペプチド誘導性の筋肉量の増加により、筋消耗疾患に苦しんでいる人も恩恵を被り得る。Gonzalez−Cadavidら(上掲)により、GDF8発現はヒトの無脂肪体重と逆比例的に相関していること、およびGDF8遺伝子の発現の増大はAIDS消耗症候群の人の体重減少と関連していることが報告された。AIDS患者においてGDF8の機能を阻害することにより、AIDSの少なくとも一部の特定の症状が、完全に解消されないまでも軽減され得、したがって、AIDS患者の生活の質が有意に改善され得る。
【0094】
GDF8(ActRIIBリガンド)機能の低下は、栄養摂取の減損のない脂肪量の減少とも関連しているため(Zimmersら,上掲;McPherronおよびLee,上掲)、主題のActRIIBポリペプチドは、さらに、肥満およびII型糖尿病の進展を低速化または予防するための治療用薬剤として使用され得る。このアプローチは、ActRIIB−Fcタンパク質により肥満マウスの代謝状態が改善されることが示された本明細書に示すデータによって確認され、裏付けられる。
【0095】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、メタボリックシンドローム(X症候群およびインスリン抵抗性症候群としても知られている)の処置の一部として使用される。メタボリックシンドロームは、心血管疾患およびII型真性糖尿病を進展させるリスクを増大させる障害およびリスクファクターの組合せである。患者のほとんどは高齢、肥満であり、座っていることが多く、ある程度のインスリン抵抗性を有する。中心性(腹部または内臓)脂肪過多症は、該シンドロームの大きな特徴である。
【0096】
関連する実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物は、II型真性糖尿病(非インスリン依存性真性糖尿病または成人発症糖尿病としても知られている)の処置の一部として使用され得る。II型真性糖尿病は、インスリン抵抗性および相対的にインスリン欠乏症の状況における高い血糖を特徴とする。糖尿病における複雑で多因子性の代謝変化は、多くの場合、多くの器官に、最も重要なのは心血管系に損傷および機能障害をもたらす。II型真性糖尿病は、多くの場合、肥満(腹部または内臓の脂肪過多症)、高血圧、高いコレステロール、およびメタボリックシンドロームと関連している。II型真性糖尿病重要なリスクファクターとしては、加齢、高脂肪食餌、および座っていることが多い生活様式が挙げられる。
【0097】
他の関連する実施形態において、本発明のActRIIBポリペプチドおよび他の組成物は、脂肪性沈着物(多くの場合、斑と称される)の蓄積のため動脈壁が肥厚した慢性の炎症状態であるアテローム性動脈硬化の処置の一部として使用され得る。アテローム性動脈硬化のリスクファクターとしては、加齢、真性糖尿病、異常リポ蛋白血症、肥満(腹部または内臓の脂肪過多症)、および座っていることが多い生活様式が挙げられる。
【0098】
また、ActRIIBポリペプチドは、メタボリックシンドロームと関連している傾向にあるリポジストロフィ系障害にも使用され得る。重度のインスリン抵抗性は、リポジストロフィの遺伝性形態と後天性形態のどちらにおいても生じる可能性がある(例えば、後者の場合、抗レトロウイルス療法で処置された患者におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連リポジストロフィ)。
【0099】
癌性食欲不振−悪液質症候群は、とりわけ、最も消耗性の生死にかかわる癌の態様である。癌性食欲不振−悪液質症候群における進行性の体重減少は、多くの型の癌の共通の特徴であり、良好でない生活の質および化学療法に対する良好でない応答の一因となるだけでなく、体重減少のない同等の腫瘍を有する患者でみられるものより短い生存期間の一因にもなる。食欲不振、脂肪および筋肉組織の衰弱、心理的苦悩、および生活の質の低下と関連して、悪液質は、癌と宿主間の複雑な相互作用によって生じる。これは、癌患者の最も一般的な死亡原因の1つであり、死亡時に80%において存在する。これは、タンパク質、糖質および脂肪の代謝に影響する複雑な代謝カオスの例である。腫瘍では、直接的異常と間接的異常の両方が生じ、食欲不振および体重減少がもたらされる。現在、この過程を制御または逆転させる処置はない。癌性食欲不振−悪液質症候群は、サイトカイン生成、脂質代謝性因子およびタンパク質分解誘導因子の放出、ならびに中間代謝の改変に影響を及ぼす。食欲不振はよくみられるが、食物摂取の減少単独では、癌患者でみられる身体組成の変化が説明され得ず、栄養摂取の増加では、消耗症候群は逆転され得ない。病前体重の5パーセントより大きい非自発的体重減少が6ヶ月以内に起こった場合、癌の患者において悪液質が疑われるべきである。
【0100】
成体マウスにおけるGDF8の全身性過剰発現により、ヒト悪液質症候群でみられるものと同様の顕著な筋肉量および脂肪量の減少が誘導されることがわかったため(Zimmersら,上掲)、医薬組成物としての主題のActRIIBポリペプチドは、筋成長が所望される悪液質症候群の症状を予防、処置または軽減するために有益に使用され得る。
【0101】
他の実施形態では、本発明は、骨および/または軟骨の形成の誘導方法、骨量減少の予防方法、骨鉱化の増大方法、あるいは骨の無機質脱落の予防方法を提供する。例えば、主題のActRIIBポリペプチドおよび本発明において同定される化合物は、ヒトおよび他の動物における骨粗鬆症の処置ならびに骨折および軟骨欠損の治癒に適用用途を有する。ActRIIBポリペプチドは、骨粗鬆症の進展に対する保護手段として、無症状低骨密度と診断された患者に有用であり得る。
【0102】
具体的な一実施形態において、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物の骨折および軟骨欠損の治癒に医療的有用性がみられることがあり得る。また、主題の方法および組成物は、閉鎖骨折ならびに開放骨折の低減に、また、人工関節の固定の改善にも予防的用途を有する場合がある得る。骨形成剤によって誘導されるデノボ骨形成は、先天性の外傷誘導性または腫瘍学的切除誘導性の頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、また、美容整形手術にも有用である。さらに、本発明の方法および組成物は、歯周病の処置、および他の歯の修復プロセスに使用され得る。一部の特定の場合では、主題のActRIIBポリペプチドにより、骨形成細胞の誘引、骨形成細胞の増殖の刺激、または骨形成細胞の前駆細胞の分化の誘導のための環境が提供され得る。また、本発明のActRIIBポリペプチドは、骨粗鬆症の処置にも有用であり得る。さらに、ActRIIBポリペプチドは、軟骨欠損の修復および変形性関節症の予防/逆転に使用され得る。
【0103】
別の具体的な実施形態において、本発明は、骨折ならびに軟骨および/または骨の欠損に関連する他の病状あるいは歯周病を修復するための治療方法および組成物を提供する。本発明は、さらに、創傷治癒および組織修復のための治療方法および組成物を提供する。創傷の型としては、限定されないが、火傷、切開および潰瘍が挙げられる。例えば、PCT公開公報番号WO84/01106を参照のこと。かかる組成物は、治療有効量の少なくとも1種類の本発明のActRIIBポリペプチドを、薬学的に許容され得るビヒクル、担体またはマトリックスと混合された状態で含むものである。
【0104】
別の具体的な実施形態において、本発明の方法および組成物は、骨量減少が引き起こされる病状(骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、甲状腺中毒症、慢性の下痢状態もしくは吸収不良、尿細管性アシドーシス、慢性腎不全または神経性食欲不振など)に適用され得る。多くの人は、女性であること、体重が少ないこと、および主に座っていることが多い生活様式は、骨粗鬆症(骨塩量が減少し、骨折リスクがもたらされる)のリスクファクターであることを知っている。しかしながら、骨粗鬆症は、一部の特定の投薬物の長期使用にも起因することがあり得る。薬物または別の疾病状態に起因する骨粗鬆症は、続発性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られている病状では、体内で生成された過剰な量のコルチゾールにより骨粗鬆症および骨折がもたらされる。続発性骨粗鬆症と関連する最も一般的な投薬物は、コルチコステロイド(副腎から天然に生成されるホルモンであるコルチゾールと同様の作用をする類型の薬物)である。骨格の発達には十分なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺によって生成される)が必要であるが、過剰の甲状腺ホルモンにより経時的に骨量が減少することがあり得る。アルミニウムを含有する制酸薬は、腎臓に問題を有する人、特に透析を受けている人が高用量で摂取すると、骨量減少をもたらすことがあり得る。続発性骨粗鬆症が引き起こされ得る他の投薬物としては、フェニトイン(Dilantin)およびバルビツレート(発作を予防するために使用される);メトトレキサート(Rheumatrex,Immunex,Folex PFS)(一部の形態の関節炎、癌および免疫障害のための薬物);シクロスポリン(Sandimmune,Neoral)(一部の自己免疫疾患を処置するため、および臓器移植患者において免疫機構を抑制するために使用される薬物);黄体化ホルモン放出ホルモン作動薬(Lupron,Zoladex)(前立腺癌および子宮内膜症を処置するために使用される);ヘパリン(Calciparine,Liquaemin)(抗凝固性投薬物);ならびにコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)(高コレステロールを処置するために使用される)が挙げられる。歯肉疾患では、身体が口内の有害な細菌の防御を強制されるため、骨量減少が引き起こされる。該細菌は歯肉線縁下で毒素および酵素を生成し、慢性感染症を引き起こす。
【0105】
他の実施形態では、本発明は、動物の体脂肪含量を調節するため、および関連する病状、特に、関連する健康障害状態を処置または予防するための組成物および方法を提供する。本発明によれば、体重の調節(コントロール)とは、体重の増加もしくは減少、体重増加速度の増大もしくは低減、または体重減少速度の増大もしくは低減をいうことがあり得、また、能動的維持、または体重を有意に変化させないこと(例えば、調節(コントロール)しなければ体重が増加もしくは減少し得る外的もしくは内的影響に対して)を包含する。本発明の一実施形態は、体重の調節を必要とする動物(例えば、ヒト)にActRIIBポリペプチドを投与することによる体重の調節に関する。
【0106】
具体的な一実施形態において、本発明は、動物の脂肪量の低減および/または脂肪量の増加の低減のための方法および化合物、より詳しくは、肥満のリスクのある、または肥満に苦しんでいる患者の肥満を処置または改善するための方法および化合物に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、体重増加または体重維持ができない動物(例えば、消耗症候群の動物)を処置するための方法および化合物に関する。かかる方法は、体重および/または身体量の増加、あるいは体重および/または身体量の減少の低減、あるいは望ましくない低い(例えば、非健常)体重および/または身体量と関連しているか、またはそれらによって引き起こされる病状の改善に有効である。
【0107】
7.医薬組成物
一部の特定の実施形態において、本発明の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)は、薬学的に許容され得る担体とともに製剤化される。例えば、ActRIIBポリペプチドは、単独で、または医薬製剤(治療用組成物)の一成分として投与され得る。主題の化合物は、ヒト用または獣医学的医療における使用のための任意の簡便な様式での投与のために製剤化され得る。
【0108】
一部の特定の実施形態において、本発明の治療方法は、該組成物を、埋入物またはデバイスとして、経表面的、全身または局所に投与することを含むものである。投与する際、本発明における使用のための治療用組成物は、もちろん、パイロジェンフリーの生理学的に許容され得る形態である。さらに、該組成物は、望ましくは、標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪またはニューロン)、例えば、組織損傷を有する部位への送達のために粘性形態でカプセル封入または注射され得る。経表面投与は、創傷治癒および組織修復に好適であり得る。本発明の方法では、ActRIIBポリペプチド以外の任意選択で上記の組成物に同様に含められ得る治療上有用な薬剤が、択一的または付加的に、主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)と同時または逐次に投与され得る。
【0109】
一部の特定の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の治療用化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を標的組織部位に送達して組織の発達のための構造を提供し、かつ最適には体内に再吸収され得るマトリックスを含むものであり得る。例えば、マトリックスは、ActRIIBポリペプチドの低速放出をもたらすものであり得る。かかるマトリックスは、現在、他の埋入型医療用適用物に使用されている材料で形成されたものであり得る。
【0110】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、表面的外観および界面特性に基づく。主題の組成物の具体的な適用により適切な製剤が規定される。該組成物用の潜在的マトリックスは、生分解性の化学的に規定される硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の潜在的材料は、生分解性の生物学的に十分規定される骨または皮膚コラーゲンなどである。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分で構成されたものである。他の潜在的マトリックスは、非生分解性の化学的に規定される焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネートなど、または他のセラミックスである。マトリックスは、上記の任意の型の材料の組合せ(ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンとリン酸三カルシウムなど)で構成されたものであってもよい。バイオセラミックスは、組成を改変してもよく(例えば、リン酸アルミン酸カルシウムに)、孔径、粒径、粒子形状および生分解性が改変されるように加工処理してもよい。
【0111】
一部の特定の実施形態では、本発明の方法は、経口用に、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(フレーバー基剤、通常、スクロースおよびアカシアもしくはトラガカントが使用される)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型の液状乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(不活性な基剤(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなど)が使用される)として、および/またはマウスウォッシュなどとして投与され得、各々には所定量の薬剤が活性成分として含有される。また、薬剤は、ボーラス、舐剤またはペースト剤としても投与され得る。
【0112】
経口投与のための固形投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)では、本発明の1種類以上の治療用化合物が、1種類以上の薬学的に許容され得る担体と、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下:(1)充填剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸など);(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなど;(3)保湿剤(グリセロールなど);(4)崩壊剤(アガー−アガー、炭酸カルシウム、イモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一部の特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなど);(5)溶解遅延剤(パラフィンなど);(6)吸収促進剤(第4級アンモニウム化合物など);(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8)吸収剤(カオリンおよびベントナイトクレイなど);(9)滑沢剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびその混合物;ならびに(10)着色剤のいずれかと混合され得る。また、カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物に緩衝剤を含めてもよい。また、同様の型の固形組成物が、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用され得る(例えば、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤が使用される)。
【0113】
経口投与のための液状投薬形態としては、薬学的に許容され得る乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加え、液状投薬形態には、当該技術分野で一般的に使用されている不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物が含まれ得る。不活性な希釈剤の他に、経口組成物にはまた、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、着色剤、香料剤、ならびに保存剤を含めてもよい。
【0114】
懸濁剤には、活性化合物に加えて懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガー−アガーおよびトラガカント、ならびにその混合物が含まれ得る。
【0115】
本明細書において開示する一部の特定の組成物は、皮膚または粘膜のいずれかに経表面投与され得る。経表面用製剤には、さらに、皮膚または角質層浸透向上剤として有効であることが知られた多種多様な薬剤の1種類以上が含まれ得る。このようなものの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。製剤を化粧料として許容され得るものにするためのさらなる薬剤をさらに含めてもよい。このようなものの例は、脂肪、ワックス、油類、染料、香料、保存料、安定化剤、および表面活性剤である。また、角質溶解剤(当該技術分野で知られているものなど)を含めてもよい。例はサリチル酸およびイオウである。
【0116】
経表面または経皮投与のための投薬形態としては、粉末剤、スプレー剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、貼付剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件で、薬学的に許容され得る担体と、および必要とされ得る任意の保存料、バッファーまたは噴射剤と混合され得る。軟膏、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤には、本発明の主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)に加えて、動物性および植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛などの賦形剤、またはその混合物が含まれ得る。
【0117】
粉末剤およびスプレー剤には、主題の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末などの賦形剤、またはこのような物質の混合物が含まれ得る。スプレー剤には、通常の噴射剤(クロロフルオロ炭化水素など)ならびに揮発性の非置換型炭化水素(ブタンおよびプロパンなど)がさらに含まれ得る。
【0118】
一部の特定の実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物には、1種類以上のActRIIBポリペプチドが、1種類以上の薬学的に許容され得る滅菌された等張性の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョンと組み合わせて、または滅菌された粉末(これは、使用直前に、滅菌された注射用の液剤または分散剤に再構成され得る)と組み合わせて含まれ得、また、酸化防止剤、バッファー、静菌薬、製剤を対象レシピエントの血液と等張性にする溶質または懸濁化剤もしくは増粘剤が含有されていてもよい。本発明の医薬組成物に使用され得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なその混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびに注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。適正な流動性は、例えば、コーティング物質(レクチンなど)の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0119】
また、本発明の組成物に、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散化剤などの佐剤を含めてもよい。微生物の作用の抑制は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保され得る。また、等張剤(例えば、糖類、塩化ナトリウムなど)を該組成物に含めることが望ましい場合があり得る。また、注射用医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)を含めることによってもたらされ得る。
【0120】
投薬レジメンは、担当医師により、本発明の主題の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)の作用が改良される種々の要素を考慮して決定されることは理解されよう。該種々の要素は処置対象の疾患に依存する。
【0121】
また、一部の特定の実施形態では、本発明は、本明細書において開示するActRIIBポリペプチドまたは他の化合物をインビボで生成させるための遺伝子療法を提供する。かかる治療法では、上記の障害を有する細胞または組織内へのActRIIBポリヌクレオチド配列の導入によって治療効果が得られ得る。ActRIIBポリヌクレオチド配列の送達は、組換え発現ベクター(キメラウイルスなど)またはコロイド状分散系を用いて行なわれ得る。ActRIIBポリヌクレオチド配列の治療用送達に好ましいのは、標的化対象リポソームの使用である。
【0122】
本明細書において教示する遺伝子療法に利用することができる種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアまたは、好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリレトロウイルス派生体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、限定されないが:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。いくつかのさらなるレトロウイルスベクターには、多数の遺伝子を組み込むことができる。このようなベクターはすべて、形質導入細胞が同定および作製され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を伝達し得るものであるか、または該ベクターに該遺伝子が組み込まれ得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を結合することにより、標的特異的とすることができる。好ましい標的化は、抗体を使用することにより行なわれる。当業者には、ActRIIBポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム内に挿入され得るか、またはウイルスエンベロープに結合され得ることが認識されよう。好ましい一実施形態では、ベクターは骨、軟骨、筋肉またはニューロン細胞/組織に標的化される。
【0123】
あるいはまた、組織培養細胞を、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドで、慣用的なリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトしてもよい。次いで、この細胞を、対象遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトする。得られた細胞は、該レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
【0124】
ActRIIBポリヌクレオチドの別の標的化対象送達系はコロイド状分散系である。コロイド状分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質系の系(例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソーム)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド状の系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達媒体として有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが水性の内部に封入され、生物学的に活性な形態で細胞に送達され得る(例えば、Fraleyら,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981参照)。リポソーム媒体を用いた効率的な遺伝子導入のための方法は当該技術分野で知られており、例えば、Manninoら,Biotechniques,6:682,1988を参照のこと。リポソームの組成は、通常、リン脂質の組合せであり、通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わされる。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0125】
リポソームの生成に有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。また、リポソームの標的化は、例えば、器官特異性、細胞特異性および小器官特異性に基づいたものも可能であり、当該技術分野で知られている。
【実施例】
【0126】
実施例
本発明を一般的に説明したが、本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。この実施例は、一部の特定の実施形態および本発明の実施形態の例示の目的で含めたものにすぎず、本発明を限定することを意図しない。
【0127】
実施例1.別の択一的なヌクレオチド配列を有するActRIIB(25−131)−hFcの作製
ActRIIB(25−131)−hFcを作製するため、N末端とC末端が切断されたヒトActRIIB細胞外ドメイン(天然タンパク質の残基25〜131)を、N末端でTPAリーダー配列(天然ActRIIBリーダーの代わり)と、およびC末端でヒトFcドメインと最小限のリンカー(3つのグリシン残基)(図1)を介して融合させた。この融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を図2に示す。本出願人らは、コドンを修飾し、最初の形質転換体の発現レベルにおいて相当な改善をもたらすActRIIB(25−131)−hFcタンパク質コードバリアント核酸を見い出した(図3)。
【0128】
成熟タンパク質は以下のようなアミノ酸配列を有する(N末端は、N末端配列決定法によって確認)(配列番号8)。
【0129】
【化6】
アミノ酸1〜107はActRIIBに由来している。
【0130】
発現された分子を、一連のカラムクロマトグラフィー工程(例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィーの3種類以上を任意の順で含むもの)を用いて精製した。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換を用いて終了され得る。
【0131】
実施例2.ActRIIB(25−131)−hFcによる高親和性リガンド結合
ActRIIB(25−131)−hFcおよびその完全長対応物ActRIIB(20−134)−hFcに対するいくつかのリガンドの親和性を、BiacoreTM機器を用いてインビトロで評価した。結果を以下の表にまとめる。複合体の非常に急速な会合と解離のため(これは、konおよびkoffの正確な測定を妨げる)、Kd値は、定常状態の親和性フィットによって得た。ActRIIB(25−131)−hFcは、アクチビンA、アクチビンBおよびGDF11に高い親和性で結合した。興味深いことに、ActRIIB(25−131)−hFcは、ActRIIB(20−134)−hFcよりもGDF3に対して高い親和性を示すようである(データ示さず)。
【0132】
【表1】
実施例3.ActRIIB(25−131)−hFcはインビボで筋肉量および筋力を増大させる
本出願人らは、ActRIIB(25−131)−hFcが筋肉量および筋力を増大させる能力をマウスにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)を、ビヒクル(Tris緩衝生理食塩水)または5つの用量のうちの1つの用量のActRIIB(25−131)−hFcで週2回、皮下処置した。ActRIIB(25−131)−hFcでの4週間の処置により、明白な用量依存性の除脂肪組織量の増加がもたらされた(図4)(全身の核磁気共鳴(NMR)スキャンによって測定)。筋肉量の増加は、試験終了時、特定の筋肉、例えば、胸筋(図5)、大腿直筋および腓腹筋について確認した。重要なことに、筋肉量の増大には、ビヒクルと比べて筋力の増大(握力によって評価)が付随した(図6)。このような結果は、ActRIIB(25−131)−hFcがインビボで筋肉量と筋力の両方を増大させるという有力な証拠を示す。
【0133】
実施例4.ActRIIB(25−131)−hFcはアンドロゲン除去のマウスモデルにおいて筋量減少を抑制する
本出願人らは、ActRIIB(25−131)−hFcが筋量減少を抑制する能力を、アンドロゲン除去(男性の進行前立腺癌の標準的な治療的介入)のマウスモデルにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)に精巣摘除(ORX)または偽手術を施し、TBSビヒクル、ActRIIB(25−131)−hFc(10mg/kg)、またはその完全長マウス対応物ActRIIB(20−134)−mFc(10mg/kg)で週2回、皮下処置した。除脂肪組織量を全身のNMRスキャンによって測定した。いずれかのActRIIB−Fc形態で4週間処置したORXマウスでは、ベースラインからの除脂肪組織量の増加が示され、これは、同期間でORX対照において減少が観察されたことと比べると高度に有意であった(図7)。偽処置対照と比べて同様に高度に有意な増加が、生殖腺非処置条件下でも、両方のActRIIB−Fc形態で観察された(図7)。このような結果は、このアンドロゲン除去モデルにおいて、ActRIIB(25−131)−hFcが、その完全長対応物ActRIIB(20−134)−mFcと同程度に有効に除脂肪組織量を増加させ(筋量減少を抑制し)得ることを示す。
【0134】
実施例5.ActRIIB(25−131)−hFcは食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて身体組成を改善する
本出願人らはまた、ActRIIB(25−131)−hFcが筋肉量を増大させ、脂肪量を低減させる能力を、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて調べた。雄マウス(n=10/群)に標準飼料食餌または高脂肪食餌のいずれかを摂取させ、TBSビヒクルまたはActRIIB(25−131)−hFc(10mg/kg)で週2回、腹腔内処置した。除脂肪組織量および脂肪量を全身のNMRスキャンによって測定した。高脂肪食餌下のマウスをActRIIB(25−131)−hFcで4週間処置すると、25%より多くの除脂肪組織量の増加がもたらされたのに対し、ビヒクル処置では2%の増加であった(図8)。ビヒクルと比べたとき同様の結果が、ActRIIB(25−131)−hFcを用いた対照食餌下のマウスでも得られた(図8)。さらに、処置の継続により脂肪過多症が改善されることがわかった。ビヒクルと比べると、12週間のActRIIB(25−131)−hFc処置により、高脂肪食餌下のマウスならびに対照食餌下のマウスにおいて、脂肪量がおよそ半分減少した(図9)。
【0135】
総合すると、このようなデータは、ActRIIB(25−131)−hFcが、アンドロゲン除去および高脂肪摂取などのさまざまな条件下において、インビボで身体組成を改善するために使用され得ることを示す。
【0136】
実施例6:ActRIIB(25−131)−hFcは、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて血清脂質、インスリンおよびアディポネクチンを正常化する
本出願人らは、臨床的に重要な脂質、インスリン、アディポネクチンの血清濃度および他の代謝エンドポイントに対するActRIIB(25−131)−hFcの効果を、雄の高脂肪食餌摂取マウスにおいて調べた。10週齢のC57BL/6マウスの体重をマッチングさせ、ActRIIB(25−131)−hFc(n=10)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=7)で週2回、10mg/kgで60日間皮下処置した。この期間中、マウスに、4.5%の脂肪を含む標準飼料ではなく58%の脂肪を含む食餌を無制限に摂取させた。
【0137】
ActRIIB(25−131)−hFc処置により、一群の注目に値する代謝上の効果がもたらされた。高脂肪食餌摂取マウスでは、ActRIIB(25−131)−hFcによって、病的に高いトリグリセリド、遊離脂肪酸、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL)の血清濃度が低下し(図10〜13)、ほとんどの場合で、これらのパラメータは、標準食餌摂取マウスで観察されるレベルまで正常化された。重要なことに、ActRIIB(25−131)−hFc処置によって、高脂肪−食餌マウスにおいてインスリン濃度も正常化され(図14)、アディポネクチンの濃度が、標準食餌摂取マウスでの濃度よりもさらに上まで有意に増大した(図15)。循環アディポネクチンレベルは脂肪量/肥満と逆比例的に変動することがわかっているため、アディポネクチンは身体組成の枢要なバイオマーカーであり、また、アディポネクチンは標的組織においてインスリン感受性を向上させる。また、ActRIIB(25−131)−hFcにより、脂肪細胞の状態の別の主要な指標であるレプチンの血清濃度もほぼ50%低下した(P<0.05)。最後に、前述の効果には、有益な身体組成の変化(核磁気共鳴(NMR)によってベースライン時および48日目に測定)が付随した。高脂肪食餌条件下では、ビヒクル処置対照の総脂肪量は、この48日間で3倍になり、ActRIIB(25−131)−hFc処置によってこの増加がほぼ40%削減された。48日目までに、総脂肪量は、ActRIIB−Fc処置マウスでは体重の27%であったのに対し、対照マウスでは39%であり、一方、除脂肪組織量は、ActRIIB(25−131)−hFc処置マウスでは体重の59%であったのに対し、対照マウスでは55%であった。したがって、最終結果は、高脂肪食餌条件下における身体組成がより健常になった。
【0138】
前述の血清パラメータについて、ActRIIB(25−131)−hFcでは、一貫して、この同じ試験で同様に評価したActRIIB(20−134)−hFcよりも好成績であった。このように、ActRIIB(25−131)−hFcでは同じ用量のActRIIB(20−134)−hFcと比べて、トリグリセリドレベルはほぼ6倍大きく、FFAレベルはほぼ2倍大きく、HDLレベルはほぼ4倍大きく、インスリンレベルは2倍超大きく、アディポネクチンレベルはほぼ1.5倍大きく改善された。
【0139】
実施例7:ActRIIB(25−131)−hFcは、食餌誘導性肥満のマウスモデルにおいて白色脂肪内での熱産生性を誘導する
上記の試験(実施例6)において、本出願人らはまた、白色脂肪組織の熱産生性に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果も調べた。高脂肪食餌条件下では、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、白色脂肪組織において、熱産生能と整合する組織学的変化および遺伝子発現プロフィールが誘発された。図16に示すように、精巣上体白色脂肪の組織学的検査により、ActRIIB(25−131)−hFcによって脂質滴の大きさが低減され、多房性脂肪細胞集団(褐色脂肪の顕著な特徴)の形成が引き起こされることが示された。さらに、この組織の免疫組織化学的解析により、ActRIIB(25−131)−hFc処置の結果、多房性脂肪細胞と単房性脂肪細胞の両方において、UCP1の広範な細胞質内誘導が示された(図16)。
【0140】
このような組織学的変化には、精巣上体白色脂肪における熱産生および代謝の枢要な調節遺伝子の発現の有意な変化(定量的RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)によって測定)が随伴した。高脂肪食餌下のマウスでは、ActRIIB(25−131)−hFc処置によりUCP1 mRNAレベルがビヒクルと比べて60倍より大きく増大し(図17)、これは、このマウス系統が他のマウス系統と比べて、枢要な白色脂肪貯蔵部において重度に鈍化されたUCP1および褐色脂肪細胞の誘導を示すため(Guerraら,1998,J Clin Invest 102:412−420;Xueら,2007,J Lipid Res 48:41−51)、特別に印象的な変化である。また、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、サーチュインSIRT−1(サイレント情報調節因子2,ホモログ1)をコードするmRNAのレベルが増大した。サーチュインSIRT−1は、高脂肪食餌によって誘導される代謝性損傷を防御するエネルギー感受性のマスター調節因子(デアセチラーゼ)であり(Pflugerら,2008,Proc Natl Acad Sci USA 105:9793−9798)、脂肪酸代謝の重要な制御因子であるとされている(Rodgersら,2008,FEBS Lett 582:46−53)。特筆すべきことに、褐色脂肪組織におけるミトコンドリアバイオジェネシスおよび熱産生能に必要な多くの遺伝子の発現をさらに制御している十分文献に示されたSIRT−1の標的である(Uldryら,2006,Cell Metab、3:333−341)PGC−1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベータ−1α)をコードするmRNAのレベルもまた、ActRIIB(25−131)−hFc処置により増大した。注目すべきことに、白色脂肪細胞でのPGC−1αの強制発現により、褐色脂肪細胞におけるものと非常によく似た遺伝子発現(UCP1など)の熱産生的プログラムが誘導されることが示された(Hansenら,2006,Biochem J 398:153−168)。本発明の試験では、ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌条件下において、白色脂肪組織におけるPGC−1α遺伝子の発現が標準食餌摂取マウスにおけるものと識別できないレベルまで回復された。
【0141】
処置関連のさらなる変化は、白色脂肪組織における発現プロフィールの改変と有益なホルモン上および代謝上の効果との間に顕著な関連性を構成するものである。したがって、精巣上体白色脂肪において、SIRT−1の標的であり、かつアディポネクチン発現の枢要な誘導因子でもある転写因子である(Qiaoら,2006,J Biol Chem 281:39915−39924)Foxo−1(フォークヘッドボックス含有タンパク質Oサブファミリー−1)をコードするmRNAのレベルがActRIIB(25−131)−hFcにより増大した。Foxo−1 mRNAの誘導と整合して、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、白色脂肪におけるアディポネクチンのmRNAレベルが上昇し(図18)、これは、この動物におけるアディポネクチンの循環レベルの増大(図15,実施例6)、標的組織におけるインスリン感受性の向上、およびインスリン濃度の正常化(図14,実施例6)を説明するのに役立つ。要約すると、高脂肪食餌条件下において、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、1)白色脂肪組織において熱産生能と整合する組織学的変化および遺伝子発現プロフィール、ならびに2)広範なホルモンパラメータおよび代謝パラメータの有益な変化がもたらされた。
【0142】
実施例8:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける肝臓および筋肉に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、広くはメタボリックシンドロームの肝臓症状であると考えられており、かつ多くの場合で有害な効果を伴う肝臓内の脂肪蓄積(脂肪症)を特徴とする一連の増加しつつある一般的な肝臓障害である。あるサブセットのNAFLD患者は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と称される炎症性の病状が発症している患者であり、非アルコール性脂肪性肝炎は、さらに肝線維症、肝硬変および肝細胞癌腫に進行することがあり得る(Perlemuterら,2007,Nat Clin Pract Endocrinol Metab 3:458−469)。上記の試験(実施例6〜7)において、本出願人らは、高脂肪食餌と関連する肝臓脂肪症がActRIIB(25−131)−hFcにより抑止され得るかどうかを調べた。試験終了時、高脂肪食餌摂取マウスの肝臓組織には、Oil Red Oでの染色によって評価した際、多数の密集した脂質滴が示されたが、標準食餌摂取マウスでは肝臓内脂質沈着物の形跡は示されなかった(図19)。ActRIIB(25−131)−hFcで処置すると、肝臓内脂質の沈着がほぼ完全に逆転され、高脂肪食餌にもかかわらず肝臓組織の外観が正常化した。したがって、ActRIIB(25−131)−hFcは、高脂肪食餌によって引き起こされる肝臓脂肪症の有効な抑制因子であった。
【0143】
また、ActRIIB(25−131)−hFc処置により、この食餌誘導性肥満モデルにおいて筋肉量が増加し、他のモデルにおける所見(実施例3〜5)と整合した。具体的には、ActRIIB(25−131)−hFcにより、高脂肪食餌対照と比べて胸筋量は70%より多く(P<0.001)、腓腹筋量はほぼ40%(P<0.001)、大腿直筋量は25%より多く(P<0.001)増加した。これらの筋肉量の変化には、筋肉遺伝子発現の変化(腓腹筋組織においてRT−PCRによって測定)が随伴した。高脂肪食餌対照と比較すると、ActRIIB(25−131)−hFcにより、腓腹筋において、PGC−1α mRNAレベルおよびFoxo−1 mRNAレベルは、各々およそ50%(P<0.05)増加した。
【0144】
実施例9:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける内臓白色脂肪に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
内臓脂肪の蓄積は、皮下脂肪とは反対に、心血管疾患ならびに肥満関連障害(真性糖尿病、高脂血症、高血圧、およびメタボリックシンドロームなど)の発症に重要な役割を果している(Matsuzawaら,2006,FEBS Lett 580:2917−2921)。その位置のため、内臓(または腹腔内)脂肪は、肝門脈循環によって肝臓に容易に到達し、肝臓で代謝に影響を及ぼし、インスリン抵抗性を促進させ、脂肪症を引き起こし得る。したがって、上記のもの(実施例6〜8)と同様の試験において、本出願人らは、高脂肪食餌条件下において、内臓脂肪量と腹部皮下脂肪量(対比)に対する切断型バリアントActRIIB(25−131)−mFcの効果を調べた。9週齢のC57BL/6マウスを、ActRIIB(25−131)−mFc(n=20)(10mg/kg,s.c.)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=10)で週2回60日間処置した。投与開始前の7日間、マウスに、4.5%の脂肪を含む標準飼料ではなく58%の脂肪を含む食餌を無制限に摂取させた。また、標準飼料食餌に維持したさらなるマウス群(n=10)は、TBSビヒクルで処置し、食餌対照として追跡した。総体脂肪(核磁気共鳴(NMR)解析によって測定)に対するパーセンテージが群平均(すべてのマウスをNMR解析に供した)に最も近かったサブセットのマウス(n=4/群)について、脂肪体積をマイクロCTによって測定した。
【0145】
内臓脂肪および腹部皮下脂肪はどちらも、食餌およびActRIIB(25−131)−mFc処置により大きさが著しく変化した。試験中の途中まで(35日間)で得られたマイクロCT画像を3次元に再構成すると、内臓脂肪貯蔵部および皮下脂肪貯蔵部はともに、高脂肪食餌の結果、拡張したこと、ならびにActRIIB(25−131)−mFcにより、これらの増加が大きく逆転されたことが示される(図20)。試験終了時(60日間)に定量的に解析すると、ActRIIB(25−131)−mFcの効果は、高脂肪食餌単独と比べて、内臓脂肪(図21)と腹部皮下脂肪(図22)の両方で高度に有意であった。
【0146】
実施例10:食餌誘導性肥満のマウスモデルにおける褐色脂肪の特性に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
実施例9に記載の試験において、本出願人らはまた、高脂肪食餌条件下において、肩甲骨内褐色脂肪貯蔵部の特性に対するActRIIB(25−131)−mFcの効果を調べた。標準食餌と比較すると、高脂肪食餌では、褐色脂肪組織の肩甲骨間貯蔵部にいくつかの変化がもたらされ、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、このような各変化は、完全に逆転されるか、または大きく逆転されるのいずれかとなった。具体的には、高脂肪食餌により肩甲骨間貯蔵部の顕著な拡大が引き起こされるとともに、赤からピンク色に色が薄くなった(図23)。この食餌誘導性拡大は、褐色脂肪貯蔵部の量の倍加(図24)および密度の低下(図25)を反映していた。総体脂肪(核磁気共鳴(NMR)解析によって測定)に対するパーセンテージが群平均(すべてのマウスをNMR解析に供した)に最も近かったサブセットのマウス(n=4/群)について、貯蔵部密度をマイクロ−コンピュータ断層撮影(マイクロCT)によってインサイチュで測定した。ActRIIB(25−131)−mFc処置により、褐色脂肪の量(図24)および密度(図25)の食餌誘導性変化は完全に逆転されるとともに、該貯蔵部の大きさと色の食餌誘導性変化が大きく逆転された(図23)。このような結果は、高脂肪食餌条件下において、ActRIIB(25−131)−mFcが、おそらく健常な褐色脂肪機能と相関している特性を大きく、または完全に回復させ、したがって、褐色脂肪の質を改善する(褐色脂肪貯蔵部の全体的な大きさが減少するため)ことを示す。
【0147】
実施例11:加齢のマウスモデルにおける筋肉、骨、脂肪および代謝ホルモンに対するActRIIB(25−131)−mFcの効果
身体組成は、加齢に伴って予測可能な様式で変化する。正常な加齢依存性の筋肉量および筋力の低下(サルコペニアとして知られている)は、30歳くらいから始まり、60歳を過ぎると加速する(Stenholmら,2008,Curr Opin Clin Nutr Metab Care 11:693−700)。骨量および骨の強度も加齢とともに同様の低下を示し、高齢者では、骨粗鬆症のリスクの増大がもたらされる。総体脂肪量は、加齢とともに70歳くらいまで増加し、次いで、絶対量の点では減少するが、全体重量に対する割合はほぼ一定のままである(Cartwrightら,2007,Exp Gerontol 42:463−471)。他のモデルで観察され、また本明細書において記載した有効性に基づき、本出願人らは、筋肉、骨、脂肪およびインスリンレベルに対するActRIIB(25−131)−mFcの効果を、加齢のマウスモデルにおいて調べた。19ヶ月齢の雄C57BL/6マウスに、標準飼料食餌を無制限に摂取させ、ActRIIB(25−131)−mFc(n=16)(10mg/kg,s.c.)またはTBSビヒクル(n=15)で週2回8週間処置した。参照枠として、このマウス系統のメジアン推定寿命は、標準食餌条件下においておよそ27ヶ月であることが以前にわかっていた(Turturroら,2002,J Gerontol A Biol Sci Med Sci 57:B379−389)。
【0148】
ActRIIB(25−131)−mFc処置により、これらの高齢マウスにおいて、一連の注目に値する身体組成の変化および代謝ホルモン効果が生じた。全身NMR解析によって測定すると、除脂肪組織量は、対照マウスでは、試験期間中にわたって本質的に変化しなかったが、ActRIIB(24−131)−mFc処置マウスでは、7週間までにベースラインよりほぼ20%上まで進行的に増加した(図26)。この全身性効果と整合して、ActRIIB(25−131)−mFcにより、個々の筋肉群の量も、8週間目においてビヒクル処置対照と比べて有意に増加した(胸筋(55%増加)、大腿直筋(40%)、三頭筋(40%)、および腓腹筋(28%)など)。重要なことに、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、神経筋機能が改善された(確立されたプロトコル(http://jaxservices.jax.org/phenotyping/gripstrength_protocol.html)に従い、前肢握力試験によって測定)(図27)。
【0149】
いくつかの骨関連パラメータが、高齢マウスにおいてActRIIB(25−131)−mFc処置により改善された。ベースラインおよび8週目の時点でDEXA解析により測定すると、ActRIIB(25−131)−mFcにより全身の骨塩量が試験期間中にわたって増加したが、対照では本質的に変化しなかった(図28)。また、近位頚骨のマイクロCT解析により、8週間のActRIIB(25−131)−mFc処置によって近位頚骨の骨容量分率が、対照と比べて倍加する(P<0.01)ことが示された。
【0150】
ActRIIB(25−131)−mFcにより、高齢マウスにおいて脂肪に対して大きな効果が奏された。多数の時間点でNMR解析により測定すると、ビヒクル処置対照では、試験期間中にわたって総体脂肪量の進行性の減少がみとめられ(図29)、これは、かなり高齢のヒトでの所見と整合する。ActRIIB(25−131)−mFc処置によりこの変化が加速され、対照で観察されたものの2倍の大きさの減少が誘起された(それぞれ、−44%に対して−19%)(図29)。終了時点までに、ActRIIB(25−131)−mFcにより、精巣上体、鼡径部および腹膜後の個々の白色脂肪の貯蔵部の量が、48〜54%の範囲の量、有意に減少した。興味深いことに、ActRIIB(25−131)−mFc処置により、肩甲骨間褐色脂肪貯蔵部量もまた、ほぼ45%減少し(P<0.05)、食餌性肥満のマウスモデルのこの組織で得られた結果(実施例10)と類似していた。最後に、各群の代表的なサブセットのマウス(n=4)においてマイクロCT解析によって測定すると、ActRIIB(25−131)−mFcにより、腹部脂肪の内臓脂肪分の容量は65%(P<0.01)および腹部脂肪の皮下脂肪分の容量は49%(P<0.01)減少した。したがって、この加齢モデルにおいて、ActRIIB(25−131)−mFcにより重要な内臓脂肪区画が強く標的化された。
【0151】
また、ActRIIB(25−131)−mFcにより、高齢マウスにおいて、重要な代謝ホルモンの有益な変化ももたらされた。ActRIIB(25−131)−mFcでの8週間の処置により、循環アディポネクチン濃度がほぼ倍加し(P<0.001)、循環インスリン濃度が40%より大きく低下した(図30)。高い空腹時インスリン濃度(高インスリン血症)は、インスリン抵抗性の広く認められた代用尺度であり(Weyerら,2000,Diabetes 49:2094−2101)、アディポネクチン濃度の増大は、本発明の試験において、おそらく、インスリン感受性の改善に寄与している。グリケート付加ヘモグロビン(A1C)濃度は、この試験においてActRIIB(25−131)−mFcによって有意に低下し(図31)、それにより、この加齢モデルでのActRIIB(25−131)−mFc処置においてグルコース調節が改善されるさらなる証拠が得られた。
【0152】
実施例12:癌性悪液質のマウスモデルにおける除脂肪組織に対するActRIIB(25−131)−hFcの効果
悪液質は、筋肉および脂肪組織の減少に起因する望ましくない体重減少である。多くの腫瘍は、食欲減退および重度の筋量減少を伴い、悪液質を示す患者は非悪液質患者よりも予後が不良である。結腸癌細胞株CT26ではマウスにおいて著しい悪液質が誘導されるため、このマウスモデルにおいて、ActRIIB(25−131)−hFcを、異種移植片誘導性悪液質に対する潜在的効果について試験した。8週齢のBALB/cマウスに106個のColon−26腺癌腫(CT26)細胞/マウスを皮下注射した。腫瘍移植の2週間後、ActRIIB(25−131)−hFc(n=15)(10mg/kg,s.c.)またはTris緩衝生理食塩水(TBS)ビヒクル(n=13)での週2回の処置を開始した。さらなるBALB/cマウス群にはCT26細胞を受容させなかったが、上記のActRIIB(25−131)−hFcまたはビヒクルで処置した。ActRIIB(25−131)−hFcでの処置により、有意な体重の増加がもたらされ、これは試験中を通して維持された。腫瘍移植から5週間後、ビヒクル処置マウスでは、ベースラインから7%の除脂肪組織量の減少が示された(NMR解析によって測定)が、ActRIIB(25−131)−hFcで処置したマウスでは、ベースラインから27%の除脂肪量の増加が示された(図32)。脂肪量は群間で有意に異ならなかった。このような結果は、ActRIIB(25−131)−hFcは、腫瘍を有するマウスにおいて悪液質を軽減することができ、癌患者の悪液質を処置するための有効な治療剤となり得ることを示す。
【0153】
総合すると、このようなデータは、ActRIIB(25−131)−hFc融合タンパク質が、食餌誘導性肥満と関連している多くの病的代謝変化を逆転させ、それにより高カロリー摂取によって増悪する代謝性の病状を処置するために、TGF−ファミリーリガンドによるシグナル伝達のアンタゴニストとして使用され得ることを示す。さらに、ActRIIB(25−131)−hFcは、加齢または癌性悪液質と関連している病的代謝変化を処置するために使用され得る。
【0154】
引用による組み込み
本明細書において挙げた刊行物および特許はすべて、引用によりその全体が、あたかも個々の各刊行物または特許が具体的に個々に示されて引用により組み込まれているかのごとく、本明細書に組み込まれる。
【0155】
主題の具体的な実施形態を論考したが、上記の明細は例示であって限定的でない。当業者には、本明細書および以下の特許請求の範囲を考察すると多くの変形例が自明となろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、その均等物の全範囲および本明細書とともに、かかる変形例とともに参照することによって決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号6のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸。
【請求項2】
配列番号6のヌクレオチド73〜396を含むものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
配列番号4のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸。
【請求項4】
配列番号4のヌクレオチド73〜396を含むものである、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を含む培養細胞。
【請求項6】
哺乳動物細胞である、請求項5に記載の培養細胞。
【請求項7】
CHO細胞である、請求項5に記載の培養細胞。
【請求項8】
a.配列番号8の配列からなるアミノ酸配列または配列番号8と5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.哺乳動物細胞における配列番号4の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド;
c.哺乳動物細胞における配列番号6の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド
からなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項9】
パート(a)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
パート(b)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項11】
パート(c)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項12】
アミノ末端が配列ETRを有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、マウスにおいて統計学的に有意な除脂肪体重の増加を引き起こすものである、請求項8〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
除脂肪組織量の増加の平均が少なくとも2gである、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な脂肪量の減少を引き起こすものである、請求項8〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
脂肪量の減少の平均が少なくとも5gである、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清トリグリセリドレベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜16のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
トリグリセリドの減少の平均が少なくとも50mg/dlである、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清遊離脂肪酸レベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
遊離脂肪酸の減少の平均が少なくとも500マイクロモル/dlである、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清インスリンレベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
インスリンの減少の平均が少なくとも1ng/mlである、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
少なくとも1つのN結合糖を含むものである、請求項8〜22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
CHO細胞において産生させたものである、請求項8〜23のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
請求項8〜24のいずれか1項に記載の第2のポリペプチドと共有結合しているものである、請求項8〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
第2のポリペプチドと共有結合してホモ二量体を形成しているものである、請求項8〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
ActRIIBに由来する部分および1つ以上の異種部分を含むポリペプチドであって、該ActRIIBに由来する部分が、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項28】
前記異種部分が免疫グロブリンの定常ドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記異種部分が免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記異種部分がヒトIgG1のFcドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記ActRIIBに由来する部分が、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
請求項8〜31のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む、医薬調製物。
【請求項33】
筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体を処置するための方法であって、該被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、方法。
【請求項34】
除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を、除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を必要とする被験体において行なうための方法であって、該被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のための方法。
【請求項36】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の望ましくない体重増加と関連している障害を処置するための方法。
【請求項37】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の代謝障害を処置するための方法。
【請求項38】
患者が、以下の特徴:
d.高い血清トリグリセリドレベル;
e.高い遊離脂肪酸レベル;または
f.高い血清インスリンレベル
の1つ以上を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記代謝障害が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性および肥満からなる群より選択される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項1】
配列番号6のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸。
【請求項2】
配列番号6のヌクレオチド73〜396を含むものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
配列番号4のヌクレオチド73〜396の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸。
【請求項4】
配列番号4のヌクレオチド73〜396を含むものである、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸を含む培養細胞。
【請求項6】
哺乳動物細胞である、請求項5に記載の培養細胞。
【請求項7】
CHO細胞である、請求項5に記載の培養細胞。
【請求項8】
a.配列番号8の配列からなるアミノ酸配列または配列番号8と5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.哺乳動物細胞における配列番号4の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド;
c.哺乳動物細胞における配列番号6の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の発現によって産生させたポリペプチド
からなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項9】
パート(a)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
パート(b)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項11】
パート(c)のポリペプチドである、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項12】
アミノ末端が配列ETRを有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、マウスにおいて統計学的に有意な除脂肪体重の増加を引き起こすものである、請求項8〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
除脂肪組織量の増加の平均が少なくとも2gである、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な脂肪量の減少を引き起こすものである、請求項8〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
脂肪量の減少の平均が少なくとも5gである、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清トリグリセリドレベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜16のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
トリグリセリドの減少の平均が少なくとも50mg/dlである、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清遊離脂肪酸レベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
遊離脂肪酸の減少の平均が少なくとも500マイクロモル/dlである、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
10mg/kgの用量レベルで週2回、4週間処置した後、高脂肪食餌摂取マウスにおいて統計学的に有意な血清インスリンレベルの減少を引き起こすものである、請求項8〜20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
インスリンの減少の平均が少なくとも1ng/mlである、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
少なくとも1つのN結合糖を含むものである、請求項8〜22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
CHO細胞において産生させたものである、請求項8〜23のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
請求項8〜24のいずれか1項に記載の第2のポリペプチドと共有結合しているものである、請求項8〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
第2のポリペプチドと共有結合してホモ二量体を形成しているものである、請求項8〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
ActRIIBに由来する部分および1つ以上の異種部分を含むポリペプチドであって、該ActRIIBに由来する部分が、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸25〜131の配列と5個以下のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項28】
前記異種部分が免疫グロブリンの定常ドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記異種部分が免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記異種部分がヒトIgG1のFcドメインを含む、請求項27に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記ActRIIBに由来する部分が、配列番号1のアミノ酸25〜131の配列からなるアミノ酸配列を含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
請求項8〜31のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む、医薬調製物。
【請求項33】
筋量減少または不十分な筋成長と関連している障害を有する被験体を処置するための方法であって、該被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、方法。
【請求項34】
除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を、除脂肪量の増加または除脂肪量の減少速度の低減を必要とする被験体において行なうための方法であって、該被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の体脂肪含量の減少または体脂肪含量の増加速度の低減のための方法。
【請求項36】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の望ましくない体重増加と関連している障害を処置するための方法。
【請求項37】
被験体に有効量の請求項32に記載の医薬調製物を投与する工程を含む、被験体の代謝障害を処置するための方法。
【請求項38】
患者が、以下の特徴:
d.高い血清トリグリセリドレベル;
e.高い遊離脂肪酸レベル;または
f.高い血清インスリンレベル
の1つ以上を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記代謝障害が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性および肥満からなる群より選択される、請求項37または38に記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2012−529294(P2012−529294A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515067(P2012−515067)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037787
【国際公開番号】WO2010/151426
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037787
【国際公開番号】WO2010/151426
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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