説明

切断機

【課題】鉄骨柱間を溶接した後に、ジョイントプレートをバーナーで切断しなければならないため、施工性が悪く、また、柱を火熱で損傷させてしまう。
【解決手段】鉄骨柱等の固定部に着脱自在に取り付けされる固定手段1と、該固定手段1に取り付けられた移動手段2と、該移動手段2に摺動自在に取り付けされた切断手段3とを備える。移動手段2は、取付フレーム1a,1aの長手方向へ沿設された螺旋杆2aと、該螺旋杆2aの両遊端に突設された回転式ハンドル2bと、前記螺旋杆2aに摺動自在に螺着された本体フレーム4とを備え、ハンドル2bを手で回すことにより本体フレーム4が取付フレーム1aの長手方向へ変位すべく組み付ける。切断手段3は、駆動モータ3aに連動された駆動ローラ3bと、該駆動ローラ3bの下位に相対して設けられた一対の従動ローラ3c、3cと、両ローラ3b、3cとで回転するバンドソーとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄骨構造又は鉄筋コンクリート構造における鉄骨柱などの接続部に突設されるジョイントプレート、ガイドピース、吊りピース若しくはエレクションピース等の突起物をバーナーで切断することなく簡単かつ平滑に切断することができる有用な切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斯かる鉄骨柱の切断にあっては、例えば、角形鉄骨柱の接合すべき端部に、柱長手方向に沿ったジョイントプレートを溶接し、上下に接する鉄骨柱間をこのプレートの両面に添え付けたスプライスプレートをボルトで締結することにより、エレクションピースを仮止めしているため、鉄骨柱間を溶接した後、前記ジョイントプレートは、柱表面から10mm前後離れた位置からガスバーナーで切断しているのが現状である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−185114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の切断方法にあっては、鉄骨柱間を溶接した後に、全ジョイントプレートをバーナーで切断しなければならないため、施工性が悪く、柱を火熱で損傷させてしまったり、粉塵、煙、火炎が発生してしまうなどの問題を有する。
【0004】
しかも、従来の切断方法では、ジョイントプレートの根本から切断できないため、柱の表面に切断した同プレートの切断跡(凸部)が段差となって残存してしまい、また、そのサンダー等の仕上げ工事に時間を要すると共に、長時間に亘り騒音公害を来してしまうなど社会問題にもなっている。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、火炎のおそれなく簡単かつ平滑にジョイントプレート、ガイドピース、エレクションピース若しくは吊りピースなどの突起物を段差無く切断することができ有用な切断機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とする構成は、鉄骨柱等の鉄骨構造の固定部に着脱自在に取り付けされる固定手段と、該固定手段に支持された取付フレームと、該取付フレームに設けられた切断手段と、該切断手段を所定方向に移動せしめる移動手段とを備えてなる切断機に存する。
【0007】
また、前記切断手段は、駆動モータに連動された駆動ローラと、該駆動ローラと一定間隔をおいて設けられた従動ローラと、該従動ローラと前記駆動ローラとを介して起動するバンドソーと、両ローラの間でエレクションピース等の突起物を許容する切断開口部とを備えるのが良い。
【0008】
更に、前記移動手段は、取付フレームの長手方向端縁に沿って平行に配設された回転軸と、該回転軸の遊端に突設された回転式ハンドルと、前記回転軸に摺動自在に螺着された本体フレームとを備えるのが良い。
【0009】
また、前記切断開口部には、同切断開口部に支持されるベース部と、一端側が該ベース部に支持され他端側が水平方向へ延出する取付板と、該取付板に着脱自在に支持されてバンドソーの浮き上がりを規制するガイド部とを備えてなるアタッチメントを付設しておくのが良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の切断機は、鉄骨柱等の鉄骨構造の固定部に着脱自在に取り付けされる固定手段と、該固定手段に支持された取付フレームと、該取付フレームに設けられた切断手段と、該切断手段を所定方向に移動せしめる移動手段とを備えてなることによって、移動手段の小さな力で切断手段を移動させることができるため、前記エレクションピース等の突起物を段差無く切断できるといった効果を奏するものであり、また、従来の如くバーナーで切断する手間が省ける分、煙、火炎が発生してしまうなどの危惧をも解消できる。
【0011】
また、前記切断手段が、駆動モータに連動された駆動ローラと、該駆動ローラと一定間隔をおいて設けられた従動ローラと、該従動ローラと前記駆動ローラとを介して起動するバンドソーと、両ローラの間でエレクションピース等の突起物を許容すべく形成された切断開口部とを備えてなることによって、バンドソーが突起物の根本へ位置して面一に切断することができるため、従来の如く柱の表面に突起物の切断跡が大きく残存してしまうといった問題が解消され、また、その分、サンダー等の仕上げ工事に要する時間を短縮でき、一日の切断量が増やせるため、より工期の短縮化が可能になる他、目隠し処理、最終仕上げ或いは耐火被覆工事も美麗にすることができる。
【0012】
更に、前記移動手段が、取付フレームの長手方向端縁に沿って平行に配設された回転軸と、該回転軸の遊端に突設された回転式ハンドルと、前記回転軸に摺動自在に螺着された本体フレームとを備えることによって、前記ハンドルを手で回転させるだけで本体フレームが円滑に移動するため、同本体フレームに付設された切断手段を介して突起物を簡単に切断することができるといった効果を奏するものである。
【0013】
また、前記切断開口部には、同切断開口部に支持されるベース部と、一端側が該ベース部に支持され他端側が水平方向へ延出する取付板と、該取付板に着脱自在に支持されてバンドソーの浮き上がりを規制するガイド部とを備えてなるアタッチメントを付設すれば、ジョイントプレートの根本から上手く切断できるといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
鉄骨構造における鉄骨柱等の固定部に着脱自在に取り付けされる固定手段と、該固定手段に取り付けられた移動手段と、該移動手段に摺動自在に取り付けされてガイドピース、エレクションピース等の突起物を切断せしめる切断手段とを備える。前記切断手段は、駆動モータに連動された駆動ローラと、該駆動ローラと相対して設けられた従動ローラと、該従動ローラと前記駆動ローラとで回転するバンドソーと備え、ガイドピース、エレクションピース等の突起物の長手方向に沿って切断手段を移動せしめるように組み付けるのが良い。
【実施例】
【0015】
次に、本発明に係る切断機の実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る切断機であり、この切断機Aは、図1乃至図2に示すように、鉄骨柱等の固定部B(図4(b)参照)に着脱自在に取り付けされる固定手段1と、該固定手段1に取り付けられた移動手段2と、該移動手段2に摺動自在に取り付けされた切断手段3とを備える。
【0016】
固定手段1は、長手方向に延びた取付フレーム1a、1aと、該取付フレーム1a,1aに垂下された取付脚1b、1bと、該取付脚1b、1bに突設された電磁石1cとを備えている。この電磁石1cは、電磁スイッチ1dのオンオフ操作の切り替えで、鉄骨柱の固定部Bに着脱自在に吸着できるものである。
【0017】
移動手段2は、取付フレーム1a,1aの長手方向へ沿設された回転軸2aと、該回転軸2aの両遊端に突設された回転式ハンドル2bと、前記回転軸2aに摺動自在に螺着された後述の本体フレーム4とを備えている。回転軸2aは、外周に螺旋溝が刻設されているため、回転ハンドル2bを手で正逆方向へ回すことにより本体フレーム4が取付フレーム1aの長手方向へと遠近自在に変位するのである。
【0018】
切断手段3は、本体フレーム4に保持された駆動モータ3aと、該駆動モータ3aに連動された駆動ローラ(主プーリー)3bと、該駆動ローラ3bの下位に相対して設けられた一対の従動ローラ(ガイドプーリー)3c、3cと、該従動ローラ3c、3cと前記駆動ローラ3bとで回転するバンドソー(カッター)3dとを備えている。
【0019】
駆動モータ3aは、垂設する本体フレーム3cに対して直交するように付設されており、駆動軸側にベアリングケース3e(図4(a)参照)を介して駆動ローラ3bが付設されている。
【0020】
駆動ローラ3bは、従動ローラ3c,3cよりも大径に形成されたプーリからなり、従動ローラ3c,3cと伝動すべく回転式のバンドソー3dが掛け回されている。
【0021】
従動ローラ3c,3cは、図4(b)に示すように、本体フレーム4に形成された横長の取付孔4bに螺合されるロックボルト5及びロックナット6を介して水平方向へ移動できるように取り付けされており、かつ、テンションボルト7を緩めることでその固定位置を変位できるため、バンドソー3dのテンション調整が簡単にできると共に、同バンドソー3dの取り替えの際にも便利になることは云うまでもない。
【0022】
バンドソー3dは、例えば、ローラ式の回転カッターからなり、前記両ローラ3b,3cを介して高速に回転されるため、通常はベルトカバー(図示せず)で覆うのが良い。
【0023】
本体フレーム4は、中央位置に下端縁が開放された切断開口部4aが形成されている。この切断開口部4aは、ガイドピース、ジョイントピース若しくはエレクションピース等の突起物C(図4(b)参照)を許容できる大きさに形成されており、切断手段3が移動する際、同突起物Cとの衝突を避けるように開口されている。
【0024】
このように構成される本実施例の切断機Aは、切断したいエレクションピース等の突起物Cに対し、電磁石1cの電磁スイッチ1dを入れて鉄骨柱等の固定部Bに吸着し、次いで、バンドソー3dの高さ調整を確認した後、駆動モータ3aのスイッチを入れ、次いで、回転ハンドル2bを回すことで、突起物Cに沿って切断手段3が移動し、バンドソー3dで同突起物Cを根本から平滑(面一)に切断することができる。
【0025】
また、動作中、バンドソー3dが破断したり、また、ベース異常が発生した時にはセンサー(図示せず)が作動して駆動モータ3aなどを停止するように安全性についても考慮されていることは云うまでもない。
【0026】
次に、本発明の第2実施例を図5乃至図6を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするため、前述した第1実施例と同一部分は同一符号で示し、構成の異なる処のみを新たな番号を付して以下に説明する。
【0027】
本体フレーム4の切断開口部4aには、図5に示すように、アタッチメント8,8が相対向して取り付けられている。このアタッチメント8,8は、同切断開口部4aに支持されるベース部8aと、一端側が該ベース部8aに支持されて水平方向へ突設される取付板8bと、バンドソー3dの上面に立ち塞がるべく同取付板8bの底面側に螺着されたガイド部8cとから構成されている。
【0028】
また、ガイド部8cの長手方向には、図6(c)に示すように、バンドソー3d等の切断刃の厚みを許容する大きさに形成された遊嵌スリット8dを備えており、この遊嵌スリット8dに案内されることでバンドソー3dの回転に起因する浮き上がりを防止することができる。
【0029】
このように本発明の切断機では、コンパクトでありながらも、簡単にエレクションピース等の突起物Cを根元から段差無く切断できるなど、従来に比して作業条件が大幅に改善されると共に、従来の如くバーナーで切断する手間が省ける分、煙、火炎が発生してしまうなどの心配もなく、しかも、従来の切断法で問題となっていた柱の表面に切断したプレートの切断跡(凸部)が段差として残存してしまうこと、その分、サンダー等の仕上げ工事に時間を要すること、また、長時間に亘り騒音公害を来してしまうことの全てを解消でき、更には、一日の仕事量(切断量)が増やせるため、より工期の短縮化が可能になる他、目隠し処理、最終仕上げ或いは耐火被覆工事も美麗にすることができるのである。
【0030】
尚、本発明の切断機は、本実施例に限定されることなく、本発明の目的の範囲内で自由に設計変更できるものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。例えば、本実施例では切断手段3に横型(水平式)の駆動モータ3aを使用しているが、これに限定されることなく、切断作業の邪魔にならないように縦型(垂直式)にしても良い。更には、エアーレギュレータ(図示せず)や電動ローラ(図示せず)などを使用して切断手段3を自動走行できるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る切断機の第1実施例を示す正面図である。
【図2】同切断機の側面図ある。
【図3】同切断機の平面図である。
【図4】図4(a)は本実施例で使用する従動ローラの取付状態を示す説明図、図4(b)は同従動ローラの変位調整を示す説明図である。
【図5】図5(a)は本発明に係る切断機の第2実施例を示す正面図、図5(b)は同平面図である。
【図6】図6(a)は本実施例で使用するアタッチメントの平面図、図6(b)は遊嵌スリットを示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 固定手段
1a 取付フレーム
1b 取付脚
1c 電磁石
1d 電磁スイッチ
2 移動手段
2a 回転軸
2b 回転式ハンドル
3 切断手段
3a 駆動モータ
3b 駆動ローラ
3c 従動ローラ
3d バンドソー
3e ベアリングケース
4 本体フレーム
4a 切断開口部
4b 取付孔
5 ロックボルト
6 ロックナット
7 テンションボルト
8 アタッチメント
8a ベース部
8b 取付板
8c ガイド部
8d 遊嵌スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱等の鉄骨構造の固定部に着脱自在に取り付けされる固定手段と、該固定手段に支持された取付フレームと、該取付フレームに設けられた切断手段と、該切断手段を所定方向へ移動せしめる移動手段とを備えてなることを特徴とする切断機。
【請求項2】
前記切断手段は、駆動モータに連動された駆動ローラと、該駆動ローラと一定間隔をおいて設けられた従動ローラと、該従動ローラと前記駆動ローラとを介して起動するバンドソーと、両ローラの間でエレクションピース等の突起物を許容する大きさに形成された切断開口部とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の切断機。
【請求項3】
前記従動ローラは、本体フレームの下端側に変位自在に組み付けられていることを特徴とする請求項2に記載の切断機。
【請求項4】
前記移動手段は、取付フレームの長手方向端縁に沿って平行に配設された回転軸と、該回転軸の遊端に突設された回転式ハンドルと、前記回転軸に摺動自在に螺着された本体フレームとを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の切断機。
【請求項5】
前記切断開口部には、同切断開口部に支持されるベース部と、一端側が該ベース部に支持され他端側が水平方向へ延出する取付板と、該取付板に着脱自在に支持されてバンドソーの浮き上がりを規制するガイド部とを備えてなるアタッチメントを有することを特徴とする請求項2に記載の切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−266003(P2006−266003A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88559(P2005−88559)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(599115376)
【Fターム(参考)】