説明

切断機

【課題】薄物のワークを切断するに際して、その切断面をキレイに仕上げることができる切断機を提供する。
【解決手段】本切断機Aは、下刃(固定刃)1に相対して上刃(移動刃)2を交叉させて薄物のワークWを切断するものであって、機台3のテーブル31に保持された下刃1と、機台3の上方に所定のシャー角αをもって保持され、且つスイングしながら下降するように設けられた上刃2と、上刃2の内側に設けられ、テーブル31上に搬送された薄物のワークWを上から押さえるワーク押さえ機構9とを備える。そして、ワーク押さえ機構9によりワークWを押えて移動阻止した状態で、上刃2をスイングしながら下降させて上刃2の刃先を斜めから下刃1に交叉させると共に上刃2の切り込み角度を徐々に小さくさせてワークWを一端から他端へ順次に引き切りするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定刃に相対して移動刃を交叉させて薄物のワークを少量枚ずつ切断する切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の切断機として、図3に示すシャーリングマシン100が知られている。このシャーリングマシン100は、下刃(固定刃)101に相対して一定のシャー角αをもたせた上刃(移動刃)102を昇降機構105により垂直に昇降自在に設けたものである。そして、上刃102と下刃101の間に板金等のワークWを配置して上刃102を垂直降下させて下刃101に交叉させると(図4参照)、シャー角αをもつ上刃102でワークWを左右の一端から他端へ押し切るように剪断する。このようにして一定のシャー角αでワークWを一端から他端まで切り込んでいくので、ワークWを円滑に切断することができる。
【特許文献1】特開平7−100706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、アルミ箔等の金属箔、プラスチックフィルム、半導体用フィルム、液晶用偏光フィルム等の薄物を切断する場合、切断面がキレイであることが求められている。しかしながら、これら薄物のワークWを上述した従来のシャーリングマシン100により切断する場合は、剪断荷重によりワークWの切り口が破断するため、その切断面をキレイに仕上げることが困難であった。そして、刃物(上刃102、下刃101)の切れ味が少しでも鈍くなると、ワークWの切り口の破断が著しくなり、切断寸法にもバラツキが発生するという問題があった。また、ワークWは、上刃102で押し切られることから、そのため、切断終盤でのワークWの切り口の破断が著しくなり、端から端まで一様にキレイな切断面を得ることが困難であった。
【0004】
本発明は、上述の諸事情に鑑みてなされたものであり、薄物のワークを切断するに際して、その切断面をキレイに仕上げることができる切断機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る切断機は、
固定刃に相対して移動刃を交叉させて薄物のワークを切断する切断機であって、
移動刃をシャー角をもたせてスイングしながら下降するように設けると共に、この移動刃の内側にはワークを押えるワーク押さえ機構を設け、前記ワーク押え機構によりワークを押えて移動阻止した状態で、前記移動刃をスイングしながら下降させて移動刃の刃先を斜めから固定刃に交叉させると共に移動刃の切り込み角度を徐々に小さくさせてワークを一端から他端へ順次に引き切りする構成としたものである。
【0006】
上記構成によれば、移動刃を引き込むようにしてワークを切断するので、ワークに対する切断時の荷重が大幅に軽減される。従って、ワークの切り口の破断が抑えられて切断面をキレイにすることができる。
しかも、切断時は移動刃の切り込み角度を徐々に小さくさせていくので、切断終盤でのワークに対する切断時の荷重も大幅に軽減される。従って、切断終盤での切り口の破断が抑えられて切断面を一様にキレイにすることができる。
さらに、移動刃をスイングさせてワークを切断することから、従来のシャーリングマシンの如く移動刃を垂直降下させる場合に比べて、移動刃を支持する各部に加わる負荷を少なくすることができる。
【0007】
前記固定刃は、ワークが配置される上面を水平に形成すると共に、移動刃と交叉する刃先の角度を鋭角に形成してもよい。
この場合、固定刃の刃先に逃げ角が形成されるので、固定刃に移動刃が交叉する際の摩擦が軽減される。従って、ワークに対する切断時の荷重が一層軽減され、ワークの切り口の破断が抑えられてキレイな切断面を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、切断時のワークに対する切断の荷重が大幅に軽減されることから、薄物のワークであっても切り口の破断が抑制されて切断面をキレイに仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
図1、図2に示すように、実施の形態による切断機Aは、下刃(固定刃)1に相対して上刃(移動刃)2を交叉させて薄物のワークWを切断するものであって、機台3のテーブル31に保持された下刃1と、機台3の上方に所定のシャー角αをもって保持され、且つスイングしながら下降するように設けられた上刃2とを備える。
【0010】
下刃1は、上面が水平に形成されてテーブル31の上面と面一となっており、上刃2と交叉する刃先の角度θ2が鋭角(例えば、85度〜87度)に設定されている(図2参照)。従って、下刃1には、上刃2が交叉する刃先の刃面に逃げ角β(例えば、3度〜5度)が形成されている。また、この下刃1には、その下部に押しボルト等で構成する上下調整ネジ11が取り付けられている。これにより、下刃1が摩耗しても上下調整ネジ11によって下刃1の上下位置を適宜に調整して切れ味を維持させることができる。
【0011】
上刃2は、刃物ホルダー4に複数のボルト41で取り付けられており、片刃の刃先の角度θ1が概ね30度〜35度に設定されている(図2参照)。刃物ホルダー4は、左右位置に2本のスイングアーム5a,5bによって軸支されて機台3に吊持されている。2本のスイングアーム5a,5bは、互いの取り付け角度が異なっており、刃物ホルダー4が傾斜姿勢に吊持されている。これにより、上刃2に所定のシャー角αを持たせている。この上刃2のシャー角αは、上刃2の刃先が下刃1の刃先に最初に位置したときに、2度〜5度となるように設定される。これにより、ワークWの切り込み開始端部に加わる荷重を抑えてワークWの切断を円滑に開始することができる。
なお、小型の切断機であって刃物ホルダーへの上刃の取り付けが難しい場合等には、上記刃物ホルダー4を使用せず、上刃2を2本のスイングアーム5a,5bによって軸支して機台3に吊持してもよい。
【0012】
また、一方のスイングアーム5aには、クランク機構6として、一端にクランク部62と連結するクランクアーム61の他端が軸支されている。これにより、このクランク部62をモータ等で駆動させると、刃物ホルダー4に保持された上刃2がスイングしながら下降される。このとき、シャー角αをもった上刃2は、傾きの下側となった端部方向(図1では左側)へ移動するようにスイングされる。そして、上刃2の刃先が下刃1の刃先に最初に位置したときに、上刃2が下刃1に対して進入角度kがおおよそ40度〜45度で進入するように2本のスイングアーム5a,5bが配設されている。これにより、ワークWの切り込み開始端部に加わる荷重を抑えてワークWの切断を円滑に開始することができる。
【0013】
また、機台3の前面の両端部には、刃物ホルダー4を摺動させるスライド板7a,7bが設置されている。これにより、刃物ホルダー4は、スイング動作時に両スライド板7a,7bに当接してスライドされるので、上刃2が前後にズレることなく下刃1と交叉され、且つ刃物ホルダー4及び上刃2を円滑にスイングさせることができる。
【0014】
また、切断機Aは、上刃2及び下刃1の後方に設けられ、薄物のワークWをテーブル31上の所定位置に搬送する上下一対の送りロール8a,8bと、上刃2の内側に設けられ、テーブル31上に搬送された薄物のワークWを上から押さえるワーク押さえ機構9とを備える。
【0015】
ワーク押さえ機構9は、押さえ部91と、この押さえ部91を昇降させるシリンダ92とを備えている。そして、この押さえ部91により、後方の一対の送りロール8a,8bによりテーブル31上の所定位置に搬送されたワークWを上から押さえて移動阻止状態に保持させる。これにより、ワークWの切断中にワークWがズレることを確実に防止することができる。
なお、一対の送りロール8a,8b及びワーク押さえ機構9は、図示しない機台3の所定箇所に支持されている。
【0016】
次に、上記切断機Aにより薄物のワークWを切断する動作を説明する。
ワークWが一対の送りロール8a,8bによりテーブル31上の所定位置に搬送されると、ワーク押さえ機構9によりワークWを移動阻止状態に押さえ、次いで、クランク部62を駆動させて上刃2をスイングしながら下降させる。すると、上刃2の刃先が斜めから下刃1に交叉されると共に上刃2の切り込み角度が徐々に小さくなってワークWが左右の一端から他端へ順次に引き切りされていく。
【0017】
このように、ワークWの切断に際して、上刃2を引き込むようにしてワークWが切断されるので、ワークWに対する切断時の荷重が大幅に軽減される。従って、ワークWの切り口の破断が抑えられて切断面をキレイにすることができる。また、ワークWを上刃2及び下刃1の各刃先に沿って真っ直ぐ切断することができ、切断寸法を端から端までキレイに揃えることができる。
【0018】
しかも、切断時は、上刃2をスイングさせることで上刃2の切り込み角度が徐々に小さくなっていくので、切断終盤でのワークWの切り口の破断が抑えられて切断面を一様にキレイにすることができる。
【0019】
また、上刃2をスイングさせてワークWを切断するので、従来のシャーリングマシン100(図3、図4)の如く上刃2を垂直降下させる場合に比べて、上刃2を支持する各部(刃物ホルダー4、スイングアーム5a,5b等)に加わる衝撃負荷を少なくすることができる。従って、切断時の騒音も小さく、且つこの切断機Aの耐久性も向上する。
【0020】
さらに、下刃1は、上刃2と交叉する刃先の角度θ2が鋭角に形成されているので、この下刃1の刃先に逃げ角βが形成され、上刃2がこの下刃1に交叉する際の摩擦が軽減される。従って、ワークWに対する切断時の荷重が一層軽減され、ワークWの切り口の破断が抑えられてキレイな切断面を得ることができる。
【0021】
なお、クランク部62が半回転を過ぎて初期位置に戻ると、上刃2及び刃物ホルダー4が上述のスイング下降時とは逆の動作をして元の上方位置に復帰する。
【0022】
以上詳述したように、本実施の形態による切断機Aによれば、切断時のワークWに対する切断の荷重が大幅に軽減されることから、薄物のワークWであっても切り口の破断が抑制されて切断面をキレイに仕上げることができる。例えば、厚さ1μm〜15μm程度の薄物のワークWでも、切断面がキレイに仕上がるように切断することができる。従って、この切断機Aは、特に、アルミ箔等の金属箔、プラスチックフィルム、半導体用フィルム、液晶用偏光フィルム等の如く、フィルム状の各種薄物をキレイな切断面で切断するのに好適に使用される。
【0023】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されず、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、スイングアーム5aの駆動をクランク機構6(クランクアーム61及びクランク部62)に代えて、シリンダ機構をスイングアーム5aに連結し、このシリンダ機構によってスイングアーム5aを駆動するようにしてもよい。
また、下刃1には、前後方向の位置調節機構を設けて上刃2との間のクリアランス調節が行えるようになっていてもよい。
また、下刃1には、上下方向の位置調節機構を設けてワークWの切れ具合の調節が行えるようになっていてもよい。
また、一対の送りロール8a,8b、ワーク押さえ機構、及び上刃2を取り付けた刃物ホルダー4等の駆動操作は、手動操作で行ってもよいし、全自動又は半自動で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態による切断機の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による切断機の要部構成を示す側面図である。
【図3】従来のシャーリングマシンの全体構成を示す正面図である。
【図4】図3の従来のシャーリングマシンにおける上刃と下刃を示す側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 下刃
2 上刃
3 機台
4 刃物ホルダー
5a,5b スイングアーム
6 クランク機構
7a,7b スライド板
8a,8b 送りロール
9 ワーク押さえ機構
11 上下調整ネジ
31 テーブル
A 切断機
W ワーク
α シャー角
β 逃げ角
θ1 上刃刃先角度
θ2 下刃刃先角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃に相対して移動刃を交叉させて薄物のワークを切断する切断機であって、
移動刃をシャー角をもたせてスイングしながら下降するように設けると共に、この移動刃の内側にはワークを押えるワーク押さえ機構を設け、前記ワーク押え機構によりワークを押えて移動阻止した状態で、前記移動刃をスイングしながら下降させて移動刃の刃先を斜めから固定刃に交叉させると共に移動刃の切り込み角度を徐々に小さくさせてワークを一端から他端へ順次に引き切りする構成とした切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の切断機において、
前記固定刃は、ワークが配置される上面を水平に形成すると共に、移動刃と交叉する刃面の角度を鋭角に形成した切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−107096(P2009−107096A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284072(P2007−284072)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】