説明

切粉・鉄粉の搬送装置

【課題】分割して構成する単位リニアモータ間において、切粉・鉄粉のスムーズな受渡し作用を行える切粉・鉄粉の搬送装置を提供すること。
【解決手段】溝部で分割されたそれぞれの単位リニアモータ20A、単位リニアモータ20Bを搬送方向に沿って順に配列する。単位リニアモータ20Aにはコイル組14A1とコイル組A2を配置し、単位リニアモータ20Bにはコイル組14B1とコイル組14B2を配置する。単位リニアモータ20の右端の半溝部111aにU相コイル13Uを巻回し、単位リニアモータ20Aと単位リニアモータ20Bとの間の連結溝部111bには、それぞれの単位リニアモータ20AのV相コイル13Vと単位リニアモータ20BのV相コイル13Vを共有して巻回する。そして、単位リニアモータ20Bの左端の半溝部111cには単位リニアモータ20BのW相コイル13Wを巻回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削盤で削られた切粉や研削盤で削られた鉄粉をタンクから排出する切粉・鉄粉の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削盤又は研削盤等の成形機械で削られた切粉・鉄粉等は、循環する冷却水によってタンクに回収される。タンク内の冷却水は循環されることから、通常、切粉や鉄粉を含まないように、切粉・鉄粉を分離して排出するようにしている。従来においては、図8〜9に示すように、切粉・鉄粉分離除去装置50は、回転可能な吸着ドラム型のオイルセパレータ55と呼ばれるものを使用して行われていた。このオイルセパレータ55は、特許文献1によっても示されているように、吸着ドラム56の周壁内に沿って、多数の鉄板57を設置し、吸着ドラム55の周壁内面位置側に対向して永久磁石58を鉄板の回転移動時に追従できるように設置している。また、吸着ドラム56の内面の他側には鉄板57の消磁装置として電磁石59を設置して構成されている。
【0003】
図9に示すように、このオイルセパレータ55を使用する切粉・鉄粉分離除去装置50は、タンク51内を切粉・鉄粉回収部52と冷却水送給部53とに2分割するとともに、オイルセパレータ55を切粉・鉄粉回収部52側に配置していた。切削盤又は研削盤等の成形機械54から、循環する冷却水とともにタンク51内に回収された切粉・鉄粉は、オイルセパレータ55によって永久磁石58で吸着ドラム56に吸着され、シュートの部位において手で剥ぎ取られることによって排出されていた。
【0004】
これによって、切粉・鉄粉が除去された冷却水は冷却水送給部53に流入され、冷却水がタンク51から成形機械54内に循環できることとなっていた。
【特許文献1】特開平5−57211号公報(2〜3頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているオイルセパレータ55は、希土類の磁石を使用しているため磁力が大きく、また複雑に構成されていることから高価なものとなっていた。従って、搬送装置を廉価にするために、本出願人は、リニアモータで移動磁界を形成することに注目している。この際、問題となることは、切粉・鉄粉の搬送距離が長いとリニアモータを構成する鉄心が長くなり、鉄心を製作する金型が高価になるとともにその取り扱いが困難なことであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、第1の目的は、移動磁界を形成して切粉・鉄粉をスムーズに搬送できる搬送装置を提供するものであり、第2の目的は、金型費用を廉価にするために分割した単位搬送装置を接続して構成するものであり、その際、切粉・鉄粉の各単位搬送装置間の受渡しをスムーズに行える切粉・鉄粉の搬送装置を提供することを目的とする。
【0007】
そのため、本発明に係る切粉・鉄粉の搬送装置は、
請求項1記載の発明では、搬送方向に対して直交する方向に複数の溝部が形成された鉄芯と、前記溝部に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させる切粉・鉄粉の搬送装置であって、
前記鉄芯が複数個に分割されるとともに、分割された単位の鉄芯に前記コイルを複数相で構成するコイル組を巻回することによって単位リニアモータが構成され、
前記単位リニアモータが切粉・鉄粉の搬送方向に沿って順に配列され、隣接する単位リニアモータにおける、前記鉄芯の端面が前記溝部で切断した分割面に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記コイル組が、U相コイル、V相コイル、W相コイルを有して三相交流電源に接続され、隣接する前記単位リニアモータ間を結ぶ溝部にいずれかの同相のコイルが共有して巻回されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明では、前記コイル組が、U相コイル、V相コイル、W相コイルを有して三相交流電源に接続され、隣接する前記単位リニアモータ間を結ぶ溝部にいずれかの単位リニアモータのコイルが単独に巻回されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明では、それぞれの単位リニアモータは電源に対して並列に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯に巻回されたコイルに位相の異なる交流電流、例えば、二相又は三相交流の電流を流すことによって合成磁界を発生させる。合成磁界は時間とともに移動する移動磁界を形成することから、搬送面の一端に移動した切粉・鉄粉は吸引されて搬送面上を磁力で移動することとなり、搬送装置の他端から外部に排出される。
【0012】
従って、搬送装置の一端を、例えば、冷却水とともに循環された切粉・鉄粉が流入されているタンク内に配置し、他端をタンク外に配置すれば、タンク内の切粉・鉄粉は外部に排出されて冷却水を機内に送給することができる。このように、切粉・鉄粉搬送装置は、鉄芯とコイル及び搬送面だけの構成で切粉や鉄粉を搬送できることから高価なオイルセパレータを使用することなく簡単で廉価に構成することができる。しかも、この搬送装置はオイルセパレータのメンテナンスを必要としないことから手間がかかることもない。
【0013】
また、この搬送装置では、鉄芯を分割し、分割した鉄芯に複数相のコイルから成るコイル組を巻回することによって単位リニアモータを構成している。そして、複数個のリニアモータを切粉・鉄粉の搬送方向に沿って配列することによって搬送装置を構成している。
【0014】
この際、単位リニアモータを順に配列する際、隣接する単位リニアモータどうしにおける対向する端面を、鉄芯の溝部を分割面として形成する。この場合、隣接する単位リニアモータ間で合成磁界を発生させて移動磁界を形成することができる。それによって、切粉・鉄粉の受渡しを確実に行うことができる。
【0015】
また、交流電源が三相交流電流の場合、単位リニアモータを構成するコイルが
U相コイル、V相コイル、W相コイルで構成され、前述の分割面とする溝部に巻回するコイルが、前記三相コイルのうち、いずれかの同相のコイルを共有して巻回されていれば、隣接する単位リニアモータは、数種類のものを製作することになり、単独で巻回されていれば、2種類のもので製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、一形態の鉄粉搬送装置の詳細を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、切粉・鉄粉分離搬送ライン1を示す簡略図面であり、成形機械としては一例として研削盤で説明する。研削盤で研削することによって発生する切り屑は主に鉄粉であるため、以下、「切粉・鉄粉」を「鉄粉」で説明し「切粉・鉄粉搬送装置」及び「切粉・鉄粉分離搬送ライン」を、「鉄粉搬送装置10」、及び「鉄粉分離搬送ライン1」とする。
【0018】
鉄粉分離搬送ライン1は、研削盤3と、研削盤3で研削材を研削することによって発生した鉄粉を冷却水とともに回収させるポンプ5と、鉄粉・冷却水を回収するタンク7と、タンク7内の鉄粉を外部に搬送して排出する鉄粉搬送装置10と、研削盤3とタンク7とをポンプ5を介して接続する回収経路8及び冷却水だけを研削盤3に送給する送給経路9とを備えている。
【0019】
実施形態の鉄粉搬送装置10は、一端をタンク7内に配置し他端をタンク7外に配置してタンク7内の鉄粉をタンク7内から分離してタンク7外に搬送可能に配置されている。
【0020】
鉄粉搬送装置10の基本的な構成は、図2に示すように、長手方向に沿って複数の溝部111とコア部112が順に形成された鉄芯11と、鉄芯11の溝部111に巻回されるコイル13と、前記鉄芯11の周りに配置されて鉄粉を搬送する搬送面151を備えたケース体15とを有して構成されている。
【0021】
そして、鉄芯11を長手方向に沿って複数に溝部111で分割し、分割された鉄芯11にコイル13を巻回することによって、単位リニアモータ20が構成される。この単位リニアモータ20を搬送方向に沿って順に配列し、それぞれの単位リニアモータ20にケース体15を装着することによって搬送装置10が構成される。
【0022】
単位リニアモータ20には、複数相(例えば2相又は3相)の交流電流が流れる1又は複数のコイル組が巻回されている。なお、以下の実施形態においては、交流電流に関して3相交流電流で説明するものとする。
【0023】
つまり、図3に示すように、鉄芯11に巻回されるコイル13は、電源U相に接続されるU相コイル13U、電源W相に接続されるW相コイル13W、電源V相に接続されるV相コイル13Vとしてそれぞれ配置され、U相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13Vで1組のコイル組14を構成している。
【0024】
そして、移動磁界を発生するためには、複数個のコイル組14を順に配列する際、隣接する一方のコイル組14の各コイル13と、他方のコイル組14の各コイル13との巻き方向を逆方向にすることが重要である。
【0025】
次に、上記のように構成された単位リニアモータ20を順に配列する際、単位リニアモータ20、20間で、鉄粉をスムーズに受け渡せる各形態を図4〜5に基づいて説明する。
【0026】
先ず、コイル組14を偶数個に組み込んで配列した単位リニアモータ20において、鉄芯11の分割面を溝部111で切断し、その連結溝部111に、対向する2つの単位リニアモータ20の同相のコイル13を共有して巻回する場合は、図4に示すように構成される。
【0027】
つまり、単位リニアモータ20A(図4における右側)と単位リニアモータ20B(図4における左側)が順に配列されるとともに、それぞれ電源Eに対して並列で接続されている。また、各単位リニアモータ20A、20Bにおいては、コイル組14はそれぞれ2個配置されている。
【0028】
この場合、単位リニアモータ20Aの右端の半溝部111aには、U相コイル13Uが巻回されている。つまり、右側から順に、第1のコイル組14A1のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13V、続いて第2のコイル組14A2のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13Vと、それぞれのコイル13が、2つの溝部111間を巻回するように並んでいる。また、単位リニアモータ20Aの左端の半溝部111bにはV相コイル13Vが巻回されている。
【0029】
また、単位リニアモータ20Aの場合、単位リニアモータ20Bに隣接しない側のコイル組14A1(右端)が、電源Eに接続され、各コイル13の巻き方向は、平面視、右巻き方向(時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き始め側が電源E側で巻き終わり側が反電源側、W相コイル13Wは、巻き始め側が反電源側で巻き終わり側が電源E側となっている。
【0030】
単位リニアモータ20Aにおける、単位リニアモータ20Bに隣接する側のコイル組14A2は中点結線され、各コイル13の巻き方向は、平面視、左巻き方向(反時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き終わり側で中点結線され、W相コイル13Wは、巻き始め側で中点結線されている。
【0031】
一方、単位リニアモータ20Bの場合、隣接する単位リニアモータ20A、20B間の連結溝部111bには、単位リニアモータAのV相コイル13Vと共有して単位リニアモータ20BのV相コイル13Vが巻回されている。つまり、右側から順に、第1のコイル組14B1のV相コイル13V、U相コイル13U、W相コイル13W、続いて第2のコイル組14B2のV相コイル13V、U相コイル13U、W相コイル13Wと、それぞれのコイル13が2つの溝部111間を巻回するように並んでいる。従って、左端の半溝部111cにはW相コイル13Wが巻回されることになる。
【0032】
単位リニアモータ20Bにおける、単位リニアモータ20Aに隣接する側のコイル組14B1は、電源Eに接続されている。各コイル13の巻き方向において、連結溝部111bで単位リニアモータ20Aのコイル組14A2のV相コイル13Vと共有しているV相コイル13Vは、平面視、右巻き方向(時計方向)に巻回され、U相コイル13UとW相コイル13Wは、平面視、左巻き方向(反時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き始め側において電源Eに接続され、W相コイル13Wは、巻き終わり側で電源Eに接続されている。
【0033】
また、単位リニアモータ20Bにおける、単位リニアモータ20Aに隣接していない側のコイル組14B2は、中点結線され、各コイル13の巻き方向において、V相コイル13Vは、平面視、左巻き方向(反時計方向)に巻回され、U相コイル13UとW相コイル13Wは、平面視、右巻き方向(時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き終わり側が中点結線され、W相コイル13Wは、巻き始め側が中点結線されている。
【0034】
つまり、単位リニアモータ20Aと隣接する単位リニアモータ20Bとの対向する部分においては、隣接するコイル組14A2と、コイル組14B1のコイルの巻き方向は、連結溝部111bで共有するV相コイル13V、13Vのみが逆方向で巻回されていることになる。
【0035】
従って、この形態(連結溝部にコイルが共有している形態)の場合、各単位リニアモータ20の右端に巻回されるコイルは、順に代わる事となり(例えば、第1組のリニアモータの右端コイルがU相であれば、第2組のリニアモータの右端コイルがV相となる。)、数種類の単位リニアモータを必要とする。
【0036】
この搬送装置10の場合、磁界は、単位リニアモータ20Bから単位リニアモータ20A側に向かって移動することとなり、鉄粉を搬送する場合は、鉄粉は左から右方向に搬送されることとなる。
【0037】
なお、図4の場合、コイル組14は2組だけであるが、4、6…個の場合でも隣接するコイル組14の関係は変わることがなく、2種類の単位リニアモータで単位リニアモータ20Aと単位リニアモータ20Bを製作して、それぞれ順に配置することになる。
【0038】
また、図4において、下側の図は単位リニアモータの側面視を示し、上側の図は巻き方向を表すための平面視を示したものである。
【0039】
次に、コイル組14を偶数個に組み込んで配列した単位リニアモータ20における鉄芯11の分割面を溝部111で切断し、その連結溝部111に、対向する2つの単位リニアモータ20のコイルを共有しない場合は、図5に示すように構成される。
【0040】
つまり、単位リニアモータ20C(図5における右側)と単位リニアモータ20D(図5における左側)が順に配列されるとともに、それぞれ電源Eに対して並列で接続されている。また、各単位リニアモータ20C、20Dにおいては、コイル組14はそれぞれ2個配置されている。
【0041】
この場合、単位リニアモータ20Cの右端の半溝部111dには、U相コイル13Uが巻回され、隣接する単位リニアモータ20間の連結溝部111eには、単位リニアモータ20D内において巻回されているU相コイル13Uの一部が巻回されている。
【0042】
つまり、単位リニアモータ20Cでは、右側から順に、第1のコイル組14C1のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13V、続いて第2のコイル組14C2のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13Vと、それぞれのコイルが2つの溝部111間を巻回するように並んでいる。なお、連結溝部111eには単位リニアモータ20Cのコイルは巻回されていない。
【0043】
また、単位リニアモータ20Cの場合、単位リニアモータ20Dに隣接しない側のコイル組14C1(右端)が、電源Eに接続され、各コイル13の巻き方向は、平面視、右巻き方向(時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き始め側が電源E側で巻き終わり側が反電源側、W相コイル13Wは、巻き始め側が反電源側で巻き終わり側が電源E側となっている。
【0044】
単位リニアモータ20Cにおける、単位リニアモータ20Dに隣接する側のコイル組14C2は中点結線され、各コイル13の巻き方向は、平面視、左巻き方向(反時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き終わり側で中点結線され、W相コイル13Wは、巻き始め側で中点結線されている。
【0045】
一方、単位リニアモータ20Dの場合、右端の連結溝部111eにはU相コイル13Uが巻回されている。なお、左端の半溝部111fは、コイルを共有しないため、単位リニアモータ20Dのコイルは巻回されていない。つまり、単位リニアモータ20Dでは、右側から順に、第1のコイル組14D1のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13V、続いて第2のコイル組14D2のU相コイル13U、W相コイル13W、V相コイル13Vが、2つの溝部111間を巻回するように並んでいる。
【0046】
単位リニアモータ20Cに隣接する側のコイル組14D1が中点結線され、各コイル13の巻き方向は、平面視、左巻き方向(反時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き終わり側において中点結線され、W相コイル13Wは、巻き始め側で中点結線されている。
【0047】
また、単位リニアモータ20Dにおける、単位リニアモータ20Cに隣接していない側のコイル組14D2は、電源Eに接続され、各コイル13の巻き方向は、平面視、右巻き方向(時計方向)に巻回されている。なお、U相コイル13UとV相コイル13Vは、巻き始め側が電源E側で巻き終わり側が反電源側、W相コイル13Wは、巻き始め側が反電源側で巻き終わり側が電源E側となっている。
【0048】
つまり、単位リニアモータ20Cと隣接する単位リニアモータ20Dとの対向する部分においては、隣接するコイル組14C2と、コイル組14D1のコイルの巻き方向は同一方向(左巻き方向)に向かって巻回されていることになる。
【0049】
従って、この形態の場合、連結溝部にコイルが共有していなければ、例えば、各単位リニアモータ20の右端に巻回されるコイル13は、同じ相のコイルを巻回することができるものの方向が逆向きとなるから、2種類の単位リニアモータを必要とする。
【0050】
なお、図5の場合、コイル組14は2組だけであるが、4、6…個の場合でも隣接するコイル組14の関係は変わることがなく、2種類の単位リニアモータで単位リニアモータ20Aと単位リニアモータ20Bを製作して、それぞれ順に配置することになる。
【0051】
また、図5において、下側の図は単位リニアモータの側面視を示し、上側の図は巻き方向を表すための平面視を示したものである。
【0052】
上記の単位リニアモータ20の周りに配置されるケース体15は、実施形態においては、角筒状に形成され単位リニアモータ20を囲うように形成されている。ケース体15は、電気抵抗の高い非磁性材、例えば、ステンレス製で形成され、図2における鉄芯11の上方に位置する面を搬送面151として形成する。
【0053】
このケース体15は、非磁性材以外に、弱磁性材、あるいは、磁性材であれば薄い厚みの鉄板であってもよい。弱磁性材の場合、透磁率1.01〜5500(望ましくは、1.01〜1000)の範囲であればよく、この範囲は、例えば、ステンレス製のケース体の表面を研削加工して磁性を帯びることを含むものである。
【0054】
また、薄板の鉄板は、その厚みが3.5mm以下のものであれば、切粉が留まらず搬送可能となる結果が実験により示されている。
【0055】
さらに、搬送面を鉄芯の上面あるいは下面又は側面とすれば、特にケース体15を配置しなくてもよい。
【0056】
なお、ケース体15は、単位リニアモータ20間を隙間なく接続する。例えば、分割された鉄芯11、11間どうしが隙間なく接続している場合には、ケース体15と鉄芯11との長さは略同一寸法となるが、鉄芯11、11間に隙間を有している場合には、ケース体15は、鉄芯11の長さより隙間分だけ長く形成されることになる。
【0057】
次に、上記のように構成された単位リニアモータ20及び搬送装置10の作用について説明する。
【0058】
コイル13に図6に示すような三相交流電流を流すと、単位リニアモータ20においては、それぞれU相コイル13U、V相コイル13V、W相コイル13Wが120度位相がずれた正弦波形を描くこととなる。例えば、図6において時間tとともに経過する3位置を選択し、それぞれの位置を時点P1、P2、P3とすると、時点P1、P2、P3における合成磁界は、図7に示すように表される。つまり、それぞれの時点P1、P2、P3における最大磁力がずれることとなるから、これが時間とともに移動する移動磁界となって、被搬送物(実施形態では鉄粉)を搬送することができる。
【0059】
隣接する単位リニアモータ20A、20B間においては、上述のように、対向するコイル組14の巻き方向をそれぞれ同一方向にすることによって、合成磁界を発生させ移動磁界を形成することができ被搬送物(鉄粉)は受渡される。
【0060】
図1の鉄粉搬送ラインの場合、タンク7から吸着された鉄粉は、単位リニアモータ20で吸引されて鉄粉搬送装置10の搬送面151の一端に載ることになる。そして、それぞれの単位リニアモータ20を順次通り、最終の単位リニアモータ20の端部、つまり、鉄粉搬送装置10の他端で外部に配置された図示しない鉄粉受け皿に落下される。
【0061】
上述のように、実施形態の鉄粉搬送装置10は、分割された鉄芯11にコイル13を巻回して単位リニアモータ20を構成し、単位リニアモータ20を搬送方向に沿って順に配列することによって、被搬送物(鉄粉)を搬送可能とする。この際、隣接する単位リニアモータ20、20間における、対向する分割面を溝部111で切断した面に形成することによって、単位リニアモータ20間の受渡しを確実に行うことができる。従って、鉄芯11を分割して構成できることから、鉄芯11を廉価に製作することができ、高価なオイルセパレータを使用しない鉄粉の搬送装置10を提供することができる。
【0062】
なお、本発明の切粉・鉄粉の搬送装置及び分離搬送システムは、上記の形態に限定するものではない。例えば、コイルに流す電流を三相交流電流でなく二相の交流電流を流すようにしてもよい。この場合、二相交流は単相交流にコンデンサを入れて作り出すことができる。
【0063】
また、実施形態では各単位リニアモータ20は、電源に対して並列で接続しているが、これを直列で接続するようにしてもよい。
【0064】
さらに、搬送面を形成する非磁性材のケース体は、電気抵抗の高い材料であれば、ステンレス材に限定するものではない。
【0065】
また、ケース体は、角筒状でなくても、平板状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】一形態の鉄粉搬送ラインを示す簡略斜視図である。
【図2】図1における搬送装置の一部を示す分解斜視図である。
【図3】図2におけるコイルの巻回状態を示す結線図である。
【図4】溝部で分割した単位リニアモータの接続状態を示す結線図である。
【図5】溝部で分割した単位リニアモータの別の形態の接続状態を示す結線図である。
【図6】単位リニアモータにおけるコイル組の合成磁界を示す波形図である。
【図7】単位リニアモータにおける移動磁界を示す波形図である。
【図8】従来のオイルセパレータを示す断面図である。
【図9】図8のオイルセパレータを使用する従来の鉄粉分離搬送システムを示す簡略斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1、鉄粉搬送ライン
3、研磨機(成形機械)
5、ポンプ
7、タンク
10、鉄粉搬送装置
11、鉄芯
111、溝部
112、コア部
13、コイル
14、コイル組
15、ケース体
20、単位リニアモータ
P1、時点
P2、時点
P3、時点
E、電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に対して直交する方向に複数の溝部が形成された鉄芯と、前記溝部に挿通されて前記鉄芯に巻回されるコイルと、を備え、前記コイルに位相の異なる交流電流を流して移動磁界を発生させる切粉・鉄粉の搬送装置であって、
前記鉄芯が複数個に分割されるとともに、分割された単位の鉄芯に前記コイルを複数相で構成するコイル組を巻回することによって単位リニアモータが構成され、
前記単位リニアモータが切粉・鉄粉の搬送方向に沿って順に配列され、隣接する単位リニアモータにおける、前記鉄芯の端面が前記溝部で切断した分割面に形成されていることを特徴とする切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項2】
前記コイル組が、U相コイル、V相コイル、W相コイルを有して三相交流電源に接続され、隣接する前記単位リニアモータ間を結ぶ溝部にいずれかの同相のコイルが共有して巻回されていることを特徴とする請求項1記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項3】
前記コイル組が、U相コイル、V相コイル、W相コイルを有して三相交流電源に接続され、隣接する前記単位リニアモータ間を結ぶ溝部にいずれかの単位リニアモータのコイルが単独に巻回されていることを特徴とする請求項1記載の切粉・鉄粉の搬送装置。
【請求項4】
それぞれの単位リニアモータは電源に対して並列に接続されていることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載の切粉・鉄粉の搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−160481(P2007−160481A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362865(P2005−362865)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】