説明

切花などの輸送用鮮度保持袋

【課題】水を注いでも底部が裂け難く、水漏れし難い構造の輸送用鮮度保持袋を得る。
【解決手段】熱溶着性を有する外装フィルム2の内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を三角形に折り曲げ、その三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルムを熱溶着することによって接合して三角袋を形成し、この三角袋の先端の閉塞部分を三角袋内に押入れて三角袋の底部1を外面側から内面側に凹む山形に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切花や根付き野菜などの生鮮植物を輸送する際に、切花や根付き野菜が萎れないように、切花の切り口部分や根付き野菜の根の部分を包んで、切花や根付き野菜に水を補給するために使用する鮮度保持袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切花や根付き野菜などの生鮮植物を萎れないように鮮度よく輸送するためには、切花の切り口部分や根付き野菜の根の部分に、十分な水を補給する必要がある。
また、切花や根付き野菜などの輸送の際には、切り口や茎から発生する雑菌の繁殖を抑え、栄養剤を補給することが望ましい。
【0003】
このような切花や根付き野菜などを段ボール製の外箱に入れて輸送する場合、縦輸送と呼ばれる輸送方法、即ち、外箱の底に、水を入れたバケットを収容し、このバケットに切花や根付き野菜を挿し入れる方法を採用することが多い。そして、バケット内の水には、適宜、雑菌の繁殖を抑える抗菌剤、栄養剤が入れられている。
【0004】
ところが、縦輸送は、箱を倒せないので、荷扱いが不便であり、段積みも行い難いので、輸送費、保管費が高く付くという問題がある。
【0005】
これに対し、横輸送、即ち、切花や根付き野菜を寝かせた状態で輸送する方法は、荷扱いが便利であり、段積みも行え、輸送費、保管費が安く付くという利点がある。
この横輸送の際には、切花の切り口部分や根付き野菜の根の部分を、保水性の包装材を濡らして包んで水を補給することが一般的に行われている。また、保水性の包装材を袋状にして、切花の切り口部分や根付き野菜の根の部分を挿し入れることも行われ、これらの方法は、特許文献1や2にも開示されている。
【0006】
【特許文献1】実開昭62−125763号公報
【特許文献2】実開平3−129037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の横輸送の場合、切花の切り口部分を包む保水性の包装材に、水を大量に含ませると、水漏れの問題が生じるため、水の補給が不十分になり易く、また、水の浸み出しによって段ボール製の外箱を濡らすという問題がある。
【0008】
また、保水性の包装材を袋状に形成し、その中に水を注ぎ、切花の切り口の茎の部分を挿し入れると、切花の切り口からの水揚げがよく、作業性も良い。
【0009】
しかしながら、底部を溶着によって形成した袋に水を注ぐと、水の圧力が底部下端の先端の溶着部分に集中し、先端の溶着部分が裂け易く、水漏れし易い。このため、底部を溶着によって形成した袋に水を注ぎ、切花の切り口の茎の部分を挿し入れるという作業は、実際上は行うことができなかった。
【0010】
そこで、この発明は、水を注いでも底部が裂け難く、水漏れし難い構造の輸送用鮮度保持袋を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するために、輸送用鮮度保持袋を次のように構成したものである。
即ち、熱溶着性を有する外装フィルムの内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を三角形に折り曲げ、その三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルムを熱溶着することによって接合して三角袋を形成し、この三角袋の先端の閉塞部分を三角袋内に押入れて三角袋の底部を外面側から内面側に凹む山形に形成したのである。
【0012】
この輸送用鮮度保持袋は、三角形状で、その底部先端の閉塞部分が、三角袋内に押入れられて、外面側から内面側に凹む山形に形成されているため、袋内に水を注いでも、溶着部分の先端に水の圧力が集中せず、底部が裂け難く水漏れし難い。
【0013】
上記保水性包装材の内装材に、保持水を外部に排出する性能を有する保水給水層と、抗菌性を有する抗菌層とを含ませることにより、水の補給効果を高め、雑菌の繁殖を抑制することができる。
保水給水層としては、紙おむつに使用されている高吸水性ポリマーではなく、例えば、低温で、大量の水を吸収保持し、温度があがり特定の温度を超えると吸収保持していた水を外部に排出する感温性の吸排水樹脂を使用することが好ましい。保水給水層として、紙おむつに使用されている高吸水性ポリマーを使用した場合、大量の水分を保持しても、水分の排出性能がよくないため、保持した水分の補給効果が少なく、却って切花の切り口から水分を吸い出す可能性があるので、好ましくない。
【0014】
また、保水性包装材の外装フィルムを内側にした状態で外装フィルム同士を熱溶着して三角袋を形成し、この三角袋を裏返して外装フィルムを外面側にした場合、熱溶着性のフィルム同士が直接熱溶着されるため、高い密着強度が得られる。
【0015】
また、この発明の輸送用鮮度保持袋は、熱溶着性を有する外装フィルムの内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を、外装フィルムを内側にした状態で三角形に折り曲げ、その三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルム同士を熱溶着することによって接合して三角袋を形成し、この三角袋を外装フィルムが外面側になるように裏返し、この三角袋の先端の閉塞部分を、外面側から内面側に凹む山形の底部を形成するように三角袋内に押し入れられた状態に残すことにより、製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の輸送用鮮度保持袋は、上記のように、水を注いでも底部が裂け難く、水漏れし難い構造であるため、作業性が良好で、横輸送は勿論、縦輸送にも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の輸送用鮮度保持袋Aは、図1及び図2に示すように、基本形が三角袋であり、三角袋の先端の閉塞部分を三角袋内に押入れて三角袋の底部1を、図3に示すように、外面側から内面側に凹む山形に形成した点に特徴がある。
【0018】
三角袋は、図4及び図5に示すように、熱溶着性を有する外装フィルム2の内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材からなる。
【0019】
熱溶着性を有する外装フィルム2としては、例えば、ポリエチレンフィルムを使用することができる。
【0020】
外装フィルム2に積層される内装材は、外装フィルム2側から順に、薄葉紙3、保持水を外部に排出する性能を有する保水給水層4、抗菌層5、不織布6からなる。
【0021】
保水給水層4は、パルプに感温性の吸排水樹脂を付着させることにより形成することができる。感温性の吸排水樹脂は、低温で、大量の水を吸収保持し、温度があがり特定の温度を超えると吸収保持していた水を外部に排出する感温性の吸排水樹脂であり、例えば、株式会社興人製のサーモゲル(商品名)を使用することができる。抗菌層5には、ゼオライトの含有繊維、例えばレンゴー株式会社製のセルガイア(商品名)を使用することができる。
【0022】
この発明の輸送用鮮度保持袋Aを形成する場合、保水性包装材の外装フィルム2を内側にした状態で外装フィルム2同士を熱溶着して三角袋を形成し、この三角袋を裏返して外装フィルム2を外面側になるように形成すると、熱溶着性のフィルム同士が直接熱溶着されるため、高い密着強度が得られる。
【0023】
この発明の輸送用鮮度保持袋Aを製造する場合、まず、図4に示すように、熱溶着性を有する外装フィルム2の内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を、外装フィルム2を内側にした状態で三角形に折り曲げ、その後、図6に示すように、三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルム2同士を熱溶着することによって接合して三角袋を形成する。図6の符号7は、溶着痕を示している。そして、この後、図7に示すように、三角袋を外装フィルム2が外面側になるように裏返し、この三角袋の先端の閉塞部分を、外面側から内面側に凹む山形の底部1を形成するように三角袋内に押し入れられた状態に残して、この発明の輸送用鮮度保持袋を完成させる。
【0024】
図8は、この発明の輸送用鮮度保持袋Aを切花Bの横輸送に用いた使用例である。図8の、符号Cは、段ボール製の外箱を示している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の輸送用鮮度保持袋を横置きした状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の輸送用鮮度保持袋を縦置きした状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の輸送用鮮度保持袋の底部分を示す断面図である。
【図4】この発明の輸送用鮮度保持袋を形成する保水性包装材の斜視図である。
【図5】図4の保水性包装材の断面図である。
【図6】図4の保水性包装材を三角形に折り曲げて一辺を熱溶着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6の三角袋を裏返す状態を示す斜視図である。
【図8】この発明の輸送用鮮度保持袋の使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
A 輸送用鮮度保持袋
B 切花
C 外箱
1 底部
2 外装フィルム
3 薄葉紙
4 保水給水層
5 抗菌層
6 不織布
7 溶着痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶着性を有する外装フィルムの内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を三角形に折り曲げ、その三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルムを熱溶着することによって接合して三角袋を形成し、この三角袋の先端の閉塞部分を三角袋内に押入れて三角袋の底部を外面側から内面側に凹む山形に形成した生鮮植物の輸送用鮮度保持袋。
【請求項2】
保水性包装材の内装材に、保持水を外部に排出する性能を有する保水給水層と、抗菌性を有する抗菌層とを含む請求項1記載の生鮮植物の輸送用鮮度保持袋。
【請求項3】
保水性包装材の外装フィルムを内側にした状態で外装フィルム同士を熱溶着して三角袋を形成し、この三角袋を裏返して外装フィルムを外面側にした請求項1又は2記載の生鮮植物の輸送用鮮度保持袋。
【請求項4】
熱溶着性を有する外装フィルムの内側に、保水性を有する内装材を積層した保水性包装材を、外装フィルムを内側にした状態で三角形に折り曲げ、その三角形の開口する二辺のうち一辺を、外装フィルム同士を熱溶着することによって接合して三角袋を形成し、この三角袋を外装フィルムが外面側になるように裏返し、この三角袋の先端の閉塞部分を、外面側から内面側に凹む山形の底部を形成するように三角袋内に押し入れられた状態に残す生鮮植物の輸送用鮮度保持袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81154(P2008−81154A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262636(P2006−262636)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】