説明

切除された膵臓癌のサージカルマージンにおける分子/遺伝子の異常により、疾患転帰と相関する新生物疾患を示す方法

本発明は、切除腫瘍のマージンにおける腫瘍標的遺伝子の異常の検出による領域癌化の検出、および癌患者の生存を予測するためのそのような情報の使用に関する。それらに基づく癌の処置方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I. 発明の分野
本発明は腫瘍学、遺伝学、および分子生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は切除された腫瘍のマージンにおける、細胞での遺伝学的欠陥の同定に関する。この遺伝子でのそのような欠陥は癌の発生と関連しており、膵臓癌、結腸直腸癌、および肺癌の同定においてはK-ras変異が特に利用される。なお、本出願は2005年6月27日付で出願された米国仮特許出願第60/694,383号の恩典を主張し、その全体が参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
II. 関連技術
膵管腺癌(PDAC)の5年生存率は全ての癌の中で最も低い(Jermal et al., 2004)。そのような最悪の転帰の主な要因は、疾患の潜行性発症およびそれに付随する早期診断の難しさである。その他多くの癌と同じく、転移が起きておらず外科手術が実行可能かつ安全である場合に、PDACの治療を行うことができる。しかしながら、最適条件の下でさえも、治癒的外科手術の転帰は不良であることが多く、中間生存期間は切除不可能な腫瘍よりも6〜12ヶ月長いにすぎない(Nitecki et al., 1995; Warshaw and Fernandez-del Castillo, 1992; Yeo et al., 1997)。
【0003】
PDACの治癒的切除の指標となることが多い局所再発(Evans et al., 2001; Westerdahl et al., 1993; Griffin et al., 1990; Willett et al., 1993; Greene et al., 2002)は、サージカルマージン(surgical margin)が組織病理学的に陰性であるにもかかわらず、全ての新生物組織または前駆組織の除去が不十分なことを示しうる。これらの再発は新生物細胞の領域癌化または不顕性転移拡散に典型的であることが多い。「領域癌化」とはSlaughterら(1953)によって最初に導入された概念であり、彼らは、口腔扁平上皮癌の周囲の異常組織がその後の原発腫瘍または局所再発癌の供給源になることを提唱した。Slaughterは、1950年代に利用可能であった標準的な組織病理学的技術によって、異常組織を同定した。分子技術の進歩によって、悪性細胞および良性と思われる細胞に等しく存在する遺伝学的および後成的な異常の同定につながった(Brennan et al., 1995; Garcia et al., 1999; Tian et al., 1998; Califano et al., 1996; Wernert et al., 2001; Monifar et al., 2000; Deng et al., 1996; Ito et al., 2005; Guo et al., 2004; Nathan et al., 2002; Nathan et al., 1999; Temam et al., 2004; tabor et al., 2004; Jassem et al., 2004; Masasyesva et al., 2005; Izawa et al., 2001; Nathan et al., 1997; Braakhuis et al., 2003)。
【0004】
分子および遺伝子のデータにより、遺伝子の変化した細胞が癌再発において中心的な役割を果たしているような領域の発生を詳述するモデルが支持される。最初に、遺伝子の形質転換が細胞集団内で局部的に起こり、変性細胞の病変を形成しうる(Braakhuis et al., 2003)。この局部領域がより広い領域に拡大することによって上皮の発癌における重要な段階が浮き彫りになる(Braakhuis et al., 2003)。さらなる分子/遺伝子の変化はボーゲルグラム(Vogel-gram)様の進行で起こる可能性が高く(Cubilla and Fitzgerald, 1975)、悪性腫瘍に典型的な細胞生理の著しい変化をもたらす(Hanahan and Weinberg, 2000)。増殖性領域はその増殖優位性によって、正常粘膜に徐々に取って代わる。この領域癌化の概念はPDACに特に該当するが、これは、良性膵臓から膵臓上皮内新生物(PanIN)へ、さらに明らかな悪性腫瘍への逐次的な形質転換によって組織学的に表される、遺伝学的欠陥、遺伝子サイレンシング、および癌原遺伝子活性化の漸進的蓄積を支持する、多数の証拠を有する(Cubilla and Fitzgerald, 1975; Hruban et al., 2000a; Hruban et al., 2000b; Klimstra and Longnecker, 1994)。
【0005】
PDACの遺伝子型の特徴を含む遺伝学的欠陥は、原発腫瘍に隣接する、良性に見える細胞内に共存していることがあり(Deng et al., 1996)、従来の組織病理学的技術では手術中に評価することができない。典型的な含意は、癌化領域または不顕性腫瘍細胞が原発腫瘍の外科手術後も残存し、その後に局所領域での再発癌に進行するということである。この主張にはPDACに対する痛切な臨床的関連がある。何故なら、標準的な「治癒的」外科手術は限定的生存をもたらし、切除用のさらなるサージカルマージンを得ることは有意な罹患率を伴いうるからである。したがって、腫瘍細胞の検出能は進行癌の評価および処置において臨床医を大いに補助すると考えられる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
したがって、本発明により、腫瘍の外科的切除を受けている患者におけるサージカルマージンの妥当性を評価する方法が提供される。サージカルマージンの妥当性を評価することにより、外科的切除を受けている癌患者の臨床転帰を予測することができる。臨床転帰は、例えば、癌の再発、癌の進行、および/または生存であり得る。
【0007】
1つの態様では、本発明は、(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから組織試料を得る段階;および(b) 該組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質を癌遺伝子における変異の発生について評価する段階を含む、外科的切除を受けている癌患者の生存を予測する方法を提供する。癌遺伝子はK-rasまたはB-rafであり得る。患者が罹患している癌は、例えば、肺癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、または黒色腫であり得る。
【0008】
評価段階はタンパク質の免疫学的検出、または核酸(例えば、RNAもしくはDNA)の検出を含むことができる。検出は核酸増幅、配列決定、プライマー伸長、ノーザンブロッティングもしくはサザンブロッティング、および/または制限エンドヌクレアーゼ処理をさらに含むことができる。
【0009】
患者が、癌の再発または進行の危険性があると判定される場合、癌に対するさらなる処置またはより積極的な処置を施すことができる。さらに、癌遺伝子における変異がサージカルマージンにおいて検出される場合、より広範囲に及ぶ外科的切除を行うことができる。同様に、癌の再発または進行の危険性が少ないと特定された患者は、外科的切除以外のさらなる抗癌治療を必要としなくてもよく、あるいはより積極性の低い処置を必要とし、それによって抗癌処置に対する不必要な曝露を減らしてもよい。さらに、本発明の方法は、本明細書において記載される方法の1つまたは複数の分析に基づき、患者の現行の抗癌処置を改変する段階を含むことができる。
【0010】
別の態様では、(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから組織試料を得る段階および(b) 該組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasまたはB-rafにおける変異の発生について評価する段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の進行を予測する方法が提供される。特定の態様では、癌は膵臓癌、結腸癌、または肺癌であってよく、組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質はK-rasにおける変異の発生について評価される。ある種の態様では、癌は黒色腫、結腸癌、または甲状腺癌であってよく、組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質はB-rafにおける変異の発生について評価される。
【0011】
別の態様では、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の再発を予測する方法が提供される: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから組織試料を得る段階; および(b) 該組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質を癌遺伝子における変異の発生について評価する段階。特に、癌は膵臓癌であってよく、関心対象の変異はK-ras遺伝子中に存在することができる。
【0012】
1つの態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者の生存を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が生存低下の予測となる段階; および(b) 癌患者の生存を予測する段階。
【0013】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の進行を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が癌の進行の予測となる段階; および(b) 癌患者における癌の進行を予測する段階。
【0014】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の再発を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が癌の再発の予測となる段階; および(b) 癌患者における癌の再発を予測する段階。
【0015】
K-rasにおける変異の発生を評価することは、K-rasにおける変異と関連する癌に罹患している癌患者の臨床転帰(例えば、再発、進行、生存)を予測するのに有用でありうる。本発明のある種の局面では、癌は上皮癌である。癌は、例えば、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、または結腸癌であり得る。
【0016】
ある種の態様では、本発明は、(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が領域癌化を示唆する段階; および(b) 癌患者における領域癌化を検出する段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における領域癌化を検出する方法を提供する。
【0017】
1つの態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者の生存を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をB-rafにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が生存低下の予測となる段階; および(b) 癌患者の生存を予測する段階。
【0018】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の進行を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をB-rafにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が癌の進行の予測となる段階; および(b) 癌患者における癌の進行を予測する段階。
【0019】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の再発を予測する方法を提供する: (a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をB-rafにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が癌の再発の予測となる段階; および(b) 癌患者における癌の再発を予測する段階。
【0020】
B-rafにおける変異の発生を評価することは、B-rafにおける変異と関連する癌に罹患している癌患者の臨床転帰(例えば、再発、進行、生存)を予測するのに有用でありうる。癌は、例えば、結腸癌、黒色腫、または甲状腺癌であり得る。本発明のある種の局面では、該方法はK-rasとB-rafの両方における変異の発生を評価する段階を含む。
【0021】
ある種の態様では、本発明は、(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をB-rafにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が領域癌化を示唆する段階; および(b) 癌患者における領域癌化を検出する段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における領域癌化を検出する方法を提供する。本発明のある種の局面では、該方法はK-rasとB-rafの両方における変異の発生を評価する段階を含む。
【0022】
本明細書において記載される任意の方法または組成物は、本明細書において記載されるその他任意の方法または組成物に関して実施されうることが意図される。「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、添付の特許請求の範囲および/または明細書の中で「含む」という用語と併せて用いられる場合、「1つの(one)」を意味しうるが、それは「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたはそれより多くの」という意味とも一致する。「約」とは、表示値のプラス5%〜マイナス5%を意味する。
【0023】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、以下の説明および添付図面と併せて考慮される場合に、より良く認識され理解されると考えられる。しかしながら、以下の説明は、本発明のさまざまな態様および多くのその具体的な詳細を示すが、例証として与えられており、限定として与えられていないと理解されるべきである。本発明の範囲内でその意図から逸脱することなく多くの置換、変更、付加、および/または再構成を行うことが可能であり、本発明はそのような全ての置換、変更、付加、および/または再構成を含む。
【0024】
好ましい態様の詳細な説明
本発明者は、PDACのサージカルマージンにおける組織学的に良性の組織がKRAS変異を含んでおり、その検出が臨床転帰と相関するという仮説を立てた。本明細書において記載される研究は、領域癌化または不顕性転移がPDACに生ずるという証拠、および手術時に切除のマージンにおけるそのような欠陥をいっそう良好に検出するように測定が行われるべきであるという証拠を提供する。
【0025】
この報告のため、本発明者はKRAS DNA変異を評価した。これは、臨床的および病理学的有用性に対してマージンにおけるKRAS変異の病理学的有用性を実証する最初の報告である。最近、Hingoraniらは、マウスモデルにおいてKRASの内因性発現を導いてPDACの進行全体を再現し(Hingorani et al, 2003)、これにより膵臓癌発症でのKRAS活性化変異の重要な役割が示された。KRAS変異は同様に、肺癌および結腸直腸癌などのその他の癌での領域癌化を同定するのに使用することができる。
【0026】
I. 臓器部位での転移または癌化の診断
本発明は、腫瘍切除のマージンにおける細胞を調べて領域癌化または不顕性転移を検出する方法を対象にする。例示の方法では遺伝子分析においてPCRを利用しているが、以下に論じられるように、その他多くの方法を利用することができる。
【0027】
A. 遺伝子診断
遺伝子診断では細胞の遺伝子における、つまりコード領域、イントロン、またはプロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなどの調節領域における異常を検査する。変異は、点変異体、再配列、重複、および欠失(切断を含む)であり得る。明らかに、この種のアッセイは関連の固形腫瘍癌の診断において重要である。特に、本発明は膵臓癌、ならびにK-rasと関連する結腸直腸癌および肺癌の診断に関し、かつ、B-rafと関連する黒色腫、甲状腺癌、および結腸直腸癌の診断に関する。
【0028】
使用される核酸は、標準的な方法論(Sambrook et al., 1989)にしたがって腫瘍マージンから得られた生体試料に含まれる細胞から単離される。核酸は、例えば、ゲノムDNAであり得る。通常、核酸は増幅される。
【0029】
形式に応じて、関心対象の特異的核酸は、増幅を用いて直接的に、または増幅の後で第二の公知の核酸を用いて、試料中で同定される。次に、同定された産物を検出する。ある種の用途では、検出は視覚的な手段(例えば、ゲルの臭化エチジウム染色)によって行うことができる。あるいは、検出は、化学発光、放射能標識もしくは蛍光標識の放射性シンチグラフィーを通じた、または場合により電気もしくは熱衝撃シグナルを用いたシステム(Affymax Technology; Bellus, 1994)を通じた産物の間接的同定を含んでもよい。ある種の態様では、関心対象の核酸は定量リアルタイムPCRにより、例えば、TaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems)を用いて同定される。
【0030】
さまざまな類の欠陥が本発明者らによって同定された。したがって、「変化」とは欠失、挿入、点変異、および重複を含むと解釈されるべきである。点変異は停止コドン、フレームシフト変異、またはアミノ酸置換を引き起こす。体細胞変異は非生殖細胞系組織に発生するものである。生殖細胞系組織(Germ-line tissue)は任意の組織に発生することがあり、遺伝性である。コード領域の内外の変異は同様に、遺伝子の転写を変化させることによってもまたは転写産物(mRNA)もしくはタンパク質のいずれかのプロセッシングを不安定化するかもしくは別の方法で変化させることによっても、産生されるタンパク質の量に影響を与えることがある。
【0031】
腫瘍抑制遺伝子の一方の対立遺伝子が生殖系障害の遺伝または体細胞変異の獲得によって不活性化される場合、細胞は発癌性形質転換に向かって遺伝学的段階を進む。遺伝子のもう一方の対立遺伝子の不活性化は、通常、体細胞の微小変異またはヘテロ接合性の喪失(LOH)を引き起こす染色体対立遺伝子欠失を伴う。または、遺伝子の両コピーがホモ接合体欠失によって失われることもある。
【0032】
(i) プライマーおよびプローブ
本明細書において定義される場合、プライマーという用語は、鋳型依存的な過程で新生核酸の合成をプライミングできる任意の核酸を包含するよう意図される。典型的には、プライマーは長さが10〜20塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、さらに長い配列を利用することができる。プライマーは二本鎖または一本鎖の形で供与されてもよいが、一本鎖の形が好ましい。プローブは、プライマーとして働きうるが、それとは別に定義される。プローブは、おそらくプライミング可能であるけれども、標的核酸に結合するよう設計されるものであり、増幅過程で使用される必要がない。
【0033】
好ましい態様では、プローブまたはプライマーは放射性種(32P、14C、35S、3H、もしくはその他の標識)で、またはフルオロフォア(ローダミン、フルオレセイン)、もしくは化学発光剤(ルシフェラーゼ)で標識される。
【0034】
1つの特定の主なKRAS変異アッセイは、DNAに基づく増幅および/または配列決定である。通常はRT-PCT後に、mRNAを使用してもよい。DNAアッセイは、野生型KRASと変異型KRASとをクランプ識別(clamp discriminating)するためのPNA(ペプチド核酸)をアッセイに用いるPCRに基づいてもよい。アッセイはリアルタイムPCR(商標)により定量的である。流入領域リンパ節における不顕性結腸直腸癌細胞のアッセイがTabackら(2004)により最初に報告された。
【0035】
(ii) 鋳型依存的な増幅法
所与の鋳型試料に存在するマーカー配列を増幅するため、いくつかの鋳型依存的な過程を利用できる。最もよく知られた増幅法の1つは、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,800,159号、ならびにInnis et al., 1990に詳述されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標)とも称される)であり、それらの文献の各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
手短に言えば、PCR(商標)では、マーカー配列の向かい合った相補鎖上の領域に相補的な2つのプライマー配列を用意する。過剰のデオキシヌクレオシド三リン酸をDNAポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼとともに反応混合物に加える。マーカー配列が試料に存在する場合、プライマーはマーカーに結合し、ポリメラーゼはマーカー配列に沿ってヌクレオチドを付加することでプライマーを伸長しうる。反応混合物の温度を昇降することにより、伸長されたプライマーはマーカーから解離して反応産物を形成し、過剰なプライマーがマーカーおよび反応産物に結合して、この過程が繰り返される。
【0037】
逆転写酵素PCR(商標)増幅手順を、増幅されたmRNAの量を定量化するために行うことができる。RNAをcDNAに逆転写する方法は周知であり、Sambrook et al., 1989に記載されている。逆転写の別法では、熱安定性のRNA依存性DNAポリメラーゼを利用する。これらの方法は1990年に12月21日付で出願されたWO 90/07641に記載されている。ポリメラーゼ連鎖反応法は当技術分野において周知である。
【0038】
増幅のための別の方法は、欧州特許出願第320 308号に開示されているリガーゼ連鎖反応(「LCR」)であり、この文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。LCRでは、2つの相補的なプローブ対が調製され、標的配列の存在下で、それぞれの対は、それらが隣接するように標的の向かい合った相補鎖に結合する。リガーゼの存在下では、2つのプローブ対は結び付いて単一のユニットを形成する。PCR(商標)と同様に、温度サイクリングによって、結合している連結単位が標的から解離し、その後、過剰のプローブ対の連結のための「標的配列」として働く。米国特許第4,883,750号は、プローブ対を標的配列に結合する、LCRに類似の方法について記載している。
【0039】
PCT出願番号PCT/US87/00880に記載されているQβレプリカーゼを、本発明におけるさらに別の増幅法として使用することもできる。この方法では、標的配列に相補的な領域を有するRNAの複製配列をRNAポリメラーゼの存在下において試料に加える。ポリメラーゼが複製配列をコピーし、これを検出することができる。
【0040】
制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを用いて、制限部位の片鎖にヌクレオチド5'-[α-チオ]-三リン酸を含む標的分子の増幅を達成する等温増幅法は、本発明での核酸の増幅に有用でありうる。Walker et al., (1992)。
【0041】
鎖置換増幅(SDA)は核酸の等温増幅を行う別法であり、この方法は複数ラウンドの鎖置換および鎖合成、すなわち、ニックトランスレーションを伴う。修復連鎖反応(RCR)と呼ばれる類似の方法は、増幅の標的とされる領域全体にいくつかのプローブをアニールさせた後に、4塩基のうち2塩基しか存在しない修復反応を行うことを伴う。残りの2塩基は、検出しやすいようにビオチン化誘導体として加えることができる。類似の手法はSDAにおいて使用される。標的の特異的配列は環状プローブ反応(CPR)を用いて検出することもできる。CPRでは、試料中に存在するDNAに、非特異的DNAの3'および5'配列ならびに特異的RNAの中央配列を有するプローブをハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの後、反応物をRNase Hで処理すると、プローブの産物は消化後に放出される特有の産物として同定される。元の鋳型は別の環状プローブにアニールし、反応が繰り返される。
【0042】
それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、GB特許出願第2 202 328号に、およびPCT出願番号PCT/US89/01025に記載されているさらに別の増幅法を、本発明によって使用することができる。前者の出願では、「改変」プライマーが、PCR(商標)のような鋳型依存的かつ酵素依存的な合成において使用される。プライマーは、捕捉部分(例えば、ビオチン)および/または検出部分(例えば、酵素)で標識することによって改変されうる。後者の出願では、過剰の標識プローブが試料に加えられる。標的配列の存在下において、プローブが結合し、触媒的に切断される。切断後、標的配列は無傷のまま放出されて、過剰のプローブにより結合される。標識プローブの切断は標的配列の存在を示唆する。
【0043】
その他の核酸増幅手順は、核酸配列に基づく増幅(NASBA)および3SR (Kwoh et al., 1989; Gingeras et al., PCT出願WO 88/10315、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)を含めて、転写に基づく増幅系(TAS)を含む。NASBAでは、標準的なフェノール/クロロホルム抽出、臨床試料の熱変性、溶解用緩衝液ならびにDNAおよびRNAの単離用のミニスピンカラムでの処理、またはRNAの塩化グアニジン抽出により、核酸を増幅のために調製することができる。これらの増幅技術は、標的特異的配列を有するプライマーのアニーリングを伴う。重合の後、DNA/RNAハイブリッドはRNase Hで消化され、その一方で二本鎖DNA分子を再び熱変性させる。どちらの場合にも、一本鎖DNAは第二の標的特異的プライマーの添加、その後の重合によって完全に二本鎖となる。次いで、二本鎖DNA分子はT7またはSP6などのRNAポリメラーゼによって複数回転写される。等温サイクル反応において、RNAは一本鎖DNAに逆転写され、これが二本鎖DNAに変換され、その後、T7またはSP6などのRNAポリメラーゼによって再び転写される。得られた産物は、切断型であろうと完全型であろうと、標的特異的配列を示す。
【0044】
Daveyらの欧州特許出願第329 822号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)は、一本鎖RNA (「ssRNA」)、ssDNA、および二本鎖DNA (dsDNA)を繰り返し合成することを含む核酸増幅過程について開示しており、この過程が本発明によって使用されてもよい。ssRNAは第一のプライマーオリゴヌクレオチドの鋳型であり、これは逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)によって伸長される。次いで、このRNAは生じたDNA:RNA二重鎖から、リボヌクレアーゼH (RNase H、DNAまたはRNAのいずれかとの二重鎖中のRNAに特異的なRNase)の作用によって除去される。生じたssDNAは第二のプライマーの鋳型であり、これは同様に、鋳型とのその相同性のため5'側に(T7 RNAポリメラーゼにより例示される)RNAポリメラーゼプロモーターの配列を含む。次に、このプライマーはDNAポリメラーゼ(大腸菌(E. coli) DNAポリメラーゼIの「クレノウ」大断片により例示される)によって伸長され、プライマー間に元のRNAのものと同一の配列を有しかつ片端にプロモーター配列をさらに有する二本鎖DNA(「dsDNA」)分子を生じる。このプロモーター配列は適切なRNAポリメラーゼにより使用されて、DNAの多くのRNAコピーを作出することができる。その後、これらのコピーをサイクルに再投入し、非常に迅速な増幅をもたらすことができる。酵素の適切な選択によって、この増幅は各サイクルでの酵素の添加なしに等温的に行われることができる。この過程の循環的な性質のため、開始配列を、DNAまたはRNAのいずれかの形態であるように選択することができる。
【0045】
MillerらのPCT出願WO 89/06700号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)は、標的一本鎖DNA (「ssDNA」)とのプロモーター/プライマー配列のハイブリダイゼーションに続いて配列の多くのRNAコピーの転写を行うことに基づく核酸配列増幅スキームについて開示している。このスキームは循環的ではない、すなわち、生じたRNA転写産物から新たな鋳型は産生されない。その他の増幅法は「RACE」および「片側(one-sided) PCR (商標)」(Frohman, 1990; Ohara et al., 1989; 各々その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を含む。
【0046】
生じる「ジオリゴヌクレオチド」の配列を有する核酸の存在下での2つ(またはそれより多くの)のオリゴヌクレオチドのライゲーションに基づき、それによってジオリゴヌクレオチドを増幅する方法を、本発明の増幅段階に使用することもできる(Wu et al., 1989、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0047】
(iii) サザンブロッティング/ノーザンブロッティング
ブロッティング技術は当業者に周知である。サザンブロッティングでは標的としてDNAの使用を伴うのに対し、ノーザンブロッティングでは標的としてRNAの使用を伴う。cDNAブロッティングは多くの局面でRNA種のブロッティングに類似しているが、それぞれは異なる類の情報をもたらす。
【0048】
手短に言えば、適当なマトリックス、多くの場合にはニトロセルロースのフィルターに固定化されているDNA種またはRNA種を標的にするため、プローブを使用する。異なる種は分析を円滑にするよう空間的に分離されるべきである。これは多くの場合、核酸種のゲル電気泳動、それに続くフィルターへの「ブロッティング」によって達成される。
【0049】
その後、ブロッティングされた標的を、変性および再ハイブリダイゼーションを促進する条件の下でプローブ(通常、標識されている)とインキュベートする。プローブは標的と塩基対合するように設計されているので、プローブは復元条件の下で標的配列の一部分を結合しうる。次いで結合していないプローブを除去し、上記のように検出を行う。
【0050】
(iv) 分離方法
通常、特異的な増幅が行われたかどうかを判定する目的のため、いずれかの段階で、鋳型および過剰のプライマーから増幅産物を分離することが望ましい。1つの態様では、標準的な方法を用いてアガロースゲル電気泳動、アガロース-アクリルアミドゲル電気泳動、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動により増幅産物を分離する。Sambrook et al., 1989を参照されたい。あるいは、キャピラリーアレイ電気泳動またはリアルタイムPCRを使用してもよい。
【0051】
(v) 検出方法
マーカー配列の増幅を確認するため、産物を可視化することができる。典型的な可視化法の1つはエチジウムブロマイドによるゲルの染色およびUV光の下での可視化を含む。あるいは、増幅産物が放射能標識または蛍光標識されたヌクレオチドと一体的に標識される場合、分離後に、増幅産物をX線フィルムに曝露するか、または適切な刺激スペクトルの下で可視化することができる。
【0052】
1つの態様では、可視化は間接的に達成される。増幅産物の分離後、標識された核酸プローブを増幅されたマーカー配列と接触させる。プローブは発色団に結合されることが好ましいが、放射能標識されてもよい。別の態様では、プローブは抗体またはビオチンのような結合パートナーに結合されており、結合対のもう一方のメンバーが検出可能な部分を保有している。
【0053】
1つの態様では、検出は標識プローブによるものである。必要とされる技術は当業者に周知であり、分子プロトコルに関する多くの標準的な書籍の中で見出すことができる。Sambrook et al. (1989)を参照されたい。例えば、発色団または放射能標識プローブもしくはプライマーによって、増幅の間にまたは増幅後に標的が同定される。
【0054】
上記の一例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,279,721号に記載されており、これは、核酸の自動電気泳動および転写の装置および方法について開示している。この装置はゲルの外部操作なしで電気泳動およびブロッティングを可能にし、本発明による方法の実行に適している。
【0055】
さらに、上述の増幅産物を配列分析に供して、標準的な配列分析技術により特異的な種類の差異を同定することができる。ある種の方法の中では、最適な配列決定に向けて設計されたプライマーセットを用いた配列分析によって遺伝子の徹底的な分析が行われる(Pignon et al., 1994)。本発明は、これらの類の一部または全ての分析を使用できる方法を提供する。本明細書に開示の配列を用い、オリゴヌクレオチドプライマーを設計して標的遺伝子全体の配列の増幅を可能にすることができ、それを直接的な配列決定によって分析することができる。
【0056】
(vi) キット成分
その標的の検出および配列決定に必要とされる不可欠な材料および試薬は全て、キット内に一緒に集めることができる。これには一般に、予め選択されたプライマーおよびプローブが含まれると考えられる。ある種の態様では、本発明のキットは、KRAS遺伝子中の1つまたは複数の変異の同定のために予め選択されたプライマーまたはプローブを含むことができる。増幅に必要な反応混合物を供与するための、さまざまなポリメラーゼ(RT、Taq、Sequenase(商標)など)を含めた核酸の増幅に適した酵素、デオキシヌクレオチド、および緩衝液もまた含むことができる。そのようなキットは一般に、適当な手段で、各個別の試薬および酵素用のならびに各プライマーまたはプローブ用の異なる容器を含むこともできる。
【0057】
(vii) 相対定量RT-PCR(商標)の設計および理論考察
PCR(商標)において、増幅された標的DNAの分子数は、ある種の試薬が限界になるまで反応のサイクル毎に2倍近くに増える。その後、サイクル間で増幅された標的の増加がなくなるまで、増幅率は次第に減少するようになる。サイクル数をX軸にとり、増幅された標的DNAの濃度の対数をY軸にとりグラフを描く場合、プロットされた点を結び付けることで特徴的な形状の曲線が形成される。最初のサイクルから始まり、直線の傾きはプラスかつ一定である。これは曲線の直線部分といわれている。ある試薬が限界になってからは、直線の傾きが減少し始め、最終的にはゼロになる。この時点で、増幅された標的DNAの濃度はある固定値に漸近的となる。これは曲線のプラトー部分といわれている。
【0058】
PCR(商標)増幅の直線部分における標的DNAの濃度は、反応が始まる前の標的の開始濃度に正比例する。同じサイクル数を完了しかつその直線域にあるPCR(商標)反応における標的DNAの増幅産物の濃度を測定することで、元のDNA混合物における特異的な標的配列の相対濃度を測定することが可能である。DNA混合物が異なる組織または細胞から単離されたRNAより合成されたcDNAである場合、標的配列が得られた特異的mRNAの相対存在量を各組織または細胞について測定することができる。PCR(商標)産物の濃度と相対的mRNA存在量との間のこの直接比は、PCR(商標)反応の直線域においてのみ妥当である。
【0059】
曲線のプラトー部分における標的DNAの終濃度は、反応混合物中の試薬の利用可能性によって決まり、標的DNAの元の濃度と無関係である。それ故に、mRNA種の相対存在量をRNA集団の一群に対してRT-PCR(商標)により測定できる前に満たさなければならない第一の条件は、PCR(商標)反応がその曲線の直線部分にあるときに、増幅PCR(商標)産物の濃度をサンプリングしなければならないということである。
【0060】
特定のmRNA種の相対存在量を成功裏に測定するためにRT-PCR(商標)実験が満たさなければならない第二の条件は、増幅可能なcDNAの相対濃度をある種の独立した標準物質に対して規準化しなければならないということである。RT-PCR(商標)実験の目的は、試料中の全てのmRNA種の平均存在量に対して特定のmRNA種の存在量を測定することである。後述の実験では、β-アクチン、アスパラギン合成酵素、およびリポコルチンIIのmRNAを、他のmRNAの相対存在量を比較する外部および内部標準物質として使用した。
【0061】
競合的PCR(商標)の大部分のプロトコルでは、標的とほぼ同じくらい豊富に存在する内部PCR(商標)標準物質を利用する。これらの戦略は、PCR(商標)増幅の産物がその直線相の間にサンプリングされる場合に効果的である。反応がプラトー相に接近している場合に産物がサンプリングされれば、それほど豊富にない産物が比較的過度に提示されることになる。多くの異なるRNA試料に対してなされる相対存在量の比較は、差次的発現についてRNA試料を調べる場合と同様に、実際に存在するよりも少ないように思われるRNAの相対存在量に差異をもたらすように歪められる。内部標準物質が標的よりもはるかに豊富であるならば、これは重大な問題ではない。内部標準物質が標的よりも豊富であるならば、直接的な線形比較をRNA試料間で行うことができる。
【0062】
上記の考察では、臨床に由来する材料のRT-PCR(商標)アッセイの理論考察について記載している。臨床試料に内在する問題は、それらの量が可変的である(規準化を困難にする)ということ、およびそれらの質が可変的である(信頼性のある内部対照の、好ましくは標的よりも大きなサイズの同時増幅を必要とする)ということである。RT-PCR(商標)が、内部標準物質を標的cDNA断片よりも大きい増幅可能なcDNA断片とし、かつ内部標準物質をコードするmRNAの存在量を標的をコードするmRNAよりもおよそ5〜100倍高いものとする、相対定量RT-PCR(商標)として行われる場合、これらの問題はどちらも克服される。このアッセイでは各mRNA種の絶対存在量ではなく、相対存在量を測定する。
【0063】
その他の研究は、外部標準物質プロトコルとともにより従来型の相対定量RT-PCR(商標)アッセイを用いて行うことができる。これらのアッセイでは、その増幅曲線の直線部分においてPCR(商標)産物をサンプリングする。サンプリングに最適なPCR(商標)サイクル数は、各標的cDNA断片について実験的に判定されなければならない。さらに、種々の組織試料から単離された各RNA集団の逆転写酵素産物は、等しい濃度の増幅可能なcDNAに対して注意深く規準化されなければならない。このアッセイでは絶対的mRNA存在量を測定するので、この考慮は非常に重要である。絶対的mRNA存在量は、規準化された試料においてのみ差次的遺伝子発現の尺度として使用することができる。増幅曲線の直線域の実験的判定およびcDNA調製物の規準化は面倒かつ時間のかかる過程であるが、得られるRT-PCR(商標)アッセイは、内部標準物質を用いた相対定量RT-PCR(商標)アッセイに由来するものよりも優れたものでありうる。
【0064】
この利点の1つの理由とは、内部標準物質/競合物質なしで、試薬の全てが増幅曲線の直線域において単一のPCR(商標)産物に変換され、したがってアッセイの感度が増大するということである。別の理由は、PCR(商標)産物が1つだけであるため、電気泳動ゲルでの産物の表示または別の表示方法がより単純になり、よりバックグラウンドが低く、より解釈しやすいということである。
【0065】
(viii) チップ技術
本発明者らによって特に企図されるのはHacia et al. (1996)およびShoemaker et al. (1996)により記載されているものなどの、チップに基づくDNA技術である。手短に言えば、これらの技術は数多くの遺伝子を迅速にかつ正確に分析するための定量的方法を伴う。遺伝子をオリゴヌクレオチドでタグ付けすることによりまたは固定されたプローブアレイを用いることにより、チップ技術を利用して、標的分子を高密度アレイとして分離すること、およびこれらの分子をハイブリダイゼーションに基づいてスクリーニングすることが可能になる。Pease et al. (1994); Fodor et al. (1991)も参照されたい。
【0066】
B. 免疫診断
本発明の抗体はELISAおよびウエスタンブロッティングなどの技術を通じ、切除腫瘍のマージンにおける健常組織および病変組織のタンパク質含量を特徴付ける際に使用することができる。これは悪性の有無のまたは将来的な癌の予測因子としてのスクリーニングになりうる。別の局面では、本発明は、本発明の標的分子と免疫反応性を示す抗体、またはその任意の部分の使用を企図する。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。好ましい態様では、抗体はモノクローナル抗体である。抗体を調製するおよび特徴付ける手段は、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, 1988を参照のこと)。
【0067】
ELISAアッセイでの、本発明の抗体の使用が企図される。例えば、抗体を、選択された表面、好ましくはポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルなどの、タンパク質親和性を示す表面に固定化する。不完全に吸着された材料を除去するために洗浄を行った後、アッセイプレートのウェルを、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または粉乳の溶液などの、試験抗血清に関して抗原的に中性であることが知られている非特異的タンパク質と結合させることまたはその非特異的タンパク質でコーティングすることが望ましい。これによって固定化表面の非特異的吸着部位のブロッキングが可能になり、このようにして表面への抗原の非特異的結合により引き起こされるバックグラウンドが低減される。
【0068】
ウェルとの抗体の結合、バックグラウンドを減らすための非反応性材料によるコーティング、および結合していない材料を除去するための洗浄の後、免疫複合体(抗原/抗体)形成につながるように、固定化表面を試験試料と接触させる。
【0069】
試験試料と結合抗体との間の特異的な免疫複合体の形成、および引き続く洗浄の後、それを第一抗体とは異なる標的に特異性を有する第二抗体に供することで免疫複合体形成の発生および量までも測定することができる。適切な条件とは好ましくは、試料をBSA、ウシγグロブリン(BGG)、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tween(登録商標)などの希釈剤で希釈することを含む。これらの付加剤は同様に、非特異的なバックグラウンドの低減を補助する傾向がある。その後、積層された抗血清を約2〜約4時間、好ましくはおよそ約25℃〜約27℃の温度でインキュベートさせる。インキュベーション後、免疫複合体を形成していない材料を除去するため、抗血清に接触させた表面を洗浄する。好ましい洗浄手順としては、PBS/Tween(登録商標)、またはホウ酸塩緩衝液などの溶液による洗浄が挙げられる。
【0070】
検出手段を供与するため、第二抗体は、適切な発色性基質とインキュベートすることによって発色を生じる関連酵素を有することが好ましいと考えられる。したがって、例えば、第二抗体結合表面を免疫複合体形成の発生に好ましい時間および条件の下でウレアーゼまたはペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgGと接触させ、インキュベートすること(例えば、PBS-Tween(登録商標)などのPBS含有溶液中での室温で2時間のインキュベーション)が望まれると考えられる。
【0071】
第二の酵素標識抗体とのインキュベーションの後、および結合していない材料を除去するための洗浄に引き続いて、標識の量を発色性基質、例えば、尿素およびブロモクレゾールパープル、または酵素標識としてペルオキシダーゼの場合には、2,2'-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン)-6-スルホン酸(ABTS)およびH2O2とのインキュベーションにより定量化する。次いで発色の度合いを、例えば、可視スペクトル分光光度計を用いて測定することにより、定量化を達成する。
【0072】
先の形式は試料をアッセイプレートに最初に結合させることで改変されてもよい。次いで、一次抗体をアッセイプレートとインキュベートした後に、一次抗体に特異性を有する標識第二抗体を用いて、結合した一次抗体の検出を行う。
【0073】
本発明の抗体組成物はイムノブロットまたはウエスタンブロット分析において大いに役立つと考えられる。抗体はニトロセルロース、ナイロン、またはその組み合わせなどの、固体支持体マトリックスに固定化されたタンパク質の同定のため高親和性の基礎試薬として使用することができる。免疫沈降、引き続くゲル電気泳動と併せて、その抗原の検出に使用される二次試薬が不都合なバックグラウンドを引き起こすような抗原の検出に用いる単一段階試薬として、これらを使用することができる。ウエスタンブロッティングと併用される免疫に基づく検出方法は、毒素部分に対する酵素標識、放射能標識、または蛍光標識二次抗体を含み、この関連でことさら有用であると考えられる。
【0074】
別のアッセイはTrimgenのMutector(商標)アッセイである。このアッセイおよび市販のキットではShift Terminated Assayとして公知の技術を利用するが、これは特別に設計されたプライマー伸長法である。この手法によってSNP、欠失、および転座などの任意のタイプの変異の検出が可能になる。これは次の3つの段階を利用する: (a) 配列特異的なハイブリダイゼーション、(b) 配列依存的なプライマー伸長、および(c) 配列依存的な連鎖停止。PCRを処理前に行って十分な鋳型を供与する。同様に企図されるのはFeinberg & Vogelstein (1983)の方法である。
【0075】
II. 核酸
本発明によって、K-rasまたはB-rafなどの、関心対象の標的遺伝子(腫瘍抑制遺伝子、癌遺伝子、プロアポトーシス遺伝子、細胞周期調節因子)をコードする核酸を精製、同定、および/または増幅することが望まれうる。核酸はゲノムDNAに由来してもよく、すなわち、特定の生物のゲノムから直接的にクローニングされてもよい。しかしながら、好ましい態様では、核酸は相補DNA (cDNA)を含むと考えられる。同様に企図されるのはcDNAに加えて天然のイントロンまたは別の遺伝子に由来するイントロンである。そのような遺伝子操作分子は「ミニ遺伝子」といわれることもある。少なくとも、本発明のこれらのおよびその他の核酸は、例えば、ゲル電気泳動での分子量標準物質として使用することができる。
【0076】
必然的に、本発明は同様に、標的配列に対し相補的であるかまたは本質的に相補的であるDNAセグメントを包含する。「相補的」である核酸配列は、標準的なWatson-Crickの相補性規則にしたがって塩基対合できるものである。本明細書において用いられる「相補配列」という用語は、上記の同一のヌクレオチド比較により評価できるような、または本明細書において記載されるものなどの比較的ストリンジェントな条件の下で標的の核酸セグメントにハイブリダイズできると定義されるような、実質的に相補的である核酸配列を意味する。
【0077】
または、ハイブリダイズするセグメントはより短いオリゴヌクレオチドであってもよい。17塩基長の配列はヒトゲノムにおいて一度しか現れないはずであり、それ故に、固有の標的配列を特定するのに十分である。より短いオリゴマーはいっそう作成しやすく、インビボでの接近性を高めやすいが、ハイブリダイゼーションの特異性の判定には数多くの他の要因が関与している。オリゴヌクレオチドのその相補的な標的との結合親和性も配列特異性も長さの増加に伴って増加する。8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の塩基対の例示的なオリゴヌクレオチドを使用することが企図されるが、それ以外も企図される。
【0078】
適当なハイブリダイゼーション条件は当業者に周知であると考えられる。ある種の用途、例えば、部位特異的変異誘発法によるアミノ酸の置換では、より低いストリンジェンシー条件が必要とされることを理解されたい。これらの条件の下では、1つまたは複数の位置で不適正に組み合わされるが、プローブおよび標的鎖の配列が完全には相補的でなくともハイブリダイゼーションは起こりうる。塩濃度を増加させることでおよび温度を低下させることで、条件をより低ストリンジェントにすることができる。例えば、中程度のストリンジェンシー条件は、約37℃〜約55℃の温度で約0.1〜0.25 M NaClにより与えることができ、その一方で低ストリンジェンシー条件は、約20℃〜約55℃に及ぶ温度で、約0.15 M〜約0.9 M 塩により与えることができる。このように、ハイブリダイゼーション条件は容易に操作することが可能であり、すなわち、一般に、所望の結果に応じた選択法となる。
【0079】
その他の態様では、ハイブリダイゼーションは、例えば、およそ20℃〜約37℃の温度にて、50 mM Tris-HCl (pH 8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、10 mM ジチオスレイトールの条件の下で達成することができる。利用されるその他のハイブリダイゼーション条件は、およそ40℃〜約72℃に及ぶ温度でおよそ10 mM Tris-HCl (pH 8.3)、50 mM KCl、1.5 μM MgCl2を含むことができる。ホルムアミドおよびSDSを用いてハイブリダイゼーション条件を変えてもよい。
【0080】
ペプチド核酸(PNA)は偽ペプチド骨格を有するDNA模倣体であり、これは相補的なDNA、RNA (またはPNA)オリゴマーと安定な二重鎖構造を形成する。PNAは二本鎖DNAの認識用のリガンドとして元々使用されていた。DNAの核酸塩基は保持されているが、DNAのデオキシリボースホスホジエステル骨格は、DNA骨格と同形の偽ペプチド骨格によって置き換えられている。その理論は、中性のペプチド骨格なら三重鎖結合を向上できるというものであった。しかしながら、PNAは同様に、当初の段階から一本鎖核酸を模倣することができた。それらは現在、PCR反応におけるクランピング剤として使用されている。
【0081】
LNA、すなわち「ロックド核酸」とは2'-O,4'-Cメチレン架橋を含有する核酸類似体であり、これはリボフラノース環の可動性を制限し、その構造を柔軟性のない二環構造にロックする。これによっていっそう高いハイブリダイゼーション性能および優れた生体内安定性が得られる。それらはオリゴヌクレオチドの使用に依る多種多様なゲノム用途および技術、つまり一般的なハイブリダイゼーションプローブ、インサイチューハイブリダイゼーションのプローブ、標的濃縮用の捕捉プローブ、対立遺伝子特異的なPCR(商標)、アンチセンス、および鎖侵入技術を向上させるように設計することができる。
【0082】
III. 製剤および患者への投与経路
臨床的用途が考えられる場合、薬学的組成物、つまり発現ベクター、ウイルスストック、タンパク質、抗体、および薬物を、対象とする用途に適した形態で調製することが必要であると考えられる。一般に、このことには発熱物質、およびヒトまたは動物に有害となりうるその他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することが必要になると考えられる。当業者は、参照により本明細書に組み入れられる「Remington's Pharmaceutical Sciences」 15th Editionに従う。若干の投薬量のばらつきは処置される被験者の状態に応じて必然的に生じうる。いずれにしても、投与責任者が個々の被験者に適した用量を判定すると考えられる。さらに、ヒトに投与する場合、調製物はFDA生物製剤部の標準規格によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の標準規格を満たさなければならない。
【0083】
適切な塩および緩衝液を利用して送達ベクターを安定にすることおよび標的細胞による取込みを可能にすることが、一般に望ましいと考えられる。緩衝液は同様に、組換え細胞が患者に導入される場合に利用されうる。本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散された、有効量のベクターまたは細胞を含む。そのような組成物は同様に、接種材料といわれる。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与される場合に有害な、アレルギー性の、またはその他の不適当な反応をもたらさない分子成分および組成物のことを指す。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」とは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が本発明のベクターまたは細胞と不適合であるような場合を除き、治療用組成物でのその使用が企図される。補助的な活性成分も組成物に組み入れることができる。
【0084】
本発明の活性組成物は古典的な薬学的調製物を含むことができる。本発明によるこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の共通経路を介する。これには経口、経鼻、口腔、直腸、膣内、または局所経路が含まれる。あるいは、投与は同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射によってもよい。そのような組成物は、通常、上記に記載されるように、薬学的に許容される組成物として投与することができる。特に関心が高いのは、直接的な腫瘍内投与、腫瘍の灌流、または例えば、局所もしくは域内の血管系もしくはリンパ系での、腫瘍局所もしくは域内の投与である。
【0085】
活性化合物は同様に、非経口的にまたは腹腔内に投与することができる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合された水の中で調製することができる。分散液を同様に、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物の中、ならびに油中で調製することができる。保存および使用の通常の状況下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐよう保存剤を含む。
【0086】
注射可能な用途に適した薬学的形態は、無菌の水溶液または分散液および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製用の無菌の粉末を含む。いかなる場合でも、この形態は無菌でなければならず、容易に注射可能となる程度に流動性でなければならない。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの、微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。その担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適当なそれらの混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防はさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと考えられる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
【0087】
無菌の注射可能な溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙したさまざまなその他の成分とともに、適切な溶媒の中に組み入れ、その後ろ過滅菌することによって調製される。一般に、分散媒はさまざまな滅菌活性成分を、基礎分散媒および上に列挙したものから必要とされるその他の成分を含む無菌の媒体の中に組み入れることによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加え任意の付加的な望ましい成分の粉末を予めろ過滅菌されたその溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0088】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」とは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合であるような場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性成分も組成物に組み入れることができる。
【0089】
経口投与の場合、本発明のポリペプチドは、賦形剤を用いて組み入れることができ、摂取不可能な洗口剤および歯磨剤の形態で使用することができる。洗口剤は、必要量の活性成分をホウ酸ナトリウム溶液(Dobell's Solution)などの適切な溶媒に組み入れて調製することができる。または、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および重炭酸カリウムを含有する殺菌洗浄液に組み入れることができる。活性成分を同様に、ゲル、ペースト、粉末、およびスラリーを含む歯磨剤に分散させることができる。活性成分を、水、結合剤、研磨剤、香料添加剤、起泡剤、および保湿剤を含みうるペースト状歯磨剤に治療的に有効な量で加えることができる。
【0090】
本発明の組成物は中性型または塩型で製剤化することができる。薬学的に許容される塩は酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含み、これは例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は同様に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することができる。
【0091】
製剤化において、溶液は投薬製剤と適合する方法でおよび治療的に有効であるような量で投与されると考えられる。製剤は注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどのような種々の投薬形態で容易に投与される。水溶液での非経口投与の場合、例えば、溶液を必要に応じて適当に緩衝化し、液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水またはグルコースを用いて等張にするべきである。これらの特定の水溶液は静脈内の、筋肉内の、皮下の、および腹腔内の投与に特に適している。これに関連して、利用できる無菌の水性媒体は本発明の開示に照らして当業者に公知であると考えられる。例えば、1投薬量をNaCl等張液1 mlに希釈し、皮下注入液1000 mlに加えるかまたは提案の注入部位に注射するかのいずれかであってよい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」 15th Edition, 1035〜1038および1570〜1580頁を参照のこと)。若干の投薬量のばらつきは処置される被験者の状態に応じて必然的に生じうる。いずれにしても、投与責任者が個々の被験者に適した用量を判定すると考えられる。さらに、ヒトに投与する場合、調製物はFDA生物製剤部の標準規格によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の標準規格を満たさなければならない。
【0092】
IV. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施に際して十分に機能することが本発明者によって見出された技術に相当し、したがってその実施に好ましい様式を構成するものと考えられうることは、当業者によって理解されるはずである。しかしながら、本開示に照らして、開示される具体的な態様において多くの変更が行われ、それでもなお本発明の意図および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを当業者は理解するはずである。
【0093】
実施例1: 患者および方法
膵臓癌患者
1996〜2004年にPDACの治癒的切除を受けた患者23人をこの調査研究の試験コホートとして最初に評価した。患者検体をJohn Wayne Cancer Institute (JWCI)およびUCLA School of Medicine (Los Angeles, CA)から得た。試験コホートの分析を完了した後に、PDACの手術を受けた患者さらに47人を集めた。十分な経過観察期間(すなわち、36ヶ月以上または期限まで)を有する患者だけを選択した。いずれかのサージカルマージン(膵臓切断面もしくは後腹膜)の最終的な永久切片がH&Eによって病理組織学的に陽性であった場合、いずれかのマージンが分析に利用できなかった場合、または患者が手術後30日以内に死亡した場合には、患者を除外した。病期または結節状態にかかわらず、全ての患者が5-フルオロウラシル、ロイコボリン、マイトマイシンC、ジピリダモール、およびゲムシタビンの併用で補助化学療法を受けた。患者はその個別医師の裁量で補助放射線療法を受けた。ヒト被験者のIRB承認はこの研究の目的のため各施設で得た。X線画像を含む患者記録(利用可能な場合)を再調査した。全患者統計を表1に掲載する。
【0094】
(表1) 患者統計

【0095】
膵臓癌検体
患者70人のコホート由来の原発性PDACおよびマージンPDACのパラフィン包埋保存摘出組織(PEAT;Paraffin-embedded archival tissue)をJWCIで評価した。研究への導入前に、保存されたH&Eマージンスライド切片を顕微鏡観察により再検査して、サージカルマージンに癌細胞のないことを確認した。これらのサージカルマージンのいずれを再評価するのにも免疫組織化学は利用されなかった。その後、PEAT原発腫瘍およびマージンの切片(10 μmカット3枚)を得て、無菌の微小遠心管(Eppendorf Biopur, Westbury, NY)の中に保存した。PCR(商標)分析用のパラフィン切片の調達後、マージンブロックからさらにパラフィン切片(5 μm)をカットし、H&Eによって染色し、外科病理学者が検査して癌細胞のないことをさらに確認した。以前に記載されている(Hoon et al., 2004; Fujimoto et al., 2004)ように、改変アッセイ(QIAamp DNA Mini Kit, Qiagen Inc., Valencia, CA)を利用してDNAを抽出した。腫瘍がマージンブロック(例えば、放射状の後腹膜マージン(radial retroperitoneal margin))に存在していた場合には、PEAT切片(4×5 μm)を顕微鏡スライドに置き、組織学的に良性の組織を顕微解剖するか、または以前に記載されている(Hoon et al., 2002; Nakayama et al., 2001)ようにレーザー捕獲顕微解剖(LCM; Arcturus, Mountain View, CA)の助けを借りて獲得するかした。
【0096】
膵臓癌細胞株におけるKRAS変異
樹立された膵臓癌細胞株(MIA PaCa2、PANC-1、Hs 766T、およびBxPC-3)をAmerican Type Culture Collection (ATCC; Manassas, VA)から入手し、ATCCによる推奨に従って培養した。MIA PaCa2およびPANC-1は第12コドンにKRAS変異(それぞれ、GGT→TGTおよびGGT→GAT)を有するのに対し、Hs 766TおよびBxPC-3は野生型(wt) KRASを有する。これらの細胞株を陽性および陰性の癌対照として使用した。第13および第61コドンにおける変異はPDACでの第12コドン変異の圧倒的な優位性のため、評価されなかった(Cubilla et al., 1975; Hruban et al., 2000; Hruban et al., 2000; Kitago et al., 2004)。
【0097】
不死化された正常ヒト膵管上皮(HPDE)細胞株はTsao博士 (University of Toronto, Toronto)から寄贈され、wtDNA対照として使用した(Ouyang et al., 2000; Furukawa et al., 1996)。全ての細胞を5% CO2とともに37℃でインキュベートした。以前に記載されている(Spugnardi et al., 2003)ように細胞株からDNAを抽出し、単離し、DNAZoI (Molecular Research Center Inc., Cincinnati, OH)によって精製した。以前に記載されている(Spugnardi et al., 2003)ようにPEATおよび細胞株DNAを紫外分光光度法およびPICOGreen検出アッセイ(Molecular Probes, Eugene, OR)によって定量化し、純度について評価した。
【0098】
プライマーおよびプローブおよびPCRアッセイ
KRAS変異の検出は、PEAT原発性結腸直腸癌およびリンパ節転移において第12コドンのKRAS変異を特異的に検出するため以前に確立されたペプチド核酸(PNA) PCR(商標)アッセイを用いて行った(Taback et al., 2004)。PCRプライマーよりもDNAに対し高い結合親和性を有するPNAクランプをwtKRAS対立遺伝子との相補的ハイブリダイゼーションのために設計した(Faruqi et al., 1998)。PNAクランプは、鋳型wtDNAとハイブリダイズすることにより、部分的に重複するリバースプライマーのアニーリングを阻害し、従ってwtKRASの増幅を阻害する。PNA/DNAハイブリッドは塩基対のミスマッチによって不安定であるため、変異体KRASにアニールせず、その増幅を阻害しない(Faruqi et al., 1998)。KRAS変異を有する微小転移を検出するPNA PCR(商標)アッセイの感度は、これまでに実証されている(Taback et al., 2004)。PNA PCR(商標)アッセイの結果を分析し、2進(+/-)値によって表した。
【0099】
リアルタイム定量PCR(商標) (qRT)は以下のプライマーを用いて行った。

qRTアッセイは、iCycler iQリアルタイムPCR(商標)検出システム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)で行った。ゲノムDNA (20 ng)は、1 μMの各プライマー、1.75 μM PNA、200 μMの各デオキシヌクレオチド三リン酸、4.0 mM MgCl2、10×AmpliTaq緩衝液、および1単位のAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems, Branchburg, NJ)を含有する反応液20 μLの中でqRTにより増幅した。各PCR(商標)反応液を94℃で60秒間、70℃で50秒間、ならびに58℃で50秒間および72℃で60秒間の40サイクルに供した。PCR(商標)反応をPNAなしでも行ってwtKRASを増幅し、DNAの完全性を検証した。各試料を以前に記載されている(Taback et al., 2004)ように陽性および陰性対照とともに三つ組でアッセイした。
【0100】
KRAS配列決定
代表的なKRAS陽性およびKRAS陰性の検体(n=16)を両鎖に対し直接的に配列決定して、以前に記載されている(Taback et al., 2004)PNAクランプ法の精度を確認した。以下のKRASプライマーをPCR(商標)増幅に使用した。

各PCR(商標)反応混合物を最初に10分間94℃に加熱し、次いで94℃で30秒間、64℃で30秒間、および72℃で7分間の32〜40サイクルに供した。PCR(商標)産物をQIAquick PCR(商標) Product Purification Kit (Qiagen)で精製し、次に58℃のアニーリング温度でDTCS Quick Startキット(Beckman Coulter; Fullerton, CA)を用いて直接配列決定した。染色終結(Dye-terminated)産物をエタノールによって沈殿し、CEQ8000XL自動配列決定装置(Beckman Coulter)にてキャピラリー電気泳動により分離した。
【0101】
統計解析
患者特性およびKRAS変異の検出を平均値、中央値、および頻度を用いてまとめた。陽性または陰性のKRAS変異を有する患者の臨床病理学的因子をフィッシャーの正確検定およびスチューデントのt検定により比較した。KRAS変異に対する生存曲線をカプラン・マイヤーの方法を用いて作図した。2つの曲線の同等性を比較するため、ログランク検定を用いた。予後因子の単変量解析には年齢、性別、病期、腫瘍の拡がり、リンパ節状態、悪性度、腫瘍サイズ、神経周囲の浸潤、およびリンパ管浸潤が含まれた。臨床予後因子を適合させた場合のKRAS変異の予後的意義を評価するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。段階的方法を共変量選択に選んだ。解析は全てSAS (SAS /STAT User's Guide, バージョン8; SAS Institute Inc, Cary, NC, USA)を用いて行い、検定は両側とし、P値が0.05以下の場合に有意と見なした。
【0102】
実施例2: 結果
PNA PCR精度
PNAクランプ法の精度は、KRAS陽性(n=16)およびKRAS陰性(n=17)のPEAT結腸直腸癌検体でこれまでに評価されている(Balcom et al., 2001)。アッセイの感度は微小転移(Greene et al., 2002)の結腸直腸癌リンパ節病巣におけるKRAS変異の検出によって判定されている。癌検体の全33例に対し、直接配列決定によってPNA PCR(商標)アッセイの結果を確認し、100%の特異性および感度が明らかにされた(Taback et al., 2004)。この過去の研究ではKRAS変異の検出のため、KRAS変異のPCR(商標)増幅と、その後の半定量的な電気化学発光アッセイを利用している。本研究はその同じKRAS PCR(商標)プライマー、PNA、および増幅条件をさらに高効率、高感度、かつ高速処理のリアルタイム定量PCR(商標)のプラットフォームに利用するよう適合された。リアルタイムPCR PNAクランプアッセイの精度を確認するため、本発明者らは代表的なKRAS陽性(n=8)およびKRAS陰性(n=8)のPEAT PDAC検体16例を分析した。第12コドンでの野生型KRAS DNA配列はグアニン-グアニン-チミン(GGT)である。KRAS陽性の検体8例から第12コドンでの異なる5種のKRAS変異が検出された(GAT(n=2); GGG(n=2); GTT(n=2); TGT(n=1); およびTGG(n=1))。KRAS変異の代表的な配列を図1A〜Bに示す。
【0103】
膵臓癌を有する患者におけるKRAS変異
PDACを有する患者23人を試験コホートとして最初に分析した。KRAS変異は、原発腫瘍の83% (n=23のうち19)およびいずれかのサージカルマージンの48% (n=23のうち11)において検出された。膵臓切断面および後腹膜のマージンはそれぞれ、患者4人および8人においてKRAS陽性で、患者1人では両マージンがKRAS陽性であった。この試験コホートの分析後、さらに患者47人を集めた。患者全70例に対し、中間生存期間は、17ヶ月の中間経過観察期間で21ヶ月であった。5年の全生存率は19%であった。患者を膵頭十二指腸切除術(n=68)または膵尾部切除術(n=2)で処置した。膵臓の全切除を受けた患者はいなかった。患者1人には上腸間膜動脈・門脈合流部の区域切除をした。分析時に、患者70人のうち45人(64%)が疾患により死亡していた。
【0104】
全体で、患者70人のうち57人(81%)が原発腫瘍においてKRAS変異を有していた。この割合は発生率75%〜100%の以前の報告(Almoguera et al., 1888; Smit et al., 1988; Kitage et al., 2004; Hruban et al., 2001; Wanebo and Vezeridis, 1996; Longnecker and Terhune, 1998; Mu et al., 2004)と一致している。KRAS変異は患者37人(53%)においていずれかのマージンで検出された。KRAS陽性のマージンは膵臓切断面(n=17)、後腹膜マージン(n=27)において、または両マージン(n=7)において検出された。一般に、大部分のサージカルマージンには低悪性度のPanINの証拠があり(Hruban et al., 2004)、高悪性度のPanINは稀有であった。KRASマージン状態に基づいて患者を2群に分類した場合、KRAS陽性群において高発生率の神経周囲の浸潤および低率のリンパ管浸潤が認められた(表2)。カプラン・マイヤー曲線によって、KRAS変異陰性マージンに比べてKRAS変異陽性マージンを有する患者の全生存での有意差が示された(中央値、それぞれ55ヶ月 対 15ヶ月; ログランク、p=0.0008; 図2)。
【0105】
(表2) KRAS陽性患者およびKRAS陰性患者の臨床病理学的因子の比較

年齢の比較はスチューデントのt検定により行った; 残りの臨床学的因子はフィッシャーの正確検定により比較した。
【0106】
単変量解析によると、KRAS変異、悪性度、および神経周囲の浸潤は疾患転帰に対する有意な要因であった(図3)。臨床病理学的因子を調整した場合、多変量解析によってKRAS変異は生存率の低い有意な予後因子と同定された(HR 2.7, 95% CI: 1.4〜5.5; p=0.004) (表3)。腫瘍悪性度および神経周囲の浸潤もまた生存率の低い有意な因子であった(それぞれHR 6.7, 95% CI: 2.4〜18.5, p=0.0001; およびHR 2.1, 95% CI: 1.0〜4.2, p=0.04)。
【0107】
(表3) 単変量および多変量解析

【0108】
実施例3: 考察
病理組織学的に陰性のサージカルマージンを得ることの価値は、PDACの処置を評価する無作為対照化試験および大規模コホート再調査のサブセット解析から裏付けられている(Yeo et al., 1997; Neoptolemos et al., 2001; Balcom et al., 2001)。本発明者らはこのコホート研究において、全員ともH&E組織病理が陰性であった患者の半分以上(53%)のサージカルマージンにおけるKRAS変異を検出するためにPCR(商標)を用いた。臨床転帰とのKRASマージン状態の相関関係から、全生存での有意差が実証された。これらの所見により、サージカルマージンの妥当性の術中判定では、存在しうるPDACの関連する遺伝子異常を領域欠陥または不顕性新生物細胞と同定する感度のないことが示唆される。
【0109】
高い局所領域再発率および付随する短い生存期間から、PDACにおける新生物細胞の不顕性拡散または領域癌化の存在が示唆される。KRAS変異のPCR(商標)検出を癌再発に関する臨床データと関連付けるため、本発明者らは、KRAS陽性マージンを有しかつ生存率が低い患者の介入研究およびX線報告書を再調査した。大部分の患者は外部機関から照会されたので、X線データは入手できないことが多く、本発明者らはコホート全体の無病期間を判定することができなかった。しかしながら、KRAS陽性マージンを有しかつ生存率が低い患者9人において、X線画像研究および腹腔細胞診からそれぞれ、局所再発(n=6)または悪性腹水(n=3)が明らかになった。このことから、外科的切除により、遺伝子異常を有する全ての細胞を除去できなかったことが示唆されうる。頭頸部癌を有する患者の研究(Tabor et al., 2004; Brennan et al., 1995; Goldenberg et al., 2004; Koch et al., 1994)は、この示唆を支持する証拠を与えている。彼らは、サージカルマージンがLOHまたはp53 DNA変異を含む患者は、そのマージンでの再発があり、マージンでのそのような遺伝子異常のない患者よりも疾患転帰が悪いことを見出した。
【0110】
KRAS DNA変異は、膵臓癌でのその頻繁な発生およびその潜在的な病因的役割(Hingorani et al., 2003; Almoguera et al., 1988; Smit et al., 1988; Hruban et al., 2001; Wanebo and Vezeridis, 1996; Longnecker and Terhune, 1998; Mu et al., 2004)のゆえに、この研究に選択された。最近の証拠からKRAS DNA変異が膵臓悪性腫瘍の不可欠な前兆でありうることが実証されているが(Hingorani et al., 2003)、良性の膵臓障害におけるKRAS変異の報告がある(Luttges et al., 1999; Rivera et al., 1997; Tada et al., 1996)。さらに、KRAS変異はPanIN病巣において検出されており(Hruban et al., 2001; Hruban et al., 2004)、このコホート研究の全てのマージン検体において概ね存在していた。PanIN、KRAS変異、およびサージカルマージンの間の関係は不明のままである。Yamadaら(2005)による結腸直腸癌に関する最近の報告は、KRAS変異が原発腫瘍の周囲の正常組織での領域癌化変化であると強く主張している。
【0111】
本発明者らは現在、さらなる遺伝学的または後成的な異常がPDACマージン組織に存在するかどうかを調査している。高感度かつ高効率の診断用抗体が現時点では入手できないので、本発明者らはそのような欠陥を検出するためにPCR(商標)アッセイに頼った。PCR技術を利用して、本発明者らはサージカルマージンにおいてKRAS変異を検出しており、KRASを有する細胞がさらに別の遺伝子異常を抱えうると仮定する。PDACを有する患者におけるKRAS陽性のマージンは、本質的に悪い疾患生物学(biology)を有する腫瘍を示唆することができる。したがって、サージカルマージンにおけるKRAS変異の検出は、最終的な結果が腫瘍細胞の領域癌化または不顕性拡散のいずれかでありうるいっそう攻撃的な腫瘍を反映することができる。さらに、KRAS陽性のマージンを有する腫瘍は、膵臓全体にわたるまたは遠隔臓器への新生物細胞の不顕性拡散を有するPDACに相当する可能性がある。多変量解析による神経周囲の浸潤および悪性度の予後的意義は、悪い腫瘍生物学という論点を支持する(表3)。それとは反対に、生存が5年を超える、KRAS陽性のマージンを有する患者5人がこのコホート研究において認められた。新生物細胞の領域癌化または不顕性拡散が切除の標準的なマージンを越えて拡がるかどうか、およびより広範囲のPCR陰性のサージカルマージンがPDAC転帰に影響を与えうるかどうかは前向き研究での評価が必要になると考えられる。
【0112】
新生物細胞の領域癌化または不顕性拡散は多くの癌で起きうるが(Braakhuis et al., 2003)、これは腹膜後方にある膵臓の解剖学的制限によって、PDACを有する患者では特に問題となっている。注目すべきことに、陽性のマージン37例のうち27例(73%)が後腹膜由来であった。膵全切除術がPDACに対して行われた場合でさえも、生存データはあまり良好ではなく(Karpoff et al., 2001)、この転帰はおそらく、高い後腹膜KRAS陽性率によって説明することができる。放射線療法は、サージカルマージンが陽性である場合、魅力的に思われるかもしれないが、治療転帰は雑多であり、最近の大規模無作為対照化試験から、放射線療法を受けている患者の生存率が改善されていないことが実証されている(Neoptolemos et al., 2004)。
【0113】
遺伝子型が変化した良性または悪性細胞の拡大域の進展は、重要な臨床的帰結を有する。本発明者らは、PDACを有する患者において、新生物細胞の領域癌化または不顕性拡散が外科切除のマージンにまで及ぶことがあり、これが臨床的帰結と強く相関することを実証している。Pantelら(2004)による最近の研究から、PDACにおける腫瘍細胞の不顕性拡散を同定するうえでの分子技術の重要性が実証されている。それ故に、PDACの外科処置では、標準的な組織病理学的技術の使用を超える、切除のマージンの特段の精査が必要になりうる。本研究はPEAT PDAC検体を用いて行われた。
【0114】
本明細書において開示され主張される方法は全て、本開示に照らして必要以上の実験なしに実行および遂行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様という観点で記載してきたが、本発明の概念、意図、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法および方法の段階または方法の段階の順序に変形を適用できることは当業者に明らかであると考えられる。より具体的には、同様のまたは類似の結果を達成しながら、化学的にも生理学的にも関連するある種の薬剤を本明細書に記載の薬剤に置き換えられることが明らかであると考えられる。当業者に明らかなそのような類似の置換および変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の意図、範囲、および概念の範囲内であると見なされる。
【0115】
XI. 参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書の説明を補う例示的な手順またはその他の詳細を提供するという範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
米国特許第4,683,195号
米国特許第4,683,202号
米国特許第4,800,159号
米国特許第4,883,750号
米国特許第5,279,721号



PCT出願PCT/US87/00880
PCT出願PCT/US89/01025
PCT出願WO 88/10315
PCT出願WO 89/06700
PCT出願WO 90/07641

【図面の簡単な説明】
【0116】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある種の局面をさらに実証するために含まれる。本明細書において示される具体的な態様の詳細な説明と併せてこれらの図面の1つまたは複数を参照することで、本発明をより良く理解することができる。
【図1】図1A〜1Bは、PNA PCRの結果を検証するためのPDAC組織の代表的な配列決定である。(図1A) 変異体Kras (GGT→GAT)を有する膵臓癌検体。(図1B) 変異体Kras (GGT→GTT)を有する膵臓癌マージン検体。
【図2】KRAS変異陽性および陰性のマージンを有する患者間の全生存率を比較するカプラン・マイヤー曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者の生存を予測する方法:
(a) 切除腫瘍のサージカルマージン(surgical margin)から得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が生存低下の予測となる段階; および
(b) 癌患者の生存を予測する段階。
【請求項2】
癌患者が膵臓癌に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
癌患者が肺癌に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
癌患者が結腸癌に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
評価段階がタンパク質の免疫学的検出を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
評価段階が核酸の検出を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
核酸がRNAである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
核酸がDNAである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
検出が核酸増幅を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
検出が配列決定を含む、請求項6記載の方法。
【請求項11】
検出がプライマー伸長を含む、請求項6記載の方法。
【請求項12】
検出がノーザンブロッティングまたはサザンブロッティングを含む、請求項6記載の方法。
【請求項13】
検出が制限エンドヌクレアーゼ処理を含む、請求項6記載の方法。
【請求項14】
以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の進行を予測する方法:
(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階であって、組織試料における変異の発生が癌の進行の予測となる段階; および
(b) 癌患者における癌の進行を予測する段階。
【請求項15】
以下の段階を含む、外科的切除を受けている癌患者における癌の再発を予測する方法:
(a) 切除腫瘍のサージカルマージンから得られた組織試料の細胞中の核酸またはタンパク質をK-rasにおける変異の発生について評価する段階; および
(b) 癌患者における癌の再発を予測する段階。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501004(P2009−501004A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519520(P2008−519520)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/025165
【国際公開番号】WO2007/002746
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507422150)ジョン ウェイン キャンサー インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】