説明

列車個別メッセージ放送が可能な旅客案内システム

【課題】指定列車に対し、指定したタイミングで、任意な内容の案内放送を出力する旅客案内システムを提供する。
【解決手段】旅客案内装置10は上位装置から列車個別メッセージ放送情報を受信すると、当該データを駅事務室用端末30へ送信し、駅事務室用端末30は、駅事務員のマンマシン操作により、テキスト形式の放送文章を音声合成用の中間言語に変換する。駅事務室用端末30は、指定された案内対象列車の情報及び指定された放送タイミング及び音声合成用中間言語に変換された放送文章を旅客案内装置30へ送信する。旅客案内装置30が、指定された案内対象列車の情報及び指定された放送タイミング及び音声合成用中間言語に変換された放送文章を受信すると、当該情報をメモリに格納し、放送タイミングとなったとき、WAV形式のデータに変換し、スピーカ50に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道における列車個別メッセージ放送が可能な旅客案内システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指定した列車に対し、個別の文章を放送する技術おいて、列車の運行状態(列車接近・到着等)に合わせて固定音片を組み合わせ、放送する方式がある。また、テキストデータをもとにして作成された中間言語を使用し、任意のメッセージを音声出力する音声合成技術がある。さらに、指定列車に対し、任意なメッセージ文章を表示器に出力する技術がある。
【0003】
特許文献1には、中央管理システムと運行情報入力端末システムと複数の駅案内システムがネットワークにより接続された構成をとり、運行情報入力端末システムから入力した案内文章を中央管理システムを介して自動的に複数の駅案内システムに配信する案内文章自動作成装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方式では、例えば団体専用列車や御召し列車等、一般の乗客が乗車できない車両において、放送文章が固定文章である場合、乗車不可である内容の音片データおよび放送出力処理を実装していないと、乗車不可である旨を放送できず、特に視覚弱者にとって乗車可/不可を判断できなかった。また、上記車両へ乗車予定の乗客に対し、案内放送による誘導ができなかった。上記列車に付帯して任意の文章を駅の表示器に表示することは可能であったが、停車駅案内等の表示文章と競合し、任意の文章を表示するまでに時間がかかる場合があり、サービスとして充分とはいえなかった。
【0006】
本発明の目的は、列車固有の案内放送を実施することにより、特に視覚弱者に対し、バリアフリーな環境を提供し、サービスの向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の旅客案内システムは、旅客案内装置と駅事務室用端末から構成され、駅事務室用端末は、ダイヤ情報の表示、メッセージの作成・編集、案内表示及び案内放送の詳細設定、保守等を制御可能であり、上記制御に加え、列車固有の案内放送の設定を可能とする。(以下、本放送を列車個別メッセージ放送と呼ぶ。)
【0008】
駅事務室用端末からは、列車指定可能で、且つ放送文章をテキストで作成・編集可能で、且つテキストで作成・編集した放送文章を音声合成用の中間言語(放送内容であるテキスト内容に対応した音読情報)に変換可能で、且つ音声合成用の中間言語を視聴可能で、且つ放送するタイミングを設定可能で、且つ旅客案内装置へ列車個別メッセージ放送を付帯させる列車の情報と音声合成用の中間言語と放送タイミングを旅客案内装置へ送信することが可能である。
【0009】
旅客案内装置は、ダイヤ情報及び列車の接近や到着、遅れといった運行状況により駅の案内放送及び案内表示を制御する。本発明の旅客案内システムでは上記制御に加え、案内対象列車の情報とその列車に付帯させる音声合成用の中間言語と放送するタイミング情報を受信し、放送のタイミングとなった場合、該当の放送チャンネルに対し、音声合成用の中間言語に対応した音声をスピーカへ出力することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、列車個別に任意な内容の案内放送を実施することが可能となり、案内放送の自由度が拡大する上、列車に付帯させるメッセージの表示器への表示及び放送装置からの放送により、視覚のみならず聴覚によっても乗客に伝達することができるため、特に視覚弱者へバリアフリーな環境を提供することが可能となり、サービスの向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明のシステムを実現するシステムを示すシステム構成概略図である。
【図2】図2は駅事務室用端末から列車個別メッセージ放送情報を入力した場合の制御フローを示す説明図である。
【図3】図3は旅客案内装置における列車個別メッセージ放送制御フローを示す説明図である。
【図4】図4は駅事務室用端末が中央システムから列車個別メッセージ放送情報を旅客案内装置を介して受信した場合の制御フローを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、周辺装置を含めた形態の全容を示す構成図である。運転整理装置60は、到着番線の変更、運休、メッセージ情報入力等、列車に関する情報を変更し、旅客案内装置10を含めた関係するシステムへ送信する装置である。また、列車個別メッセージ放送情報の入力装置となっている。
【0014】
ダイヤ管理装置65は、各列車の各駅での出発順序の情報などダイヤ情報を管理する装置である。運行管理装置68は、ダイヤ管理装置65のダイヤ情報や各駅に設置された進路制御装置70からの列車の在線情報や設備状態情報をもとに、全列車の運行を管理する装置である。
【0015】
進路制御装置70は、ダイヤ管理装置65からダイヤを受信し、当日、翌日、翌々日のダイヤを格納している。他現場設備80から列車の在線情報や信号機、軌道回路、転てつ器といった各現場設備の動作状況を示す設備状態情報などを集約し、集約した情報を運行管理装置68及び旅客案内装置10へ送信する装置である。
【0016】
駅事務室用端末30は、ダイヤ情報をモニタしたり、旅客案内装置10の制御情報の詳細設定などを行うための端末である。また、列車個別メッセージ放送情報の入力装置となっており、放送文章を音声合成用の中間言語に変換することが可能である。
【0017】
旅客案内装置10は、ダイヤ情報を進路制御装置70から受信し、受信したダイヤ情報及び進路制御装置70から受信する列車の在線情報をもとに、駅のホーム及びコンコースへの表示制御や自動放送制御を実施する装置である。また、駅事務室用端末から列車個別メッセージ放送情報を受信し、指定列車に対し、指定タイミングで音声合成による放送を実施する。
【0018】
表示器40は、各駅において表示器へダイヤ情報やメッセージ情報を表示するため、ホームやコンコースに設置され、旅客案内装置10により制御されている装置である。
【0019】
スピーカ50は、各駅において音声を出力するため、ホームやコンコースに設置され、旅客案内装置10により制御されている装置である。
【0020】
ネットワーク回線90には情報の送受信のため、運転整理装置60、ダイヤ管理装置65、運行管理装置68等の中央システム及び進路制御装置70等の現場設備及び駅事務室用端末30、旅客案内装置10が接続されている。
【0021】
図2は、駅事務室用端末から列車個別メッセージ放送情報を入力する場合の制御フローを示す説明図である。
【0022】
本発明の旅客案内システムにおける列車個別メッセージ放送情報は、駅事務室用端末30から設定できる。まず、列車個別メッセージ放送情報を入力する画面を開くと、駅事務室用端末30と旅客案内装置10との通信が正常かどうかを判定する(S100)。
正常であれば、マンマシン入力により、当該放送を実施する列車を指定(S110)し、放送文章を入力(S120)する。放送文章入力(S120)後、列車個別メッセージ情報を入力する画面に配置された視聴ボタンを押下(S121)し、入力された放送文章を音声合成用の中間言語に変換(S123)し、視聴のため中間言語を音声として出力する(S125)。出力された音声を変更したい場合、放送文章入力(S120)に戻る。出力された音声を修正しない場合、放送タイミング設定(S130)を実施する。上記列車個別メッセージ放送情報の入力後、実行問合せボタンを押下(S135)し、実行(S140)する場合、旅客案内装置10へ入力した列車個別メッセージ放送情報(放送文章は、中間言語に変換されたデータ)を送信する(S150)。送信が成功(S160)すると、列車個別メッセージ放送情報入力は終了する。
【0023】
旅客案内装置10との通信が正常かどうかの判定(S100)がNGである場合、もしくは実行問合せボタンを押下(S135)後、実行(S140)しない場合、もしくは列車個別メッセージ放送情報の送信が成功(S160)でない場合は、列車個別メッセージ放送情報を登録するかどうかの判定(S170)により、登録する場合は、列車の指定(S110)の入力から再開する。登録しない場合、列車個別メッセージ放送情報入力は終了する。
【0024】
列車の指定(S110)は、当日ダイヤの列車一覧から選択する方式や、列車に割り付けられた番号(以下、列番)を直接入力する方式等により指定する。
【0025】
放送文章入力(S120)は、駅事務室用端末30のキーボードを使用し、テキスト形式で入力する。
【0026】
放送タイミング設定(S130)は、放送対象列車の発車時間を基点とし、何分前から放送するかの設定や、列車の到着に合わせ、接近・到着放送に続けて放送する設定等を、マウスによる選択やキーボードによる入力により実施する。
【0027】
図3は、旅客案内装置10が、運転整理装置60及び駅事務室用端末30から列車個別メッセージ放送情報を受信した場合の制御フローを示す説明図である。
【0028】
旅客案内装置10は、列車個別メッセージ放送情報を、運転整理装置60及び駅事務室用端末30から受信する。当該情報において、運転整理端末60からは、放送文章としてテキストデータ(音声合成用の中間言語未変換)を受信し、運転事務室用端末30からは、放送文章として音声合成用の中間言語を受信する。
【0029】
旅客案内装置10には、列車個別メッセージ放送情報を処理するタスクを常駐させる。
【0030】
運転整理端末60から列車個別メッセージ放送情報を受信した場合(S250)、駅事務室用端末30との通信が正常(S260)であれば、駅事務室用端末30へ当該情報を変更せず送信する(S270)。
【0031】
運転整理端末30から列車個別メッセージ放送情報を受信した場合(S200)、放送対象列車に対して放送するタイミングかどうかを判定(S210)し、放送するタイミングであった場合、該当する放送チャンネルのスピーカへ出力(S220)する。
【0032】
運転整理端末60からの列車個別メッセージ放送情報があるかどうかの判定(S250)により当該情報がなく、駅事務室用端末30からの列車個別メッセージ放送情報があるかどうかの判定(S200)により当該情報がなく、放送対象列車に対して放送するタイミングかどうかを判定(S210)し放送するタイミングでない場合、及び該当する放送チャンネルのスピーカへ出力(S220)が完了した場合、及び駅事務室用端末30との通信の判定(S260)が正常でない場合は、1秒間スリープ(S240)後、運転整理装置60からの列車個別メッセージ放送情報があるかどうかの判定(S250)から処理を再開する。
【0033】
図4は、旅客案内装置10が中央システムの運転整理装置60から列車個別メッセージ放送情報を受信後、当該情報を旅客案内端末10から駅事務室用端末30が受信した際の駅事務室用端末30の制御フローを示す説明図である。
【0034】
駅事務室用端末30が列車個別メッセージ放送情報を受信した場合、まず、駅事務員に対し、列車個別メッセージ放送情報を通知するアラームを、ビープ音と列車個別メッセージ放送情報画面を開くボタンの点滅で出力する(S300)。
【0035】
当該画面を開く(S310)と、列車個別メッセージ情報を閲覧する画面が表示され、画面に配置された視聴ボタンを押下(S320)すると、運転整理装置60から受信した放送文章を音声合成用の中間言語に変換(S330)し、視聴のため中間言語を音声として出力する(S335)。
【0036】
受信した列車個別メッセージ放送を実施するか否か、放送出力承認・却下を設定する(S340)。その後、登録問合せボタンを押下し(S360)、登録する場合で、旅客案内装置10との通信が正常である場合(S370)、列車個別メッセージ放送情報(放送文章は、中間言語に変換されたデータ)を送信する(S375)。送信が成功する(S380)と、処理は終了となる。
【0037】
なお、登録ボタン押下後旅客案内装置10との通信が正常(S370)でない場合、送信が成功(S380)しなかった場合は、異常である旨の警報を出力し処理を終了する。
【0038】
また、登録する(S360)際、キャンセルした場合、旅客案内装置10へ送信が成功した場合、そのまま処理を終了する。
【符号の説明】
【0039】
10 旅客案内装置
30 駅事務室用端末
40 表示器
50 スピーカ
60 運転整理装置
65 ダイヤ管理装置
68 運行管理装置
70 進路制御装置
80 他現場設備
90 ネットワーク回線
S100 旅客案内装置10との通信が正常かどうかの判定文
S110 列車を指定する操作
S120 音声合成用放送文章入力する操作
S121 視聴ボタンの押下する操作
S123 テキスト形式の放送文章を音声合成用の中間言語へ変換する処理
S125 音声を出力する処理
S128 放送文章を修正するかどうかの判定文
S130 放送タイミングを設定する操作
S135 実行問合せボタンの押下する操作
S140 旅客案内装置10へ列車個別メッセージ放送情報を送信するかどうかの判定文
S150 旅客案内装置10へ列車個別メッセージ放送情報を送信する処理
S160 旅客案内装置10へ列車個別メッセージ放送情報の送信が成功したかどうかの判定文
S170 列車個別メッセージ放送情報を登録するかどうかの判定文
S200 列車個別メッセージ放送情報があるかどうかの判定文
S210 列車個別メッセージ放送情報から、放送するタイミングであるかどうかの判定文
S220 該当チャンネルのスピーカへ音声出力する処理
S240 1秒間スリープする処理
S250 運転整理端末60からの列車個別メッセージ放送情報があるかどうかの判定文
S260 駅事務室用端末30との通信が正常かどうかの判定文
S270 駅事務室用端末30へ列車個別メッセージ放送情報を送信する処理
S300 運転整理端末60から列車個別メッセージ情報受信アラーム出力処理
S310 列車個別メッセージ放送情報画面を開く操作
S320 視聴ボタンを押下する操作
S330 テキスト形式の放送文章を音声合成用の中間言語へ変換する処理
S340 放送出力の承認・却下を設定する操作
S350 登録するかどうかを問合せるボタンを押下する操作
S360 登録するかどうかの判定文
S370 旅客案内装置10との通信が正常かどうかの判定文
S375 旅客案内装置10へ列車個別メッセージ放送情報を送信する処理
S380 送信が成功したかどうかの判定文
S390 列車個別メッセージ放送情報の登録不可の警報出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客案内装置と駅事務室用端末から構成され、前記駅事務室用端末は、ダイヤ情報の表示、メッセージの作成・編集、案内表示及び案内放送の詳細設定、保守を制御可能である旅客案内システムにおいて、
前記旅客案内装置は、上位装置から放送対象の列車の情報・放送文章のテキストデータ・放送するタイミングの列車個別メッセージ放送情報を受信し、受信したデータを駅事務室用端末へ送信することを特徴とする列車個別メッセージ放送が可能な旅客案内システム。
【請求項2】
請求項1に記載の旅客案内システムにおいて、前記駅事務室用端末は、前記旅客案内装置から受信した列車個別メッセージ放送情報を編集可能で、且つテキストデータである放送文章を音声合成用の中間言語に変換可能で、且つ音声合成により放送文章を視聴可能であることを特徴とする旅客案内システム。
【請求項3】
請求項2に記載の旅客案内システムにおいて、前記駅事務室用端末は、列車個別メッセージ放送情報を作成及び保持可能で、且つ放送文章(テキストデータ)を音声合成用の中間言語に変換可能で、且つ放送対象の列車の情報及び音声合成用の中間言語及び放送タイミングを前記旅客案内装置へ送信可能であることを特徴とする旅客案内システム。
【請求項4】
請求項3に記載の旅客案内システムにおいて、前記旅客案内装置は、放送対象の列車の情報及び音声合成用の中間言語の放送文章及び放送するタイミングを受信及び保持し、放送タイミングとなったとき、音声合成用の中間言語をWAV形式の波形データに変換し、スピーカへ出力可能であることを特徴とする旅客案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126385(P2011−126385A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285536(P2009−285536)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】