説明

列車制御システム、車上システムおよび地上システム

【課題】地上システムと車上システムとが円滑かつ確実にハンドオーバを行うことができ、継続的な無線通信を行うことができる列車制御システムを提供する。
【解決手段】列車制御システムは、拠点間ネットワーク1により接続される複数の拠点装置12と、各拠点装置12が接続された沿線ネットワーク2に接続される地上情報制御装置13と、前記地上情報制御装置13に接続され、前記列車に搭載される複数の車上無線局23が対応する複数の複数種類の周波数での無線通信が順に行われるように設置される複数の無線基地局14とを有する地上システムと、前記列車の制御を司る車上制御装置21と、前記車上制御装置21と車内ネットワーク20を介して接続される車上情報制御装置22と、前記車上情報制御装置22に接続され、前記複数の無線基地局14が用いる複数種類の周波数に対応する複数の車上無線局23とを有する車上システムとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、鉄道における列車を制御するためのシステムであり、地上側に設置された機器からなる地上システムと列車に搭載された機器からなる車上システムとが無線により情報授受を行う列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道などで列車制御に用いられる列車制御システムでは、路線上を走行する列車に搭載された車上制御装置と地上に設置された拠点装置とが情報通信を行うシステムが提案されている。従来の列車制御システムは、列車に搭載される車上制御装置と地上に設置される拠点装置との間で無線による情報通信を行う。このような無線通信を実現するため、列車側(車上側)には車上無線局が設けられ、地上側には無線基地局が設けられている。地上側のシステムにおいて、各無線基地局と各拠点装置とは、沿線通信ネットワークで接続される。各拠点装置には、列車が走行する路線に対して、管轄すべき領域が設定される。つまり、地上側のシステムでは、複数の拠点装置が管轄する領域を分担し合っている。また,各拠点装置は、相互に拠点間ネットワークで接続される。拠点間ネットワークは、統括的な指令を行うための指令所装置とも接続される。
【0003】
しかしながら,上述のように地上側と車上側とが無線伝送により情報の送受信を行いながら列車の走行制御を実施するような列車制御システムにおいては,列車に搭載された車上無線局が移動するため、車上無線局は地上側に設けた複数の無線基地局の中から通信可能な無線基地局を適宜選択すると共に、通信品質が保たれるように通信相手となる無線基地局を順次切り替えながら走行することが必要となる。このように、列車の進行と共に、車上無線局の通信相手となる地上側の無線基地局を順次切り替えていく処理は、ハンドオーバと称され、列車のような移動体と地上側とが無線通信により情報授受を行うシステムでは必須の技術となっている。
【0004】
従来のハンドオーバとしては、電波強度の強弱によってハンドオーバのタイミング及びハンドオーバ先の無線基地局を判断する方式が一般的である。たとえば、特許第3451543号では、あらかじめハンドオーバ点を決めておき、列車がハンドオーバ点に接近した場合には、地上側において下流側の無線基地局の無線チャンネルを予約して、ハンドオーバが行えるようにする提案がなされている。
このような車上無線局の通信相手先となる無線基地局を切り替えるハンドオーバ処理には、「同一の拠点装置の傘下にある無線基地局への切替」と「異なる拠点装置の傘下にある無線基地局への切替」とがある。特に、後者の場合には、ハンドオーバ後の無線基地局がそれまでの無線基地局とは異なる拠点装置の傘下に属する。このため、後者の制御は、前者の場合とは扱いが異なり円滑なハンドオーバが難しいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3451543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の一形態は、地上側と車上側とが円滑かつ確実に継続的な無線通信を行うことができる列車制御システム、地上システムおよび車上システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一形態としての車上システムは、列車に搭載されるものにおいて、前記列車の制御を司る車上制御手段と、前記車上制御手段と車内ネットワークを介して接続される車上情報制御手段と、前記車上情報制御手段に接続され、それぞれが地上に設置される複数の無線基地局が使用する複数種類の周波数による無線通信に対応する複数の車上無線通信手段とを有する。
【0008】
この発明の一形態としての地上システムは、路線を走行する列車との通信を行うためのものであって、第1のネットワークに接続される複数の拠点手段と、それぞれに1つの拠点手段が接続された第2のネットワークに接続される地上情報制御手段と、前記地上情報制御手段に接続され、前記列車が走行する路線の全てを通信範囲とし、かつ、前記列車に搭載される複数の車上無線通信手段が対応する複数の複数種類の周波数での無線通信が順に行われるように設置される複数の地上無線通信手段とを有する。
【0009】
この発明の一形態としての列車制御システムは、路線を走行する列車との通信を行うための地上システムと前記列車に搭載される車上システムとを有するものにおいて、前記車上システムは、前記列車の制御を司る車上制御手段と、前記車上制御手段と車内ネットワークを介して接続される車上情報制御手段と、前記車上情報制御手段に接続され、それぞれが地上に設置される複数の無線基地局が使用する複数種類の周波数による無線通信に対応する複数の車上無線通信手段とを有し、前記地上システムは、第1のネットワークに接続される複数の拠点手段と、それぞれに1つの拠点手段が接続された第2のネットワークに接続される地上情報制御手段と、前記地上情報制御手段に接続され、前記列車が走行する路線の全てを通信範囲とし、かつ、前記列車に搭載される複数の車上無線通信手段が対応する複数の複数種類の周波数での無線通信が順に行われるように設置される複数の地上無線通信手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
この発明の一形態によれば、地上側と車上側とが円滑かつ確実に継続的な無線通信を行うことができる列車制御システム、地上システムおよび車上システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、列車制御システムにおける地上側システムの構成例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、地上側システムと車上側システムとの無線通信制御を説明するための図である。
【図3】図3は、列車が1つの無線LANの伝送領域内に在線している状態を示している。
【図4】図4は、列車が同一の沿線ネットワークに属する2つの無線LANの伝送領域にまたがって在線している状態を示している。
【図5】図5は、列車が一方の無線LANの伝送領域を離脱し、他方の無線LANの伝送領域内にのみ在線している状態を示している。
【図6】図6は、列車が異なる沿線ネットワークに属する2つの無線LANの伝送領域にまたがって在線している状態を示している。
【図7】図7は、列車が1つの無線LANの伝送領域内に在線している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る列車制御システムは、地上に設置した地上側システム(地上システム)と列車に搭載した車上側システム(車上システム)とが情報を送受信することにより列車の走行を制御するシステムである。本実施の形態に係る列車制御システムでは、無線通信により地上側システムと車上側システムとが情報通信を行う。
【0013】
地上側システムは、地上に設置される各種の機器で構成される。地上側システムは、制御対象とする路線を走行中の列車との通信が可能なシステムである。地上側システムでは、運行スケジュールおよび各列車の運行状況などに基づいて各列車の運行を管理する。車上側システムは、列車に搭載される各種の機器で構成される。車上側システムは、地上側システムから与えられる情報に基づいて列車の制御を行う。また、車上側システムは、走行中に列車の速度情報あるいは位置情報を地上側システムに情報を提供する機能も有する。
【0014】
図1は、列車制御システムにおける地上側システムの構成例を概略的に示す図である。
図1に示す地上側システムは、拠点間ネットワーク1と複数の沿線ネットワーク2(2A、2B、…)とにより構成される。拠点間ネットワーク1は、指令所装置11と複数の拠点装置12(12A、12B、…)とを接続する。各沿線ネットワーク2A(2B、…)は、各拠点装置12A(12B、…)と複数の地上情報制御装置13A1、13A2、…(13B1、…)とを接続する。各地上情報制御装置13(13A1、13A2、…、13B1、…)には、それぞれ無線基地局14(14A11、…、14A12、…、14B11、…)が接続される。
【0015】
各沿線ネットワーク2に設置される各拠点装置12には、それぞれ管轄領域が割り当てられる。つまり、制御対象となる列車との通信が必要となる全領域は、各拠点装置12の管轄領域に分割される。各沿線ネットワーク2は、拠点装置12に割り当てられた管轄領域において、各列車の車上側システムとの無線通信を行うためのネットワークである。各沿線ネットワーク2において地上情報制御装置13には、当該管轄領域において列車に搭載された車上側システムとの無線通信が可能となるように設置される複数の無線基地局14が接続される。各無線基地局14は、地上情報制御装置13の制御により沿線ネットワーク2内の管轄領域における車上システムとの無線通信を行う。
【0016】
次に、図1に示す列車制御システムによる列車の制御について概略的に説明する。
まず、指令所装置11は、当該路線における各列車の運行スケジュールの基となるダイヤ管理を行う。また、指令所装置11は、拠点間ネットワークを介して各拠点装置から送信されてくる各列車の在線情報(各列車が何処に存在するかに関する情報)を収集する。指令所装置11は、各列車の運行スケジュールと各列車の在線情報等を基に、必要に応じてルート設定要求を各拠点装置に対して送信する。ルート設定要求とは、列車が走行予定ルートを安全に走行できるようにするための準備の要求である。
【0017】
ルート設定要求を受信した拠点装置12では、管轄領域に存在する各列車の在線位置を把握しながらルート設定要求の基となっているルートの設定を行う。たとえば、拠点装置12は、当該列車の走行予定ルート上に他列車が存在したり,当該列車の走行予定方向に転換されていない分岐器が存在したりしないかどうかを確認する。この確認結果に基づいて、拠点装置12は、可能ならば転てつ装置15に対して分岐器の転換指令を送信する。転てつ装置が分岐器の転換を完了したことを確認すると、拠点装置12は、対象となる転てつ装置15を鎖錠(ロック)する。このようなルート設定を行った場合、拠点装置12は、当該列車がどの地点まで走行できるかを示す停止限界位置を設定する。この停止限界位置情報は、地上情報制御装置により無線基地局を介して列車の車上側システムへ送信される。また、拠点装置12は、併せて各種の速度制限を示す情報等も、地上情報制御装置及び無線基地局を介して列車の車上側システムへ送信する。
【0018】
一方、列車の車上側システムでは、車上制御装置と車上情報制御装置とが車内ネットワークにより接続される。車上制御装置では、地上システムから受信した停止限界位置情報及び各種速度制限情報等に基づいて列車速度を監視しながら自動列車制御を行う。車上制御装置は、必要に応じて保安ブレーキ制御(たとえば、先行列車への追突回避制御、あるいは分岐器上での脱線回避制御などのための減速及び停止制御)を実施する。また、車上制御装置では、自らの速度検知および位置検知を行って、当該列車の先端および尾端位置情報を車上無線局と無線基地局とを経由して拠点装置12に送信する。
【0019】
以上のように、当該列車制御システムでは、地上側システムと車上側システムがデータ通信を行うことにより、列車の安全かつ円滑な走行を制御している。すなわち、列車制御システムでは、列車の安全かつ円滑な走行を制御するため、地上側システムと車上側システムとが円滑かつ確実にデータ通信を行うことが必要である。
【0020】
以下、列車制御システムに用いられる地上側システムと車上側システムとの通信制御について説明する。
図2は、地上側システムと車上側システムとの無線通信制御を説明するための図である。図2では、図中に矢印で示す列車走行方向に沿って、列車Aと列車Bが走行している状況を示している。
【0021】
図2に示すように、車上側システムでは、列車(A、B)内の車内ネットワーク20(20A、20B)により車上制御装置21(21A、21B)と車上情報制御装置22(22A、22B)とが接続される。
車上制御装置21A(21B)は、車内ネットワーク20A(20B)を介して車上情報制御装置22A(22B)から受信する制御情報に基づいて、列車の速度などを制御したり、保安ブレーキを制御したりする。
【0022】
車上情報制御装置22A(22B)は、複数の車上無線局23A1、23A2、…(23B1、23B2、…)を用いた地上側システムとの無線通信を制御する。車上情報制御装置22A(22B)には、複数の車上無線局23A1、23A2、…(23B1、23B2、…)が接続される。車上情報制御装置22Aに接続される複数の車上無線局には、異なる2種類の周波数で無線通信を行う2種類の車上無線局23A1、23A2が含まれる。たとえば、図2に示す構成例において、車上無線局23A1は、周波数f1で無線通信を行い、車上無線局23A2は、周波数f2で無線通信を行うものとする。
【0023】
また、図2に示すように、地上側システムは、図1に示す構成例と同様に、指令所装置11、複数の拠点装置12、複数の地上情報制御装置13、および複数の無線基地局14を有するシステムである。
各沿線ネットワークにおいて、拠点装置12は、複数の地上情報制御装置13に接続されている。たとえば、図2に示す構成例では、地上情報制御装置13A1及び13A2は、沿線ネットワーク2Aを介して拠点装置12Aと接続され、地上情報制御装置13B1及び13B2は、沿線ネットワーク2Bを介して拠点装置12Bと接続されている。
【0024】
各地上情報制御装置13の沿線ネットワーク側は、固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続されている。また、拠点装置12の沿線ネットワーク側も、固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続されている。従って、各沿線ネットワーク2では、固定IPアドレスにより複数の地上情報制御装置13と拠点装置12とが相互に特定されるようになっている。
【0025】
また、各地上情報制御装置13(13A1、13A2、13B1、13B2)は、それぞれ無線基地局14(14A1、14A2、14B1、14B2)の子機として接続されている。各地上情報制御装置13は、それぞれ無線基地局14よりIPアドレスを割り振られる。たとえば、各地上情報制御装置13には、DHCPによりIPアドレスが割り当てられる。
【0026】
各無線基地局14A1、14A2、14B1、14B2は、それぞれ別個の無線LANa1、a2、b1、b2を構成している。各無線LANa1、a2、b1、b2では、それぞれの無線基地局が無線LAN親機として機能する。また、各無線基地局14A1、14A2、14B1、14B2は、それぞれ別個のSSID(無線LANにおけるアクセスポイントの識別子)を有する。すなわち、本列車制御システムにおいて、拠点間ネットワーク、沿線ネットワーク、車内ネットワークおよび各無線LANは、それぞれ別個のネットワークを構成している。
【0027】
車上情報制御装置22は、列車内の車内ネットワークにより車上制御装置21と接続されている。たとえば、列車A内では、車上情報制御装置22Aが車内ネットワーク20Aを介して車上制御装置21Aに接続され、列車B内では、車上情報制御装置22Bが車内ネットワーク20Bを介して車上制御装置21Bに接続されている。
各車上情報制御装置22の車内ネットワーク20側は、固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続されている。また、各車上制御装置21の車内ネットワーク20側も、固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続されている。
【0028】
各列車内において、車上情報制御装置22は、2つの車上無線局に接続されている。たとえば、列車A内では、車上情報制御装置22Aが車上無線局23A1及び車上無線局23A2に接続され、列車B内では、車上情報制御装置22Bが車上無線局23B1及び車上無線局23B2に接続されている。これらの各車上無線局23(23A1、23A2、23B1、23B2)は、各無線LANa1、a2、b1、b2において無線LAN子機として機能し、無線LAN親機としての無線基地局に接続する。
【0029】
車上情報制御装置22は、車上無線局23により無線通信による接続が成立した相手先の無線基地局(無線LAN親機)よりIPアドレスが割り振られる。たとえば、車上情報制御装置22は、無線基地局14からDHCPによりIPアドレスが割り当てられる。
【0030】
また、各地上情報制御装置13は、拠点装置12からの受信情報を無線基地局14側にブロードキャスト転送する。地上情報制御装置13は、無線基地局14からの受信情報を拠点装置12へ転送する。
【0031】
各車上情報制御装置22は、車上制御装置21からの受信情報を車上無線局23へブロードキャスト送信する。例えば、車上情報制御装置22Aは,車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A1、車上無線局23A2、または、車上無線局23A1及び23A2の両者へブロードキャスト送信する。車上情報制御装置22Bは,車上制御装置21Bからの受信情報を車上無線局23B1、車上無線局23B2、または、車上無線局23B1及び23B2の両者へブロードキャスト送信する。
【0032】
また、各車上情報制御装置22は、車上無線局23からの受信情報を車上制御装置21へ転送する。たとえば、車上情報制御装置22Aは、車上無線局23A1、車上無線局23A2、または、車上無線局23A1及び23A2の両者からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。車上情報制御装置22Bは、車上無線局23B1、車上無線局23B2、または、車上無線局23B1及び23B2の両者からの受信情報を車上制御装置21Bへ転送する。
【0033】
各無線基地局14への周波数(チャンネル)の割当は、使用可能なチャンネルが2チャンネル(周波数f1およびf2)の場合、無線基地局の並びに沿って交互に割り当てている。このような異なる周波数の割り当ては、無線通信の相互干渉を回避するためである。たとえば、図2に示す構成例では、無線基地局14A1の周波数をf1とし、無線基地局14A1に隣接する無線基地局14A2の周波数をf2とし、無線基地局14A2に隣接する無線基地局14B1の周波数をf1とし、無線基地局14B1に隣接する無線基地局14B2の周波数をf2としている。
【0034】
各無線基地局と無線通信するため、各列車には、周波数f1対応の車上無線局と、周波数f2対応の車上無線局とが搭載されている。たとえば、図2に示す構成例では、列車Aには、周波数f1対応の車上無線局A1と周波数f2対応の車上無線局A2が搭載され、列車Bには、周波数f1対応の車上無線局B1と周波数f2対応の車上無線局B2とが搭載されている。
【0035】
次に、列車の移動に伴う無線通信制御について説明する。
図3から図7は、列車の移動に伴う無線基地局の切り替え(ハンドオーバ)を説明するための図である。図3から図7では、列車Aに移動に応じた各無線基地局との接続状態を模式的に示している。
【0036】
まず、図3では、列車Aが無線LANa1の無線伝送領域内に在線していることを示してる。図3に示す状態では、列車Aが無線LANa1の無線伝送領域内に在線しているため、周波数f1対応の車上無線局23A1は無線基地局14A1と接続状態にある。この状態において、車上情報制御装置22Aは、無線基地局14A1によりIPアドレスが割り当てられている。また、図3に示すような在線位置においては、周波数f2対応の車上無線局23A2は、地上側システムのどの無線基地局とも接続状態にない。図3に示すような状態での情報の流れは、以下のようになる。
【0037】
(1−1)地上情報制御装置13A1は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A1側にブロードキャスト転送する。
【0038】
(1−2)地上情報制御装置13A2は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A2側にブロードキャスト転送する。
【0039】
(1−3)地上情報制御装置13A1は、無線基地局14A1からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0040】
(1−4)地上情報制御装置13A2は、無線基地局14A2からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0041】
(1−5)拠点装置12Aは、無線基地局14A1からの受信情報を有効と判断する。
【0042】
(1−6)車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A1へブロードキャスト送信する。
【0043】
(1−7)車上情報制御装置22Aは、車上無線局23A1からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。
【0044】
すなわち、列車Aが図3に示す状態である場合、地上側システムでは、拠点装置12からの情報は、地上情報制御装置13A1及び13A2を介して、それぞれ無線基地局14A1及び14A2へ転送される。無線基地局14A1は、拠点装置12からの情報を周波数f1により無線LANa1内で無線伝送し、無線基地局14A2は、拠点装置12からの情報を周波数f2により無線LANa2内で無線伝送する。また、地上側システムにおいて、地上情報制御装置13A1及び13A2は,それぞれ無線基地局14A1および無線基地局14A2から受信した情報を拠点装置12へ転送する。拠点装置12Aは、車上側システムの車上無線局23A1と接続状態にある無線基地局14A1からの受信情報を有効な情報として取得する。つまり、図3に示す状態では、地上側システムは、拠点装置12Aの傘下にある無線基地局14A1により車上側システムと無線通信を行う。
【0045】
一方、車上側システムでは、車上無線局23A1は、地上側システムの無線基地局14A1との接続が成立するが、車上無線局23A2は地上側システムの無線基地局との接続が成立しない。このため、車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの情報を車上無線局23A1により、地上側システムの無線基地局14A1へ送信する。また、地上側システムの無線基地局14A1からの情報は、車上無線局23A1が受信し、車上情報制御装置22Aを介して車上制御装置21Aへ伝送される。
【0046】
さらに、図3に示す状態から列車Aが移動すると、地上側システムと車上側システムとは、図4に示すような接続状態となる。図4は、列車Aが無線LANa1の無線伝送領域と無線LANa2の無線伝送領域とにまたがって在線している状態を示している。
【0047】
すなわち、列車Aが無線LANa1と無線LANa2との両者の無線伝送領域内にまたがって在線している場合、周波数f1対応の車上無線局23A1は、引き続き無線基地局14A1と接続状態のままで、周波数f2対応の車上無線局23A2は、新たに無線基地局14A2と接続状態となる。また、車上情報制御装置22Aには、新に接続された無線基地局14A2によりIPアドレスが割り当てられる。
【0048】
本システムにおいて、列車に搭載される車上側システムには少なくとも車上無線局が2台ある。2台の車上無線局には、それぞれ周波数f1と周波数f2とがそれぞれ割り当てられる。つまり、車上側システムとしては、周波数f1と周波数f2との両チャンネルで同時に無線接続が可能である。この結果として、本システムでは、地上側システムの無線基地局の切替えに伴う電波強度による切替判断等の複雑なハンドオーバ処理が不要となる。
【0049】
図4に示すような在線位置において、車上側システムは、地上側システムにおける隣接する2つの無線基地局14A1及び14A2と接続状態にある。このような状態での情報の流れは、以下のようになる。
(2−1)地上情報制御装置13A1は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A1側にブロードキャスト転送する。
【0050】
(2−2)地上情報制御装置13A2は,拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A2側にブロードキャスト転送する。
【0051】
(2−3)地上情報制御装置13A1は,無線基地局14A1からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0052】
(2−4)地上情報制御装置13A2は,無線基地局14A2からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0053】
(2−5)拠点装置12Aは,無線基地局14A1及び無線基地局14A2からの受信情報を有効と判断する。
【0054】
(2−6)車上情報制御装置22Aは,車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A1及び23A2へブロードキャスト送信する。
【0055】
(2−7)車上情報制御装置22Aは,車上無線局23A1及び23A2からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。
【0056】
すなわち、列車Aが図4に示す状態である場合、地上側システムでは、拠点装置12からの情報は、地上情報制御装置13A1及び13A2を介して、それぞれ無線基地局14A1及び14A2へ転送される。無線基地局14A1は、拠点装置12からの情報を周波数f1により無線LANa1内で無線伝送し、無線基地局14A2は、拠点装置12からの情報を周波数f2により無線LANa2内で無線伝送する。また、地上側システムにおいて、地上情報制御装置13A1及び13A2は,それぞれ無線基地局14A1および無線基地局14A2から受信した情報を拠点装置12へ転送する。拠点装置12Aは、車上側システムの車上無線局23A1と接続状態にある無線基地局14A1及び無線基地局14A2からの受信情報を共に有効な情報として取得する。つまり、図4に示す状態では、地上側システムは、拠点装置12Aの傘下にある無線基地局14A1及び14A2がそれぞれ異なる周波数で車上側システムと無線通信を行う。
【0057】
一方、車上側システムにおいて、車上無線局23A1及び車上無線局23A2は、それぞれ地上側システムの無線基地局14A1および14A2との接続が成立する。このため、車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの情報を車上無線局23A1及び23A2により、地上側システムの無線基地局14A1及び14A2へ送信する。また、地上側システムの無線基地局14A1及び14A2からの情報は、それぞれ車上無線局23A1及び23A2が受信し、車上情報制御装置22Aを介して車上制御装置21Aへ伝送される。
【0058】
さらに、図4に示す状態から列車Aが移動すると、地上側システムと車上側システムとは、図5に示すような接続状態となる。図5は、列車Aが無線LANa1の無線伝送領域を離脱し、無線LANa2の無線伝送領域内に在線していることを示している。図5に示す状態では、列車Aが無線LANa2の無線伝送領域内にのみ在線しているため、周波数f2対応の車上無線局23A2は無線基地局14A1と接続状態にあるが、周波数f1対応の車上無線局23A1は地上システムのどの無線基地局とも接続状態にない。図5に示すような状態での情報の流れは、以下のようになる。
【0059】
(3−1)地上情報制御装置13A1は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A1側にブロードキャスト転送する。
【0060】
(3−2)地上情報制御装置13A2は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A2側にブロードキャスト転送する。
【0061】
(3−3)地上情報制御装置13A1は、無線基地局14A1からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0062】
(3−4)地上情報制御装置13A2は、無線基地局14A2からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0063】
(3−5)拠点装置12Aは、無線基地局14A2からの受信情報を有効と判断する。
【0064】
(3−6)車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A2へブロードキャスト送信する。
【0065】
(3−7)車上情報制御装置22Aは、車上無線局23A2からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。
【0066】
すなわち、列車Aが図5に示す状態である場合、地上側システムでは、無線基地局14A1は、拠点装置12Aからの情報を周波数f1で無線LANa1内で無線伝送し、無線基地局14A2は、拠点装置12からの情報を周波数f2で無線LANa2内で無線伝送する。また、地上側システムにおいて、無線基地局14A1および無線基地局14A2は、それぞれ受信した情報を拠点装置12Aへ転送する。図5に示す状態では、拠点装置12Aは、車上側システムの車上無線局23A2と接続状態にある無線基地局14A2からの受信情報を有効な情報として取得する。つまり、図5に示す状態では、地上側システムは、拠点装置12Aの傘下にある無線基地局14A2により車上側システムと無線通信を行う。
【0067】
一方、車上側システムでは、車上無線局23A2は、地上側システムの無線基地局14A2との接続が成立するが、車上無線局23A1は地上側システムの無線基地局との接続が成立しない。このため、車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの情報を車上無線局23A2により地上側システムの無線基地局14A2へ送信する。また、地上側システムの無線基地局14A2からの情報は、車上無線局23A2が受信し、車上情報制御装置22Aを介して車上制御装置21Aへ伝送される。
【0068】
さらに、図5に示す状態から列車Aが移動すると、地上側システムと車上側システムとは、図6に示すような接続状態となる。図6は、列車Aが無線LANa2の無線伝送領域と無線LANb1の無線伝送領域とにまたがって在線している状態を示している。また、無線LANa2を形成する無線基地局14A2と無線LANb1を形成する無線基地局14B1とは、異なる沿線ネットワークに接続されるものでもある。従って、図6は、列車Aが2つの沿線ネットワークにまたがって在線している状態を示しているとも言える。
【0069】
すなわち、列車Aが無線LANa2と無線LANb1との両者の無線伝送領域内にまたがって在線している場合、周波数f1対応の車上無線局23A1は、無線基地局14B1と接続状態となり、周波数f2対応の車上無線局23A2は、引き続き無線基地局14A2と接続状態を継続する。また、車上情報制御装置22Aには、新たに接続された無線基地局14B1によりIPアドレスが割り当てられる。
【0070】
本システムにおいては、上述したように、車上側システムは、2台の車上無線局により周波数f1と周波数f2との両チャンネルで同時に無線接続が可能である。この結果として、本システムでは、異なる沿線ネットワークの無線基地局を切替える場合であっても、電波強度による切替判断等の複雑なハンドオーバ処理が不要となる。図6に示すような在線位置においては、車上側システムは、異なる沿線ネットワーク2A及び2Bに接続されている2つの無線基地局14A2及び14B1と接続状態にある。このような状態での情報の流れは、以下のようになる。
【0071】
(4−1)地上情報制御装置13A2は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A2側にブロードキャスト転送する。
【0072】
(4−2)地上情報制御装置13B1は,拠点装置12Bからの受信情報を無線基地局14B1側にブロードキャスト転送する。
【0073】
(4−3)地上情報制御装置13A2は,無線基地局14A2からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0074】
(4−4)地上情報制御装置13B1は,無線基地局14B1からの受信情報を拠点装置12Bへ転送する。
【0075】
(4−5)拠点装置12Aは,無線基地局14A2からの受信情報を有効と判断する。
【0076】
(4−6)拠点装置12Bは,無線基地局14B1からの受信情報を有効と判断する。
【0077】
(4−7)車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A1及び23A2へブロードキャスト送信する。
【0078】
(4−8)車上情報制御装置22Aは,車上無線局23A1及び23A2からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。
【0079】
すなわち、列車Aが図6に示す状態である場合、地上側システムでは、拠点装置12Aからの情報は、地上情報制御装置13A1及び13A2を介して無線基地局14A1及び14A2へ転送され、拠点装置12Bからの情報は、地上情報制御装置13B1及び13B2を介して無線基地局14B1及び14B2へ転送される。無線基地局14A1は、拠点装置12Aからの情報を周波数f1で無線LANa1内で無線伝送し、無線基地局14A2は、拠点装置12Aからの情報を周波数f2で無線LANa2内で無線伝送する。無線基地局14B1は、拠点装置12Bからの情報を周波数f1で無線LANb1内で無線伝送し、無線基地局14B2は、拠点装置12Bからの情報を周波数f2で無線LANb2内で無線伝送する。
【0080】
また、地上側システムにおいて、地上情報制御装置13A1及び13A2は,それぞれ無線基地局14A1および無線基地局14A2から受信した情報を拠点装置12Aへ転送する。図6に示す状態では、拠点装置12Aは、車上側システムの車上無線局23A2と接続状態にある無線基地局14A2からの受信情報を有効な情報として取得する。また、地上情報制御装置13B1及び13B2は,それぞれ無線基地局14B1および無線基地局14B2から受信した情報を拠点装置12Bへ転送する。図6に示す状態では、拠点装置12Bは、車上側システムの車上無線局23A2と接続状態にある無線基地局14B1からの受信情報を有効な情報として取得する。
【0081】
つまり、図6に示す状態では、地上側システムは、拠点装置12Aの傘下にある無線基地局14A2と拠点装置12Bの傘下にある無線基地局14B1とが異なる周波数により車上側システムと無線通信を行う。
【0082】
一方、車上側システムにおいて、車上無線局23A1及び車上無線局23A2は、それぞれ地上側システムの無線基地局14B1および14A2との接続が成立する。このため、車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの情報を車上無線局23B1及び23A2により、地上側システムの無線基地局14B1及び14A2へ送信する。また、地上側システムの無線基地局14B1及び14A2からの情報は、それぞれ車上無線局23B1及び23A2が受信し、車上情報制御装置22Aを介して車上制御装置21Aへ伝送される。車上側システムでは、図6に示すように、2台の車上無線局23A1及び車上無線局23A2がそれぞれ異なる沿線ネットワーク2A、2Bの無線基地局に接続される状態であっても、図4に示す状態と同様な通信制御が行える。
【0083】
さらに、図6に示す状態から列車Aが移動すると、地上側システムと車上側システムとは、図7に示すような接続状態となる。図7は、列車Aが無線LANa2の無線伝送領域を離脱し、無線LANb1の無線伝送領域内に在線していることを示している。図7に示す状態では、列車Aが無線LANb1の無線伝送領域内にのみ在線しているため、周波数f1対応の車上無線局23A1は無線基地局14B1と接続状態にあるが、周波数f2対応の車上無線局23A2は地上システムのどの無線基地局とも接続状態にない。図7に示すような状態での情報の流れは、以下のようになる。
【0084】
(5−1)地上情報制御装置13A2は、拠点装置12Aからの受信情報を無線基地局14A2側にブロードキャスト転送する。
【0085】
(5−2)地上情報制御装置13B1は、拠点装置12Bからの受信情報を無線基地局14B1側にブロードキャスト転送する。
【0086】
(5−3)地上情報制御装置13A2は、無線基地局14A2からの受信情報を拠点装置12Aへ転送する。
【0087】
(5−4)地上情報制御装置13B1は、無線基地局14B1からの受信情報を拠点装置12Bへ転送する。
【0088】
(5−5)拠点装置12Aは、無線基地局14A2からの受信情報を無効と判断する。
【0089】
(5−6)拠点装置12Bは、無線基地局14B1からの受信情報を有効と判断する。
【0090】
(5−7)車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの受信情報を車上無線局23A1へブロードキャスト送信する。
【0091】
(5−8)車上情報制御装置22Aは、車上無線局23A1からの受信情報を車上制御装置21Aへ転送する。
【0092】
すなわち、列車Aが図7に示す状態である場合、地上側システムにおいて、拠点装置12Aは、どの無線基地局14A1及び14A2も車上側システムの車上無線局との接続状態でないため、無線基地局14A1及び14A2からの情報を無効と判断する。また、図7に示す状態では、拠点装置12Bは、無線基地局14B1が車上側システムの車上無線局23A1と接続状態であるため、無線基地局14B1からの情報を有効と判断する。つまり、図7に示す状態では、地上側システムは、拠点装置12Bの傘下にある無線基地局14B1により車上側システムと無線通信を行う。
【0093】
一方、車上側システムでは、車上無線局23A1は、地上側システムの無線基地局14B1との接続が成立するが、車上無線局23A2は地上側システムの無線基地局との接続が成立しない。このため、車上情報制御装置22Aは、車上制御装置21Aからの情報を車上無線局23A1により地上側システムの無線基地局14B1へ送信する。また、地上側システムからの情報は、無線基地局14B1から車上無線局23A1が受信し、車上情報制御装置22Aを介して車上制御装置21Aへ伝送される。
【0094】
以上のような処理を繰り返し実行することにより、列車が走行する沿線に並べて設置された複数の無線基地局に対するハンドオーバ処理が実施される。上述したシステムでは、車上側の周波数f1に対応した車上無線局と周波数f2に対応した車上無線局とのうち何れか一方または両方が、周波数の対応する接続可能な地上側の無線基地局と自動的に接続されるように構成されている。このため、上述のシステムでは、各車上無線局のチャンネル切替(周波数切替)に関する複雑なハンドオーバ処理が不要となる。
【0095】
また、車上無線局の通信相手先となる無線基地局を切り替えるハンドオーバ処理には、「同一の拠点装置の傘下にある無線基地局への切替」と「異なる拠点装置の傘下にある無線基地局への切替」との2種類がある。特に後者の場合、ハンドオーバ後の無線基地局がそれまでの無線基地局群とは異なる群(異なる沿線ネットワーク)に属するため、車上側が車上無線局が1台だけであれば、前者とは扱いが異なり円滑なハンドオーバが難しいとされている。しかしながら、本実施の形態に係る列車制御システムでは、後者のように当該列車を管理する拠点装置が切り替わる場合であって、隣接する無線基地局のうち何れか一方または両方と車上無線局との接続が自動的になされるため、拠点装置の切替に絡む複雑な処理が不要となる。また、以上のような通信制御によれば、無線通信の連続性を確実に維持できるハンドオーバが可能となる。
【0096】
また、本実施の形態に係る列車制御システムでは、車上制御装置と車上無線局とが直接接続されるのではなく、間に車上情報制御装置が挿入される形で接続されている。このため、本システムにおいて、車上制御装置の車内ネットワーク側は、固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続でき、車上情報制御装置の車内ネットワーク側も固定IPアドレス(固定の接続識別情報)で接続できることになる。これらの固定IPアドレス(固定の接続識別情報)は、列車毎に変える必要はない。これは、列車に搭載する車上制御装置および車上情報制御装置の品質管理を容易にするという特長につながる。
【0097】
さらに、本実施の形態に係る列車制御システムでは、以下のように特長が列挙される。
【0098】
(1)各車上無線局のチャンネル切替手続き(周波数切替手続き)が不要となる。
【0099】
(2)チャンネルの切替(周波数切替)に伴う複雑なハンドオーバ処理が不要となる。
【0100】
(3)無線通信の連続性を確実かつ円滑に維持できるハンドオーバが可能となる。
【0101】
(4)車上側システムにおいては、車上制御装置は、情報授受の相手先としての車上情報制御装置のみを意識すれば通信可能となる(つまり、地上側システムの相手先となる拠点装置を意識して通信を行う必要がない)。
【0102】
なお、上記実施の形態では、各列車が2種類の周波数に各々個別に対応付けた2個の車上無線局を有するシステムの構成例について説明した。ただし、各列車の車上側システムは、3種類以上(例えば3種類)の周波数に各々個別に対応付けた複数(例えば3個)の車上無線局を搭載する構成としても良い。この場合、地上側システムは、複数種類(例えば3種類)の周波数に各々個別に対応付けた複数の無線基地局と個別に接続され、かつ、拠点装置とも接続された地上側の情報制御手段を有する構成とすれば良い。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態に係る列車制御システムでは、列車に搭載される車上側システムと地上側システムとの情報授受を無線伝送で行う場合に、地上側システムにおける複数の無線基地局の切替え、つまりハンドオーバを円滑かつ確実に行うことが可能となる。このような通信システムを適用した列車制御システムでは、地上側と車上側との無線通信が確実に行えるため、結果として列車走行を円滑にでき、列車走行の安全性を高めることも可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1…拠点間ネットワーク(第1のネットワーク)、11…指令所装置、2(2A、2B)…沿線ネットワーク(第2のネットワーク)、12(12A、12B)…拠点装置(拠点手段)、13(13A1、13A2、13B1、13B2)…地上情報制御装置(地上情報制御手段)、14(14A1、14A2、14B1、14B2)…無線基地局(地上無線通信手段)、a1、a2、b1、b2…無線LAN、20(20A、20B)…車内ネットワーク、21(21A、21B)…車上制御装置(車上制御手段)、22(22A、22B)…車上情報制御装置(車上情報制御手段)、23(23A1、23A2、23B1、23B2)…車上無線局(車上無線通信手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載される車上システムにおいて、
前記列車の制御を司る車上制御手段と、
前記車上制御手段と車内ネットワークを介して接続される車上情報制御手段と、
前記車上情報制御手段に接続され、それぞれが地上に設置される複数の無線基地局が使用する複数種類の周波数による無線通信に対応する複数の車上無線通信手段と、
を備えて成ることを特徴とする車上システム。
【請求項2】
前記車上制御手段は、固定の接続識別情報で前記車上情報制御手段に接続される、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の車上システム。
【請求項3】
前記車上情報制御手段は、固定の接続識別情報で前記車上制御手段に接続される、
ことを特徴とする前記請求項1又は2の何れかに記載の車上システム。
【請求項4】
路線を走行する列車との通信を行うための地上システムであって、
第1のネットワークに接続される複数の拠点手段と、
それぞれに1つの拠点手段が接続された第2のネットワークに接続される地上情報制御手段と、
前記地上情報制御手段に接続され、前記列車が走行する路線の全てを通信範囲とし、かつ、前記列車に搭載される複数の車上無線通信手段が対応する複数の複数種類の周波数での無線通信が順に行われるように設置される複数の地上無線通信手段と、を有する、
ことを特徴とする地上システム。
【請求項5】
前記拠点手段は、固定の接続識別情報で地上情報制御手段と接続される、
ことを特徴とする前記請求項4に記載の地上システム。
【請求項6】
前記地上情報制御手段は、固定の接続識別情報で拠点手段と接続される、
ことを特徴とする前記請求項4又は5に記載の地上システム。
【請求項7】
路線を走行する列車との通信を行うための地上システムと、前記列車に搭載される車上システムとを有する列車制御システムにおいて、
前記車上システムは、
前記列車の制御を司る車上制御手段と、
前記車上制御手段と車内ネットワークを介して接続される車上情報制御手段と、
前記車上情報制御手段に接続され、それぞれが地上に設置される複数の無線基地局が使用する複数種類の周波数による無線通信に対応する複数の車上無線通信手段と、を有し、
前記地上システムは、
第1のネットワークに接続される複数の拠点手段と、
それぞれに1つの拠点手段が接続された第2のネットワークに接続される地上情報制御手段と、
前記地上情報制御手段に接続され、前記列車が走行する路線の全てを通信範囲とし、かつ、前記列車に搭載される複数の車上無線通信手段が対応する複数の複数種類の周波数での無線通信が順に行われるように設置される複数の地上無線通信手段と、を有する、
ことを特徴とする列車制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−166361(P2011−166361A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25598(P2010−25598)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】