説明

列車制御車上装置

【課題】帰還発振回路を用いずに地上子の共振周波数の誤検知を防止し、共振周波数検知精度を向上させる。
【解決手段】列車制御車上装置は、信号生成部12と、車上子11と、信号検出部13とを備える。信号生成部12は、ある特定の時間周期で、共振器の共振周波数を含む許容変動範囲で周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する。車上子11は、周波数スイープ信号を受ける第1コイル11aと、第1コイルとの電磁結合により信号を得る第2コイル11bを有し、地上子15と電磁結合したとき、第1コイル11aで受けた周波数スイープ信号のうち共振器の共振周波数に応じた信号成分を、地上子15を介して第2コイル11bで得る。信号検出部13は、車上子11の前記第2コイル11bで得られた信号を、ある特定の時間周期と等しい時間周期でフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号に基づき、地上子15の検出処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、自動列車停止(Automatic Train Stop:ATS)の列車制御車上装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動列車停止(Automatic Train Stop:ATS)車上装置においては、地上子と車上子とが結合した際、常時発振周波数が地上子に設定された共振周波数に変化することを検知する、いわゆる周波数の引き込み現象を利用した変周方式が知られている。しかしながら、変周式のATS車上装置は、帰還発振回路を用いるため、常時および変周時においてそれぞれ発振条件を満たすように回路設計する必要があり、発振回路に用いるアナログ回路素子バラツキや周辺の金属などの影響により、不安定な発振状態で作り出す仕組みであることから、帰還発振回路を用いず、常時発振周波数を変周させる必要のないATS装置が提案されている。
【0003】
1つの提案(従来技術1)では、地上子で用いられている共振周波数f1〜fnにそれぞれ対応した周波数信号を発振器にて発生させ、それぞれを加算した信号を車上子1次コイルから出力し、車上子が地上子と電磁結合した際に、加算信号に含まれる周波数の信号の1つが地上子の共振周波数に同調することで該周波数の信号レベルが大きくなることを利用することで実現している。
【0004】
一方、別の提案(従来技術2)では、f1〜fnを含むスペクトラム拡散信号を発生させ、その信号を車上子1次コイルから出力することで実現している。このように、地上子と電磁結合した際に共振(同調)するように、地上子で用いられうる全ての共振周波数を含んだスペクトルを有した信号を車上子1次コイルから出力することで、帰還発振回路を用いないATS車上装置を実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−58588号公報
【特許文献2】特開2005−229789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の帰還発振回路を用いない自動列車制御車上装置は以下のような問題点を有している。
【0007】
経年劣化や製造時の誤差により、地上子が有する共振周波数に変動(ずれ)が生じてしまう。そのため上記従来技術1のように、地上子の共振周波数に対応した信号を車上子から送信する方法の場合、車上子からの送信信号に対して地上子の共振周波数にずれが生じると、車上子2次コイルに誘起する信号レベルの大きさが低下する。地上子の共振の尖鋭度(Q値)が大きいほど、その影響は大きい。場合によっては、車上子が地上子上を通過したにも関わらず、車上子2次コイルでの受信信号レベルが誘起しないことも考えられる。車上装置での共振周波数検知精度は、車上子2次コイルで誘起する信号レベルに大きく影響するため、上記従来の方法では地上子共振周波数にずれが生じた場合に、共振周波数検知精度が低下するという問題があった。また、一般的に検知精度向上のため、車上子2次コイルで受信した信号を用いて算出したQ値を判定に利用することも考えられるが、上記従来の方法では共振周波数に対応した各正弦波(単一周波数)を加算するのみであるため、車上子2次コイルでの受信信号を用いてQ値を算出することは不可能である。
【0008】
一方、スペクトラム拡散信号を利用した上記従来技術2の場合、擬似雑音を送信することになるため、送信スペクトルの振幅の分布は一様分布ではなくレイリー分布に従う。当然ながら、車上子2次コイルでの受信スペクトル振幅は、送信スペクトル振幅を基に誘起したものとなるため、地上子と車上子が電磁結合した際、必ずしも地上子の共振周波数がピーク周波数となるとは限らず、共振周波数を誤検知する可能性がある。また、少なくともf1〜fnを含む周波数帯域幅を有しているため、Q値に関しては算出することは可能であるものの、得られる算出Q値の精度は低いものである。
【0009】
このように従来の方法では、車上装置が地上子の共振周波数の検知を行う際、共振周波数の検知精度を低下させてしまう問題があった。
【0010】
この発明の一側面は、帰還発振回路を用いず、かつ、地上子の共振周波数の誤検知を防止するとともに共振周波数検知精度を向上できるようにした列車制御車上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態としての列車制御車上装置は、共振器を含む地上子を用いて列車制御を行う列車制御車上装置であって、信号生成部と、車上子と、信号検出部とを備える。
【0012】
前記信号生成部は、ある特定の時間周期で、前記共振器の共振周波数を含む許容変動範囲で周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する。
【0013】
前記車上子は、前記周波数スイープ信号を受ける第1コイルと、前記第1コイルとの電磁結合により信号を得る第2コイルを有し、前記地上子と電磁結合したとき、前記第1コイルで受けた前記周波数スイープ信号のうち前記共振器の共振周波数に応じた信号成分を、前記地上子を介して前記第2コイルで得る。
【0014】
前記信号検出部は、前記車上子の前記第2コイルで得られた信号を、前記ある特定の時間周期と等しい時間周期でフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号に基づき、前記地上子の検出処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の列車制御車上装置の構成例を示すブロック図。
【図2】車上子1次コイルに印加されるスペクトル波形の例を示す図。
【図3】信号生成部の他の構成例を示すブロック図。
【図4】FFT演算部で出力されるスペクトル波形の例を示す図。
【図5】周波数スイープ周期とFFT周期における関係の違いによるFFT出力結果の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施形態の列車制御車上装置の構成例を示すブロック図である。
【0018】
図1の列車制御車上装置は、少なくとも車上子11と信号生成部12と信号検出部13と制御部14を有する。車上子11は、列車が走行するに従い地上に設置された地上子15と電磁結合する。地上子15は、共振器(図1の例ではコイルとキャパシタを直列接続したLC共振器の例が示されるが、地上子はこれに限定されるものではない)により構成され、1つの共振周波数を有している。本実施形態では地上子15は周波数f1〜fnのいずれか1つを、共振周波数として有している(例えば、103kHz, 108kHz, 123kHz, 130kHz等のうちいずれか1つ)。
【0019】
ここで列車とは、線路等のレールの上を走行する車両であり、たとえば電車、新幹線、モノレール、リニアモーターカーがこれに該当する。本実施形態の列車制御車上装置は、この列車に搭載される。上記の地上子15は、レールの所定の箇所に、設けられる。地上子15を設ける箇所は一箇所でもよいし、複数箇所でもよい。本実施形態では、複数箇所に地上子を設ける場合を示す。
【0020】
信号生成部12は、ある特定の時間周期で、各地上子の共振周波数をそれぞれ含む許容変動範囲のそれぞれで周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する。信号生成部12は、各生成した周波数スイープ信号を加算し、加算信号を、D/A変換および増幅する。
【0021】
車上子11は、1次コイル11aと2次コイル11bにより構成されている。1次コイル11aと2次コイル11bは電磁的に結合可能に配置されている。たとえば1次コイル11aと2次コイル11bは互いに電磁的に疎結合するように配置されている。信号生成部12で生成された信号は、1次コイル11aに印加される。一方、2次コイル11bは、1次コイル11aおよび地上子15の少なくとも前者との電磁結合により得た信号を、信号検出部13に入力する。
【0022】
車上子11(1次コイル11aと2次コイル11b)が地上子15と電磁結合していないときは、すなわち2次コイル11bが一次コイル11aとのみ結合しているときは、2次コイル11bは、1次コイル11aで受けた周波数スイープ信号のすべての周波数帯域を、1次コイル11aとの結合により受ける。
【0023】
一方、車上子11が地上子15と電磁結合したときは、すなわち車上子11のコイル11a,11bと、地上子15のコイルとが電磁結合したときは、地上子15の共振周波数およびその近傍の信号成分に関しては、コイル11a−地上子15−コイル11bの共振器結合により、地上子15を介しての信号受信(地上子15における共振信号の受信)が支配的となり、それ以外の周波数の信号成分に関しては、1次コイル11aとの電磁結合による信号受信が支配的となる。結果として、地上子15との結合時では、2次コイル11bで受ける信号は、共振器での共振現象により、共振周波数近傍の信号成分の振幅レベルが、非結合時に比べ、大きく上昇する。
【0024】
信号検出部13では、2次コイルで受けた信号をFFT等のフーリエ変換により周波数領域の信号に変換し、地上子の検出処理を行う。検出処理では、変換後の信号に基づき、地上子の存在(地上子上の通過)を検出するとともに、検出した地上子の共振周波数を検知する。信号検出部13は、検知した共振周波数を、制御部14へ出力する。
【0025】
制御部14は、信号検出部13から通知された共振周波数に従い、速度照査パターンの作成など、周波数毎に定められた制御処理を行う。速度照査とは、列車の速度が許容された速度の範囲内であるかを照合することである。速度の範囲外であれば、制御部14は、当該範囲内の速度に収まるように、列車の速度を制御することも可能である。
【0026】
以下、信号生成部12について詳細に説明する。信号生成部12は、少なくとも周波数スイープ信号生成部121(1211〜121n)と加算回路122とD/A変換器123と電力増幅器124とから構成される。
【0027】
周波数スイープ信号生成部121(1211〜121n)では、地上子15で用いられうる各共振周波数f1〜fnを中心周波数とし、経年劣化や製造時の誤差により生じる共振周波数のずれに対する許容変動範囲(±XkHzとする)で、ある定められた一定周期毎に周波数スイープさせた信号をそれぞれ生成する。すなわち1周期期間内で周波数を当該範囲内でスイープさせながら信号を生成し、これを一定周期毎に行う。なお、地上子での共振周波数のずれに対する許容変動範囲は、保安基準レベルとして定められていることが一般的である。周波数スイープを行う周期に関しては、後述する。
【0028】
各周波数スイープ信号生成部1211〜121nでそれぞれ生成した信号は、加算回路122にて加算され、D/A変換器123でアナログ信号に変換される。変換後のアナログ信号は、電力増幅器124で増幅し、車上子11の1次コイル11aへ出力する。
【0029】
上記では、各共振周波数に対する許容変動範囲は同一(±XkHz)として説明した。共振周波数毎にそれぞれ異なる範囲のずれ(±X1kHz〜±XnkHz)が許容されている場合には、各周波数スイープ信号生成部1211〜121nで生成する周波数スイープ信号は、それぞれ(fi-Xi)kHzから(fi+Xi)kHz [i=1〜n]のスペクトル範囲を、1周期内で周波数スイープした信号となる。従って、仮に地上子15で用いられる共振周波数が4種類(103kHz, 108kHz, 123kHz, 130kHz)であり、各共振周波数に対する許容変動範囲が共通で±2kHzであった場合、図2のようなスペクトルを有した信号が、車上子11の1次コイル11aへ出力することになる(周波数スイープ周期Tms)。
【0030】
ここで、各周波数スイープ信号生成部1211〜121nにおける周波数スイープ信号の生成方法は、いかなる方法で実現されるものであっても良い。
【0031】
例えば、各共振周波数を中心とした周波数スイープ信号の波形データを、図示しないROMに予め記憶させておき、各周波数スイープ信号が記憶されているROMのアドレス番地を指定することによりROM内に記憶された各周波数スイープ信号をそれぞれ読み出し、各アドレス番地から読み出した波形データをそれぞれ加算することで実現可能である。
【0032】
または、予め各周波数スイープ信号を加算済みの信号を波形データとしてROMに記憶させておき、記憶されているROMのアドレス番地から波形データを読み出す方法でも良い。この場合には、既に波形データとして各共振周波数スイープ信号が加算されているため、加算回路122は必要なく、ROMから波形データを読み出すのみで良い。
【0033】
または、図3に示すように、各周波数スイープ信号生成部毎にV/F(Voltage/Frequency)変換器1251〜125nを構成し、シフトレジスタ126にてD/A変換器123で出力する電圧値を線形増加するように制御した後、各V/F変換器1251〜125nではD/A変換器123から出力する電圧を、電圧に比例した周波数信号に変換することにより、それぞれ(fi-Xi)kHzから(fi+Xi)kHz [i=1〜n]のスペクトル範囲を周波数スイープした信号を生成する方法などでも良い。
【0034】
次に信号検出部13について詳細に説明する。信号検出部13は、少なくともA/D変換器131と、フーリエ変換部の一実施形態としてのFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算部132と、共振周波数検知部133とから構成される。本実施形態ではフーリエ変換部としてFFT演算部を用いているが、時間領域の信号を周波数領域の信号(周波数スペクトル)に変換できるのであれば、FFTに限定されず、フーリエ変換を利用したどのような手法を用いてもかまわない。
【0035】
信号検出部13では、車上子11の2次コイル11bを介して入力した受信信号をA/D変換器131でデジタル信号に変換した後、周波数解析を行うためFFT演算部132にて周波数領域の信号に変換する。
【0036】
共振周波数検知部133では、FFT演算部132で得られた周波数領域の信号を閾値に基づき解析することで、車上子11が地上子15と電磁結合したことの検知、及び検知したと判断した地上子15の共振周波数の特定を行う。
【0037】
以降、説明のため、地上子15は周波数f1〜fnのうちf3を共振周波数として有しているケースにて説明する。車上子11が地上子15の近傍に無い状態の場合、つまり、車上子11と地上子15が電磁結合していない場合、図4(a)に示すようにFFT演算部132の出力スペクトルは、信号生成部12が車上子11の1次コイルに印加する信号が減衰したのみのスペクトル波形を有する(1次コイルに入力された信号の減衰信号が2次コイルに与えられる)。すなわち、各共振周波数f1〜fnを中心としたそれぞれのスイープ信号のスペクトルは一定電圧になっている。
【0038】
この状態で車上子11が地上子15に接近すると(たとえば地上子15の上を通過するとき)、車上子11と地上子15が電磁結合して、地上子15が共振するため、地上子15が有する共振周波数f3近傍の受信レベルが上昇する。そのため、図4(b)に示すようなスペクトル波形となる。そのため、共振周波数検知部133ではFFT演算部132の出力スペクトルの各周波数の信号レベルを監視しておき、ピーク周波数の電圧レベル(この場合f3の電圧レベル)が、電磁結合していない場合に比べ、所定のレベル以上上昇している事を検知することで、あるいは電圧レベルが閾値を超えたことを検知することで、車上子11が地上子15と電磁結合したと判定する。
【0039】
検知したと判断した場合には、ピーク周波数を地上子15の共振周波数として特定する。なお、共振周波数にずれが生じることを考慮し、ピーク周波数がいずれの共振周波数と一致しない場合であっても、共振周波数検知部133ではピーク周波数が許容変動範囲内であれば該共振周波数として扱うものとする。逆に言うと、受信電圧レベルの上昇がどんなに大きくても、ピーク周波数が変動範囲外であった場合には、地上子15との電磁結合に起因した受信レベルの上昇ではなく、インパルス雑音的な外部雑音が入力されたことによる受信レベルの上昇として扱うことも可能であり、外部雑音に対しても誤検知することなく安定して動作することが出来る。
【0040】
また、本発明の実施形態では、信号生成部12から送信する信号は、各共振周波数f1〜fnを中心周波数とした周波数スイープ信号を加算した信号であるため、共振周波数検知部133ではFFT演算部132の出力信号を利用してQ値算出を行うことが可能である。地上子15における共振周波数が有するQ値は、ある一定以上の値を保つように保安検測・検修されている。そのため、共振周波数検知部133では、FFT出力結果を用いて特定したピーク周波数でのQ値を算出し、算出Q値がある閾値を上回る場合のみ地上子15と電磁結合したと判定する条件を更に加えることで、雑音等による地上子誤検知判定をより防止することが可能となる。なお、Q値は、共振信号のピーク周波数をj1、振幅がピーク周波数の1/2になる両サイドの周波数をj2,j3(j2<j3)とすると、j1/(j3-j2)によって計算されることができる。
【0041】
ここで、FFT演算部132で実施するFFT処理について説明する。
【0042】
共振周波数検知部133で地上子15の共振周波数を隣接共振周波数と誤判定することなく正しく特定するためには、少なくともFFTで実現する周波数分解能は、f1〜fnの最低周波数間隔以上の細かさにしておくことが必須となる。例えば、共振周波数が103kHz, 108kHz, 123kHz, 130kHzの場合には、最低周波数間隔は103kHzと108kHz間の5kHzであるため、少なくとも5kHz以上の細かい周波数分解能を有したFFT処理であることが必要となる。この場合、仮に5kHzより粗い周波数分解能しか有さないFFT処理を行うと、FFT出力で得られたピーク周波数が共振周波数103kHzに起因したものなのか108kHzに起因したものなのか区別がつかず、いずれが共振周波数であるのか特定出来ないことが起こりうるためである。
【0043】
FFT周波数分解能を最低共振周波数間隔以上の細かさに設定することは必要最低限な下限値であり、例えば上記したようにピーク周波数が許容変動範囲内であれば該共振周波数としてみなす場合には、ピーク周波数が許容変動範囲内に収まっているかどうかの判別が必要となるため、少なくともFFT周波数分解能は許容変動範囲の最大値以上の細かさにしておく必要がある。共振周波数間隔に比べ、許容変動範囲は必ず小さい値であるため、この場合には周波数ずれの最大許容変動値がFFT周波数分解能の下限となる。
【0044】
当然ながら、ピーク周波数の特定精度や、Q値の算出精度の観点で考えると、上記した2つのFFT周波数分解能のうちの一方を下限としつつ、可能な限り細かい周波数分解能でFFT出力するのが望ましい。FFTでの周波数分解能を上げるためには、FFTに必要な時間分解能を下げる(FFT周期を長くする)必要がある。つまり、1回のFFT処理をするためにはその分長い時間の信号データが必要となる。
【0045】
一方で、車上子11が地上子15と電磁結合している間に、FFT演算部132では複数回のFFT結果を出力することが望まれる。つまり、これはFFTに必要な時間分解能を上げる(FFT周期を短くする)ことを意味する。共振周波数f1〜fnと等しい周波数を有した瞬時的なインパルス雑音性の外部雑音が入力されることも考えられる。FFTの時間分解能が大きい(FFT周期が長い)と、FFT出力結果から、瞬時的なインパルス性雑音入力によりピーク周波数を有しているのか、実際に地上子15との電磁結合によりピーク周波数を有しているのかの判断が出来ない可能性がある。そこで、1地上子上を通過時の最短結合時間(後述)内に、FFT結果を複数回(ここでは、N回とする)出力可能な時間分解能(FFT周期)にてFFT処理を行うことで、共振周波数検知部133では以下の判断が可能となる。
【0046】
すなわち、あるQ値かつある電圧レベル以上を有したピーク周波数が、N回以上連続して検知出来た場合は地上子15と電磁結合したと判定し、N回未満であった場合には瞬時雑音に起因したレベル上昇と判定する。つまりこれは、地上子15との電磁結合時には必ず最短結合時間は連続してある共振周波数にて一定のレベル以上のピーク周波数を有した信号を受信し続けることを利用し、その最短結合時間内に複数回(N回)のFFT出力を行うことで、N回の出力結果により地上子結合と地上子非結合(インパルス性雑音)を区別し、更なる地上子誤検知防止を可能とする。
【0047】
なお、車上子11と地上子15の最短結合時間は、車上子11と地上子15間の最小応動距離と列車の最高速度から一意に決まる時間である。最小応動距離は、車上子の軌道に沿う車上子と地上子間の結合可能な距離の最小値である。例えば、最小応動距離が300mmであり列車速度が最高140km/hである場合、最短結合時間は約8msとなる。そのため、FFT周期が8/N msとなるようにFFT処理を実施する(サンプリングレートやFFTポイント数などを決定する)必要がある。なお、この場合のFFT周波数分解能はN/8 kHzである。最短結合時間内に出力するFFT回数は、発生が想定される雑音の種類、最短結合時間、回路規模、共振周波数が用いられる周波数帯域などによって決められる。
【0048】
以上より、本発明の実施形態におけるFFT演算部132としては、共振周波数の最低周波数間隔(あるいは周波数最大許容変動値)以上の細かさ、かつ、N/最短結合時間(但し、Nは予め定められた2以上の自然数)以下の粗さの範囲内の周波数分解能を満たすFFT処理を実施する。また、これはFFT周期としては、1/共振周波数の最低周波数間隔(あるいは、1/周波数最大許容変動値)以上の長さ、かつ、最短結合時間/N以下の短い時間範囲の時間信号を用いてFFTを実施することと等しい。
【0049】
次に、信号生成部12における周波数スイープを行う周期に関して説明する。
【0050】
上述の通り、周波数スイープ信号生成部121では、それぞれ各共振周波数を中心として、共振周波数のずれに対する許容変動範囲を周波数スイープさせた信号を、ある定められた一定周期毎にそれぞれ生成する。
【0051】
この際、各周波数スイープのための時間周期は、FFT演算部132で行うFFT処理のFFT周期と等しい時間周期を用いるものとする。ここで、等しい時間周期とは必ずしも完全一致した値を示すものではなく、設計上の誤差などを含み、例えば時間周期の10%以内のずれは許容するものとする。
【0052】
本発明の実施形態では、前記の通りFFT周期の制約として、1/共振周波数の最低周波数間隔(あるいは、1/周波数最大許容変動値)以上の長さ、かつ、最短結合時間/N以下の短い時間範囲で設定されるため、信号生成部12での周波数スイープ信号の時間周期も自ずとして、1/共振周波数の最低周波数間隔(あるいは、1/周波数最大許容変動値)以上の長さ、かつ、最短結合時間/N以下の短い時間範囲となる。
【0053】
例として、共振周波数の許容変動値として±2kHz、最短結合時間として8ms、最短結合時間内にFFT出力する回数Nとして4回を想定した場合、FFT周期及び周波数スイープ周期として2msであれば上記条件範囲に収まる。そのため、周波数スイープ信号生成部121では、各共振周波数、例えば103kHz、を中心として±2kHzの範囲、すなわち101kHz〜105kHzの周波数範囲を2msの周期毎にスイープすることになる。
【0054】
FFT周期と各周波数スイープ周期を等しくする理由および効果について述べる。図5に、周波数スイープ周期とFFT周期における関係の違いによるFFT出力結果の例を示す。それぞれ、FFT周期と周波数スイープ周期が等しい場合(グラフG1)、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が短い場合(1/2倍)(グラフG2)、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が長い場合(2倍)(グラフG3)の出力結果の例である。
【0055】
FFT周期に比べ周波数スイープ周期が短い場合、すなわち、FFT周期が周波数スイープ周期よりも長い場合、1度のFFT出力結果に対して複数回周波数スイープした結果が含まれ、図5のグラフG2に示すように、特定の周波数が定期的に抜けたようなFFT出力結果になる。これは、FFT演算部132で行うFFT処理で実現可能な時間分解能に対し、信号生成部12における周波数スイープ周期が速く変動するため、結果としてFFT出力スペクトルとして、分解能的に速い周波数スイープを表現しきれないFFT出力結果が得られてしまう。このようなFFT出力結果を用いて共振周波数の特定やQ値算出を行ってしまうと、地上子15の共振周波数が、FFT出力結果において抜けてしまっている周波数の場合など、ピーク周波数の特定精度に影響を及ぼす。また同様にQ値算出の精度も低くなってしまう。このように、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が短い場合には、FFT出力結果として分解能的に速い周波数スイープを表現しきれず、ピーク周波数の特定やQ値算出の精度に影響を与えてしまう。当然ながら、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が短ければ短いほど(速ければ速いほど)、FFT出力結果に影響が及ぶため、ピーク周波数の特定やQ値算出の精度がより悪くなってしまう。
【0056】
一方、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が長い場合、すなわち、FFT周期が周波数スイープ周期より短い場合、複数のFFT出力結果を通じて1周波数スイープの結果が得られ、各FFT出力結果においては必ずしも地上子15の共振周波数を含む範囲で周波数スイープした結果とは限らない。例えば、FFT周期に比べ周波数スイープ周期の方が2倍長い場合、2回に1回のFFT出力結果は、共振周波数を含まない周波数スイープ範囲での結果を反映したスペクトルとなる。図5の場合では、グラフG3に示すように、地上子共振周波数80kHzに対し、80kHzを含まない範囲におけるタイミングでの周波数スイープ結果出力となっている。そのため、ある電圧レベル以上のピークが得られるものの、得られるピーク周波数はそのFFTタイミングでの周波数スイープした範囲での出力結果となるため、この場合には実際の共振周波数80kHzよりも低い周波数にピーク周波数が得られている。これは、各FFT出力で得られるピーク周波数は、その都度周波数スイープ範囲次第によって、異なるピーク周波数が得られることを意味する。また、地上子が有する共振周波数のQ値次第によっては、共振周波数を含まない範囲におけるタイミングでの周波数スイープのFFT出力では、受信信号レベルが十分誘起しないことも考えられる。
【0057】
このように、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が長く、地上子共振周波数を含まない範囲での周波数スイープ信号に対するFFT出力結果が得られた場合、地上子のQ値次第では受信信号レベルが十分誘起する保証はなく、仮にある電圧レベル以上の誘起が得られる場合でも、共振周波数を含んだ周波数スイープでのFFT出力結果で得られるピーク周波数の電圧レベルよりは小さいものであり、また周波数スイープ範囲次第によって、ピーク周波数の値もその都度異なるものとなってしまう。共振周波数検知精度は、車上子11の2次コイル11bで誘起する信号レベルに大きく関係するため、誘起電圧の低下は少なからず地上子検知精度や共振周波数検知精度に対して悪影響を及ぼすこととなる。また、受信信号レベルが十分誘起しない場合には、車上子11が地上子15と電磁結合している間にも関わらず、ある電圧レベル以上のピーク周波数を有したFFT出力結果がN回連続して得られなくなるため、前記したようにN回以上連続して検知出来た場合にのみ地上子15と電磁結合したと判定する方法が利用できなくなってしまう。当然ながら、FFT周期に比べ周波数スイープ周期が長ければ長いほど(遅ければ遅いほど)、これらの影響は大きくなる。
【0058】
このように、FFT周期に対し、周波数スイープ周期が長い場合にも、また、短い場合にも、結果として地上子検知精度や共振周波数特定精度に影響を及ぼしてしまう。そこで、FFT周期と周波数スイープ周波数周期を等しく設定することにより、グラフG1に示されるFFT出力結果となり、地上子の共振周波数の誤検知を防止するとともに周波数検知精度の向上を実現できる。
【0059】
上記の理由からFFT周期と周波数スイープ周波数周期を等しく設定することが望ましいが、周波数スイープ周期をFFT周期より大きく設定することで、周波数スイープ周期がFFT周期より短い場合の問題は少なくとも解決できるという効果が得られるため、周波数スイープ周期をFFT周期以上に設定する方法であっても良い。また、逆に、周波数スイープ周期をFFT周期より短く設定することで、周波数スイープ周期がFFT周期より長い場合の問題は少なくとも解決できるという効果が得られるため、周波数スイープ周期をFFT周期より短く設定する方法であっても良い。
【0060】
ここで、周波数スイープ信号生成部121で各共振周波数を中心とした周波数スイープ信号を生成させる場合、一般的には周波数スイープ周期を跨ぐ際の信号の位相は不連続になってしまう事が考えられる。
【0061】
例えば、周波数103kHzを中心として101kHz〜105kHzをある周期にて周波数スイープさせた場合、105kHzまで周波数が偏移した後、次の周期にて101kHzから周波数スイープを再開すると、105kHzから101kHzに周波数を切り替えたタイミングで発振器などの関係により、一般的には位相が不連続になってしまう。
【0062】
信号生成部12と信号検出部13が非同期で動作しているとすると、FFT周期と周波数スイープ周期が同一周期の場合であっても、信号検出部13内のFFT演算部132で実施するFFT処理は、大抵の場合は周期を跨いだ周波数スイープ信号1周期分を利用して演算されることになる。そのため、FFT演算を行う際、位相不連続な周波数スイープ信号1周期分(例えば、102kHz→105kHz, 101kHz→102kHz)を用いることになり、共振周波数検知部133では位相連続な信号を利用してFFT出力された結果を用いる場合に比べて、少なからず検知精度が劣化する傾向に繋がる。そのため、周波数スイープ周期を跨ぐ際の信号の位相が連続になるように周波数スイープ信号を生成するようにするのが望ましい。具体的には、周波数スイープ周期を跨ぐ際、周波数スイープ終わりでの位相を保持し、次の周波数スイープ周期の初期位相として利用する方法が考えられる。
【0063】
例えば、101kHz〜105kHzを周波数スイープさせる場合、105kHzでの位相がα[radian]だとすると、次の周波数スイープ周期開始周波数101kHzでの初期位相をα[radian]にしてスイープを開始することで、スイープ周期を跨いだ場合でも位相連続な信号として生成できる。
【0064】
また、周波数スイープの方向として、101kHz→105kHzにスイープした次の周期ではそのまま105kHzをスイープ開始周波数として105kHz→101kHzでスイープさせることによっても、スイープ周期を跨いだ場合でも位相連続な信号を実現可能である。すなわち、許容変動範囲において、第1周波数から第2周波数への周波数スイープと、第2周波数から第1周波数への周波数スイープとを、特定の時間周期で、交互に繰り返す。第1周波数は、たとえば、許容変動範囲の最小値または最大値であり、第2周波数は、当該最大値または最小値である。
【0065】
あるいは、周波数スイープ周期を跨ぐ際の信号の位相が不連続な場合であっても、信号生成部12と信号検出部13を同期させることにより、周波数スイープ周期開始タイミングとFFT開始タイミングを合わせることが可能となる。そのため、この場合には周波数スイープ周期を跨がない信号によりFFT演算が可能となるため、周波数スイープ周期を跨ぐ際の信号位相が連続な場合と同様のFFT出力結果が得られることになる。ただし、信号生成部12と信号検出部13を同期させる場合には、図1には図示されていないが、信号生成部12から信号検出部13に対して同期させるための何らかの同期信号の入力が必要となる。
【0066】
このように本発明実施形態では、周波数スイープ信号生成部121で各共振周波数を中心とした周波数スイープ信号を作成する際、スイープ周期を跨ぐ際の位相が連続になるように作成制御する、あるいは、信号生成部12と信号検出部13を同期させることにより、FFT演算部132でのFFT演算が位相連続な信号を用いることができ、より地上子の共振周波数の誤検知を防止するとともに周波数検知精度の向上の実現を図ることを可能とする。
【0067】
以上のように、本発明の実施形態では、車上子1次コイルへ出力する送信信号として、地上子で用いられる各共振周波数を中心とした共振周波数の許容変動範囲を、ある特定の時間周期にて周波数スイープした信号をそれぞれ加算した信号を用いることにより、車上子が地上子と電磁結合した際、地上子共振周波数にずれが生じている場合であっても、車上子2次コイル11bに誘起する信号レベルの大きさを低下させることがないため、地上子検知精度や共振周波数検知精度に影響を及ぼすことなく検知可能となる。また、送信信号としてスペクトラム拡散により擬似雑音信号を利用する場合などに比べても、各周波数スペクトルにて安定した一定電圧レベルの信号を送信することが可能なため、Q値算出も含め、地上子検知精度や共振周波数検知精度の向上を図ることが出来る。
【0068】
更に、地上子検知及び共振周波数検知のために用いるFFT演算での出力結果を考慮し、周波数スイープ信号を生成する際のスイープ周期をFFT演算の時間周期と等しく設定することにより、FFT出力結果を用いて地上子検知精度や共振周波数検知を実施する際の精度を更に向上することを可能とする。
【0069】
またその時間周期として、1/共振周波数の最低周波数間隔(あるいは、1/周波数最大許容変動値)以上の長さ、かつ、最短結合時間/N(Nは、2以上の自然数)以下の短い時間範囲で設定することにより、FFT出力結果は、隣接の共振周波数と誤検知しない周波数分解能を保ちつつ、1地上子結合あたり複数回のFFT出力を可能とし、複数回の連続FFT出力結果を利用することで、瞬時的なインパルス性雑音等に起因する地上子誤検知を更に防止することが出来る。
【0070】
また、周波数スイープ周期を跨ぐ際の位相が連続になるように作成制御する、あるいは、信号生成部12と信号検出部13を同期させることにより、FFT演算が位相連続な信号を用いることができるため、これも同様にFFT出力結果を用いて地上子検知精度や共振周波数検知を実施する際の精度を更に向上することを可能とする。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器を含む地上子を用いて列車制御を行う列車制御車上装置であって、
ある特定の時間周期で、前記共振器の共振周波数を含む許容変動範囲で周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する信号生成部と、
前記周波数スイープ信号を受ける第1コイルと、前記第1コイルとの電磁結合により信号を得る第2コイルを有し、前記地上子と電磁結合したとき、前記第1コイルで受けた前記周波数スイープ信号のうち前記共振器の共振周波数に応じた信号成分を、前記地上子を介して前記第2コイルで得る、車上子と、
前記車上子の前記第2コイルで得られた信号を、前記ある特定の時間周期と等しい時間周期でフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号に基づき、前記地上子の検出処理を行う信号検出部と、
を備えた列車制御車上装置。
【請求項2】
それぞれ異なる共振周波数の共振器を有する複数の地上子を用いて列車制御を行い、
前記信号生成部は、前記共振周波数毎に前記周波数スイープ信号を生成し、各生成した周波数スイープ信号を加算し、
前記車上子の前記第1コイルは、加算された周波数スイープ信号を受ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御車上装置。
【請求項3】
前記フーリエ変換の時間周期は、
1/(前記各共振周波数間の間隔のうち最短共振周波数間隔)以上であり、かつ
(前記車上子が前記地上子と電磁的に結合する最短時間)/N(Nは2以上の自然数)以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の列車制御車上装置。
【請求項4】
前記フーリエ変換の時間周期は、
1/(前記各共振周波数の前記許容変動範囲の最大値)以上であり、
(前記車上子が前記地上子と電磁的に結合する最短時間)/N(Nは2以上の自然数)以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の列車制御車上装置。
【請求項5】
前記信号生成部は、前記ある特定の時間周期で前記スイープ信号を生成するに際し、前回の時間周期で生成したスイープ信号の最終位相を、次の時間周期で生成するスイープ信号の初期位相として用いる
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の列車制御車上装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記許容変動範囲において第1周波数から第2周波数への周波数スイープと、前記第2周波数から前記第1周波数への周波数スイープとを、前記ある特定の時間周期で交互に繰り返す
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の列車制御車上装置。
【請求項7】
前記第1周波数は、前記許容変動範囲に含まれる最小周波数または最大周波数、
前記第2周波数は、前記許容変動範囲に含まれる最大周波数または最小周波数である
ことを特徴とする請求項6に記載の列車制御車上装置。
【請求項8】
前記信号生成部と前記信号検出部とを同期させることにより、前記信号生成部における周波数スイープ周期開始タイミングと、前記フーリエ変換部におけるフーリエ変換周期開始タイミングとを合わせる
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の列車制御車上装置。
【請求項9】
地上子を用いて列車制御を行う列車制御車上装置であって、
ある特定の時間周期で、前記地上子の共振周波数を含む許容変動範囲で周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する信号生成部と、
前記周波数スイープ信号を受ける第1コイルと、前記第1コイルとの電磁結合により信号を得る第2コイルを有し、前記地上子と電磁結合したとき、前記第1コイルで受けた前記周波数スイープ信号のうち前記共振器の共振周波数に応じた信号成分を、前記地上子を介して前記第2コイルで得る、車上子と、
前記車上子の前記第2コイルで得られた信号を、前記ある特定の時間周期より大きい時間周期でフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号に基づき、前記地上子の検出処理を行う信号検出部と、
を備えた列車制御車上装置。
【請求項10】
異なる複数の共振周波数を有する複数の前記地上子を用いて列車制御を行い、
前記信号生成部は、前記複数の地上子の前記共振周波数毎に前記周波数スイープ信号を生成し、各生成した周波数スイープ信号を加算し、加算された周波数スイープ信号を前記車上子に与える、
ことを特徴とする請求項9に記載の列車制御車上装置。
【請求項11】
共振器で構成された地上子を用いて列車制御を行う列車制御車上装置であって、
ある特定の時間周期で、前記地上子の共振周波数を含む許容変動範囲で周波数をスイープさせて周波数スイープ信号を生成する信号生成部と、
前記周波数スイープ信号を受ける第1コイルと、前記第1コイルとの電磁結合により信号を得る第2コイルを有し、前記地上子と電磁結合したとき、前記第1コイルで受けた前記周波数スイープ信号のうち前記共振器の共振周波数に応じた信号成分を、前記地上子を介して前記第2コイルで得る、車上子と、
前記車上子の前記第2コイルにより得られた信号を、前記ある特定の時間周期より小さい時間周期でフーリエ変換し、フーリエ変換後の信号に基づき、前記地上子の検出処理を行う信号検出部と、
を備えた列車制御車上装置。
【請求項12】
異なる複数の共振周波数を有する複数の前記地上子を用いて列車制御を行い、
前記信号生成部は、前記複数の地上子の前記共振周波数毎に前記周波数スイープ信号を生成し、各生成した周波数スイープ信号を加算し、加算された周波数スイープ信号を前記1次コイルに与える、
ことを特徴とする請求項11に記載の列車制御車上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121400(P2012−121400A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272423(P2010−272423)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】