説明

判定セット、判定シート、潜像シート及び可視化シート

【課題】潜像を有する潜像パターンに可視化パターンを重ねてその潜像を可視化する前記判定技術の装飾性を高めることを目的とする。
【解決手段】潜像シートが、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成る潜像パターンを有しており、可視化シートが周期的な模様で構成される可視化パターンを有しており、これら潜像シートと可視化シートとを互いに重ね合わせることにより、前記潜像が可視化する判定技術で、前記潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方を、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜3で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像を有する潜像パターンに可視化パターンを重ねてその潜像を可視化することにより、前記潜像の有無を判定する判定技術に関するものである。
【0002】
例えば、債券や商品の真正を保障するセキュリティ・マークとして潜像パターンを使用する場合、これら債券や商品に貼付された前記潜像パターンに、別途用意された可視化パターンを重ね、潜像の有無を確認することによって、その債券や商品が真正なものであるか否かを判定することができる。
【0003】
また、籤として潜像パターンを使用する場合、別途用意された可視化パターンを重ね、潜像の有無を確認することによって、その当落を判定することができる。
【0004】
この判定技術は、潜像を有する潜像パターンと、その潜像を可視化する可視化パターンの二つのパターンを必要とするが、一枚の基材シートを複数の領域に区分して、その一部領域に潜像パターンを設け、他の領域に可視化パターンを設けることがある。また、潜像パターンを設けたシートと、可視化パターンを設けたシートとを別個のシートとすることもある。
【0005】
本発明は、一枚の基材シート上に潜像パターンと可視化パターンとを設ける場合と、別々のシートに潜像パターンと可視化パターンとを設ける場合の双方に適用できるものである。
【背景技術】
【0006】
潜像を有する潜像パターンに可視化パターンを重ねてその潜像を可視化する判定技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0007】
特許文献1に記載の判定技術は、多色刷りされた潜像パターンを利用するもので、その色彩ごとに潜像と背景とが設けられている。潜像は破線状の万線で構成されており、背景は、潜像の万線とは位相が1/2ピッチ異なる破線状の万線で構成されている。そして、やはり破線状の万線で構成された可視化パターンを重ねることにより、その潜像が可視化する。例えば、可視化パターンの万線が潜像の万線と万線との間の余白部分に位置するように重ね合わせると、この潜像の部位では、あたかもベタ印刷が施されているかのように見える。他方、背景においては、この背景の万線と可視化パターンの万線が正確に重ね合わされるため、これら万線と万線との間の余白部分がそのまま維持される。このため、余白部分のない潜像と余白部分の維持された背景とのコントラストによって、潜像が可視化され、認識できるのである。なお、特許文献1に記載の判定技術は、色彩ごとに潜像と背景とが構成されているため、可視化パターンの色彩に応じて、可視化される潜像が異なっている。
【0008】
ところで、特許文献1に記載の潜像パターンは、潜像と背景の両者を破線状の万線で構成し、両者の位相をピッチの1/2だけずらせたものである。これに対し、潜像を構成する万線のピッチと、背景を構成する万線のピッチとを、互いに異なるようにした潜像パターンも知られている。例えば、背景を構成する万線のピッチを、潜像を構成する万線のピッチの2倍としたものである。この場合には、可視化パターンとして、潜像を構成する万線のピッチと同一ピッチの万線で構成したものを使用する。そして、これら潜像パターンと可視化パターンとを、可視化パターンの万線が潜像の万線と万線との間の余白部分に位置するように重ね合わせると、この潜像の部位では、あたかもベタ印刷が施されているかのように見える。他方、背景の部位においては、背景の万線のピッチは可視化パターンの万線のピッチの2倍であり、両者が一致しないから、背景の万線と万線との間の余白部分の一部が維持される。そして、このため、余白部分のない潜像と余白部分の維持された背景とのコントラストによって、潜像が可視化され、認識できる。
【0009】
また、潜像を構成する万線の方向と、背景を構成する万線の方向とを、互いに異なるようにした潜像パターンも知られている。例えば、両者の方向が45度異なるように構成したものである。この場合には、可視化パターンとして、任意の万線で構成したものが使用できる。そして、これら潜像パターンと可視化パターンとを、可視化パターンの万線の方向が背景の万線の方向と一致するように重ね合わせると、潜像の部位では、潜像の万線と可視化パターンとが45度の角度で交差する格子パターンを形成する。この格子パターンは振幅型回折格子の性質を有するから、光の回折現象に基づいて、可視化パターンの万線及び潜像の万線の両者と交差する方向に延びる明暗の縞模様(モアレ)を発生させる。他方、背景の部位においては、背景の万線の方向と可視化パターンの万線の方向とが一致しているから、このような縞模様(モアレ)が発生することがない。そして、この縞模様(モアレ)の有無によって、潜像が可視化され、認識できる。
【0010】
なお、潜像パターンや可視化パターンを万線で構成したものについて説明したが、万線に代えて、線状に配列したドットによって構成することも可能である。
【0011】
ところで、これらのいずれの技術においても、これら潜像パターンと可視化パターンとは印刷によって形成されているからその装飾性に限界があり、無機的で面白みのないパターンしか得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−174997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、潜像を有する潜像パターンに可視化パターンを重ねてその潜像を可視化する前記判定技術の装飾性を高めることを目的とするものである。
【0014】
なお、本発明をセキュリティ・マークに利用するときには、そのセキュリティ性、すなわち、偽造防止性能を高めることができる。また、後述するように、本発明を銀行口座などの確認番号カードに利用するときには、このカードの盗難等による情報漏洩を防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、潜像パターンと可視化パターンとを、それぞれ別個のシートに形成したものである。すなわち、請求項1に記載の発明は、潜像シートと可視化シートとで構成される判定セットであって、
潜像シートが、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成る潜像パターンを有しており、
可視化シートが周期的な模様で構成される可視化パターンを有しており、
これら潜像シートと可視化シートとを互いに重ね合わせることにより、前記潜像が可視化する判定セットにおいて、
前記潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする判定セットである。
【0016】
この発明によれば、潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されており、この光反射膜は位相型回折格子の機能を有するから、この光反射膜によって光が反射回折される。このため、極めて美麗で装飾性に優れている。
【0017】
なお、この反射回折光は、通常、見る角度によってその色彩が変化する虹模様を呈する。また、この反射回折光で生成する回折画像が、奥行き感のある3次元立体画像であることもある。このため、カラーコピーで複写することは困難である。また、その回折画像は前記表面の微細な凹凸の深さやピッチ等に特有なものであるから、これを模造することも困難である。このため、セキュリティ・マークに利用するときには、その偽造防止性能を高めることが可能である。
【0018】
また、籤に利用した場合には、その籤自体が装飾性の高いものとなる。このため、商品や商品の包装材の一部に適用して、その意匠性を損なうことなく籤として利用することが可能である。
【0019】
また、前記潜像を銀行口座などのパスワードとしてカード化した場合、このカードが盗難にあったとしても、可視化シートがなければこのパスワードを読み取ることができない。このため、このパスワードが漏洩することもない。
【0020】
次に、請求項2に記載の発明は、一枚の基材シートを複数の領域に区分して、その一部領域に潜像パターンを設け、他の領域に可視化パターンを設けたものである。すなわち、請求項2に記載の発明は、基材シート上に、潜像パターンと可視化パターンとを区分して設けて構成される判定シートであって、
潜像パターンが、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成り、
可視化パターンが周期的な模様で構成されており、
これら潜像パターンと可視化パターンとを互いに重ね合わせることにより、前記潜像が可視化する判定シートにおいて、
前記潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする判定シートである。
【0021】
請求項2に記載の発明は、例えば債券や商品を基材シートとすれば、これら債券や商品と別に可視化シートを準備することなく、その真贋を判定することが可能となる。このため、可視化シートを備えた特定の業者や窓口で行うのではなく、任意の場所で真贋判定を行うことができる。
【0022】
次に、請求項3に記載の発明は潜像シートに関するものであり、すなわち、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成る潜像パターンを有する潜像シートにおいて、
潜像パターンが、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする潜像シートである。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は可視化シートに関するものであり、すなわち、潜像シートに重ね合わせることにより潜像を可視化させる可視化シートであって、
周期的な模様で構成される可視化パターンを有しており、
この可視化パターンが、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする可視化シートである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、潜像を有する潜像パターンに可視化パターンを重ねてその潜像を可視化する判定技術の装飾性を高めることができる。
【0025】
また、その用途に応じて、偽造防止性能や情報漏洩防止性能等のセキュリティ性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る潜像シートの断面説明図
【図2】図2(a)は本発明の実施例に係る潜像シートの斜視図。図2(b)は本発明の実施例に係る可視化シートの斜視図。図2(c)は潜像シートと可視化シートとを重ね合わせた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以上のように、本発明は、潜像を有する潜像パターンと、この潜像パターンに重ねてその潜像を可視化する可視化パターンを利用したものである。一枚の基材シートを複数の領域に区分して、その一部領域に潜像パターンを設け、他の領域に可視化パターンを設けることもできるし、別々のシートのそれぞれに潜像パターンと可視化パターンとを設けることもできる。本明細書では、一枚の基材シートに潜像パターンと可視化パターンとを設けて構成されるものを判定シートと呼ぶ。また、潜像パターンを設けたシートを潜像シートと呼び、可視化パターンを設けたシートを可視化シートと呼ぶ。また、一対の潜像シートと可視化シートとを合せて判定セットと呼ぶ。いずれにしても、本発明はこの潜像パターンと可視化パターンによって特徴付けられるものである。
【0028】
潜像パターンと可視化パターンとは互いに対になるもので、特定の潜像パターンには特定の可視化パターンが対応する。特定の潜像パターンに、これに対応する可視化パターンを重ね合わせることにより、その潜像を可視化して認知可能とすることができるが、対応しない可視化パターンを重ねても、一般に、潜像を可視化することはできず、認知可能とすることもできない。このため、潜像シートと可視化シートとを別のシートとして構成する場合にも、これら潜像シートと可視化シートとを対応させ、両者を合わせて判定セットとして一緒に仕様を定め、一緒に製造もしくは使用することが望ましい。
【0029】
なお、潜像シートは、その全面に潜像パターンを設けたものであっても良いが、一部の領域に潜像パターンを設けたものであっても良い。また、潜像シートを複数の領域に区分して、この複数の領域のそれぞれに潜像パターンを設けることもできる。同様に、可視化シートも、一部の領域に可視化パターンを設けたものであっても良く、複数の領域に区分して、この複数の領域のそれぞれに可視化パターンを設けたものであっても良い。
【0030】
そして、このため、潜像シートと可視化シートとを、次のように構成することも可能である。すなわち、潜像シートを複数の領域に区分して、この複数の領域のそれぞれに潜像パターンを設けると共に、可視化シートの一部領域であって、前記複数の領域のうちの一部の領域に対応する領域に可視化パターンを設ける。例えば、潜像シートの第1の領域に第1の潜像パターンを設け、第2の領域に第2の潜像パターンを設ける。他方、可視化シートには、前記第1の領域に対応する領域に選択的に可視化パターンを設ける。この潜像シートと可視化シートとを、互いに位置合わせして重ね合わせると、前記第1の潜像パターンと可視化パターンとが重ね合わされるため、この第1の潜像パターンの潜像が可視化して認知可能となる。他方、第2の潜像パターンには可視化パターンが重ねられていないため、この第2の潜像パターンの潜像は可視化されず、認知困難である。すなわち、この場合には、潜像シートに設けられた複数の潜像のうち、特定の潜像を指定して可視化する
のである。
【0031】
次に、潜像パターンは、潜像と背景とで構成されるもので、これら潜像と背景とは、いずれも、周期的な模様で構成される。また、可視化パターンも周期的な模様で構成される。
【0032】
潜像と背景とを構成する周期的な模様としては、例えば、複数の平行線で構成される万線が使用でき、複数の平行線の線と線の間には線状余白部分が配置される。望ましくは、この平行線の幅と線状余白部分の幅とを同一とする。そして、潜像と背景とは、互いに、その万線の位相、ピッチ又は配列方向を異ならせて構成する。
【0033】
例えば、潜像を構成する万線に対して、背景を構成する万線を、ピッチが同一で、位相がピッチの1/2異なるように構成する。この場合、可視化パターンは、背景を構成する万線と同様の万線で構成することができる。なお、潜像と背景とは相対的な概念であるから、可視化パターンを、潜像を構成する万線と同様の万線で構成することも可能である。
【0034】
また、背景を構成する万線のピッチに対して、潜像を構成する万線のピッチが2倍となるように構成することもできる。この場合にも、可視化パターンは、背景を構成する万線と同様の万線で構成することができ、また、潜像を構成する万線と同様の万線で構成することもできる。
【0035】
また、潜像を構成する万線の方向に対して、背景を構成する万線の方向が45度異なるように構成することもできる。なお、万線の配列方向は万線の方向に直交する方向であるから、潜像を構成する万線と背景を構成する万線を45度異ならせることにより、万線の配列方向を異ならせることができる。そして、この場合にも、可視化パターンは、背景を構成する万線と同様の万線で構成することができ、また、潜像を構成する万線と同様の万線で構成することもできる。
【0036】
また、潜像と背景とを構成する周期的な模様として、前記万線に代えて、線状に配列したドットによって構成することも可能である。この場合には、可視化パターンとして、背景を構成するドットと同様のドット列で構成することができる。また、このドット列と重ね合わせることのできる万線で可視化パターンを構成することもできる。
【0037】
次に、これら潜像パターンと可視化パターンとは、基材シート上に印刷インキを印刷することによって形成することができるが、これら潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されている必要がある。この光反射膜によって光が反射回折され、しかも、その反射回折光は見る角度によってその色彩が変化する虹模様を呈するから、極めて美麗で装飾性に優れている。また、複写や模造が困難であるから、偽造防止効果に優れている。
【0038】
このような光反射膜は、次のような工程で形成することができる。
【0039】
すなわち、まず、表面に微細な凹凸パターンを有する母型を準備する。微細な凹凸パターンは、例えば、光回折機能を有する回折格子やホログラムを構成する凹凸パターンであり、凸部の高さまたは凹部の深さ、そのピッチは、共に、0.1〜10μm程度であることが望ましい。
【0040】
このような母型は、例えば、基板上にフォトレジストを塗布し、2光束干渉法に従って露光し、現像することにより前記凹凸パターンを形成して製造することができる。また、基板上に電子線レジストを塗布し、電子線描画し、現像することにより前記凹凸パターン
を形成して製造することもできる。また、シリコンをエッチングする方法によって製造することもできる。
【0041】
また、こうして得られた凹凸パターンを原版として、反転を繰り返すことによって母型を製造することもできる。すなわち、この凹凸パターンを原版としてその表面にニッケル、鉄等金属を電鋳した後、剥離することにより、金属製の母型を製造することができる。また、前記原版を樹脂により型取りして樹脂製の母型を製造することもできる。
【0042】
こうして製造した母型はそのまま使用することもできるが、ロールの周囲に巻きつけて使用することが望ましい。
【0043】
次に、潜像パターンや可視化パターンの基材となるシートを準備する。このようなシート例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシートが挙げられる。厚みは3〜100μmでよい。
【0044】
そして、この基材フィルムの表面に熱可塑性樹脂を塗布し、乾燥する。乾燥後の膜厚は、前記凹凸パターンが正確に複製できる厚みであればよいが、このためには、前記凹凸パターンの凸部の高さまたは凹部の深さの1から10倍であることが望ましい。一般には、0.5〜5μmでよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等が使用できる。なお、熱可塑性樹脂の代わりに、珪酸塩を成分に含む無機系材料などを使用することもできる。
【0045】
そして、この被膜に前記母型を重ね、押圧して、母型の前記凹凸パターンを複製する。例えば、熱可塑性樹脂の被膜を形成した基材シートを連続的に走行させながら、前記母型を巻きつけたロールと、ペーパーロールの間を通過させ、これら両ロールで押圧して、前記熱可塑性樹脂の被膜に凹凸パターンを転写して複製することができる。
【0046】
なお、押圧に際して、母型を巻きつけたロールの温度及び圧力は、エンボス形状を再現する観点からは比較的高温で、比較的高い圧力でエンボスする方が良く、エンボス版への付着を防止するためには全く逆の関係となる。このため、温度50〜150℃、圧力10〜50kg/cmの条件で押圧することが望ましい。
【0047】
次に、この凹凸表面に沿って、パターン状に光反射膜を形成する。光反射膜のパターン形状は、例えば、潜像と背景とを構成する周期的模様の形状である。すなわち、潜像パターンをこの光反射膜で構成する場合には、そのデザインに応じて、例えば、潜像と背景とを構成する複数の平行線、すなわち、万線の形状に光反射膜を形成する。この場合、潜像を構成する万線と、背景構成する万線とは、位相、ピッチ及び配列方向のいずれかがが異なることは、前述のとおりである。また、そのデザインに応じて、例えば、潜像と背景とを構成するドット列の形状に形成することもある。
【0048】
また、可視化パターンを光反射膜で構成する場合には、そのデザインに応じて、万線又はドット列の形状に形成することができる。
【0049】
パターン状光反射膜は、例えば、前記凹凸表面に、溶剤溶解性の被膜をパターン状に形成した後、この被膜を被覆して全面に光反射膜を設け、次に、溶剤を適用して、前記被膜と、この被膜に重畳された光反射膜を除去することにより形成することができる。この場合、凹凸表面に残存した光反射膜が、前記潜像パターン又は可視化パターンを構成する。
【0050】
溶剤溶解性の被膜としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロ
ース、カルボキシエチルセルロース等の水溶性樹脂が使用できる。そのパターン状被膜は、印刷によって形成すればよい。また、溶剤としては、水、アルカリ水溶液等が利用できる。
【0051】
また、パターン状光反射膜は、前記凹凸表面の全面に光反射膜を設けた後、この光反射膜を部分的にエッチングして除去することによって形成することもできる。すなわち、凹凸表面の全面に設けられた光反射膜にパターン状にエッチングレジストを設け、このエッチングレジストから露出した光反射膜をエッチングして除去する。この場合、凹凸表面に残存した光反射膜が、前記潜像パターン又は可視化パターンを構成する。エッチングレジストとして印刷被膜を利用することもできるが、ネガ型又はポジ型の感光性レジストを使用することが望ましい。すなわち、凹凸表面の全面に設けられた光反射膜にこの感光性レジストを塗布し、露光・現像することによって、パターン状を形成することができる。次に、エッチング方法としては、酸又はアルカリの水溶液をエッチング液とし、このエッチング液中に浸漬するか、あるいは、エッチングレジストの設けられた光反射膜表面にエッチング液を噴霧する方法を採用することができる。
【0052】
なお、光反射膜としては、金属反射膜と透明反射膜のいずれを適用することもできる。金属反射膜としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、銀、金、錫などが例示できる。アルミニウム、クロム、ニッケル、銀、金等が特に好ましく、その膜厚は500から1000オングストロームの範囲である。また、透明反射膜は、前記凹凸表面の屈折率とは異なる屈折率を有する透明誘電体で、この屈折率の相違に基づいて両者の界面で光を反射する。透明反射膜としては、硫化亜鉛、二酸化チタンなどが例示できる。なお、これら金属反射膜や透明反射膜は、いずれも、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。また、透明反射膜として、前記凹凸表面の屈折率とは異なる屈折率を有する樹脂を印刷又は塗布して形成することも可能である。
【0053】
本発明に係る光反射膜はこうして形成することができるが、潜像パターンを設けた潜像シート、可視化パターンを設けた可視化シート、あるいはこの両者を設けた判定シートとする場合には、光反射膜を被覆する透明保護層を設けることが望ましい。透明保護層は任意の材質でよいが、前記凹凸表面の屈折率と同一の屈折率を有する材質を使用する場合、光反射膜の存在しない部位、すなわち、余白部分に露出した凹凸表面の凹凸が埋められて、この部位の光回折機能が失われる。
【0054】
図1は、こうして得られた潜像シートの断面形状を示す断面説明図である。すなわち、基材シート1の片面に、熱可塑性樹脂層2が設けられ、その表面は光回折機能を有する微細な凹凸パターンを構成している。そして、この凹凸表面の一部に、その凹凸に沿って光反射膜3が設けられており、この光反射膜3を被覆して保護層4が設けられている。なお、光反射膜3の表面は平坦に図示されているが、この光反射膜3が気相堆積法によって形成されている場合、この光反射膜3表面は熱可塑性樹脂層2表面の凹凸を反映していることが通常である。他方、光反射膜3が樹脂の印刷又は塗布して形成されている場合、光反射膜3の表面は、図示のとおり、平坦である。
【0055】
なお、可視化パターンを前記光反射膜で構成した可視化シートと、潜像パターンを前記光反射膜で構成した潜像シートとの相違は、可視化パターンと潜像パターンのパターン形状の相違だけである。このため、可視化パターンを前記光反射膜で構成した可視化シートの断面も、図1の断面説明図と同様になる。また、潜像パターンと可視化パターンの両者を設けた判定シートの断面も、図1の断面説明図と同様になる。
【0056】
次に、図2は、本発明に係る潜像シートと可視化シートの具体例と、その使用方法を示す説明図である。
【0057】
図2(a)は潜像シートの具体例の斜視図で、この潜像シートは、中央に設けられた潜像A1と、その周囲に設けられた背景A2とから構成される潜像パターンを有している。なお、図示の例で、潜像A1は円形のパターンである。
【0058】
潜像A1と背景A2とは、いずれも、多数の平行線で構成される万線で構成されており、この平行線の幅と、平行線の間の余白部分の幅は同一である。そして、潜像A1を構成する万線と背景A2を構成する万線とは、そのピッチ及び方向が同一で、位相がピッチの1/2相違している。なお、この万線、すなわち、多数の平行線は、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されている。
【0059】
次に、図2(b)は可視化シートの斜視図で、この可視化シートは、背景A2を構成する万線と同一の万線で構成された可視化パターンを有している。そして、この可視化シートを潜像シートに重ね合わせると、図2(c)に示すように、潜像A1を構成する平行線の間の余白部分と可視化パターンの万線の位置が一致するため、この潜像の部位では、あたかも全面に光反射膜が存在するかのように見える。他方、背景の部位では、背景A2を構成する万線と可視化パターンの万線の位置が一致し、万線と万線との間の余白部分の一部が維持される。そして、このため、余白部分のない潜像と余白部分の維持された背景とのコントラストによって、潜像が可視化され、認識できる。図中、Aは可視化した潜像である。
【0060】
なお、この例では、潜像を円形のパターンとしたが、任意の画像とすることができるのは明らかである。例えば、文字、記号、図形等である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る潜像シートは、例えば、債券や商品に貼付して、これら債券や商品の真正を保障するセキュリティ・マークとして利用できる。この場合、潜像パターンを被判定パターンとし、別途準備された可視化シートを判定具として、この両者を重ね合わせることにより、潜像シートの潜像を可視化させて、認知可能とすることができる。この場合、可視化シートの可視化パターンが光反射膜である必要はない。透明な基材シート上に印刷された可視化パターンであっても構わない。なお、債券としては、いわゆる金券、すなわち、銀行券、債権、商品券、小切手が例示できる。また、債券として有価証券を挙げることもできる。また、これら債券や商品の他に、身分等を証明する各種証明文書に貼付して、これら証明文書の真正を保障することもできる。例えば、公文書など各種証明書、身分証明(ID)カード、クレジットカード等である。貼付する際には、潜像シートの基材シートに接着剤を塗布して、この接着剤により貼着すればよい。
【0062】
また、本発明の可視化シートを債券や商品に貼付して、これら債券や商品の真正を保障することもできる。この場合、この可視化パターンを被判定パターンとし、別途準備された潜像シートを判定具として、この両者を重ね合わせることにより、潜像シートの潜像を可視化させて、認知可能とすることができる。この場合、潜像シートの潜像パターンが光反射膜である必要はない。透明な基材シート上に印刷された潜像パターンであっても構わない。
【0063】
また、本発明の判定シートを債券や商品に貼付して、これら債券や商品の真正を保障することもできる。この場合、判定シートには潜像パターンと可視化パターンの双方が設けられているから、債券や商品を折り曲げて、潜像パターンと可視化パターンとを重ね合わせることにより、潜像シートの潜像を可視化させて、認知可能とすることができる。
【0064】
また、本発明の潜像シートを籤として用いることもできる。この潜像シートに、別途用
意された可視化シートを重ねることにより、その潜像を可視化してその当落を判定することができる。例えば、当たり籤には「当たり」の文字が潜像として設けられており、はずれの籤には「はずれ」の文字が潜像として設けられている場合、その籤に可視化シートを重ねることにより、「当たり」又は「はずれ」の文字を可視化してその当落を判定することができる。
【0065】
また、本発明の可視化シートを籤として用いることも可能である。すなわち、別途用意された潜像シートを2つの領域に区分して、第1の領域に「当たり」の文字を潜像として設け、第2の領域に「はずれ」の文字を潜像として設ける。一方、当たり籤(可視化シート)には、前記第1の領域に対応する領域に可視化パターンを設けておき、はずれの籤(可視化シート)には、前記第2の領域に対応する領域に可視化パターンを設けておく。当たり籤(可視化シート)を潜像シートに重ねると、第1の領域の潜像の「当たり」の文字が可視化する。他方、はずれ籤(可視化シート)を潜像シートに重ねると、第2の領域の潜像の「はずれ」の文字が可視化する。こうして、その当落を判定することができる。
【0066】
また、潜像パターンと可視化パターンの両方を備える判定シートを籤として用いることも可能である。この場合には、判定シートを折り曲げて潜像パターンと可視化パターンとを重ね合わせることにより、その潜像を可視化して、その当落を判定することができる。
【0067】
次に、本発明に係る潜像を銀行口座などのパスワードとし、その潜像シートをこのパスワードを示す確認番号カードとして利用することもできる。この場合には、口座所有者は、この潜像シート(確認番号カード)と、その潜像を可視化する可視化シートの双方を保管する。このため、口座所有者は、そのパスワードを忘れても、これら潜像シート(確認番号カード)と可視化シートとを重ね合わせることにより、パスワードを確認することができる。他方、仮にこれら潜像シート(確認番号カード)と可視化シートのいずれか一方を紛失又は盗難して、悪意ある他人が入手したとしてもパスワードを読み取ることができない。このため、このパスワードが漏洩することもない。
【0068】
また、本発明の可視化シートを前記確認番号カードとして利用することもできる。すなわち、別途用意された潜像シートを多数の領域に区分して、それぞれの領域に潜像を設ける。一方、可視化シートには、前記多数の領域のうち一部の領域に対応する領域に可視化パターンを設けておく。そして、この両者を重ね合わせることにより、前記多数の領域のうち可視化パターンが重ねられた領域の潜像が選択的に可視化する。このため、これら潜像シートと可視化シート(確認番号カード)のいずれか一方を紛失又は盗難して、悪意ある他人が入手したとしてもパスワードを読み取ることができず、パスワードが漏洩することもない。
【0069】
なお、銀行口座のパスワードに限らず、各種パスワードや秘密情報に適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0070】
1 基材シート
2 熱可塑性樹脂層
3 光反射膜
4 保護層
A1 潜像
A2 背景

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像シートと可視化シートとで構成される判定セットであって、
潜像シートが、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成る潜像パターンを有しており、
可視化シートが周期的な模様で構成される可視化パターンを有しており、
これら潜像シートと可視化シートとを互いに重ね合わせることにより、前記潜像が可視化する判定セットにおいて、
前記潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする判定セット。
【請求項2】
基材シート上に、潜像パターンと可視化パターンとを区分して設けて構成される判定シートであって、
潜像パターンが、周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成り、
可視化パターンが周期的な模様で構成されており、
これら潜像パターンと可視化パターンとを互いに重ね合わせることにより、前記潜像が可視化する判定シートにおいて、
前記潜像パターンと可視化パターンのうち、少なくともいずれか一方が、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする判定シート。
【請求項3】
周期的な模様で構成される潜像と、この潜像とは位相、ピッチ又は配列方向が異なる周期的な模様で構成される背景とから成る潜像パターンを有する潜像シートにおいて、
潜像パターンが、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする潜像シート。
【請求項4】
潜像シートに重ね合わせることにより潜像を可視化させる可視化シートであって、
周期的な模様で構成される可視化パターンを有しており、
この可視化パターンが、光回折機能を有する微細な凹凸表面に沿って設けられた光反射膜で構成されていることを特徴とする可視化シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62876(P2011−62876A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214350(P2009−214350)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】