説明

利用者のコンピューター上にて雛形の動画を見ながら好みの動画を編集して動画作品ファイルを作成するための実行ファイル、その使用方法

【課題】デジタルサイネージに映し出す広告映像作品をデジタルサイネージの利用者が容易に創作できるように支援する。
【解決手段】多種多様なオリジナル動画作品を制作し、1個の実行ファイルに1個のオリジナル動画作品を埋め込む。そのように制作した多数種類の実行ファイルの索引情報・概要情報を、周知の動画投稿サイトのような体裁でインターネット上に展示し、サーバーにアクセスしてきた利用者コンピューターが希望にかなうオリジナル動画作品を探し出し、ダウンロードできるようにする。ダウンロードした1個の実行ファイルに1個のオリジナル動画作品しか含まれていないので、利用者があれこれ迷う要素がそもそもなく、パソコンに詳しくない不慣れな人でも自分のお店に相応しい広告宣伝用の動画作品を作りだすことができ、それを自分のお店のデジタルサイネージに表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、デジタルサイネージに映し出す広告映像作品をデジタルサイネージの利用者が容易に創作できるように支援する技術に関する。具体的には、利用者のコンピューター上にて雛形の動画を見ながら好みの動画作品を編集して動画作品ファイルを作成するための実行ファイルと、その使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3957843号公報「スケジュール管理機能を備えた表示制御装置」の発明では、番組データベースに登録されている番組名称をモニタに一覧表示させて、操作入力手段により番組を指定する操作入力を受け付け、指定された複数の番組の番組IDの順列とセット名称とセットIDとを対応付けて番組セット表に登録するとともに、時間枠組をモニタに表示させて、操作入力手段により時間枠組にセットIDを対応付けする操作入力を受け付け、受け付けたセットIDと時間枠組の対応関係によりスケジュール管理表を作成する方式とし、デジタルサイネージの運用の簡便化と分かりやすさを実現している。
【0003】
特許第4522516号公報「線形イルミネーション制御データ作成装置およびプログラム記憶媒体」の発明では、各種の商業施設などにおいて多数のLEDランプ群をそれぞれ独立制御する線形イルミネーションシステムを多彩な表現で発光させるための制御データを、とくに専門知識がなくても発光パターンの時系列的な変化を確認しながら容易に作成し変更できるようにしている。
【0004】
特開平8−235373号公報「構造的イメージの画像編集装置および方法」の発明では、構造的イメージ(SI:Structured Image)フォーマットの画像を適切なユーザーインターフェイスを用いて変更し、メモリの有効オープン編集環境下でそれ以前に行った編集操作(オペレーション)に制限なしにアクセスすることを可能とする。構造的イメージは、個々のオブジェクトを含む多様なデータ型と、前記多様なデータ型がその上に表現されるフレームであるペーストボードとを含み、画像編集装置は、前記構造的イメージの階層的な表示を生成するSI構造エディタと、前記SI構造エディタに接続され、前記多様なデータ型をそれぞれ対応する高位の表現形式に結び付けて編集するSI画像エディタとを含む。
【0005】
特開2010−39549号公報「複合コンテンツ作成システム、複合コンテンツ表示方法及び表示プログラム」の発明では、複合コンテンツ表示プログラムは、各素材表示コンポーネントプログラムファイルを実行せしめ、サーバ装置の記憶部に記憶された素材ファイルを順次呼び出すようにし、また、複合コンテンツ表示プログラムにタイマープログラム部を設け時間を管理せしめ、このタイマープログラム部により端末装置の演算記憶装置で実行されるタイマーの経過時間に基づいて、各素材表示コンポーネントプログラムファイルを実行せしめ動かす。
これにより、従来のように動画ファイルの時間経過に依存することがなく、複数の動画ファイルなどを複合コンテンツに組み込むことができるなど、複合コンテンツの作成の自由度を大きくすることができるようになる。
また、素材表示コンポーネントプログラムファイルに各素材ファイルを表示または素材ファイルの表示方法の制御のための命令実行プログラムを設け、さらに、複合コンテンツ表示プログラムにタイマー連動プログラムを設けたので、各素材表示コンポーネントプログラムファイルに他の素材表示コンポーネントプログラムファイルを容易に連動せしめることができる。
【0006】
特開2006−93852号公報「データ加工装置、映像編集装置、プログラム」の発明では、コンピュータープログラムは、映像の加工方法を登録し該登録された複数の加工方法のうち入力映像の加工に使用する加工方法を指定するための手段と、入力映像に対し該指定された加工方法に従って加工処理を施す手段と、該加工処理が施された映像を出力する手段と、前記複数の加工方法を識別するための映像の各々を表示する手段としてコンピューターを動作させる。
【0007】
特開2004−62615号公報「番組制作方法」の発明では、スクリプト言語で記述された番組を生成し編集するために、番組の作成に必要な番組スクリプトのサンプルを、あらかじめ番組テンプレートとして、各番組の種別に応じて複数用意し、これら番組テンプレートの中から任意のものを選択することにより番組スクリプトが自動的に設定されるようになっている。ここで、番組テンプレートには動画ファイルも含まれ、番組テンプレートの内容が動画の再生により確認できるようになっている。
【発明の開示】
【0008】
この発明の基本的な目的は、デジタルサイネージを導入した飲食店や美容院あるいは歯科医院などの店舗において、デジタルサイネージの運用を担当するお店の人が、特別な専門知識を持ち合わせていなくても、ありふれたパソコンを用いて、自分の店舗に相応しい広告映像作品を容易に制作できるようにすることにある。広告映像作品としては、顧客となる人々に関心をもって見てもらえるように、観者の目をひく動画を含んだ作品とすることが望まれる。
【0009】
この発明の基本的な特徴は、サンプルとなる1個の広告動画作品を構成するための1個の動画作品構造体と、パソコン利用者とやり取りするユーザーインタフェースのプログラムと、広告動画作品を再生するためのプログラムと、広告動画作品の一部を利用者が編集するためのプログラムと、編集後の動画作品を1個のファイルにして出力するプログラムとを集約して1個の実行ファイルを構成したことにある。
【0010】
実行ファイルとは、周知のように、典型的にはマイクロソフト社のオペレーティングシステム「Windows」を搭載した普通のパソコンで実行できるプログラムが収められたEXEファイルを指し、この発明に係る実行ファイルはオペレーティングシステムがあれば実行可能であり、他のアプリケーションプログラムを必要としない実行ファイルである。
【0011】
デジタルサイネージ利用者のパソコンにこの発明の実行ファイルが取り込まれてハードディスクに記憶されているとする。利用者が当該実行ファイルを開くと、当該実行ファイルが起動され、サンプル動画作品の再生、部分編集、編集後の作品のファイル化出力の処理を実行させることができる。
【0012】
詳細な技術内容については以下の実施例において説明するが、第1発明の核心とするところは、つぎの事項(1)〜(9)により特定される実行ファイルである。
(1)1個の動画作品構造体と、ユーザーインタフェースプログラムと、再生プログラムと、編集プログラムと、出力プログラムを含んだ1個のファイルであり、所定のオペレーティングシステムが稼働するコンピューターにて実行可能であること
(2)動画作品構造体は、複数のレイヤーに区分された画像要素の集合体を含み、各レイヤーの画像要素を重ね合わせ合成することにより、規定された時間軸に沿って開始画像から終了画像まで変化する動画表現を生みだすこと
(3)動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1以上の静止画を配列した静止画レイヤーを含んでいること
(4)ユーザーインタフェースプログラムは、オペレーティングシステムにより当該実行ファイルが開かれた際に起動され、再生ウインドウおよび再生操作パネルをディスプレイに表示させるとともに再生プログラムを起動すること
(5)再生プログラムは、動画作品構造体に基づいて動画作品を再生可能であるとともに一時停止および再生時点の変更が可能であり、起動された際に動画作品構造体に基づく開始画像を再生ウインドウに表示させること
(6)ユーザーインタフェースプログラムは、再生操作パネルに対する利用者入力を受け付け、受け付けた利用者入力に基づいて再生プログラムに指示を与え、動画作品の再生・一時停止・再生時点変更の処理を行わせること
(7)ユーザーインタフェースプログラムは、再生プログラムにより動画作品構造体に基づく動画作品の一時停止画像がディスプレイに表示されている状態において、表示画像上の静止画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付け可能であること
(8)ユーザーインタフェースプログラムは、静止画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、静止画ファイルを指定する利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された静止画レイヤの静止画データを指定された静止画ファイルの静止画データに置換する編集処理を行わせること
(9)ユーザーインタフェースプログラムは、編集プログラムにより編集されて再生プログラムの処理対象となっている動画作品構造体についてファイル化出力を指示する利用者入力を受け付けた際、出力プログラムに、当該動画作品構造体に基づいて所定形式の動画作品ファイルを作成させて出力させること
【0013】
また、第2発明は、第1発明の特定事項(3)(7)(8)をそれぞれ以下の発明特定事項(13)(17)(18)に置換した実行ファイルである。
(13)動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1ショット以上の動画を配列した動画レイヤーを含んでいること
(17)ユーザーインタフェースプログラムは、再生プログラムにより動画作品構造体に基づく動画作品の一時停止画像がディスプレイに表示されている状態において、表示画像上の動画レイヤを編集対象として指定する利用者入力を受け付け可能であること
(18)ユーザーインタフェースプログラムは、動画レイヤを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、動画ファイルを指定する利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された動画レイヤーの動画データを指定された動画ファイルの動画データに置換する編集処理を行わせること
【0014】
また、第3発明は、第1発明または第2発明のいずれかにおいて、以下の発明特定事項(21)(22)に係る構成を備えた実行ファイルである。
(21)動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1以上の字幕を配列した字幕レイヤを含んでいること
(22)ユーザーインタフェースプログラムは、字幕レイヤを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、文字列データの利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された字幕レイヤーの文字列データを受け付けた文字列データに置換する編集処理を行わせること
【0015】
この発明に係る実行ファイルはデジタルサイネージ利用者を対象としてつぎのように活用される。つまり、実行ファイルの使用方法の発明は、つぎの事項(31)〜(34)により特定される各過程を備えた方法である。
(31)前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る実行ファイルであって、動画作品の内容が異なる複数種類の実行ファイルを作品提供サーバーに蔵置しておく過程
(32)利用者コンピューターが通信網を介して作品提供サーバーにアクセスし、作品提供サーバーから任意の実行ファイルを利用者コンピューターにダウンロードする過程
(33)利用者コンピューターにおいて実行ファイルを起動して当該実行ファイルの動画作品を編集した動画作品ファイルを作成する過程
(34)利用者コンピューターにおいて作成した動画作品ファイルをデジタルサイネージシステムに蔵置し、当該デジタルサイネージシステムにて再生出力する過程
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例における実行ファイルの構造を示す概念図
【図2】実施例における動画作品の構造を示す概念図
【図3】実施例における編集操作画面の概略図
【図4】別の実施例における動画作品構造体の概念図
【実施例】
【0017】
===実行ファイルの構造===
この発明の実施例に係る実行ファイルは、マイクロソフト社が提供している周知慣用のオペレーティングシステム「Windows」上で実行可能な、プログラムとデータを一体化した1個のEXEファイルである。その論理構造は、図1に概要を示すように、1個の動画作品構造体と、ユーザーインタフェースプログラムと、再生プログラムと、編集プログラムと、出力プログラムを含んだ1個のファイルである。
【0018】
===動画作品構造体===
動画作品構造体の具体例を図2に従って説明する。動画作品構造体は、図1にも記載したように、複数のレイヤーに区分された画像要素の集合体を含んでいる。図2の具体的に例示した動画作品構造体は、バックグランドレイヤーと、フォトレイヤーと、効果レイヤーと、テキストレイヤーの4層からなっている。
【0019】
この動画作品におけるバックグランドレイヤーは静止画であり、中央に四角の鉄板の枠体の静止画(鉄板枠画像とする)が配置され、この鉄板枠画像の外側が太い焼き網の静止画(太網画像とする)が配置され、太い焼き網の上に鉄板が載っている状況の写真である。鉄板枠画像の内側の四角エリアは透明色となっており、この部分が透明ウインドウとなり、ここにフォトレイヤーの静止画が合成される。この作品の場合、バックグランドレイヤーは利用者による編集対象とはならない。
【0020】
この動画作品におけるフォトレイヤーは静止画であり、細い焼き網の上で焼かれている大海老の写真である(大海老画像とする)。図2に示すように、大海老画像はバックグランドレイヤーの鉄板枠画像の内側の透明ウインドウ内にフォトレイヤーの大海老画像が合成される。この作品の場合、フォトレイヤーは利用者による編集対象となる。
【0021】
この動画作品における効果レイヤーは15秒のCG動画であり、透明色の背景に半透明の炎と煙が自然に揺れ動く様子を表現している(炎の動画とする)。炎の動画は、バックグランドレイヤーとフォトレイヤーの合成画像の上に重ねるように合成され、太い焼き網と鉄板枠と細い焼き網からなる調理設備の上で大海老が焼かれている静止画像の上に、揺れ動く炎と煙がオーバーラップすることで15秒の動画が作成される。この作品の場合、効果レイヤーは利用者による編集対象とはならない。
【0022】
この作品におけるテキストレイヤーは、「大エビを豪快に丸ごと炭火焼き! プリプリの身が美味しい!!」という上部に配置された第1字幕と、「大海老焼き 1人前 980円」という下部に配置された第2字幕とからなる。上述した15秒の動画において、第1字幕は最初から最後まで表示され、第2字幕は最初から10秒後までの期間は連続して表示され、10秒後から最後までの期間は点滅表示される。この作品の場合、テキストレイヤーは利用者による編集対象となる。
【0023】
===ユーザーインタフェースプログラムと再生プログラム===
この発明に係る実行ファイルが利用者コンピューターのハードディスクに格納されている状況を前提として、当該実行ファイルの機能構成について順番に説明する。まず、オペレーティングシステム「Windows」上において当該実行ファイルをクリックすると、実行ファイル中のユーザーインタフェースプログラムおよび再生プログラムが起動される。
【0024】
ユーザーインタフェースプログラムは、図3に示すように、ディスプレイ上に編集操作画面を作りだす。編集操作画面は、動画作品の再生ウインドウと、ユーザーインタフェース用の操作パネルとからなる。操作パネルには、再生・停止ボタンと、トップサーチボタンと、エンドサーチボタンと、コントロールバーを含んでいる。
【0025】
再生プログラムは、上述した動画作品構造体に基づいて、バックグランドレイヤー・フォトレイヤー・効果レイヤー・テキストレイヤーの4層を重ね合わせ合成することにより作りだされる15秒の動画作品の先頭静止画を再生し、その先頭静止画を再生ウインドウに表示する。この状態において、ユーザーインタフェースプログラムは操作パネルに対する利用者入力を受け付けて、利用者入力の内容に応じて再生プログラムに指示を与える。
【0026】
先頭静止画表示状態で再生・停止ボタンがクリックされると15秒の動画作品をスタートさせ、動画表示状態で再生・停止ボタンがクリックされるとその時点で再生停止して静止画表示とする。トップサーチボタンがクリックされると先頭静止画を表示する。エンドサーチボタンがクリックされると末尾静止画を表示する。コントロールバーに沿ってボタンが動かされると、ボタンの位置に対応した時間位置の静止画を表示する。
【0027】
===ユーザーインタフェースプログラムと編集プログラム===
15秒の動画作品の一場面をなす静止画が表示されている状態において、編集対象の1つであるフォトレイヤーの画像(上述した大海老画像の部分)に利用者がマウスカーソルを合わせると、このことをユーザーインタフェースプログラムが検出し、編集の操作説明用のポップアップウインドウを開く。そのポップアップウインドウでは「表示されている大海老画像を貴方が指定する任意の静止画に置換することができます。置換したい画像の所在とファイル名を指定してください」という趣旨の案内を行い、静止画データを指定する利用者入力を受け付ける。
【0028】
利用者がたとえばハードディスク上に存在する静止画ファイルを置換してほしい静止画として入力すると、これを受けてユーザーインタフェースプログラムは編集プログラムを起動し、置換処理を行わせる。つまり編集プログラムは、利用者が指定した静止画ファイルの画像データをハードディスクから主メモリに読み込み、主メモリに展開している前記動画作品構造体におけるフォトレイヤーの大海老画像の静止画データを読み込んだユーザー指定の静止画データに置換し、置換後の動画作品構造体を再生プログラムの処理対象とする。
【0029】
上記の処理が実行されると、ディスプレイ上の再生ウインドウに表示されている「15秒の動画作品の一場面をなす静止画」の中のフォトレイヤーの画像がユーザー指定の静止画に置換される。この状態において、操作パネルの再生・停止ボタン・トップサーチボタン・エンドサーチボタン・コントロールバーに対する利用者入力に応答して、「15秒の動画作品」を進めたり停止させたり戻したりすることができる。また、操作パネルには図3に示すようにリセットボタンも含まれており、静止画表示状態においてリセットボタンがクリックされた場合、編集プログラムによる処理結果を無効とし、デフォルトの動画作品構造体による再生画像に戻す。
【0030】
15秒の動画作品の一場面をなす静止画が表示され、その静止画には前記した第1字幕および第2字幕が表示されているとする。この状態において、第1字幕にマウスカーソルを合わせると、このことをユーザーインタフェースプログラムが検出し、編集の操作説明用のポップアップウインドウを開く。そのポップアップウインドウでは、「この字幕を自由に変更することができます。ここに文字列を入力してください」という案内が表示される。案内に従って利用者が「マグロのカマ焼き! たっぷり身が付いています!!」と入力すると、「大エビを豪快に丸ごと炭火焼き! プリプリの身が美味しい!!」という第1字幕が入力したマグロのカマ焼きの字幕に置換される。このとき、とくに指定しなければ、文字属性や文字列の配置属性はオリジナルの第1字幕のものが引き継がれる。
【0031】
同様に、表示されている静止画における第2字幕にマウスカーソルを合わせると、「この字幕を自由に変更することができます。ここに文字列を入力してください」と案内するポップアップウインドウが開き、利用者がここに「マグロのカマ焼き 1200円」と入力すると、第2字幕がこの内容に置換される。前記と同様に、第2字幕の表示属性については、自動的にオリジナルの設定が引き継がれるので、15秒の動画作品のうち、前半の10秒までは新たな内容の第2字幕は連続表示で、その後は点滅表示となる。もちろん、字幕を変更した場合にも、操作パネルの再生・停止ボタン・トップサーチボタン・エンドサーチボタン・コントロールバーに対する利用者入力に応答して、「15秒の動画作品」を進めたり停止させたり戻したりすることができる。
【0032】
なお字幕の変更機能については、新たな字幕のフォント・ポイント数・色などを利用者が設定できるようにしても良い。ただし、そうした多機能化の方向性と、この発明の本来の目的とはトレードオフの関係にあるので、利用者に委ねる事項は最小限にするのが望ましい。
【0033】
===ユーザーインタフェースプログラムと出力プログラム===
以上説明した要領で、オリジナルな動画作品におけるフォトレイヤーおよび字幕レイヤーについて利用者による変更操作が加えられ、利用者コンピューターのディスプレイに編集後の動画作品の一場面が静止画表示されているとする。その画面には前述した操作パネルが表示されており、図3に示すように、操作パネルには「ムービーにする」ボタンが含まれている。利用者が「ムービーにする」ボタンをクリックすると、ユーザーインタフェースプログラムがこれを検知して出力プログラムを起動する。
【0034】
出力プログラムは、オリジナルな動画作品構造体におけるバックグランドレイヤーおよびテキストレイヤーと、利用者により置換されたフォトレイヤーおよび効果レイヤーにより構成される「15秒の動画作品」について、これをMPEGファイルやASFファイルあるいはMOVファイル等のいずれかの形式の動画ファイルに変換し、適宜なファイル名をつけて利用者コンピューターのハードディスク等に書き出す。ファイル名は利用者に指定させても良い。また、動画ファイルの形式を利用者に選択させる程度の自由度は、この発明の目的に反するとはまではいえないであろう。
【0035】
利用者は、自身が編集した「15秒の動画作品」の動画ファイルをデジタルサイネージにおけるコンテンツ蔵置用のハードディスクにコピーし、この動画ファイルを表示スケジュールにおける表示対象として指定することにより、編集した「15秒の動画作品」がデジタルサイネージに表示されることになる。
【0036】
===編集対象について===
以上の例では、フォトレイヤーは1枚の静止画が15秒間連続して表示されるものであった。オリジナルの動画作品におけるフォトレイヤーが5秒間隔で切り替わる3枚の静止画によって構成されているとする。この場合、3枚の静止画がそれぞれ置換対象となる。つまり、3枚の静止画のうち「15秒の動画作品」の一場面として表示されている静止画がその状態での編集対象となる。テキストレイヤーについてもまったく同様である。さらに、オリジナルな動画作品構造体の1つのレイヤーとして編集可能な動画レイヤーを含めておき、これを上記と同様なユーザーインタフェース要領で、利用者が用意した動画ファイルの動画に置換することも本発明の実行ファイルの機能に含めることができる。この場合の動画レイヤーはショットという概念により区分し、そのショットの単位で置換できるようにする。たとえば、オリジナルな「15秒の動画作品」の動画レイヤーが前半8秒の動画ショットと後半7秒の動画ショットからなるとすると、それぞれのショットが利用者による置換対象となる。
【0037】
この発明に係る実行ファイルに組み込まれる動画作品構造体の別の構造例を図4に示している。図4の動画作品構造体は、120秒の動画からなるバックグランドレイヤーと、バックグランドレイヤーの透明部に表示される動画レイヤーを含んでいる。バックグランドレイヤーの動画は利用者による置換対象ではないが、バックグランドレイヤーの動画は利用者が用意した別の動画に置換できる。バックグランドレイヤーは、30秒の動画ショットが4ショット繋がる構造であり、このショット単位で利用者が用意した動画に置換することができる。効果レイヤーは置換できない120秒のCGアニメーションである。字幕レイヤーは、バックグランドレイヤーに合わせて、30秒ごとに切り換えられる第1〜第4字幕から構成されており、これら字幕を利用者が編集することができる。
【0038】
===利用者に向けて実行ファイルを配布する方法===
出願人は、利用者にデジタルサイネージのハードウエアおよびソフトウエアを提供するとともに表示コンテンツを提供する事業を行っている。出願人のような事業会社がインターネット上に設置したサーバーにより上記した構成の多数種類の実行ファイルを利用者に提供するサービスを行う。つまり、多種多様なオリジナル動画作品を制作し、1個の実行ファイルに1個のオリジナル動画作品を埋め込む。そのように制作した多数種類の実行ファイルの索引情報・概要情報を、周知の動画投稿サイトのような体裁でインターネット上に展示し、サーバーにアクセスしてきた利用者コンピューターが希望にかなうオリジナル動画作品を探し出し、ダウンロードできるようにする。
【0039】
利用者コンピューターは、マイクロソフト社の「Windows」およびブラウザを搭載しているだけでよく、動画や静止画を取り扱うためのアプリケーションプログラムはまったく必要ない。そうした利用者コンピューターによりこの発明に係る前記サーバーにアクセスし、オリジナル動画作品データベースの索引情報・概要情報に基づいて希望にかなうオリジナル動画作品(自分のデジタルサイネージに表示したい作品に近い作品)を探し出し、そのオリジナル動画作品が組み込まれている実行ファイルをダウンロードする。
【0040】
ダウンロードした実行ファイルにすべての機能が盛り込まれているので、画像編集用のソフトウエアは必要なく、オリジナル動画作品を見ながら編集対象となっているレイヤーの画像要素を変更することができる。ダウンロードした1個の実行ファイルに1個のオリジナル動画作品しか含まれていないので、利用者があれこれ迷う要素がそもそもなく、パソコンに詳しくない不慣れな人でも自分のお店に相応しい広告宣伝用の動画作品を作りだすことができ、それを自分のお店のデジタルサイネージに表示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの事項(1)〜(9)により特定される実行ファイル。
(1)1個の動画作品構造体と、ユーザーインタフェースプログラムと、再生プログラムと、編集プログラムと、出力プログラムを含んだ1個のファイルであり、所定のオペレーティングシステムが稼働するコンピューターにて実行可能であること
(2)動画作品構造体は、複数のレイヤーに区分された画像要素の集合体を含み、各レイヤーの画像要素を重ね合わせ合成することにより、規定された時間軸に沿って開始画像から終了画像まで変化する動画表現を生みだすこと
(3)動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1以上の静止画を配列した静止画レイヤーを含んでいること
(4)ユーザーインタフェースプログラムは、オペレーティングシステムにより当該実行ファイルが開かれた際に起動され、再生ウインドウおよび操作パネルをディスプレイに表示させるとともに再生プログラムを起動すること
(5)再生プログラムは、動画作品構造体に基づいて動画作品を再生可能であるとともに一時停止および再生時点の変更が可能であり、起動された際に動画作品構造体に基づく開始画像を再生ウインドウに表示させること
(6)ユーザーインタフェースプログラムは、操作パネルに対する利用者入力を受け付け、受け付けた利用者入力に基づいて再生プログラムに指示を与え、動画作品の再生・一時停止・再生時点変更の処理を行わせること
(7)ユーザーインタフェースプログラムは、再生プログラムにより動画作品構造体に基づく動画作品の一時停止画像がディスプレイに表示されている状態において、表示画像上の静止画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付け可能であること
(8)ユーザーインタフェースプログラムは、静止画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、静止画ファイルを指定する利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された静止画レイヤーの静止画データを指定された静止画ファイルの静止画データに置換する編集処理を行わせること
(9)ユーザーインタフェースプログラムは、編集プログラムにより編集されて再生プログラムの処理対象となっている動画作品構造体についてファイル化出力を指示する利用者入力を受け付けた際、出力プログラムに、当該動画作品構造体に基づいて所定形式の動画作品ファイルを作成させて出力させること
【請求項2】
つぎの事項(11)〜(19)により特定される実行ファイル。
(11)1個の動画作品構造体と、ユーザーインタフェースプログラムと、再生プログラムと、編集プログラムと、出力プログラムを含んだ1個のファイルであり、所定のオペレーティングシステムが稼働するコンピューターにて実行可能であること
(12)動画作品構造体は、複数のレイヤーに区分された画像要素の集合体を含み、各レイヤーの画像要素を重ね合わせ合成することにより、規定された時間軸に沿って開始画像から終了画像まで変化する動画表現を生みだすこと
(13)動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1ショット以上の動画を配列した動画レイヤーを含んでいること
(14)ユーザーインタフェースプログラムは、オペレーティングシステムにより当該実行ファイルが開かれた際に起動され、再生ウインドウおよび操作パネルをディスプレイに表示させるとともに再生プログラムを起動すること
(15)再生プログラムは、動画作品構造体に基づいて動画作品を再生可能であるとともに一時停止および再生時点の変更が可能であり、起動された際に動画作品構造体に基づく開始画像を再生ウインドウに表示させること
(16)ユーザーインタフェースプログラムは、操作パネルに対する利用者入力を受け付け、受け付けた利用者入力に基づいて再生プログラムに指示を与え、動画作品の再生・一時停止・再生時点変更の処理を行わせること
(17)ユーザーインタフェースプログラムは、再生プログラムにより動画作品構造体に基づく動画作品の一時停止画像がディスプレイに表示されている状態において、表示画像上の動画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付け可能であること
(18)ユーザーインタフェースプログラムは、動画レイヤーを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、動画ファイルを指定する利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された動画レイヤの動画データを指定された動画ファイルの動画データに置換する編集処理を行わせること
(19)ユーザーインタフェースプログラムは、編集プログラムにより編集されて再生プログラムの処理対象となっている動画作品構造体についてファイル化出力を指示する利用者入力を受け付けた際、出力プログラムに、当該動画作品構造体に基づいて所定形式の動画作品ファイルを作成させて出力させること
【請求項3】
動画作品構造体は、動画作品の時間軸上に1以上の字幕を配列した字幕レイヤを含んでおり、
ユーザーインタフェースプログラムは、字幕レイヤを編集対象として指定する利用者入力を受け付けた際、文字列データの利用者入力を受け付け、編集プログラムに、指定された字幕レイヤーの文字列データを受け付けた文字列データに置換する編集処理を行わせる
請求項1または2に記載の実行ファイル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の実行ファイルであって、動画作品の内容が異なる複数種類の実行ファイルを作品提供サーバーに蔵置しておく過程と、
利用者コンピューターが通信網を介して作品提供サーバーにアクセスし、作品提供サーバーから任意の実行ファイルを利用者コンピューターにダウンロードする過程と、
利用者コンピューターにおいて実行ファイルを起動して当該実行ファイルの動画作品を編集した動画作品ファイルを作成する過程と、
利用者コンピューターにおいて作成した動画作品ファイルをデジタルサイネージシステムに蔵置し、当該デジタルサイネージシステムにて再生出力する過程とを備えた
実行ファイルの使用方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−133640(P2012−133640A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286071(P2010−286071)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(390008109)アビックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】