説明

制動制御システム

【課題】惰性走行中に内燃機関の始動が成功しなかった場合のブレーキ倍力装置に供給される負圧の不足を抑制できる制動制御システムを提供すること。
【解決手段】内燃機関と、供給される負圧により作動するブレーキ倍力装置と、内燃機関の吸気負圧をブレーキ倍力装置に供給する通路と、車両の車輪から伝達される動力により駆動され、負圧を生成してブレーキ倍力装置に生成した負圧を供給する負圧ポンプと、負圧を蓄圧可能であり、かつブレーキ倍力装置に蓄圧した負圧を供給できる蓄圧装置とを備え、内燃機関を停止させて惰性により車両を走行させる惰性走行の実行中に通路の負圧が低減した(S10−Y)場合であって、負圧ポンプが適切に負圧を生成できず(S20−Y)、かつ内燃機関の始動ができない(S30−Y)場合、蓄圧装置に蓄圧されている負圧をブレーキ倍力装置に供給する(S80)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の停止および始動(再始動)を自動的に行う技術が知られている。特許文献1には、ブレーキブースタの負圧を検出するセンサを設け、エンジン停止中に負圧が所定値以下に低下したときにエンジンを始動させるエンジンの自動停止始動装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−310133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の始動が成功しなかった場合であっても負圧の不足を抑制できることが望まれる。例えば、内燃機関の吸気負圧が供給されるブレーキ倍力装置を搭載し、かつ内燃機関を停止させて惰性により走行させる惰性走行を実行可能な車両において、惰性走行中に制動操作がなされること等により負圧が低減した場合、内燃機関を始動することができれば負圧を回復させることができる。しかしながら、内燃機関の始動が成功しなかった場合には、ブレーキ倍力装置に供給される負圧が不足し、ドライバビリティの低下等を招くことがある。内燃機関の始動が成功しなかった場合のブレーキ倍力装置に供給される負圧の不足を抑制できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関の吸気負圧が供給されるブレーキ倍力装置を搭載し、かつ内燃機関を停止させて惰性により走行させる惰性走行を実行可能な車両において、惰性走行中に内燃機関の始動が成功しなかった場合のブレーキ倍力装置に供給される負圧の不足を抑制できる制動制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制動制御システムは、車両の動力源としての内燃機関と、供給される負圧により作動するブレーキ倍力装置と、前記内燃機関の吸気負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給する通路と、前記車両の車輪から伝達される動力により駆動され、負圧を生成して前記ブレーキ倍力装置に前記生成した負圧を供給する負圧ポンプと、負圧を蓄圧可能であり、かつ前記ブレーキ倍力装置に前記蓄圧した負圧を供給できる蓄圧装置とを備え、前記内燃機関を停止させて惰性により前記車両を走行させる惰性走行の実行中に前記通路の負圧が低減した場合であって、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できず、かつ前記内燃機関の始動ができない場合、前記蓄圧装置に蓄圧されている負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給することを特徴とする。
【0007】
上記制動制御システムにおいて、前記蓄圧装置には、前記内燃機関の作動時における前記吸気負圧が予め蓄圧されることが好ましい。
【0008】
上記制動制御システムにおいて、前記負圧ポンプは、前記ブレーキ倍力装置に加えて、前記蓄圧装置に対して前記生成した負圧を供給できるものであって、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できない場合とは、前記車両が低車速で走行している場合であり、前記蓄圧装置には、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できる車速で前記車両が走行しているときに前記負圧ポンプが生成した負圧が予め蓄圧されることが好ましい。
【0009】
上記制動制御システムにおいて、前記蓄圧装置の開口部を閉塞あるいは開放する制御弁を備え、前記蓄圧装置に負圧を蓄圧する蓄圧時、および前記蓄圧装置に蓄圧された負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給する供給時は、前記制御弁により前記開口部を開放し、前記蓄圧時および前記供給時のいずれとも異なるときは、前記制御弁により前記開口部を閉塞することが好ましい。
【0010】
上記制動制御システムにおいて、前記蓄圧装置は、前記通路と接続されており、前記制御弁は、前記開口部を開放して前記通路と前記蓄圧装置とを連通させ、かつ前記蓄圧装置および前記ブレーキ倍力装置よりも前記内燃機関側の前記通路を閉塞する所定状態に切替えることができるものであって、前記制動制御システムは、前記供給時に、前記制御弁を前記所定状態に切替えることが好ましい。
【0011】
上記制動制御システムにおいて、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できず、かつ前記内燃機関の始動ができない場合であって、運転者による制動操作がなされている場合、前記蓄圧装置に蓄圧されている負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給することに加えて、前記車両に搭載され、電力を消費して前記車両に制動力を作用させる制動力アシスト装置を作動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる制動制御システムは、車両の車輪から伝達される動力により駆動され、負圧を生成してブレーキ倍力装置に生成した負圧を供給する負圧ポンプと、負圧を蓄圧可能であり、かつブレーキ倍力装置に蓄圧した負圧を供給できる蓄圧装置とを備え、内燃機関を停止させて惰性により車両を走行させる惰性走行の実行中に通路の負圧が低減した場合であって、負圧ポンプが適切に負圧を生成できず、かつ内燃機関の始動ができない場合、蓄圧装置に蓄圧されている負圧をブレーキ倍力装置に供給する。よって、本発明にかかる制動制御システムによれば、惰性走行中に内燃機関の始動が成功しなかった場合のブレーキ倍力装置に供給される負圧の不足を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図2】図2は、第1実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、ブレーキ倍力装置の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、ブレーキペダルが踏み込まれたときのブレーキ倍力装置を示す図である。
【図5】図5は、エンジン動作中におけるブレーキ倍力装置およびバルブを示す図である。
【図6】図6は、エンジン停止後にブレーキ操作がなされる前のブレーキ倍力装置およびバルブを示す図である。
【図7】図7は、エンジン停止中にブレーキ操作がなされた後のブレーキ倍力装置およびバルブを示す図である。
【図8】図8は、負圧タンクから負圧が供給される状態を示す図である。
【図9】図9は、第2実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【図10】図10は、DCモータを駆動源とする電動負圧ポンプを示す図である。
【図11】図11は、ACモータを駆動源とする電動負圧ポンプを示す図である。
【図12】図12は、第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、第2実施形態の動作を示す他のフローチャートである。
【図14】図14は、第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態にかかる制動制御システムにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
(第1実施形態)
図1から図8を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、制動制御システムに関する。図1は、本発明の第1実施形態の動作を示すフローチャート、図2は、実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【0016】
本実施形態の車両1では、エンジン(図2の符号10参照)を停止させて惰性(慣性力)により車両を走行させる惰性走行(フリーラン)の実行および惰性走行からの復帰を自動的に行うフリーランストップ&スタートが実行される。フリーランストップ&スタートは、走行中でも駆動力の要らない場合に、エンジン10を停止し惰性走行することで、実用燃費を稼ぐことができる。フリーランでエンジン10を停止した場合、ブレーキが数回踏み込まれると、ブレーキの真空倍力装置(ブレーキ倍力装置、図2の符号40参照)に供給される負圧が低減してしまう。
【0017】
本実施形態の制動制御システム1−1は、TMの出力軸(図2の符号21参照)に設けられた出力軸負圧ポンプ(負圧ポンプ、図2の符号30参照)によりブレーキ倍力装置40に負圧を供給することができる。これにより、フリーランの実行中にブレーキ倍力装置40に供給される負圧が不足することが抑制される。ここで、出力軸負圧ポンプ30が故障していたり車速が低くて仕事をしないときには、エンジン10を始動することで、吸気負圧をブレーキ倍力装置40に供給することが可能である。しかしながら、スタータの故障やバッテリ充電状態SOCの低下等でエンジン10が始動できない事態も想定しておくことが望ましい。
【0018】
本実施形態の制動制御システム1−1は、負圧を蓄圧可能な負圧タンク(図2の符号12参照)を備えている。エンジン10が始動できない場合、まず出力軸回生オルタネータ(図2の符号32参照)の発電により減速度を強くし、負圧タンク12に負圧が残っていればそれを利用してブレーキ倍力装置40に負圧を供給する。更に、VSC装置のVSCアクチュエータ(図2の符号121参照)によるブレーキアシストが行われる。負圧タンク12からブレーキ倍力装置40に負圧が供給されることで、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足が抑制される。
【0019】
図2において、符号1は車両を示す。車両1は、エンジン10、TM20、デフ22、車輪23、出力軸負圧ポンプ30、出力軸回生オルタネータ32およびブレーキ倍力装置40等を備える。エンジン10は、車両1の動力源である。エンジン10としては、例えば、公知の内燃機関を用いることができる。TM20は、変速装置である。本実施形態の車両1が備えるTM20は、自動変速機である。エンジン10とTM20とはクラッチ14を介して連結されている。クラッチ14が係合しているときには、エンジン10とTM20とで動力が相互に伝達される。また、クラッチ14が開放しているときには、エンジン10とTM20とは動力を伝達しない。
【0020】
TM20の出力軸21は、デフ22を介して車輪(駆動輪)23と接続されている。デフ22は、差動機構であり、出力軸21の回転をそれぞれの車輪23に伝達する。車輪23は、ブレーキ24、タイヤ25および電動パーキングブレーキ(以下、「電動PKB」と記載する。)26を有する。ブレーキ24は、供給される油圧により作動して車両1に制動力を作用させる制動装置である。ブレーキ24には、油路27を介してブレーキ倍力装置40が接続されている。ブレーキ倍力装置40は、供給される負圧により作動するものであり、負圧を利用して運転者の制動操作をアシストするアシスト装置である。ブレーキ倍力装置40は、負圧配管11を介してエンジン10の図示しないインレット・マニホールドと接続されている。インレット・マニホールドは、エンジン10の吸気管であり、エンジン10の運転時には、インレット・マニホールドが負圧となる。このインレット・マニホールドに生じるエンジン10の負圧(吸気負圧)は、負圧配管(通路)11を介してブレーキ倍力装置40に供給される。
【0021】
図3は、ブレーキ倍力装置40の概略構成を示す図である。ブレーキ倍力装置40は、パワーシリンダ41、パワーピストン42、バルブ43、オペレーティングロッド45およびプッシュロッド46等を備える。
【0022】
パワーピストン42は、パワーシリンダ41内に設けられている。パワーシリンダ41内は、パワーピストン42によって負圧室41aと空気室41bとに仕切られている。空気室41bは、バルブ43を介して負圧配管11および大気に連通されている。バルブ43は、バルブ本体43a、バキュームバルブ43b、エアバルブ43cおよびバルブプランジャ44を有する。バキュームバルブ43bは、バルブ本体43aに形成された開口部として、空気室41bに接続された開口部および負圧配管11に接続された開口部を有する。また、エアバルブ43cは、バルブ本体43aに形成された開口部として、空気室41bに接続された開口部および大気に連通された開口部を有する。
【0023】
バルブプランジャ44は、バキュームバルブ43bあるいはエアバルブ43cを選択的に閉塞する弁子である。バルブプランジャ44は、オペレーティングロッド45を介してブレーキペダル28と連結されている。ブレーキペダル28は、回動可能に支持されたロッド28aおよびペダル部28bを有する。運転者によりペダル部28bが踏み込まれるとロッド28aが回動し、オペレーティングロッド45が軸方向に駆動される。駆動されたオペレーティングロッド45と共にバルブプランジャ44が軸方向に移動することで、バキュームバルブ43bおよびエアバルブ43cの開閉がなされる。
【0024】
ブレーキペダル28が踏み込まれていない場合、バルブプランジャ44はエアバルブ43cを閉塞する。この場合、図3に示すように、エアバルブ43cが閉塞され、かつバキュームバルブ43bが開放されることで、負圧配管11からバキュームバルブ43bを介して空気室41bに負圧が供給される。また、負圧室41aは負圧配管11と常時連通されており、負圧配管11を介して負圧が供給される。つまり、ブレーキペダル28が踏み込まれていない場合には、負圧室41aと空気室41bとが等圧となる。負圧室41aには、負圧室41aの負圧を検出する第一負圧センサ48が設けられている。
【0025】
図4は、ブレーキペダル28が踏み込まれたときのブレーキ倍力装置40を示す図である。ブレーキペダル28が踏み込まれると、バルブプランジャ44は軸方向に移動してバキュームバルブ43bを閉塞し、エアバルブ43cを開放する。すると、空気室41bにはエアバルブ43cを介して大気が流入し、空気室41b内が大気圧となる。これにより、負圧が供給されている負圧室41aと大気圧となった空気室41bとの差圧により、パワーピストン42にアシスト力が作用する。このアシスト力は、運転者による踏力の方向と同方向であり、制動操作に要する運転者の踏力を軽減させる。運転者の踏力およびアシスト力は、プッシュロッド46を介してマスターシリンダの油圧ピストン47に伝達され、ブレーキ油圧を発生させる。このブレーキ油圧は、油路27を介してブレーキ24に供給される。
【0026】
エンジン10の動作中においてインレット・マニホールドの絶対圧は、例えば0.02MPa程度である。また、大気圧は、約0.098MPa程度である。パワーピストン42に作用するアシスト力は、インレット・マニホールドの絶対圧と大気圧との差圧である負圧の大きさによって決まる。インレット・マニホールドの絶対圧が大気圧に対して低圧であるほど(負圧が大きいほど)アシスト力は大きなものとなる。
【0027】
図2に戻り、TM20の出力軸21には、オルタネータクラッチ33を介して出力軸回生オルタネータ32が連結されている。出力軸回生オルタネータ32は、機械的な動力によって駆動されて発電を行う発電機である。オルタネータクラッチ33が係合状態である場合、出力軸21と出力軸回生オルタネータ32の回転軸とが連結され、出力軸回生オルタネータ32が出力軸21から伝達される動力によって駆動されて発電を行う。出力軸回生オルタネータ32が出力する電力は、エンジン10の補機等によって消費されたり、図示しないバッテリに充電されたりする。一方、オルタネータクラッチ33が開放状態である場合、出力軸回生オルタネータ32の回転軸は出力軸21から切り離された状態となり、出力軸回生オルタネータ32は回転を停止する。
【0028】
車両1には、エンジン10を制御するエンジンECU100およびアイドルストップを制御するアイドルストップコントロールECU110が設けられている。エンジンECU100は、エンジン10の燃料噴射量や噴射タイミングなどの噴射制御、点火制御等を含むエンジン10の制御を行うものである。また、エンジンECU100は、出力軸負圧ポンプ30および出力軸回生オルタネータ32と接続されており、出力軸負圧ポンプ30および出力軸回生オルタネータ32をそれぞれ制御することができる。
【0029】
アイドルストップコントロールECU110は、フリーランストップ&スタートを制御するものである。車両1は、走行中にエンジン10をTM20から切り離してエンジン10を停止し、車両1を惰性走行させるフリーランを実行可能である。フリーランは、例えば、アクセルOFFされた場合など、駆動力が必要ない場合に実行される。アイドルストップコントロールECU110は、エンジンECU100と接続されており、エンジンECU100と信号を授受することができる。また、アイドルストップコントロールECU110は、クラッチ14およびオルタネータクラッチ33と接続されており、クラッチ14およびオルタネータクラッチ33をそれぞれ制御する。
【0030】
アイドルストップコントロールECU110は、駆動力が必要ない場合であって、予め定められたフリーランを実行可能な条件が成立すると、クラッチ14を開放させてTM20をニュートラルとし、エンジンECU100に対してエンジン停止を要求する。エンジン停止の要求を受けたエンジンECU100は、エンジン10の作動を停止させる。これにより、車両1は惰性によって走行するフリーラン状態となる。フリーラン状態において、アイドルストップコントロールECU110は、オルタネータクラッチ33を係合状態として出力軸回生オルタネータ32が発電可能な状態とする。フリーランによるエンジン停止中は、エンジン10の図示しないオルタネータによる発電ができない。このため、エンジン10のオルタネータに代えて、出力軸回生オルタネータ32により発電がなされる。エンジンECU100は、フリーラン状態において、出力軸回生オルタネータ32の発電量等を制御する。エンジンECU100は、エンジン10の補機類の消費電力や、バッテリの充電状態等に基づいて出力軸回生オルタネータ32の発電量を制御する。
【0031】
また、アイドルストップコントロールECU110は、フリーランの実行中にフリーランを実行可能な条件が成立しなくなると、フリーランを終了させる。アイドルストップコントロールECU110は、エンジンECU100に対してエンジン始動を要求し、エンジン10が作動開始するとクラッチ14を係合させる。また、フリーランを終了する場合、アイドルストップコントロールECU110は、オルタネータクラッチ33を開放させる。このように、アイドルストップコントロールECU110は、走行中にフリーランの実行開始(エンジン停止)およびフリーランの終了(エンジン始動)を自動的に行うフリーランストップ&スタートを実行する。フリーランストップ&スタート制御によって、走行中にエンジン10を停止させて燃料消費を抑制し、燃費の向上を図ることが可能となる。
【0032】
VSCECU120は、ブレーキ制御等により車輪23の横滑りを緩和するVSC(Vehicle Stability Control)装置を制御するものである。VSCECU120は、VSCアクチュエータ121を制御して各車輪23のブレーキ24の制動力を制御することで横滑りを緩和する。また、VSCECU120は、エンジンECU100と接続されており、エンジンECU100と信号を授受することができる。VSCECU120は、エンジンECU100を介してエンジン10の出力を制御することにより横滑りを緩和することも可能である。
【0033】
ここで、フリーランの実行中にブレーキ操作がなされた(例えば、複数回のブレーキ操作がなされた)後では、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧が低下(負圧室41aの絶対圧が上昇)する。フリーランの実行中には、エンジン10が停止しているため、インレット・マニホールドの負圧が低下したとしても、エンジン10の作動時のように負圧が回復することがない。インレット・マニホールドの負圧が低下したときに、エンジン10を始動させるようにすれば負圧を回復させることが可能であるが、燃費向上の観点からはエンジン10を始動させることなくブレーキ倍力装置40に負圧を供給できることが望ましい。
【0034】
本実施形態の制動制御システム1−1は、出力軸負圧ポンプ30を備えており、フリーランの実行中にエンジン10を始動させることなくブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足を抑制することができる。
【0035】
TM20の出力軸21には、ポンプクラッチ31を介して出力軸負圧ポンプ30が連結されている。出力軸負圧ポンプ30は、機械的な動力によって駆動されて負圧を発生させるバキュームポンプである。ポンプクラッチ31が係合状態である場合、出力軸21と出力軸負圧ポンプ30とが連結され、出力軸負圧ポンプ30が出力軸21から伝達される動力によって駆動されて負圧を発生させる。出力軸負圧ポンプ30は、負圧配管11と接続されており、作動時に負圧配管11の気体を吸引して負圧配管11の圧力を低下(負圧を増加)させる。つまり、フリーランの実行中にポンプクラッチ31が係合状態であると、出力軸負圧ポンプ30は、車輪23から出力軸21を介して伝達される動力により駆動され、負圧を生成してブレーキ倍力装置40に生成した負圧を供給する。一方、ポンプクラッチ31が開放状態である場合、出力軸負圧ポンプ30は出力軸21から切り離された状態となり、出力軸負圧ポンプ30は停止する。なお、エンジン10の出力する動力により車両1が走行しているときにポンプクラッチ31が係合状態とされると、出力軸負圧ポンプ30は、エンジン10から伝達される動力により駆動されて負圧を生成する。
【0036】
また、車両1には、出力軸負圧ポンプ30がフェールし、更にエンジン10の始動が成功しなかった場合にブレーキ倍力装置40に負圧を供給する負圧タンク12が設けられている。これにより、エンジン10の再始動ができなかった場合であっても、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧が不足することが抑制される。
【0037】
負圧タンク12は、負圧配管11に接続されている。負圧タンク12は、負圧を蓄圧可能であり、かつ蓄圧した負圧をブレーキ倍力装置40に供給できる蓄圧装置である。図3に示すように、負圧タンク12は、負圧配管11における出力軸負圧ポンプ30との接続部11aよりもブレーキ倍力装置40側に接続されている。また、負圧配管11と負圧タンク12との接続部には、バルブ(制御弁)13が設けられている。バルブ13は、負圧タンク12の開口部12aを閉塞あるいは開放する。バルブ13は、図示しないアクチュエータを有し、アクチュエータによって以下に示す3つの状態に切替えることができる。
【0038】
[第一状態]
開口部12aを閉塞して負圧タンク12の内部と負圧配管11との気体の流通を遮断した状態。
[第二状態(所定状態)]
開口部12aを開放して負圧配管11と負圧タンク12とを連通させ、かつ負圧タンク12およびブレーキ倍力装置40よりもエンジン10側の負圧配管11を閉塞して負圧タンク12の内部とインレット・マニホールドや出力軸負圧ポンプ30との気体の流通を遮断した状態。
[第三状態]
負圧タンク12の開口部12aおよび負圧配管11のいずれも開放する(閉塞しない)状態。
【0039】
第三状態では、負圧配管11を介してインレット・マニホールド、出力軸負圧ポンプ30、負圧タンク12およびブレーキ倍力装置40が互いに連通される。負圧タンク12には、負圧タンク12内の負圧を検出する第二負圧センサ15が設けられている。
【0040】
図2に戻り、車両1には、ブレーキ倍力装置40に供給する負圧をマネジメントする負圧マネジメントECU130が設けられている。負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12、出力軸負圧ポンプ30、ポンプクラッチ31および電動PKB26と接続されており、負圧タンク12、出力軸負圧ポンプ30、ポンプクラッチ31および電動PKB26を制御する。負圧マネジメントECU130には、第一負圧センサ48および第二負圧センサ15の検出結果を示す信号が入力される。また、負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12のバルブ13と接続されており、バルブ13の状態を切替えることができる。負圧マネジメントECU130は、エンジンECU100、アイドルストップコントロールECU110およびVSCECU120と接続されており、各ECU100,110,120と信号を授受することができる。本実施形態の制動制御システム1−1は、エンジン10、負圧配管11、負圧タンク12、ブレーキ倍力装置40、出力軸負圧ポンプ30、エンジンECU100、アイドルストップコントロールECU110、VSCECU120および負圧マネジメントECU130を備える。
【0041】
以下に図5から図8を参照して、負圧マネジメントECU130によるバルブ13の切替え制御について説明する。図5は、エンジン動作中におけるブレーキ倍力装置40およびバルブ13を示す図、図6は、エンジン停止後にブレーキ操作がなされる前のブレーキ倍力装置40およびバルブ13を示す図、図7は、エンジン停止中にブレーキ操作がなされた後のブレーキ倍力装置40およびバルブ13を示す図、図8は、負圧タンク12から負圧が供給される状態を示す図である。
【0042】
図5に示すように、負圧マネジメントECU130は、エンジン10の動作中にはバルブ13を第三状態とする。これにより、インレット・マニホールドの負圧が負圧室41aおよび負圧タンク12にそれぞれ導入され、負圧室41a内および負圧タンク12内はそれぞれ負圧(例えば、約0.08MPaの負圧)となる。このように、負圧タンク12には、エンジン10の作動時における吸気負圧が予め蓄圧される。この蓄圧時には、バルブ13により負圧タンク12の開口部12aが開放される。
【0043】
図6に示すように、負圧マネジメントECU130は、エンジン10を停止してフリーランを開始するときには、バルブ13を第一状態とする。第一状態では、バルブ13は、負圧タンク12の開口部12aを閉塞し、負圧タンク12内と負圧配管11との気体の流通を遮断する。これにより、フリーランの実行中にブレーキ操作等によって負圧配管11の負圧が変動したとしても、負圧タンク12内はエンジン動作中に導入された負圧を維持することができる。
【0044】
フリーランの実行中にブレーキ操作がなされると、負圧室41a内および負圧配管11の負圧が低下する。エンジン停止中にブレーキペダル28が2、3回踏まれた後では、負圧室41a内の絶対圧は、例えば、図7に示すように大気圧程度まで上昇した状態となる。この場合に、エンジン10を始動することなく負圧室41aに負圧を供給できることが望ましい。負圧マネジメントECU130は、負圧室41aの負圧が低下すると、出力軸負圧ポンプ30を作動させてブレーキ倍力装置40に負圧を供給する。低車速で走行している場合や、出力軸負圧ポンプ30が故障している場合など、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成することができない場合、負圧マネジメントECU130は、エンジン10を始動させる。エンジン10が始動されると、吸気負圧が生成されてブレーキ倍力装置40に負圧が供給される。
【0045】
しかしながら、スタータの故障やバッテリ充電状態SOCの低下時など、エンジン10が始動できない可能性も考慮する必要がある。負圧マネジメントECU130は、エンジン10の始動が成功しなかった場合、図8に示すようにバルブ13を第二状態とする。第二状態では、バルブ13が負圧配管11を閉塞し、負圧タンク12およびブレーキ倍力装置40の側と、インレット・マニホールドおよび出力軸負圧ポンプ30の側との気体の流通を遮断する。これにより、負圧タンク12の負圧が負圧配管11を介して負圧室41aおよび(ブレーキ操作がなされていない場合には)空気室41bに供給される。この供給時には、バルブ13が第二状態とされ、負圧タンク12の開口部12aが開放される。負圧タンク12の負圧が供給されることで、エンジン10の始動が成功しなかった場合であっても、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足が抑制される。また、上記蓄圧時および供給時のいずれとも異なるときは、図6に示すようにバルブ13により開口部12aが閉塞される。
【0046】
図1を参照して、本実施形態の制動制御システム1−1の動作について説明する。図1に示す制御フローは、例えば車両1の走行中に所定の間隔で繰り返し実行される。まず、ステップS10では、負圧マネジメントECU130により、フリーランエンジン停止中でブレーキ負圧が無い状態であるか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、フリーランS&S(ストップ&スタート)でエンジン停止中(フリーランの実行中)であり、かつブレーキ負圧が無いと判定した場合に肯定判定を行う。負圧マネジメントECU130は、第一負圧センサ48の検出値が予め定められた閾値よりも小さい(絶対圧が高い)場合に、ブレーキ負圧が無いと判定する。ここで、負圧室41aは負圧配管11と連通されていることから、第一負圧センサ48の検出値は、負圧配管11の負圧に対応している。つまり、負圧配管11の負圧が低減している場合、ブレーキ負圧が無いと判定される。ステップS10の判定の結果、フリーランエンジン停止中でブレーキ負圧が無いと判定された場合(ステップS10−Y)にはステップS20に進み、そうでない場合(ステップS10−N)には本制御フローは終了する。
【0047】
ステップS20では、負圧マネジメントECU130により、出力軸負圧ポンプ30がフェールしているか否かが判定される。出力軸負圧ポンプ30は、出力軸21から伝達される機械的な動力によって駆動されるものであるため、その負圧生成能力が出力軸21の回転数に応じて変化する。低車速時には、出力軸負圧ポンプ30は適切な負圧を生成することができない。負圧マネジメントECU130は、出力軸負圧ポンプ30が故障している場合や、車速が低速で出力軸負圧ポンプ30が仕事をしない場合など、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成することができない場合に、出力軸負圧ポンプ30がフェールしていると判定する。その判定の結果、出力軸負圧ポンプ30がフェールしていると判定された場合(ステップS20−Y)にはステップS30に進み、そうでない場合(ステップS20−N)にはステップS60に進む。
【0048】
ステップS30では、負圧マネジメントECU130により、エンジン始動がフェールしたか否かが判定される。出力軸負圧ポンプ30がフェールしている場合、負圧マネジメントECU130は、エンジンECU100に対してエンジン始動を要求する。負圧マネジメントECU130は、エンジンECU100から送られるエンジン10の作動状態を示す信号に基づいて、このエンジン始動要求に応じたエンジン10の始動が成功したか否かについての情報を取得する。その結果、エンジン始動がフェールした(エンジン10の始動ができない)場合、ステップS30で肯定判定がなされる。ステップS30の判定の結果、エンジン始動がフェールしたと判定された場合(ステップS30−Y)にはステップS40に進み、そうでない場合(ステップS30−N)にはステップS70に進む。
【0049】
ステップS40では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12に負圧が無いか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、第二負圧センサ15の検出値が予め定められた閾値よりも小さい(絶対圧が高い)場合に、負圧タンク12に負圧が無いと判定する。ステップS40における負圧の閾値は、ステップS10における負圧の閾値と同じ値であってもよく、ステップS10における閾値よりも大きな負圧とされてもよい。ステップS40の判定の結果、負圧タンク12に負圧が無いと判定された場合(ステップS40−Y)にはステップS50に進み、そうでない場合(ステップS40−N)にはステップS80に進む。
【0050】
ステップS50では、負圧マネジメントECU130により、出力軸回生オルタネータ32で回生して減速度を稼ぎつつ、VSCアクチュエータ121で加圧してブレーキアシストを行うアシスト制御が実行される。負圧マネジメントECU130は、オルタネータクラッチ33が係合状態でない場合にはオルタネータクラッチ33を係合させ、出力軸回生オルタネータ32に回生発電を行わせる。回生発電を行うことにより、出力軸回生オルタネータ32は出力軸21に対する負荷として作用し、車両1に減速度を発生させることができる。このときに発生させる減速度を高めるためには、出力軸回生オルタネータ32の発電量を大きくするようにすればよい。例えば、出力軸回生オルタネータ32の発電量を発電可能な最大値としてもよい。
【0051】
また、負圧マネジメントECU130は、VSCECU120に対して、VSCアクチュエータ121により各車輪23のブレーキ24に油圧を供給して制動力を発生させるように要求する。この要求を受けて、VSCECU120は、VSCアクチュエータ121の電動油圧ポンプを作動させ、作動油を加圧させる。VSCアクチュエータ121から供給される油圧により、油圧ブレーキ24が制動力を発生させる。VSCアクチュエータ121の電動油圧ポンプは、例えば、バッテリや出力軸回生オルタネータ32からの電力により作動する。ステップS50が実行されると、本制御フローは終了する。
【0052】
ステップS80では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12の弁が開放されてパワーシリンダ41が負圧とされる。負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12のバルブ13を第二状態(図8参照)あるいは第三状態(図5参照)として負圧タンク12に蓄圧された負圧をブレーキ倍力装置40に供給する。これにより、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足が抑制される。第二状態では、負圧タンク12がインレット・マニホールドおよび出力軸負圧ポンプ30と遮断された状態で、負圧タンク12からブレーキ倍力装置40に負圧を供給することができる。ステップS80が実行されると、本制御フローは終了する。
【0053】
また、ステップS20で否定判定がなされてステップS60に進むと、ステップS60では、負圧マネジメントECU130により、出力軸負圧ポンプ30が駆動されて負圧が生成される。負圧マネジメントECU130は、ポンプクラッチ31を係合状態として出力軸負圧ポンプ30を駆動させる。出力軸負圧ポンプ30によって生成された負圧は、負圧配管11を介してパワーシリンダ41に供給される。なお、出力軸負圧ポンプ30によって負圧が生成されるときに、負圧タンク12のバルブ13は、第一状態あるいは第三状態のいずれかとされる。例えば、バルブ13が第一状態(図6参照)とされた場合には、負圧タンク12が閉塞されているため、速やかにパワーシリンダ41に供給される負圧を回復させることができる。バルブ13が第三状態(図5参照)とされた場合には、出力軸負圧ポンプ30によって生成された負圧が負圧タンク12に導かれ、負圧タンク12に負圧を蓄えることが可能となる。
【0054】
このように、バルブ13が第三状態とされている場合、出力軸負圧ポンプ30は、生成した負圧をブレーキ倍力装置40に加えて負圧タンク12に供給する。従って、出力軸負圧ポンプ30の駆動時にバルブ13が第三状態とされると、負圧タンク12には、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成できる車速で車両1が走行しているときに出力軸負圧ポンプ30が生成した負圧が予め蓄圧される。つまり、出力軸負圧ポンプ30のフェールおよびエンジン始動フェールに備えて予め負圧タンク12に負圧を蓄積しておくことができる。なお、出力軸負圧ポンプ30の駆動時にバルブ13を第三状態とするか否かは、例えば、負圧タンク12の負圧(第二負圧センサ15の検出値)および負圧室41aの負圧(第一負圧センサ48の検出値)に基づいて決定されることが好ましい。例えば、負圧タンク12の負圧が、負圧室41aの負圧よりも小さい場合にバルブ13を第三状態とし、それ以外はバルブ13を第一状態とするようにすればよい。ステップS60が実行されると、本制御フローは終了する。
【0055】
また、ステップS30で否定判定がなされてステップS70に進むと、ステップS70では、エンジン10の再始動が完了する。エンジン10の始動が成功して吸気負圧が生成されることで、負圧配管11を介してブレーキ倍力装置40に負圧が供給される。ステップS70が実行されると、本制御フローは終了する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の制動制御システム1−1は、惰性走行の実行中に負圧配管11の負圧が低減した場合(S10−Y)であって、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成できず(S20−Y)、かつエンジン10の始動ができない(S30−Y)場合、負圧タンク12に蓄圧されている負圧をブレーキ倍力装置40に供給する(S80)。よって、制動制御システム1−1によれば、フリーランの実行中に、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成できず、かつエンジン10の始動ができない場合であっても、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足が抑制される。なお、出力軸負圧ポンプ30が故障したりエンジン10の始動が失敗したりした場合には、警告灯や警告音により運転者に異常の発生を知らせることが望ましい。
【0057】
なお、本実施形態では、車両1の動力源がエンジン10であったが、車両1は、動力源としてエンジン10以外のもの、例えば、モータジェネレータ等を更に備えていてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、吸気負圧あるいは出力軸負圧ポンプ30により生成された負圧の少なくともいずれか一方が負圧タンク12に蓄圧されたが、これには限定されない。負圧タンク12には、他の方法により生成した負圧が蓄圧されてもよい。負圧タンク12への負圧の蓄圧は、負圧タンク12に蓄圧された負圧が低減した場合に随時なされることが好ましい。例えば、出力軸負圧ポンプ30から負圧タンク12に直接負圧を供給することができるように構成されている場合に、負圧タンク12の負圧の低減に応じて出力軸負圧ポンプ30から負圧タンク12に負圧を供給するようにすれば、負圧タンク12を常に負圧の供給が可能な圧力状態に維持することが可能となる。
【0059】
負圧を生成する負圧ポンプは、TM20の出力軸21と連結される出力軸負圧ポンプ30には限定されない。負圧を生成するポンプは、車両1の車輪23から動力が伝達されることにより駆動され、負圧を生成してブレーキ倍力装置40に生成した負圧を供給できるものであればよい。また、負圧を生成するポンプは、惰性走行の実行中に車両1の運動エネルギーを消費して負圧を生成することができる他の公知のポンプ装置であってもよい。
【0060】
(第2実施形態)
図9から図13を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図9は、本実施形態にかかる車両の概略構成を示す図、図12は、本実施形態の動作を示すフローチャート、図13は、本実施形態の動作を示す他のフローチャートである。
【0061】
本実施形態の制動制御システム1−2が、上記第1実施形態の制動制御システム1−1と異なる点は、電動負圧ポンプ34を有する点である。フリーランの実行時において、ブレーキ倍力装置40に供給する負圧を回復させる際に、エンジン10の始動に成功しなかった場合には、電動負圧ポンプ34が作動して負圧をパワーシリンダ41に供給する。これにより、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足がより確実に抑制される。
【0062】
また、本実施形態では、フリーランの実行中に負圧室41aの負圧が低減した場合、まず負圧タンク12に蓄圧された負圧がブレーキ倍力装置40に供給される。負圧タンク12に蓄圧された負圧を供給する場合、出力軸負圧ポンプ30を駆動する場合のようなフリクションの増加が生じない。よって、フリーランによる燃費向上効果を高めることが可能となる。負圧タンク12の負圧がある程度低下すると、負圧タンク12からブレーキ倍力装置40への負圧の供給が終了し、出力軸負圧ポンプ30による負圧の供給に切替えられる。負圧タンク12には、エンジン10の再始動に成功しなかった場合に備えて、一定レベル以上の負圧が残される。これにより、エンジン10の始動ができない場合であっても、負圧タンク12に蓄圧されている負圧をブレーキ倍力装置40に供給可能となる。
【0063】
図9に示すように、車両1は、電動負圧ポンプ34、メインバッテリ35およびサブバッテリ36を備える。メインバッテリ35およびサブバッテリ36は、充放電可能な蓄電装置である。メインバッテリ35は、車両1の主電源として車両1の各電力負荷に電力を供給することができる。サブバッテリ36は、メインバッテリ35をアシストして電力を出力することができる。メインバッテリ35およびサブバッテリ36は、それぞれ出力軸回生オルタネータ32と接続されており、出力軸回生オルタネータ32で発電された電力によって充電可能である。バッテリの充電においては、メインバッテリ35の充電が優先され、メインバッテリ35が満充電である場合にサブバッテリ36が充電される。
【0064】
電動負圧ポンプ34は、サブバッテリ36からの電力により作動して負圧を発生するバキュームポンプである。電動負圧ポンプ34は、ブレーキ倍力装置40と接続されており、パワーシリンダ41の負圧室41aおよび空気室41bに負圧を供給することができる。電動負圧ポンプ34は、例えば、負圧配管11におけるバルブ13よりもブレーキ倍力装置40側に接続される。また、電動負圧ポンプ34は、負圧マネジメントECU130と接続されており、負圧マネジメントECU130によって制御される。
【0065】
電動負圧ポンプ34は、例えば、DCモータを駆動源として有するバキュームポンプである。図10は、DCモータを駆動源とする電動負圧ポンプ34を示す図である。電動負圧ポンプ34の駆動源がDCモータである場合、図10に示すように、サブバッテリ36からの電力によって作動するDCモータ34aがバキュームポンプ34bを駆動し、負圧を発生させる。
【0066】
なお、電動負圧ポンプ34の駆動源は、DCモータには限定されず、例えば、ACモータであってもよい。図11は、ACモータを駆動源とする電動負圧ポンプ34を示す図である。電動負圧ポンプ34の駆動源がACモータである場合、図11に示すように、ACモータ34cは、昇圧コンバータ37およびインバータ38を介してサブバッテリ36と接続される。ACモータ34cは、昇圧コンバータ37およびインバータ38を介して供給されるサブバッテリ36の電力によってバキュームポンプ34dを駆動し、負圧を発生させる。
【0067】
以下に、図12および図13を参照して、本実施形態の動作について説明する。図12および図13に示す制御フローは、例えば車両1の走行中に所定の間隔で繰り返し実行される。まず、ステップS110では、負圧マネジメントECU130により、フリーランS&S(ストップ&スタート)でエンジン停止中である(フリーランの実行中である)か否かが判定される。その判定の結果、フリーランS&Sでエンジン停止中であると判定された場合(ステップS110−Y)にはステップS120に進み、そうでない場合(ステップS110−N)には本制御フローは終了する。
【0068】
ステップS120では、負圧マネジメントECU130により、第一負圧センサ48の検出値が予め定められた第一負圧T1(MPa)よりも大であるか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、ブレーキ倍力装置40の負圧室41aの負圧が、規定の負圧(第一負圧T1)よりも大きな負圧であるか否かを判定する。第一負圧T1は、例えば、ブレーキペダル28の踏込みのフィーリング(ブレーキ倍力装置40が発生させるアシスト力)に基づいて設定される。第一負圧T1は、例えば、エンジン10の作動時に対してブレーキ踏込みフィーリングに変化が生じない範囲の値とされることが好ましい。第一負圧T1は、例えば、0.04MPaとされることができる。負圧室41aの負圧をこの第一負圧T1よりも低減させないように負圧タンク12および出力軸負圧ポンプ30がマネジメントされることで、ブレーキ踏込みのフィーリングの変化が抑制され、ドライバビリティが向上する。ステップS120の判定の結果、第一負圧センサ48の検出値が第一負圧T1よりも大であると判定された場合(ステップS120−Y)にはステップS130に進み、そうでない場合(ステップS120−N)にはステップS140に進む。
【0069】
ステップS130では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12の弁が閉じた状態とされる。負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12のバルブ13を閉じた状態(第一状態)とするように、バルブ13のアクチュエータを制御する。ステップS130が実行されると、本制御フローは終了する。
【0070】
ステップS140では、負圧マネジメントECU130により、第二負圧センサ15の検出値が予め定められた第二負圧T2(MPa)よりも大であるか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12内の負圧が、規定の負圧(第二負圧T2)よりも大きな負圧であるか否かを判定する。第二負圧T2は、例えば、第一負圧T1とエンジン作動時のインレット・マニホールドの負圧との間の値とされる。ステップS140の判定の結果、第二負圧センサ15の検出値が第二負圧T2よりも大であると判定された場合(ステップS140−Y)にはステップS150に進み、そうでない場合(ステップS140−N)にはステップS160に進む。
【0071】
ステップS150では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12の弁が開放され、パワーシリンダ41が負圧とされる。負圧マネジメントECU130は、バルブ13を第二状態(図8参照)あるいは第三状態(図5参照)とする。これにより、負圧タンク12の負圧がパワーシリンダ41に供給され、負圧室41aの負圧が増加する。ステップS150が実行されると、本制御フローは終了する。
【0072】
ステップS160では、負圧マネジメントECU130により、出力軸負圧ポンプ30がフェールしているか否かが判定される。ステップS160では、出力軸負圧ポンプ30によって適切に負圧を生成可能か否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、車速が予め定められた所定車速TS(km/h)未満である場合や、出力軸負圧ポンプ30が故障している場合にフェールしたと判定する。所定車速TSは、例えば、出力軸負圧ポンプ30が適切な負圧をパワーシリンダ41に供給できる車速の範囲における下限の車速とされる。所定車速TSは、例えば10km/hとすることができる。ステップS160の判定の結果、出力軸負圧ポンプ30がフェールしていると判定された場合(ステップS160−Y)にはステップS180に進み、そうでない場合(ステップS160−N)にはステップS170に進む。
【0073】
ステップS170では、負圧マネジメントECU130により、出力軸負圧ポンプ30のクラッチが係合され、出力軸負圧ポンプ30が駆動されて負圧が生成される。負圧マネジメントECU130は、ポンプクラッチ31を係合状態として出力軸負圧ポンプ30を駆動させる。出力軸負圧ポンプ30によって生成された負圧は、負圧配管11を介してパワーシリンダ41に供給される。なお、出力軸負圧ポンプ30によって負圧が生成されるときに、負圧タンク12のバルブ13は、第一状態あるいは第三状態のいずれかとされる。例えば、バルブ13が第一状態(図6参照)とされた場合には、負圧タンク12が閉塞されているため、速やかにパワーシリンダ41に供給される負圧を回復させることができる。バルブ13が第三状態(図5参照)とされた場合には、出力軸負圧ポンプ30によって生成された負圧が負圧タンク12に導かれ、負圧タンク12に負圧を蓄えることが可能となる。ステップS170が実行されると、本制御フローは終了する。
【0074】
ステップS180では、負圧マネジメントECU130により、エンジン10が再始動される。負圧マネジメントECU130は、クラッチ14を係合させ、エンジンECU100によりエンジン10を始動させる。
【0075】
次に、ステップS190では、負圧マネジメントECU130により、エンジン始動が成功したか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、エンジンECU100から送られるエンジン10の作動状態を示す信号に基づいてステップS190の判定を行う。その判定の結果、エンジン10の始動が成功したと判定された場合(ステップS190−Y)には本制御フローは終了し、エンジン始動が成功したと判定されない場合(ステップS190−N)にはステップS200(図13)に進む。
【0076】
ステップS200では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12に負圧が無いか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、第二負圧センサ15の検出値が、予め定められた閾値よりも小さい(絶対圧が大きい)場合に、負圧タンク12に負圧が無いと判定する。この閾値は、例えば、第一負圧T1よりも大きな負圧とされる。この閾値は、第二負圧T2と同じ値とされてもよい。ステップS200の判定の結果、負圧タンク12に負圧が無いと判定された場合(ステップS200−Y)にはステップS210に進み、そうでない場合(ステップS200−N)にはステップS260に進む。
【0077】
ステップS210では、負圧マネジメントECU130により、サブバッテリ36の充電状態SOCが予め定められた閾値J1(%)以上あるか否かが判定される。サブバッテリ36の充電状態SOCは、例えば、サブバッテリ36の充放電を監視する監視装置から取得される。閾値J1は、例えば、電動負圧ポンプ34の消費電力に基づいて設定されるものである。閾値J1は、例えば、電動負圧ポンプ34を駆動して十分な負圧を発生させることができるために必要とされる充電状態SOCに基づいて予め定められている。ステップS210の判定の結果、サブバッテリ36の充電状態SOCが閾値J1以上あると判定された場合(ステップS210−Y)にはステップS220に進み、そうでない場合(ステップS210−N)にはステップS230に進む。
【0078】
ステップS220では、負圧マネジメントECU130により、電動負圧ポンプ34が駆動されて負圧が生成される。エンジン始動がフェールした場合、負圧マネジメントECU130は、出力軸回生オルタネータ32に回生発電を行わせる。負圧マネジメントECU130は、出力軸回生オルタネータ32が発電した電力およびサブバッテリ36からの電力によって電動負圧ポンプ34を作動させ、負圧を生成させる。電動負圧ポンプ34によって生成された負圧は、ブレーキ倍力装置40のパワーシリンダ41に供給される。これにより、エンジン10の始動が成功せずにエンジン10の吸気負圧が利用できない場合であっても、ブレーキ倍力装置40の負圧室41aに負圧が供給される。ステップS220が実行されると、本制御フローは終了する。
【0079】
ステップS230では、VSCアクチュエータ121による加圧が行われる。負圧マネジメントECU130は、VSCECU120に対して、VSCアクチュエータ121により各車輪23のブレーキ24に油圧を供給して制動力を発生させるように要求する。この要求を受けて、VSCECU120は、VSCアクチュエータ121の電動油圧ポンプを作動させ、作動油を加圧させる。ステップS230が実行されると、ステップS240に進む。
【0080】
ステップS240では、負圧マネジメントECU130により、ブレーキアシストの準備ができたか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、VSCECU120から取得する情報に基づいてステップS240の判定を行う。VSCECU120は、VSCアクチュエータ121において電動油圧ポンプや油圧制御用のソレノイドバルブなどブレーキアシストに関わる機器が正常に作動している場合に、ブレーキアシストの準備ができた(正常にブレーキアシストが行われている)ことを示す信号を出力する。負圧マネジメントECU130は、VSCECU120から取得した信号に基づき、VSCアクチュエータ121においてブレーキアシストの準備ができたか否かを判定する。その判定の結果、ブレーキアシストの準備ができたと判定された場合(ステップS240−Y)には本制御フローは終了し、ブレーキアシストの準備ができたと判定されない場合(ステップS240−N)にはステップS250に進む。
【0081】
ステップS250では、負圧マネジメントECU130により、電動PKB26がかけられる。負圧マネジメントECU130は、電動PKB26を作動させて各車輪23において制動力を発生させる。電動PKB26は、徐々に効かせていくことが好ましい。すなわち、電動PKB26による制動力を徐々に増加させていくことが好ましい。電動PKB26は、例えば、メインバッテリ35からの電力を消費して作動することで制動力を発生させる。ステップS250が実行されると、本制御フローは終了する。
【0082】
ステップS260では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12の弁が開放されてパワーシリンダ41が負圧とされる。負圧マネジメントECU130は、負圧タンク12のバルブ13を第二状態あるいは第三状態として負圧タンク12に蓄圧された負圧をブレーキ倍力装置40に供給する。これにより、ブレーキ倍力装置40に供給される負圧の不足が抑制される。ステップS260が実行されると、本制御フローは終了する。
【0083】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、負圧タンク12が一つであったが、これには限定されず、複数の負圧タンク12が設けられてもよい。この場合、エンジン10の始動ができなかった場合に開放される(ステップS260において開放される)第一の負圧タンク12と、負圧室41aの負圧が低減した場合に開放される(ステップS150において開放される)第二の負圧タンク12とを異なる負圧タンク12とすればよい。このようにすれば、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成できない低車速時において、第二の負圧タンク12に蓄圧された負圧をブレーキ倍力装置40に供給することで、エンジン10を始動することなくフリーランを継続することができる。また、出力軸負圧ポンプ30がフェールし、かつエンジン10の再始動ができない場合には、十分な負圧が蓄圧されている第一の負圧タンク12からブレーキ倍力装置40に負圧を供給可能となる。
【0084】
(第3実施形態)
図14を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図14は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0085】
上記第2実施形態では、負圧室41aの負圧が低減した場合に、負圧タンク12に蓄圧された負圧が優先してブレーキ倍力装置40に供給され、次に出力軸負圧ポンプ30により生成された負圧がブレーキ倍力装置40に供給されたが、これに代えて、出力軸負圧ポンプ30による負圧の供給が負圧タンク12による負圧の供給よりも優先される。負圧マネジメントECU130は、負圧室41aの負圧が低下した場合に、負圧室41aの負圧をモニタしながら車速やTM20のギア比もモニタし、最低限必要な分だけ出力軸負圧ポンプ30を駆動して負圧を供給させる。
【0086】
図14を参照して、本実施形態の動作について説明する。ステップS310からステップS330までは、上記第2実施形態のステップS110からステップS130までと同様とすることができる。すなわち、負圧マネジメントECU130により、フリーランS&Sでエンジン停止中であると判定され(ステップS310−Y)、かつ第一負圧センサ48の検出値が第一負圧T1よりも大である(ステップS320−Y)と、負圧タンク12のバルブ13が閉じた状態(第一状態)とされ(ステップS330)、本制御フローは終了する。
【0087】
ステップS320において否定判定がなされてステップS340に進むと、ステップS340では、負圧マネジメントECU130により、車速が所定車速TS以上であるか否かが判定される。その判定の結果、車速が所定車速TS以上であると判定された場合(ステップS340−Y)にはステップS350に進み、そうでない場合(ステップS340−N)にはステップS370に進む。
【0088】
ステップS350では、負圧マネジメントECU130により、出力軸負圧ポンプ30がフェールしているか否かが判定される。負圧マネジメントECU130は、出力軸負圧ポンプ30が故障している場合など、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成することができない場合に、出力軸負圧ポンプ30がフェールしていると判定する。その判定の結果、出力軸負圧ポンプ30がフェールしていると判定された場合(ステップS350−Y)にはステップS390に進み、そうでない場合(ステップS350−N)にはステップS360に進む。
【0089】
ステップS360では、負圧マネジメントECU130により、ポンプクラッチ31が係合され、出力軸負圧ポンプ30が駆動されて負圧が生成される。出力軸負圧ポンプ30により生成された負圧は、ブレーキ倍力装置40に供給される。なお、生成された負圧は、ブレーキ倍力装置40だけでなく負圧タンク12に供給されて負圧タンク12に蓄圧されてもよい。ステップS360が実行されると、本制御フローは終了する。
【0090】
ステップS370では、負圧マネジメントECU130により、第二負圧センサ15の検出値が第二負圧T2よりも大であるか否かが判定される。第二負圧T2は、例えば、第一負圧T1とエンジン作動時のインレット・マニホールドの負圧との間の値とされる。ステップS370の判定の結果、第二負圧センサ15の検出値が第二負圧T2よりも大であると判定された場合(ステップS370−Y)にはステップS380に進み、そうでない場合(ステップS370−N)にはステップS390に進む。
【0091】
ステップS380では、負圧マネジメントECU130により、負圧タンク12の弁が開放され、パワーシリンダ41が負圧とされる。ステップS380が実行されると、本制御フローは終了する。
【0092】
ステップS390では、負圧マネジメントECU130により、エンジン10が再始動される。
【0093】
次に、ステップS400では、負圧マネジメントECU130により、エンジン始動が成功したか否かが判定される。その判定の結果、エンジン始動が成功したと判定された場合(ステップS400−Y)には本制御フローは終了し、エンジン始動が成功したと判定されない場合(ステップS400−N)には、上記第2実施形態と同様に、エンジン始動がフェールしたときの制御(例えば、図13のステップS200からS260)が実行される。
【0094】
なお、上記の各実施形態において、出力軸負圧ポンプ30が適切に負圧を生成できず、かつエンジン10の始動ができない場合であって、運転者による制動操作(ブレーキペダル28の踏込み)がなされている場合、負圧タンク12に蓄圧された負圧をブレーキ倍力装置40に供給することに加えて、電力を消費して車両1に制動力を作用させる制動力アシスト装置を作動させるようにしてもよい。例えば、VSCアクチュエータ121、電動負圧ポンプ34、電動PKB26等を負圧タンク12からの負圧の供給に加えて作動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明にかかる制動制御システムは、惰性走行中においてブレーキ倍力装置に供給される負圧の不足を抑制するのに有用であり、特に、内燃機関の始動が成功しなかった場合の負圧の不足を抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0096】
1−1,1−2 制動制御システム
1 車両
10 エンジン
11 負圧配管
12 負圧タンク
13 バルブ
21 出力軸
23 車輪
30 出力軸負圧ポンプ
34 電動負圧ポンプ
40 ブレーキ倍力装置
41a 負圧室
100 エンジンECU
110 アイドルストップコントロールECU
120 VSCECU
130 負圧マネジメントECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としての内燃機関と、
供給される負圧により作動するブレーキ倍力装置と、
前記内燃機関の吸気負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給する通路と、
前記車両の車輪から伝達される動力により駆動され、負圧を生成して前記ブレーキ倍力装置に前記生成した負圧を供給する負圧ポンプと、
負圧を蓄圧可能であり、かつ前記ブレーキ倍力装置に前記蓄圧した負圧を供給できる蓄圧装置とを備え、
前記内燃機関を停止させて惰性により前記車両を走行させる惰性走行の実行中に前記通路の負圧が低減した場合であって、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できず、かつ前記内燃機関の始動ができない場合、前記蓄圧装置に蓄圧されている負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給する
ことを特徴とする制動制御システム。
【請求項2】
前記蓄圧装置には、前記内燃機関の作動時における前記吸気負圧が予め蓄圧される
請求項1に記載の制動制御システム。
【請求項3】
前記負圧ポンプは、前記ブレーキ倍力装置に加えて、前記蓄圧装置に対して前記生成した負圧を供給できるものであって、
前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できない場合とは、前記車両が低車速で走行している場合であり、
前記蓄圧装置には、前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できる車速で前記車両が走行しているときに前記負圧ポンプが生成した負圧が予め蓄圧される
請求項1または2に記載の制動制御システム。
【請求項4】
前記蓄圧装置の開口部を閉塞あるいは開放する制御弁を備え、
前記蓄圧装置に負圧を蓄圧する蓄圧時、および前記蓄圧装置に蓄圧された負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給する供給時は、前記制御弁により前記開口部を開放し、
前記蓄圧時および前記供給時のいずれとも異なるときは、前記制御弁により前記開口部を閉塞する
請求項1から3のいずれか1項に記載の制動制御システム。
【請求項5】
前記蓄圧装置は、前記通路と接続されており、
前記制御弁は、前記開口部を開放して前記通路と前記蓄圧装置とを連通させ、かつ前記蓄圧装置および前記ブレーキ倍力装置よりも前記内燃機関側の前記通路を閉塞する所定状態に切替えることができるものであって、
前記制動制御システムは、前記供給時に、前記制御弁を前記所定状態に切替える
請求項4に記載の制動制御システム。
【請求項6】
前記負圧ポンプが適切に負圧を生成できず、かつ前記内燃機関の始動ができない場合であって、運転者による制動操作がなされている場合、前記蓄圧装置に蓄圧されている負圧を前記ブレーキ倍力装置に供給することに加えて、前記車両に搭載され、電力を消費して前記車両に制動力を作用させる制動力アシスト装置を作動させる
請求項1から5のいずれか1項に記載の制動制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate