説明

制動灯制御装置

【課題】後方車両のドライバに対して、自車両の制動動作を報知しながら、眩惑感を低減させることができる制動灯制御装置を提供する。
【課題手段】制動灯制御装置1は、自車両の減速を検出する自車両減速度検出部11と、後方車両までの距離を検出する後方車両検出部12と、自車両の速度を検出する車輪速センサ13と、自車両の速度と後方車両までの距離に基づき後方車両の速度を算出し、後方車両の減速を検出した場合に、自車両と後方車両の距離に応じて制動灯の減光制御を行うECU10と、ECU10から取得した光量に関する情報に基づき制動灯15を制御する制動灯制御部14とを備える。自車両の減速時に、後方車両の減速を検出した場合に減光制御を行うので、後方車両のドライバに自車両が制動中であることを認識させた後に制動灯の光量を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と後方車両との距離に応じて自車両の制動灯の減光制御を行う制動灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、後方車両のドライバに眩惑感を与えることを防止するために、制動灯の光量制御を行う装置が知られている。例えば、特許文献1には、後方車両との車間距離に応じて制動灯を消灯する制御装置や、後方車両から自車両に向けて照射されるライトビームの照度から後方車両の接近状態を認識し、接近状態に応じて制動灯の輝度を調整する制御装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−105623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自車両と後方車両との距離により一律に制動灯を減光すると、後方車両のドライバは、自車両が制動中であることを認識し難くなる。例えば、自車両と後方車両との距離が近い場合であっても、後方車両のドライバが自車両の制動状態を認識していないときに減光するのは適切ではない。
【0004】
そこで、本発明の課題は、後方車両のドライバに対して、自車両の制動動作を報知しながら、眩惑感を低減させることができる制動灯制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自車両と後方車両との距離に応じて自車両の制動灯の減光制御を行う制動灯制御装置において、自車両の減速時に後方車両の減速を検出する後方車両減速検出手段と、後方車両の減速が検出された場合に減光制御を行う減光制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の制動灯制御装置では、自車両の減速時に後方車両の減速を検出することにより、自車両が制動中であることを後方車両のドライバが認識したことを検知できる。そして、後方車両の減速が検出された場合に減光制御を行うので、後方車両のドライバに自車両が制動中であることを認識させた後に自車両の制動灯の光量を減少させることができる。従って、自車両の制動動作を報知しつつ、後方車両のドライバに与える眩惑感を低減できる。
【0007】
また、好ましくは、減光制御手段は、自車両と後方車両との距離を2乗した値に比例する光量となるように減光制御を行うことを特徴とする。この場合には、自車両と後方車両との距離に応じた適切な光量に減光制御できるので、眩惑感の一層の低減が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後方車両のドライバに対して、自車両の制動動作を報知しながら、眩惑感を低減させることができる。その結果、より好ましい運転環境を後方車両のドライバに提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る制動灯制御装置の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0010】
図1は、本発明に係る制動灯制御装置の実施形態を示す概略構成図である。制動灯制御装置1は、自車両の制動状態を後方車両に対して報知するための制動灯15を制御する装置である。制動灯制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)10、自車両減速度検出部11、後方車両検出部12、車輪側センサ13及び制動灯制御部14を備える。ECU10は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェース等により構成される。
【0011】
自車両減速度検出部11は、自車両の減速度を検出し、検出した減速度のデータをECU10に送出する。自車両減速度検出部11は、例えば減速度センサにより構成される。また、自車両減速度検出部11は、ブレーキセンサにより構成されることとしてもよい。この場合には、ブレーキセンサは、自車両のブレーキ操作を検出して、その旨の情報をECU10に送出する。
【0012】
後方車両検出部12は、自車両の後方を走行する後方車両までの距離を検出し、検出した後方車両までの距離のデータをECU10に送出する。後方車両検出部12は、例えばミリ波レーダ等により構成される。
【0013】
車輪速センサ13は、自車両の車輪の回転速度を検出するセンサであり、検出した車輪の回転速度をECU10に送出する。自車両の速度は、車輪の回転速度に基づいて、ECU10により算出される。
【0014】
ECU10は、自車両減速度検出部11から取得した減速度のデータに基づいて自車両が減速中であるか否かを判断し、その判断の結果に基づいて制動灯を点灯するか否かを判断する。自車両減速度検出部11がブレーキセンサにより構成される場合には、ECU10は、ブレーキ操作がされたことを以て、減速中であることを判断することができる。また、ECU10は、自車両から後方車両までの距離及び後方車両の速度に基づいて、制動灯15の減光制御を行うか否かを判断する。減光制御を行う場合には、ECU10は、制動灯15の光量を算出する。ここで、ECU10は、自車両から後方車両までの距離の時間変化に基づいて算出される後方車両の相対速度、及び自車両の速度に基づいて、後方車両の速度を算出することができる。ECU10は、制動灯15を点灯するか否かの判断結果を示す制御信号、及び減光制御を行う場合における光量に関する情報を制動灯制御部14に送出する。
【0015】
制動灯制御部14は、ECU10から取得した情報に基づいて、制動灯15を制御する。具体的には、制動灯制御部14は、制動灯15を点灯するか否かの判断結果に基づいて、制動灯15を点灯または消灯する。さらに、制動灯制御部14は、光量に関する情報に基づいて、制動灯15を点灯するための電圧調整を行う。この場合には、制動灯制御部14は、光量と電圧との対応付けに関する情報を予め有する。
【0016】
制動灯15は、制動灯制御部14による点灯または消灯のスイッチング制御、及び電圧制御に基づいて光を発する。
【0017】
図2は、自車両及び後方車両の速度と制動灯制御との関係を示すグラフである。図2に示される2つのグラフは、それぞれ横軸を自車両の速度及び後方車両の速度とし、縦軸を時刻としている。
【0018】
時間Tでは、自車両は減速することなく走行しているので、制動灯制御装置1は、制動灯15を消灯させている。
【0019】
時刻Bにおいて、自車両は減速を開始しているので、制動灯制御装置1は、制動灯15を点灯させる。時刻B以後且つ後方車両が減速を開始する時刻Bの前の時間Tでは、後方車両のドライバは自車両の減速を認識していないと考えられるので、制動灯制御装置1は、通常の光量で制動灯15を点灯させる。
【0020】
時刻Bにおいて、後方車両は減速を開始していることから、後方車両のドライバは、自車両の減速を認識したと考えられる。従って、時間Tでは、制動灯制御装置1は、減光制御を行いながら制動灯15を点灯させる。このように、自車両が減速中であっても、自車両の減速を後方車両のドライバが認識しているときには、制動灯15の光量を低下させる。
【0021】
時間Tでは、自車両は減速を終了しているので、制動灯制御装置1は、制動灯15を消灯する。
【0022】
続いて、図3を用いて、制動灯15の減光制御の一例について説明する。図3は、減光制御時における、自車両から後方車両までの距離と、制動灯15の光量との関係を示すグラフである。
【0023】
自車両から後方車両までの距離が所定の距離Dより大きい場合には、光量を低減しなくとも後方車両のドライバに眩惑感を与える可能性が小さいことから、制動灯15の光量は、所定の光量Lに設定される。この光量Lは、通常時の光量と等しい。
【0024】
自車両から後方車両までの距離が所定の距離D以下であり、且つ所定の距離D以上である場合には、制動灯15の光量は、自車両から後方車両までの距離の2乗に比例する光量に制御される。
【0025】
自車両から後方車両までの距離が所定の距離D未満である場合には、制動灯15の光量は、所定の光量Lに設定される。この光量Lは、後方車両のドライバが制動灯15の点灯を認識可能な最低限の光量である。
【0026】
なお、ここで説明した減光制御の一例では、制動灯15の光量は、自車両から後方車両までの距離の2乗に比例する光量に制御されることとしたが、例えば自車両から後方車両までの距離に比例する光量に制御されることとしてもよい。
【0027】
次に、図5を用いて、制動灯制御装置1により行われる制動灯制御の処理を説明する。図5は、ECU10により実行される制動灯制御の処理手順を示したフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS1においては、自車両が減速中であるか否かを判断する。自車両が減速中でない場合には、処理手順は、ステップS2に進められる。
【0029】
ステップS2においては、制動灯15を消灯するための制御信号を制動灯制御部14に送出すると、制動灯制御部14は、制御信号に基づいて制動灯15を消灯する。ステップS2の処理は、図2の時間T、Tにおいて実行される処理に該当する。
【0030】
一方、ステップS1において、自車両が減速中であると判断された場合には、処理手順はステップS3に進められる。ステップS3においては、後方車両が減速中であるか否かを判断する。後方車両が減速中でない場合には、処理手順はステップS4に進められる。
【0031】
ステップS4においては、制動灯15を通常点灯するための制御信号を制動灯制御部14に送出すると、制動灯制御部14は、制御信号に基づいて制動灯15を通常の光量で点灯する。ステップS4の処理は、図2の時間Tにおいて実行される処理に該当する。
【0032】
一方、ステップS3において、後方車両が減速中であると判断された場合には、処理手順はステップS5に進められる。ステップS5においては、制動灯15を点灯するための制御信号を制動灯制御部14に送出すると共に、減光制御を行う。この場合には、制御信号と併せて制動灯15の光量に関する情報を制動灯制御部14に送出する。すると、制動灯制御部14は、制御信号及び光量に関する情報に基づいて、制動灯15を減光制御により点灯する。ステップS5の処理は、図2の時間Tにおいて実行される処理に該当する。以上説明したステップS1〜S5の処理は、繰り返し実行される。
【0033】
以上において、ECU10のステップS1,S3、自車両減速度検出部11、後方車両検出部12及び車輪速センサ13は、自車両の減速時に後方車両の減速を検出する後方車両減速検出手段を構成する。ECU10のステップS5及び制動灯制御部14は、後方車両の減速が検出された場合に減光制御を行う減光制御手段を構成する。
【0034】
以上のように本実施形態にあっては、自車両の減速時に後方車両の減速を検出するので、自車両が制動中であることが後方車両のドライバに認識されるようになる。その後、後方車両の減速が検出された場合に減光制御を行うので、制動灯15の光量が減少するようになる。この結果、後方車両のドライバに対して、自車両の制動動作を認識させつつ、制動灯15による眩しさを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る制動灯制御装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】自車両及び後方車両の速度と制動灯制御との関係を示すグラフである。
【図3】減光制御時における、自車両から後方車両までの距離と制動灯の光量との関係を示すグラフである。
【図4】ECUが実行する制動灯制御の処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1…制動灯制御装置、10…ECU(後方車両減速検出手段、減光制御手段)11…自車両減速度検出部(後方車両減速検出手段)、12…後方車両検出部(後方車両減速検出手段)、13…車輪速センサ(後方車両減速検出手段)、14…制動灯制御部(減光制御手段)、15…制動灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と後方車両との距離に応じて前記自車両の制動灯の減光制御を行う制動灯制御装置において、
前記自車両の減速時に前記後方車両の減速を検出する後方車両減速検出手段と、
前記後方車両の減速が検出された場合に前記減光制御を行う減光制御手段と
を備えることを特徴とする制動灯制御装置。
【請求項2】
前記減光制御手段は、前記自車両と前記後方車両との距離を2乗した値に比例する光量となるように前記減光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の制動灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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